特許第6972987号(P6972987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 王子ホールディングス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000002
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000003
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000004
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000005
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000006
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000007
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000008
  • 特許6972987-複合伸縮部材 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972987
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】複合伸縮部材
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20211111BHJP
   B32B 7/04 20190101ALI20211111BHJP
【FI】
   A61F13/49 312Z
   B32B7/04
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-232715(P2017-232715)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2019-97927(P2019-97927A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 竜祐
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−171501(JP,A)
【文献】 特開平07−255773(JP,A)
【文献】 特開2016−067436(JP,A)
【文献】 特開2010−269025(JP,A)
【文献】 特開2017−176502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のシート材と、前記シート材の相互間において伸縮方向と交差する並び方向に複数並設された弾性部材とを、前記複数並設された弾性部材のそれぞれと交差するように線状に形成された複数の溶着線によって溶着した複合伸縮部材であって、
前記溶着線は、前記2枚のシート材が溶融して接合されるとともに幅寸法が互いに異なり且つ傾斜した第一溶着部と第二溶着部とを交互に連設して構成され、
前記第一溶着部の幅寸法iが、前記第二溶着部の幅寸法iよりも大きく、
前記並び方向に連設された前記第一溶着部の一端と前記第二溶着部の他端との連設点、及び、前記並び方向に連設された前記第一溶着部の他端と前記第二溶着部の一端との連設点は、前記並び方向に沿った前記溶着線の中心線に対して相互に反対側に位置し、
前記溶着線のうち、前記第一溶着部のみが前記弾性部材と交差する
複合伸縮部材
【請求項2】
前記第一溶着部の前記幅寸法iと前記第二溶着部の前記幅寸法iとの比(i/i)が1.5〜5である、請求項に記載の複合伸縮部材。
【請求項3】
前記複数の溶着線は、前記伸縮方向に並設され、
前記伸縮方向に隣接する二つの前記溶着線の相互間寸法が3〜10mmである、請求項1又は2に記載の複合伸縮部材。
【請求項4】
各々の前記連設点は、前記溶着線と前記弾性部材とが交差する溶着点に重複しない位置に設けられている、請求項1〜の何れか一項に記載の複合伸縮部材。
【請求項5】
前記溶着線は、第一溶着線と第二溶着線とを含み、
前記第一溶着線と前記第二溶着線とは、前記並び方向に沿うとともに前記中心線とは別の中心線に対して線対称をなし、前記伸縮方向に交互に配置されている、請求項1〜の何れか一項に記載の複合伸縮部材。
【請求項6】
前記第一溶着部は、前記伸縮方向の一側に所定の第一角度で傾斜し、
前記第二溶着部は、前記伸縮方向の他側に所定の第二角度で傾斜し、
前記第一角度及び前記第二角度は、45°以上90°未満である、請求項1〜の何れか一項に記載の複合伸縮部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつのギャザーに適用可能な、複合伸縮部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胴回り部分や股下部分が複合伸縮部材で構成された吸収性物品が知られている。
複合伸縮部材を製造するための装置として、ホットメルト材が塗布されたシートの表面に弾性部材が伸長した状態で配置された後、弾性部材を覆う状態で別のシートが配置される手法が提案されている。これにより、シート間に弾性部材が配置された状態で、2枚のシートと弾性部材との各相互間が接合されて複合伸縮部材が製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2014/010340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な複合伸縮部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の複合伸縮部材は、2枚のシート材と、前記シート材の相互間において伸縮方向と交差する並び方向に複数並設された弾性部材とを、前記複数並設された弾性部材のそれぞれと交差するように形成された複数の溶着線によって溶着した複合伸縮部材であって、前記溶着線は、第一溶着部と第二溶着部とを交互に連設して構成され、前記第一溶着部の幅寸法iが、前記第二溶着部の幅寸法iよりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、肌触りが良好であり、柔軟性に優れ、操業上トラブルが抑制された、新規な複合伸縮部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】各実施形態で共通する紙おむつの構成を説明するための展開図である。
図2図1のA−A矢視断面図である。
図3】ギャザーの構成を説明するための模式図であり、図1のB方向から視た要部拡大図である。
図4】各実施形態で共通するギャザーの製造装置の構成を示す模式図である。
図5】(a)は本実施形態のタミーギャザーの構成を示す模式図であり、(b),(c)は(a)の要部拡大図である。
図6】本実施形態のタミーギャザーの変形例の構成を示す模式図である。
図7】本実施形態のタミーギャザーの変形例の構成を示す模式図である。
図8】本実施形態のタミーギャザーの変形例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本件を実施するための形態を説明する。下記の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0009】
以下の実施形態では、複合伸縮部材を紙おむつ(吸収性物品)に使用した例を説明する。
【0010】
本実施形態では、紙おむつについて、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃と後身頃との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。
また、紙おむつが着用された状態(以下「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
また、紙おむつを構成する物品についても、長手方向,厚み方向および幅方向はこれに倣うものとする。
また、製造装置については、シート材や糸ゴムの搬送方向が紙おむつの幅方向に対応し、搬送方向に直交する幅方向が紙おむつの長手方向に対応する。
【0011】
[1.全体構成]
紙おむつおよびギャザーの製造装置に共通する構成について説明する。
[1−1.紙おむつの全体構成]
まず、図1を参照して、紙おむつ1の基本的な構成を説明する。
ここでは、紙おむつ1は幅方向Wの中心線CLを基準として対称に構成されている。この紙おむつ1は、長手方向Lに沿って前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cの三つの領域に大別される。
【0012】
〈シート類〉
はじめに、紙おむつ1のシート類について述べる。
図1に示すように、紙おむつ1には、前身頃1A、股下部1Bおよび後身頃1Cに亘って長手方向Lに延びる吸収体10(太破線で示す)が内蔵されている。ここでは、展開状態の正面視において、前身頃1Aおよび後身頃1Cよりも股下部1Bのほうが幅方向W寸法の小さい砂時計形状の吸収体10を例示する。
【0013】
吸収体10は、着用者から排泄される尿や経血といった液体の水分(以下「排泄水分」という)を吸収して保持する吸水性を備える。着用者への紙おむつ1のフィット性、吸水性や通気性を高めるために、吸収体10の肌面側(吸収面側)及び後述のセンターシート11には、互いに交差する圧搾溝10a,10bが線状に延設される。
【0014】
上記した吸収体10に対して肌面側および非肌面側には、図2に示すように、以下に述べる種々のシート11,12,13,14が設けられている。なお、図2では、各構成を把握しやすくするため、各シート類の厚みを誇張して示す。
吸収体10に対して、肌面側にはセンターシート11が積層され、非肌面側にはバックシート12が積層されている。これらのシート11,12の幅方向W側方にはサイドシート13が配置されている。
【0015】
カバーシート14は、上記した吸収体10およびシート11,12,13を非肌面側から被覆する。図1に示すように、前身頃1Aにおけるカバーシート14と後身頃1Cにおけるカバーシート14とは、それぞれの幅方向端縁部14aどうしが互いに貼り付けられる。このようにして、前身頃1Aおよび後身頃1Cの各カバーシート14が接合され、パンツ型の紙おむつ1が形成される。
【0016】
〈ギャザー〉
つぎに、図1図3を参照して、紙おむつ1のギャザー15について述べる。
ギャザー15は伸縮性を備えた複合伸縮部材として構成される。
ギャザー15として、ギャザー16,17,18を例示する。一つは、サイドシート13の肌面側端縁部に設けられた立体ギャザー16である。もう一つは、前身頃1Aと後身頃1Cとに設けられたタミーギャザー17である。更にもう一つは、サイドシート13の非肌面側において幅方向端縁部に設けられたセカンド立体ギャザー18(図1では図示省略)である。
【0017】
タミーギャザー17を例に取り説明すると、タミーギャザー17は、伸縮性を備えた糸ゴム20(弾性部材)を伸長状態で、カバーシート14を構成する2枚のシート材15a,15bの相互間に挟んで構成される。糸ゴム20は、幅方向Wに延在し長手方向Lに沿って複数配設される。両シート材15a,15b及び糸ゴム20は、全体的に長手方向Lに延在し幅方向Wに沿って複数設けられた溶着線30(図1および図2では省略)にて各相互間を溶着される。糸ゴム20に引張り力が加わらない自然状態(すなわち製造時には伸長状態であった糸ゴム20が収縮した状態)においては、糸ゴム20上にて隣り合う溶着線30の相互間において、シート材15a,15bが皺寄せられることにより凸状の襞40が形成される。
また、糸ゴム20の外周には、糸ゴム20よりも融点の低いステアリン酸マグネシウムからなる被覆層が設けられている。
【0018】
立体ギャザー16は、排泄箇所の周縁で着用者に対する追従性を高めることにより、排泄物の幅方向W側方への漏れを防ぐために設けられる。タミーギャザー17は、着用者の臀部や下腹部に対する追従性を高めるために設けられる。セカンド立体ギャザー18は、股下部1Bで追従性を高めるために設けられる。
【0019】
[1−2.製造装置の全体構成]
図4を参照して、ギャザー15の製造装置100(複合伸縮部材の製造装置)について、製造対象をタミーギャザー17とする製造装置100を例に取り説明する。
製造装置100は、シート材15a,15bの間に糸ゴム20を挟み込んだ状態で、糸ゴム20とシート材15a,15b、および、シート材15a,15bどうしを超音波溶着させて接合する接合装置200を有する。接合装置200は、アンビルローラ210と、ホーン220とを有する。
【0020】
アンビルローラ210は、図4の紙面と直交する方向に延びる軸回りに回転する回転部材である。以下、この図4の紙面と直交する方向を前後方向という。アンビルローラ210は、回転することで、その外周面上において、シート材15a,15bの間に糸ゴム20を挟み込んだ状態で搬送する。図4に示す例では、アンビルローラ210は時計回りに回転する。以下、糸ゴム20を挟み込んだ状態であって接合装置200による超音波溶着(接合)前のシート材15a,15bを「溶着前シート材15a,15b」という場合がある。アンビルローラ210の外周面には、径方向外側に突出する線状の凸条(図4では省略)が形成されている。
【0021】
ホーン220は、アンビルローラ210によって搬送されている溶着前シート材15a,15bをアンビルローラ210の外周面との間で挟圧(挟み込みながら加圧)しながら溶着前シート材15a,15bに超音波振動を付与する装置である。ホーン220は、アンビルローラ210の外周面と対向して配置されている。図4の例では、アンビルローラ210の外周面の左側の部分と対向して配置されている。ホーン220の先端には、アンビルローラ210の外周面に向かって付与される超音波振動用のエネルギーを出力する出力部221が設けられている。
【0022】
ホーン220は、出力部221を溶着前シート材15a,15bに押し付けてアンビルローラ210との間で溶着前シート材15a,15bを挟圧しながら溶着前シート材15a,15bに超音波振動を付与する。これにより、シート材15a,15bはそれぞれ溶融し、互いに溶着される。また、糸ゴム20の外周も溶融して、糸ゴム20とシート材15a,15bとが互いに溶着される。具体的には、出力部221は、アンビルローラ210の外周面の凸条との間で溶着前シート材15a,15bを挟圧し、溶着前シート材15a,15bのうちこの凸条上に配置された部分においてシート材15a,15bどうしおよび糸ゴム20とシート材15a,15bどうしとを互いに線状に溶着する。換言すれば、糸ゴム20,シート材15a,15bを溶着する線状の溶着部(溶着線)が凸条の形状に対応(一致)して形成される。
【0023】
上述したように糸ゴム20の外周には、糸ゴム20よりも融点の低い被覆層が設けられているため、糸ゴム20とシート材15a,15bとの溶着時において、糸ゴム20が溶融することなく被覆層が溶融してこの被覆層とシート材15a,15bとが溶着される。
【0024】
ホーン220の出力部221は、前後方向に延びており、ホーン220は、アンビルローラ210の外周面に対してアンビルローラ210の回転軸方向全体に超音波振動を付与する。アンビルローラ210によって溶着前シート15a,15bが搬送されている間、ホーン220は常に超音波振動を付与している。従って、アンビルローラ210によって溶着前シート15a,15bが搬送されることに伴い、溶着前シート15a,15bは連続して溶着される。
【0025】
糸ゴム20は、前後方向に平行な状態でアンビルローラ210の外周面に導入され、アンビルローラ210の外周面上において、先にアンビルローラ210の外周面に導入されたシート材15b上にその幅方向に並んで載置される。また、糸ゴム20は、アンビルローラ210の周方向に伸長された状態(伸長状態)でアンビルローラ210に導入される。本実施形態では、糸ゴム20は、自然状態の300%に伸長した伸長状態(自然状態を100%とする)でアンビルローラ210に導入される。アンビルローラ210に導入される糸ゴム20の伸張状態は、自然状態の300%に限定されず、例えば自然状態の150%〜400%の範囲内で、適宜設定することができる。
【0026】
[2.要部構成]
[2−1.ギャザーの構成]
本実施形態のギャザー15について、タミーギャザー17の一例(以下「タミーギャザー17A」という)を例にとり、図5を参照して説明する。
タミーギャザー17Aは、上述したように、シート材15a,15bに糸ゴム20を挟んだ状態において、これらシート材15a,15b及び糸ゴム20が、糸ゴム20と交差するように形成された溶着線30により相互に溶着(接合)されて構成される。溶着部(溶着線30)では、シート材15a,15b又はシート材15a,15bと糸ゴム20とが溶着される。そのため、溶着部は、その他の溶着していない箇所とは異なる外観や肌触りをした箇所として、シート材15a,15bの表面(互いに反対側を向く面)に現れ、視覚や触覚により認識することができる。
【0027】
溶着線30は、糸ゴム20の並び方向に沿って延在し、糸ゴム20の伸縮方向に複数並設されている。なお、図5に示す例では、糸ゴム20の並び方向は、紙おむつ1の長手方向Lに沿って配向される。そこで以下「並び方向L」と記載することがある。また、糸ゴム20の伸縮方向は、紙おむつ1の幅方向Wと等しい。そこで、糸ゴム20の伸縮方向を「伸縮方向W」と記載することがある。
【0028】
また、溶着線30は、第一溶着部30Aと第二溶着部30Bとを交互に連設して構成されている。また、溶着線30において、第一溶着部30Aの幅寸法iは、第二溶着部30Bの幅寸法iよりも大きい。
【0029】
シート材15a,15bが溶融して接合される溶着部は、溶着していない箇所(非溶着部)と比べて肌触りが固くなり、タミーギャザー17Aの柔軟性が低下することがある。そのため、溶着部の幅寸法をなるべく小さくすることが検討されている。一方、溶着部の幅寸法が小さすぎると、シート材15a,15b及び糸ゴム20の相互間の接合強度が不十分となり、タミーギャザー17Aの生産性が低下することがあった。また、複数の溶着部を相互に隙間をあけて配置した溶着線では、当該隙間においてシート材15aとシート材15bとの間に浮きが生じ、操業上適さない場合があることが判明した。
そこで、本発明者らは、比較的幅寸法の大きい第一溶着部30Aと、比較的幅寸法の小さい第二溶着部30Bとを交互に連設させた溶着線により、シート材15a,15b及び糸ゴム20を溶着することで、肌触りが良好であり、柔軟性に優れ、操業上トラブルが抑制されたタミーギャザー17Aを生産できることを見出した。
【0030】
また、図5に示す例では、第一溶着部30Aは、一本の糸ゴム20と交差している。また、糸ゴム20は、第一溶着部30Aの中心で第一溶着部30Aと交差している。つまり、糸ゴム20は第一溶着部30Aのみと交差し、第二溶着部30Bとは交差しない。
【0031】
比較的幅寸法の大きい第一溶着部30Aにのみ糸ゴム20を交差させ、第二溶着部30Bには糸ゴム20を交差させずに、シート材15a,15b及び糸ゴム20を接合することで、タミーギャザー17Aの破断強度を確保すると共に、柔軟性を保持して紙おむつ1のフィット性を良好なものとすることができる。
【0032】
溶着線30において、第一溶着部30Aの幅寸法iは、第二溶着部30Bの幅寸法iよりも大きければ特に限定されない。例えば、幅寸法iは0.3〜1.5mmであり、幅寸法iは0.1〜1.0mmである。また、幅寸法iと幅寸法iとの比(i/i)は、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜4である。なお、図5では、幅寸法iが0.6mmの第一溶着部30A、及び、幅寸法iが0.2mmの第二溶着部30Bを例示する。
【0033】
第一溶着部30Aの幅寸法iと、第二溶着部30Bの幅寸法iとを上記範囲に調整することで、操業上のトラブルをより抑制すると共に、接合強度、肌触り及び柔軟性のバランスに優れたタミーギャザー17Aを得ることができる。
【0034】
また、図5(b),(c)に示すように、第一溶着部30Aと第二溶着部30Bとを連設する連設点Px,Pyは、並び方向Lに沿った溶着線30の中心線CL1に対して相互に反対側に位置している。このような形状の溶着線の一例として、図5では、第一溶着部30Aが伸縮方向Wに対して所定の角度θ1に傾斜し、第二溶着部30Bが伸縮方向Wに対して所定の角度θ2に傾斜した形状の溶着線30を示す。すなわち、図5に示す溶着線30では、第一溶着部30Aと第二溶着部30Bとが、伸縮方向Wに対して所定の傾斜を繰り返しながら、ジグザグ状(三角波状)に交互に連設されている。
なお、図5では、角度θ1と角度θ2とが等しい。つまり、図5に示す例では、伸縮方向Wに対して同じ角度で正反対に傾斜した第一溶着部30Aと第二溶着部30Bとが交互に連設されている。
ここで、角度θ1とは、伸縮方向Wに平行な直線と第一溶着部30Aとが成す角のうち鋭角をいう。また、角度θ2とは、伸縮方向Wに平行な直線と第二溶着部30Bとが成す角のうち鋭角をいう。
【0035】
上記形状の溶着線30に沿って、図3に示す凸状の襞40が形成される。つまり、図5に示す例では、ジグザグ状の溶着線30に沿って凸状の襞40が形成される。このような溶着線30に沿って形成された凸状の襞40によれば、直線状の溶着線に沿って形成される凸状の襞と比較して、着用者に対する襞40の接触面積が調整され、着用者に対するフィット性、クッション性及び肌触りを向上させることができる。
【0036】
以下において、図5(c)に示す各寸法a,b,c,d及び角度θ1,θ2について説明する。なお、各寸法a,b,c,d及び角度θ1,θ2は、糸ゴム20の伸張状態において測定される。すなわち、各寸法a,b,c,d及び角度θ1,θ2は、シート材15a,15bを幅方向Wに伸張し、襞40のない状態で測定される。
また、隣接する溶着線30,30と糸ゴム20との各交差点を溶着点P1,P2とする。また、隣接する糸ゴム20,20と溶着線30との各交差点を溶着点P3,P4とする。これらの溶着点において、糸ゴム20がシート材15a,15bに溶着されている。また、P3とP4は、溶着線30の中心線CL1上に位置し、中心線CL1は伸縮方向Wに直交している。
【0037】
寸法aは第一溶着部30Aの長さ寸法である。また、寸法bは、第二溶着部30Bの長さ寸法である。寸法a,bは、シート材15a,15b及び糸ゴム20の接合強度が不十分とならない限り特に限定されない。なお、図5では、寸法aは3mmであり、寸法bは2mmである。
【0038】
寸法cは、糸ゴム20のピッチ、すなわち、並び方向Lにおいて隣接した糸ゴム20,20の相互間距離である。図5に示す例では、溶着点P1,P2,P3,P4は第一溶着部30Aの中心に位置するため、寸法cはP1(P3),P4の相互間距離と一致する。寸法cが小さすぎると、タミーギャザー17Aが固くなることがある。このような観点から、寸法cの好適な範囲は、3mm以上10mm以下である。なお、図5では、寸法cは5mmである。
【0039】
寸法dは溶着点P1,P2の幅方向Wの相互間距離である。図5に示す例では、ジグザグ状の溶着線30は幅方向Wに並設されるため、寸法dは溶着線30,30の幅方向Wの相互間距離と一致する。
溶着線30の形状、複数の溶着線30の配置パターンは、図4に示す接合装置200のアンビルローラ210に設けられた凸条の形状・配置パターンに対応している。したがって、寸法dが大きすぎると、複数の溶着線30に対応するアンビルローラ210の凸条どうしの周方向に離間する距離が大きくなるので、凸条とホーン220との間でシート材15a,15b及び糸ゴム20が加圧される箇所と、加圧されない箇所との距離が大きくなって、加圧力が一様ではなくなり、操業上トラブルを引き起こすおそれがある。また、凸条の相互間距離が適切な範囲から外れると、共振が発生してアンビルローラ210とホーン220とが振動するおそれがある。溶着線30による接合強度は、アンビルローラ210とホーン220との間の加圧力と、アンビルローラ210に入力される超音波振動の大きさとによって変動することから、寸法dが適切な範囲から外れると接合強度が不均一になることがある。また、寸法dを適切な範囲にすることで、通気性及び柔軟性のバランスを向上させることができる。上記の観点から、寸法dの好適な範囲は、3mm以上10mm以下である。なお、図5では、4mmの寸法dを例示する。
【0040】
角度θ1,θ2は特に限定されないが、角度θ1,θ2の好適な範囲は45°以上90°未満であり、より好ましくは50°以上70°以下である。
角度θ1,θ2を上記範囲とすることで、凸状の襞40の着用者に対する接触面積を調整することが容易になる。つまり、着用者に対するフィット性、クッション性及び肌触りの調整が容易になる。一方、角度θ1,θ2が小さすぎると、溶着線30が並び方向Lに対して密になり、シート材15a,15bに対する溶着部の割合が大きくなるため、肌触りが固くなると共に、柔軟性が低下することがある。したがって、フィット性、クッション性、接合強度、肌触り及び柔軟性のバランスに優れるという観点から、角度θ1,θ2は上記範囲が好ましい。なお、図5では、角度θ1,θ2は60°である。
【0041】
[2−2.製造装置の構成(アンビルローラの凸条のパターン)]
本実施形態のアンビルローラ210の凸条について、タミーギャザー17Aの製造に使用されるものを例に取り説明する。
タミーギャザー17Aの溶着線30は、本実施形態のアンビルローラ210の凸条が転写されたパターンに対応し、タミーギャザー17Aの糸ゴム20のピッチは、アンビルローラ210の外周面に供給された糸ゴム20のピッチに対応する。
【0042】
したがって、図5において、長手方向Lをアンビルローラ210の軸方向、幅方向Wをアンビルローラ210の周方向と置き換えれば、糸ゴム20のピッチは、アンビルローラ210に供給される糸ゴム20のピッチを示し、溶着線30の形状・配置は、アンビルローラ210の凸条の形状・配置を示し、糸ゴム20と溶着線30との位置関係は、アンビルローラ210の凸条と糸ゴム20との位置関係を示す。
したがって、図5(c)を参照して説明した各寸法a,b,c,d及び角度θ1,θ2も、アンビルローラ210の各種寸法の説明として置き換えることができる。
【0043】
[2−3.効果]
(1)本発明によれば、ホットメルト材を使用せずに新規なギャザー15を容易に製造することができる。
(2)比較的幅寸法の大きい第一溶着部30Aと、比較的幅寸法の小さい第二溶着部30Bとを交互に連設させた溶着線により、シート材15a,15b及び糸ゴム20を溶着することで、肌触りが良好であり、柔軟性に優れ、操業上トラブルが抑制されたギャザー15を製造することができる。
【0044】
[2−4.変形例]
溶着線30の各寸法a,b,c,d及び角度θ1,θ2は図5(c)に示すものに限定されず、各寸法a,b,c,d及び角度θ1,θ2を変更してもよい。
また、溶着線30における複数の第一溶着部30Aのそれぞれの寸法aは、互いに異なっていてもよい。同様に、溶着線30における複数の第二溶着部30Bのそれぞれの寸法bは、互いに異なっていてもよい。また、隣接する糸ゴム20,20の並び方向Lの相互間距離(寸法c)は、互いに異なっていてもよい。また、幅方向Wに並設された複数の溶着線の相互間距離(寸法d)は、互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、第一溶着部30Aにおいて交差する糸ゴム20の本数を2本以上としてもよい。
【0046】
また、図6に示すように、溶着線30として、溶着線30−1(第一溶着線)と溶着線30−2(第二溶着線)との2種類を設けてもよい。第一溶着線30−1と第二溶着線30−2とは、糸ゴム20の並び方向Lに沿った中心線CL2に対して互いに線対称であり、糸ゴム20の伸縮方向Wに交互に配置されている。
【0047】
また、上記の実施形態では、第一溶着部30A及び第二溶着部30Bの形状を長方形状(線状)としたが、第一溶着部30Aの幅寸法iが第二溶着部30Bの幅寸法iよりも大きければ、溶着部の形状は特に限定されない。例えば、第二溶着部30Bをドット状にし、破線間(第一溶着部30A間)に短線(第二溶着部30B)を加えた一点線状の溶着線としてもよい。また、一点線状の溶着線に限らず、二点鎖線や三点鎖線といった多数の短線をもつ多点鎖線状といった種々の断続形態をなす溶着線を採用してもよい。また、ジグザグ状(三角波状)の溶着線に限らず、図7に示すように正弦波状の溶着線30’や、図8に示すように矩形波状の溶着線30’’を採用してもよい。
【0048】
[3.その他]
上記の実施形態では、本発明の複合伸縮部材をタミーギャザー17に適用したが、立体ギャザー16またはセカンド立体ギャザー18にも適用でき、ギャザー以外の伸縮を必要とする箇所にも適用できる。
【0049】
上述した複合伸縮部材は、例示したパンツ型の紙おむつのほか、テープ型の紙おむつ、尿パッド、生理用ナプキン、パンティーライナーといった種々の吸収性物品に設けられるギャザーに適用可能である。
【0050】
また、複合伸縮部材に用いられる糸ゴム20に替えてまたは加えて、伸縮性のフィルム(弾性部材)を用いてもよい。この場合には、上述した糸ゴム20と同様に、フィルムの外周に低融点の被覆層が設けられる。
【符号の説明】
【0051】
1 紙おむつ
15 ギャザー(複合伸縮部材)
15a,15b シート材
16 立体ギャザー(複合伸縮部材)
17,17A タミーギャザー(複合伸縮部材)
18 セカンド立体ギャザー(複合伸縮部材)
20 糸ゴム(弾性部材)
30,30’,30’’ 溶着線
30A 第一溶着部
30B 第二溶着部
40 襞
L 長手方向(糸ゴム20の並び方向)
W 幅方向(糸ゴム20の伸縮方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8