(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.実施形態:
A−1.全体装置構成:
図1は、本発明の一実施形態としての産業用制御装置30を適用したロボット制御システム10の概略構成を示すブロック図である。ロボット制御システム10は、産業用ロボット60(以下、単に「ロボット60」と呼ぶ)を制御するためのシステムであり、後述するセンサ21での検出値に応じてロボット60を制御する。なお、本実施形態において、ロボット60は、2つのロボットからなる。ロボット制御システム10は、センサ21および産業用制御装置30に加えて、非常停止スイッチ22と、ロボットコントローラ40と、アクチュエータ50とを備える。
【0015】
センサ21は、ロボット60の動作制御に関わるパラメータの値を検知し、アナログ信号として出力する。ロボットの動作制御に関わるパラメータとしては、例えば、ロボット60が多関節型の産業用ロボットである場合には、アームや手首の位置や角度などが該当する。また、例えば、ロボット60の動作する環境の温度であったり、ロボット60が移動する場合には、かかる移動距離であったり、ロボット60による処理対象のワークを搬送する搬送路が設けられている場合には、かかる搬送路における所定位置の重量であったり、ロボット60により流体流量の調整用の弁が制御される場合には、かかる流体流量であったりしてもよい。
【0016】
非常停止スイッチ22は、ロボット60の動作を非常停止させるためのスイッチである。本実施形態では、非常停止スイッチ22は、ユーザが操作可能な押ボタンタイプのスイッチ装置である。後述するように、非常停止スイッチ22は、互い異なる回路(後述の第1回路C1および第2回路C2)に接続された2つのスイッチ装置(後述の第1スイッチ装置22aおよび第2スイッチ装置22b)を有する。これらの2つのスイッチ装置は、ロボット60を構成する2つのロボットの動作をそれぞれ非常停止させるためのスイッチである。ユーザは、非常停止スイッチ22を押下することにより、産業用ロボット60の動作を停止させることができる。
【0017】
産業用制御装置30は、センサ21と非常停止スイッチ22とロボットコントローラ40とに電気的に接続されている。産業用制御装置30は、センサ21から出力されるアナログ信号を入力し、ディジタル信号にAD変換してロボットコントローラ40に出力する。また、産業用制御装置30は、非常停止スイッチ22の動作を特定する機能と、非常停止スイッチ22を接続する2つの回路間の短絡の発生を特定する機能(以下、「短絡検出機能」と呼ぶ)とを有する。産業用制御装置30は、入力モジュール100と、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)200と、出力モジュール300とを備える。本実施形態において、入力モジュール100とプログラマブルロジックコントローラ200とは、所定のネットワークにより互いに通信可能に構成されている。同様に、プログラマブルロジックコントローラ200と出力モジュール300とは、所定のネットワークにより互いに通信可能に構成されている。かかる所定のネットワークとしては、例えば、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3規格群で規定される各種有線LAN(Local Area Network)や、IEEE802.11規格群で規定される各種無線LANを用いてもよい。また、LANに限らず、WAN(Wide Area Network)を用いてもよい。WANとしては、例えば、3G/HSPAに準拠した移動体通信、次世代モバイルWiMAX(IEEE802.16m)、次世代PHS(XGP:eXtended Global Platform)といった将来的に利用可能となる移動体通信の他、広域イーサネット(イーサネットは登録商標)、フレームリレーネットワーク、ATM(Asynchronous Transfer Mode)ネットワークを用いてもよい。また、短距離無線通信ネットワークを用いてもよい。短距離無線通信ネットワークとしては、例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、IrDAを用いたネットワークを用いてもよい。
【0018】
入力モジュール100は、センサ21から出力されるアナログ信号を入力してAD変換し、ディジタル信号(以下、「変換後ディジタル信号」とも呼ぶ)を出力する。また、入力モジュール100は、非常停止スイッチ22の操作状態、すなわち、非常停止スイッチが押されたか否かを検出して検出結果を出力する。また、入力モジュール100は、上述の短絡検出機能を有し、短絡が検出された場合には検出結果を出力する。入力モジュール100の詳細構成については、後述する。
【0019】
プログラマブルロジックコントローラ200は、入力モジュール100から出力される変換後ディジタル信号に基づき、出力モジュール300に指示信号を生成して出力する。指示信号とは、ロボット60の動作の制御内容を指示する信号を意味する。また、プログラマブルロジックコントローラ200は、入力モジュール100から非常停止スイッチ22の操作状態として押された状態であることを入力した場合には、ロボット60の動作停止を指示する指示信号を出力モジュール300に出力する。また、プログラマブルロジックコントローラ200は、入力モジュール100から短絡を検出したとの検出結果を入力した場合にも、ロボット60の動作停止を指示する指示信号を出力モジュール300に出力する。
【0020】
出力モジュール300は、プログラマブルロジックコントローラ200から出力された指示信号を、ロボットコントローラ40に出力する。
【0021】
ロボットコントローラ40は、産業用制御装置30(出力モジュール300)から出力される指示信号に応じて、アクチュエータ50を制御する。アクチュエータ50は、ロボット60の動作を実現する。例えば、ロボット60が交流モータを有する構成においては、アクチュエータ50は、かかる交流モータに電力を供給するインバータ回路として構成される。この構成においては、ロボットコントローラ40は、インバータ回路が有するスイッチング素子を駆動するための信号を出力する機能を有する。ロボットコントローラ40は、例えば、マイコンによって構成してもよい。
【0022】
A−2.産業用制御装置の詳細構成:
図2は、
図1に示す入力モジュール100の詳細構成を示すブロック図である。入力モジュール100には、非常停止スイッチ22として、第1スイッチ装置22aと第2スイッチ装置22bとが接続されている。入力モジュール100は、第1電圧供給部191と、第2電圧供給部192と、第1回路C1と、第2回路C2と、増幅指示回路140と、マイコン110とを備える。
【0023】
第1電圧供給部191は、いわゆる電源部であり、予め定められた電圧V1を供給する。換言すると、第1電圧供給部191は、第1電圧V1の直流信号を出力する。同様に、第2電圧供給部192もいわゆる電源部であり、予め定められた電圧V2を供給する。換言すると、第2電圧供給部192は、第2電圧V2の直流信号を出力する。ここで、第1電圧V1と第2電圧V2とは互いに異なる。本実施形態において、第1電圧V1は、第2電圧V2よりも大きい。例えば、電圧V1として24Vとし、電圧V2として15Vとしてもよい。なお、これとは反対に、第1電圧V1は第2電圧V2よりも小さくてもよい。
【0024】
第1回路C1は、2つの接続端子151a、151bと、第1入力回路121と、電圧増幅器130とを備える。
【0025】
2つの接続端子151a、151bには、第1スイッチ装置22aが接続されている。また、接続端子151aには、第1電圧供給部191が接続されている。また、接続端子151bには、配線181が接続されている。第1スイッチ装置22aが押下されていない場合、第1電圧供給部191と配線181とは、第1スイッチ装置22aおよび2つの接続端子151a、151bを介して導通している。これに対して、第1スイッチ装置22aが押下された場合、接続端子151aと接続端子151bとは電気的に絶縁され、第1電圧供給部191と配線181とは電気的に絶縁される。2つの接続端子151a、151bは、課題を解決するための手段における第1接続端子の下位概念に相当する。また、第1スイッチ装置22aは、課題を解決するための手段欄における第1入力デバイスの下位概念に相当する。
【0026】
第1入力回路121は、配線181と電圧増幅器130とに接続されており、配線181から入力される信号の電圧値を、マイコン110の入力に適した値に変換して出力する。例えば、第1スイッチ装置22aが押下されていない場合には、配線181から24Vの信号が入力される。第1入力回路121は、かかる24Vを3.3Vに変換して出力する。
【0027】
電圧増幅器130は、第1入力回路121と、マイコン110の端子111とに接続されている。電圧増幅器130は、第1入力回路121から入力する信号(以下、「増幅前信号」と呼ぶ)を増幅してマイコン110に出力する。電圧増幅器130は、増幅指示回路140と電気的に接続されている。電圧増幅器130は、増幅指示回路140から後述の増幅指示信号Smを受信し、増幅指示信号Smの示す増幅率で増幅前信号を増幅する。
【0028】
第2回路C2は、2つの接続端子152a、152bと、第2入力回路122とを備える。
【0029】
2つの接続端子152a、152bには、第2スイッチ装置22bが接続されている。また、接続端子152aには、第2電圧供給部192が接続されている。また、接続端子152bには、配線182が接続されている。第2スイッチ装置22bが押下されていない場合、第2電圧供給部192と配線182とは、第2スイッチ装置22bおよび2つの接続端子152a、152bを介して導通している。これに対して、第2スイッチ装置22bが押下された場合、接続端子152aと接続端子152bとは電気的に絶縁され、第2電圧供給部192と配線182とは電気的に絶縁される。2つの接続端子152a、152bは、課題を解決するための手段における第2接続端子の下位概念に相当する。また、第2スイッチ装置22bは、課題を解決するための手段欄における第2入力デバイスの下位概念に相当する。
【0030】
第2入力回路122は、第1入力回路121と同様な構成および機能を有する。具体的には、第2入力回路122は、配線182とマイコン110の端子112とに接続されており、配線182から入力される信号の電圧値を、マイコン110の入力に適した値に変換して出力する。例えば、第2スイッチ装置22bが押下されていない場合には、配線182から15Vの信号が入力される。第2入力回路122は、かかる15Vを3.3Vに変換して出力する。
【0031】
増幅指示回路140は、配線181と配線182とにそれぞれ接続されており、配線181からの入力信号(換言すると、第1回路C1からの入力信号)と、配線182からの入力信号(換言すると第2回路C2からの入力信号)とを比較して、比較結果に応じた増幅率を示す信号Sm(以下、「増幅指示信号Sm」と呼ぶ)を出力する。増幅指示回路140と電圧増幅器130とは電気的に接続されており、増幅指示信号は、電圧増幅器130に入力される。
【0032】
上述のように、第1電圧供給部191の出力する信号の第1電圧V1と、第2電圧供給部192の出力する信号の第2電圧V2とは互いに異なる。したがって、短絡が生じていない場合には、配線181から増幅指示回路140への入力信号と、配線182から増幅指示回路140への入力信号とは、互いに異なる。これに対して、第1回路C1と第2回路C2とが短絡した場合には、配線181から増幅指示回路140への入力信号と、配線182から増幅指示回路140への入力信号とは、互いに一致する。後述するように、本実施形態では、短絡発生時には、配線182から増幅指示回路140への入力信号の電圧は、より高い電圧の電圧V1に引っ張られて電圧V1となる。なお、回路構成によっては、配線182から増幅指示回路140への入力信号の電圧は電圧V2のまま、配線181から増幅指示回路140への入力信号の電圧がより低い電圧V2に引っ張られて電圧V2に変化する場合もある。増幅指示回路140は、上述の比較結果が一致しない場合と一致する場合とで異なる増幅率を示す増幅指示信号Smを出力する。具体的には、比較結果が一致しない場合、増幅率として0.3倍を示す増幅指示信号Smを出力し、一致する場合、0.9倍を示す増幅指示信号Smを出力する。したがって、例えば、第1スイッチ装置22aおよび第2スイッチ装置22bのいずれも押下されておらず、且つ、第1回路C1と第2回路C2との短絡が発生していない場合、比較結果は一致しないため、電圧増幅器130には増幅率として0.3倍を示す増幅指示信号Smが入力される。このため、電圧増幅器130は、第1入力回路121から入力する3.3Vを0.3倍に増幅し、およそ3V(
図2に示す第3電圧V3)の信号をマイコン110に出力することとなる。なお、このとき、第2回路C2(第2入力回路122)からマイコン110へは、3.3V(
図2に示す第4電圧V4)の信号が出力される。
【0033】
図3は、短絡発生時の入力モジュール100の詳細構成の一例を示すブロック図である。
図3では、第1回路C1の接続端子151bと、第2回路C2の接続端子152bとが電気的に接続されてしまい、第1回路C1と第2回路C2とが短絡している。
【0034】
この例では、配線182には、接続端子151bおよび接続端子152bを介して第1電圧供給部191から供給される第1電圧V1の信号が供給される。したがって、増幅指示回路140における比較結果は「一致する」となる。このため、増幅指示回路140は、0.9倍の増幅率を示す増幅指示信号Smを電圧増幅器130に出力し、電圧増幅器130は、第1入力回路121から入力する3.3Vの信号を、3V(
図3に示す第5電圧V5)に増幅してマイコン110に出力することとなる。なお、
図3の例では、第2入力回路122は、
図2と同様に第4電圧(3.3V)の信号をマイコン110に出力している。
【0035】
図2および
図3に示すように、マイコン110は、動作特定部101を備える。動作特定部101は、非常停止スイッチ22の操作状態、および第1回路C1と第2回路C2との短絡の発生を特定する。図示は省略されているが、マイコン110は、端子111、112から入力されるアナログ信号をディジタル信号に変換するいわゆるA/D変換を行うA/D部を備えている。動作特定部101は、端子111および端子112から入力され、A/D変換された後の信号の電圧値に基づき、非常停止スイッチ22の操作状態を特定する。また、動作特定部101は、端子111から入力され、A/D変換された後の信号の電圧値に基づき、短絡の発生を特定する。動作特定部101は、所定の周期、例えば、数マイクロ秒毎に、非常停止スイッチ22の操作状態および短絡の発生を特定する。以下、動作特定部101における操作状態および短絡発生の特定の詳細処理を説明する。
【0036】
A−3.操作状態および短絡の発生の特定:
図4は、平常時、すなわち、短絡が発生していない時のマイコン110におけるA/D変換後の信号の電圧値を示す説明図である。
図4において、横軸は時刻を示し、縦軸は電圧値を示す。
【0037】
マイコン110には、動作特定部101における操作状態および短絡発生を特定するために、予め複数の閾値電圧が設定されている。具体的には、第1閾値電圧Vth1と、第2閾値電圧Vth2と、第3閾値電圧Vth3と、第4閾値電圧Vth4とが設定されている。
【0038】
第1閾値電圧Vth1は、第1回路C1または第2回路C2がオフ、すなわち、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下され(オンされ)、第1電圧供給部191と配線181との間が遮断された状態、または、第2電圧供給部192と配線182との間が遮断された状態を判定するために用いられる。本実施形態では、第1閾値電圧Vth1は、0.5Vに設定されている。動作特定部101は、端子111または端子112から入力された信号が0V以上0.5V以下の電圧範囲内である場合に、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されたことを特定する。
【0039】
第2閾値電圧Vth2と第3閾値電圧Vth3とは、第1回路C1または第2回路C2がオン、すなわち、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されていない(オフされている)状態であり、且つ、短絡が発生していない状態であることを特定するために用いられる。本実施形態では、第2閾値電圧Vth2は0.8Vに、第3閾値電圧Vth3は1.2Vに、それぞれ設定されている。動作特定部101は、端子111または端子112から入力された信号が0.8V以上1.2V以下の電圧範囲内である場合に、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されておらず、且つ、短絡が発生していない状態であることを特定する。なお、第2閾値電圧Vth2と第1閾値電圧Vth1との間の電圧差は、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下された際と押下状態から戻る際の過渡期における電圧の変動により、動作特定部101における操作状態の特定結果が短時間の間で変動することを避けるために設けられている。
【0040】
第4閾値電圧Vth4は、短絡が発生したことを特定するために用いられる。本実施形態では、第4閾値電圧Vth4は、2.5Vに設定されている。動作特定部101は、端子111から入力された信号が2.5V以上の電圧範囲内である場合に、短絡が発生したことを特定する。
【0041】
上述のように、第1回路C1または第2回路C2がオン、すなわち、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されていない(オフされている)状態であり、且つ、短絡が発生していない状態である場合、端子111に入力される信号の電圧値は、第3電圧V3(および1V)となる。このため、
図4に示すように、端子111に入力される信号の電圧値は、第2閾値電圧Vth2以上第3閾値電圧Vth3以下の電圧範囲内となり、動作特定部101は、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されていない状態であり、且つ、短絡が発生していない状態であると特定する。
【0042】
なお、図示は省略されているが、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下された場合には、端子111または端子112に入力される信号の電圧値は0Vとなる。このため、かかる信号の電圧値は、0V以上第1閾値電圧Vth1以下の電圧範囲内となり、動作特定部101は、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下された状態であることを特定する。
【0043】
図5は、短絡が発生した場合のマイコン110におけるA/D変換後の信号の電圧値を示す説明図である。
図5において、横軸は時刻を示し、縦軸は電圧値を示す。
【0044】
図5の例では、時刻t1において、
図3に示す短絡が発生している。この場合、時刻t1よりも前における端子111に入力される信号の電圧値は、
図4に示す電圧値と同じ第3電圧V3である。したがって、時刻t1より前において、動作特定部101は、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されていない状態であり、且つ、短絡が発生していない状態であると特定する。
【0045】
時刻t1において短絡が発生すると、上述のように、端子111に入力される信号の電圧値は、3Vとなる。このため、
図5に示すように、端子111に入力される信号の電圧値は、第4閾値電圧Vth4以上の電圧範囲内となる。そして、非常停止スイッチ22の操作状態および短絡の発生を特定する次のタイミングが時刻t2に訪れると、動作特定部101は、短絡の発生を特定することとなる。上述のように、動作特定部101が非常停止スイッチ22の操作状態および短絡の発生を特定する周期は、数マイクロ秒と非常に短いため、動作特定部101は、短絡の発生を非常に短時間で検出することができる。
【0046】
ここで、短絡の発生を特定するために用いられる第4閾値電圧Vth4と、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されておらず、且つ、短絡が発生していない状態であることを特定するために用いられる閾値のうちの上限の第3閾値電圧Vth3との間に電圧差は、第1回路C1または第2回路C2に混入したノイズを検出するために用いられる。具体的には、動作特定部101は、端子111または端子112から入力される信号の電圧値が第3閾値電圧Vth3よりも大きく且つ第4閾値電圧Vth4よりも低い電圧範囲内である場合には、かかる電圧値を無視する。より具体的には、かかる電圧値に基づく非常停止スイッチ22の操作状況および短絡発生の特定を行わない。
【0047】
図6は、短絡が発生した場合のマイコン110におけるA/D変換後の信号の電圧値を示す説明図である。
図6において、横軸は時刻を示し、縦軸は電圧値を示す。
図6では、
図5に示す状況において、第1回路C1にノイズが混入した場合の電圧値の変化を示している。
【0048】
図6の例では、平常時に第1回路C1にノイズが混入し、時刻t1よりも前において、端子111に入力される信号にノイズN1が生じている。また、短絡が発生した状態においても、第1回路C1にノイズが混入し、時刻t2よりも後において、端子111に入力される信号にノイズN2が生じている。
【0049】
図6に示すように、ノイズN1が生じた場合の電圧値は、第3閾値電圧Vth3よりも大きく且つ第4閾値電圧Vth4よりも小さな電圧範囲内となる。したがって、この場合であっても、動作特定部101は、かかるノイズN1の電圧値に基づく非常停止スイッチ22の操作状況および短絡発生の特定を行わない。このため、その前のタイミングで特定された結果が維持され、動作特定部101は、第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22bが押下されていない状態であり、且つ、短絡が発生していない状態であると正しく特定できる。
【0050】
同様に、ノイズN2が生じたことにより端子111から入力される信号は、第4閾値電圧Vth4よりも小さくなる。しかしかかる電圧値は、第3閾値電圧Vth3よりも大きい。このため、動作特定部101は、かかるノイズN2の電圧値に基づく非常停止スイッチ22の操作状況および短絡発生の特定を行わない。したがって、その前のタイミングで特定された結果が維持され、動作特定部101は、短絡が発生したことを正しく特定できる。
【0051】
上述のように、本実施形態の産業用制御装置30では、ノイズが混入した場合であっても、非常停止スイッチ22の操作状況および短絡発生を精度良く特定できるように第4閾値電圧Vth4と、電圧増幅器130における増幅率とが予め設定されている。具体的には、平常時において第1回路C1にノイズが混入した場合の端子111における入力信号の電圧値を予め実験等により求め、かかる電圧値よりも高い値に第4閾値電圧Vth4が設定されている。また、短絡発生時には、かかる第4閾値電圧Vth4を超えるような電圧値となり、且つ、ノイズが混入した場合に端子111への入力信号の電圧値が第3閾値電圧Vth3よりも大きな電圧値となるように、電圧増幅器130における増幅率が設定されている。
【0052】
以上説明した実施形態の産業用制御装置30によれば、増幅前信号が増幅された場合に非常停止スイッチ22(第1スイッチ装置22aまたは第2スイッチ装置22b)の押下の有無を特定するための電圧範囲から外れた電圧値となるような増幅率を示す増幅指示信号を、増幅指示回路140における比較の結果が一致である場合に電圧増幅器130に出力するので、マイコン110の動作特定部101は、電圧増幅器130から入力される信号を受信した後、短時間で短絡を検出できる。このため、第1回路C1と第2回路C2とにそれぞれ互いに時間をずらして周期的にテスト用信号を供給してかかる信号の受信に基づき短絡発生を検出する構成に比べて、短絡検出に要する時間の長時間化を抑制できる。また、マイコン110の動作特定部101は、電圧増幅器130から入力される信号の電圧値に応じて非常停止スイッチ22の操作状況および短絡発生を特定し、且つ、電圧増幅器130は、短絡が生じた場合に、増幅指示信号Smに基づき、増幅前信号を、非常停止スイッチ22の操作状況を特定するための電圧範囲から外れた電圧値に増幅してマイコン110に出力するので、非常停止スイッチ22の操作状況を特定するための信号と、第1回路C1と第2回路C2との短絡の発生を特定するための信号とを単一の端子111で入力できる。このため、短絡検出に伴うマイコン110の空き端子数の低減を抑制できる。加えて、短絡が生じた場合には、第1回路C1の入力信号と第2回路C2の入力信号とは一致するため、増幅指示回路140における比較結果が一致である場合に、非常停止スイッチ22の操作状況を特定するための電圧範囲から外れた電圧値となるような増幅率で増幅前信号を増幅することで、マイコン110の動作特定部101において短絡を精度良く特定でき、短絡の誤検出を抑制できる。加えて、非常停止スイッチ22の操作状況を特定するための電圧範囲から外れた電圧値となるような増幅率で増幅前信号を増幅するので、増幅後の信号が非常停止スイッチ22の操作状況を示す信号であるか或いは短絡の発生を示す信号であるかを精度良く特定でき、短絡の誤検出を抑制できる。
【0053】
また、増幅指示回路140における比較の結果が一致である場合、すなわち、第1回路C1と第2回路C2との短絡が生じた場合の増幅率は、増幅前信号が増幅された場合にマイコン110の端子111に入力される信号の電圧値が、比較の結果が不一致である場合(すなわち、第1回路C1と第2回路C2との短絡が生じていない場合)の増幅率で増幅前信号を増幅した信号に対してノイズが混入した場合の電圧範囲(第3閾値電圧Vth3よりも大きく且つ第4閾値電圧Vth4よりも小さい電圧範囲)から外れた値となる増幅率であるので、短絡が生じていない場合にノイズが混入しても短絡の発生を誤って検出することを抑制できる。
【0054】
B.他の実施形態:
B−1.他の実施形態1:
上記実施形態において、プログラマブルロジックコントローラ200は、入力モジュール100から短絡を検出したとの検出結果を入力した場合には、ロボット60の動作停止を指示する指示信号を出力モジュール300に出力していたが、本発明は、これに限定されない。例えば、かかる指示信号の出力に代えて、または、かかる指示信号の出力に加えて、図示しないモニタ装置に、短絡が発生した旨を示すメッセージ等を表示させる指示信号を出力してもよい。また、例えば、図示しないスピーカーから短絡が発生した旨を示す音声を出力させるように、図示しない音声出力部に対して指示信号を出力してもよい。また、例えば、管理者のメールアドレス宛に短絡が発生した旨を示す電子メールを送信してもよい。
【0055】
B−2.他の実施形態2:
上記実施形態において、第1入力回路121および第2入力回路122を省略してもよい。かかる構成では、第1電圧供給部191および第2電圧供給部192は、互いに異なる電圧であって、マイコン110に適用可能な電圧を供給する。
【0056】
B−3.他の実施形態3:
上記実施形態では、非常停止スイッチ22に接続される回路は、第1回路C1および第2回路C2の2つの回路であったが、任意数の複数の回路であってもよい。例えば、ロボット60が3つのロボットからなり、非常停止スイッチ22が、各ロボットに対応する3つのスイッチ装置を有する構成においては、各スイッチ装置に接続される3つの回路、例えば、上記第1回路C1および第2回路C2に加えて、第3回路を産業用制御装置30(入力モジュール100)が備える構成であってもよい。かかる構成においては、第2回路C2は、第1回路C1と同様に、電圧増幅器を備える。また、かかる構成においては、入力モジュールは、第2回路C2からの入力信号と、第3回路からの入力信号とを比較して、増幅指示信号を出力する増幅指示回路を備える。
【0057】
B−4.他の実施形態4:
上記実施形態では、第1回路C1と第2回路C2との短絡が生じた場合の電圧増幅器130における増幅率は、マイコン110の端子111に入力される信号の電圧値が、短絡が生じていない場合の増幅率で増幅前信号を増幅した信号に対してノイズが混入した場合の電圧範囲(第3閾値電圧Vth3よりも大きく且つ第4閾値電圧Vth4よりも小さい電圧範囲)から外れた値となるような増幅率であったが、本発明はこれに限定されない。増幅後の信号の電圧値が、かかる電圧範囲(第3閾値電圧Vth3よりも大きく且つ第4閾値電圧Vth4よりも小さい電圧範囲)内となるような増幅率であってもよい。かかる増幅率であっても、ノイズが混入しない場合には、非常停止スイッチ22の操作状況および短絡発生を精度良く特定できる。
【0058】
B−5.他の実施形態5:
各実施形態では、短絡検出機能は、入力モジュール100が有していたが、プログラマブルロジックコントローラ200や出力モジュール300が備える構成としてもよい。また、第1回路C1および第2回路C2には、非常停止スイッチ22が接続されていたが、非常停止スイッチ22に代えてセンサが接続されてもよい。かかる構成においては、動作特定部101は、第1回路C1および第2回路C2からの入力信号に基づき、各回路C1、C2にセンサが接続されているか否かを特定すると共に、第1回路C1と第2回路C2との短絡の発生を特定できる。なお、かかる構成において、各回路C1、C2に接続されるセンサは、課題を解決するための手段における第1デバイスおよび第2デバイスの下位概念に相当する。なお、非常停止スイッチ22やセンサに限らず、産業用制御装置30に何らかの信号を入力するための任意の入力デバイスを、第1回路C1および第2回路C2に接続してもよい。また、産業用制御装置30は、ロボット60(産業用ロボット60)を制御するためのロボット制御システム10に限らず、任意の産業用設備や産業用機械を制御するために用いられてもよい。
【0059】
B−6.他の実施形態6:
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、動作特定部101を、集積回路、ディスクリート回路、またはそれらの回路を組み合わせたモジュールにより実現してもよい。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0060】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。