【実施例1】
【0010】
図1(a)は、実施例1に係る情報処理装置100の全体構成を例示するブロック図である。
図1(a)で例示するように、情報処理装置100は、入力装置10、データ処理装置20、出力装置30などを備える。データ処理装置20は、径算出部21、長さ算出部22、加工時間算出部23、データ格納部24などを備える。入力装置10は、キーボード、マウスなどのデータ入力を行うための装置である。データ処理装置20は、入力装置10に入力されたデータを用いてデータ処理を行う装置である。出力装置30は、プリンタ、ディスプレイなどであり、データ処理装置20の処理結果などを出力する。
【0011】
図1(b)は、データ処理装置20のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
図1(b)で例示するように、データ処理装置20は、CPU101、RAM102、記憶装置103、インタフェース104などを備える。これらの各機器は、バスなどによって接続されている。CPU(Central Processing Unit)101は、中央演算処理装置である。CPU101は、1以上のコアを含む。RAM(Random Access Memory)102は、CPU101が実行するプログラム、CPU101が処理するデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置103は、不揮発性記憶装置である。記憶装置103として、例えば、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD)、ハードディスクドライブに駆動されるハードディスクなどを用いることができる。インタフェース104は、他の機器などと信号の送受信を行うためのインタフェースである。CPU101が記憶装置103に記憶されている加工時間算出プログラムを実行することによって、データ処理装置20の各部が実現される。なお、これら各部は、専用の回路などのハードウェアであってもよい。
【0012】
図2は、情報処理装置100の動作を例示するフローチャートである。以下、
図1(a)および
図2を参照しつつ、情報処理装置100の動作について説明する。入力装置10は、ユーザによって入力される図面面積データ、材料データ、加工単金データなどを取得し、データ処理装置20に渡す(ステップS1)。図面面積データとは、製品の2次元組立図における各部品の面積データのことである。材料データとは、製品の材質データのことである。加工単金データとは、材料ごとに定められた加工金額のことであり、時間単位で定められている。
【0013】
図3(a)および
図3(b)は、製品の2次元組立図を例示する図である。
図3(a)は、製品の正面図である。正面図は、製品の最も代表的な面である。
図3(b)は、製品の側面図である。
図3(a)および
図3(b)で例示するように、製品は、部品A〜部品Dの4つの部品を備えている。
図3(a)および
図3(b)の例では、製品は、円柱軸の部品Dが、円盤形状の部品A、矩形板状の部品Bおよび矩形板状の部品Cを順に貫通する構造を有している。なお、各部品は、互いに分離可能な部品である。したがって、部品A〜部品Dは、互いに分離可能である。
【0014】
図3(c)は、各部品の正面図における面積(正面方向の面積)と、各部品の側面図における面積(側面方向の面積)とを例示する図である。
図3(c)の各面積は、それぞれの図において他の部品との重複部分も含む面積である。例えば、正面図における部品Aの面積は、300mm×80mm=24000mm
2である。正面図における部品Dの面積は、60mm×550mm=33000mm
2である。側面図における部品Aの面積は、150mm×150mm×3.14=70650mm
2である。これらの面積値は、人手で算出してもよく、計算機が寸法データから自動で算出してもよい。
図3(d)は、材料データおよび加工単金データを例示する図である。
図3(d)の例では、使用材料としてステンレス(SUS)が入力され、加工単金として10000円/時間が入力されている。
【0015】
次に、データ格納部24は、入力装置10から受け取った図面面積データ、材料データおよび加工単金データを格納する(ステップS2)。この場合において、データ格納部24は、
図4で例示するように、図面面積データに含まれる各部品の面積を合算し、面積合計値を格納する。面積合計値は、正面図および側面図のそれぞれにおいて、各部品の面積を足し合わせることで算出される。
【0016】
次に、径算出部21および長さ算出部22は、面積合計値を用いて、製品を等価形状に変換する。本実施例においては、径算出部21および長さ算出部22は、面積合計値を用いて、
図5(a)で例示するように、製品を等価モデルに変換する。本実施例においては、等価モデルとして等価円柱を用いる。具体的には、径算出部21は等価円柱の直径dを算出し、長さ算出部22は等価円柱の軸方向の長さLを算出する(ステップS3)。ここで、旋盤やマシニングによる加工では、加工面に刃物を接触させて削る作業を行うため、加工工具による加工時間は、加工面積にほぼ比例する。すなわち、加工時間は、部品表面積にほぼ比例することになる。したがって、製品の等価円柱の直径dおよび長さLは、製品の表面積から算出することができる。具体的には、径算出部21は、下記式(1)に従って、部品A〜部品Dの全ての構成部品の側面図の面積合計値を基に、直径dを算出する。次に、長さ算出部22は、部品A〜部品Dの全ての構成部品の正面図の面積合計値と直径dとから、長さLを算出する。具体的には、長さ算出部22は、下記式(2)に従って、部品A〜部品Dの全ての構成部品の正面図の面積合計値を直径dで除した数値を、長さLとする。
図5(b)は、算出された直径dおよび長さLを例示する図である。データ格納部24は、算出された直径dおよび長さLを格納する。
【数1】
【数2】
【0017】
次に、加工時間算出部23は、予めデータ格納部24に格納されている第1対応テーブルを参照し、ステップS3で算出した直径dおよび長さLに対応する標準加工工数(時間)を取得する(ステップS4)。
図6は、データ格納部24に予め格納されている第1対応テーブルを例示する図である。第1対応テーブルは、等価円柱の情報を格納している。例えば、
図6で例示するように、第1対応テーブルにおいて、各直径dと各長さLとが関連付けられて格納されている。加工時間算出部23は、
図7で例示するように、第1対応テーブルから、直径dおよび長さLに対応する標準加工工数を取得する。
図7の例では、長さL=201mmおよび直径d=422mmから、標準加工工数=8.5時間が取得される。
【0018】
次に、加工時間算出部23は、データ格納部24に格納されている第2対応テーブルを参照して材料データに対応する補正係数を取得し、標準加工工数(時間)と補正係数とを掛け合わせることで、実加工工数を算出する(ステップS5)。
図8(a)は、第2対応テーブルを例示する図である。
図8(a)で例示するように、各材料と補正係数とが関連付けられている。
図8(a)の例では、アルミを1とし、これに対する加工時間比率が他の材料について関連付けられている。
図8(b)で例示するように、材料SUSに対応する補正係数=3が取得され、標準加工工数=8.5と補正係数=3とを掛け合わせることで得られる実加工工数=25.5時間が算出される。
【0019】
次に、加工時間算出部23は、
図9で例示するように、実加工工数=25.5時間と単金データ=10000円/時間とを掛け合わせることで、見積り額を算出する(ステップS6)。次に、出力装置30は、ステップS5で算出した実加工工数およびステップS6で算出した見積り額を処理結果として出力する(ステップS7)。以上の処理により、情報処理装置100の動作が終了する。
【0020】
本実施例によれば、2次元組立図の情報を用いて、製品の側面方向における各部品の面積合計値を基に、製品の等価モデルの径が算出される。また、製品の正面方向における各部品の面積合計値と、等価モデルの径とから、等価モデルの長さが算出される。さらに、等価モデルの径および長さと、データ格納部24に予め格納されている等価モデルの情報とから、製品の加工時間が算出される。このような手法では、実際の加工時間との間に誤差が生じ得るものの、正面図および側面図から加工時間の概算を簡易に算出することができる。したがって、3次元CADデータなどのような詳細な設計図面が作成されていないような段階においても、見積りなどを作成できるようになる。
【0021】
ここで、正面図および側面図の定義について説明する。2枚の2次元組立図を比較した場合に、一方のみが最外形として円形を含む場合に、当該円形を含む2次元組立図を側面図とする。他方の2次元組立図を正面図とする。例えば、
図3(a)の2次元組立図と
図3(b)の2次元組立図とを比較した場合に、
図3(b)の2次元組立図のみが、最外形として円形を含んでいる。したがって、
図3(b)の2次元組立図が側面図であり、
図3(a)の2次元組立図が正面図となる。この手法によれば、等価円柱に変換する際に、最外形が円形となる2次元組立図から円柱の直径dが算出されるため、等価円柱への変換精度が向上する。
【0022】
両方とも最外形として円形を含む場合または両方とも最外形として円形を含まない場合には、矩形の最外形を用いる。
図10(a)および
図10(b)で例示するように、それぞれの2次元組立図を矩形領域に収め、当該矩形領域を縮めて最小形状を定める。矩形領域が定まれば、当該矩形領域の縦横の2軸(X軸およびY軸)方向の長さWx,Wyを求める。この縦横比Wy/Wxが1に近い方を側面図として、他方を正面図とする。
図10(c)の例では、
図10(a)が正面図であり、
図10(b)が側面図となる。この手法によれば、長さ方向を有する2次元組立図から長さLが算出されるため、等価円柱への変換精度が向上する。
【実施例2】
【0023】
実施例1では、製品を等価円柱に変換したが、他の等価モデルに変換してもよい。実施例2では、製品を等価ブロック(正四角柱)に変換する例について説明する。なお、主として、実施例1と異なる点について説明する。装置構成については実施例1と同様である。
【0024】
本実施例においては、径算出部21および長さ算出部22は、正面図および側面図の面積合計値を用いて、
図11(a)で例示するように、製品を等価ブロックに変換する。具体的には、径算出部21は等価ブロックの径として正方形面の1辺の長さSを算出し、長さ算出部22は等価ブロックの軸方向の長さLを算出する。等価円柱と同様に、等価ブロックにおける正方形面の1辺の長さSと、長さLとは、製品の表面積から算出することができる。具体的には、径算出部21は、下記式(3)に従って、部品A〜部品Dの全ての構成部品の側面図の面積合計値を、長さSに変換する。次に、長さ算出部22は、下記式(4)に従って、部品A〜部品Dの全ての構成部品の正面図の面積合計値を長さSで除した数値を、長さLとする。
図10(b)は、算出された長さSおよび長さLを例示する図である。データ格納部24は、長さSおよび長さLを格納する。
【数3】
【数4】
【0025】
次に、加工時間算出部23は、データ格納部24に格納されている第1対応テーブルを参照し、算出した長さSおよび長さLに対応する標準加工工数(時間)を取得する。例えば、
図12で例示するように、第1対応テーブルから、長さSおよび長さLに対応する標準加工工数が取得される。
図12の例では、長さL=227mmおよび長さS=374mmから、標準加工工数=9.5時間が取得される。
【0026】
次に、加工時間算出部23は、データ格納部24に格納されている第2対応テーブルを参照して材料データに対応する補正係数を取得し、標準加工工数(時間)と補正係数とを掛け合わせることで、実加工工数を算出する。例えば、
図13で例示するように、材料SUSに対応する補正係数=3が取得され、標準加工工数=9.5と補正係数=3とを掛け合わせることで得られる実加工工数=28.5時間が算出される。
【0027】
次に、加工時間算出部23は、
図14で例示するように、実加工工数=28.5時間と単金データ=10000円/時間とを掛け合わせることで、見積り額=285000円を算出する。次に、出力装置30は、算出した実加工工数および見積り額を処理結果として出力する。以上の処理により、情報処理装置100の動作が終了する。
【0028】
本実施例によれば、2次元組立図の情報を用いて、製品の側面方向における各部品の面積合計値を基に、製品の等価モデルの径が算出される。また、製品の正面方向における各部品の面積合計値と、等価モデルの径とから、等価モデルの長さが算出される。さらに、等価モデルの径および長さと、データ格納部24に予め格納されている等価モデルの情報とから、製品の加工時間が算出される。このような手法では、実際の加工時間との間に誤差が生じ得るものの、正面図および側面図から加工時間の概算を簡易に算出することができる。したがって、3次元CADデータなどのような詳細な設計図面が作成されていないような段階においても、見積りなどを作成できるようになる。
【0029】
上記各例において、径算出部21が、製品の側面方向における各部品の面積合計値を基に、前記製品の等価モデルの径を算出する第1算出部の一例として機能する。長さ算出部22が、前記製品の正面方向における前記各部品の面積合計値と、前記等価モデルの径とから、前記等価モデルの長さを算出する第2算出部の一例として機能する。加工時間算出部23が、前記等価モデルの径および長さと、格納部に予め格納されている前記等価モデルの情報とから、前記製品の加工時間を算出する第3算出部の一例として機能する。
【0030】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。