特許第6973034号(P6973034)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973034
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】歯磨剤製品
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/21 20060101AFI20211111BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20211111BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20211111BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20211111BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20211111BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   A61K8/21
   A61K8/02
   A61K8/44
   A61K8/73
   A61K8/81
   A61Q11/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-246087(P2017-246087)
(22)【出願日】2017年12月22日
(65)【公開番号】特開2018-104417(P2018-104417A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-252914(P2016-252914)
(32)【優先日】2016年12月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 和晃
(72)【発明者】
【氏名】小熊 友一
(72)【発明者】
【氏名】ピヤパコーン パッサモン
(72)【発明者】
【氏名】西海 憲
【審査官】 池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−047160(JP,A)
【文献】 特開2003−081799(JP,A)
【文献】 特開2002−234826(JP,A)
【文献】 特開2002−080333(JP,A)
【文献】 特開2005−187333(JP,A)
【文献】 Lion Corporation, Dental gel,Mintel GNPD [online],2015年03月,ID#:3055841
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ素含有化合物 フッ素イオン濃度として100〜3,000ppm
(B)ポリアクリル酸又はその塩 0.2〜3質量%
(C)カラギーナン 0.1〜0.6質量%、及び
(D)キサンタンガム 0.1〜0.6質量%
を含有し、(B)成分/(C)成分の含有質量比が1.4〜10、(B)成分/(D)成分の含有質量比が1.4〜10であり、研磨剤含有量が10質量%以下の歯磨剤組成物が、胴部変形抵抗力が0.3〜1.5N、チューブ径が27〜40mm、注出口内径が1〜3mmであるチューブ容器に充填されてなる歯磨剤製品。
【請求項2】
(A)成分がフッ化ナトリウムである請求項1記載の歯磨剤製品。
【請求項3】
(A)フッ化ナトリウムの含有量が、歯磨剤組成物中0.02〜0.66質量%である請求項2記載の歯磨剤製品。
【請求項4】
歯磨剤組成物が、さらに(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを含有する請求項1、2又は3記載の歯磨剤製品。
【請求項5】
歯磨剤組成物が、研磨剤無配合である請求項1〜4のいずれか1項記載歯磨剤製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有化合物を含む歯磨剤組成物がチューブ容器に充填された歯磨剤製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
う蝕予防に重要な再石灰化の促進成分としてはフッ素イオンが知られており、フッ素イオンを供給するフッ素含有化合物として、フッ化ナトリウムやモノフルオロリン酸ナトリウム等が歯磨剤の多くに配合されている。一方、研磨剤を含まない組成物は、歯牙及び口腔粘膜にマイルドな口腔用組成物となり、このようなマイルドな磨き心地である研磨剤を含まない、あるいは研磨剤が低含量の歯磨剤を好むユーザーも存在する。
【0003】
しかしながら、フッ素含有化合物を含み、かつ研磨剤含有量が低い、あるいは含まない組成物は、歯磨チューブに収納した際、容器の口元から剤が垂れる、容器のキャップに剤が溜まる等、使用性が悪いという課題が生じ、フッ素含有化合物の含有量が高くなると、その課題は顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−157258号公報
【特許文献2】特開平4−210908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、使用性、高温での外観保存安定性、ならびに口腔内での組成物の分散性及びフッ素滞留効果が良好な、研磨剤低含有量又は無配合の歯磨剤組成物がチューブ容器に充填された歯磨剤製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、3つの粘結剤(ポリアクリル酸又はその塩、カラギーナン、キサンタンガム)を特定の比率で配合し、特定の歯磨き容器に収納することによって、剤が垂れにくく、押し出しやすく、高温での外観保存安定性に優れ、口腔内での組成物の分散性及びフッ素滞留効果が良好なフッ素含有化合物を含有する研磨剤低含有量又は無配合の歯磨剤製品が得られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
従って、本発明は下記歯磨剤製品を提供する。
[1].(A)フッ素含有化合物、
(B)ポリアクリル酸又はその塩、
(C)カラギーナン、及び
(D)キサンタンガム
を含有し、(B)成分/(C)成分の含有質量比が1.4〜10、
(B)成分/(D)成分の含有質量比が1.4〜10であり、研磨剤含有量が10質量%以下の歯磨剤組成物が、胴部変形抵抗力が0.3〜1.5N、チューブ径が27〜40mm、注出口内径が1〜3mmであるチューブ容器に充填されてなる歯磨剤製品。
[2].(A)成分がフッ化ナトリウムである[1]記載の歯磨剤製品。
[3].(A)フッ化ナトリウムの含有量が、歯磨剤組成物中0.02〜0.66質量%である[2]記載の歯磨剤製品。
[4].歯磨剤組成物が、さらに(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを含有する[1]、[2]又は[3]記載の歯磨剤製品。
[5].歯磨剤組成物が、研磨剤無配合である[1]〜[4]のいずれかに記載の歯磨剤製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用性、高温での外観保存安定性、ならびに口腔内での組成物の分散性及びフッ素滞留効果が良好な、研磨剤低含有量又は無配合の歯磨剤組成物がチューブ容器に充填された歯磨剤製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
(I)歯磨剤組成物(以下、組成物と略す場合がある。)
[(A)成分]
(A)成分はフッ素含有化合物であり、歯面へのフッ素滞留効果を有する。フッ素含有化合物としては、例えば、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化第一スズ、フッ化アンモニウム、フッ化ストロンチウム等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも、フッ化ナトリウムが好ましい。
【0010】
(A)成分の含有量は、フッ素イオン濃度として組成物中100〜3,000ppm(質量、以下同様)が好ましく、500〜3,000ppmがより好ましく、1,100〜3,000ppmがより好ましい。特に(A)成分がフッ化ナトリウムの場合は、0.02〜0.66質量%が好ましく、0.11〜0.66質量%がより好ましく、0.24〜0.66質量%がより好ましい。0.02質量%以上にすることで、歯面へのフッ素滞留がより向上し、0.66質量%以下にすることで、組成物の垂れをより抑制することができる。
【0011】
[(B)成分]
(B)成分はポリアクリル酸又はその塩であり、組成物が垂れにくくする作用を有する。ポリアクリル酸又はその塩としては、特に限定されず、架橋型であるポリアクリル酸又はその塩を用いることもできる。例えば、東亜合成株式会社製のレオジック260H等を用いることができる。
【0012】
ポリアクリル酸又はその塩の25℃における粘度は、7,000〜10,000mPa・sが好ましい。粘度が7,000mPa・s未満では、組成物が垂れやすくなるおそれがあり、10,000mPa・sを超えると分散性が悪くなるおそれがある。なお、上記粘度の測定方法は以下の通りである。
【0013】
プロピレングリコール10gを500mLポリビーカーにはかりとり、サンプル2.50gを加えてよく分散する。得られた分散液に精製水487.5gを1度に加え、均一となるまで手でよく撹拌する。乾燥防止の蓋をし、1昼夜放置する。次に25℃恒温水槽にいれて1時間放置した後、B型粘度計で測定する(No.5ローター、測定時間2分間、20rpm)。
【0014】
(B)成分の含有量は、組成物中0.2〜3質量%が好ましく、0.45〜2質量%がより好ましく、0.6〜1.5質量%がさらに好ましい。0.2質量%以上とすることで、組成物の垂れをより抑制でき、高温での外観保存安定性がより向上する。また、3質量%以下とすることで、押し出し性がよく、口腔内分散性、高温での外観保存安定性がより向上する。
【0015】
[(C)成分]
(C)成分はカラギーナンであり、フッ素滞留効果や組成物が垂れにくくする作用を有する。カラギーナンの種類としては、κ(カッパ)−カラギーナン、ι(イオタ)−カラギーナン、λ(ラムダ)−カラギーナンが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができ、中でもι(イオタ)−カラギーナンが好ましい。
【0016】
ι(イオタ)−カラギーナンとしては、例えば、三昌株式会社製のカラギーナンCF02、CP Kelco社製のGENUVISCO type PJ−JPE、GENUGEL type CJ、κ−型としてはGENUGEL type WR−78−J、GENUGEL type WG−115等を用いることができる。
【0017】
(C)成分の含有量は、組成物中0.1〜0.6質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましく、0.2〜0.4質量%がさらに好ましい。0.1質量%以上とすることで、フッ素滞留効果がより向上し、組成物の垂れをより抑制でき、高温での外観保存安定性がより向上する。また、0.6質量%以下とすることで、押し出し性がよく、口腔内分散性、高温での外観保存安定性がより向上する。
【0018】
[(D)成分]
(D)成分はキサンタンガムであり、組成物が垂れにくくする作用を有する。キサンタンガムとしては、例えば、CPケルコ社製のモナートガムDA等を用いることができる。医薬品添加物規格2013「キサンタンガム」の項に定める方法で粘度を測定したときに1,000〜2,000mPa・sとなるものが好ましい。粘度を1,000mPa・s以上とすることで、組成物の垂れをより抑制できる。また、粘度が高すぎると、曳糸性が悪くなる場合がある。
【0019】
(D)成分の含有量は、組成物中0.1〜0.6質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましく、0.2〜0.4質量%がさらに好ましい。0.1質量%以上とすることで、組成物の垂れをより抑制できる。また、0.6質量%以下とすることで、押し出し性がよく、口腔内分散性、高温での外観保存安定性がより向上する。
【0020】
(B)成分/(C)成分で表される含有質量比は1.4〜10であり、1.5〜7が好ましく、1.7〜5がより好ましい。上記比が1.4未満では剤が垂れやすくなり、10を超えると高温での外観安定性が悪くなる。
【0021】
(B)成分/(D)成分の含有質量比は1.4〜10であり、1.5〜7が好ましく、1.7〜5が好ましい。上記比が1.4未満では剤が垂れやすくなり、10を超えると高温での外観安定性が悪くなる。
【0022】
[(E)成分]
本発明の組成物には、口腔内分散性向上の点から、(E)脂肪酸アミドプロピルベタインを配合することが好ましい。脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられ、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインとしては、例えば、EVONIK社製TEGO BETAIN CK等が挙げられる。
【0023】
(E)成分の含有量は、組成物中0.1〜3質量%が好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。0.1質量%以上とすることで、口腔内分散性がより向上し、3質量%を超えると、苦みが生じるおそれがある。
【0024】
本発明の組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて、下記のような成分を任意に配合できる。例えば、粘結剤、粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、色素、防腐剤、香料、pH調整剤、各種有効成分等が挙げられる。
【0025】
粘結剤としては、(B)ポリアクリル酸又はその塩、(C)カラギーナン、及び(D)キサンタンガム以外の成分を、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができる。具体的には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルセルロース、カチオン化セルロース等のセルロース系粘結剤、グアガム、モンモリロナイト、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、カーボポール、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイト等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を配合することができる。
【0026】
粘稠剤としては、ソルビット、キシリトール、マルチトール、ラクチトール等の糖アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール、糖アルコール還元でんぷん糖化物等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を配合することができる。粘稠剤を配合する場合、その含有量は、組成物中5〜60質量%が好ましい。
【0027】
界面活性剤としては、通常歯磨剤組成物に配合される界面活性剤を配合することができ、(E)脂肪酸アミドプロピルベタイン以外の両性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤を配合でき、1種単独で又は2種以上を適宜選択して用いることができる。界面活性剤を配合する場合、その含有量は、組成物中0.1〜4質量%の中で適宜選定される。
【0028】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペルラルチン、ソーマチン、アスパラチルフェニルアラニンメチルエステル等が挙げられる。
【0029】
色素としては、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、酸化チタン等が挙げられる。
【0030】
防腐剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類(パラオキシ安息香酸エステル)、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0031】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これらの天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアセデヒド、シトラール、プレゴン、カルビートアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができる。
【0032】
pH調整剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
なお、甘味剤、色素、防腐剤、香料、pH調整剤の含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0034】
各種有効成分としては、(A)フッ素含有化合物以外のもの、具体的には正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。なお、これら有効成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0035】
本発明の歯磨剤組成物は、研磨剤含有量が組成物中10質量%以下の低含有量であり、研磨剤を配合する場合は、5質量%以下とすることが好ましく、無配合とすることがより好ましい。研磨剤としては、無水ケイ酸等のシリカ系研磨剤、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0036】
また、本発明の歯磨剤組成物中の水分含有量は、特に制限はないが、35質量%以上であることが好ましく、より好ましくは35〜60質量%である。
【0037】
本発明の歯磨剤組成物の25℃粘度は特に限定されないが、B形粘度計(No.6ローター、測定時間3分間、20rpm)において、5〜20Pa・sの範囲が好ましい。本発明は上記成分の組み合わせと容器とで、押し出しやすく、組成物が垂れにくいという効果を得られるもので、粘度を上記範囲内にすることにより、本発明の効果が得られるものではない。
【0038】
(II)チューブ容器
本発明の歯磨剤組成物が充填される容器の材質は特に制限されず、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、アルミ等の単層又は多層の容器等が使用できる。
【0039】
容器の胴部変形抵抗力は0.3〜1.5Nであり、0.6〜1.2Nが好ましい。胴部変形抵抗力が0.3N未満であると、歯磨剤組成物が垂れやすくなる場合があり、1.5Nを超えると押し出しにくくなる場合がある。なお、胴部変形抵抗力は、収容容器を15mm幅にカットした円筒状スリーブをサンプルとし、テンシロン万能材料試験機(例えば、株式会社エー・アンド・デイ製、RTC−1250A)を用いて測定する。測定条件は、圧縮スピード:40mm/min、圧縮治具:φ10ロッド、押し込み量:チューブ径の70%、ロードセル:500Nである。
【0040】
チューブ径は27〜40mmであり、30〜37mmが好ましい。チューブ径が27mm未満であると、押し出しにくくなる場合があり、40mmを超えると歯磨剤組成物が垂れやすくなる場合がある
【0041】
注出口内径は1〜3mmであり、1.5〜2.5mmが好ましい。注出口内径が1mm未満であると押し出しにくくなる場合があり、3mmを超えると歯磨剤組成物が垂れやすくなる場合がある。
【0042】
(III)歯磨剤製品
本発明は歯磨剤組成物と、これを充填するチューブ容器とを有する歯磨剤製品であり、上記歯磨剤組成物が、上記特定のチューブ容器に充填されてなる歯磨剤製品であり、このような歯磨剤組成物と容器の組み合わせにより、使用性、高温での外観保存安定性、ならびに口腔内での組成物の分散性及びフッ素滞留効果が良好な歯磨剤製品を得ることができる。充填方法は特に限定されず、通常の方法を選択することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比は質量比である。
【0044】
[実施例、比較例]
下記表に記載された組成の歯磨剤組成物を、常法により作製した。なお、実施例で使用したポリアクリル酸ナトリウムは、粘度8,690mPa・s(B型粘度計:No.5ローター、測定時間2分間、20rpm)である。なお、詳細な測定方法は上記(B)成分の測定方法に記載した通りである。
歯磨剤組成物を表に示す容器(チューブ容器)に充填して得られた歯磨剤製品について、下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0045】
<垂れにくさ>
歯磨剤組成物60gを容器に充填し、キャップを半開状態にしたまま24時間静置し、キャップ内に溜まった組成物の量を測定し、組成物の垂れやすさとして評価した。
[評価基準]
◎:<1.0g
○:1.0〜1.5g
×:>1.5g
【0046】
<押し出しやすさ>
専門パネラー10人を用いた官能試験により評価した。上記と同様にして容器に充填した歯磨剤組成物を、歯ブラシ上に出した時(0.5g)の押し出しやすさを下記評価基準で評価した。結果を、10人の結果の平均点から下記判定基準で示す。
[評価基準]
3:容易に押し出せる
2:少し押し出しにくい
1:押し出しにくい
[判定基準]
◎:平均点が2.5点以上3.0以下
○:平均点が1.5点以上2.5点未満
×:平均点が1.0点以上1.5点未満
【0047】
<高温外観保存安定性>
上記と同様にして歯磨剤組成物を容器に充填し、60℃で1ヶ月間保存後、歯ブラシ上に出した時の歯磨剤組成物の外観を製造直後の歯磨剤組成物の外観と比較し、下記評価基準により評価した。チューブ3本について評価したうち、最も悪いサンプルの評価をもって判定した。
[評価基準]
◎:外観に変化は認められない
○:外観にほぼ変化は認められない
×:明らかな析出物が有り、外観が劣っている
【0048】
<口腔内分散性の評価方法>
専門パネラー10人を用いた官能試験により評価した。上記と同様にして容器に充填した歯磨剤組成物約0.5gを歯ブラシに出して3分間ブラッシングを行い、組成物使用中の口腔内での分散性を以下の評価基準に従って評価した。結果を、10人の結果の平均点から下記判定基準で示す。
[評価基準]
4点:非常に良い
3点:良い
2点:どちらでもない
1点:悪い
[判定基準]
◎:平均点が3.5点以上4.0点以下
○:平均点が2.5点以上3.5点未満
●:平均点が1.5点以上2.5点未満
×:平均点が1.0点以上1.5点未満
【0049】
<フッ素滞留効果>
歯磨剤組成物を精製水で4倍希釈した液をヒドロキシアパタイト(HA)ディスク(直径Φ7mm、厚さ3.5mm、PENTAX社製)に3分間作用させ、直ちに精製水で洗浄した。HAディスクを乾燥させた後、HAディスク上面を酸(0.1N HCl:0.1N NaCl=1:1(体積比)の混合溶液50μL)で2分間脱灰させ、フッ化物イオンを抽出し、溶液中に含まれるフッ化物イオン量をフッ素イオンメーター(Orion 1115000 4−Star:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)で測定した。結果を、N=6の平均値に基づき下記判定基準で示す。
[判定基準]
◎:>0.12ppm
○:0.06〜0.12ppm
×:<0.06ppm
【0050】
<歯磨剤組成物の粘度>
B型粘度計(No.6ローター、測定時間3分間、20rpm)を用いて測定した。
実施例4:8.86Pa・s
実施例1:11.75Pa・s
実施例2:10.66Pa・s
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
【表8】
【0059】
【表9】
【0060】
【表10】
【0061】
[処方例1]
下記組成の歯磨剤組成物を調製し、胴部変形抵抗力が0.9N、チューブ径が37mm、注出口内径が2mmであるチューブ容器に充填した。
組成(%)
(A)モノフルオロリン酸ナトリウム 1.1
(B)ポリアクリル酸ナトリウム 0.7
(C)ι−カラギーナン 0.3
(D)キンタンガム 0.3
(E)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 0.3
ソルビット(70%水溶液) 55
プロピレングリコール 3
キシリット 7
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.3
香料 0.5
精製水 残部
計 100.0
(B)/(C)=2.3
(B)/(D)=2.3