特許第6973059号(P6973059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6973059-ダンパ 図000002
  • 特許6973059-ダンパ 図000003
  • 特許6973059-ダンパ 図000004
  • 特許6973059-ダンパ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973059
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ダンパ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/129 20060101AFI20211111BHJP
   F16F 15/121 20060101ALI20211111BHJP
   F16F 15/123 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F16F15/129 B
   F16F15/121 A
   F16F15/123 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-252209(P2017-252209)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-116950(P2019-116950A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 務
(72)【発明者】
【氏名】柴田 守隆
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 三城
(72)【発明者】
【氏名】中垣内 聡
(72)【発明者】
【氏名】奥丸 匡生
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−097726(JP,A)
【文献】 特開2007−218347(JP,A)
【文献】 実開昭61−016431(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/129
F16F 15/121
F16F 15/123
F16F 15/139
F16F 15/133
F16F 15/134
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転中心回りに回転可能に設けられ、前記回転中心の軸方向と交差した第一プレートを有した、第一回転要素と、
前記回転中心回りに回転可能に設けられ、前記軸方向と交差し前記第一プレートよりも前記軸方向の中央位置の近くに位置された第二プレートを有した、第二回転要素と、
前記回転中心回りに回転可能に設けられ、前記回転中心と交差し前記第一プレートと前記第二プレートとの間に位置され前記回転中心を中心とした第一開口部が設けられた第三プレートを有した、第三回転要素と、
前記第一回転要素と前記第三回転要素との間に介在して前記回転中心の周方向に弾性的に伸縮する第一弾性要素と、
前記第二回転要素と前記第三回転要素との間に介在して前記回転中心の周方向に弾性的に伸縮する第二弾性要素と、
前記第一開口部を貫通し前記第一プレートおよび前記第二プレートのうち一方のプレートと一体に回転可能に構成されるとともに他方のプレートと摺動可能に構成され、外周面と、当該外周面よりも前記回転中心の径方向外方に位置され前記軸方向と交差し前記一方のプレートと面した端面と、を有した第一摺動要素と、
前記軸方向と交差し前記端面と前記一方のプレートとの間に位置された介在壁を有し、前記第一開口部の内周と前記外周面との間に介在する中間要素と、
前記介在壁と前記端面との間に介在した第一皿ばねと、
前記介在壁と前記一方のプレートとの間に介在した第二皿ばねと、
を備え、
前記第一摺動要素のうち前記第一開口部内に位置する第一部位よりも前記他方のプレートに近い第二部位の外径は、前記第一開口部の内径よりも小さい、ダンパ。
【請求項2】
前記中間要素は、前記介在壁の前記径方向外方の端部から前記軸方向に突出した筒状壁を有し、
前記筒状壁の外周が前記第一開口部の内周と面した、請求項1に記載のダンパ。
【請求項3】
前記第一皿ばねおよび前記第二皿ばねは、前記軸方向に向かうにつれて直径が拡大する形状を有するとともに、互いに同一の構成を有しており、前記軸方向に沿って互いに逆向きに前記直径が拡大する姿勢で前記軸方向に直列に配置された、請求項1または2に記載のダンパ。
【請求項4】
前記第一摺動要素は、前記第一プレートと一体に回転可能に構成されるとともに前記第二プレートと摺動可能に構成され、
前記第一プレートには第二開口部が設けられ、
前記第一摺動要素は、前記第二開口部を前記軸方向に貫通する第一貫通部と、前記第一プレートに対して前記第二プレートの反対側で前記第二開口部の内周よりも当該第二開口部の径方向の外方に張り出した第一突起と、を含む第一スナップフィット機構を有した、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のダンパ。
【請求項5】
前記第一回転要素は、前記軸方向に互いに離間したフロントプレートとリヤプレートとを有し、前記フロントプレートおよび前記リヤプレートのうち一方が前記第一プレートであり、
前記第三回転要素は、前記フロントプレートと前記リヤプレートとの間に位置され、
さらに、
前記フロントプレートと一体に回転可能に構成されるとともに前記第三回転要素と摺動可能に構成された前側第二摺動要素と、
前記リヤプレートと一体に回転可能に構成されるとともに前記第三回転要素と摺動可能に構成された後側第二摺動要素と、
前記フロントプレートと前記前側第二摺動要素との間、または前記リヤプレートと前記後側第二摺動要素との間に介在して、前記軸方向に弾性的に伸長する第三皿ばねと、
を備えた、請求項1〜3のうちいずれか一つに記載のダンパ。
【請求項6】
前記第一プレートと一体に回転可能に構成されるとともに前記第三プレートと摺動可能に構成された第二摺動要素を備え、
前記第一プレートには第三開口部が設けられ、
前記第二摺動要素は、前記第三開口部を前記軸方向に貫通する第二貫通部と、前記第一プレートに対して前記第三プレートの反対側で前記第三開口部の内周よりも当該第三開口部の径方向の外方に張り出した第二突起と、を含む第二スナップフィット機構を有した、請求項1〜4のうちいずれか一つに記載のダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第一回転要素と第二回転要素と摺動部材とを備え、当該摺動部材が第一回転要素および第二回転要素のうち一方と一体に回転するとともに他方と摺動することにより、第一回転要素と第二回転要素との相対回転において摺動抵抗を生じるダンパが、知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/036727号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のダンパは、複数のプレートの間に摺動要素が介在する構成を備えているが、複数のプレートと摺動要素との組み付けの順序が制約されると、当該制約によって組み立て作業の手間が増大したり、組み立て作業の所要時間が増大したり、といった不都合が生じる場合があった。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、例えば、組立の手間を減らすことが可能な構成を備えた新規なダンパを得ること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダンパは、回転中心回りに回転可能に設けられ、上記回転中心の軸方向と交差した第一プレートを有した、第一回転要素と、上記回転中心回りに回転可能に設けられ、上記軸方向と交差し上記第一プレートよりも上記軸方向の中央位置の近くに位置された第二プレートを有した、第二回転要素と、上記回転中心回りに回転可能に設けられ、上記回転中心と交差し上記第一プレートと上記第二プレートとの間に位置され上記回転中心を中心とした第一開口部が設けられた第三プレートを有した、第三回転要素と、上記第一回転要素と上記第三回転要素との間に介在して上記回転中心の周方向に弾性的に伸縮する第一弾性要素と、上記第二回転要素と上記第三回転要素との間に介在して上記回転中心の周方向に弾性的に伸縮する第二弾性要素と、上記第一開口部を貫通し上記第一プレートおよび上記第二プレートのうち一方のプレートと一体に回転可能に構成されるとともに他方のプレートと摺動可能に構成され、外周面と、当該外周面よりも上記回転中心の径方向外方に位置され上記軸方向と交差し上記一方のプレートと面した端面と、を有した第一摺動要素と、上記軸方向と交差し上記端面と上記一方のプレートとの間に位置された介在壁を有し、上記第一開口部の内周と上記外周面との間に介在する中間要素と、上記介在壁と上記端面との間に介在した第一皿ばねと、上記介在壁と上記一方のプレートとの間に介在した第二皿ばねと、を備え、上記第一摺動要素のうち上記第一開口部内に位置する第一部位よりも上記他方のプレートに近い第二部位の外径は、上記第一開口部の内径よりも小さい。
【0007】
上記ダンパでは、第三プレートを組み付けた後においても第一摺動要素をダンパの軸方向の中央位置に近付く方向に組み付けることが可能となる。このような構成によれば、例えば、第三プレートを組み付けた後には第一摺動要素を組み付けられない構成と比べて、組み立ての工程順の制約が減り、これにより、例えば、組み立ての手間が減ったり組み立てに要する時間が短縮されたりといった効果が得られる。また、このような構成によれば、例えば、中間要素(介在壁)によって第一皿ばねおよび第二皿ばねの傾きやずれを抑制することができるとともに、当該中間要素を第三プレートに対する第一摺動要素の径方向の位置決め部材として利用することができる。
【0008】
また、上記ダンパでは、例えば、上記中間要素は、上記介在壁の上記径方向外方の端部から上記軸方向に突出した筒状壁を有し、上記筒状壁の外周が上記第一開口部の内周と面する。このような構成によれば、例えば、筒状壁の外周面が第一開口部の内周に案内されることにより、中間要素の傾きが抑制される。よって、二つの皿ばねは第一摺動要素に対してより安定的に弾性力を与えることができる。
【0009】
また、上記ダンパでは、例えば、上記第一皿ばねおよび上記第二皿ばねは、上記軸方向に向かうにつれて直径が拡大する形状を有するとともに、互いに同一の構成を有しており、上記軸方向に沿って互いに逆向きに上記直径が拡大する姿勢で上記軸方向に直列に配置される。このような構成によれば、例えば、皿ばね一つあたりの軸方向の長さの変化量をより小さくすることができ、第一摺動要素の摩耗初期と摩耗後期とで端面と摺動面との摺動による抵抗トルクの差が大きくなるのを抑制することができる。
【0010】
また、上記ダンパでは、例えば、上記第一摺動要素は、上記第一プレートと一体に回転可能に構成されるとともに上記第二プレートと摺動可能に構成され、上記第一プレートには第二開口部が設けられ、上記第一摺動要素は、上記第二開口部を上記軸方向に貫通する第一貫通部と、上記第一プレートに対して上記第二プレートの反対側で上記第二開口部の内周よりも当該第二開口部の径方向の外方に張り出した第一突起と、を含む第一スナップフィット機構を有する。このような構成によれば、例えば、第一摺動要素と第一プレートとを比較的容易に結合することができる。
【0011】
また、上記ダンパでは、例えば、上記第一回転要素は、上記軸方向に互いに離間したフロントプレートとリヤプレートとを有し、上記フロントプレートおよび上記リヤプレートのうち一方が上記第一プレートであり、上記第三回転要素は、上記フロントプレートと上記リヤプレートとの間に位置され、さらに、上記フロントプレートと一体に回転可能に構成されるとともに上記第三回転要素と摺動可能に構成された前側第二摺動要素と、上記リヤプレートと一体に回転可能に構成されるとともに上記中間プレートと摺動可能に構成された後側第二摺動要素と、上記フロントプレートと上記前側第二摺動要素との間、または上記リヤプレートと上記後側第二摺動要素との間に介在して、上記軸方向に弾性的に伸長する第三皿ばねと、を備える。このような構成によれば、第三皿ばねの弾性的な伸長により、フロントプレートとリヤプレートとの間で、前側第二摺動要素、第三回転要素、および後側第二摺動要素とを、軸方向に位置決めすることができる。
【0012】
また、上記ダンパは、例えば、上記第一プレートと一体に回転可能に構成されるとともに上記第三プレートと摺動可能に構成された第二摺動要素を備え、上記第一プレートには第三開口部が設けられ、上記第二摺動要素は、上記第三開口部を上記軸方向に貫通する第二貫通部と、上記第一プレートに対して上記第三プレートの反対側で上記第三開口部の内周よりも当該第三開口部の径方向の外方に張り出した第二突起と、を含む第二スナップフィット機構を有する。このような構成によれば、例えば、第二摺動要素と第一プレートとを比較的容易に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態のダンパの例示的な断面図である。
図2図2は、実施形態のダンパの軸方向から見た例示的な正面図である。
図3図3は、図1のIII部の拡大図である。
図4図4は、図1のIV部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
なお、以下の説明では、便宜上、エンジン(不図示)に近い方(図1では左方)をフロントと称し、エンジンから遠い方(図1では右方)をリヤと称している。以下の説明におけるフロントおよびリヤは、車載状態における前後とは必ずしも一致しない。
【0016】
また、以下では、回転中心Axの軸方向を、単に軸方向と称し、回転中心Axの径方向を、単に径方向と称し、回転中心Axの周方向を、単に周方向と称する。
【0017】
図1は、ダンパ1の断面図である。図1に示されるように、ダンパ1は、ドライブプレート10、ドリブンプレート20、および中間プレート30を備えている。ドライブプレート10、ドリブンプレート20、および中間プレート30は、それぞれ独立して回転中心Ax回りに回転可能に設けられている。言い換えると、ドライブプレート10、ドリブンプレート20、および中間プレート30は、互いに相対回転可能である。また、ドライブプレート10、ドリブンプレート20、および中間プレート30は、例えば、鉄系材料等の金属材料で構成されている。ドライブプレート10は、第一回転要素の一例であり、ドリブンプレート20は、第二回転要素の一例であり、中間プレート30は、第三回転要素の一例である。なお、ドライブプレート10は、アウタプレートとも称され、ドリブンプレート20は、インナプレートとも称されうる。
【0018】
ドライブプレート10は、フロントプレート11と、リヤプレート12と、アウタリング13と、を有している。フロントプレート11、リヤプレート12、およびアウタリング13は、図1の下部に示される接続部材14によって一体に結合されている。接続部材14は、例えばリベットであるが、ボルトおよびナット等の他の結合具であってもよいし、シャフト等であってもよい。
【0019】
フロントプレート11は、エンジンとリヤプレート12との間に位置されている。言い換えると、リヤプレート12は、フロントプレート11に対してエンジンの反対側に位置されている。フロントプレート11およびリヤプレート12の形状は、回転中心Ax(軸方向)と交差する(直交する)板状である。
【0020】
また、アウタリング13の形状は、回転中心Ax(軸方向)と交差する(直交する)板状であり、かつ円環状である。アウタリング13は、フロントプレート11とリヤプレート12との間に挟まれている。アウタリング13の最外縁には、過大なトルクの伝達を遮断するリミッタ90が設けられている。
【0021】
ドリブンプレート20は、ハブ21と、フランジ22と、コントロールプレート23と、を有している。
【0022】
ハブ21の形状は、回転中心Axを中心とした円筒状である。
【0023】
フランジ22は、ハブ21から径方向外方に突出している。フランジ22は、ドライブプレート10のフロントプレート11とリヤプレート12との間に位置されている。フランジ22の形状は、回転中心Ax(軸方向)と交差する(直交する)板状である。
【0024】
コントロールプレート23は、第一コントロールプレート23Fと第二コントロールプレート23Rとを有している。第一コントロールプレート23Fは、エンジンと第二コントロールプレート23Rとの間に位置されている。言い換えると、第二コントロールプレート23Rは、第一コントロールプレート23Fに対してエンジンの反対側に位置されている。第一コントロールプレート23Fおよび第二コントロールプレート23Rの形状は、回転中心Ax(軸方向)と交差する(直交する)板状である。第一コントロールプレート23Fと第二コントロールプレート23Rとは、図1の上部に示される接続部材24によって一体に結合されている。ドリブンプレート20に含まれる第二コントロールプレート23Rは、第二プレートの一例であり、ドライブプレート10に含まれるリヤプレート12は、第一プレートの一例である。図1に示されるように、第二コントロールプレート23Rは、リヤプレート12よりもダンパ1の軸方向の中央位置Cに近い。
【0025】
フランジ22には、当該フランジ22を軸方向に貫通する開口部22aが設けられており、この開口部22aを接続部材24が軸方向に貫通している。接続部材24が開口部22a内で移動可能な状態、言い換えると比較的捩れ角の小さい範囲においては、フランジ22とコントロールプレート23とは相対的に回転することができる。他方、接続部材24が開口部22aの周方向の縁に当接した状態、言い換えると比較的捩れ角の大きい範囲においては、フランジ22とコントロールプレート23とは一体的に回転する。
【0026】
中間プレート30は、第一中間プレート31と、第二中間プレート32と、を有している。第一中間プレート31と第二中間プレート32とは、図1の下部に示される接続部材33によって一体に結合されている。接続部材33は、例えばリベットであるが、ボルトおよびナット等の他の結合具であってもよいし、シャフト等であってもよい。
【0027】
第一中間プレート31は、ドライブプレート10のフロントプレート11と、ドリブンプレート20の第一コントロールプレート23Fとの間に位置されている。また、第二中間プレート32は、ドライブプレート10のリヤプレート12と、ドリブンプレート20の第二コントロールプレート23Rとの間に位置されている。第一中間プレート31および第二中間プレート32の形状は、回転中心Axと交差する(直交する)板状である。
【0028】
ドリブンプレート20のハブ21の外周には、円筒状の第一摺動要素61および第三摺動要素63が設けられている。第一摺動要素61および第三摺動要素63は、いずれも、ドライブプレート10とドリブンプレート20とが相対的に回転する際にそれらの間に摺動抵抗を与える。本実施形態では、第一摺動要素61は、リヤプレート12と一体に回転可能に設けられるとともに、第二コントロールプレート23Rと摺動可能に設けられている。第一摺動要素61は、摺動要素の一例であり、リヤプレート12は、一方のプレートの一例であり、第二コントロールプレート23Rは、他方のプレートの一例である。なお、第一摺動要素61は、第二コントロールプレート23Rと一体に回転可能に設けられるとともに、リヤプレート12と摺動可能に設けられてもよい。この場合は、第二コントロールプレート23Rが一方のプレートの一例であり、リヤプレート12が他方のプレートの一例である。また、第三摺動要素63は、フロントプレート11と一体に回転可能に設けられるとともに、第一コントロールプレート23Fと摺動可能に設けられている。
【0029】
軸方向に互いに離間して配置された二つの第二摺動要素62F,62Rは、いずれも、ドライブプレート10と中間プレート30とが相対的に回転する際にそれらの間に摺動抵抗を与える。本実施形態では、前側第二摺動要素62Fはフロントプレート11(ドライブプレート10)と一体に回転し、第一中間プレート31(中間プレート30)と摺動する。後側第二摺動要素62Rは、リヤプレート12(ドライブプレート10)と一体に回転し、第二中間プレート32(中間プレート30)と摺動する。
【0030】
また、第四摺動要素64F,64Rは、いずれも、ドリブンプレート20においてフランジ22とコントロールプレート23とが相対的に回転する際にそれらの間に摺動抵抗を与える。本実施形態では、第四摺動要素64Fは第一コントロールプレート23Fと一体に回転し、フランジ22と摺動する。もう一つの第四摺動要素64Rは第二コントロールプレート23Rと一体に回転し、フランジ22と摺動する。
【0031】
第一摺動要素61、第二摺動要素62F,62R、第三摺動要素63、および第四摺動要素64F,64Rは、例えば、合成樹脂材料によって構成されている。
【0032】
図2は、ダンパ1の正面図である。ドライブプレート10は、中央部10aと、ドライブアーム10bと、周縁部10cと、を有している。中央部10aは、ドライブプレート10の径方向の内側に位置され、中央部10aの形状は、回転中心Axを中心とする円環状である。ドライブアーム10bは、中央部10aから径方向外方に向けて突出し、中央部10aと周縁部10cとの間で架け渡されている。本実施形態では、ドライブプレート10は、中央部10aから図2の左下方向に延びたドライブアーム10bと、中央部10aから図2の右上方向に延びたドライブアーム10bと、を有している。すなわち、ドライブプレート10は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた二つのドライブアーム10bを有している。言い換えると、二つのドライブアーム10bは、周方向に略180°間隔で配置されている。また、周縁部10cは、ドライブプレート10の径方向の外側に位置され、円環状に構成されている。
【0033】
ドリブンプレート20のハブ21は、ドリブンプレート20の径方向の内側に位置されている。ドリブンアーム22bは、フランジ22から径方向外方に向けて突出している。本実施形態では、ドリブンプレート20は、ハブ21から図2の左下方向に延びたドリブンアーム22bと、ハブ21から図2の右上方向に延びたドリブンアーム22bと、を有している。すなわち、ドリブンプレート20は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた二つのドリブンアーム22bを有している。言い換えると、二つのドリブンアーム22bは、周方向に略180°間隔で配置されている。ドライブアーム10bとドリブンアーム22bとは、軸方向に重なっている。
【0034】
中間プレート30は、中央部30aと、中間アーム30bと、を有している。中央部30aは、中間プレート30の径方向の内側に位置され、中央部30aの形状は、回転中心Axを中心とする円環状である。中間アーム30bは、中央部30aから径方向外方に向けて突出している。本実施形態では、中間プレート30は、中央部30aから図2の左上方向に延びた中間アーム30bと、中央部30aから図2の右下方向に延びた中間アーム30bと、を有している。すなわち、中間プレート30は、回転中心Axから径方向に互いに反対方向に延びた二つの中間アーム30bを有している。言い換えると、二つの中間アーム30bは、周方向に略180°間隔で配置されている。
【0035】
図2に示されるように、ドライブアーム10bおよびドリブンアーム22bと中間アーム30bとの間には、第一コイルスプリング41および第二コイルスプリング42が介在している。第一コイルスプリング41および第二コイルスプリング42は、それぞれ周方向(接線方向)に略沿って延びている。第一コイルスプリング41は、ドライブアーム10bおよびドリブンアーム22bに対しては図2の時計回り方向に隣接して位置されるとともに、中間アーム30bに対しては図2の反時計回り方向に隣接して位置されている。また、第二コイルスプリング42は、ドライブアーム10bおよびドリブンアーム22bに対しては図2の反時計回り方向に隣接して位置されるとともに、中間アーム30bに対しては図2の時計回り方向に隣接して位置されている。第一コイルスプリング41は、回転中心Axを挟んで互いに反対側に位置されている。すなわち、ダンパ1は、回転中心Axを挟んで反対側に位置された二つの第一コイルスプリング41を有している。言い換えると、二つの第一コイルスプリング41は、周方向に略180°間隔で配置されている。また、ダンパ1は、回転中心Axを挟んで反対側に位置された二つの第二コイルスプリング42を有している。言い換えると、二つの第二コイルスプリング42は、周方向に略180°間隔で配置されている。第一コイルスプリング41および第二コイルスプリング42は、周方向に90°間隔で交互に配置されている。第一コイルスプリング41は、第一弾性要素の一例であり、第二コイルスプリング42は、第二弾性要素の一例である。第一弾性要素および第二弾性要素は、コイルスプリングには限定されず、例えばエラストマのような他の弾性要素であってもよい。
【0036】
ダンパ1の正転方向が時計回り方向である場合、加速時には、ドライブプレート10とドリブンプレート20との相対的な捩れによって、ドライブアーム10bと中間アーム30bとが第一コイルスプリング41を弾性的に圧縮するとともに、中間アーム30bとドリブンアーム22bとが第二コイルスプリング42を弾性的に圧縮する。他方、減速時には、ドライブプレート10とドリブンプレート20との相対的な捩れによって、ドライブアーム10bと中間アーム30bとが第二コイルスプリング42を弾性的に圧縮するとともに、中間アーム30bとドリブンアーム22bとが第一コイルスプリング41を弾性的に圧縮する。加速時の捩れ状態は、ドライブプレート10がドリブンプレート20に対する中立位置(捩れていない位置、捩れ角が0である位置)から相対的に正転方向に捩れている状態であり、本明細書では、この状態をダンパ1の正捩れ状態とする。他方、減速時の捩れ状態は、ドライブプレート10がドリブンプレート20に対する中立位置から相対的に逆転方向(正転方向の反対方向)に捩れている状態であり、本明細書では、この状態をダンパ1の逆捩れ状態とする。
【0037】
第一コイルスプリング41および第二コイルスプリング42のそれぞれの長手方向(巻回軸方向、ダンパ1の周方向)の両端と、ドライブアーム10b、ドリブンアーム22b、および中間アーム30bとの間には、シート部材43が介在している。シート部材43は、リテーナとも称されうる。
【0038】
図3は、図1の一部(III部)の拡大図である。図4は、図1図3とは別の一部(IV部)の拡大図である。図3,4に示されるように、リヤプレート12の中央部には、回転中心Axを中心とした開口部12aが設けられている。第一摺動要素61の後端に設けられ軸方向に延びる貫通部61aは、当該開口部12a内に挿入され、開口部12aを軸方向に貫通している。図2に示されるように、軸方向に見て、開口部12aの周縁部には、所定角度間隔で周期的な凹凸形状が設けられており、第一摺動要素61には、例えばスプラインのような、当該凹凸形状に嵌る凹凸形状(凸部61a1および凹部61a2)が設けられている。この部分における凹凸形状の嵌合により、第一摺動要素61は、リヤプレート12と周方向に位置決めされるとともに、当該リヤプレート12と一体に回転する。リヤプレート12は、一方のプレートの一例である。
【0039】
また、図3,4に示されるように、第一摺動要素61は、二つの円環状の皿ばね81,82によってドリブンプレート20の第二コントロールプレート23Rの端面23aに弾性的に押圧されている。端面23aは、少なくとも第一摺動要素61と摺動する部分においては、周方向かつ径方向に沿って延びるとともに軸方向と直交している。端面23aと接し当該端面23aと摺動する第一摺動要素61の摺動面61eの形状は円環状である。当該摺動面61eも、周方向かつ径方向に沿って延びるとともに軸方向と直交している。二つの皿ばね81,82による押圧力が大きくなるほど、端面23aと摺動面61eとの摺動による抵抗トルクが増大する。皿ばね81,82は、例えばばね鋼のような鉄系の金属材料によって構成されうる。第二コントロールプレート23Rは、他方のプレートの一例である。皿ばね81,82は、弾性部材あるいは付勢部材とも称されうる。また、端面23aは、被押圧面とも称されうる。
【0040】
第一摺動要素61は、外周面61cと、端面61dと、を有している。外周面61cは、本実施形態では、凹部61a2において径方向内側の底面である。端面61dは、外周面61cよりも径方向外方に位置され、リヤプレート12と面している。
【0041】
二つの皿ばね81,82は、端面61dとリヤプレート12との間において、軸方向に直列に配置されている。二つの皿ばね81,82は、略同一の構成(材質、形状、大きさ等のスペック)を備えており、軸方向における同一の圧縮量について略同一の弾性反発力を生じる。二つの皿ばね81,82は、軸方向に向かうにつれて直径が徐々に拡大する円錐形状を有している。また、二つの皿ばね81,82は、軸方向に沿って互いに逆向きに直径が拡大する姿勢(反転姿勢、鏡像姿勢)で配置されている。また、本実施形態では、前側に位置される皿ばね81は、軸方向前方(図3,4の左方)に向かうにつれて直径が拡大する姿勢で配置され、後側に位置される皿ばね82は、軸方向後方(図3,4の右方)に向かうにつれて直径が拡大する姿勢で配置されている。なお、二つの皿ばね81,82の姿勢はこれとは逆でも良い。
【0042】
二つの皿ばね81,82の間には、中間要素70が介在している。中間要素70の全体的な形状は円環状である。中間要素70は、介在壁71と筒状壁72とを有している。介在壁71の形状は円環状かつ板状である。介在壁71は、二つの皿ばね81,82の間に軸方向に介在している。筒状壁72は、介在壁71の径方向外側の端部から軸方向前方に、言い換えると第二コントロールプレート23Rに近付くように、突出している。介在壁71と第一摺動要素61の端面61dとの間に位置された皿ばね81は、第一皿ばねの一例であり、介在壁71とリヤプレート12との間に位置された皿ばね82は、第二皿ばねの一例である。
【0043】
中間要素70は、筒状壁72の外周面72aが第二中間プレート32の開口部32aの内周と面し、かつ介在壁71の径方向内方の端部71a(内縁)が第一摺動要素61の外周面61cと面した状態で、組み付けられている。すなわち、中間要素70は、第二中間プレート32の開口部32aの内周と、第一摺動要素61の外周面61cとの間に、介在している。開口部32aは、第一開口部の一例である。
【0044】
また、第一摺動要素61において、第二中間プレート32の開口部32a内に位置する第一部位61fよりも第二コントロールプレート23Rに近い第二部位61gの外径Do(最大外径)は、開口部32aの内径Diおよび筒状壁72の内径よりも小さい。
【0045】
また、図4に示されるように、リヤプレート12には、開口部12bが設けられている。後側第二摺動要素62Rの後端に設けられ軸方向に延びる貫通部62aは、当該開口部12b内に挿入され、開口部12bを軸方向に貫通している。
【0046】
皿ばね83は、第二摺動要素62Rとリヤプレート12との間に介在し、第二摺動要素62Rを中間プレート30の第二中間プレート32に向けて軸方向前方に弾性的に押圧している。また、皿ばね84は、第四摺動要素64Rと第二コントロールプレート23Rとの間に介在し、第四摺動要素64Rをドリブンプレート20のフランジ22に向けて軸方向前方に弾性的に押圧している。皿ばね83,84は、例えばばね鋼のような鉄系の金属材料によって構成されうる。
【0047】
また、図1に示されるように、ダンパ1にあっては、軸方向に前側から、フロントプレート11、第二摺動要素62F、中間プレート30、第二摺動要素62R、皿ばね83、およびリヤプレート12が、この順に並んでいる。皿ばね83は、第二摺動要素62Rとリヤプレート12との間に介在し、これら第二摺動要素62Rおよびリヤプレート12に対して、軸方向に互いに離間する方向に付勢力(圧縮反力、弾性反発力)を与えている。皿ばね83は、第三皿ばねの一例である。
【0048】
図3に示されるように、貫通部61aの軸方向の先端には、リヤプレート12に対して第二コントロールプレート23Rとは反対側で、開口部12aよりも当該開口部12aの径方向外方に張り出した爪61hが設けられている。爪61hは、第一摺動要素61とリヤプレート12とが軸方向に離間するのを抑制する。爪61hには、軸方向に先端から離れるにつれて当該開口部12aの径方向外方に向かう傾斜面が設けられており、これにより、爪61hおよび貫通部61aはより容易にあるいはより円滑に挿入されうる。開口部12aは、第二開口部の一例であり、貫通部61aは、第一貫通部の一例であり、爪61hは、第一突起の一例である。
【0049】
貫通部61aと爪61hとは、第一スナップフィット機構61sを構成している。すなわち、ダンパ1の組み立て工程において、貫通部61aが開口部12aに、前側から、言い換えると第二コントロールプレート23R側(図3では左側)から挿入された場合、爪61hが開口部12aの外周縁から当該開口部12aの径方向内方に押圧されることにより、貫通部61aは当該開口部12aの径方向内方に向けて弾性変形しながら、開口部12aを貫通する。爪61hが開口部12aを貫通した時点で、開口部12aの外周から貫通部61aへの当該開口部12aの径方向内方への押圧力が解除され、これに伴い、弾性変形した状態が解除され、爪61hは、開口部12aよりも当該開口部12aの径方向外方に張り出した状態(装着状態、抜け止め状態)となる。
【0050】
図4に示されるように、貫通部62aの軸方向の先端には、リヤプレート12に対して第二コントロールプレート23Rとは反対側で、開口部12bよりも当該開口部12bの径方向外方に張り出した爪62bが設けられている。爪62bは、後側第二摺動要素62Rとリヤプレート12とが軸方向に離間するのを抑制する。爪62bには、軸方向に先端から離れるにつれて当該開口部12bの径方向外方に向かう傾斜面が設けられており、これにより、爪62bおよび貫通部62aはより容易にあるいはより円滑に挿入されうる。開口部12bは、第三開口部の一例であり、貫通部62aは、第二貫通部の一例であり、爪62bは、第二突起の一例である。
【0051】
貫通部62aと爪62bとは、第二スナップフィット機構62sを構成している。すなわち、ダンパ1の組み立て工程において、貫通部62aが開口部12bに、前側から、言い換えると第二コントロールプレート23R側(図4では左側)から挿入された場合、爪62bが開口部12bの外周縁から当該開口部12bの径方向内方に押圧されることにより、貫通部62aは当該開口部12bの径方向内方に向けて弾性変形しながら、開口部12bを貫通する。爪62bが開口部12bを貫通した時点で、開口部12bの外周から貫通部62aへの当該開口部12bの径方向内方への押圧力が解除され、これに伴い、弾性変形した状態が解除され、爪62bは、開口部12bよりも当該開口部12bの径方向外方に張り出した状態(装着状態、抜け止め状態)となる。
【0052】
図3,4に示される範囲におけるダンパ1の組み立てに際しては、例えば、まず、リヤプレート12に、図3に示される皿ばね82、中間要素70、皿ばね81、および第一摺動要素61が組み付けられるとともに、図4に示される皿ばね83、および後側第二摺動要素62Rが組み付けられることによって第一サブアセンブリが構成される。また、ドリブンプレート20に、図1に示される第四摺動要素64F,64R、皿ばね84(図3)、フランジ22、コントロールプレート23、接続部材24、第一中間プレート31、第二中間プレート32、および接続部材33が組み付けられることにより、第二サブアセンブリが構成される。その後、フロントプレート11に、第二コイルスプリング42等が配置されるとともに、上記第一サブアセンブリおよび上記第二サブアセンブリが組み付けられることにより、ダンパ1が構成される。
【0053】
上記第一サブアセンブリの組み立てにおいて、図3に示される第一摺動要素61の貫通部61aと爪61hとを含む第一スナップフィット機構61sがリヤプレート12の開口部12aに装着されるとともに、図4に示される第二摺動要素62の貫通部62aと爪62bとを含む第二スナップフィット機構62sがリヤプレート12の開口部12bに装着される。
【0054】
このような構成において、ドライブプレート10とドリブンプレート20(コントロールプレート23)との相対回転による第一摺動要素61の摺動面61eの摩耗が進展すると、端面61dとリヤプレート12との間の隙間が大きくなる。これにより、第一摺動要素61は、当該隙間に配置された二つの皿ばね81,82によって弾性的に押圧されることにより、軸方向前方(図3,4の左方)に移動する。この際、中間要素70の筒状壁72は、第二中間プレート32の開口部32aの内周に案内された状態で、摺動面61eの摩耗の進展に伴って徐々に、軸方向前方(図3,4の左方)に移動する。
【0055】
皿ばね83は、軸方向に弾性的に伸長する(突っ張る)。皿ばね83は、後側第二摺動要素62Rをリヤプレート12から離間するように前方に弾性的に押圧し(付勢し)、これにより、中間プレート30、および前側第二摺動要素62Fが、リヤプレート12と結合されたフロントプレート11に押圧される。よって、前側第二摺動要素62F、中間プレート30、および後側第二摺動要素62Rは、フロントプレート11とリヤプレート12との間で前方に寄せられた状態で、軸方向に位置決めされる。
【0056】
以上、説明したように、本実施形態では、第一摺動要素61(摺動要素)の第二部位61gの外径Doは、第二中間プレート32(第三プレート)の開口部32aの内径Diよりも小さい。このような構成によれば、ダンパ1の組み立てにおいて、ダンパ1の組立途中のサブアセンブリに対して、第二コントロールプレート23R(第二プレート)を方向Dに近付けて組み付け、さらに第二中間プレート32を方向Dに近付けて組み付けた後に、第一摺動要素61を方向Dに近付けて組み付けることができる。方向Dは、中央位置Cに近付く方向と言うことができる。ここで、仮に、第二部位61gの外径Doが開口部32aの内径Di以上である場合にあっては、第一摺動要素61を第二中間プレート32よりも後に組み付けることができない分、部品の組み立ての順序が制限されてしまう。特に、本実施形態のように、第一摺動要素61とリヤプレート12(第一プレート)とが周方向に位置決めされる構成にあっては、第二中間プレート32を組み付けた後に第一摺動要素61を回転させてリヤプレート12と周方向に位置決めする(位相を調整する)という作業が、困難になってしまう。この点、本実施形態によれば、第二中間プレート32を組み付けた後においても第一摺動要素61を組み付けることが可能となるため、組み立ての工程順の制約が減り、これにより、例えば、組み立ての手間が減ったり組み立てに要する時間が短縮されたりといった効果が得られる。
【0057】
また、本実施形態では、軸方向に直列に配置された皿ばね81(第一皿ばね)と皿ばね82(第二皿ばね)との間に介在する介在壁71を有した中間要素70が、第二中間プレート32(第三プレート)の開口部32aの内周と第一摺動要素61の外周面61cとの間に介在している。このような構成によれば、例えば、介在壁71によって二つの皿ばね81,82の傾きやずれを抑制することができるとともに、中間要素70を第二中間プレート32に対する第一摺動要素61の径方向の位置決め部材として利用することができる。よって、二つの皿ばね81,82の傾きやずれの抑制と、第二中間プレート32に対する第一摺動要素61の径方向の位置決めとが、それぞれ別の部材によって実現される構成と比べて、ダンパ1の構成がより簡素化されうる。なお、中間要素70による径方向の位置決めにより、ハブ21と第一摺動要素61との間には、隙間g(図3,4参照)が生じる。
【0058】
また、本実施形態では、中間要素70は、介在壁71の径方向外方の端部から軸方向に突出した筒状壁72を有し、筒状壁72の外周面72aが開口部32aの内周と面している。このような構成によれば、例えば、筒状壁72の外周面72aが開口部32aの内周に案内されることにより、中間要素70の傾きが抑制され、二つの皿ばね81,82は第一摺動要素61に対してより安定的に弾性力を与えることができる。なお、筒状壁72の突出方向は、第二コントロールプレート23Rに近付く方向には限定されず、摩耗の進展による第一摺動要素61の軸方向の移動範囲において筒状壁72の外周面72aが開口部32aの内周と面することを条件として、第二コントロールプレート23Rから離れる方向であってもよいし、当該近付く方向および当該離れる方向の両方であってもよい。
【0059】
また、上述したように、摺動面61eの摩耗が進展すると、第一摺動要素61の軸方向の長さが短くなる。すると、二つの皿ばね81,82によって押されることにより、第一摺動要素61の端面61dは、摺動面61eと摺動する端面23aに近付き、これに伴い、二つの皿ばね81,82が軸方向に弾性的に伸び、中間要素70が端面23aに近付く。ここで、上述したように、本実施形態では、中間要素70は、軸方向に延びた筒状壁72を有しているため、軸方向における第一摺動要素61(端面61d)および中間要素70のより長い移動範囲において、筒状壁72の外周面72aと開口部32aの内周とが面した状態、すなわち、開口部32aによって中間要素70が案内される状態が、維持される。したがって、このような構成によれば、例えば、第一摺動要素61の経時的な軸方向の摩耗量をより大きく設定することができ、ダンパ1において第一摺動要素61による所期の抵抗トルクが得られる期間(寿命)をより長くすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、二つの皿ばね81,82は、略同一の構成を有しており、軸方向に沿って互いに逆向きに直径が拡大する姿勢で軸方向に直列に配置されている。一般に、皿ばねの軸方向の長さ(弾性変形量)に対する弾性的な押圧力(付勢力、反発力)の変化率(傾き、微分)は、皿ばねの軸方向の長さによって変化する。よって、仮に、第一摺動要素61の摩耗の進展に伴って皿ばねの軸方向の長さがより大きく変化する構成である場合、摩耗初期と摩耗後期とで第一摺動要素61の摺動面61eと第二コントロールプレート23R(第二プレート)の端面23aとの摺動による抵抗トルクの差が大きくなり、より長い期間に亘って所期の減衰性能を得るのが難しくなる。この点、本実施形態によれば、略同一の構成(スペック)を有した二つの皿ばね81,82が軸方向に直列に配置されている。よって、例えば、一つの皿ばねが設けられた場合に比べて、皿ばね一つあたりの軸方向の長さの変化量をより小さくすることができ、第一摺動要素61の摩耗初期と摩耗後期とで端面23aと摺動面61eとの摺動による抵抗トルクの差が大きくなるのを抑制することができる。さらに、本実施形態では、二つの皿ばね81,82は、軸方向に沿って互いに逆向きに直径が拡大する姿勢で配置されているため、中間要素70の介在壁71の略同じ位置に軸方向に沿った逆向きの弾性力を与えることができる。このような構成によれば、例えば、二つの皿ばね81,82から介在壁71の互いに異なる位置(離れた位置)に逆向きの弾性力が与えられる場合に比べて、介在壁71の倒れや変形を抑制することができ、ひいては、二つの皿ばね81,82は第一摺動要素61に対してより安定的に弾性力を与えることができる。また、二つの皿ばね81,82の構成が互いに異なる場合にあっては、摩耗の促進に伴っていずれか一方の皿ばねの付勢力がより大きく変化することになるため、二つの皿ばね81,82の構成は略同じである方が好ましい。
【0061】
また、本実施形態では、第一摺動要素61は、リヤプレート12(第一プレート)の開口部12a(第二開口部)を軸方向に貫通する貫通部61a(第一貫通部)と、リヤプレート12に対して第二コントロールプレート23R(第二プレート)の反対側で開口部12aの内周よりも当該開口部12aの径方向の外方に張り出した爪61h(第一突起)と、を含む第一スナップフィット機構61sを有する。このような構成によれば、例えば、第一摺動要素61とリヤプレート12とを比較的容易に結合することができる。
【0062】
また、本実施形態では、リヤプレート12と後側第二摺動要素62Rとの間に介在して、軸方向に弾性的に伸長する皿ばね83(第三皿ばね)、が設けられている。このような構成によれば、例えば、皿ばね83の弾性的な伸長により、フロントプレート11とリヤプレート12との間で、前側第二摺動要素62F、中間プレート30(第三回転要素)、および後側第二摺動要素62Rとを、軸方向に位置決めすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、後側第二摺動要素62R(第二摺動要素)は、リヤプレート12(第一プレート)の開口部12b(第三開口部)を軸方向に貫通する貫通部62a(第二貫通部)と、リヤプレート12に対して第二中間プレート32(第三プレート)の反対側で開口部12bの内周よりも当該開口部12bの径方向の外方に張り出した爪61b(第二突起)と、を含む第二スナップフィット機構62sを有する。このような構成によれば、例えば、後側第二摺動要素62Rとリヤプレート12とを比較的容易に結合することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各例の構成や形状は、部分的に入れ替えて実施することも可能である。また、各構成や形状等のスペック(構造や、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、高さ、数、配置、位置等)は、適宜に変更して実施することができる。
【0065】
例えば、一方のプレートが第一プレートで、他方のプレートが第二プレートであってもよい。また、第三皿ばねは、リヤプレートと後側第二摺動要素との間に介在してもよい。また、第一突起および第二突起が張り出す方向は、上記実施形態の例には限定されない。
【符号の説明】
【0066】
1…ダンパ、10…ドライブプレート(第一回転要素)、11…フロントプレート、12…リヤプレート(第一プレート)、12a…開口部(第二開口部、内周)、12b…開口部(第三開口部、内周)、20…ドリブンプレート(第二回転要素)、23R…第二コントロールプレート(第二プレート)、30…中間プレート(第三回転要素)、32…第二中間プレート(第三プレート)、32a…開口部(第一開口部、内周)、41…第一コイルスプリング(第一弾性要素)、42…第二コイルスプリング(第二弾性要素)、61…第一摺動要素、61a…貫通部(第一貫通部)、61c…外周面、61d…端面、61f…第一部位、61g…第二部位、61h…爪(第一突起)、61s…第一スナップフィット機構、62F…前側第二摺動要素(第二摺動要素)、62R…後側第二摺動要素(第二摺動要素)、62a…貫通部(第二貫通部)、62b…爪(第二突起)、62s…第二スナップフィット機構、70…中間要素、71…介在壁、72…筒状壁、81…皿ばね(第一皿ばね)、82…皿ばね(第二皿ばね)、Ax…回転中心、C…中央位置、Di…内径、Do…外径。
図1
図2
図3
図4