特許第6973066号(P6973066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973066
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】化学蓄熱反応器
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   F28D20/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-253898(P2017-253898)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-120430(P2019-120430A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】望月 美代
(72)【発明者】
【氏名】山内 崇史
(72)【発明者】
【氏名】金子 貴範
(72)【発明者】
【氏名】石原 章博
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−142401(JP,A)
【文献】 特開昭62−213690(JP,A)
【文献】 特開2010−169297(JP,A)
【文献】 米国特許第04402915(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応媒体と結合することで発熱し、反応媒体が脱離して蓄熱する蓄熱材と、
前記蓄熱材の外面を覆い、前記蓄熱材の通過を制限し、前記反応媒体は通過する微小孔が形成された蓄熱材拘束カバーと、
前記蓄熱材拘束カバーで覆われた前記蓄熱材を収容する容器と、
有し、
前記蓄熱材拘束カバーで覆われた前記蓄熱材を複数備え、
一方の前記蓄熱材拘束カバーと他方の前記蓄熱材拘束カバーとの間に空間が形成され、前記空間が前記反応媒体が通過する反応媒体流路とされており、
前記蓄熱材拘束カバーは、一部が前記容器の内面に接触しており、他の一部が隣接する他の前記蓄熱材を覆う前記蓄熱材拘束カバーに接触している、
化学蓄熱反応器。
【請求項2】
棒状に形成された前記蓄熱材と、
前記蓄熱材の外周面を覆う筒状に形成された前記蓄熱材拘束カバーと、
を有する請求項1に記載の化学蓄熱反応器。
【請求項3】
前記蓄熱材は、円柱状に形成され、
前記蓄熱材拘束カバーは、円筒状に形成されている、
請求項2に記載の化学蓄熱反応器。
【請求項4】
前記蓄熱材拘束カバーの両端部の開口部分は、前記容器の壁面に接触して塞がれている、
請求項2または請求項3に記載の化学蓄熱反応器。
【請求項5】
前記容器には、内外を連通可能とする連通部が設けられている、
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応によって蓄熱する化学蓄熱反応器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の化学蓄熱反応器では、枠部の内部に蓄熱材を収容した蓄熱材層、フィルター、反応媒体拡散層、及び熱交換部が積層されることで化学蓄熱反応器の積層体が形成されており、その積層体が複数個積層されて一体化された積層ユニットが容器内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−126293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器は、発熱源となる積層ユニットが容器内に収容されているため大型である。
また、蓄熱材を発熱させる際に、蓄熱材に水分を付与すると、蓄熱材が膨張する。蓄熱材に積層された反応媒体拡散層、及び熱交換部が、蓄熱材の膨張圧で変形しないように、積層ユニットは、積層方向の両側に配置された一対のエンドプレート、及び一対のエンドプレートを連結するボルトとナットによって拘束されている。
エンドプレートは、蓄熱材の膨張圧を受けて曲げ変形しないように、厚い金属板で形成する必要があり、重量がある。
【0005】
このように、特許文献1に記載の化学蓄熱反応器は、全体が大型で、かつ厚くて重量のあるエンドプレート部材を用いて積層ユニットを拘束しているため、オフサイト用の熱源として使用する場合においては、移動するときの重量があり、高蓄熱密度で、かつ軽量な化学蓄熱反応器が望まれていた。
【0006】
本願発明の課題は、高蓄熱密度で、かつ軽量な化学蓄熱反応器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の化学蓄熱反応器は、反応媒体と結合することで発熱し、反応媒体が脱離して蓄熱する蓄熱材と、前記蓄熱材の外面を覆い、前記蓄熱材の通過を制限し、前記反応媒体は通過する微小孔が形成された蓄熱材拘束カバーと、前記蓄熱材拘束カバーで覆われた前記蓄熱材を収容する容器と、を有し、前記蓄熱材拘束カバーで覆われた前記蓄熱材を複数備え、一方の前記蓄熱材拘束カバーと他方の前記蓄熱材拘束カバーとの間に空間が形成され、前記空間が前記反応媒体が通過する反応媒体流路とされており、前記蓄熱材拘束カバーは、一部が前記容器の内面に接触しており、他の一部が隣接する他の前記蓄熱材を覆う前記蓄熱材拘束カバーに接触している
【0008】
請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、容器の内部に反応媒体を流すと、反応媒体が、蓄熱材拘束カバーの微小孔を通過して蓄熱材と結合し、蓄熱材が放熱する。これにより、容器の温度が上がり、化学蓄熱反応器を熱源として利用することができる。
【0009】
蓄熱材が反応媒体と結合すると、発熱すると共に膨張しようとする。しかしながら、蓄熱材は、外面を覆う蓄熱材拘束カバーで拘束されているので、膨張が抑えられる。即ち、容器は、蓄熱材の膨張力を受け無くなるため、容器を構成する部材の厚さを薄くすることができる。
【0010】
請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、従来の化学蓄熱反応器に必要とされていた反応媒体拡散層、熱交換部、及びエンドプレート等の部材が無く、発熱源として必要な最小限の部材で構成することができ、かつ、容器の構成する部材の厚さを薄くできるので、高蓄熱密度で、かつ軽量な化学蓄熱反応器が得られる。なお、蓄熱密度とは、化学蓄熱反応器の内容積に占める蓄熱材の蓄熱量である。
【0011】
なお、蓄熱材に蓄熱を行う場合には、蓄熱材を加熱して反応媒体を脱離させることで蓄熱を行うことができる。
請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、容器の内部に蓄熱材拘束カバーで覆われた蓄熱材が複数備えられているが、蓄熱材拘束カバーの間に空間が形成され、この空間が反応媒体が通過する反応媒体流路となっているため、反応媒体流路を介して各々の蓄熱材に反応媒体を供給することができる。請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、蓄熱材拘束カバーの間の空間が反応媒体流路となるので、反応媒体流路を形成するための部材を別途必要とせず、化学蓄熱反応器の軽量化、及び小型化を図ることができる。
また、請求項1に記載の化学蓄熱反応器では、蓄熱材拘束カバーの一部を容器の内面に接触させているため、蓄熱材拘束カバーの一部を容器の内面に接触させない場合に比較して、蓄熱材の熱を効率的に容器に伝達することができ、容器を効率的に加熱することができる。また、蓄熱材拘束カバーの他の一部が、隣接する他の蓄熱材を覆う蓄熱材拘束カバーに接触しているため、容器の内面側から離れた箇所に配置されている蓄熱材の熱を、蓄熱材拘束カバー、及び蓄熱材を介して容器に伝達することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の化学蓄熱反応器において、棒状に形成された前記蓄熱材と、前記蓄熱材の外周面を覆う筒状に形成された前記蓄熱材拘束カバーと、を有する。
【0013】
請求項2に記載の化学蓄熱反応器では、棒状に形成された蓄熱材の外周面が蓄熱材拘束カバーによって覆われている。このため、径方向外側に膨張しようとする蓄熱材を蓄熱材拘束カバーが拘束し、蓄熱材の径方向の膨張を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の化学蓄熱反応器において、前記蓄熱材は、円柱状に形成され、前記蓄熱材拘束カバーは、円筒状に形成されている。
【0015】
請求項3に記載の化学蓄熱反応器では、蓄熱材が円柱状に形成され、蓄熱材拘束カバーが円筒状に形成されているので、円柱状に形成された蓄熱材の膨張力が増大しても、蓄熱材は、初期の円柱形状(断面円形)を保つことができ、状蓄熱材拘束カバーは、初期の円筒形状(断面円形)を保つことができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の化学蓄熱反応器において、前記蓄熱材拘束カバーの両端部の開口部分は、前記容器の壁面に接触して塞がれている。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の化学蓄熱反応器において、前記容器には、内外を連通可能とする連通部が設けられている。
【0021】
請求項5に記載の化学蓄熱反応器では、連通部を介して反応媒体の出入を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高蓄熱密度で、かつ軽量な化学蓄熱反応器が得られる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る化学蓄熱反応器を示す斜視図である。
図2図1に示す化学蓄熱反応器の2−2線断面図である。
図3】(A)は蓄熱体を示す斜視図であり、(B)は蓄熱体の端面を示す側面図である。
図4図1に示す化学蓄熱反応器の4−4線断面図である。
図5図1に示す化学蓄熱反応器の5−5線断面図である。
図6】蓄熱材に蓄熱を行う際の化学蓄熱反応器を示す斜視図である。
図7】他の実施形態に係る化学蓄熱反応器を示す断面図である。
図8】更に他の実施形態に係る化学蓄熱反応器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図5にしたがって、本発明の一実施形態に係る化学蓄熱反応器10を説明する。なお、図中に示す矢印Hは装置上下方向(鉛直方向、積層方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0025】
(化学蓄熱反応器)
化学蓄熱反応器10は、図1、2、4に示す構造の反応容器12を備え、反応容器12の内部に図3に示す蓄熱体50が複数収容されている。
【0026】
(反応容器)
図1に示すように、反応容器12は、箱状に形成されており、矩形の底板14、底板14の各辺から立ち上がる側壁16、18、20、22、矩形の天板24とを備えている。
【0027】
反応容器12の内部は、平面視でコ字状に連結された隔壁26、28、30によって、蓄熱体50を収容する平面視で矩形の蓄熱体収容室32、及び、反応媒体としての蒸気が流れる平面視でコ字状の蒸気流路34が区画されている。

底板14、側壁16、18、20、22、天板24、及び隔壁26、28、30は、ステンレススチール等の金属板で形成されており、互いに溶接、またはロウ付けにて接合されている。
【0028】
図1、2、4、5に示すように、隔壁26、30には、蓄熱体収容室32と蒸気流路34との間で蒸気を出入させるための孔36が複数形成されている。
【0029】
反応容器12の正面に位置する側壁16には、反応容器12の内外へ蒸気を出入させるための配管38が接続されており、配管38の端部には、開閉弁40が取り付けられている。なお、配管38を取り除き、開閉弁40を側壁16に直接取り付けてもよい。
【0030】
本実施形態の化学蓄熱反応器10は、以下に説明する蒸発凝縮器42に接続されることで水蒸気が供給されるようになっている。
【0031】
(蒸発凝縮器)
図1に示すように、開閉弁40には、蒸発凝縮器42に接続される連通路43の端部が、着脱可能に接続される。蒸発凝縮器42は、貯留した水を蒸発させて化学蓄熱反応器10に供給する(水蒸気Wを生成する)蒸発部、化学蓄熱反応器10から受け取った水蒸気Wを凝縮する凝縮部、及び水蒸気Wが凝縮された水を貯留する貯留部、としての各機能を備えている。
【0032】
また、蒸発凝縮器42は、内部に水が貯留される容器44を備えており、この容器44内には、水蒸気Wを凝縮する、又は水を蒸発するのに用いる熱媒流路46の一部が配置されている。さらに、熱媒流路46は、容器44内における少なくとも気相部44Aを含む部分で熱交換を行うように配置されている。そして、凝縮時には低温媒体、蒸発時には中温媒体が、熱媒流路46を流れるようになっている。
【0033】
なお、蒸発凝縮器42と化学蓄熱反応器10とを連通させるための連通路43は、蒸発凝縮器42と化学蓄熱反応器10との連通、非連通を切り替えるための開閉弁48を備えている。
【0034】
(蓄熱成形体の構成)
図3に示すように、本実施形態の蓄熱体50は、円柱状に形成された蓄熱成形体54と、蓄熱成形体54の外周を覆う円筒状の蓄熱材拘束カバー52とを含んで構成されている。
蓄熱成形体54には、一例として、アルカリ土類金属の酸化物の1つである酸化カルシウム(CaO:蓄熱材の一例)の成形体が用いられている。この成形体は、例えば、酸化カルシウム粉体をバインダ(例えば粘土鉱物等)と混練し、焼成することで、略矩形ブロック状に形成されている。
【0035】
ここで、蓄熱成形体54は、水和に伴って膨張して放熱(発熱)し、脱水に伴って蓄熱(吸熱)するものであり、以下に示す反応で放熱、蓄熱を可逆的に繰り返し得る構成とされている。
【0036】
CaO + HO ⇔ Ca(OH)
この式に蓄熱量、発熱量Qを併せて示すと、
CaO + H2O → Ca(OH) + Q
Ca(OH)2 + Q → CaO + H
となる。
【0037】
なお、一例として、蓄熱成形体54の1kg当たりの蓄熱容量は、1.86[MJ/kg]とされている。
【0038】
また、本実施形態において、蓄熱成形体54を構成する蓄熱材の粒径とは、蓄熱材が粉体の場合はその平均粒径、粒状の場合は造粒前の粉体の平均粒径とする。これは、粒が崩壊する場合、前工程の状態に戻ると推定されるためである。
【0039】
蓄熱成形体54の外周を覆う蓄熱材拘束カバー52は、一例としてφ200〔μm〕の微小貫通孔(図示せず)が、全面に多数形成された金属材料からなるエッチングフィルターである。エッチングフィルターは、蓄熱成形体54を構成する蓄熱材の平均粒径より小さいろ過精度を有している。これにより、エッチングフィルターは、蓄熱成形体54を構成する蓄熱材の平均粒径より小さい流路を水蒸気が通過するのを許容する一方、平均粒径よりも大きい蓄熱材の通過を制限するようになっている。
【0040】
ろ過精度とは、ろ過効率が50〜98%となる粒子径のことであり、ろ過効率とは、ある粒子径の粒子に対する除去効率である。なお、蓄熱材拘束カバー52は、メッシュで形成されていてもよい。
【0041】
図2、及び図4に示すように、本実施形態では、長手方向を化学蓄熱反応器10の奥行方向と平行にして、蓄熱体収容室32の内部に、化学蓄熱反応器10の幅方向に5本、上下に二段並べて収容している。
【0042】
なお、蓄熱体50は、円柱形状とされているので、蓄熱体収容室32の内部に上記の様に並べることで、蓄熱体50の間に蒸気流路となる空間56が形成される。これら空間56は、隔壁26、30の孔36と連通している。
【0043】
図4に示すように、上の段に配置される蓄熱体50の外周面(蓄熱材拘束カバー52の外周面)の上部は、反応容器12の天板24に接触している。また、下の段に配置される蓄熱体50の外周面(蓄熱材拘束カバー52の外周面)の下部は反応容器12の底板14に接触している。
【0044】
図2、及び図4に示すように、幅方向に隣接する蓄熱体50は、外周面の側部が互いに接触し、幅方向最外側に配置される蓄熱体50の側部は、隔壁26、30に接触しており、各蓄熱体50の長手方向端部は隔壁28、及び側壁20に接触している。これにより、複数の蓄熱体50は、蓄熱体収容室32の内部で動かないように拘束されている。
【0045】
(化学蓄熱反応器の作用、効果)
次に、化学蓄熱反応器10の作用、効果について説明する。
化学蓄熱反応器10において蓄熱された熱を蓄熱成形体54から発熱(放熱)させる際には、一例として、図1に示すように、開閉弁40、開閉弁48を開放し、この状態で、蒸発凝縮器42の熱媒流路46に中温媒体を流し、液相部44Bの水を蒸発させる。そして、生成された水蒸気Wが連通路43内を矢印D方向に移動して、反応容器12内に供給される。
【0046】
化学蓄熱反応器10では、供給された水蒸気Wが蒸気流路34、及び隔壁26、30の孔36を通過して蓄熱体収容室32の内部に流入し、空間56を通過した水蒸気Wが蓄熱材拘束カバー52の微細孔を通過して蓄熱成形体54と接触することにより、蓄熱成形体54は、水和反応を生じつつ発熱(放熱)する。この熱は、反応容器12の天板24、及び底板14に伝達され、最終的に天板24、及び底板14が加熱されて温度が上がり、化学蓄熱反応器10を熱源として利用することができる。
【0047】
ところで、蓄熱材が反応媒体と結合すると、発熱すると共に膨張しようとする。しかしながら、蓄熱材からなる蓄熱成形体54は、外面を覆う蓄熱材拘束カバー52で拘束されているので、蓄熱成形体54の径方向の膨張が、蓄熱材拘束カバー52の張力負担により抑制される。これにより、反応容器12は、蓄熱材の膨張力を受け難くなり、反応容器12を構成する部材の厚さを薄くすることができる。このように、本実施形態の化学蓄熱反応器10は、従来の化学蓄熱反応器に必要とされていた反応媒体拡散層、熱交換部、及びエンドプレート等の部材が無く、発熱源として必要な最小限の部材で構成することができ、かつ、反応容器12の構成する部材の厚さを薄くできるので、高蓄熱密度で、かつ軽量となり、搬送が容易になる。
【0048】
本実施形態の蓄熱成形体54は、蓄熱材拘束カバー52で外面のみが覆われており、蓄熱成形体54の長手端部が覆われていないが、蓄熱成形体54が棒状であれば、外周面を拘束すれば、蓄熱成形体54の径方向の膨張を抑制することで、蓄熱成形体54の長手方向の膨張も抑制できる。このため、本実施形態では、蓄熱成形体54の長手端部を蓄熱材拘束カバー52で覆っていない。
【0049】
なお、蓄熱材拘束カバー52の両端をエッチングフィルターで塞ぎ、蓄熱成形体54の両端面を覆う構成としてもよい。即ち、蓄熱成形体54全体をエッチングフィルターで覆ってもよい。
【0050】
本実施形態では、蓄熱材を発熱させるために、化学蓄熱反応器10を蒸発凝縮器42に接続し、蒸発凝縮器42で発生させた水蒸気を化学蓄熱反応器10の内部に供給したが、本実施形態の化学蓄熱反応器10は、これに限らず、開閉弁40に水タンクを接続し、水タンクの水を化学蓄熱反応器10の内部に注入し、蓄熱材と水とを反応させてもよい。このように、蒸発凝縮器42が無くても化学蓄熱反応器10を簡単に発熱させることができる。
【0051】
なお、化学蓄熱反応器10において蓄熱成形体54に熱を蓄熱させる際には、図6に示すように、開閉弁40、及び開閉弁48を開放し、この状態で、反応容器12をヒーター等の熱源を用いて加熱する。これにより、内部の蓄熱成形体54が脱水反応を生じ、この熱が蓄熱成形体54に蓄熱される。蓄熱成形体54から離脱された水蒸気Wは、反応容器12の外部へ排出され、連通路43を矢印E方向に流れて蒸発凝縮器42内に流れ込む。そして、蒸発凝縮器42の気相部44Aにおいて、熱媒流路46を流れる冷媒によって水蒸気Wが冷却され、凝縮された水が容器44の液相部44Bに貯留される。
【0052】
[その他の実施形態]
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。
【0053】
上記実施形態では、複数の蓄熱体50を図4に示すように、上下水平方向にマトリクス状に積層したが、図7に示すように、上下で位相をずらして千鳥状に積層してもよい。
【0054】
上記実施形態では、蓄熱材拘束カバー52の断面形状が円形であったが、蓄熱材拘束カバー52の断面形状は、楕円、矩形、多角形等、円形以外であってもよい。例えば、図8に示すように、蓄熱材拘束カバー52の断面形状は、直線状の4辺を有し、角部がアール状に形成された略矩形状であってもよい。これにより、蓄熱材拘束カバー52に平面部が形成されることとなり、隣接する蓄熱材拘束カバー52、天板24、および底板14との接触面積が増え、天板24、および底板14に対して効率的に熱を伝達することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 化学蓄熱反応器
12 容器(反応容器)
38 配管(連通部)
52 蓄熱材拘束カバー
54 蓄熱材
56 空間(反応媒体流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8