特許第6973068号(P6973068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973068
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/68 20060101AFI20211111BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H03F3/68 220
   H03F3/24
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-254608(P2017-254608)
(22)【出願日】2017年12月28日
(65)【公開番号】特開2019-121877(P2019-121877A)
(43)【公開日】2019年7月22日
【審査請求日】2020年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 菜緒子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優
【審査官】 渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/160755(WO,A1)
【文献】 特公昭38−025909(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/007529(WO,A1)
【文献】 特開2011−035761(JP,A)
【文献】 特公平07−093547(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/68
H03F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力部と出力部との間で並列に接続される複数の増幅段と、帰還回路とを備え、
前記複数の増幅段は、それぞれ、
前記入力部から入力される高周波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する高調波処理部と、
前記出力端子と前記高調波処理部とが接続される接続部と、
前記接続部と前記出力部との間に接続される伝送線路とを有し、
前記帰還回路は、2次の前記高調波の定在波の節となる前記伝送線路の途中又は前記出力部における信号を、2次の前記高調波の定在波の腹となる前記複数の増幅段の各々の前記接続部の間に接続される抵抗の両端に帰還する、増幅器。
【請求項2】
前記高調波処理部は、2次の前記高調波に対してショート状態となる、請求項1に記載の増幅器。
【請求項3】
前記高調波処理部は、2次の前記高調波の4分の1波長の長さを有するオープンスタブである、請求項1又は2に記載の増幅器。
【請求項4】
前記帰還回路は、前記出力部における信号を前記抵抗の両端に帰還し、
前記伝送線路の長さは、2次の前記高調波の4分の1波長である、請求項2又は3に記載の増幅器。
【請求項5】
前記帰還回路は、前記伝送線路の途中における信号を前記抵抗の両端に帰還し、
前記伝送線路の途中は、前記接続部から、2次の前記高調波の4分の1波長となる箇所である、請求項2又は3に記載の増幅器。
【請求項6】
前記帰還回路は、インダクタと抵抗の少なくとも一方である、請求項1から5のいずれか一項に記載の増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のトランジスタの各々に対して配置され各々のトランジスタから出力される信号に含まれる高調波を処理する高調波処理回路と、高調波処理回路の後段において各々のトランジスタから出力される信号を合成する整合回路とを備える増幅器が知られている。このような増幅器において、各々のトランジスタから出力される信号間の位相差によって生ずる発振を抑制するため、複数のトランジスタの各々の出力端子を互いに抵抗を介して接続する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/160755号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、複数のトランジスタの各々に対して配置される高調波処理回路が接続される各箇所は、定在波の腹となる場合がある。この場合、各箇所で発生する定在波の間に位相差が生ずると、この位相差の影響によって、各箇所を繋ぐ発振抑制用の抵抗に許容を超える大きな電力が加わり、当該抵抗がオープン故障するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、抵抗のオープン故障を抑えることができる増幅器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は
入力部と出力部との間で並列に接続される複数の増幅段と、帰還回路とを備え、
前記複数の増幅段は、それぞれ、
前記入力部から入力される高周波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する高調波処理部と、
前記出力端子と前記高調波処理部とが接続される接続部と、
前記接続部と前記出力部との間に接続される伝送線路とを有し、
前記帰還回路は、2次の前記高調波の定在波の節となる前記伝送線路の途中又は前記出力部における信号を、2次の前記高調波の定在波の腹となる前記複数の増幅段の各々の前記接続部の間に接続される抵抗の両端に帰還する、増幅器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、抵抗のオープン故障を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】送信機の構成の一例を示す図である。
図2】増幅器の比較例を示す図である。
図3】増幅器の第1の実施例を示す図である。
図4】増幅器の第2の実施例を示す図である。
図5】増幅器の第3の実施例を示す図である。
図6】増幅器の第4の実施例を示す図である。
図7】S21特性の測定結果を示す図である。
図8】電力付加効率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態における増幅器を搭載する送信機の構成の一例を示す図である。送信機100は、例えば、電波を送受する無線通信装置、レーダーなどのセンサ装置、マイクロ波を送信して物体を加熱するマイクロ波加熱装置として使用することができる。
【0011】
送信機100は、例えば、ベースバンド回路1、ミキサ2、局部発振器3、パワーアンプ4及びアンテナ5を備える。ベースバンド回路1から変調処理されて出力されるベースバンド信号あるいは中間周波数信号は、ミキサ2及び局部発振器3により送信周波数帯にアップコンバートされ、パワーアンプ4により増幅される。パワーアンプ4により増幅された後の信号は、パワーアンプ4の出力ノードに接続されるアンテナ5から送信される。ミキサ2は、ベースバンド回路1からのベースバンド信号あるいは中間周波数信号を、局部発振器3から出力される局部発振信号とミキシングし、ミキシング後の信号をパワーアンプ4の入力端子に供給する。本実施形態における増幅器は、パワーアンプ4として使用することができる。
【0012】
次に、本実施形態における増幅器について説明する前に、本実施形態における増幅器と比較される増幅器について説明する。
【0013】
図2は、増幅器の比較例を示す図である。増幅器1000は、入力部141と出力部142との間で並列に接続される2つの増幅段110,120を備える。
【0014】
増幅段110は、トランジスタ111と、伝送線路112と、高調波処理部113と、伝送線路115とを有する。トランジスタ111は、入力部141から入力される高周波信号を増幅する。高調波処理部113は、トランジスタ111から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する回路である。トランジスタ111の出力端子は、伝送線路112を介して、高調波処理部113に接続される。高調波処理部113が接続される接続部114は、伝送線路115を介して、出力部142に接続される。
【0015】
同様に、増幅段120は、トランジスタ121と、伝送線路122と、高調波処理部123と、伝送線路125とを有する。トランジスタ121は、入力部141から入力される高周波信号を増幅する。高調波処理部123は、トランジスタ121から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する回路である。トランジスタ121の出力端子は、伝送線路122を介して、高調波処理部123に接続される。高調波処理部123が接続される接続部124は、伝送線路125を介して、出力部142に接続される。
【0016】
つまり、増幅器1000は、入力部141から入力される高周波信号を、トランジスタ111,121の各々で増幅し、トランジスタ111,121の各々から出力される増幅された信号を、伝送線路115,125を介して合成して出力部142に出力する。また、トランジスタ111,121の各々から出力される信号間の位相差によって生ずる発振を抑制するため、増幅器1000は、接続部114と接続部124との間に接続される抵抗151を備える。
【0017】
ここで、高調波処理部113,123の各々は、例えば、トランジスタ111,121の各々から出力される増幅された高周波信号に含まれる2次高調波の4分の1波長の長さを有するオープンスタブとする。この場合、2次高調波の4分の1波長の長さを有するオープンスタブが接続部114,124の各々に接続されているので、2次高調波では、接続部114,124の各々は、図2に示されるように、定在波Xの腹となる。そのため、接続部114,124を繋ぐ抵抗151には、定在波が発生する。
【0018】
このとき、増幅段110と増幅段120との間で回路特性にばらつきがあると、接続部114,124の各々で発生する定在波Xの間に位相差が生ずることがある。接続部114,124の各々で発生する定在波Xの間に位相差が生ずると、例えば、同一タイミングにおいて、接続部124の電位が接続部114の電位よりも低くなる。このように、接続部114と接続部124との間に電位差が発生すると、抵抗151に許容を超える大きな電力が加わることがあり、その結果、抵抗151がオープン故障するおそれがある。
【0019】
本実施形態における増幅器は、このような各接続部を繋ぐ抵抗のオープン故障を抑えることが可能な構成を備える。次に、本実施形態における増幅器について説明する。
【0020】
図3は、本実施形態における増幅器の第1の実施例を示す図である。増幅器101は、入力部41と出力部42との間で並列に接続される2つの増幅段10,20と、帰還回路60とを備える。
【0021】
入力部41から入力される高周波信号(例えば、マイクロ波信号)は、増幅段10,20の各々に分配される。増幅段10,20の各々は、分配されて入力される高周波信号を増幅する。増幅段10,20の各々で増幅された高周波信号は、合成されて出力部42から出力される。出力部42は、増幅段10,20の各々で増幅された高周波信号が合成される合成点を表す。
【0022】
増幅段10,20は、互いに同じ回路構成を有する。増幅段10は、例えば、トランジスタ11と、伝送線路12と、高調波処理部13と、接続部14と、伝送線路15とを有する。増幅段20は、例えば、トランジスタ21と、伝送線路22と、高調波処理部23と、接続部24と、伝送線路25とを有する。
【0023】
トランジスタ11,21の各々は、入力部41から入力される高周波信号を増幅する。例えば、トランジスタ11,21の各々は、ゲート、ソース及びドレインを有するFET(Field Effect Transistor)である。この場合、入力部41から入力される高周波信号は、トランジスタ11,21の各々のゲートに入力され、増幅された高周波信号は、出力端子であるドレインから出力される。また、例えば、トランジスタ11,21の各々は、ゲートが共通に接続された複数のトランジスタセルにより形成されるユニットトランジスタである。
【0024】
高調波処理部13は、トランジスタ11の出力端子に接続され、トランジスタ11の出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する回路である。トランジスタ11の出力端子は、伝送線路12を介して、高調波処理部13の一端に接続部14で接続される。同様に、高調波処理部23は、トランジスタ21の出力端子に接続され、トランジスタ21の出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する回路である。トランジスタ21の出力端子は、伝送線路22を介して、高調波処理部23の一端に接続部24で接続される。
【0025】
高調波処理部13は、トランジスタ11の出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる2次高調波に対してショート状態(インピーダンスが略零)となる回路であることが好ましい。例えば、高調波処理部13は、2次高調波以上の偶数次の高調波に対してショート状態となり、3次高調波以上の奇数次の高調波に対してオープン状態となる。高調波処理部23についても同様である。
【0026】
高調波処理部13は、例えば、トランジスタ11の出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる2次高調波f2の4分の1波長の長さを有するオープンスタブである。2次高調波f2に対して高調波処理部13をショート状態にするには、基本波の波長をλとすると、オープンスタブの長さをλ/8とし、基本波の2倍波である2次高調波f2の波長をλとすると、オープンスタブの長さをλ/4とすればよい。高調波処理部23についても同様である。
【0027】
高調波処理部13が接続される接続部14は、伝送線路15を介して、整合されて出力部42に接続される。高調波処理部23が接続される接続部24は、伝送線路25を介して、整合されて出力部42に接続される。
【0028】
つまり、増幅器101は、入力部41から入力される高周波信号を、トランジスタ11,21の各々で増幅し、トランジスタ11,21の各々から出力される増幅された信号を、伝送線路15,25を介して合成して出力部42に出力する。また、トランジスタ11,21の各々から出力される信号間の位相差によって生ずる発振を抑制するため、増幅器101は、接続部14と接続部24との間に接続される抵抗51を備える。抵抗51は、隣り合う増幅段10,20の各々の接続部間に接続される発振抑制用の抵抗(発振安定化抵抗)である。
【0029】
ここで、図3に示される増幅器101では、接続部14と出力部42との間に接続される伝送線路15の長さ(つまり、接続部14から出力部42までの長さ)は、2次高調波の4分の1波長である。同様に、接続部24と出力部42との間に接続される伝送線路25の長さ(つまり、接続部24から出力部42までの長さ)は、2次高調波の4分の1波長である。
【0030】
したがって、高調波処理部13,23が接続部14,24に接続されていることにより、2次高調波の定在波Xの腹が接続部14,24の各々に現れる場合、接続部14,24から2次高調波の4分の1波長離れている出力部42は、定在波Xの節となる。そこで、本実施形態における増幅器101は、出力部42における信号を、増幅段10,20の各々の接続部14,24の間に接続される抵抗51の両端に帰還する帰還回路60を備える。
【0031】
このような帰還回路60が備えられていることにより、増幅段10,20の各々で増幅された高周波信号の合成箇所である出力部42の位相が、定在波が発生している抵抗51の両端にフィードバックされる。これにより、抵抗51の一端が接続される接続部14に生ずる2次高調波の定在波の位相と、抵抗51の他端が接続される接続部24に生ずる2次高調波の定在波の位相とを同じにすることができる。よって、抵抗51の両端に加わる電力が低減され、抵抗51のオープン故障を抑制することができる。また、接続部14における信号と接続部24における信号との間の位相差が抑制されるため、抵抗51による基本波の発振抑制効果が更に高まり、増幅器101の電力付加効率が向上する。
【0032】
帰還回路60は、例えば、インダクタと抵抗の少なくとも一方である。図3の帰還回路60では、出力部42と抵抗51の一端(接続部14)との間に、インダクタ61と抵抗71との少なくとも一方が接続され、出力部42と抵抗51の他端(接続部24)との間に、インダクタ62と抵抗72との少なくとも一方が接続される。帰還回路60は、例えば、インダクタンス成分を含むボンディングワイヤによって形成される。
【0033】
図4は、本実施形態における増幅器の第2の実施例を示す図である。第2の実施例のうち第1の実施例と同一の構成及び効果の説明については、上述の説明を援用することで省略する。図4に示される第2の構成例の増幅器102は、伝送線路15,25の各々の長さが、2次高調波の4分の1波長よりも長い点で、図3に示される第1の構成例の増幅器101と異なる。
【0034】
図4に示される伝送線路15は、伝送線路部15aと、伝送線路部15bとを有する。伝送線路部15aは、一端が接続部14に接続され、他端が伝送線路部15bの一端に接続される。伝送線路部15aの長さは、2次高調波の4分の1波長である。伝送線路部15bは、一端が伝送線路部15aの他端に接続され、他端が出力部42に接続される。同様に、図4に示される伝送線路25は、伝送線路部25aと、伝送線路部25bとを有する。伝送線路部25aは、一端が接続部24に接続され、他端が伝送線路部25bの一端に接続される。伝送線路部25aの長さは、2次高調波の4分の1波長である。伝送線路部25bは、一端が伝送線路部25aの他端に接続され、他端が出力部42に接続される。
【0035】
したがって、高調波処理部13,23が接続部14,24に接続されていることにより、2次高調波の定在波Xの腹が接続部14,24の各々に現れる場合、接続部14,24から2次高調波の4分の1波長離れている箇所15c,25cは、定在波Xの節となる。そこで、本実施形態における増幅器102は、伝送線路15,25の途中の箇所15c,25cにおける信号を、増幅段10,20の各々の接続部14,24の間に接続される抵抗51の両端に帰還する帰還回路65を備える。
【0036】
このような帰還回路65が備えられていることにより、定在波の節が現れる箇所15c,25cの位相が、定在波が発生している抵抗51の両端にフィードバックされる。これにより、抵抗51の一端が接続される接続部14に生ずる2次高調波の定在波の位相と、抵抗52の他端が接続される接続部24に生ずる2次高調波の定在波の位相とを同じにすることができる。よって、抵抗51の両端に加わる電力が低減され、抵抗51のオープン故障を抑制することができる。また、接続部14における信号と接続部24における信号との間の位相差が抑制されるため、抵抗51による基本波の発振抑制効果が更に高まり、増幅器102の電力付加効率が向上する。
【0037】
図5は、本実施形態における増幅器の第3の実施例を示す図である。第3の実施例のうち第1の実施例と同一の構成及び効果の説明については、上述の説明を援用することで省略する。図5に示される第3の構成例の増幅器103は、入力部41と出力部42との間で並列に接続される増幅段の数が3つある点で、図3に示される第1の構成例の増幅器101と異なる。
【0038】
図5に示される増幅器103は、3つの増幅段10,20,30を備える。増幅段10,20,30は、互いに同じ回路構成を有する。増幅段30は、例えば、トランジスタ31と、伝送線路32と、高調波処理部33と、接続部34と、伝送線路35とを有する。
【0039】
つまり、増幅器103は、入力部41から入力される高周波信号を、トランジスタ11,21,31の各々で増幅し、トランジスタ11,21,31の各々から出力される増幅された信号を、伝送線路15,25,35を介して合成して出力部42に出力する。また、トランジスタ11,21,31の各々から出力される信号間の位相差によって生ずる発振を抑制するため、増幅器103は、接続部14と接続部24との間に接続される抵抗51と、接続部24と接続部34との間に接続される抵抗52とを備える。安定化抵抗の数は、増幅段の数よりも一つ少ない。
【0040】
したがって、第1の構成例と同様の帰還回路60が備えられていることにより、増幅段10,20,30の各々で増幅された高周波信号の合成箇所である出力部42の位相が、定在波が発生している抵抗51,52の両端にフィードバックされる。これにより、抵抗51の両端は同位相となり、抵抗52の両端も同位相となる。よって、抵抗51,52の各々の両端に加わる電力が低減され、抵抗51,52のオープン故障を抑制することができる。また、抵抗51の両端は同位相となり、抵抗52の両端も同位相となるため、抵抗51,52による基本波の発振抑制効果が更に高まり、増幅器103の電力付加効率が向上する。
【0041】
第3の実施例の帰還回路も、第1の実施例の帰還回路と同様に、例えば、インダクタと抵抗の少なくとも一方である。図5に示される帰還回路60は、出力部42と抵抗51の両端との間に接続されるインダクタ61,62と、出力部42と抵抗52の両端との間に接続されるインダクタ63,64とを有する。
【0042】
図6は、本実施形態における増幅器の第4の実施例を示す図である。第4の実施例のうち第3の実施例と同一の構成及び効果の説明については、上述の説明を援用することで省略する。図6に示される第4の構成例の増幅器104は、伝送線路15,25,35の各々の長さが、2次高調波の4分の1波長よりも長い点で、図5に示される第3の構成例の増幅器103と異なる。
【0043】
図6に示される伝送線路35は、伝送線路部35aと、伝送線路部35bとを有する。伝送線路部35aは、一端が接続部34に接続され、他端が伝送線路部35bの一端に接続される。伝送線路部35aの長さは、2次高調波の4分の1波長である。伝送線路部35bは、一端が伝送線路部35aの他端に接続され、他端が出力部42に接続される。
【0044】
したがって、第2の構成例と同様の帰還回路65が備えられていることにより、定在波の節が現れる箇所15c,25cの位相が、定在波が発生している抵抗51の両端にフィードバックされる。また、定在波の節が現れる箇所25c,35cの位相が、定在波が発生している抵抗52の両端にフィードバックされる。これにより、抵抗51の両端は同位相となり、抵抗52の両端も同位相となる。よって、抵抗51,52の各々の両端に加わる電力が低減され、抵抗51,52のオープン故障を抑制することができる。また、抵抗51の両端は同位相となり、抵抗52の両端も同位相となるため、抵抗51,52による基本波の発振抑制効果が更に高まり、増幅器104の電力付加効率が向上する。
【0045】
図7は、Sパラメータの一つであるS21の特性の測定結果の一例を示す図である。S21は、増幅器の増幅利得を表す。図7において、実線は、図2の増幅器1000(比較例)の増幅利得を示し、点線は、図3の増幅器101(第1の実施例)の増幅利得を示す。帰還回路が無い増幅器1000では、中間周波数FCから高周波数FHの間で発振が生じている。これに対し、帰還回路60を備える増幅器101では、発振が抑制されるとともに、低周波数FLから高周波数FHにかけて増幅利得が増大している。
【0046】
図8は、増幅器に入力される入力電力Pinに対する電力付加効率(PAE:Power Added Efficiency)の測定結果の一例を示す図である。図8において、実線は、図2の増幅器1000(比較例)のPAEを示し、点線は、図3の増幅器101(第1の実施例)のPAEを示す。図8に示されるように、増幅器101のPAEは、増幅器1000のPAEよりも向上し、比較的高い入力電力Pinでは、7%向上している。
【0047】
以上、増幅器を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0048】
例えば、増幅段の数が4つ以上ある場合も、上述の実施例のような回路構成とすることで、上述の実施例と同様の効果が得られる。
【0049】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
入力部と出力部との間で並列に接続される複数の増幅段と、帰還回路とを備え、
前記複数の増幅段は、それぞれ、
前記入力部から入力される高周波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する高調波処理部と、
前記出力端子と前記高調波処理部とが接続される接続部と、
前記接続部と前記出力部との間に接続される伝送線路とを有し、
前記帰還回路は、前記伝送線路の途中又は前記出力部における信号を、前記複数の増幅段の各々の前記接続部の間に接続される抵抗の両端に帰還する、増幅器。
(付記2)
前記高調波処理部は、2次の前記高調波に対してショート状態となる、付記1に記載の増幅器。
(付記3)
前記高調波処理部は、2次の前記高調波の4分の1波長の長さを有するオープンスタブである、付記1又は2に記載の増幅器。
(付記4)
前記帰還回路は、前記出力部における信号を前記抵抗の両端に帰還し、
前記伝送線路の長さは、2次の前記高調波の4分の1波長である、付記2又は3に記載の増幅器。
(付記5)
前記帰還回路は、前記伝送線路の途中における信号を前記抵抗の両端に帰還し、
前記伝送線路の途中は、前記接続部から、2次の前記高調波の4分の1波長となる箇所である、付記2又は3に記載の増幅器。
(付記6)
前記帰還回路は、インダクタと抵抗の少なくとも一方である、付記1から5のいずれか一項に記載の増幅器。
(付記7)
増幅器と、前記増幅器の出力ノードに接続されるアンテナとを備え、
前記増幅器は、
入力部と出力部との間で並列に接続される複数の増幅段と、帰還回路とを備え、
前記複数の増幅段は、それぞれ、
前記入力部から入力される高周波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタの出力端子に接続され、前記出力端子から出力される増幅された高周波信号に含まれる高調波を処理する高調波処理部と、
前記出力端子と前記高調波処理部とが接続される接続部と、
前記接続部と前記出力部との間に接続される伝送線路とを有し、
前記帰還回路は、前記伝送線路の途中又は前記出力部における信号を、前記複数の増幅段の各々の前記接続部の間に接続される抵抗の両端に帰還する、送信機。
【符号の説明】
【0050】
1 ベースバンド回路
2 ミキサ
3 局部発振器
4 パワーアンプ
5 アンテナ
10,20,30 増幅段
11,21,31 トランジスタ
15,25,35 伝送線路
41 入力部
42 出力部
51,52 抵抗
60,65 帰還回路
101〜104,1000 増幅器
100 送信機
図1
図2
図3
図4
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図6
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図8