【実施例】
【0062】
本発明を以下の実施例によってさらに具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、この実施例によって制限されないものとする。
【0063】
<実施例1>合成RNAの膵癌細胞に対する有効性
配列番号7で表されるhsa−miR−6893−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号9で表されるhsa−miR−6808−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、及び配列番号10で表されるhsa−miR−6876−5pと同じ塩基配列を有する合成RNAのそれぞれの、膵癌細胞に対する有効性を評価した。
【0064】
膵癌細胞としてPanc−1細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだDMEM培地(ナカライテスク社、日本)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ30nMの濃度で配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0065】
その結果、配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品のそれぞれを遺伝子導入した膵癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した膵癌細胞に比べて細胞生存比率はそれぞれ50%、51%、39%及び50%であった。結果を
図1に示す。
【0066】
<実施例2>合成RNAの乳癌細胞に対する有効性
配列番号7で表されるhsa−miR−6893−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号9で表されるhsa−miR−6808−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、及び配列番号10で表されるhsa−miR−6876−5pと同じ塩基配列を有する合成RNAのそれぞれの、乳癌細胞に対する有効性を評価した。
【0067】
乳癌細胞としてMCF−7細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社、日本)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ30nMの濃度で配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0068】
その結果、配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品のそれぞれを遺伝子導入した乳癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した乳癌細胞に比べて細胞生存比率はそれぞれ52%、52%、39%及び64%であった。結果を
図2に示す。
【0069】
<実施例3>合成RNAの肺癌細胞に対する有効性
配列番号7で表されるhsa−miR−6893−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号9で表されるhsa−miR−6808−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、及び配列番号10で表されるhsa−miR−6876−5pと同じ塩基配列を有する合成RNAのそれぞれの、肺癌細胞に対する有効性を評価した。
【0070】
肺癌細胞としてA549細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社、日本)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり3×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ30nMの濃度で配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0071】
その結果、配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品のそれぞれを遺伝子導入した肺癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した肺癌細胞に比べて細胞生存比率はそれぞれ44%、9%、23%及び22%であった。結果を
図3に示す。
【0072】
<実施例4>合成RNAの胃癌細胞に対する有効性
配列番号7で表されるhsa−miR−6893−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号9で表されるhsa−miR−6808−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、及び配列番号10で表されるhsa−miR−6876−5pと同じ塩基配列を有する合成RNAの胃癌細胞に対する有効性を評価した。
【0073】
胃癌細胞としてNC1−N87細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり3×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ30nMの濃度で配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0074】
その結果、配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品をそれぞれ遺伝子導入した胃癌細胞の細胞生存比率は、それぞれ38%、36%、34%及び42%であった。結果を
図4に示す。
【0075】
<実施例5>合成RNAの肝癌細胞に対する有効性
配列番号7で表されるhsa−miR−6893−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号9で表されるhsa−miR−6808−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、及び配列番号10で表されるhsa−miR−6876−5pと同じ塩基配列を有する合成RNAの肝癌細胞への有効性を評価した。
【0076】
肝癌細胞としてHEPG2細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ30nMの濃度で配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0077】
その結果、配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品をそれぞれ遺伝子導入した肝癌細胞の細胞生存比率は、それぞれ75%、42%、52%及び25%であった。結果を
図5に示す。
【0078】
<実施例6>合成RNAの白血病細胞に対する有効性
配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNAの白血病細胞に対する有効性を評価した。
【0079】
白血病細胞としてJURKAT細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだRPMI培地(ナカライテスク社)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり4×10
4個の細胞を蒔いて、30nMの濃度で、アンチセンスRNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Inhibitors)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Inhibitor,Negative Control)をヴァイロマー(Lipocalyx社)を用いて遺伝子導入した。細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0080】
その結果、配列番号8で表される合成RNAを遺伝子導入した白血病細胞の細胞生存比率は45%であった。結果を
図6に示す。
【0081】
<実施例7>合成RNAの大腸癌細胞に対する有効性(1)
配列番号7で表されるhsa−miR−6893−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号9で表されるhsa−miR−6808−5pと同じ塩基配列を有する合成RNA、及び配列番号10で表されるhsa−miR−6876−5pと同じ塩基配列を有する合成RNAのそれぞれの、大腸癌細胞に対する有効性を評価した。
【0082】
大腸癌細胞としてHCT116細胞株(ATCC)を、10%FBSを含んだMcCoy’s培地(ナカライテスク社)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ30nMの濃度で配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0083】
その結果、配列番号7、8、9及び10で表される塩基配列を有するRNA合成品のそれぞれを遺伝子導入した大腸癌細胞では、ネガティブコントロールオリゴを導入した大腸癌細胞に比べて細胞生存比率は、それぞれ4%、8%、2%及び12%であった。結果を
図7に示す。
【0084】
<実施例8>合成RNAの大腸癌細胞に対する有効性(2)
癌マーカーとして公知である配列番号11で表されるhsa−miR−4454と同じ塩基配列を有する合成RNA、配列番号12で表される塩基配列(配列番号2の3’末端側、すなわち配列番号8の5’末端側から1〜8番目の塩基配列に、配列番号11で表されるhsa−miR−4454の5’末端側から9〜20番目の塩基配列(配列番号16)を付加した塩基配列)を有する合成RNA及び配列番号13で表される塩基配列(配列番号2の3’末端側に、配列番号3すなわち配列番号7の5’末端側から9〜21番目の塩基配列を付加した塩基配列)を有する合成RNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)の大腸癌への有効性を実施例7に記載の方法に準じて評価した。
【0085】
その結果、配列番号8、12及び13で表される塩基配列を有するRNA合成品をそれぞれ遺伝子導入した大腸癌細胞では、細胞生存比率は10%以下であったのに対して、配列番号11で表される塩基配列を有するRNA合成品を遺伝子導入した大腸癌細胞の細胞生存比率は103%であり、ほとんど有効でなかった。結果を
図8に示す。
【0086】
<比較例1>合成RNAの大腸癌細胞に対する有効性
癌マーカーとして公知である配列番号14で表されるhsa−miR−575と同じ塩基配列を有する合成RNA、及び血液癌治療に関与することが知られている配列番号15で表されるhsa−miR−1321と同じ塩基配列(5’末端側から1〜8番目の塩基配列と、配列番号1及び2で表される塩基配列との配列同一性が87.5%である)を有する合成RNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)の大腸癌に対する有効性を実施例7に記載の方法に準じて評価した。
【0087】
その結果、配列番号7及び8で表される塩基配列を有するRNA合成品をそれぞれ遺伝子導入した大腸癌細胞では、細胞生存比率は10%以下であったのに対して、配列番号14及び15で表される塩基配列を有するRNA合成品をそれぞれ遺伝子導入した大腸癌細胞の細胞生存比率は、それぞれ96%及び93%であり、ほとんど有効でなかった。結果を
図9に示す。
【0088】
<比較例2>合成RNAの正常細胞に対する有効性
配列番号7及び配列番号8で表される塩基配列を有する合成RNA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimics)の、正常細胞である乳腺上皮細胞及び肺微小血管内皮細胞に対する有効性を評価した。
【0089】
乳腺上皮細胞として184B5(ATCC)を、BPE、hydrocortisone、hEGF、insulinを含んだMEBM培地(ロンザ社)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ3nMの濃度で配列番号7及び配列番号8で表される塩基配列を有するRNA合成品あるいはネガティブコントロールオリゴ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、mirVana
TM miRNA Mimic,Negative Control)をリポフェクタミンRNAiMAX(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo(プロメガ社)試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0090】
その結果、配列番号7及び配列番号8で表される塩基配列を有するRNA合成品(それぞれ3nM)を遺伝子導入した乳癌細胞MCF−7では、細胞生存比率がそれぞれ71%、64%(
図10A)であったのに対して、乳腺上皮細胞の細胞生存比率はそれぞれ99%、105%であり、正常細胞に対する影響は認められなかった(
図10B)。
【0091】
また、肺微小血管内皮細胞としてHMVEC−L(ATCC)を、EGM−2MV SingleQuots(ロンザ社)を含んだEGM−2倍地(ロンザ社)に蒔いて37℃、5%CO
2条件下で培養を行った。96ウェルプレートに1ウェルあたり6×10
3個の細胞を蒔いて、それぞれ3nMの濃度で配列番号7及び配列番号8で表される塩基配列を有するRNA合成品あるいはネガティブコントロールオリゴをリポフェクタミンRNAiMAXを用いて遺伝子導入した。24時間後に培養液を交換し、細胞数を5日間カウントした。細胞数の測定は、Celtiter−glo試薬を用いてATP活性を測定し生存細胞数とした。n=3で行い、グラフには平均±標準偏差で示す。
【0092】
その結果、肺微小血管内皮細胞の細胞生存比率はそれぞれ91%、109%であり、正常細胞に対する影響は認められなかった(
図10C)。
【0093】
<実施例9>合成RNAの担癌マウスモデルに対する有効性
ヒト由来の癌細胞株を移植した担癌マウスを用いて、配列番号8で表されるhsa−miR−4476と同じ塩基配列を有する合成RNAの抗腫瘍効果を検討した。
【0094】
6匹のBalb/cヌードマウス(日本チャールスリバー社製)の背部皮下に、1匹あたり5×10
6個のヒト大腸癌細胞株HCT116細胞株(ATCC)を移植し、腫瘍が直径5mm程度の大きさになるまで成長させた。前記担癌マウス各6匹に配列番号8と同じ塩基配列を有する合成RNA及びネガティブコントロールを1匹あたり2nmolと0.5%アテロコラーゲン50μl(高研社)の混合溶液を、腫瘍周辺の皮下に投与した。その後、2日おきに計3回、各合成RNAと0.5%アテロコラーゲン混合溶液を同量ずつ各担癌マウスの腫瘍周辺の皮下に投与し、腫瘍の大きさを2日に1回計測した。なお、腫瘍の大きさは、0.5×(長径×短径×短径)の計算式を用いて体積を算出した。
【0095】
その結果、最初の投与から13日後の配列番号8と同じ塩基配列を有する合成RNAを投与した検討群の腫瘍体積比率は、コントロール群を100%としたとき40%であった(
図11A)。また、合成RNAを担癌マウスに投与後13日間の腫瘍体積の変化を
図11Bに示した。その結果から、配列番号8と同じ塩基配列を有する合成RNAは、大腸癌細胞に対して、生体内で抗腫瘍効果を発揮することが示された。