特許第6973074号(P6973074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973074
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】分離膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20211111BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B01D63/02
   B01D63/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-528858(P2017-528858)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2017018916
(87)【国際公開番号】WO2017204123
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2020年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2016-104084(P2016-104084)
(32)【優先日】2016年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林田 健児
(72)【発明者】
【氏名】松本 宏
(72)【発明者】
【氏名】中松 修
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−004204(JP,A)
【文献】 特開平04−341326(JP,A)
【文献】 特開昭62−149304(JP,A)
【文献】 特開平11−244607(JP,A)
【文献】 特開平05−007740(JP,A)
【文献】 特開2004−283651(JP,A)
【文献】 特開昭53−147682(JP,A)
【文献】 特開平1−203005(JP,A)
【文献】 特開昭62−144706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
61/00 − 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のモジュール容器と、
前記モジュール容器に収容されたエレメントユニットと、を有し、
前記エレメントユニットは、前記モジュール容器内に流入した物質の構成成分を分離する分離膜と前記分離膜の両端を固定するための膜束固定材とを有する分離膜エレメントが複数連結されて構成され、かつ、前記分離膜により分離された成分をエレメントユニット外へ排出するための流路が形成されており、
前記複数の分離膜エレメントの連結間には、前記分離膜により分離された成分が前記排出するための流路へ通過可能な通過部材が、その両端面を隣り合う前記分離膜エレメントの前記膜束固定材の端面にそれぞれ直接に接触させて配置され、
前記通過部材が単一の部材からなる、分離膜モジュール。
【請求項2】
中空のモジュール容器と、
前記モジュール容器に収容されたエレメントユニットと、を有し、
前記エレメントユニットは、前記モジュール容器内に流入した物質の構成成分を分離する分離膜と前記分離膜の両端を固定するための膜束固定材とを有する分離膜エレメントが複数連結されて構成され、かつ、前記分離膜により分離された成分をエレメントユニット外へ排出するための流路が形成されており、
前記複数の分離膜エレメントの連結間には、前記分離膜により分離された成分が前記排出するための流路へ通過可能な通過部材が、その両端面を隣り合う前記分離膜エレメントの前記膜束固定材にそれぞれ接触させて配置され、
前記通過部材が単一の部材からなり、前記通過部材は流体通過性を有する多孔質部材で構成されている、分離膜モジュール。
【請求項3】
前記分離膜エレメントが、前記物質を流入させるために複数の孔が形成された前記分離膜を収納するケースと、前記分離膜で分離されて透過した成分を通過させるための分離成分流路材と、を有し、
前記膜束固定材により、前記ケース、前記分離膜および前記分離成分流路材の両端がそれぞれ固定された、請求項1または2に記載の分離膜モジュール。
【請求項4】
前記分離膜が中実糸で構成されており、かつ、前記分離膜の断面の外部側が分離層で、前記断面の内部側が連続的な多孔質構造を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【請求項5】
前記分離膜エレメントと前記モジュール容器との間には、前記流路の一部を構成する端面部材が配設され、前記分離膜により分離された成分が前記排出するための流路へ通過可能な端面通過部材が、その両端面を前記膜束固定材および前記端面部材にそれぞれ接触させて配置された、請求項1〜4のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【請求項6】
前記通過部材の厚さが、3mm以上かつ30mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール容器の内部に備えられた分離膜エレメントにより、モジュール容器内に導入された液体や気体などの流体の成分の一部を分離するための分離膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
混合流体の成分の一部を分離する水処理やガス分離用途において、分離膜モジュールが用いられている。一般的に、分離膜モジュールは、複数の分離膜単体の集合体である分離膜エレメントがモジュール容器に収容されてなる。分離膜エレメントに用いられる分離膜単体としては、線形状、平面形状など様々な形状のものがあるが、線形状の分離膜単体を用いた分離膜エレメントは、分離膜の両端部が膜束固定材で固定されるとともに、分離膜の両端面が膜束固定材の外側に開口する形状となっている。
【0003】
例えば、特許文献1の分離膜モジュールにおいては、分離膜エレメントの中空糸膜(線形状の分離膜単体の一種)がU字状に配置され、その膜束の両端は樹脂壁(接着剤)で封止固定されている。そして、中空糸膜束の外径側の混合流体の圧力を高めることで、分離が達成される。
【0004】
このような分離膜モジュールを、海水淡水化を目的とするような水処理用途や、天然ガスから二酸化炭素などの不純物を分離するようなガス分離用途に使用する場合は、十分な膜分離性能を得るために、分離膜モジュール内部に非常に高い圧力を与えて運転することがある。
【0005】
分離膜モジュールに高圧が付加されると、分離膜透過前の混合流体が存在する部分と、分離膜を透過した透過成分が存在する部分とには非常に大きな圧力差が発生する。すなわち、中空糸膜束の外径側から内径側に向かって流体が通過するような、外圧式の分離膜を用いた分離膜モジュールにおいては、混合流体の成分の一部が中空糸膜の内側に透過し、中空糸膜の内部から両端開口部に向かって流れていくので、分離膜の開口面を有する膜束固定材に中空糸膜の両端面に向かう方向に押し広げられるような力が発生し、膜束固定材がモジュール容器や中空糸膜から剥離したり、膜束固定材が破損して、中空糸膜束とモジュール容器の気密性が確保できなくなったりすることがある。特許文献1には、このような膜束固定材の変形を防止するために、膜束固定材に隣接して受圧板を配置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特開昭54−122678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、分離膜方式の流体分離においては、分離膜の分離層を流体が通過する際に発生する圧力損失だけでなく、分離された流体が分離膜の内部を通過する際にも圧力損失が発生する。そのため、大量の流体を分離する必要がある場合には、特許文献1に記載されているような分離膜モジュールにおいて分離膜の有効面積を増やそうとして分離膜の長さ(中空糸長)を単純に長くしても、中空糸膜の内部の圧力損失が大きくなるために、十分な分離性能が得られないという課題があった。
【0008】
本発明は、高圧下で大量の流体を処理する場合においても膜束固定材の変形が抑制され、かつ圧力損失の影響を小さくすることで高い膜分離効率を実現できる分離膜モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成をとる。
(1)中空のモジュール容器と、前記モジュール容器に収容されたエレメントユニットと、を有し、前記エレメントユニットは、前記モジュール容器内に流入した物質の構成成分を分離する分離膜と前記分離膜の両端を固定するための膜束固定材とを有する分離膜エレメントが複数連結されて構成され、かつ、前記分離膜により分離された成分をエレメントユニット外へ排出するための流路が形成されており、前記複数の分離膜エレメントの連結間には、前記分離膜により分離された成分が前記排出するための流路へ通過可能な通過部材が、その両端面を隣り合う前記分離膜エレメントの前記膜束固定材にそれぞれ接触させて配置された、分離膜モジュール。
(2)前記通過部材が単一の部材からなる、(1)に記載の分離膜モジュール。
(3)前記通過部材が流体通過性を有する多孔質部材で構成されている、(1)または(2)に記載の分離膜モジュール。
(4)前記分離膜エレメントが、前記物質を流入させるために複数の孔が形成された前記分離膜を収納するケースと、前記分離膜で分離されて透過した成分を通過させるための分離成分流路材と、を有し、 前記膜束固定材により、前記ケース、前記分離膜および前記分離成分流路材の両端がそれぞれ固定された、(1)〜(3)のいずれかに記載の分離膜モジュール。
(5)前記分離膜が中実糸で構成されており、かつ、前記分離膜の断面の外部側が分離層で、前記断面の内部側が連続的な多孔質構造を有する、(1)〜(4)のいずれかに記載の分離膜モジュール。
(6)前記分離膜エレメントと前記モジュール容器との間には、前記流路の一部を構成する端面部材が配設され、前記分離膜により分離された成分が前記排出するための流路へ通過可能な端面通過部材が、その両端面を前記膜束固定材および前記端面部材にそれぞれ接触させて配置された、(1)〜(5)のいずれかに記載の分離膜モジュール。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、高圧下で大量の流体を処理する場合においても膜束固定材の変形が抑制され、かつ分離膜透過中の圧力損失を小さくすることで高い膜分離効率を実現できる分離膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る分離膜モジュール1の一実施形態を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明に係る別の分離膜モジュールの形態を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明とは別の分離膜モジュールの形態を示す概略断面図である。
図4図4は、本発明に係る通過部材10の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る分離膜モジュール1を概略断面図で示したものが図1である。
図1を参照すると、分離膜モジュール1は、円筒形状で円筒軸方向がX方向に伸びるモジュール容器2と、3つの分離膜エレメント8が連結されてなり、モジュール容器2に収容されてモジュール容器2の両端面3に固定されたエレメントユニット4と、で構成されている。
【0014】
モジュール容器2は、中空状のものであればどのような形状でもよいが、プラントラインへの接続性も良好で、分離膜モジュール1に高い圧力がかかる場合でも均一に圧力がかかることで応力が分散し、モジュール容器2の一部に応力集中などが発生しにくい、円筒形状のものが特に好ましい。
【0015】
また、モジュール容器2の材質としては、分離膜モジュール1の使途に応じて、樹脂、金属など最適なものを選択してもよいし、樹脂や金属などの材料に、ガラス繊維や炭素繊維を巻き付けて、モジュール容器2の耐圧性をさらに向上させたものなど、いずれでもよい。
【0016】
また、モジュール容器2の大きさも、特に制限はなく、分離膜モジュール1の長さ方向(X方向)の大きさや径方向(R方向)の大きさなどに応じて適宜設定することができるが、プラントでの取り扱い性や容器コストのバランスから、長さ方向の大きさとしては1000mm〜3500mm、径方向の大きさとしては100mm〜500mmの範囲が好適である。
【0017】
また、図1では、液体や気体などの流体が流入する流入口5と、流体が流出する流出口6とがモジュール容器2の端面3にそれぞれ一つずつ設けられているが、流入口5および流出口6の個数や大きさには制限がなく、開口する位置もモジュール容器2の端面3に限らず、モジュール容器2の側面7に設ける構造など、いずれでも構わない。
【0018】
分離膜モジュール1を構成するエレメントユニット4は、複数の分離膜エレメント8と、分離膜モジュール1の長さ方向(X方向)に分離膜エレメント8を連結するための連結部材9と、各連結部で2つの分離膜エレメント8に挟まれる通過部材10と、エレメントユニット4の端部を形成し、モジュール容器2の外部へと通じる開口部11を有する端面部材12と、エレメントユニット4の両端部に位置する分離膜エレメント8と端面部材12との間に挟まれる端面通過部材13と、で構成されている。
【0019】
分離膜エレメント8は、流入する混合流体の成分の一部を分離するための分離膜14と、分離膜14を収納するケース16と、分離膜エレメント8により分離された分離成分をエレメントユニット4の外部に排出するための流路の一部となる分離成分流路材17と、分離膜14、ケース16および分離成分流路材17それぞれの両端を封止固定するための膜束固定材18と、で構成されている。なお、分離膜エレメント8には、外面から内面へ向かって分離膜14に物質を流入させるための孔15が開口している。
【0020】
分離膜14の両端は、膜束固定材18によりケース16と分離成分流路材17とに封止固定されているが、分離膜14の端面19は膜束固定材18から露出して外部に開口している形状となっている。そのため、分離膜14の表面を通過した分離成分は、分離膜14の内部を通って、分離膜14の端面19から外部に流れることができる。すなわち、エレメントユニット4には、分離膜エレメント8により分離した分離成分をエレメントユニット4の外部へ排出するための流路が形成されている。
【0021】
ここで、エレメントユニット4を構成する、分離膜エレメント8、連結部材9、端面部材12は、それぞれが気密性を保つように固定されている。固定方法としては、それぞれの接続部にネジ部を設けて締結固定したり、接着剤を接続部に塗布して接着固定したりすることなどいずれでもよいが、エレメントユニット4に複数設けられる分離膜エレメント8の一部を容易に交換できるように、着脱可能な構成とすることが好ましい。
【0022】
また、図1に示すエレメントユニット4は、その両端に、開口部11を有する端面部材12を備えているが、1箇所でもモジュール容器2の外部と通じていればよいため、例えば図2に示すように、一方は開口部11を有する端面部材12、もう一方は、開口部を有しない端面部材20を備える構造でもよい。
【0023】
再び図1に戻ると、エレメントユニット4は、モジュール容器2の円筒軸方向(X方向)とエレメントユニット4の中心軸21の方向とが一致するように設置され、モジュール容器2の端面3の中心に形成された穴から端面部材12の開口部11が外部へ突出するよう配置されている。
【0024】
なお、このようにエレメントユニット4を構成する部材の一部(本実施形態においては端面部材12の開口部11)がモジュール容器2の外部に露出する場合であっても、エレメントユニット4の中の分離膜エレメント部分がモジュール容器2の中空に存在する場合には、本明細書においてはエレメントユニットがモジュール容器に収容されている、と表現するものとする。
【0025】
エレメントユニット4の配置方向には制限が無く、例えば、図示しないが、モジュール容器2の径方向(R方向)とエレメントユニット4の中心軸21の方向が一致するように設置して、モジュール容器2の側面7を介して外部と通じる構造でも構わない。さらに、モジュール容器2とエレメントユニット4との固定方法にも制限はなく、モジュール容器2と端面部材12とにネジ部を設けてそれぞれを締結固定するなど、気密性が確保されていればよい。
【0026】
また、分離膜エレメント8を構成する分離成分流路材17は中空状のパイプが好ましいが、分離成分が通過することができる流路を備えていれば、どのような流路材でも構わない。
【0027】
ケース16は、分離膜14に物質を流入させるために孔15が開孔されているが、分離膜14に物質が流入しやすく、分離効率を向上させるために、分離膜14と接する部分には複数の孔15が開孔されていることが好ましい。
【0028】
ここで、ケース16の厚みが薄すぎると、ケース16の剛性が低下して分離膜エレメント8の強度が低下するため、分離膜エレメント8の連結個数やエレメントユニット4の長さ、分離成分流路材17の剛性によっては、エレメントユニット4が重力方向に撓んで、エレメントユニット4が変形し、モジュール容器2への装着性が低下したり、変形が大きすぎるとケース16の一部に亀裂が生じてエレメントユニット4が破損する場合がある。したがって、ケース16の厚みは0.5mm以上であることが好ましい。
【0029】
また、ケース16、分離成分流路材17、連結部材9、端面部材12の材質は、特に限定されず、分離膜モジュール1の使途に応じて、樹脂、金属など最適なものを選択すればよい。
【0030】
膜束固定材18の材質も、特に限定されず、ケース16と、分離成分流路材17と、分離膜14と、を封止固定させることができればよく、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂などの樹脂系接着剤が好適に用いられるが、圧縮強度に優れ、寸法安定性や耐久性にも優れるエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0031】
本発明に用いられる分離膜14の濾過方式は、分離膜14の外部から内部に向かって物質の構成成分の一部が透過される濾過方式が好適である。また、本発明の分離膜14としては、特に線形状の分離膜単体を複数集束したものが好ましい。分離膜単体の断面形状としては、外形が円形や楕円形、三角形や四角形といった多角形などいずれでもよい。
【0032】
さらに詳細な断面の構造としては、例えば、分離膜単体の外部側に形成される分離層で物質の分離を行い、中空となった分離膜単体の内部側で分離成分が流れることができる中空糸状の形状や、例えば、分離膜単体の外部側の密度が“密”で、分離膜単体の内部側の密度が“粗”であったり、外部側と内部側との構造が異なり、外部側が緻密な分離層で、内部側が連続多孔構造となっていることで、外部側で物質の分離を行い、内部側で分離成分が流れることができる中実糸状の構造が好ましい。
【0033】
なお、本明細書においては、中空糸膜束のような集合体を「分離膜」と表し、中空糸膜のような単体を「分離膜単体」と表している。
【0034】
分離膜14(分離膜単体)の材質としては、単一素材で構成されたもの、複数の素材で構成されたもの、いずれでもよく、使用用途に応じて耐熱性や耐圧性などの機械的耐久性、化学的耐久性などを満たせば特に限定されないが、例えば、中空糸状の分離膜単体であれば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体などのフッ素系樹脂や、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステルや、ポリスルホンなどのポリスルホン系樹脂などの樹脂を含有しているものが一例として挙げられる。また、中実糸状の分離膜単体であれば、ゼオライト、シリカ、炭素繊維、などの無機質材料を用いた無機膜が一例として挙げられる。
【0035】
分離膜単体の外径は、例えば0.05mm〜2mmのものが好ましく用いられる。特に、本発明は、分離膜14の内部を分離成分が通過する際に発生する圧力損失が高い分離膜に好適に用いられるため、外径0.05mm〜1.2mmの細径の分離膜単体であることがさらに好ましく、分離膜14の内部を通過する際の圧力損失が高くなりやすい中実糸状の分離膜単体であることが特に好適である。
【0036】
内部を通過する際の圧力損失が高い分離膜を用いたり、分離成分の粘性が高かったりする場合は、分離膜14の内部を分離成分が通過する際に発生する圧力損失が大きくなり、分離膜モジュール1に必要な膜分離能力が得られなくなる場合がある。そこで、膜分離能力を上げようとして1つの分離膜エレメント8の分離膜14の膜長(X方向の長さ)を長くしても、分離膜14の内部を透過する際の圧力損失は大きくなる一方である。
【0037】
そのため、本実施形態においては、分離膜エレメント8を3つ連結してエレメントユニット4を構成している。ここで、一つのエレメントユニット4を構成する分離膜エレメント8の数は、モジュール容器2に収まる限りその個数に制限はない。分離膜エレメント8の数が多いほど、エレメントユニット全体として圧力損失の影響を小さくすることができ、高い分離効率を得ることができる。
【0038】
次に、図1を用いて、分離膜モジュール1の内部に流入した物質の流れを詳細に説明する。
【0039】
分離膜モジュール1の流入口5と流出口6とは、例えば図示しないプラントラインにそれぞれ接続されている。そして、図示しない混合液体や混合気体などの混合流体が、矢印Aで示すように流入口5からモジュール容器2の内部へ流入すると、流入した混合流体は、矢印Bで示すように分離膜エレメント8のケース16の孔15を通過して、分離膜14に触れることで、構成成分の一部が分離膜14の内部へと透過される。
【0040】
次に、分離膜14の内部へと透過した分離成分は、分離膜14の内部を通って分離膜14の両端へと流れていき、分離膜14の端面19にある開口から流れ出ていく。そして、流れ出た分離成分は、矢印Cで示すように通過部材10や端面通過部材13の内部を通過し、通過部材10の中心穴22、分離成分流路材17、端面通過部材13の中心穴23、および、端面部材12の開口部11で形成された流路(分離成分をエレメントユニット4の外へ排出するための流路)を通過することで、エレメントユニット4の各両端部に設けられた端面部材12の開口部11から、矢印Dのように分離膜モジュール1の外部へと流れ出ていく。一方で、分離膜エレメント8により分離されなかった残存成分は、矢印Eで示されるように、分離膜モジュール1から排出されていく。
【0041】
この分離膜モジュール1を、例えば、海水を淡水化させることを目的とするような水処理用途や、ガス分離用途に使用する場合は、所望の膜分離性能を得るために、分離膜14、すなわち分離膜モジュール1内部に、例えば5MPa以上の非常に高い圧力を与えて運転することがある。
【0042】
分離膜モジュール1の中空内部に高圧が付加されると、透過前流体が存在する部分と透過後流体が存在する部分とには大きな圧力差が発生する。特に、膜束固定材18には、矢印P方向に大きな圧力がかかることになる。したがって、膜束固定材18の端面24に何も支持するものがないと、膜束固定材18が、分離膜14やケース16や分離成分流路材17から剥離したり、膜束固定材18が破損したりするため、膜束固定材18の端面24に接するように通過部材10を配置する。
【0043】
ここで、図3に示すように分離膜エレメント8の各連結箇所に2枚の通過部材10を配置しても、2枚の通過部材10の間に空間29があると、各通過部材10は一面のみに隣接する膜束固定材18側から矢印P方向に大きな圧力を受けることになるため、膜束固定材18の変形を支えるためには、通過部材10の厚みを上げて、剛性を確保する必要が出てくる。そのため、本実施形態においては、図1に示すように、通過部材10は、その両端面を隣り合う分離膜エレメント8の膜束固定材18にそれぞれ接触させて配置する。
【0044】
通過部材10は、単一の部材からなるものであっても複数の部材からなるものであってもよい。複数の部材からなるものとしては、例えば、図4に示すように、流体通過性を有する2枚の片面通過部材27と、その間に挟持された中間材28とを接触させて配置する構成も考えられる。この構成では、矢印Dで示す方向に分離成分が流れる。また、各片面通過部材27には、一面のみに膜束固定材18が接触することになるが、矢印P方向に各膜束固定材18側から加わる力を中間材28で支持することが可能となる。しかしながら、部品点数が増すと高コストになるため、通過部材10は、図1に示すように、単一の部材からなるものであることが好ましい。
【0045】
また、通過部材10の厚みは特に限定されないが、強度維持の観点から3mm以上が好適であり、5mm以上がさらに好適である。
【0046】
一方、重量、コスト、スペースの面から30mm以下が好適であり、10mm以下がさらに好適である。通過部材10の厚みが増すと、設計上分離膜モジュールの長さに制約がある場合には、通過部材10の厚み×個数分だけ分離膜14の長さが犠牲になるため分離性能が低下する。
【0047】
通過部材10の材質は、両面圧縮荷重でも形状を保持できる圧縮強度が確保された材質であれば特に限定されない。
【0048】
通過部材10は、透過後流体がエレメントユニット4の外へ排出するための流路へと通過できるものであれば、どのような形態でも構わない。例えば、通過部材10の両側の端面25に図示しないような溝加工を行い、溝部分を流路とすることができる。
【0049】
また、通過部材10として、流体通過性のある多孔質部材を用いることも好ましい。このような多孔質体を用いれば、通過部材10の内部で、通過部材10の長さ方向(X方向)や径方向(R方向)などいずれの方向にも自在に分離成分が通過可能となるため、分離成分が通過しやすくなる他、微細な孔が無数に開孔しているため、分離成分の流路が閉塞されにくい。また、図1のような通過部材10の中心穴22を設けなくても、微細な孔を介して分離成分を外部に排出することも可能となる。つまり、分離成分流路材17間を結ぶ、多孔質の空隙部分により形成される架空の経路が、分離成分をエレメントユニット4の外へ排出するための流路となる。
【0050】
このような多孔質部材としては、例えば、焼結金属やセラミックを用いることができる。焼結金属の材質としては、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、チタンなどいずれでもよいが、機械強度や耐食性、コスト面で優れるステンレス鋼がより好適に用いられる。通過部材10として用いる多孔質部材の濾過精度は、使用用途に応じて適正に選択すればいずれでもよいが、1μm〜120μmの範囲が好ましい。
【0051】
また、図1に示すように、エレメントユニット4の両端部に位置する分離膜エレメント8と端面部材12との間に挟まれる端面通過部材13についても、連結部の通過部材10と同様の理由で、膜束固定材18の端面24と端面部材12の内面30とに接するように配置することが好ましい。
【0052】
端面通過部材13も、通過部材10と同様に、圧縮荷重で形状を保持できる圧縮強度が確保されて、分離成分が通過することができさえすれば、どのような形状や材質を用いても構わない。端面通過部材13の形状や材質は、通過部材10と同一でなくても構わないが、同一部材を用いた方が、部材を共用できることで分離膜モジュール1のコストを下げることが可能となる。そのため、端面通過部材13は、前述の通過部材10と同様の材質、構造を有するものを用いることが好ましい。
【0053】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2016年5月25日出願の日本特許出願(特願2016−104084)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0054】
1:分離膜モジュール
2:モジュール容器
3:モジュール容器の端面
4:エレメントユニット
5:流入口
6:流出口
7:モジュール容器の側面
8:分離膜エレメント
9:連結部材
10:通過部材
11:開口部
12:端面部材
13:端面通過部材
14:分離膜
15:孔
16:ケース
17:分離成分流路材
18:膜束固定材
19:分離膜の端面
20:開口部を有しない端面部材
21:エレメントユニットの中心軸
22:通過部材の中心穴
23:端面通過部材の中心穴
24:膜束固定材の端面
25:通過部材の端面
27:片面通過部材
28:中間材
29:空間
30:端面部材の内面
図1
図2
図3
図4