(54)【発明の名称】眼科用レーザ屈折矯正装置、眼科用フォトチューニング設定装置、眼科用フォトチューニングシステム、眼鏡用フォトチューニング設定装置、及びこれらに用いられるプログラム、眼科用レーザ手術装置
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の典型的な実施形態について以下に説明する。
<概要>
<フォトチューニング反応>
本実施形態の一つの側面は、レーザ照射を用いて透光体の屈折率を光学的に調整することによって眼の屈折特性(例えば、眼屈折力、収差)を矯正することであり、例えば、眼科医療分野、眼鏡分野において利用可能である。以下の説明では、透光体の屈折率を光学的に調整するための光学技術を、フォトチューニングと称して説明する。フォトチューニングが施された透光体は、被検眼の近視、遠視、乱視、高次収差、色収差等を矯正するために用いられてもよい。また、多焦点性の調整が行われてもよい。フォトチューニング技術は、透光体の屈折率を調整することによって、透光体の屈折率とは異なる一つ又は複数のレンズを、透光体の内部に書き込むようにしてもよい。
【0010】
本実施形態の他の側面としては、レーザ照射を用いて透光体の屈折率を光学的に調整することによって、フォトチューニングされたレンズを形成(製造)することであり、例えば、眼科医療分野、眼鏡分野において利用可能である。
【0011】
フォトチューニングの手法としては、例えば、Norbert Hamppらによって提案されている光化学的な反応を利用して屈折率を調整する手法(例えば、米国特許公開2009―157178号公報)、Perfect Lens社から出願されている疎水性材料の親水性を変化させて屈折率を調整する手法(例えば、米国特許公開2014―135920号公報)、Way Knoxらによって提案されているハイドロゲル材料の親水性を変化させて屈折率を調整する手法(例えば、米国登録8337553号公報)、又はWay Knoxらによって角膜の屈折率を変化させる手法(例えば、米国登録8617147号)があげられるが、もちろんこれに限定されない。
【0012】
<フォトチューニングのための透光体>
透光体は、例えば、第1の屈折率を有し、かつ、光透過性を有する透光体であってもよい。透光体の屈折率は、フォトチューニングによって調整される。フォトチューニングが適用される透光体としては、典型的には、人工の透光体であってもよく(
図1、
図2の透光体600参照)、例えば、眼用レンズであって、例えば、人工レンズ(例えば、眼内レンズ(IOL、ICL)、眼鏡レンズ、コンタクトレンズ、人工角膜であってもよい。人工の透光体としては、一般的な光学材料が用いられてもよい。また、フォトチューニングが適用される透光体としては、天然のレンズ(例えば、眼の角膜、水晶体)であってもよい。
【0013】
なお、人工透光体の場合、フォトチューニング専用の光学材料(例えば、光学ポリマー材料であって、紫外線の吸収特性が相対的に高く設計されている)が用いられてもよい。紫外線の吸収特性が高いことによって、レーザの2光子吸収が促進されうる。
【0014】
人工透光体が眼内レンズの場合、眼内レンズは、例えば、眼の前房、眼の後房、又は水晶体内のいずれかに挿入されるように設計された眼内レンズであってもよい。眼内レンズとしては、例えば、眼内に挿入され、かつ、予めレンズ特性を有する眼内レンズであってもよい。また、眼内に挿入された光学材料に対してフォトチューニングが施されることによってレンズ特性が付加される眼内レンズであってもよい。
【0015】
人工の透光体に対してフォトチューニングを施す場合、眼に対して人工透光体が備えられた状態、眼に対して人工透光体が備えられる前の少なくともいずれかでフォトチューニングが実施されてもよい。眼に対して人工透光体が備えられる例としては、眼内に透光体が挿入される場合、或いは眼鏡フレームを介して眼前にレンズが設けられる場合があり得る。
【0016】
透光体は、前面及び後面を有し、レンズ特性が形成される本体を備えてもよい。つまり、透光体は、光を屈折又は回折させて発散又は集束させる特性が形成されてもよい。この場合、前面と後面は、略平坦であってもよい。もちろん、前面と後面は曲面であってもよい。本実施形態では、前面が外側、後面が網膜側として説明される。眼内レンズの場合、本体に加え、支持部(ループ)を備えてもよい。本体は、レンズ特性を備える光学部として用いられる。
【0017】
なお、フォトチューニングによって、透光体の内部には、一つのレンズが形成されてもよいし、複数のレンズが形成されてもよい(例えば、
図3の第1のレンズ600、第2のレンズ620参照)。
【0018】
レーザビームの焦点は、透光体の内部にレンズを書き込むために移動される。透光体の内部にレーザ光を集光されることで、透光体の内部の屈折率が修正される。この結果として、レーザが照射された領域の屈折率は、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率に調整される。これを利用して、予め設定されたレンズパターンに対応する照射領域にレーザビームの焦点が移動されることによって、レンズパターンに対応するレンズが透光体の内部に形成される。レーザの照射領域は、第2の屈折率を持つ屈折率変化領域であり、透光体の内部において、第2の屈折率を持つレンズとして機能する。
【0019】
レーザビームは、例えば、透光体の表面(前面もしくは後面)から順に照射されてもよい。もちろん、レーザビームは、透光体の前面と後面との間の中間から照射されてもよい。なお、照射開始位置は、フォトチューニングの手法によって適宜設定されてもよい。この場合、後面側から順にレーザビームを照射してもよく、これによって、屈折率変化領域が次のレーザビームの光路中に配置されないので、所定のレンズパターンをスムーズに形成させることができる。
【0020】
<マルチレベル位相型回折レンズの書込>
本実施形態に係るフォトチューニング技術は、一つ又は複数のマルチレベル位相型回折レンズ(以下、MP回折レンズと省略する場合あり)を、透光体の内部に書き込むようにしてもよい(
図5のレンズ610参照)。プロセッサは、レーザ光の集光位置を走査させる走査ユニットを制御し、マルチレベル位相型回折レンズのレンズパターンに対応する透光体の照射領域に、レーザ光の集光位置を走査させてもよい。これによって、マルチレベル位相型回折レンズを透光体の内部に形成できる。プロセッサは、レンズパターンを予め設定できる。
【0021】
複数のMP回折レンズが書き込まれる場合、各MP回折レンズは、透光体本体の前後方向(光軸方向)に関して異なる領域に形成されてもよい。
【0022】
マルチレベル位相型回折レンズは、位相型回折レンズ(Kinoform)をマルチレベルに近似したレンズである。マルチレベル位相型回折レンズは、例えば、鋸状の断面形状を有する回折レンズ(
図4のレンズ610参照)を、階段状の断面形状で近似する(
図5のレンズ610)ことによって形成される。
【0023】
MP回折レンズにおけるマルチレベル(階段数)は、例えば、9レベル以下4レベル以上であってもよく、例えば、マルチレベルが8であってもよい。マルチレベルを8とした場合、95%の回折効率を得ることができ、マルチレベルを9とした場合、96%の回折効率を得ることができる。なお、4レベルで81%、5レベルで87.5%、6レベルで91.2%、7レベルで93.4%の回折効率が得られる。ちなみに、3レベルでは、68.4%の回折効率となり、10レベルでは、96.8%の回折効率となる。
【0024】
マルチレベルを9レベル以下とすることで、矯正に十分な回折効率を得ることができると共に、レーザの照射パターンを簡略化することができる。照射パターンの簡略化は、例えば、手術時間の短縮化に繋がり、手術における被検眼の負担を軽減できる。
【0025】
マルチレベルの数は、眼の屈折特性に応じて変更されてもよい。なお、マルチレベルの数は、レイヤーの数としてカウントされ、1レイヤーは、例えば、パルスレーザの1パルスで生成される屈折率変化領域の厚みの整数倍にて形成されてもよい。各レイヤーは、前面にほぼ平行に形成されてもよい。MP回折レンズのパターンは、近視又は遠視の矯正の場合、例えば、透光体の前後方向から見て環状リングパターンであってもよい(
図6参照)。また、乱視又は高次収差の矯正の場合、レンズパターンは、他のパターンであってもよい。
【0026】
例えば、MP回折レンズを書き込む場合、透光体表面からの距離毎にレーザビームを照射してもよく、例えば、第1の距離にてXYスキャナによってレーザビームの焦点をXY方向に関して走査した後、レーザビームの焦点をZスキャナによってZ方向に走査することによって、レーザビームの焦点を第2の距離に変更してもよい。この場合、XY方向は、透光体の前後方向(光軸方向)に直交する方向、Z方向は、透光体の前後方向(光軸方向)として規定される。もちろん、レンズの半径方向における断面毎にレーザビームを照射してもよい。なお、MP位相型レンズを透光体に形成する手法については、例えば、山田らによるフェムト秒レーザによってシリカガラス内に複数のマルチレベル位相型レンズを書きこむ手法(K.Yamada, K.Itoh, “Multilevel phase-type diffractive lenses in silica glass induced by filamentation of femtosecond laser pulses”, Opt.Let., 29(16), p1846-1848(2004))を参照されたい。
【0027】
フォトチューニングが施された透光体に対して入射される光は、屈折率変化領域を通過するとき、第2の屈折率による光路差(位相変化)が生じる。さらに、前後方向における屈折率変化領域の厚みによって、光路差の大きさが異なる。そこで、屈折率変化領域の厚みを調整することで、所望の屈折特性に応じた位相型回折レンズのパターンを求めることができる。この場合、所望の屈折特性に応じた位相型回折レンズ(Kinoform)を近似させることで、マルチレベル位相型回折レンズのパターンを求めることができる。
【0028】
レンズパターンをプランニングする際の具体例の一つを以下に示す。
【0029】
1)瞳孔位置で眼球全体の収差We(x、y)を測定
2)断層画像にて角膜〜透光体(例えば、IOL)までの前眼部眼球形状を測定
3)術後の目標とする眼球全体の収差Wt(x、y)を設定
4)2)の結果に基づきWe(x、y)、Wt(x、y)を透光体内のレンズを作成したい深さIでの収差に変換する。ここで、変換された収差は、We’(x、y)、Wt’(x、y)でそれぞれ表される。例えば、逆光線追跡によって変換処理が行われてもよい。
5)次に、Iに、x方向及びy方向へのふれの各δx(x、y)、δy(x、y)
【数1】
を発生させる小プリズムを作成すればよく、近似的には、x方向及びy方向の頂角θx(x、y)、θy(x、y)が、
【数2】
の小プリズムの分布をIOL内の深さIに作成すれば良い。ただし、n’は調整後の透光体の屈折率、nは調整前の透光体の屈折率である。
6)θx(x、y)、θy(x、y)を基に、屈折レンズ又は回折レンズに対応するパターンを作成する。つまり、θx(x、y)、θy(x、y)は、レンズパターンに変更される。ここで、屈折レンズは、光の屈折現象を利用したレンズとして表すことができ、回折レンズは、modulo 2pπ kinoformとして表すことができ、マルチレベルに近似されてもよい。
【0030】
なお、上記1〜6)において、pを1より大きい整数とする、いわゆるHigher-orderの回折レンズとし、色収差を補正してもよい。この場合、1つ以上の層で色収差を補正する機能を持たせてもよい。色収差補正は、眼球全体の色収差を考慮して分解能又は焦点深度をコントロールしてもよい。
【0031】
なお、透光体の深さIでの光軸と垂直な領域において、異なる複数の屈折レンズ又は回折レンズ(kinoform)を作成し、多焦点化させてもよい。
【0032】
あるいは、pとして整数でない正の値を使うことで回折効率を下げ、多焦点化してもよい。あるいは、目標とする眼球全体の収差Wt(x、y)を複数設定し、レンズを重畳させる多焦点化させてよい。
【0033】
なお、透光体内での目標となる波面を求める際、焦点深度を制御するために、別途球面収差値を付加してもよい。
【0034】
なお、Wt’(x、y)を求める上で、目標とする3DPSF分布からK.H.Brenner, ”Method for designing arbitrary two-dimensional continuous phase elements”, Opt.Let., 25(1), p31-33(2000)の方法を使ってもよい。つまり、目標とするPSF分布から位相板の位相分布を求めてもよい(K.H.Brenner, ”Method for designing arbitrary two-dimensional continuous phase elements”, Opt.Let., 25(1), p31-33(2000))。この場合、多焦点を含むレンズの位相分布を設計し、マルチレベルに近似してもよい。
【0035】
なお、上記において、眼軸長、2)で得た前眼部眼球形状、透光体(例えば、IOL)の形状、及び屈折率に基づいて、We(x、y)を算出してもよい。また、自覚値、他覚値(例えば、オートレフ値)に基づいてWe(x、y)を算出してもよい。
【0036】
なお、透光体が予めレンズ特性を有する場合、予め備わるレンズ特性と、フォトチューニングによって書き込まれたレンズ特性との合計が、透光体の屈折特性となる。また、透光体が予めレンズ特性を持たない場合、フォトチューニングによって書き込まれたレンズ特性が、透光体の屈折特性となる。
【0037】
なお、第1の屈折率からの変化量は、透光体内での照射位置毎に変更してもよい。つまり、第2の屈折率は、透光体が基礎的に備える第1の屈折率とは異なっていればよい。つまり、フォトチューニングによる屈折率変化量は、必要な屈折特性に応じて変更してもよい。この場合、屈折率変化領域の厚みと屈折率変化量のセットでMP回折レンズのパターンが光学的に設計されてもよい。また、パルスエネルギー又は照射間隔を変更することによって平均屈折率を調整したgradient index lensを形成してもよい。
【0038】
なお、多焦点(例えば、2重焦点、3重焦点)の機能を透光体に持たせるようにしてもよい。マルチレベル数、上記p値を調整して多焦点化させてもよい。例えば、透光体において、複数の回折構造をオーバーラップさせて多焦点化してもよいし、複数の回折構造を光軸方向に関して異なる位置に設けて多焦点化してもよい。さらに、光軸方向(前後方向)に関して直交する方向に透光体(例えば、IOL上、角膜上)を分割し、分割されたセグメント単位で、異なるレンズを形成させることで多焦点化を行ってもよい。また、光の回折現象を用いる位相フレネルレンズを、透光体に形成することによって、色収差を補正するようにしてもよい。
【0039】
以上のように、マルチレベル位相型回折レンズを透光体の内部に書き込むことによって、レーザの照射パターンが簡素化され、数10MHz等の繰返周波数が非常に大きいレーザ光源を用いる必要が必ずしもなくなる。すなわち、結果として、患者眼の処置(例えば、角膜の切断、白内障の混濁部の破砕等)を主な用途とする眼科用レーザ手術装置と同程度の繰返周波数(例えば、数百KHz)を持つレーザ光源を用いることができる。したがって、マルチ位相型回折レンズの書込は、患者眼組織への処置と、フォトチューニングとを、同じ眼科用レーザ手術装置で行うことに適している。
【0040】
なお、プロセッサは、レンズの半径方向に関する照射領域のサイズを、透光体の前後方向に応じて段階的に変化させることによって、マルチレベル位相型回折レンズを透光体の内部に形成してもよい。
【0041】
<プランニング>
次に、患者眼に透光体が備えられた状態でフォトチューニングを行う場合において、レンズパターンを設定する際の一例を示す(
図7参照)。パターン設定は、典型的には、プロセッサによって行われる。
【0042】
例えば、書き込むべきレンズのパターンは、眼の屈折特性RCと、透光体の位置情報TPとに基づいて設定されてもよい。ここでの眼の屈折特性RCは、フォトチューニングが適用される透光体が眼に挿入された状態での眼の屈折特性である。被検眼の屈折特性としては、例えば、眼球全体の波面収差、眼の自覚式眼屈折力、眼の他覚式眼屈折力のいずれかであってもよい。眼の屈折特性RCは、屈折測定デバイスによって測定されてもよい。
【0043】
透光体の位置情報TPは、例えば、断層撮像デバイスによって撮像された前眼部断層像に基づいて取得されてもよい。前眼部断層像は、フォトチューニングが適用される透光体を含む前眼部断層像であり、例えば、角膜と、フォトチューニングが適用される透光体とが画像化された断層画像データであってもよい。なお、水晶体が残存していれば、水晶体も画像化される。また、前眼部断層像としては、前眼部のある経線方向における断層データであってもよいし、前眼部全体の3次元断層データであってもよい。
【0044】
透光体の位置情報は、画像処理によって自動的に検出されてもよいし、検者の手動操作による位置指定によって検出されてもよい。なお、透光体が人工透光体の場合、人工透光体の位置情報と共に、患者眼の天然レンズ(角膜又は水晶体)の位置情報が、前眼部断層像に基づいて取得されてもよい。これによって、眼の屈折特性に関連する組織及び人工物の位置情報が取得され、パターン設定に利用されうる。なお、透光体が天然レンズの場合、患者眼の天然レンズ(角膜又は水晶体)の位置情報が、前眼部断層像に基づいて取得されてもよい。
【0045】
プロセッサは、角膜の位置情報、透光体の位置情報に基づいて、透光体を含む前眼部の光学配置情報を求める。前眼部の光学配置情報としては、角膜及び透光体の相対的な位置関係であってもよいし、角膜及び透光体の絶対位置であってもよい。光学配置情報は、眼の光軸方向に関する一次元的位置情報であってもよいし、眼の光軸方向に直交する一方向と眼の光軸方向とによる二次元的位置情報であってもよいし、3次元的位置情報であってもよい。この場合、水晶体が残存していれば、水晶体を含めた光学配置が求められる。
【0046】
次に、プロセッサは、眼の屈折特性RCに基づいて、フォトチューニングによって実施する屈折特性の矯正量を求める。矯正量として、予め設定された目標屈折特性に対する眼の屈折特性RCの差分が求められてもよい。目標屈折特性は、術者又は患者毎に任意に設定されてもよいし、予め固定値として設定可能であってもよい。目標屈折特性としては、例えば、眼球全体の3次元PSF分布、波面収差、眼屈折力のいずれかであってもよい。また、矯正量として、眼の屈折特性RCにおいて矯正したい屈折力特性(例えば、眼屈折力(球面度数、乱視度数等)、収差(不正乱視分、球面収差等)が求められてもよい。
【0047】
矯正量としては、フォトチューニングによって矯正される眼全体の屈折特性(フォトチューニング量)の変化量として規定されてもよい。矯正量は、フォトチューニングによって矯正すべく予め設定された眼の屈折特性の変化情報に対応する。
【0048】
矯正量が求められると、プロセッサは、予め設定された矯正量を得るために透光体に対して書き込むべき屈折特性を、透光体を含む前眼部の光学配置情報を利用して算出する。ここで、プロセッサは、透光体を含む前眼部の光学配置情報と、前眼部の各組織の屈折率、透光体の第1の屈折率を考慮した上で、予め設定された矯正量を矯正するために必要なレンズの屈折特性を算出してもよい。この場合、例えば、書き込まれるレンズによる光の結像状態を、光線追跡法等の光学シミュレーションを用いることで、透光体に対して書き込むべきレンズの屈折特性を求めることができる。この場合、レンズの屈折特性として、複数のレンズからなるレンズ系の屈折特性として求められてもよいし、一つのレンズの屈折特性として求められてもよい。
【0049】
MP回折レンズを形成する場合、位相型回折レンズの屈折特性は、マルチレベルに近似され、MP回折レンズの屈折特性が算出される。
【0050】
さらに、MP回折レンズの基礎となる屈折特性を、目標となる光学特性を考慮した繰り返し演算によって求め、予め設定されたマルチレベルを考慮して、マルチレベルに近似されてもよい。この場合、目標となる屈折特性に対して、空間周波数フィルタを掛け合わせることで、予め設定されたマルチレベルを考慮してマルチレベルに近似されてもよい。より詳細には、目標となる屈折特性が3次元PSFとして設定された場合、回折積分によって関係づけられる3次元PSFと位相型回折レンズの位相分布とを繰り返しで位相分布を求める。
【0051】
上記のようにして、書き込むべきレンズの屈折特性が算出されると、これに対応するレンズパターンが設定される。この場合、透光体の表面位置を基準としてレンズの位置が設定されてもよい。透光体の位置情報を基準とすることで、確実なレーザ照射が可能となる。この場合、書き込むべきレンズパターンとして、複数のレンズからなるレンズ系の屈折特性に基づいて、レンズ系における各レンズのパターンが設定されてもよい。この場合、複数のレンズパターンが設定される。
【0052】
この場合、プロセッサは、透光体の位置情報と患者眼の屈折特性とに基づくレンズパターンに対応する透光体の照射領域に、レーザ光の集光位置を走査させてもよい。これによって、設定されたレンズパターンに対応するレンズが、透光体の内部に形成される。
【0053】
上記手法によれば、例えば、フォトチューニングの矯正量を、前眼部における透光体の光学配置を考慮して求めることができる。これによって、患者眼の特性に応じて精度よくフォトチューニングを行うことができる。
【0054】
なお、前眼部断層像に加え、眼軸長情報(角膜から網膜までの距離)を得るようにしてもよい。プロセッサは、前眼部断層像と眼軸長情報とに基づいて、角膜、透光体、網膜を含む眼球全体の光学配置情報が得られる。これによって、透光体に形成されるレンズの網膜に対する結像状態をより正確にシミュレーションできる。この場合、プロセッサは、角膜から網膜までの眼球全体の断層像に基づいて、角膜、透光体、網膜を含む眼球全体の光学配置情報が得てもよい。
【0055】
なお、透光体に書き込むべきレンズの屈折特性を決定する際、眼の屈折特性を得る手法として、超短パルスレーザ装置に設けられた屈折測定デバイスが用いられてもよいし、超短パルスレーザ装置とは異なる位置に配置された屈折測定デバイスが用いられてもよい。同様に、眼の断層情報を得る手法として、眼科用レーザ装置(例えば、眼科用レーザ屈折矯正装置、眼科用レーザ手術装置)に設けられた断層撮像デバイスが用いられてもよいし、眼科用レーザ装置とは異なる位置に配置された断層撮像デバイスが用いられてもよい。
【0056】
なお、プロセッサは、書き込むべきレンズパターンを予めプランニングするために取得された第1の断層画像に基づいて、第1の断層画像における透光体の位置情報である第1の位置情報を取得してもよい。また、プロセッサは、レンズパターンがプランニングされた後であって、眼球インターフェースが装着された状態で取得された第2の断層画像に基づいて、第2の断層画像における透光体の位置情報である第2の位置情報を取得してもよい。さらに、プロセッサは、第1の位置情報と第2の位置情報とを対応付け、第2の断層画像における透光体に対してレンズパターンを設定してもよい(
図12参照)。
【0057】
<フォトチューニングのためのレーザ装置>
本実施形態に係るフォトチューニングでは、透光体にレンズを書き込むためのレーザを効果的に発生できる超短パルスレーザ装置(例えば、フェムト秒レーザ装置、ピコ秒レーザ装置)を用いてもよい(
図8参照)。もちろん、フォトチューニングが実現できれば、超短パルスレーザ装置に限定されない。
【0058】
フォトチューニングのための超短パルスレーザ装置は、前眼部組織(例えば、角膜、水晶体)を処置するための眼科用超短パルスレーザ装置との複合機であってもよいし、フォトチューニングのための単体機であってもよい。前眼部組織の処置としては、典型的には、破砕・切断であり、白内障における水晶体混濁部の破砕、角膜内部の切断による屈折矯正手術、水晶体前面の切断によるCCC手術、等が代表的である。
【0059】
超短パルスレーザ装置は、フォトチューニングのためのレーザを発生させるレーザ光源と、フォトチューニングのためのレーザの光を透光体へと導くための照射光学系と、を少なくとも備えてもよい。照射光学系は、透光体の屈折率を調整するためのレーザ光を、患者眼に備えられた透光体の内部にレーザ光を導くために用いられてもよい。
【0060】
レーザ光源から出射されるレーザビームは、非線形効果(例えば、多光子吸収)によって、レーザ焦点での屈折率の変化を透光体にもたらす。フォトチューニングのためのレーザ光源としては、紫外線帯域での2光子吸収効果を発生させるべく、可視帯域(例えば、緑色帯域)の超短パルスレーザが用いられるのが有利である。もちろん、近赤外域の超短パルスレーザであっても、一定の効果は得られる。
【0061】
照射光学系は、例えば、リレー光学系と、光スキャナと、対物レンズと、を備えてもよい。光スキャナは、XYスキャナと、Zスキャナと、を備えてもよい。具体的構成については、例えば、特開2015−37474号公報を参照されたい。
【0062】
なお、照射光学系は、フォトチューニングのためのレーザの光を、眼内に配置された透光体に導くための光学系であってもよい。この場合、照射光学系と眼との間に、眼球インターフェースが配置されてもよい。
【0063】
<複合機>
眼科用レーザ装置は、前眼部組織を処置するためのレーザである第1のレーザと、透光体にレンズを書き込むためのレーザである第2のレーザと、の両方を発生できる複合機であってもよい(
図8参照)。第1のレーザは、フォトチューニングのためのレーザとは異なり、前眼部組織を処置可能なレーザを出射する。つまり、第1のレーザの特性は、前眼部組織の一部を破砕又は切断するのに対し、第2のレーザの特性は、透光体の材質を変質させて透光体の屈折率を変更させる点で異なる。複合機において、照射光学系は、第1のレーザと第2のレーザを透光体へと導くことができる。第1のレーザ、第2のレーザは、選択的に透光体に照射されてもよい。
【0064】
眼科用レーザ装置は、レーザ光源ユニットと、照射光学系と、走査ユニットと、を少なくとも備えてもよい。レーザ光源ユニットは、患者眼を処置するための第1のレーザ光と、透光体の屈折率を調整するための第2のレーザ光とを選択的に出射可能であってもよい。走査ユニットは、照射光学系の光路中に配置され、第1のレーザ光又は第2のレーザ光の集光位置を走査してもよい。
【0065】
眼科用レーザ装置には、モード切換部が設けられてもよく、第1のレーザ光を用いて患者眼を処置する第1の手術モードと、透光体の屈折率を調整するための第2のレーザ光を用いてフォトチューニングを行うための第2の手術モードとを切り換えてもよい。
【0066】
眼科用レーザ装置に設けられた制御部は、第1の手術モードに設定された場合、走査ユニットを制御して、第1のレーザ光の集光位置を走査させることによって、患者眼を処置してもよい。また、制御部は、第2の手術モードに設定された場合、走査ユニットを制御して、予め設定されたレンズパターンに対応する照射領域に第2のレーザ光の集光位置を走査させることによって、レンズを透光体の内部に形成してもよい。
【0067】
上記複合機によれば、患者眼の処置(破砕、切断)とフォトチューニングを1台の装置で実現できる。
【0068】
より詳細には、第1のレーザは、第2のレーザに対し、出射波長、レーザ出力の少なくともいずれかが異なる。典型的には、第1のレーザの特性につき、中心波長が近赤外域であってもよい。レーザ出力は、前眼部組織が破砕又は切断される閾値よりも高い出力を持っていてもよい。また、第2のレーザの特性につき、中心波長が可視域(例えば、緑色帯域)であってもよく、レーザ出力は、前眼部組織が破砕又は切断される閾値よりも低く、かつ、透光体の屈折率を調整できる出力を持っていてもよい。。
【0069】
複合機は、第1のレーザーを発生させるための第1のレーザ光源と、第2のレーザを発生させるための第2のレーザ光源であって第1のレーザ光源とは異なる第2のレーザ光源とをそれぞれ備える構成であってもよい。
【0070】
複合機は、第1のレーザと第2のレーザのいずれか一方に対応する波長のレーザ光を発生させるためのレーザ光源(
図9、
図10の光源312参照)と、レーザ光源からのレーザ光の波長を第1のレーザと第2のレーザのいずれか他方に対応する波長に変換するための波長変換光学素子(
図9、
図10の波長変換光学素子314参照)と、を備える構成であってもよい。波長変換光学素子としては、例えば、非線形光学結晶が用いられてもよい。非線形光学結晶としては、代表的には、基本波長である1064nmを第2高調波の532nmに波長変換するためのKTP結晶、BBO結晶、LBO結晶等があげられるが、もちろんこれに限定されない。
【0071】
波長変換光学素子を用いる場合、照射光学系は、波長変換光学素子を通過せず第1のレーザを眼に導くための第1の光学系と、波長変換光学素子が配置され、第1のレーザを第2のレーザに変換して第2のレーザを眼に導くための第2の光学系と、備えてもよい。この場合、第1の光学系に対応する第1の光路と、第2の光学系に対応する第2の光路とがそれぞれ配置されてもよく、光路切換部(
図9、
図10の光路切換部318参照)によって光学系が選択されてもよい。また、これに限定されず、駆動部によって波長変換光学素子が光路に対して挿脱されることによって、光学系が選択されてもよい。
【0072】
本実施形態に係る眼科レーザ装置は、第1のレーザと第2のレーザとの間のレーザ特性の違いを補正するための補正光学部材(
図8の補正光学部材500参照)を備えてもよい。例えば、第1のレーザと第2のレーザとの間での波長特性が異なる場合、光スキャナの位置が同じであっても、レーザビームの焦点の結像性能(例えば、焦点位置、収差特性)が異なる。そこで、補正光学部材として、例えば、レーザビームの焦点の結像性能を補正するための光学部材(例えば、収差補正レンズ)が、照射光学系の光路中に挿脱されてもよい。なお、補正光学部材は、照射光学系の光路であればよく、レーザ光源から対物レンズの間に配置されてもよいし、対物レンズから眼との間に配置されてもよい。この場合、補正光学部材は、レーザの目的(前眼部組織の破砕又は切断、フォトチューニング)を達成できる光学性能を確保するために設計される。
【0073】
上記補正光学部材によれば、前眼部組織の処置、及びフォトチューニングの両方を精度よく行うことができる。例えば、上記補正は、前眼部組織の破砕又は切断を行うために最適化された光学系を持つ超短パルスレーザ装置に対し、追加的にフォトチューニング機能を設ける場合に有利である。フォトチューニングにおいては、眼内に配置された透光体における所定の照射部位に対して正確にレーザを照射する必要があり、高精度の結像性能が要求される。したがって、前眼部組織の破砕又は切断を行うために最適化された光学系では、これを満たすことができない可能性がありうる。そこで、補正光学系を設けることで、前眼部組織の破砕又は切断における結像性能を十分に満たしつつ、フォトチューニングでの結像性能も十分に満たすことができ、有利である。
【0074】
なお、他の例として、上記補正は、フォトチューニングを行うために最適化された光学系を持つ超短パルスレーザ装置に対し、追加的に前眼部組織の破砕又は切断機能を設ける場合にも有利である。
【0075】
なお、補正光学部材としては、例えば、波面補償デバイスが用いられてもよい。波面補償デバイスとしては、例えば、形状可変ミラー、デジタルマイクロミラーデバイス、LCOS(光学位相変調素子)であってもよい。波面補償デバイスは、例えば、第1のレーザと第2のレーザとの間のレーザビームの焦点の結像性能を補正するために制御されてもよい。例えば、第1のレーザと第2のレーザとの間のレーザビームの焦点の結像性能の違いが予め算出される(例えば、シミュレーション)。第1のレーザに対応する第1の収差補償データと、第2のレーザに対応する第2の収差補償データとが記憶部に記憶される。プロセッサは、選択されたレーザに対応する収差補償データを記憶部から読み出し、波面補償デバイスを動作させてもよい。もちろん、照射光学系に係る収差を測定するための収差計を超短パルスレーザ装置に設け、プロセッサは、収差計での測定結果に基づいて波面補償デバイスを制御してもよい。
【0076】
また、補正光学部材は、照射光学系と眼との間に配置される眼球インターフェースであってもよい。例えば、第1のレーザに対応する第1の眼球インターフェースと、第2のレーザに対応する第2の眼球インターフェースとが用意されてもよい。この場合、眼球インターフェースに設けられた光学部材のレンズ特性、屈折率等が、レーザに応じて設定される。
【0077】
<ドーナツ状ビーム>
なお、レーザビームの特性は、ドーナツ状ビームであってもよい。ドーナツ状ビームを形成する手法としては、例えば、光渦方式(例えば、米国特許2015−164689号公報)であってもよいし、アキシコンレンズを用いてもよい。また、偏光を利用して、ドーナツ状ビームが形成されてもよい。ドーナツ状ビームによれば、XY方向におけるレーザビームの焦点範囲を広くできる(横分解能を向上できる)ので、階段状の加工、つまり、MP回折レンズを書き込む場合に特に有利である。
【0078】
<屈折測定デバイスの搭載>
眼科レーザ装置は、眼の屈折特性を測定するための屈折測定デバイス(測定光学系)を備えてもよい(
図7の屈折測定デバイス90参照)。屈折測定デバイスが設けられることで、例えば、外部の装置を必ずしも用いることなくレンズパターンを設定できる。他の用途としては、外部の装置を必ずしも用いることなくフォトチューニングによる矯正効果を確認できる。
【0079】
プロセッサは、患者眼の屈折特性の測定結果を表示部に表示させてもよい。なお、プロセッサは、眼球インタフェースが装着された状態での眼の屈折特性が測定された場合、眼球インターフェースが装着されていない状態での測定結果をシミュレートして表示してもよい。この場合、眼球インターフェースの屈折特性が予め求められ、当該屈折特性の影響がキャンセルされてもよい。
【0080】
屈折測定デバイスは、眼球インタフェースが装着された患者眼であって、フォトチューニングによって少なくとも一つのレンズが透光体の内部に形成された後の屈折特性を測定してもよい。
【0081】
屈折測定デバイスは、照射光学系の光軸と同軸に配置されてもよいし、別軸であってもよい。屈折測定デバイスは、照射光学系の光路を介して眼底に測定指標を投光する投光光学系と、照射光学系の光路を介して測定指標による眼底反射光を受光する受光光学系と、を備えてもよい。屈折測定デバイスは、眼球インターフェースを介して眼の屈折特性を測定するための屈折測定デバイスであってもよい。
【0082】
屈折測定デバイスは、眼の波面収差を測定するための収差測定デバイス(典型的には、波面センサ)であってもよく、眼の屈折特性を精度よく測定できる。屈折測定デバイスは、眼屈折力を測定するための眼屈折力測定デバイス(典型的には、オートレフラクトメータ)であってもよく、眼の屈折特性を安価で測定できる。
【0083】
屈折測定デバイスは、レーザの照射前、照射中、照射後の少なくともいずれかにおける眼の屈折特性を測定するために用いられてもよい。また、屈折測定デバイスは、眼球インターフェースの眼への装着前、又は装着時における眼の屈折特性を測定するために用いられてもよい。
【0084】
屈折測定デバイスを使用する一例としては、例えば、フォトチューニング完了後における眼の屈折特性を屈折測定デバイスを用いて測定することによって、術者は、フォトチューニングによる矯正効果を容易に確認できる。
【0085】
より詳細には、眼球インターフェースに眼が装着された状態であって、フォトチューニングを開始する前段階において、第1の屈折特性が測定されてもよい。次に、眼球インターフェースに眼が装着された状態であって、フォトチューニングを行った後段階において、第2の屈折特性が測定されてもよい。プロセッサは、第1の屈折特性と第2の屈折特性との間の差分Dを求めるようにしてもよい。プロセッサが差分Dを求めることによって、フォトチューニングによって透光体に書き込まれたレンズによる矯正効果を容易に求めることができる。
【0086】
プロセッサは、第1の屈折特性と第2の屈折特性とを、モニタの同一画面上に表示してもよい。差分Dを求めることで、眼球インターフェースの光学部の影響によって測定光学系による測定結果が変化する場合であっても、フォトチューニングによる矯正効果を評価できる。
【0087】
プロセッサは、予め設定されたフォトチューニングによる矯正量と、差分Dとを比較することによって、フォトチューニングが想定通り実施されたか否かを判定するようにしてもよい。また、プロセッサは、予め設定された矯正量と、差分Dとを、モニタの同一画面上に表示してもよい。上記制御によれば、フォトチューニングが想定通り実施され、目標とする矯正効果が得られたか否かを、術者は容易に確認できる。
【0088】
なお、眼の屈折特性を測定する際、波面センサ等の収差測定デバイスを用いることで、眼内の透光体にレンズを書き込んだことによる矯正効果を、高次収差を含めて精度よく確認できる。
【0089】
なお、眼科レーザ装置に屈折測定デバイスが設けられた場合、屈折測定デバイスは、実際の手術後における矯正効果の確認の他、フォトチューニングのキャリブレーションに用いられてもよい。例えば、キャリブレーション用の透光体(例えば、透光体が設置された模型眼)にレーザを照射した前後における屈折特性の変化を利用して、レーザ照射光学系の制御、或いはレンズパターンを設定する際の算出手法に関してキャリブレーションを行ってもよい。
【0090】
なお、屈折測定デバイスは、例えば、眼球全体の断層像を撮像する構成を備え、眼球全体の形態情報(例えば、前眼部形態情報と眼軸長)に基づいて眼の屈折特性を測定してもよい。また、屈折測定デバイスは、例えば、角膜及び水晶体を含む前眼部断層像を撮像する構成を備え、前眼部の形態情報と眼軸長とに基づいて眼の屈折特性を測定してもよい。眼軸長は、周知の眼軸長測定機によって得られたデータが利用されてもよい。屈折測定デバイスは、後述する断層撮像デバイスを用いて眼の屈折特性を測定してもよい。屈折測定デバイスの他の例としては、眼の角膜形状と眼軸長とを測定可能な構成であってもよく、例えば、天然水晶体の代わりとなるフォトチューニング眼内レンズの処方に用いることができ、眼の角膜形状と眼軸長に基づいてフォトチューニング眼内レンズの度数が決定されてもよい。また、屈折測定デバイスは、例えば、眼屈折力を自覚的に測定するためのフォロプターであってもよい。
【0091】
<屈折特性に基づくフォトチューニングのフィードバック制御>
プロセッサは、フォトチューニングによって少なくとも一つのレンズが透光体の内部に形成された後の屈折特性に基づいて、透光体に対して追加的に形成させるレンズパターンを設定してもよい。この場合、眼球インターフェースが装着された状態でのフォトチューニング前後における屈折特性の変化情報と、フォトチューニングによって矯正すべく予め設定された屈折特性の変化情報(目標屈折特性と術前の屈折特性との変化)とを比較してもよい。差が大きい場合、追加的なフォトチューニングを行うようにしてもよい。また、フォトチューニング前であって、眼球インターフェースが装着される前後での屈折特性の変化情報を予め得ておき、眼球インターフェースが装着された状態でのフォトチューニング後における屈折特性から変化情報が差し引かれた屈折特性と、目標屈折特性と、を比較してもよい。差が大きい場合、追加的なフォトチューニングを行うようにしてもよい。
【0092】
例えば、眼球インターフェースに眼が装着された状態で屈折特性が測定されることで、フォトチューニングによる矯正効果が想定と異なる場合、追加的にフォトチューニングを行うことが容易である(
図14参照)。例えば、プロセッサは、予め設定された矯正量と、差分Dとの偏位量を算出し、算出された偏位量に対応するレンズパターンを求めてもよい。レンズパターンを求める場合、プロセッサは、偏位量を得るために透光体に対して書き込むべき屈折特性を、透光体を含む前眼部の光学配置情報を利用して算出してもよい。
【0093】
求められたレンズのパターンを透光体に追加的に書き込むことで、矯正効果のずれを補うことができる。この場合、過矯正であれば、超過分を補うレンズを新たに書き込み、矯正不足であれば、不足分を補うレンズを新たに書き込んでもよい。
【0094】
なお、複数のレンズが書き込まれる場合、予め設定された数のレンズが全て書き込まれた後に屈折特性を求めてもよい。この場合、既に書き込まれた複数のレンズに加えて、偏位量に対応するレンズが新たに書き込まれる。
【0095】
複数のレンズが書き込まれる場合、書き込まれたレンズの数が予め設定された数より少ない段階において、屈折特性を求めてもよい。この場合、プロセッサは、次に書き込むべきレンズの屈折特性又はレンズの数の少なくともいずれかを、偏位量に基づいて変更してもよい。
【0096】
上記のように、第1のフォトチューニング後に屈折測定デバイスによって測定された屈折特性を、第2のフォトチューニングによるチューニング量(例えば、レンズの屈折特性、レンズの数等)にフィードバックすることによって、被検眼の矯正をより精度よく行うことができる。
【0097】
なお、上記説明においては、眼球インターフェースに眼が装着された状態で屈折特性を測定したが、これに限定されない。例えば、照射光学系と眼との間に眼球インターフェースが配置されていない状態において、フォトチューニング前後の屈折特性を測定することによって、矯正効果を確認することも可能である。また、矯正効果の確認後の追加的なフォトチューニングも可能であるし、屈折特性の測定結果に基づくフォトチューニングのフィードバックも可能である。
【0098】
なお、上記において、プロセッサは、眼球インターフェースに眼が装着される前の屈折特性と、眼球インターフェースに眼が装着される後であって、フォトチューニングが実施される前の屈折特性とを求めてもよい。これによって、プロセッサは、眼球インターフェースに眼が装着される前後における屈折特性の変化Cを求めることができる。
【0099】
プロセッサは、眼球インターフェースに眼が装着される後であって、フォトチューニングが実施された後の屈折特性に対して、屈折特性の変化Cを差し引くことによって、眼球インターフェースが眼から外れた後の眼の屈折特性を予想値として求めるようにしてもよい。これによって、眼球インターフェースに眼が装着される状態において、フォトチューニングによる矯正効果を確認できる。プロセッサは、予想値として得られた眼の屈折特性と、目標屈折特性とを比較できるようにしてもよい。比較手法として、プロセッサは、これらを並列表示してもよいし、差分を求めてもよい。
【0100】
<断層撮像デバイスの搭載>
眼科レーザ装置は、眼の断層像をイメージング(撮像)するための断層撮像デバイス(断層撮像系)を備えてもよい(
図8の断層撮像デバイス71参照)。これによって、例えば、透光体の位置情報の取得において、外部の装置が必ずしも必要ない。
【0101】
断層撮像デバイスは、照射光学系と同軸に配置されてもよいし、別軸であってもよい。断層撮像デバイスは、例えば、光、超音波、磁気のいずれかを用いて断層像をイメージングするデバイスであってもよい。もちろん、これらに限定されない。光学的に断層を撮像するためのデバイス(光学系)としては、例えば、OCT光学系、シャインプルーフ光学系であってもよい。断層撮像デバイスは、眼球インターフェースを介して眼の断層像を撮像する断層撮像デバイスであってもよい。断層像としては、例えば、二次元断層データであってもよいし、3次元断層データであってもよい。
【0102】
断層撮像デバイスとしては、例えば、前眼部の断層像を撮像するための断層撮像デバイスであってもよい。断層撮像デバイスは、フォトチューニングが適用される透光体を含む前眼部断層像を撮像してもよく、さらに、角膜と、フォトチューニングが適用される透光体とを含む前眼部断層像を撮像してもよい。断層撮像デバイスとしては、眼球全体(角膜、透光体、網膜を含む)の断層像を撮像可能な断層撮像デバイスであってもよい。この場合、眼に水晶体が残存している場合、水晶体が撮像される場合もありうる。
【0103】
プロセッサは、眼科レーザ装置に設けられた断層撮像デバイスを用いて、透光体の位置情報を取得してもよい。この場合、プロセッサは、眼球インターフェースが眼に装着された状態での断層情報を得ることによって、フォトチューニングを行う際の透光体の位置を精度よく検出できる。結果として、透光体に書き込むべきレンズのパターンが、フォトチューニング時の眼の状態に近い形で算出されるので、精度よくフォトチューニングを行うことが可能となる。なお、透光体の位置情報としては、透光体の前面及び後面の少なくともいずれかの位置情報であってもよい。なお、プロセッサは、眼球インターフェースが眼に装着される前での断層情報を用いて、レンズのパターンを算出してもよい。そして、プロセッサは、装着前に算出されたレンズパターンを書き込むために、眼球インターフェースが眼に装着された状態での断層画像を用いて照射光学系における照射位置を設定してもよい。
【0104】
なお、眼科レーザ装置に、屈折測定デバイス、断層撮像デバイスの両方が配置されることで、フォトチューニング時に近い状態での眼の屈折特性と断層データの両方を取得できる。屈折特性と断層データの両方を用いることで、フォトチューニングをより精度よく実施することが可能となる。
【0105】
例えば、フォトチューニングの実施後、屈折特性を測定すると共に、断層像を取得してもよい。プロセッサは、得られた屈折特性及び断層像を用いて、書き込むべきレンズのパターンを算出してもよい。これによって、第1のフォトチューニングにおいて被検眼の状態が変化した場合(例えば、透光体の位置が変化した等)であっても、透光体の位置等を正確に検出でき、第2のフォトチューニングを良好に行うことができる。
【0106】
なお、断層撮像デバイスは、レーザ照射中における眼の断層像を撮像してもよく、プロセッサは、撮像された断層像に基づいて眼の動きを検出(モニタ)してもよい。さらに、プロセッサは、眼の動きに応じて、レーザ照射位置を補正してもよい。また、プロセッサは、眼の動きに応じて、レーザ照射を停止するようにしてもよい。
【0107】
なお、プロセッサは、撮像された眼の断層像に基づいて、フォトチューニングが適用される透光体の位置を検出してもよい。さらに、プロセッサは、透光体の位置に応じて、レーザ照射位置を補正してもよい。また、プロセッサは、透光体の位置に応じて、レーザ照射を停止するようにしてもよい。
【0108】
なお、断層撮像デバイスは、レーザ照射中において眼球インターフェースの断層像を撮像してもよく、プロセッサは、撮像された断層像に基づいて、眼球インターフェースの位置を検出してもよい。さらに、プロセッサは、眼球インターフェースの位置に応じて、レーザ照射位置を補正してもよい。また、プロセッサは、眼球インターフェースの位置に応じて、レーザ照射を停止するようにしてもよい。
【0109】
なお、前述の眼科レーザ装置の例としては、眼科用レーザ手術装置、眼科用レーザ屈折矯正装置等が挙げられる。また、本実施形態のフォトチューニングに係る技術は、例えば、眼科用レーザ屈折矯正装置、眼科用フォトチューニング設定装置、眼科用フォトチューニングシステム、眼鏡用フォトチューニング設定装置、及びこれらに用いられるプログラムとして適用されうる。
【0110】
<眼鏡レンズへのフォトチューニングの適用>
以下、眼鏡レンズへのフォトチューニングの適用例について説明する。もちろん、基本的には、上記説明と同様の手法を用いることができるので、具体的内容について、上記説明を参照できる。
【0111】
例えば、プロセッサは、眼鏡装用時での眼球全体の屈折特性と、眼鏡装用時における眼鏡レンズに対する前眼部の光学配置情報とに基づいて、眼鏡レンズに対するレンズパターンを設定してもよい。この場合、プロセッサは、眼鏡レンズに対して書き込むべき屈折特性を算出し、算出された屈折特性に対応するレンズパターンを設定し、設定されたレンズパターンにてフォトチューニングを行うようにしてもよい。
【0112】
この場合、眼鏡装用時での眼球全体の屈折特性は、少なくとも眼の屈折測定デバイスを用いて取得されてもよい。この場合、裸眼での眼球全体の屈折特性が屈折測定デバイスによって取得され、眼鏡レンズの屈折特性については、レンズメータ又はレンズの設計値によって取得されてもよい。裸眼での屈折特性と、眼鏡レンズの屈折特性とを合成することで、眼鏡装用時での眼球全体の屈折特性が得られる。屈折特性を合成する場合、例えば、光軸上における所定位置(例えば、眼の瞳孔位置)に置き換えて算出してもよい。また、眼鏡装用時での眼に対して屈折測定デバイスにて測定を行う(例えば、眼鏡レンズを介して測定指標を投影し、眼底反射光を得る)ことによって、眼鏡装用時の眼球全体の屈折特性を直接的に求めるようにしてもよい。
【0113】
眼鏡装用時における眼鏡レンズに対する前眼部の光学配置情報は、例えば、アイポジションメータ(眼位置測定機(例えば、特願2013-202632参照))を用いて取得されてもよいし、メジャー(例えば、定規)を用いて取得されてもよいし、レンズ又は眼鏡フレームの設計値等を用いて取得されてもよい。眼鏡レンズに対する前眼部の光学配置情報は、例えば、眼鏡レンズに対する眼の3次元位置であってもよく、2次元位置(例えば、上下左右位置)が求められ、他の方向(例えば、前後方向)については推測値が用いられてもよい。また、眼鏡レンズに対する眼の上下左右位置は、眼鏡フレームに対する眼の位置であってもよい。さらに、前眼部の内部の光学配置情報が、断層撮像デバイスによって取得されてもよい。また、レンズ自体の光学配置情報(例えば、レンズの形状)が、レンズ形状測定装置(例えば、断層撮像デバイス)によって取得されてもよいし、レンズの設定値が用いられてもよい。レンズ形状測定装置としては、レンズに測定子を接触させたときの測定子の移動量によってレンズ形状を測定してもよい。
【0114】
より詳細には、眼鏡レンズに対するレンズパターンを設定する場合、例えば、裸眼での眼球全体の波面収差W1と、眼鏡装用時の眼鏡フレームに対する眼位置(アイポジション)EPと、眼鏡装用時に眼底黄斑部に集光する光束が眼鏡レンズを通過する際の眼鏡レンズ上の光束位置LEPと、位置LEPでの眼鏡レンズの度数分布Mと、に基づいて眼鏡レンズに書き込むべきレンズパターンが求められてもよい。
【0115】
例えば、遠方視状態における眼位置EPFを得ることによって、遠方視状態における眼位置EPFに対応する光束位置LEPFが求められる。さらに、光束位置LEPFでの眼鏡レンズの度数分布MFを、レンズメータあるいは眼鏡レンズの設計データから得る。
【0116】
例えば、近方視状態における眼位置EPNを得ることによって、近方視状態における眼位置EPFに対応する光束位置LEPNが求められる。さらに、光束位置LEPNでの眼鏡レンズの度数分布MNは、度数分布を計測可能なレンズメータ、あるいは眼鏡レンズの設計データから得ることができる。
【0117】
プロセッサは、裸眼での眼球全体の波面収差W1と眼鏡レンズの度数分布MFとに基づいて眼鏡装用時での眼球全体の波面収差W2を求め、求められた波面収差W2に基づいてフォトチューニングによって実施する屈折特性の矯正量を求める。矯正量が求められると、プロセッサは、予め設定された矯正量を得るために眼鏡レンズに対して書き込むべき屈折特性を、眼鏡レンズに対する前眼部の光学配置情報を利用して算出する。ここで、プロセッサは、眼鏡レンズ及び前眼部の光学配置情報と、前眼部の各組織の屈折率、眼鏡レンズの第1の屈折率を考慮した上で、予め設定された矯正量を矯正するために必要なレンズの屈折特性を算出してもよい。さらに、プロセッサは、書き込むべき屈折特性に対応するレンズパターンを設定する。
【0118】
その後、プロセッサは、求められたレンズパターンを、眼鏡レンズ上の光束位置LEPに設定(整合)させることによって照射位置を設定する。設定された照射位置にて眼鏡レンズに対してフォトチューニングが行われる。照射時は、照射する側のレンズ面に、眼鏡レンズ素材の屈折率に近いソフトジェルを板ガラス又はレンズで挟んで密着させることで、眼鏡レンズ表面の屈折率の影響を少なくして照射してもよいし、液体中で照射してもよい。
【0119】
なお、眼鏡レンズに対してフォトチューニングを行う場合、超短パルスレーザ装置に対して眼鏡を固定した状態で行ってもよい。この場合、断層撮像デバイスを用いて眼鏡レンズの位置を検出することによって眼鏡レンズに対して照射位置を設定してもよい。また、眼鏡レンズと装置との位置関係が既知であれば、既知の位置関係を利用して照射位置を設定してもよい。また、患者が装用している状態の眼鏡に対してフォトチューニングを行ってもよい。
【0120】
上記説明においては、遠方視に対応するレンズ位置にフォトチューニングを施す、或いは近方視に対応するレンズ位置にフォトチューニングを施すものとしたが、これに限定されず、眼鏡レンズの他のレンズ位置に関して、同様に、フォトチューニングを行うようにしてもよい。
【0121】
なお、フォトチューニングを施す眼鏡レンズとしては、患者が実際に装用していた眼鏡レンズであってもよいし、新規の眼鏡レンズであってもよい。新規のレンズに対してフォトチューニングを行う場合、上記眼鏡フレームに配置されたことを想定して照射位置が設定されてもよい。新規の眼鏡レンズの場合、レンズ工場にてレーザ装置を設け、フォトチューニングを用いたレンズ製造も可能である。
【0122】
なお、眼鏡装用時での眼球全体の波面収差W2を求める場合、眼鏡装用時での眼球全体の波面収差W2を、波面センサによって直接的に求めるようにしてもよい。
【0123】
なお、本実施形態のフォトチューニングに係る技術は、レーザ光を患者眼の組織内に集光させることで患者眼を処置する眼科用レーザ手術装置において適用されうる。また、本実施形態のフォトチューニングに係る技術は、レーザ光を眼鏡レンズの内部に集光させることで患者眼を矯正する眼鏡用レーザ装置において適用されうる。なお、以下の例では、眼科用レーザ手術装置を例として説明するが、これに限定されず、他の装置においても、適用可能である。
【0124】
なお、本実施形態では、フォトチューニングのレンスパターンを設定するための設定装置は、レーザ装置に配置された構成に限定されない。例えば、設定装置は、断層撮像デバイス、屈折測定デバイス、外部PCに設けられてもよい。なお、各データの送受信は、有線又は無線によって行われてもよい。
【0125】
<実施例>
以下、本実施形態の典型的な実施例の1つについて、図面を参照して説明する。以下の説明では、一例として、患者眼Eに照射されるレーザ光の光軸に沿う方向をZ方向とする。Z方向に交差(本実施形態では垂直に交差)する方向のうちの1つをX方向とする。Z方向およびX方向に共に交差(本実施形態では垂直に交差)する方向をY方向とする。X,Y,Z方向は適宜設定すればよい。例えば、患者の上下左右に基づいて方向を規定する場合、X方向を患者の左右方向、Y方向を患者の上下方向としてもよいし、X方向を患者の上下方向、Y方向を患者の左右方向、Z方向を眼Eの軸方向としてもよい。
【0126】
<全体構成>
本実施例の眼科用レーザ手術装置1は、患者眼Eの組織を処置、人工透光体に対してフォトチューニングを行うために使用される(
図8参照)。本実施例では、患者眼Eの水晶体を処置すると共に、眼内に挿入された人工透光体に対してフォトチューニングを行うことが可能な眼科用レーザ手術装置1を例示する。本技術は、もちろん、角膜及び水晶体を含む前眼部の組織の処置に適用してもよい。また、フォトチューニングは、天然透光体、つまり患者眼Eの組織に適用されてもよい。
【0127】
レーザ照射ユニット300は、レーザ光源ユニット310と、レーザ照射光学系(レーザデリバリ)320と、を備える。レーザ光源ユニット310は、本体部2の内部に配置される。レーザ照射光学系(導光光学系)320は、レーザ光源ユニット310からのレーザ光を眼Eに導光するために配置された光学系である。
【0128】
インターフェイスユニット50は、患者眼Eの角膜に近接し、屈折率の差を小さくし、屈折率差によって発生するレーザ光の収差を減少させる。これによって、例えば、角膜及びレンズでの表面反射が少なくなる。観察・撮影ユニット70は、患者眼Eの前眼部の正面像及び前眼部の断層像を撮影する。観察・撮影ユニット70は、例えば、断層撮像デバイス71と、正面撮影ユニット75とを備える。断層撮像デバイス71は、患者眼Eの断層像を撮影(取得)する。正面撮影ユニット75は、患者眼Eの前眼部像を撮影する。操作ユニット400は、装置1を操作するために設けられる。制御ユニット100は、装置全体を統括制御する。
【0129】
<レーザ照射ユニット>
レーザ照射ユニット300は、例えば、レーザ光源ユニット310と、レーザ照射光学系(レーザデリバリ)320を備えてもよい。レーザ光源ユニット310は、手術用のレーザ光(レーザビーム)を出射する。レーザ照射光学系320は、レーザ光を導光するための光学部材を含む。レーザ照射光学系320は、例えば、走査ユニット330と、対物レンズ305と、各種光学部材とを備える。対物レンズ305は、走査ユニット330と患者眼Eの間の光路上に設けられている。対物レンズ305は、走査ユニット330を経たレーザ光を、患者眼Eの組織に集光させる。
【0130】
レーザ光源ユニット310によって出射されたレーザ光は、非線形相互作用によって組織にプラズマを誘起するために用いられる。非線形相互作用とは、光と物質とによって生じる相互作用の1つであり、光の強度(つまり、光子の密度)に比例しない応答が現れる作用である。本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、レーザ光を患者眼Eの透明組織内に集光(合焦)させることで、集光位置(「レーザスポット」という場合もある)または集光位置よりも僅かに光路(光束)の上流側で多光子吸収を生じさせる。多光子吸収が生じる確率は、光の強度に比例せず、非線形となる。多光子吸収によって励起状態が生じると、組織内にプラズマバブルが発生し、組織の切断・破砕等が行われる。以上の現象は、光破壊(photodisruption)と言われる場合もある。非線形相互作用による光破壊では、レーザ光による熱の影響が集光位置の周辺に加わり難い。よって、微細な処置が可能である。レーザ光のパルス幅を小さくする程、少ないエネルギーで効率よく光破壊が生じる。
【0131】
レーザ光源ユニット310は、多光子吸収によって透光体内の屈折率を調整する(フォトチューニング)を行うことも可能である。
【0132】
レーザ光源ユニット310は、前眼部組織を破砕又は切断するためのレーザである第1のレーザと、透光体にレンズを書き込むためのレーザである第2のレーザとを出射できる。より詳細には、レーザ光源ユニット310は、第1のレーザに対応する波長のレーザ光を発生させるためのレーザ光源312と、レーザ光源からの第1のレーザ光を第2のレーザに対応する波長に変換するための波長変換光学素子314と、を備えてもよい。
【0133】
レーザ光源312には、1フェムト秒から10ナノ秒のパルス幅のレーザ光を出射するデバイスが用いられる。レーザ光源312としては、例えば、パルス幅500フェムト秒で、中心波長が、1040nm(波長幅は、±10nm)である赤外域のレーザ光を出射するデバイスを用いてもよい。また、レーザ光源ユニット310には、レーザスポットのスポットサイズが1〜15μmでブレイクダウンを発生させる出力のレーザ光を出射可能なレーザ光源を用いる。
【0134】
波長変換光学素子314を用いる場合、照射光学系320は、波長変換光学素子を通過せず第1のレーザを眼に導くための第1の光学系(
図9参照)と、波長変換光学素子314が配置され、第1のレーザを第2のレーザに変換して第2のレーザを眼に導くための第2の光学系(
図10参照)と、備えてもよい。この場合、第1の光学系に対応する第1の光路と、第2の光学系に対応する第2の光路とがそれぞれ配置されてもよい。なお、光路切換部318の駆動によって光学系が選択されてもよい。
【0135】
レーザ照射光学系320において、レーザ光源ユニット310を上流、患者眼Eを下流とする。すると、レーザ光源ユニット310から下流に向かって、ミラー301、ミラー302〜レンズ303、レンズ304、ビームコンバイナ72が光軸L1に沿って配置されてもよい。
【0136】
ミラー301及び302は、レーザ光の光軸を調整する。レンズ303は、走査ユニット330、レーザ光の中間結像を形成するために用いられる。レンズ304は、瞳共役位置を形成する。ビームコンバイナ72は、光軸L1と観察・撮影ユニット70の光軸L3とを合波する。ミラー301及び302は、反射面が互いに直交する構成となっており、傾斜可能な保持部材に保持されている。ミラー301及び302の反射面を移動、傾斜させることにより、レーザ光源ユニット310から出射されたレーザ光の光軸を調整することができる。ミラー301及び302の調整により、レーザ光の軸を光軸L1に合わされる。
【0137】
<補正光学部材>
補正光学部材500は、第1のレーザと第2のレーザとの間のレーザ特性の違いを補正するための補正光学部材である。補正光学部材500は、フォトチューニングの際、第2のレーザ光の光路に配置される。補正光学部材500は、駆動部510の駆動によって照射光学系320の光路に配置されてもよい。なお、補正光学部材500は、波長変換光学素子314の近傍に配置されてもよい。
【0138】
<走査ユニット>
走査ユニット330は、レーザ光を走査することで、対物レンズ305によって集光されるレーザ光の集光位置を走査させてもよい。つまり、走査ユニット330は、レーザ光の集光位置を目標位置に移動させる。本実施形態の走査ユニット330は、Z走査部350およびXY走査部360を備えてもよい。走査ユニット330は、レーザ照射光学系(レーザデリバリ)320の光路中に配置されてもよい。
【0139】
Z走査部350は、例えば、凹レンズ351、凸レンズ352、および駆動部353を備えてもよい。駆動部353は、凹レンズ351を光軸L1に沿って移動させる。凹レンズ351が移動することで、凹レンズ351を通過したビームの発散状態が変化する。その結果、レーザ光の集光位置(レーザスポット)がZ軸方向に移動する。
【0140】
XY走査部360は、Xスキャナ361、Yスキャナ364を備えてもよい。Xスキャナ361は、駆動部362によってガルバノミラー363を揺動させることで、レーザ光をX方向に走査させてもよい。Yスキャナ364は、駆動部365によってガルバノミラー366を揺動させることで、レーザ光をY方向に走査させてもよい。レンズ367,368は、2つのガルバノミラー363,366を共役とする。
【0141】
なお、走査ユニット330としては、レーザ光をXY方向に走査できる構成であればよい。例えば、主走査方向(例えば、X方向)の走査をポリゴンミラーとし、副走査方向(例えば、Y方向)の走査をガルバノミラーとする構成としてもよい。また、レゾナントミラーをX方向とY方向に対応させて用いる構成としてもよい。また、2つのプリズムを独立して回転させる構成でもよい。また、主走査方向に関して、音響光学偏向器(AOD:Acousto-optic-deflector)が用いられてもよい。このようにして、走査ユニット330によって、レーザスポットが、患者眼Eの眼球組織内(ターゲット内)で3次元的(XYZ方向)に移動されてもよい。
【0142】
走査ユニット330と対物レンズ305の間には、レーザ光軸と観察・撮影光軸を同軸とするためのビームコンバイナ(ビームスプリッタ)72が配置されてもよい。コンバイナ72は、レーザ光を反射し、観察・撮影ユニット70の照明光を透過する特性を有している。対物レンズ305は、照射端ユニット42に対して固定的に配置されたレンズである。対物レンズ305は、レーザ光をレーザスポットとしてターゲットに結像させる。レーザスポットのスポットサイズは、例えば、1〜15μm程度である。
【0143】
<インターフェイスユニット>
インターフェイスユニット50(
図11参照)は、患者眼Eの角膜に近接し、角膜の屈折力を弱めて、レーザ光を水晶体等の眼球組織に到達(集光)し易くする役割を持つ。本実施形態のインターフェイスユニット50は、角膜に直接接触することなく、少なくとも角膜の一部を覆う構成とする。インターフェイスユニット50は、カバーガラス51を主に備える。カバーガラス51は、例えば、角膜を覆う光学部材である。カバーカラス51は、例えば、圧平レンズまたは液浸レンズであってもよい。例えば、圧平レンズは、レーザを透過し、角膜の前面を圧平する。
【0144】
カバーガラス51は、角膜を覆う部材であり、少なくともレーザスポットが集光されるNAをカバーするサイズであってもよい。カバーガラス51は、透光性を有する透明部材であり、例えば、ガラス、樹脂によって形成される。カバーガラス51は、液体の液面に位置し、液体を覆う役割を持ってもよい。
【0145】
インターフェイスユニット50は、サクションリング281に吸着された患者眼Eの角膜に近接する。または、先に患者眼Eおよびインターフェイスユニット50の位置を決定した後に、サクションリング281を吸着させてもよい。サクションリング281の内側には、例えば、液体(生理食塩水)が満たされる。カバーガラス51、液体により、角膜の屈折力がキャンセルされる。これによって、レーザ光は、対物レンズ305からターゲットである水晶体まで屈折することが抑制される。
【0146】
なお、インターフェイスユニット50は、角膜に直接接触する構成であってもよい。例えば、インターフェイスユニット50は、カバーガラス51を角膜に接触させて角膜を圧平するユニットであってもよい。この結果、角膜がカバーガラス51と接触することによって、角膜の位置がレーザ照射光学系320に対してポジショニングされる。カバーガラス51は、例えば、角膜内等のレーザ照射領域をカバーするように角膜を覆う接触面を有していればよい。
【0147】
<固視誘導ユニット>
固視誘導ユニット120は、例えば、被検眼を固視させるための固視標を投影する(
図3参照)。固視誘導ユニット120は、固視標の呈示位置を変更することによって、ドッキング前の患者眼Eの視線方向を変更してもよい。固視誘導ユニット120は、手術レーザの照射光軸と患者眼の光軸とを所定の位置関係に導くために、眼Eの固視方向を誘導する。
【0148】
<眼球固定ユニット>
眼球固定ユニット280(
図4、
図5参照)は、対物レンズ305に対して患者眼Eを固定するためのユニットである。対物レンズ305に対して患者眼Eを固定することで、レーザを患者眼Eに好適に集光させることができる。眼球固定ユニット280は、吸引ポンプ(図示を略す)から付加される吸引圧を、吸引用パイプを介してサクションリング281に伝達(付加)する。なお、これに限定されず、眼球を固定せずに、レーザ照射を行ってもよい。また、インターフェースユニット50を用いずに、レーザ照射を行ってもよい。この場合、眼の移動に応じて、レーザ照射位置を補正するトラッキング機構を設けてもよい。
【0149】
<観察光学系70>
観察光学系70(観察・撮影ユニットともいう)70(
図3参照)は、患者眼Eを術者に観察させると共に、処置対象となる組織を撮影する。一例として、本実施形態の観察光学系70は、断層撮像デバイス71および正面撮影ユニット75を備える。観察光学系70の光軸L3は、ビームコンバイナ72によって、レーザ光の光軸L1と同軸とされる。光軸L3は、ビームコンバイナ73によって、断層像撮影ユニット71の光軸L4と、正面撮像ユニット75の光軸L5とに分岐される。
【0150】
<断層撮像デバイス>
断層撮像デバイス71は、例えば、光干渉の技術を用いて患者眼Eの組織の断層像を取得してもよい。断層撮像デバイス71は、例えば、患者眼Eの前眼部の断層画像を取得する。
【0151】
一例として、断層撮像デバイス71は、OCT(オプティカルコヒーレンストモグラフィー)デバイスであってもよい。断層撮像デバイス71は、光源、光分割器、参照光学系、走査部、および検出器を備えてもよい。
【0152】
光源は、断層画像を取得するための光を出射する。光分割器は、光源によって出射された光を、参照光と測定光に分割する。参照光は参照光学系に入射し、測定光は走査部に入射する。参照光学系は、測定光と参照光の光路長差を変更する構成を有する。走査部は、測定光を前眼部上で二次元方向に走査させる。検出器は、組織によって反射された測定光と、参照光学系を経た参照光との干渉状態を検出する。眼科用レーザ手術装置1は、測定光を走査し、反射測定光と干渉光の干渉状態を検出することで、前眼部の深さ方向の情報を取得する。
【0153】
取得した深さ方向の情報に基づいて、前眼部の断層画像を取得する。本実施形態の眼科用レーザ手術装置1は、パルスレーザ光を集光させるターゲット位置を、患者眼Eの前眼部断層像に対応付ける。その結果、眼科用レーザ手術装置1は、パルスレーザ光を照射・走査させる動作を制御するためのデータを、前眼部断層像を用いて作成することができる。断層像撮影ユニット71には種々の構成を用いることができる。例えば、SS−OCT、SD−OCT、TD−OCT等のいずれを断層撮像デバイス71として採用してもよい。また、眼科用レーザ手術装置1は、光干渉以外の技術を用いて断層画像を撮影してもよい。
【0154】
<正面撮影ユニット>
正面撮影ユニット75(
図8参照)は、患者眼Eの正面像を取得する。正面撮影ユニット75は、可視光または赤外光によって照明された患者眼Eを撮影する。正面撮影ユニットによって撮影された患者眼Eの正面像は、表示部420(後述する)に表示されてもよい。術者は、表示部420を見ることで、患者眼Eを正面から観察することができる。
【0155】
<屈折測定デバイス>
屈折測定デバイス90は、眼の屈折特性を測定するための屈折測定デバイスであり、本実施例では、波面センサが用いられる。屈折測定デバイス90は、ビームコンバイナ92を介して断層撮像デバイス71と同軸とされる。
【0156】
<操作ユニット>
操作ユニット400は、例えば、トリガスイッチ410、表示部420等を備えてもよい。トリガスイッチ410は、レーザ照射ユニット300から治療レーザ光を出射させるトリガ信号を入力する。表示部420は、患者眼Eの断層像、前眼部像を表示したり、手術条件を表示する表示手段として用いられる。表示部420は、タッチパネル機能を有してもよく、手術条件の設定、断層像上での手術部位(レーザ照射位置)の設定を行う入力手段を兼ねてもよい。なお、ポインティングデバイスであるマウス、数値、文字等を入力するため入力デバイスであるキーボード、等を入力手段として用いることもできる。
【0157】
<制御ユニット100>
制御ユニット100は、CPU101、ROM102、RAM103、および不揮発性メモリ(図示せず)等を備える。プロセッサとしてのCPU101は、眼科用レーザ手術装置1の各種制御(例えば、後述する制御データ作成の制御、レーザ光源ユニット310の制御、走査ユニット330の制御、集光位置の走査速度の調整制御等)を司る。ROM102には、眼科用レーザ手術装置1の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM103は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリは、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。
【0158】
制御ユニット100には、レーザ照射ユニット300、観察・撮影ユニット70、操作ユニット400、固視誘導ユニット120、吸引ポンプ、灌流吸引ユニット、等が接続される。
【0159】
制御ユニット100は、手術用のレーザ光の照射よりも前に、断層像表示領域で設定された手術部位(領域)に基づき、手術用のレーザ光を照射するための位置情報を設定する。制御ユニット100は、設定された手術部位、手術条件、照射パターンに基づいてレーザ光源ユニット310からレーザ光を出射し、走査ユニット(ガルバノミラー363及び366)を制御して、レーザスポットを眼球組織で移動させ、眼球組織を切断、破砕、あるいは透光体へのフォトチューニングを行う。
【0160】
本実施例では、前眼部組織を破砕又は切断するための第1の手術モードと、フォトチューニングを行うための第2の手術モードとが、選択的に設定可能である。検者は、操作ユニット400を用いて手術モードを選択できる。この場合、各手術モードに対応する動作プログラム、レーザ照射条件等がメモリに記憶されている。
【0161】
第1の手術モードに設定されると、照射光学系320が、第1のレーザを眼Eに照射するための光学配置に設定される(
図9)。この場合、補正光学部材500は、照射光学系520の光路から外れている。第1の手術モードの具体的動作については、例えば、特開2015−195922号公報を参照されたい。
【0162】
第2の手術モードに設定されると、照射光学系320が、第2のレーザを眼Eに照射するための光学配置に設定される(
図10)。この場合、補正光学部材500は、照射光学系520の光路中に配置される。
【0163】
<術前プランニング>
図13は第2の手術モードにおける手順の一例を示す図であり、術前プランニングの一例を示す図である。本実施例においては、術前に患者眼Eの断層情報と屈折特性を取得し、フォトチューニングにおけるプランニングを行う。
【0164】
術者は、例えば、手術の数日前に、断層撮影デバイスによって眼Eの断層情報を取得する。断層撮影デバイスとしては、装置1とは別筐体として配置された断層撮影デバイスであってもよく、その断層撮影デバイスは、座位状態において患者眼Eを撮影する装置であってもよい。また、断層撮影デバイスとしては、装置1に一体的に設けられた断層撮影デバイス71であってもよく、その断層撮影デバイスは、横に寝た状態において患者眼Eを撮影する装置であってもよい。
【0165】
同様に、術者は、例えば、手術の数日前に、屈折特性デバイスによって眼Eの屈折特性を取得する。屈折特性デバイスとしては、装置1とは別筐体として配置された屈折特性デバイスであってもよく、その屈折特性デバイスは、座位状態において患者眼Eを撮影する装置であってもよい。また、屈折特性デバイスとしては、装置1に一体的に設けられた屈折特性デバイス90であってもよく、その屈折特性デバイスは、横に寝た状態において眼Eの屈折特性を測定するデバイスであってもよい。
【0166】
断層撮影デバイス及び屈折特性デバイスに関して、外部の装置が用いられる場合、外部の装置と装置1との間で、データをやり取りできることが好ましい。例えば、有線または無線によって接続されていてもよいし、フラッシュメモリ等の記憶媒体によってデータをやり取りできてもよい。
【0167】
制御ユニット100は、断層撮影デバイスによって得られた断層情報と、屈折特性デバイスによって得られた屈折特性とに基づいて、透光体に書き込むべきレンズの屈折特性を求める。さらに、制御ユニット100は、得られた屈折特性に基づいて、透光体600に書き込むレンズパターン610、620を求める。
【0168】
眼球固定が完了すると、制御ユニット100は、装置1に設けられた断層撮像デバイス71によって患者眼Eの断層像を取得してもよい。制御ユニット100は、断層撮影デバイスによって術前に撮影した第1の断層画像(
図11参照)と、眼球固定後に断層撮像デバイス71によって取得された第2の断層画像(
図12参照)との間の位置関係を対応づける。これによって、術前に設定したプランニング内容を、フォトチューニング時での断層画像に対応付けることができる。したがって、制御ユニット100は、術前に設定した手術条件によって手術を行うことができる。なお、外部の断層撮像デバイスによって第1の断層画像が取得される場合、外部の断層撮像デバイスと、断層撮像デバイス71との間での撮像倍率の違いを考慮して、第1の断層画像と第2の断層画像の少なくとも一方の画像倍率が画像処理により調整されてもよい。また、撮像倍率の違いを考慮して、書き込むべきレンズパターンが補正されてもよい。
【0169】
より具体的には、制御ユニット100は、第1の断層画像における透光体と、第2の断層画像における透光体との間の位置関係を対応付け、第2の断層画像における透光体の位置を基準として、予め設定されたレンズパターンを第2の断層画像における透光体の内部に設定してもよい。制御ユニット100は、第2の断層画像における透光体に対して設定されたレンズパターンに基づいて、レーザの照射条件を設定する。さらに、設定された照射条件に基づいて第2のレーザにてフォトチューニングを行う。
【0170】
第1の断層画像は、レンズパターンのプランニングに用いられ、第2の断層画像は、照射光学系における照射位置の設定に用いられてもよい。制御ユニット100は、例えば、第1の断層画像を用いて取得されたレンズパターンを、第2の断層画像上の透光体に対して設定(整合)することによって照射位置を設定するようにしてもよい。レンズパターンにつき、例えば、第1の断層画像と眼の屈折特性とに基づいてレンズパターンが設定されてもよい。
【0171】
なお、術前に外部の装置によって撮影した患者眼Eのドッキングされていない状態の透光体の位置と、断層撮像デバイス71によって撮影した患者眼Eのドッキング後の透光体の位置とが一致しない場合がある。例えば、水晶体の傾きによって、透光体の位置が変化する。また、眼球インターフェースの影響によって、透光体、眼(例えば、角膜)が変形する場合があり得る。
【0172】
そこで、上記のように、制御ユニット100は、術前の断層画像に基づいて設定したプランニングの内容を、術中の断層画像に適する内容に補正してもよい。例えば、制御ユニット100は、まず、被検眼における透光体を検出する。続いて、制御ユニット100は、第1の断層画像での透光体を、第2の断層画像での透光体に対応付ける。これによって、第1の断層画像の透光体に対して設定された手術条件は、第2の断層画像に対応付けられる。したがって、制御ユニット100は、予め設定された透光体内部の所定位置に向けて、第2のレーザを照射できる。すなわち、制御ユニット100は、プランニングによって設定された手術条件にてフォトチューニングを実施できる。
【0173】
例えば、制御ユニット100は、検出した透光体の位置情報に基づいて第1の断層画像と第2の断層画像を対応付けてもよい。この場合、制御ユニット100は、透光体の表面を画像処理によって検出することによって対応付けを行ってもよい。
【0174】
なお、制御ユニット100は、透光体、眼(例えば、角膜)の変形状態の有無を第2の断層画像に基づいて判定してもよい。変形が検出された場合、制御ユニット100は、変形が検出された場合、変形前の第1の断層画像と、変形後の第2の断層画像との間での変形状態を考慮して照射位置を設定してもよい。
【0175】
なお、上記説明においては、術前に患者眼Eの断層情報と屈折特性を取得し、フォトチューニングにおけるプランニングを行ったが、これに限定されない。例えば、術前に患者眼Eの屈折特性を予め取得しておき、制御ユニット100は、予め求められた屈折特性と、眼球固定後に断層撮像デバイス71によって取得された断層画像と、に基づいてプランニングを行うようにしてもよい。
【0176】
なお、制御ユニット100は、装置1に設けられた屈折特性デバイス90を用いてフォトチューニングにおけるプランニングを行ってもよい。さらに、制御ユニット100は、装置1に設けられた屈折特性デバイス90を用いて、フォトチューニングにおける矯正効果を確認したり、追加的にフォトチューニングを行うようにしてもよい。