【実施例】
【0073】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細かつ具体的に説明する。なお実施例中の評価結果などは以下の方法にて測定した。
【0074】
<ニトリル量>
得られた樹脂材料をNMR分析して得られた組成比から、モノマーの質量比による質量%に換算した。
【0075】
<ムーニー粘度>
島津製作所製 SMV−300RT「ムーニービスコメータ」を用いて測定した。
【0076】
<平均粒子径>
堀場製作所製の光散乱式粒径分布測定装置LB-500を用いて測定した。
<弾性率、破断伸度>
各材料を離型シート上に乾燥厚さ100±10μmとなるようにコーティングし、所定の条件で乾燥硬化させた後、離型シートごとISO 527−2−1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、試験片とした。測定時には離型シートから各材料のシートを剥離して、ISO 527−1に規定された方法で引っ張り試験を行って求めた。
【0077】
<電気配線部の伸縮特性>
製作した衣服型電子機器の電気配線部分を、電極部は除き、配線の直線部分が長さ100mmとなるように切り取り試験片とした。試験片において配線部分が基材の布帛から剥離していないこと、絶縁カバー層表面にクラックなどは無いことを目しにて確認した後、配線の抵抗値を測定できるように端部の絶縁カバー層を削り落として抵抗測定器の端子と接続し、伸張させる部分が有効長さ50mmとなるようにクリップを絶縁加工した引っ張り試験機にセットし、初期抵抗値と、所定の伸張度とした際の抵抗値、さらに初期状態に戻したときの配線抵抗値を測定した。
初期抵抗値をR0、10%伸張時の抵抗値をR10とし、抵抗変化率Rv=R10/R0を求め、Rv≦100の場合を導電機能維持として「○」、Rv>100の場合を導電機能喪失「×」とした。試験後に電気配線の絶縁カバー層に目視確認できるクラックが生じていない場合を絶縁機能維持として「○」、クラックが生じた場合に絶縁機能喪失として「×」とした。さらに、試験後に基材と下地層との剥離が生じていない場合に絶縁機能維持として「○」、剥離が生じていた場合には絶縁機能喪失として「×」とした。
同様の評価を10%伸張し1秒維持した後に初期状態に戻し1秒保持、を100回繰り返した後にも行った。
【0078】
<配線の抵抗測定>
配線の抵抗値をアジレントテクノロージ社製ミリオームメーターを用いて測定した。
<段差>
衣服型電子機器から電極部と配線部を含む部分を50mm×100mmの矩形に切り取って試験片とした。試験片を幅50mmの両面テープを用いて厚さ10mmの配線部分を基材である布帛ごと、たるみが生じないように貼り付け、次いで、光学式の厚さ計にて電極部から配線部にかけての厚さプロファイルを求めた。
電極部と配線部の境界の電極側5mmから配線側5mmまでの間の10mmについての傾きの絶対値が高低差/測定長(10mm)=50/3000未満であれば「◎」、50/3000以上〜50/2000未満であれば「○」、50/2000以上50/1000未満であれば△、50/1000以上であれば「×」とした。
【0079】
<着用感>
成人男性10名を被験者とし、実施例で作成した電気配線付きの衣服を着用し、心電計測を行いながら、ラジオ体操第1と、ラジオ体操第2を続けて実施した。その間の着用感について、「触感が良い」を5点、「触感が悪い」を1点として、五段階の官能評価を行い、10人の平均において、4以上を◎、3以上4未満を○、2以上3未満を△、2未満を×とした。
【0080】
<布地形状の凹凸高低差と繰り返しピッチ>
衣服型電子機器から電極部と配線部を含む部分を50mm×100mmの矩形に切り取って試験片とした。試験片を幅50mmの両面テープを用いて厚さ10mmの配線部分を基材である布帛ごと、たるみが生じないように貼り付け、次いで、キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK−X200により試験片を観察し、得られたデータを、VK−X100/X200用解析アプリケーションによりデータ処理し、凹凸の高低差を求めた。なお高低差は5個所の凹部について測定し、平均した。続いて試験片の上に、無作為の方向となるように0.5mmメモリのスケールを置き、凹凸繰り返しピッチを測定した。測定は、まず10回の繰り返しについてのピッチ間隔の平均を求め、同様の操作を無作為に選択した別の方向について計5回行い、五つの平均値のさらに平均値を求め繰り返しピッチとした。
【0081】
<着用感>
成人男性10名を被験者とし、実施例で作成した電気配線付きの衣服を着用し、心電計測を行いながら、ハーフマラソンを実施した。その間の着用感について、「触感が良い」を5点、「触感が悪い」を1点として、五段階の官能評価を行い、10人の平均において、4以上を◎、3以上4未満を○、2以上3未満を△、2未満を×とした。
【0082】
<洗濯耐久性>
ウェアを40cm×50cmの角形洗濯ネットに入れ、JIS L 0217(繊維製品の取扱いに関する表示記号およびその表示方法)の洗い方103に規定するJIS C 9606(電気洗濯機)の規格に適合する遠心式絞り装置付きの標準洗濯容量、標準水量の家庭洗濯機を使用し、洗剤なしで15分間の洗濯を行い、10分間の脱水後に取り出して室内にて陰干しした後に配線部の導通有無を確認し、導通が確認できた場合を○、断線ないし導通が不安定になっていた場合を×とした。
【0083】
<位置合わせズレ>
あらかじめ各層に設けた位置合わせ用のトンボマークを用いて、導体層と絶縁カバー層との位置ズレを、μm単位で測定できる測長機を用いて測定した。トンボマークは印刷に用いた四角形のスクリーン版に合わせ、必要な印刷パターンの四隅に相当する部分に設けており、印刷時に少なくとも一個のトンボマークは合致するようにセットして、印刷を行い、各四隅の各々のXY方向のズレ量からベクトル量を求め、4点のベクトル量の絶対値の平均値を求めた。
【0084】
[製造例]
<合成ゴム材料の重合>
攪拌機、水冷ジャケットを備えたステンレス鋼製の反応容器に
ブタジエン 54質量部
アクリロニトリル 46質量部
脱イオン水 270質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5質量部
ナフタレンスルホン酸ナトリウム縮合物 2.5質量部
t−ドデシルメルカプタン 0.3質量部
トリエタノールアミン 0.2質量部
炭酸ナトリウム 0.1質量部
を仕込み、窒素を流しながら浴温度を15℃に保ち、静かに攪拌した。次いで 過硫酸カリウム0.3質量部を脱イオン水19.7質量部に溶解した水溶液を30分間かけて滴下し、さらに20時間反応を継続した後、ハイドロキノン0.5質量部を脱イオン水19.5質量部に溶解した水溶液を加えて重合停止操作を行った。
次いで、未反応モノマーを留去させるために、まず反応容器内を減圧し、さらにスチームを導入して未反応モノマーを回収し、NBRからなる合成ゴムラテックス(L1)を得た。得られたラテックスに食塩と希硫酸を加えて凝集・濾過し、樹脂に対する体積比20倍量の脱イオン水を5回に分けて樹脂を脱イオン水に再分散、濾過を繰り返すことで洗浄し、空気中にて乾燥して合成ゴム樹脂R1を得た。
【0085】
得られた合成ゴム樹脂R1の評価結果を表1に示す。
以下仕込み原料、重合条件、洗浄条件などを変えて同様に操作を行い、表1に示す樹脂材料R2〜R4を得た。なお、表中の略号は以下の通りである。
NBR:アクロニトリルブタジエンゴム
NBIR:アクリロニトリル−イソプレンゴム(イソプレン10質量%)
SBR:スチレンブタジエンゴム(スチレン/ブタジエン=50/50質量%)
【0086】
【表1】
【0087】
[製造例]
エポキシ当量175〜195の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂1.5質量部、製造例にて得られた伸縮性樹脂(R1)10質量部、潜在性硬化剤[味の素ファインケミカル株式会社製 商品名アミキュアPN23] 0.5質量部、をイソホロン30質量部と混合攪拌して溶解させバインダー樹脂組成物A1を得た。次いでバインダー樹脂組成物A1に、平均粒子径6μmの微細フレーク状銀粉[福田金属箔粉工業社製 商品名Ag−XF301]58.0質量部を加えて均一に混合し、三本ロールミルにて分散することにより導電ペーストAG1を得た。得られた導電ペーストAG1の評価結果を表2a、表2bに示す。
【0088】
以下、材料を変えて配合を行い、表2a、表2bに示す導電ペーストAG2〜AG6を得た。評価結果を同様に表2a、表2bに示す。
なお、表2a、表2bにおいて無定型銀粉1はDOWAエレクトロニクス社製の凝集銀粉G−35、平均粒子径6.0μm、無定型銀粉2はDOWAエレクトロニクス社製の凝集銀粉G−35を湿式分級して得た平均粒子径2.1μmの凝集銀粉である。
【0089】
以下、導電ペーストと同様に、表2a、表2bに従って配合を変え、電極表面層用のカーボンペーストCB1、下地層、絶縁カバー層用のペーストCC1、CC2を得た、評価結果を表2a、表2b.に示す。なお固体粒子を含まないCC1、CC2については樹脂成分を溶剤に溶解してペーストとした。
【0090】
【表2a】
【表2b】
【0091】
(実施例1)
図6に示す転写法により、心電図測定用の衣服型電子機器を製作した。
厚さ125μmの離型PETフィルムに、まず電極表面層となるカーボンペーストCB1を所定のパターンにてスクリーン印刷し、乾燥硬化した。次いで絶縁カバー層となる絶縁ペーストCC1を所定のパターンにスクリーン印刷し、乾燥硬化した。心電測定用の電極表面層は直径30mmの円形である。また絶縁カバー層は電極部において内径が30mm、外径が36mmのドーナツ状であり電極から伸びる配線部は幅14mmで、配線部の終端には、センサとの接続用ホックを取り付けるために直径10mmの円形電極が同様にカーボンペーストで印刷されている。カーボンペースト層の厚さは乾燥膜厚で25μmであり、絶縁カバー層は15μm、である
次いで、導体層となる銀ペーストAG1を用いて電極部と配線部をスクリーン印刷し、所定の条件で乾燥硬化した。電極部は直径32mmの円形、配線部は幅10mmであり、絶縁カバー層上での乾燥厚さが30μmとなるように調整した。さらに下地層を絶縁カバー層と同じCC1を用いて乾燥厚さが20μmとなるように調整してスクリーン印刷し乾燥し、さらにもう一度同条件で下地層を印刷し、乾燥時間を調整して溶剤分が25質量%残存するようにして表面タック性を残し、転写性のある印刷電気配線を得た。
【0092】
次いで、以上の工程により得られた転写性の印刷電気配線を裏返したニット生地から成るスポーツシャツの所定部分に重ね、室温でプレスして印刷電気配線をスポーツシャツの裏側に仮接着し、離型PETフィルムを剥離し、スポーツシャツをハンガーに掛けて、さらに115℃にて30分間乾燥し、電気配線付きスポーツシャツを得た。配線パターンを
図7に、シャツに対する配線パターンの配置を
図8に示す。
得られた電気配線付きスポーツシャツは、左右の後腋窩線上と第7肋骨との交差点に直径30mmの円形電極があり、さらに円形電極から後頸部中央までの幅10mmの伸縮性のある導体による電気配線が内側に形成されている。なお左右の電極から後頸部中央に伸びる配線は、頸部中央にて5mmのギャップを持ち、両者は短絡されていない。
【0093】
続いて、後頸部中央端の表面側にステンレススチール製のホックを取り付け、裏側の配線部と電気的導通を確保するために金属細線を撚り込んだ導電糸を用いて伸縮性導体組成物層とステンレススチール製ホックとを電気的に接続した。
ステンレススチール製ホックを介して、ユニオンツール社製の心拍センサWHS−2を接続し、同心拍センサWHS−2専用のアプリ「myBeat」を組み込んだアップル社製スマートホンで心拍データを受信し、画面表示できるように設定した。以上のようにして心拍計測機能を組み込んだスポーツシャツを作製した。
【0094】
本シャツを被験者に着用させ、ラジオ体操第1、ラジオ体操第2を連続して行い、その間の心電データを取得した。得られた心電データはノイズが少なく、高解像度で、心電図としてメンタルな状態、体調、疲労度、眠気、緊張度合いなどを心拍間隔の変化、心電波形などから解析可能な品位を有していた。同じシャツを10名の被験者に着用して貰い、着用感を評価した。結果を表3、表4.に示す。
着用試験に用いたスポーツシャツと同条件で製作したスポーツシャツから、所定の試験片を切り取り、電極部/配線部境界の段差評価、10%伸縮1回、および100回について配線の導電性、絶縁カバー層の絶縁性、下地層の絶縁性、それぞれの維持性能を評価した。結果を表3、表4.に示す。
【0095】
以下同様に表3、表4に示す構成により.実施例2〜6、比較例1〜2のスポーツシャツ製作し、同様に評価した。結果を表3、表4.に示す。
【0096】
(比較例3〜5)
実施例1に用いたニット地のスポーツシャツを裏返し、型枠に、背面にしわが入らないように入れてシャツの両肩と左右の裾にピンを打って固定した。
次いで、
図5に示す直接印刷法にて実施例と同じ配線パターンのスポーツシャツを製作した。まず、所定のパターンにて下地層をCCペーストでスクリーン印刷し、所定の条件で乾燥し、さらにもう一度同条件で印刷し、乾燥硬化した。次いで、導体層、絶縁カバー層、電極表面層の順で各々印刷、乾燥を繰り返し、電気配線を得た。得られたスポーツシャツに実施例と同様にホックを取り付け、ユニオンツール社製の心拍センサWHS−2を接続し、以下同様に評価を行った。結果を表3、表4.に示す。
【0097】
なお、比較例1においては、最初の着用時に配線部の断線が生じ、心電データを得ることができなかった。比較例2においては初期の心電データ取得は問題なく行えたが、ラジオ体操を行っている過程でノイズが増加し、ラジオ体操第2の途中でデータを取得することができなくなった。比較例3〜5では、最後までデータ取得が可能であったが、初期の比抵抗が比較的大きい比較例5においては100回繰り返し伸張試験において、伸張時の抵抗値が初期抵抗値の100倍を超え、「×」評価となった。
【0098】
【表3】
【表4】
【0099】
<離型用中間媒体の製作例1>
500メッシュの平織りステンレススクリーンを両面粘着テープにて周囲に高さ15mmのダムを設けた厚さ12mmのシナ合板に貼り付け、離型剤としてPVA糊を、乾燥時にスクリーンの厚さ方向に半分が埋没するために必要な相当量を塗り、20時間の自然乾燥を行い、さらにドライオーブンにて70℃2時間の乾燥を行った。次いで、二液硬化型のシリコーン樹脂を厚さが概ね5mmとなるように流し込み、室温24時間かけて硬化した。硬化後にシリコーン樹脂を剥がし、平織り柄の凹凸の転写型1を得た。
以下、メッシュ数の異なるステンレススクリーン、ポリエステルスクリーンを用いて同様に操作を行い表5.に示す転写型を得た。
【0100】
<離型用中間媒体の製作例2>
トリコット織りのファブリックを両面粘着テープにて周囲に高さ15mmのダムを設けた厚さ12mmのシナ合板に貼り付け、離型剤兼毛羽抑え剤としてPVA糊を織物に十分に浸透するように塗り、20時間の自然乾燥を行い、さらにドライオーブンにて70℃2時間の乾燥を行った。次いで、二液硬化型のシリコーン樹脂を厚さが概ね5mmとなるように流し込み、室温24時間かけて硬化した。硬化後にシリコーン樹脂を剥がし、トリコット編地の凹凸の転写型を得た。
以下、編み地を替えて同様の操作を行い表5.に示す転写型を得た。
【0101】
<エンボス型の製作例>
離型用中間媒体の製作例に用いた平織りスクリーンの一部を3Dスキャナで読み取ってデジタルデータに加工し、凹凸のネガ/ポジを反転させた上で凹凸の繰り返しピッチおよび、高低差を所定の値になるように変形させ、3Dプリンタにて成型した。ついで得られた成型体に離型剤を塗布し、次いで室温硬化のエポキシ樹脂を含浸させたガラスクロスを5枚重ね、全体を厚手の布団圧縮袋に入れて袋内を掃除機で減圧し、24時間後に取り出し、硬化したFRP部分を取り外した、ついで硬化したFRPの背面側を熱硬化型のパテで埋めて平らにし、エンボス型を得た。
以下同様に、凹凸の繰り返しピッチおよび高低差を変えて成型を行い、表5.に示すエンボス型を得た。
【0102】
【表5】
【0103】
<転写法による実施例、比較例>
(実施例101〜120、比較例101〜108)
図6に示す転写法により、心電図測定用の衣服型電子機器を製作した。
表5.に示す転写型4に、まず電極表面層となるカーボンペーストCB1を所定のパターンにてスクリーン印刷し、乾燥硬化した。次いで絶縁カバー層となる絶縁ペーストCC1を所定のパターンにスクリーン印刷し、乾燥硬化した。心電測定用の電極表面層は直径30mmの円形である。また絶縁カバー層は電極部において内径が30mm、外径が36mmのドーナツ状であり電極から伸びる配線部は幅14mmで、配線部の終端には、センサとの接続用ホックを取り付けるために直径10mmの円形電極が同様にカーボンペーストで印刷されている。カーボンペースト層の厚さは乾燥膜厚で25μmであり、絶縁カバー層は30μmである
【0104】
次いで、導体層となる銀ペーストAG1を用いて電極部と配線部をスクリーン印刷し、所定の条件で乾燥硬化した。電極部は直径32mmの円形、配線部は幅10mmであり、絶縁カバー層上での乾燥厚さが40μmとなるように調整した。さらに下地層を絶縁カバー層と同じCC1を用いて乾燥厚さが40μmとなるように調整してスクリーン印刷し乾燥し、さらにもう一度同条件で下地層を印刷し、乾燥時間を調整して溶剤分が25質量%残存するようにして表面タック性を残し、転写性のある印刷電気配線を得た。
次いで、以上の工程により得られた転写性の印刷電気配線を裏返したニット生地から成るスポーツシャツの所定部分に重ね、室温でプレスして印刷電気配線をスポーツシャツの裏側に仮接着し、転写型を剥離し、スポーツシャツをハンガーに掛けて、さらに115℃にて30分間乾燥し、表面に平織形状のパターンを有する電気配線付きスポーツシャツを得た。
得られた電気配線付きスポーツシャツは、左右の後腋窩線上と第7肋骨との交差点に直径30mmの円形電極があり、さらに円形電極から後頸部中央までの幅10mmの伸縮性のある導体による電気配線が内側に形成されている。なお左右の電極から後頸部中央に伸びる配線は、頸部中央にて5mmのギャップを持ち、両者は短絡されていない。
【0105】
続いて、後頸部中央端の表面側にステンレススチール製のホックを取り付け、裏側の配線部と電気的導通を確保するために金属細線を撚り込んだ導電糸を用いて伸縮性導体組成物層とステンレススチール製ホックとを電気的に接続した。
ステンレススチール製ホックを介して、ユニオンツール社製の心拍センサWHS−2を接続し、同心拍センサWHS−2専用のアプリ「myBeat」を組み込んだアップル社製スマートホンで心拍データを受信し、画面表示できるように設定した。以上のようにして心拍計測機能を組み込んだスポーツシャツを作製した。配線パターンを
図7に、シャツに対する配線パターンの配置を
図8に示す。
【0106】
本シャツを被験者に着用させ、ハーフマラソンの距離を走り、その間の心電データを取得した。得られた心電データはノイズが少なく、高解像度で、心電図としてメンタルな状態、体調、疲労度、眠気、緊張度合いなどを心拍間隔の変化、心電波形などから解析可能な品位を有していた。同じシャツを10名の被験者に着用して貰い、着用感を評価した。結果を表6a、表6b、表6c.に示す。
着用試験に用いたスポーツシャツと同条件で製作したスポーツシャツから、所定の試験片を切り取り、電極部/配線部境界の段差評価、10%伸縮1回、および100回について配線の導電性、絶縁カバー層の絶縁性、下地層の絶縁性、それぞれの維持性能を評価した。結果を表6a、表6b、表6c、表7a、表7b、表7cに示す。
【0107】
以下同様に表6a、表6b、表6c、表7a、表7b、表7cに示す構成によりスポーツシャツ製作し、同様に評価した。結果を表6a、表6b、表6c、表7a、表7b、表7cに示す。
【0108】
<直接印刷法+エンボス加工による実施例、比較例>
図5に示す直接印刷法により、心電図測定用の衣服型電子機器を製作した。
実施例101に用いたニット地のスポーツシャツを裏返し、型枠に、背面にしわが入らないように入れてシャツの両肩と左右の裾にピンを打って固定した。
次いで、
図5に示す直接印刷法にて実施例と同じ配線パターンのスポーツシャツを製作した。まず、所定のパターンにて下地層をCCペーストでスクリーン印刷し、所定の条件で乾燥し、さらにもう一度同条件で印刷し、乾燥硬化した。次いで、導体層、絶縁カバー層、電極表面層の順で各々印刷、乾燥を繰り返し、電気配線を得た。
【0109】
<エンボス加工>
厚さ3mmのシリコーンゴムシートに得られた電気配線付きシャツを配線面が上になるように置き、さらに表5に示すエンボス型4を重ね、90℃に加熱したホットプレート上に乗せて加圧し、配線面にエンボス型の凹凸を転写した。
エンボス加工後のスポーツシャツに実施例と同様にホックを取り付け、ユニオンツール社製の心拍センサWHS−2を接続し、心拍計測機能を組み込んだスポーツシャツを得た。以下同様に評価を行った。結果を表6a、表6b、表6c、表7a、表7b、表7cに示す。
【0110】
<転写法+エンボス加工による実施例、比較例>
離型PETフィルムを転写型の代わりに用いて
図6に示す転写法により電気配線を形成し、次いで所定のエンボス型を用いてエンボス加工を行うことにより心電図測定用の衣服型電子機器を製作し、同様に評価した。結果を表6a、表6b、表6c、表7a、表7b、表7cに示す。
【0111】
なお、表6a、表6b、表6c、表7a、表7b、表7cにおいて使用型の欄に離型PETとエンボス型の両方が示してある例が、転写法とエンボス加工との組み合わせとなる。
比較例1は柔軟性の乏しい導体層を用いた場合であり、着用感には問題ないが、伸縮に対する耐久性に乏しい。比較例102、比較例104は配線表面に布地形状加工を行わなかった場合であり、着用感に問題がある。特に長距離走などの発汗が激しい運動においては平坦な配線表面が皮膚に張り付き不快感が大きくなると解釈できる。比較例103はいずれも柔軟性の乏しい導体層の例であり伸縮耐久性に問題がある。実施例110は伸縮耐久性に多少問題はあるが、着用感ならびに洗濯耐久性が改善されており、凹凸を付けた場合は若干伸縮に対する耐久性が改善されていることが読み取れる。比較例105は、所謂ハイメッシュな平織布の表面パターンを用いた場合であるが、凹凸の繰り返しピッチ、高低差ともに小さすぎて着用感を改善する効果がみられない。比較例106は逆に大きすぎる場合であり、着用感の改善効果が乏しく、さらに伸縮耐久性に若干問題がある。比較例107は凹凸高低差が小さい場合であり、着用感の改善効果が乏しい。比較例108は逆に凹凸高低差が大なる場合である。エンボス加工による凹凸が大きすぎると導体層の断線が生じやすくなると解釈できる。
【0112】
【表6a】
【表6b】
【表6c】
【0113】
【表7a】
【表7b】
【表7c】
【0114】
<布地形状の凹凸を有する離型用中間媒体を使った作製例>
(実施例201〜205)
150メッシュの平織りステンレススクリーンを両面粘着テープにて周囲に高さ15mmのダムを設けた厚さ12mmのシナ合板に貼り付け、離型剤としてPVA糊を、乾燥時にスクリーンの厚さ方向に半分が埋没するために必要な相当量を塗り、20時間の自然乾燥を行い、さらにドライオーブンにて70℃2時間の乾燥を行った。次いで、二液硬化型のシリコーン樹脂を厚さが概ね5mmとなるように流し込み、室温24時間かけて硬化した。硬化後にシリコーン樹脂を剥がし、平織り柄の凹凸の転写型を得た。
実施例1の離型PETフィルムに変えて得られた転写型を用い、以下表8.に示す内容にて電気配線を作製し、以下同様に評価した。結果を表8.に示す。
【0115】
<ストライプ状の凹凸を有する離型用中間媒体を使った作製例>
3Dプリンタを用いてストライプ状凹凸を有する離型用中間媒体を作製した。ストライプの周期は2mm、凹凸繰り返しは正弦波で振幅は50μmとした。
実施例1の離型PETフィルムに変えて得られたストライプ状凹凸を有する転写型を用い、以下表8.に示す内容にて電気配線を作製し、以下同様に評価した。結果を表8.に示す。
【0116】
(比較例201)
実施例1に用いたニット地のスポーツシャツを裏返し、型枠に、背面にしわが入らないように入れてシャツの両肩と左右の裾にピンを打って固定した。
次いで、
図5に示す直接印刷法にて実施例と同じ配線パターンのスポーツシャツを製作した。まず、所定のパターンにて下地層をCCペーストでスクリーン印刷し、型枠から外して所定の条件で乾燥し、さらにもう一度型枠にセットし、導体層、絶縁カバー層、電極表面層の順で各々印刷、型枠外し、乾燥、型枠固定を繰り返し、電気配線を得た。得られたスポーツシャツに実施例と同様にホックを取り付け、ユニオンツール社製の心拍センサWHS−2を接続し、以下同様に評価を行った。結果を表8.に示す。
【0117】
比較例201においては、配線のズレが非常に大きく、本発明の配線が非常に太く、各層の重ね合わせのマージンも2mm程度に設定していたために大きな問題は生じなかったが、配線幅が1mmを切るような比較的細線の場合には、ずれが配線幅を上回っているために、設計に沿った電気配線が形成できないことは自明である。
【表8】