(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1放射部と、前記第2放射部は、アンテナ装置の移動が変化する一方向に対し所定の間隔を有し、前記一方向に直交する方向に沿って設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかるアンテナ装置を示す図である。
図1(a)は斜視図、
図1(b)は側面図である。アンテナ装置100は、上述したアドホック端末等のユーザが自由な位置で保持し、携帯可能な無線通信装置に設けられる。
【0012】
図1に示すアンテナ装置100は、所定面積の導電体からなるグランド(GND)面101と、ロッド状の導電体からなる放射部102と、を含む。放射部102は、一方の基端部102aが給電点Pに接続され、GND面101の周囲にわたって、自由端である先端部102bまで所定長さ(3/4λ、λ:通信の基本波の波長)を有して設けられる。放射部102の長さについて、高調波nを含めた場合、全長は(4n+3)λ/4(但し、n≧0の整数)となる。
【0013】
放射部102は、例えば、金属の板体や棒状体を用いることができる。
図1の例では、放射部102の先端部102bは、長さ方向Yに対し、GND面101よりも突出(5mm)して設けられる。なお、不図示であるが給電点Pにはインピーダンス整合用の整合回路が設けられる。
【0014】
放射部102の基端部102aは、給電点P部分に設けられ、GND面101に対して方向Zに所定高さを有する導電性の保持ブロック103に導電接続されている。放射部102は、GND面101の一側部101aに沿った第1放射部111と、GND面101の他側部101cに沿った第2放射部112と、GND面101の底部101bに沿った第3放射部113と、を含む。
【0015】
放射部102は、第1放射部111と、第2放射部112とを所定の間隔で平行に配置する。そして、第1放射部111の端部102cと、第2放射部112の端部102dとを第3放射部113により導電接続することで、放射部102は、1本の導電体により平面が略コの字型に形成される。なお、端部102cは、第1放射部111の基端部102aの他端に位置し、端部102dは、第2放射部112の先端部102bの他端に位置する。
【0016】
これら第1放射部111と、第2放射部112と、第3放射部113は、それぞれ略1/4λの長さを有する。なお、
図1の例では、GND面101は、幅方向Xに対し、長さ方向Yを長く形成した直方体の形状としている。これに限らず、幅方向Xと長さ方向Yとを同じ長さとした正方形の形状としてもよい。
【0017】
図1の例では、給電点Pは、一側部101aの頂点(GND面101の角部)から長さ方向Yに所定長さを隔てて配置しているが、給電点Pは、一側部101aの頂点(GND面101の角部)に配置してもよい。
【0018】
図1(b)に示すように、アンテナ装置100は、全体が例えばPET等の樹脂材の充填等で形成されるカバー120で覆われる。例えば、GND面101と、放射部102とを樹脂材でモールドすることで一つの部品としてアンテナ装置100を製造できる。また、カバー120により、GND面101に対する放射部102の位置を固定位置に保持できるようになる。
【0019】
これにより、所定のアンテナ特性を得ることができるようになるとともに、無線通信装置に対するアンテナ装置100の組み込みの作業も容易に行えるようになる。なお、放射部102で囲まれたGND面101部分には、無線通信装置の各種部品、例えば、バッテリや表示部を重ねて配置することができる。
【0020】
次に、上述の構成のアンテナ装置100について、既存のアンテナ装置の課題を含めて説明する。
【0021】
図2は、既存の一般的なアンテナ装置を示す図である。
図2には、1/4λ逆L字型のアンテナ装置200を示し、GND面201と、給電点Pから1/4λの長さでGND面201の一側部201aに沿って設けられる放射部202とを有している。なお、201aはGND面201の一側部、201bはGND面201の底部、201cはGND面201の他側部である。
【0022】
ここで、
図2に示す既存のアンテナ装置200、および
図1に示す実施の形態のアンテナ装置100は、大きさ、例えば、GND面101,201が同様の大きさであるとする。
【0023】
図3は、既存のアンテナ装置による使用位置毎の利得の変動状態を説明する図である。
図3(a)は、ユーザである人体モデルと無線通信装置(アンテナ装置200)の位置関係を示す図である。人体モデル300は、人の胴体を矩形状にモデル化したものであり、人体定数は比誘電率が41.5、導電率が0.97S/mであるとする。そして、固定位置の人体モデル300に対し、アンテナ装置200を幅方向Xに沿って移動させたとする。移動距離は400mmである。
【0024】
図3(b)は、
図3(a)に示す各条件において、アンテナ装置200を幅方向Xへ移動させたときの人体の正面方向(Z方向)の動作利得のシミュレーション結果を示す図表である。横軸は、人体モデル300に対するアンテナ装置200の位置[mm]、縦軸は動作利得[dBi]である。また、基本波(λ)は920MHz、整合回路は、1/4逆L字型の放射部202−直列インダクタ(0.8[nH])−並列インダクタ(1.85[nH])−給電点Pの回路構成である。
【0025】
図3(b)に示すように、アンテナ装置200を人体モデル300の左端(0mm)から幅方向Xに移動させるにしたがい、右端(400mm)に近づく領域(300mm〜400mm)で動作利得が大きく変動していることがわかる。右端付近(360mm)で最も動作利得が低下している。このような、ユーザの人体に対するアンテナ装置200(無線通信装置)の使用位置による利得の変動は、通信品質の劣化につながる。このため、人体に対するアンテナ装置200(無線通信装置)の使用位置に変化があっても利得の変動を抑制する必要がある。なお、
図3(b)の特性は、基本波に対する動作利得を示しているが、高調波n(n=1,2,…)においても同様の特性となる。
【0026】
図4は、既存のアンテナ装置による使用位置別の指向性を示す図表である。
図4(a)は、アンテナ装置200(無線通信装置)を人体モデル300の中央(200mm)に配置したときの指向性Dを示すシミュレーション結果である。アンテナ装置200(無線通信装置)が人体モデル300の中央(200mm)に位置した場合、アンテナ装置200の放射パターンは人体モデル300と逆方向の正面方向(180°)に向く指向性Dを有する。
【0027】
図4(b)は、アンテナ装置200(無線通信装置)を人体モデル300の右端付近(360mm)に配置したときの指向性Dを示すシミュレーション結果である。アンテナ装置200(無線通信装置)が人体モデル300の右端付近(360mm)に位置した場合、アンテナ装置200の放射パターンは人体モデル300の背後方向の(0°)の部分指向性d1を有している。加えて、人体モデル300の正面方向(180°)の部分指向性d2が
図4(a)に比して弱い部分を有する。
【0028】
図5は、既存のアンテナ装置の電流分布を示す図である。アンテナ装置200のGND面201上の電流分布をシミュレーションした結果を示す。
図5に示すように、アンテナ装置200では、素子(放射部)202が配置されている一側部201a側の電流が強くなっている。このことから、発明者らはこの電流によって生じる電界が人体モデル300の側面(右側)に回り込み、正面方向に電波が放射されない状態(
図4(b))が生じていると推測した。
【0029】
このような既存のアンテナ装置200が有する課題の対策として、発明者らはアンテナ装置200の給電点Pが設けられた一側部(右側)201aだけではなく、左側の他側部201cにも強い電流を形成し、放射に寄与させることが有効と考えた。これにより、一側部(右側)201aで電波が人体背後に回り込んだとしても、他側部(左側)201cの電波が人体の正面方向に電波を放射することができると推測した。
【0030】
そして、既存のアンテナ装置200のように、一側部(右側)201aに1本の素子(放射部)202を配置した構成に加え、他側部(左側)201cにも1本の素子(放射部)202を追加配置することを検討した。しかし、この構成では、素子(放射部)202が2本となり、アンテナ本数が増えてアンテナ回路が複雑となり、また、実装も簡易に行えなくなる。
【0031】
このため、実施の形態のアンテナ装置100は、1本の素子(放射部)102だけで既存のアンテナ装置200が有する課題を解決する。
図1に示す実施の形態の放射部102は、ユーザ(人)が無線通信装置を手に持ったとき、無線通信装置(アンテナ装置100)が主に移動する幅方向XにおけるGND面101の両側部(一側部101aおよび他側部101c)に電流が強い領域を形成する。
【0032】
このため、放射部102として、GND面101の一側部101aに第1放射部111を設け、他側部101cに第2放射部112を設ける。そして、放射部102は、第1放射部111と第2放射部112を第3放射部113で接続する。後述するが、第1放射部111と第2放射部112は所定の利得が得られるように幅方向Xに対して適切な間隔に設定する。また、第1放射部111と第2放射部112に流れる電流の向きは同じ向きにする。このような実施の形態のアンテナ装置100によって、人体に対するアンテナ装置100の位置が変化しても、人体の正面方向に電波を放射できるようにし、安定した利得が得られるようにする。
【0033】
図1に示した例では、放射部102は、第1放射部111と第2放射部112を直線状の第3放射部113で接続した略コの字状の例を示したがこれに限らない。実施の形態の放射部102は、第1放射部111と第2放射部112に流れる電流方向が同じ方向となるよう第3放射部113を設ければよく、第3放射部113の形状は各種形状とすることができる。例えば、第1放射部111の端部102cと、第2放射部112の端部102dとを導電接続する第3放射部113が直線状ではなく、折れ曲がった形状とし、放射部102全体が略Mの字形状としてもよい。さらには、第3放射部113がより多くの折れ曲がり箇所を有するギザギザの形状や、メアンダ形状としてもよい。
【0034】
図6は、実施の形態にかかるアンテナ装置の電流分布を示す図である。
図6(a)には、実施の形態のアンテナ装置100(
図1参照)のGND面101上の電流分布をシミュレーションした結果を示す。この
図6(a)は、素子(放射部)102は記載していないが、アンテナ装置100として素子(放射部)102を設けた場合のGND面101上の電流分布を示す。
図6(b)には、実施の形態のアンテナ装置100の素子(放射部)102の電流の大きさおよび向きをシミュレーションした結果を示す。
【0035】
図6(a)に示すように、アンテナ装置100のGND面101には、給電点Pが設けられた一側部101aだけではなく、反対側の他側部101cにも電流が強い領域が形成されている。
【0036】
また、
図6(b)に示すように、アンテナ装置100の放射部102について、第1放射部111は、給電点Pに接続された基端部102aの電流が最も大きく、長さ方向Y(第3放射部113)に向けて次第に電流iが小さくなり0に至る。また、第2放射部112は、先端部102bの電流iが0であり、長さ方向Y(第3放射部113)に向けて次第に電流iが大きくなる。ここで、第1放射部111と第2放射部112の電流iの向きは、いずれも長さ方向Yに沿った同方向である。
【0037】
図7は、実施の形態にかかるアンテナ装置による使用位置毎の利得を示す図である。
図7(a)は、ユーザである人体モデルと無線通信装置(アンテナ装置100)の位置関係を示す図である。人体モデル300の人体定数は、上記説明した既存のアンテナ装置200(
図3参照)と同じである。そして、固定位置の人体モデル300に対し、アンテナ装置200を幅方向Xに沿って移動させたとする。移動距離は400mmである。
【0038】
図7(b)は、
図7(a)に示す各条件において、アンテナ装置100を幅方向Xへ移動させたときの人体の正面方向(Z方向)の動作利得のシミュレーション結果を示す図表である。横軸は、人体モデル300に対するアンテナ装置100の位置[mm]、縦軸は動作利得[dBi]である。また、基本波(λ)は920MHzである。整合回路は、3/4λコの字型の放射部102−並列インダクタ(5.0[nH])−給電点Pの回路構成である。対比のために既存のアンテナ装置200の特性も記載してある。
【0039】
図7(b)に示すように、実施の形態のアンテナ装置100を、人体モデル300の左端(0mm)から幅方向Xに移動させた場合、右端(400mm)に至るまで動作利得の変動が小さい結果となった。
【0040】
特に、既存のアンテナ装置200では、右端(400mm)に近づく領域(300mm〜400mm)で動作利得が大きく低下(2.5dB程度の変動)しているのに対し、この右端近傍の領域においても動作利得の変動を少なく(1dB以内)抑えることができた。また、実施の形態のアンテナ装置100は、既存のアンテナ装置200に対し、動作利得全体を向上できる。なお、
図7(b)の特性は、基本波に対する動作利得を示しているが、高調波n(n=1,2,…)においても同様の特性が得られる。
【0041】
図8は、実施の形態にかかるアンテナ装置の電界放射状態を示す図である。
図8(a)は、実施の形態のアンテナ装置100(無線通信装置)を人体モデル300の右端付近(360mm)に配置したときの電界放射のシミュレーション結果である。
【0042】
この図に示すように、実施の形態のアンテナ装置100によれば、アンテナ装置100(無線通信装置)の両端に強い電界が生じ、両端の電界が合成されて人体の正面方向(Z方向)に放射されていることがわかる。
【0043】
実施の形態によれば、アンテナ装置100の両側部(一側部101aおよび他側部101c)から、それぞれ強い電界が放射されているのがわかる。実施の形態のアンテナ装置100の両側部には、上述したように、GND面101の一側部101aに第1放射部111が設けられ、GND面101の他側部101cに第2放射部112が設けられている。
【0044】
実施の形態のアンテナ装置100においても、人体モデル300の背後にも電界が回り込む成分を有するが、第1放射部111と、第2放射部112に対応して強い電界が幅方向Xの2か所で有している。これにより、第2放射部112側の電界が人体モデル300の正面方向(Z方向)への放射に寄与していると推測される。
【0045】
図8(b)は、対比用に既存のアンテナ装置200の電解放射のシミュレーション結果である。既存のアンテナ装置200では、アンテナ装置200の一側部(右側)から、強い電界が放射されているのがわかる。既存のアンテナ装置200の一側部(右側)には、上述したように、GND面201の一側部201aにのみ放射部202が設けられている。既存のアンテナ装置200では、人体モデル300の一側部201a(右側)から人体モデル300の背後に回り込むことで、その分、人体モデル300の正面方向(Z方向)への放射が低くなっている。
【0046】
このように、実施の形態のアンテナ装置100によれば、アンテナ装置100が人体モデル300の一側部101a近傍に位置した場合であっても、人体モデル300の正面方向(Z方向)への放射を強めることができた。これは、アンテナ装置100の放射部102として、GND面101の一側部101aに第1放射部111を設け、さらに、GND面101の他側部101cに第2放射部112を設けたことに対応している。
【0047】
既存のアンテナ装置200では、放射された電波の電界強度は、アンテナ装置200の中心位置から一側部(右側)に偏っている。これにより、既存のアンテナ装置200が人体モデル300の右側に位置したときには、一側部201a(右側)にのみ設けた放射部202から放射される電界が人体モデル300の右側から背後に回り込む。そして、人体モデル300の正面方向(Z方向)への放射が低くなっているものと推測される。
【0048】
これに対し、実施の形態のアンテナ装置100では、放射された電波の電界強度は、アンテナ装置100の中心位置から人体モデル300の正面方向(Z方向)に向けて偏りなく放射されている。これにより、実施の形態のアンテナ装置100が人体モデル300の右側に位置したときでも、両側部(右側および左側)に設けた放射部102から放射される電界により、人体モデル300の正面方向(Z方向)への放射を強めることができたものと推測される。
【0049】
図9は、実施の形態にかかるアンテナ装置の素子間隔を説明する図である。
図9(a)に示すように、アンテナ装置100の放射部102の第1放射部111と第2放射部112は素子間隔λxを有している。そして、この素子間隔λxを可変させたときの特性を
図9(b)に示す。
図9(b)の横軸は素子間隔[λx]、縦軸は動作利得[dBi]である。
【0050】
素子間隔を狭くすると、第1放射部111と第2放射部112が互いに近接するため、放射部102は略ヘアピン形状となる。一方、素子間隔を広くすると、第1放射部111と第2放射部112が互いに離れるため、放射部102はほぼ直線状となる。
【0051】
図9(b)に示すように、素子間隔を狭くするほど、および素子間隔を広くするほど、利得が低下していく。これは、素子間隔を狭くするほど、および素子間隔を広くするほど、人体からの影響が大きいためである。
【0052】
ここで、素子全体、すなわち放射部102の基端部102aから先端部102bまでの全長(第1放射部111〜第3放射部113〜第2放射部112)は3/4λ、λ=920MHzであるとする。この場合、
図9(b)に示すように、素子間隔λxは、0.125〜0.33[λx]の範囲が好適であり、最も動作利得が小さい−6dBを基準としている。最適な素子間隔は利得が頂点に位置する0.25[λx]λである。すなわち、アンテナ装置100の人体影響を小さくするためには、素子間隔は、0.125[λx]以上、0.33[λx]以下とすればよい。
【0053】
図10は、実施の形態のアンテナ装置の他の構成例を示す図である。
図10のアンテナ装置100において、
図1と同様の構成部には同一の符号を付している。
図10のアンテナ装置100は、
図1に比べて放射部102の先端部102bをGND面101の上部101dに沿って幅方向Xに折り曲げたものである。
【0054】
放射部102は、上述同様に3/4λの全長を有するものであれば、
図10のように先端部102bをさらに折り曲げてもよい。
図10の例では、先端部102bの折り曲げ部分の幅x1は5mmである。ここで、無線通信装置に対するアンテナ装置100の収容状態、例えば、無線通信装置の内部に収容する各種電子部品の配置や形状、大きさに対応して、
図10に示すように先端部102bを部分的に折り曲げてもよい。
【0055】
例えば、
図1に示したアンテナ装置100の構造では、給電点Pに接続される放射部102(第1放射部111)の基端部102aがGND面101の長さ方向Yの途中位置に位置している。この場合、放射部102の全長を3/4λとするには、
図1に示したように、放射部102(第2放射部112)の先端部102bがGND面101よりも上部に突出する。このような場合、
図10に示すように、放射部102の先端部102bを折り曲げる。これにより、放射部102の先端部102bの突出を防ぎ、アンテナ装置100を簡単に取り扱いでき、無線通信装置に対するアンテナ装置100の組み込み等の製造を容易に行えるようになる。
【0056】
図11は、
図10に示したアンテナ装置の電流分布を示す図である。
図11(a)には、
図10のアンテナ装置100のGND面101上の電流分布をシミュレーションした結果を示す。この
図11(a)は、素子(放射部)102は記載していないが、アンテナ装置100として素子(放射部)102を設けた場合のGND面101上の電流分布である。
図11(b)には、
図10のアンテナ装置100の素子(放射部)102の電流の大きさおよび向きをシミュレーションした結果を示す。
【0057】
そして、
図11(a)に示すように、アンテナ装置100のGND面101には、給電点Pが設けられた一側部101aだけではなく、反対側の他側部101cにも電流が強い領域が形成されている。
図11(a)は、
図6(a)とほぼ電流分布となった。
【0058】
また、
図11(b)に示すように、アンテナ装置100の放射部102について、第1放射部111は、給電点Pに接続された基端部102aの電流が最も大きく、長さ方向Y(第3放射部113)に向けて次第に電流iが小さくなり0に至る。また、第2放射部112は、折れ曲がった先端部102bの電流iが0であり、長さ方向Y(第3放射部113)に向けて次第に電流iが大きくなる。ここで、第1放射部111と第2放射部112の電流iの向きは、いずれも長さ方向Yに沿った同方向である。
【0059】
ここで、放射部102の先端部102bの電流は小さいため、上述した人体配置による特性変動の低減に対する影響は生じない。すなわち、
図10に示すように、放射部102の先端部102bを折り曲げた場合、および
図1のように、放射部102の先端部102bをGND面101から突出させた場合のいずれにおいても、放射部102の先端部102bの電流は0程度の小さな電流である。これにより、
図10のように、小さい電流の先端部102bを曲げた構成としたとき、人体に対するアンテナ装置100の位置が変化しても、
図1の構成例と同様に、利得変動を抑えることができる。
【0060】
図12は、実施の形態のアンテナ装置が設けられる無線通信装置のハードウェア構成例を示す図である。無線通信装置1200は、制御部として機能するCPU等のプロセッサ1201、ROM、RAM等のメモリ1202、HDD、SSD、フラッシュメモリ等の記憶部1203、入出力インタフェース(IF)1204、無線通信部1205、を含む。1206は、CPU1201と、周辺装置(メモリ1202、記憶部1203、入出力IF1204)、および無線通信部1205との間でデータ転送を行うためのバスである。
【0061】
上記のCPUはCentral Processing Unit、ROMはRead Only Memory、RAMはRandom Access Memoryの略である。HDDはHard Disk Drive、SSDはSolid State Driveの略である。
【0062】
CPU1201は、ROM等のメモリ1202に格納された制御プログラムを実行し、この際、RAM等のメモリ1202の一部を作業領域に使用することで無線通信装置の各機能、例えば、無線通信により送受信するデータ処理を行う。CPU1201は、例えば、上述したように、ウェアラブル端末から送信されるユーザ(人体)の状態の情報を受信し、所定のデータ処理を行い、処理したデータをデータセンターに送信する。この際、CPU1201は、記憶部1203をメモリ1202の拡張領域やバックアップ領域として使用してもよい。
【0063】
入出力インタフェース(IF)1204は、無線通信装置1200に対するデータの入出力を行う。例えば、入出力IF1204には、タッチパネルやキーボード、マイク等が接続され、ユーザ操作によるデータ入力が行える。また、入出力IF1204には、LCD等の表示部が接続され、表示データを画面出力できる。LCDはLiquid Crystal Displayの略である。
【0064】
無線通信部1205は、無線通信装置1200を他の無線通信装置、例えば、上述したように、ユーザが手に装着したウェアラブル端末、およびデータセンターの無線通信部の間でそれぞれ無線通信によりデータを送受信する通信部である。使用する周波数は、例えば、920MHz帯、2.4GHz帯である。無線通信部1205には、上述したアンテナ装置100が接続され、アンテナ装置100を介して他の無線通信装置と無線電波によりデータを送受信する。
【0065】
図13は、実施の形態のアンテナ装置の無線通信装置への実装例を示す図である。無線通信装置1200の内部には、上述したように、各種電子部品とともにアンテナ装置100が実装される。
【0066】
図13(a)には、無線通信装置1200としてのスマートフォン1200aに対するアンテナ装置100の実装例を示す。アンテナ装置100の放射部102(第1放射部111、第2放射部112、第3放射部113)は、スマートフォン1200aの内部に配置されるLCD1301の側辺に沿って配置することができる。また、アンテナ装置100のGND面101は、フレキシブルケーブル等によりLCD1301にGND接続することができる。
【0067】
図13(b)には、無線通信装置1200としてのタブレット1200bに対するアンテナ装置100の実装例を示す。アンテナ装置100の放射部102(第1放射部111、第2放射部112、第3放射部113)は、タブレット1200bの内部に配置される電子部品,例えばSSD1302の側辺に沿って配置することができる。また、アンテナ装置100のGND面101は、フレキシブルケーブル等によりSSD1302にGND接続することができる。なお、符号1303は、LCDである。
【0068】
図13(a)の例では、アンテナ装置100の放射部102は、スマートフォン1200a(無線通信装置1200)の外周に沿って配置される。
図13(b)の例では、アンテナ装置100の放射部102は、タブレット1200b(無線通信装置1200)の内部の電子部品(SSD1302)の外周に沿って配置される。
【0069】
図13(a),(b)のいずれの例においても、アンテナ装置100が有する外径、すなわちGND面101、あるいは放射部102が有する幅、長さ、厚さに対応する電子部品と重ねて配置することができる。
【0070】
この際、
図1に示したように、GND面101の面上で、放射部102としての第1放射部111、第2放射部112、第3放射部113で囲まれた領域に上記のLCD1201やSSD1301を配置する。また、アンテナ装置100の外径に合わせて収容する電子部品の外径を決定してもよい。これにより、無線通信装置1200内において、アンテナ装置100を効率よく配置でき、設置スペースを削減できるようになる。
【0071】
以下に、実施の形態と、上記の特許文献1〜4に記載の発明との対比を説明しておく。特許文献1〜4に記載の発明では、いずれも無線通信装置と人体との相対的な位置の変化によるアンテナ装置の通信特性の変動(劣化)を防ぐことができない。
【0072】
実施の形態によれば、放射部102は、GND面101を中心として両側部にそれぞれ1/4λの長さを有する第1放射部111と第2放射部112を設けたものであり、第1放射部111と第2放射部112の電流方向は同じである。そして、第1放射部111と第2放射部112は、無線通信装置(アンテナ装置100)が移動する幅方向Xに対して直交する長さ方向Yに沿って、適切な素子間隔λxを有して設けられる。
【0073】
これにより、実施の形態によれば、無線通信装置(アンテナ装置100)が幅方向Xに移動して、人体(人体モデル300)の側部に位置したときでも、人体の背面に対する電界の回り込みを抑えることができる。そして、正面方向への電界の成分を強めることができ、利得の低下に伴うアンテナ特性の劣化を抑えることができる。
【0074】
これに対し、特許文献1に記載の発明は、複数の通信周波数帯を使用するために、放射素子が(2n+1)/4(nは、n>1の整数)の長さに設定したものであり、実施の形態で用いる3/4λの長さは含まれない。仮に、特許文献1の放射素子を3/4λの長さにした場合には、アンテナ特性が劣化する。また、放射素子がほぼ全周にわたり設けられたものであり、実施の形態で説明した放射部102と相違し、また、電流方向が同じ第1放射部111と第2放射部112を有していない。これにより、無線通信装置(アンテナ装置100)が移動したとき人体と相対的な位置の変化によって利得が変化し、アンテナ特性が劣化する。
【0075】
また、特許文献2に記載の発明は、平行な第1素子と第2素子が近接して配置されたヘアピン構造であり、実施の形態のような最適な素子間隔λxを有していない。また、無線通信装置(アンテナ装置100)の移動時の人体と相対的な位置の変化に対応した素子配置ではない。これにより、十分な利得を得ることができず、また、無線通信装置(アンテナ装置100)が移動したとき人体と相対的な位置の変化によって利得が変化し、アンテナ特性が劣化する。
【0076】
また、特許文献3に記載の発明は、逆L字型の素子構造であり、第1素子と第2素子が近接して配置されたヘアピン構造であり、迂回素子も近接して配置された構造であり、実施の形態のような最適な素子間隔λxを有していない。また、GND面から離れて迂回素子が配置された構造であり、実施の形態のように、放射部102がGND面101の外周に沿って配置された構成と相違する。これにより、特許文献3ではGND面の両側部に強い電流分布が得られない。また、無線通信装置(アンテナ装置100)の移動時の人体と相対的な位置の変化に対応した素子配置ではない。これにより、無線通信装置(アンテナ装置100)が移動したとき人体と相対的な位置の変化によって利得が変化し、アンテナ特性が劣化する。
【0077】
また、特許文献4に記載の発明は、コの字型の素子構造であるが、第1導体部と第2導体部が近接して配置されており、実施の形態のような最適な素子間隔λxを有していない。また、GND面から離れて第1導体部と第2導体部が配置された構造であり、実施の形態のように、放射部102がGND面101の外周に沿って配置された構成と相違する。これにより、特許文献3ではGND面の両側部に強い電流分布が得られない。また、無線通信装置(アンテナ装置100)の移動時の人体と相対的な位置の変化に対応した素子配置ではない。これにより、無線通信装置(アンテナ装置100)が移動したとき人体と相対的な位置の変化によって利得が変化し、アンテナ特性が劣化する。
【0078】
以上説明した実施の形態のアンテナ装置によれば、簡単な構造で利得変動を抑制できるようになる。実施の形態のアンテナ装置は、アンテナ装置が設けられた無線通信装置をユーザが携帯したとき、主に無線通信装置が移動する幅方向XのGND面の両側部に電流が強い領域を形成する。このため、アンテナ装置の素子である放射部として、GND面の一側部に第1放射部を設け、他側部に第2放射部を設ける。そして、第1放射部と第2放射部を第3放射部で接続し、第1放射部と第2放射部に流れる電流の向きは同じ向きとした。これにより、実施の形態によれば、アンテナ装置の位置が人体の右側あるいは左側および途中の各位置に位置するよう変化しても、いずれの場合でも人体の正面方向に電波を放射でき、移動した位置にかかわらず安定した利得を得ることができる。これにより、アンテナ装置のアンテナ特性を向上することができる。
【0079】
そして、第1放射部と、第2放射部は、アンテナ装置の移動が変化する一方向(幅方向X)に対し所定の間隔を有し、前記一方向に直交する方向(長さ方向Y)に沿って設ける。これにより、上述したような無線通信装置の移動によって、右側あるいは左側から人体背後に回り込む電界が生じるような場合でも、放射する電界の正面側の成分を強めることができ、利得を向上できるようになる。また、放射部は、第1放射部と第2放射部を第3放射部で繋ぐ形で導電接続することで、1本の素子で構成される。これにより、素子の本数を最小にして部品点数を削減できるとともに、整合回路を含めて簡単に製造でき、さらに、無線通信装置への実装を容易化できる。
【0080】
また、放射部の全長を(4n+3)λ/4(但し、高調波n≧0の整数)とすることで、高調波を含めた通信波長に対して最適な利得を有するアンテナ装置が得られるようになる。また、放射部の第1放射部と第2放射部の間隔を通信波長λに対し適切な間隔となるよう、例えば、0.125λ以上、0.33λ以下の範囲とすることで、高い利得を得ることができ、0.25λで最も高い利得が得られるようになる。
【0081】
また、放射部の先端がGND面から突出するような場合には、この自由端を所定長さだけGND面に沿って折り曲げた構成としてもよい。この場合でも放射部の自由端は流れる電流が0であるため、利得の低下を防ぎつつ、組み立てや取り扱いを容易化できる。
【0082】
また、無線通信装置に対してアンテナ装置を効率よく実装することができる。アンテナ装置のGND面は平面状であり、無線通信装置の各種部品を重ねて配置できる。この際、無線通信装置の外周に沿って放射部を配置するほか、無線通信装置の各種部品の外周に沿って放射部を配置することで、実装スペースを効率的に使用できる。
【0083】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0084】
(付記1)GND面と、放射部とを有するアンテナ装置において、
前記放射部は、
前記GND面の一側部に沿って設けられ、一端部が給電点に接続され、前記給電点からの長さが通信波長λの1/4λの第1放射部と、
前記GND面の他側部に沿って設けられ、前記第1放射部と平行に設けられ、一端部が自由端とされ、前記自由端からの長さが通信波長λの1/4λの第2放射部と、
前記第1放射部の他端部と前記第2放射部の他端部とを導電接続する第3放射部と、を有し、
前記第1放射部と前記第2放射部に流れる電流が同じ方向であることを特徴とするアンテナ装置。
【0085】
(付記2)前記放射部の全長が(4n+3)λ/4(但し、高調波n≧0の整数)であることを特徴とする付記1に記載のアンテナ装置。
【0086】
(付記3)前記第1放射部と、前記第2放射部は、アンテナ装置の移動が変化する一方向に対し所定の間隔を有し、前記一方向に直交する方向に沿って設けられたことを特徴とする付記1または2に記載のアンテナ装置。
【0087】
(付記4)前記第1放射部と、前記第2放射部の間隔は、0.125λ以上、0.33λ以下の範囲であることを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載のアンテナ装置。
【0088】
(付記5)前記第1放射部と、前記第2放射部の間隔は、0.25λであることを特徴とする付記4に記載のアンテナ装置。
【0089】
(付記6)前記第2放射部の前記自由端から所定長さの部分を、前記GND面に沿ってさらに折り曲げたことを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載のアンテナ装置。
【0090】
(付記7)前記第2放射部の折り曲げた部分の長さは、流れる電流が0程度の長さの部分であることを特徴とする付記6に記載のアンテナ装置。
【0091】
(付記8)アンテナ装置を有し、他の無線通信装置と無線通信を行う無線通信装置において、
他の無線通信装置との間で送受信するデータをデータ処理する制御部と、
他の無線通信装置との間で前記アンテナ装置を介した無線通信により、前記データを送受信する無線通信部と、を有し、
前記アンテナ装置は、
GND面と、放射部とを有し、
前記放射部は、
前記GND面の一側部に沿って設けられ、一端部が給電点に接続され、前記給電点からの長さが通信波長λの1/4λの第1放射部と、
前記GND面の他側部に沿って設けられ、前記第1放射部と平行に設けられ、一端部が自由端とされ、前記自由端からの長さが通信波長λの1/4λの第2放射部と、
前記第1放射部の他端部と前記第2放射部の他端部とを導電接続する第3放射部と、を有し、
前記第1放射部と前記第2放射部に流れる電流が同じ方向であることを特徴とする無線通信装置。
【0092】
(付記9)前記放射部は、装置内の外周に沿って、または、装置内に設けられる電子部品の外周に沿って設けられたことを特徴とする付記8に記載の無線通信装置。