特許第6973145号(P6973145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973145
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ワイヤカット用治具
(51)【国際特許分類】
   B26B 17/00 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   B26B17/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-21803(P2018-21803)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-136279(P2019-136279A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年10月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】角谷 優人
【審査官】 奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−052857(JP,U)
【文献】 特開2000−301341(JP,A)
【文献】 特開2003−225825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B 17/00
B23K 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッパに取り付けられるワイヤカット用治具であって、
溶接ワイヤが挿通されたチップを保持するように構成された保持部を備え、
前記保持部は、
前記チップの少なくとも先端部が挿入可能な枠部と、
前記枠部の前記チップの挿入方向における端部に配置された規制部と、
を有し、
前記規制部は、
前記ニッパの刃面から一定距離離間して配置される規制面と、
前記規制面よりも前記刃面に近接して配置される底面と、
前記規制面から前記底面まで貫通した挿通孔と、
を有し、
前記挿通孔の径は、前記チップの外径よりも小さく、かつ前記溶接ワイヤの外径よりも大きい、ワイヤカット用治具。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤカット用治具であって、
前記保持部は、前記チップの挿入方向と交差する方向から前記規制面が視認されるように構成された窓部をさらに有する、ワイヤカット用治具。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤカット用治具であって、
前記窓部は、前記保持部のうち、前記ニッパのグリップに近い部分に配置される、ワイヤカット用治具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のワイヤカット用治具であって、
前記保持部は、前記チップの挿入方向に延伸し、前記枠部の内部空間及び前記挿通孔と、保持部の外部とを連通するスリットをさらに有する、ワイヤカット用治具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のワイヤカット用治具であって、
前記保持部は、前記ニッパの2つの刃部のうち、一方の刃部に固定される、ワイヤカット用治具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のワイヤカット用治具であって、
前記枠部は、内部空間に挿入された前記チップの中心軸が前記刃面に対し垂直となるように構成され、
前記挿通孔は、中心軸が前記刃面に対し垂直である、ワイヤカット用治具。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のワイヤカット用治具であって、
前記刃面に対し前記保持部とは反対側に配置されると共に、前記ニッパによって切断された溶接ワイヤを保持するように構成された補助保持部をさらに備え、
前記補助保持部は、前記ニッパの2つの刃部の開閉に連動して開閉するように構成された2つの把持部を有する、ワイヤカット用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤカット用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接ワイヤを用いた溶接作業では、溶接トーチの先端に設けられたチップから、予め決められた長さの溶接ワイヤを延出させる必要がある。具体的には、溶接を行う作業者がスケールを溶接ワイヤにあて、目盛に合わせて余分な部分を切断する。このような手順では、切断後の溶接ワイヤの長さ、及び作業時間に個人差が生じ得る。
【0003】
一方、被覆電線に対し一定の長さで心線を切断することで、露出長を調整する治具が公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平01−079471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報の治具では、被覆を片に突き当てることで位置決めを行っているが、溶接トーチのチップは、先端の形状が一定でないため、同様の構成で位置決めを行うことは困難である。
【0006】
本開示の一局面は、溶接ワイヤの長さを容易に調整できるワイヤカット用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、ニッパ(10)に取り付けられるワイヤカット用治具(1)である。ワイヤカット用治具(1)は、溶接ワイヤ(W)が挿通されたチップ(T)を保持するように構成された保持部(2)を備える。保持部(2)は、チップ(T)の少なくとも先端部が挿入可能な枠部(21)と、枠部(21)のチップ(T)の挿入方向における端部に配置された規制部(22)と、を有する。規制部(22)は、ニッパ(10)の刃面(14)から一定距離離間して配置される規制面(22A)と、規制面(22A)よりも刃面(14)に近接して配置される底面(22B)と、規制面(22A)から底面(22B)まで貫通した挿通孔(22C)と、を有する。挿通孔(22C)の径は、チップ(T)の外径よりも小さく、かつ溶接ワイヤ(W)の外径よりも大きい。
【0008】
このような構成によれば、ニッパ(10)に取り付けられた保持部(2)の枠部(21)にチップ(T)を挿入し、チップ(T)の先端を規制面(22A)に当接させることで、溶接ワイヤ(W)のみが挿通孔(22C)を介して規制部(22)を貫通する。この状態でニッパ(10)の刃面(14)によって溶接ワイヤ(W)を切断すれば、予め決めた長さで溶接ワイヤ(W)が切断される。したがって、チップ(T)から延出する溶接ワイヤ2の長さを容易に調整できる。
【0009】
本開示の一態様では、保持部(2)は、チップ(T)の挿入方向と交差する方向から規制面(22A)が視認されるように構成された窓部(23)をさらに有してもよい。このような構成によれば、チップ(T)の先端が規制面(22A)に当接しているか視認できるため、溶接ワイヤ(W)の長さ調整がより容易になる。
【0010】
本開示の一態様では、窓部(23)は、保持部(2)のうち、ニッパ(10)のグリップ(15)に近い部分に配置されてもよい。このような構成によれば、容易かつ確実にチップ(T)の規制面(22A)への当接状態を確認することができる。
【0011】
本開示の一態様では、保持部(2)は、チップ(T)の挿入方向に延伸し、枠部(21)の内部空間(21A)及び挿通孔(22C)と、保持部(2)の外部とを連通するスリット(24)をさらに有してもよい。このような構成によれば、挿通孔(22C)の径方向と垂直な方向から溶接ワイヤ(W)を挿通孔(22C)に挿入できるので、作業性が向上する。
【0012】
本開示の一態様では、保持部(2)は、ニッパ(10)の2つの刃部(11,12)のうち、一方の刃部(11)に固定されてもよい。このような構成によれば、容易かつ確実に溶接ワイヤ(W)を所定の長さで切断することができる。
【0013】
本開示の一態様では、枠部(21)は、内部空間(21A)に挿入されたチップ(T)の中心軸が刃面(14)に対し垂直となるように構成されてもよい。挿通孔(22C)は、中心軸が刃面(14)に対し垂直であってもよい。このような構成によれば、溶接ワイヤ(W)の切断面が溶接ワイヤ(W)の軸方向に対して斜めになることを抑制できる。その結果、溶接不良の発生を抑制できる。
【0014】
本開示の一態様は、刃面(14)に対し保持部(2)とは反対側に配置されると共に、ニッパ(10)によって切断された溶接ワイヤ(W)を保持するように構成された補助保持部(3)をさらに備えてもよい。また、補助保持部(3)は、ニッパ(10)の2つの刃部(11,12)の開閉に連動して開閉するように構成された2つの把持部(31A,31B)を有してもよい。このような構成によれば、切断した溶接ワイヤ(W)の切除部分が落下しないため、切除部分の回収が容易になる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態における治具を取り付けたニッパの模式的な側面図である。
図2図2は、溶接ワイヤ及びチップの模式的図である。
図3図3Aは、図1の治具における保持部の側面図であり、図3Bは、図3Aの保持部の平面図であり、図3Cは、図3Aの保持部の正面図であり、図3Dは、図3Aの保持部の背面図である。
図4図4は、図1の治具における補助保持部の模式的な底面図である。
図5図5は、図1の治具における補助保持部の第1プレートの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示すワイヤカット用治具1は、図2に示す溶接ワイヤWをカットするための治具である。ワイヤカット用治具1は、ニッパ10に取り付けて使用される。ワイヤカット用治具1は、保持部2と、補助保持部3とを備える。
【0018】
<保持部>
保持部2は、図2に示す溶接ワイヤWが挿通されたチップTを保持するように構成されている。
【0019】
チップTは、溶接トーチの先端部を構成しており、先端に向かって縮径する円柱状の形状を有する。溶接ワイヤWは、チップTの中心軸に沿って設けられた貫通孔に挿通されている。溶接ワイヤWは、一般的な溶接用途に用いられる。
【0020】
保持部2は、図3A,3B,3C,3Dに示すように、枠部21と、規制部22と、窓部23と、スリット24と、固定部25とを有する。なお、保持部2は、これらの部位が一体に形成されている。
【0021】
(枠部)
枠部21は、チップTの少なくとも先端部が上面21Bから挿入可能に構成されている。具体的には、枠部21は、チップTが挿入可能な内部空間21Aが形成された筒状体である。
【0022】
内部空間21Aは、チップTの先端部の外径に沿った形状を有する。また、本実施形態では、図3Bに示すように、枠部21の軸方向(つまりチップTの挿入方向)から視た形状は、四角形である。枠部21の軸方向から視た4隅は、面取りされている。
【0023】
枠部21は、内部空間21Aに挿入されたチップTの中心軸がニッパ10の刃面14に対し垂直となるように構成されている。つまり、枠部21の中心軸は、刃面14に対し垂直である。
【0024】
なお、ニッパ10の刃面14とは、ニッパ10の2つの刃部(つまりジョー)11,12それぞれに設けられた刃において、溶接ワイヤWの切断に寄与する(つまり溶接ワイヤWの切断面を形成する)面を意味する。したがって、溶接ワイヤWの切断面は、ニッパ10の刃面14と平行に形成される。
【0025】
(規制部)
規制部22は、図3Aに示すように、枠部21のチップTの挿入方向における端部に配置され、枠部21と連結されている。
【0026】
規制部22は、枠部21と同心に配置された筒状体である。規制部22の外周面は、枠部21の外周面と面一に連続している。規制部22は、規制面22Aと、底面22Bと、挿通孔22Cとを有する。
【0027】
規制面22Aは、ニッパ10の刃面14から一定距離離間して配置される。規制面22Aは、チップTの先端部と当接することで、チップTの移動を規制する。つまり、規制面22Aは、枠部21の内部空間21Aにおけるニッパ10の刃面14に対向する底面を構成している。
【0028】
本実施形態では、図1に示すように、規制面22Aは、刃面14と平行に配置されている。また、規制面22Aとニッパ10の刃面14との距離は、図2に示すチップTにおける溶接ワイヤWの延出長さL0と等しく設定される。
【0029】
底面22Bは、規制面22Aよりも刃面14に近接して配置されている。つまり、底面22Bは、規制面22Aに対し、規制部22の軸方向に一定距離離間して配置されている。また、底面22Bは、規制面22Aと平行である。
【0030】
挿通孔22Cは、図3Aに示すように、規制面22Aから底面22Bまで貫通している。挿通孔22Cの径は、チップTの外径よりも小さく、かつ溶接ワイヤWの外径よりも大きい。そのため、チップTに挿通された溶接ワイヤWは、挿通孔22Cを介して、規制部22を刃面14に向かって貫通する。挿通孔22Cの中心軸は、枠部21及び規制部22の中心軸と平行である。
【0031】
また、挿通孔22Cは、中心軸が刃面14に対し垂直となるように配置されている。そのため、挿通孔22Cを通った溶接ワイヤWは、底面22Bから刃面14に対して垂直に延出する。
【0032】
(窓部)
窓部23は、チップTの挿入方向と交差する方向(つまり、枠部21の径方向)から規制面22Aが視認されるように構成されている。
【0033】
窓部23は、枠部21及び規制部22の一部を切欠くことで形成されている。具体的には、窓部23は、枠部21と規制部22との連結部分を内部空間21A及び挿通孔22Cから枠部21及び規制部22の外側まで径方向に取り除くことで形成されている。
【0034】
窓部23は、枠部21の上面21Bと、規制部22の底面22Bとの間に配置されている。また、窓部23は、図1に示すように、保持部2のうち、ニッパ10のグリップ15に近い部分(つまり固定部25に近い部分)に配置されている。窓部23は、枠部21及び規制部22の全周のうち、半分以下の領域に設けられている。
【0035】
(スリット)
スリット24は、枠部21の内部空間21A及び規制部22の挿通孔22Cと、保持部2の外部とを連通する切欠きである。
【0036】
スリット24は、図3Cに示すように、枠部21の上面21Bから、規制部22の底面22Bまで、チップTの挿入方向に延伸している。スリット24は、枠部21の外周面及び規制部22の外周面から、枠部21の内部空間21A又は規制部22の挿通孔22Cまでの領域に形成されている。
【0037】
スリット24は、図3Bに示すように、固定部25とは反対側、つまり保持部2のうち、ニッパ10のグリップ15から遠い部分に配置されている。したがって、スリット24は、枠部21及び規制部22の中心軸に対し、窓部23と反対側に配置されている。
【0038】
スリット24の幅は、溶接ワイヤWの径よりも大きい。また、スリット24は、枠部21及び規制部22の中心軸から外側に向かって、拡幅している。換言すれば、スリット24は、保持部2の外側から内側に向かって徐々に周方向の幅が小さくなっている。
【0039】
(固定部)
固定部25は、保持部2をニッパ10に固定するための板状の部位である。固定部25は、図1に示すように、規制部22の下部からニッパ10のグリップ15に向かって延伸している。
【0040】
固定部25は、下面25Cがニッパ10の第1刃部11のうち第1刃部11の揺動軸Pと垂直な面に当接する。そのため、固定部25の下面25Cは、規制部22の底面22Bに対し交差する方向に延伸している。
【0041】
固定部25の下面25Cは、規制部22の底面22Bに連続している。また、固定部25の上面(つまり下面25Cと反対側の板面)25Dは、規制部22の外周面に連続している。
【0042】
固定部25は、図3Aに示すように、第1貫通孔25Aと、第2貫通孔25Bとを有する。第1貫通孔25A及び第2貫通孔25Bは、それぞれ、固定部25を厚み方向に貫通している。
【0043】
第1貫通孔25Aには、図1に示すボルト4が挿通される。ボルト4によって、保持部2は、ニッパ10の第1刃部11に固定されている。本実施形態では、ボルト4は、ニッパ10の支点部16(つまり可動中心部)に締結されている。
【0044】
第2貫通孔25Bには、図1に示すピン5が挿通される。ピン5によって、保持部2が第1刃部11に対して回転することが抑制される。ピン5は、第1刃部11の内部に嵌入される。
【0045】
<補助保持部>
補助保持部3は、ニッパ10によって切断された溶接ワイヤWを保持するように構成されている。図1に示すように、補助保持部3は、ニッパ10の刃面14に対し保持部2とは反対側に配置される。
【0046】
補助保持部3は、図4に示すように、ニッパ10の第2刃部12の刃面14と反対側の面に取り付けられる第1プレート31と、ニッパ10の第1刃部11の刃面14と反対側の面に取り付けられる第2プレート32とを有する。
【0047】
(第1プレート)
第1プレート31は、図5に示すように、把持部31Aと、取付部31Bと、第1折り曲げ部31Cと、第2折り曲げ部31Dと、貫通孔31Eとを有する。
【0048】
把持部31Aは、第2刃部12の側面のうち、第1刃部11と対向する部分(つまり、ニッパ10が閉じた状態で第1刃部11と当接する部分)に当接するように折り曲げられる。
【0049】
取付部31Bは、第2刃部12の長手方向に沿って延伸する部位である。取付部31Bは、平面視で第2刃部12の刃面14と重なる位置から、ニッパ10の支点部16及び第2刃部12の揺動軸Pを通って、第2刃部12とグリップ15との接続部分まで延伸している。
【0050】
取付部31Bは、図1に示すように、貫通孔31Eに挿通されたボルト6がニッパ10の支点部16に締結されることによって、第2刃部12の刃面14と反対側の底面に取り付けられる。
【0051】
また、第1折り曲げ部31C及び第2折り曲げ部31Dを第2刃部12の側面に当接するようにそれぞれ折り曲げることで、取付部31Bの第2刃部12に対する回転が防止される。これによって、第1プレート31は、第2刃部12に連動して揺動する。
【0052】
(第2プレート)
第2プレート32は、第1プレート31と同様に、把持部32Aと、取付部32Bとを有する。
【0053】
第2プレート32は、第1プレート31を2つの刃部11,12の対向面に対し反転させたものである。第2プレート32の把持部32Aは、第1プレート31の把持部31Aと対向するように、第1刃部11の側面に配置される。第2プレート32の取付部32Bは、第1プレート31の取付部31Bと重なるように配置される。第2プレート32は、第1刃部11に連動して揺動する。
【0054】
以上から、補助保持部3の2つの把持部31A,31Bは、2つの刃部11,12の開閉に連動して開閉するように構成されている。つまり、2つの刃部11,12を開くと、2つの把持部31A,31Bも開き、2つの把持部31A,31Bが離間する。また、2つの刃部11,12を閉じると、2つの把持部31A,31Bが閉じ、2つの把持部31A,31B同士が当接する。
【0055】
これにより、2つの刃部11,12を閉じることによって2つの刃部11,12の間に挿通された溶接ワイヤWを切断すると、切断された溶接ワイヤWが閉じた2つの把持部31A,31Bの間にて保持される。
【0056】
[1−2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)ニッパ10に取り付けられた保持部2の枠部21にチップTを挿入し、チップTの先端を規制面22Aに当接させることで、溶接ワイヤWのみが挿通孔22Cを介して規制部22を貫通する。この状態でニッパ10の刃面14によって溶接ワイヤWを切断すれば、予め決めた長さで溶接ワイヤWが切断される。したがって、チップTから延出する溶接ワイヤWの長さL0を容易に調整できる。
【0057】
(1b)チップTの挿入方向と交差する方向に設けられた窓部23によって、チップTの先端が規制面22Aに当接しているか視認できるため、溶接ワイヤWの長さ調整がより容易になる。
【0058】
(1c)窓部23が保持部2のうちニッパ10のグリップ15に近い部分に配置されることによって、容易かつ確実にチップTの規制面22Aへの当接状態を確認することができる。
【0059】
(1d)枠部21の内部空間21A及び挿通孔22Cと保持部2の外部とを連通するスリット24によって、挿通孔22Cの径方向と垂直な方向から溶接ワイヤWを挿通孔22Cに挿入できる。その結果、作業性が向上する。
【0060】
(1e)保持部2がニッパ10の2つの刃部11,12のうち、第1刃部11のみに固定されることによって、容易かつ確実に溶接ワイヤWを所定の長さで切断することができる。
【0061】
(1f)内部空間21Aに挿入されたチップTの中心軸が刃面14に対し垂直となると共に、挿通孔22Cの中心軸が刃面14に対し垂直であることで、溶接ワイヤWの切断面が溶接ワイヤWの軸方向に対して斜めになることを抑制できる。その結果、溶接不良の発生を抑制できる。
【0062】
(1g)補助保持部3の2つの把持部31A,31Bによって切断した溶接ワイヤWの切除部分を把持することができる。その結果、溶接ワイヤWの切除部分が落下しないため、切除部分の回収が容易になる。
【0063】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0064】
(2a)上記実施形態のワイヤカット用治具1において、窓部23は、必ずしもニッパ10のグリップ15に近い部分に配置されなくてもよい。また、窓部23は、省略されてもよい。
【0065】
(2b)上記実施形態のワイヤカット用治具1において、スリット24は、保持部2におけるチップTの挿入方向の一部のみに設けられてもよい。また、スリット24は、省略されてもよい。
【0066】
(2c)上記実施形態のワイヤカット用治具1において、保持部2は、必ずしも第1刃部11に固定される必要はなく、ニッパ10の他の部位に固定されてもよい。また、保持部2のニッパ10への取り付け方法は、締結に限定されない。
【0067】
(2d)上記実施形態のワイヤカット用治具1において、枠部21は、必ずしも内部空間21Aに挿入されたチップTの中心軸が刃面14に対し垂直となるように構成されなくてもよい。つまり、規制部22の規制面22Aは、必ずしも刃面14と平行でなくてもよい。また、挿通孔22Cは、必ずしも中心軸が刃面14に対し垂直でなくてもよい。
【0068】
(2e)上記実施形態のワイヤカット用治具1において、補助保持部3の形状は一例である。補助保持部3は、溶接ワイヤWの切除部分が保持できれば必ずしも2枚のプレートで構成されなくてもよい。また、補助保持部3は、省略されてもよい。
【0069】
(2f)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0070】
1…ワイヤカット用治具、2…保持部、3…補助保持部、4…ボルト、5…ピン、
6…ボルト、10…ニッパ、11…第1刃部、12…第2刃部、14…刃面、
15…グリップ、16…支点部、21…枠部、21A…内部空間、21B…上面、
22…規制部、22A…規制面、22B…底面、22C…挿通孔、23…窓部、
24…スリット、25…固定部、25A…第1貫通孔、25B…第2貫通孔、
25C…下面、25D…上面、31…第1プレート、31A…把持部、
31B…取付部、31C…第1折り曲げ部、31D…第2折り曲げ部、
31E…貫通孔、32…第2プレート、32A…把持部、32B…取付部、
T…チップ、W…溶接ワイヤ。
図1
図2
図3
図4
図5