特許第6973237号(P6973237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973237
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】板ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/00 20060101AFI20211111BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20211111BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B24B9/00 601C
   B24B49/04 Z
   C03C19/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-64684(P2018-64684)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171536(P2019-171536A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】星野 愛信
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】粟津 晃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 久博
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/039538(WO,A1)
【文献】 特公昭45−19879(JP,B1)
【文献】 特開2004−243470(JP,A)
【文献】 特開2014−161981(JP,A)
【文献】 特開2015−006697(JP,A)
【文献】 特開平11−165247(JP,A)
【文献】 特開2012−139785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00 − 9/14
B24B 47/22
B24B 49/04
C03C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板ガラスの端面を加工具で加工する端面加工工程を備える板ガラスの製造方法において、
前記加工具は、前記端面に対して接近方向又は離反方向に移動可能に構成されるとともに、前記端面に対して一定の圧力で接触する定圧式加工具であり、
前記端面加工工程は、制御装置により前記加工具の位置を制御する位置制御工程を備え、
前記位置制御工程は、
加工開始前であって前記加工具が前記端面に接触する前に、前記加工具を基準位置に配置する準備工程と、
加工を開始する際に前記加工具が前記端面に接触するときの前記接近方向又は前記離反方向における前記加工具の移動量を測定する測定工程と、
前記移動量が閾値を超えたか否かを判定する判定工程と、
前記移動量に基づいて次回の加工に係る前記加工具の前記基準位置を設定する補正工程と、を備え
前記補正工程は、前記判定工程で前記移動量が前記閾値を超えたと判定された場合に実行されることを特徴とする板ガラスの製造方法。
【請求項2】
前記補正工程では、前記移動量に基づいて前記次回の加工における前記加工具の前記基準位置を設定するための補正値を算出し、
前記補正値は、以下の式(1)により算出される請求項1に記載の板ガラスの製造方法。
CV=CF×X ・・・(1)
(ただし、CVは補正値、CFは補正率、Xは移動量である。)
【請求項3】
前記補正工程では、前記移動量が前記加工具の前記離反方向の移動を示す場合の前記補正率は、前記移動量が前記加工具の前記接近方向の移動を示す場合の前記補正率よりも小さく設定される請求項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項4】
前記測定工程では、複数の前記板ガラスを加工した場合に前記板ガラスごとに前記移動量を測定し、
前記補正工程では、前記移動量として、複数の前記板ガラスの前記移動量の平均値を用いる請求項1からのいずれか一項に記載の板ガラスの製造方法。
【請求項5】
前記加工具は、前記端面を加工する複数の溝部を有する砥石であり、
前記制御装置は、前記溝部ごとに前記基準位置を設定する請求項1からのいずれか一項に記載の板ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスの端面を加工する工程を有する、板ガラスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等の製造効率の向上や大型化の要請に応じるべく、これに使用される板ガラスのサイズは大型化する傾向にある。板ガラスのサイズを大きくすれば、一枚の板ガラスから取れるガラス基板の枚数が多くなり、大型ディスプレイに対応したガラス基板を効率良く製作することが可能になる。また、時間当たりの処理数量を増やし製造コストを下げるために、板ガラスの処理速度(加工速度)の高速化が検討されている。
【0003】
板ガラスの端面に傷が存在すると、その傷から割れ等が発生するため、これを防止するために板ガラスの端面に対して研削・研磨加工が施される。板ガラスの端面加工装置には、加工具の押圧力を一定に維持する定圧式と呼ばれるものと、加工具を固定して加工を行う固定式のものとがある。上流工程で切断された板ガラスが有する形状に対して、固定式端面加工装置を使用して板ガラスの端面が均一になるように加工するには、板ガラスの研削・研磨代を大きめに設定しなければならないため、加工時間が長くなり、板ガラスの搬送速度(加工速度)を更に上げることが困難である。
【0004】
定圧式で板ガラスの端面を加工する技術として、特許文献1には、板ガラスの端面を加工する加工具と、加工具を板ガラスの端面へ付勢して押圧力を発生する押圧力発生要素と、加工具の位置を測定する測定手段とを備える板ガラス加工装置が開示される。加工具は、砥石と、この砥石を支持するアーム部材とを備える。押圧力発生要素は、加工具のアーム部材に偶力を与え、加工具を板ガラスの端面に付勢して押圧力を発生させる。板ガラス加工装置は、この押圧力が一定となるように押圧力発生要素を制御することにより、板ガラスの端面を高速で、しかも精度良く加工する。
【0005】
この板ガラス加工装置は、加工具を、加工開始時における初期位置としての基準位置と、加工終了後に加工具を板ガラスから離れて待機する待機位置とに移動するように制御する。加工開始時において、板ガラス加工装置は、加工具を待機位置から基準位置へと移動させるとともに、押圧力発生要素による押圧力の制御を開始する。このとき、押圧力発生要素は、加工具が板ガラスから離れている場合には、当該加工具を板ガラスの端面に接触するように移動させる。
【0006】
板ガラスの端面を加工する加工具としては、砥石が使用され、その砥石は、板ガラスの端部を受け入れる溝部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−161981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数の板ガラスを加工するにつれ、加工具の溝部は徐々に摩耗し、その深さが増大する。この加工具の溝部の摩耗に対応するために基準位置を板ガラスごとに変更すること、例えば、基準位置を板ガラスの端面に接近する方向に一定距離だけ移動させて補正することが考えられる。しかしながら、加工具の溝部の摩耗の度合いはばらつきを有するため、基準位置の補正(移動)が不足又は過度となる場合が発生する。基準位置の補正が不足する場合、加工開始時に加工具は基準位置から板ガラスの端面に接近する方向に移動する必要がある。この加工具の移動量が大きくなると、加工初期に押圧力が不足した状態で加工具が板ガラスの端面と接触することから、板ガラスの端面の一部が未加工又は加工不足となる不具合を生じるおそれがある。また、基準位置の補正が過度である場合、加工開始時に加工具は、過大な押圧力で板ガラスと接触し、板ガラスの端面から離反する方向に移動する。この加工具の移動量が大きくなると、接触時の衝撃によって溝部の焼けといった不具合を生じるおそれがある。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、定圧式の加工具によって板ガラスの端面を加工する場合に、加工開始時における加工具の位置を好適に制御することが可能な板ガラスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、板ガラスの端面を加工具で加工する端面加工工程を備える板ガラスの製造方法において、前記加工具は、前記端面に対して接近方向又は離反方向に移動可能に構成されるとともに、前記端面に対して一定の圧力で接触する定圧式加工具であり、前記端面加工工程は、制御装置により前記加工具の位置を制御する位置制御工程を備え、前記位置制御工程は、加工開始前であって前記加工具が前記端面に接触する前に、前記加工具を基準位置に配置する準備工程と、加工を開始する際に前記加工具が前記端面に接触するときの前記接近方向又は前記離反方向における前記加工具の移動量を測定する測定工程と、前記移動量に基づいて次回の加工に係る前記加工具の前記基準位置を設定する補正工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記のように、加工具は準備工程において、制御装置の制御により基準位置に設定される。基準位置とは、端面加工工程において、加工開始時の加工具の切込み方向の位置であり、例えば、板ガラスの端面を所望の圧力で加工可能となるように設定(調整)される。本発明では、基準位置を切り込み方向の加工具の位置を測定するための初期位置としても利用する。
【0012】
加工開始時、溝部の摩耗度合いにより、加工具が基準位置から板ガラスに接近する方向(接近方向)又は接近方向とは反対の離反方向に移動する。本発明では、測定工程で制御装置により、その移動量を測定し、補正工程で、その移動量に基づいて次回の加工に係る基準位置を設定する。これにより、加工具の摩耗の影響による加工具と板ガラスとの位置関係の変化に応じて、加工開始時の加工具の初期位置である基準位置を好適に制御できる。このため、板ガラスの端面に対する加工不良の発生を防止するとともに、加工具を長寿命化できる。
【0013】
なお、本発明において、「加工具が板ガラスの端面に接触するときの移動量」とは、加工具が基準位置から板ガラスの端面に所望の圧力で接触するまでの間に接近方向又は離反方向に移動した距離を意味する。
【0014】
前記位置制御工程は、前記移動量が閾値を超えたか否かを判定する判定工程をさらに備え、前記補正工程は、前記判定工程で前記移動量が前記閾値を超えたと判定された場合に実行されてもよい。このように、移動量に閾値を設定することで、アライメントの位置決め精度による移動量のばらつきを吸収することができる。したがって、アライメントの位置決め精度が低い場合でも、加工具の摩耗の影響による加工具と板ガラスとの位置関係の変化に応じて、加工開始時の加工具の初期位置である基準位置を好適に制御できる。
【0015】
前記補正工程では、前記移動量に基づいて前記次回の加工における前記加工具の前記基準位置を設定するための補正値を算出し、前記補正値は、以下の式(1)により算出され得る。
CV=CF×X ・・・(1)
【0016】
ここで、CVは補正値、CFは補正率、Xは移動量である。
【0017】
このように式(1)により算出された補正値に応じて基準位置を設定することにより、基準位置をより好適に制御できる。
【0018】
前記補正工程では、前記移動量が前記加工具の前記離反方向の移動を示す場合の前記補正率は、前記移動量が前記加工具の前記接近方向の移動を示す場合の前記補正率よりも小さく設定されることが望ましい。
【0019】
加工開始時に加工具が板ガラスの端面から離れている傾向がある場合、補正率を大きく設定して次回の基準位置を決定することで、当該加工具を板ガラスの端面に可及的に接近させた状態で加工を開始できる。これに対し、加工開始時に加工具が離反方向に移動する傾向がある場合、次回の加工において、加工具を端面から大きく離れるように基準位置を設定すると、加工開始時に、加工具が端面に接触せず、板ガラスに未加工部分が残存するおそれがある。上記のように、離反方向に係る加工具の補正率を、接近方向に係る加工具の補正率よりも小さく設定することで、未加工部分が残存することを防止できる。
【0020】
前記測定工程では、複数の前記板ガラスを加工した場合に前記板ガラスごとに前記移動量を測定し、前記補正工程では、前記移動量として、複数の前記板ガラスの前記移動量の平均値を用いることが望ましい。このように、複数の板ガラスの加工で測定された移動量の平均値を参照することで、次回の加工に係る基準位置を、過去の板ガラスの加工の傾向に適応するように高精度で設定できる。
【0021】
また、前記加工具は、前記端面を加工する複数の溝部を有する砥石であり、前記制御装置は、前記溝部ごとに前記基準位置を設定することが望ましい。かかる構成によれば、例えば各溝部の摩耗の程度が異なる場合であっても、補正工程により、次回の加工における加工具の基準位置を溝部ごとに好適に設定できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、定圧式の加工具によって板ガラスの端面を加工する場合に、加工開始時における加工具の位置を好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】板ガラスの製造装置を示す概略平面図である。
図2】未使用の加工具の側面図である。
図3】切断工程を示す平面図である。
図4】位置制御工程のフローチャートである。
図5】端面加工工程を示す平面図である。
図6図5の要部を示す拡大平面図である。
図7図6に係る加工開始時における加工具の位置を示すグラフである。
図8】加工具の移動量に係る履歴データを示す表である。
図9】端面加工工程を示す平面図である。
図10図9の要部を示す拡大平面図である。
図11図10に係る加工開始時における加工具の位置を示すグラフである。
図12】溝部の摩耗が進行した状態の加工具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1乃至図12は、本発明に係る板ガラスの製造方法の一実施形態を示す。
【0025】
本方法により製造される板ガラスGは、矩形の板形状を有しているが、この形状に限定されない。板ガラスGの板厚は例えば0.05mm〜10mmであるが、この範囲に限定されず、当該板ガラスGの材質や大きさ等の条件に応じて適宜設定される。
【0026】
板ガラスGの材質としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0027】
図1は、本方法に使用される板ガラス加工装置を例示する。板ガラス加工装置1は、加工具2と、押圧力発生要素3と、測定部4と、制御装置5とを備える。
【0028】
加工具2は、板ガラスGの端面ESを、一方端部である加工始端部C1から、他方端部である加工終端部C2まで加工する回転工具である。加工具2は、板ガラスGの端面ESに研削加工及び/又は研磨加工を行う。併せて、加工具2は、板ガラスGの端面ESの面取り加工を行うものであってもよい。
【0029】
加工具2は、板ガラスGの端面ESに沿って板ガラスGと相対移動可能に設けられている。本実施形態では、停止している板ガラスGの端面ESに対して、加工具2が移動方向Fに沿って移動しながら加工を行う例を示すが、これに限らず、移動方向Fとは逆方向に移動する板ガラスGの端面ESに対して、定位置にある加工具2が加工を行ってもよい。
【0030】
加工具2は、砥石6と、砥石6を支持するアーム部材7とを有する。砥石6は、回転しながら板ガラスGの端面ESを研削加工等する円柱形状又は円錐台形状の円盤部材である。砥石6は、その円盤面6Aが板ガラスGの主面Gaと平行になるようにアーム部材7に支持される。砥石6は、駆動モータにより回転駆動される。駆動モータは、制御装置5に接続されている。研削加工用の砥石としては、例えばダイヤモンド砥粒を金属の電着ボンドで固めてなる電着砥石や、砥粒を金属質結合剤で固めてなるメタルボンド砥石が好適に使用される。研磨加工用の砥石としては、例えばSiC砥粒を、硬化性樹脂を主成分とするレジンボンド等の結合剤と混合し、この混合物を焼成してなるレジンボンド砥石が好適に使用される。
【0031】
図2に示すように、砥石6は、板ガラスGの端面ESを加工するための複数の溝部6aを有する。未使用状態の砥石6の場合、各溝部6aの深さは等しくなっている。各溝部6aは、同一の粒度及び同種のボンドにより構成されてもよく、異なる粒度及び異種のボンドにより構成されてもよい。
【0032】
アーム部材7は、一方端部が回動可能に枢支され、他方端部において砥石6を回転駆動可能に支持している。アーム部材7は、2つの部材7a,7bの端部を接続した屈曲形状を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、アーム部材7は、一体の部材で構成されて直線形状を有してもよい。
【0033】
アーム部材7は、その回動動作により、砥石6を板ガラスGの端面ESに接近させ、または端面ESから離反させる。これにより、砥石6は、板ガラスGの端面ESに近づく接近方向CDaと、板ガラスGから遠ざかる離反方向CDbとに移動可能に構成される。以下、板ガラスGの接近方向CDaと離反方向CDbとを総称して、切り込み方向CDという。
【0034】
加工具2は、基準位置RP、待機位置SPの2か所に移動するように制御される。基準位置RPとは、端面加工工程において、切り込み方向CDにおける加工具2の位置を測定するために設定される初期位置である。待機位置SPとは、加工を終えた加工具2が板ガラスGから離れて待機する位置である。
【0035】
板ガラス加工装置1はアーム位置制御部8を更に備え得る。アーム位置制御部8は、加工具2が待機位置SP、基準位置RPの2か所に移動するように、当該アーム部材7の位置を制御する。加工具2が待機位置SPから基準位置RPに移動する間、基準位置RPから待機位置SPに移動する間、そして待機位置SPに位置する際、アーム部材7は、アーム位置制御部8の制御によってロック状態にあって自由に動かない。一方、加工具2が基準位置RPに位置する際、アーム位置制御部8による制御が働かずロックが外されており、アーム部材7はアームフリーになっている。
【0036】
押圧力発生要素3は、加工具2を板ガラスGの端面ESへ付勢して押圧力を発生させる。例えば、押圧力発生要素3はアーム部材7に偶力を与えることにより加工具2を板ガラスGの端面ESへ付勢する。本実施形態では、押圧力発生要素3は、板ガラスGの端面ESと、基準位置RPに移動した加工具2の砥石6とが接触するタイミングで、アーム部材7に偶力を与える。基準位置RPでは、アーム部材7はアームフリーになっているため、偶力によって加工具2は端面ESへ付勢される。
【0037】
押圧力発生要素3は低摺動抵抗エアシリンダであり得る。本実施形態においては、低摺動性による高速応答性及びピストンレスによる長寿命等を考慮して、低摺動抵抗エアシリンダとしてダイヤフラムシリンダを使用し得る。押圧力発生要素3は、エアシリンダに限らず、油圧シリンダやその他周知の駆動装置、又はばねや重りなど押圧力を発生できる部材を用いてよい。加工具2は、押圧力発生要素3により、板ガラスGに対する押圧力が一定となるようにフィードバック制御される定圧式加工具である。このような定圧式加工具は、板ガラスGの端面ESが有するうねりに倣うので、板ガラスGの端面ESを略一定の切り込み量で加工できる。
【0038】
上記の加工具2は、押圧力発生要素3、測定部4、及びアーム位置制御部8とともに一体化され、加工ユニットUを構成する。加工ユニットUは、移動機構によって移動可能に構成される。すなわち、加工ユニットUは、移動機構を介して、加工具2を移動方向Fに沿って移動させ、又は切り込み方向CDに移動させる。
【0039】
測定部4は、加工具2と測定部4との距離を測定する。測定部4は、例えば光学式、渦電流式、超音波式などの変位センサである。本実施形態では、測定部4として渦電流式変位センサを使用する。図1に示すように、測定部4はアーム部材7に対して押圧力発生要素3、アーム位置制御部8と同じ側であってアーム部材7から所定距離離間した位置に配置される。そして、測定部4は、この測定部4からアーム部材7までの距離を加工具2の位置情報として測定する。測定部4は、制御装置5に接続されており、測定したデータを制御装置5に送信する。
【0040】
制御装置5は、例えばCPU、ROM、RAM、HDD、入出力インターフェース等の各種ハードウェアを実装するコンピュータ(例えばPC)を含む。制御装置5は、各種の演算を実行する演算処理部9と、板ガラスGの加工に必要なデータや各種プログラムを記憶する記憶部10と、を備える。制御装置5は、表示装置11に接続されており、板ガラスGの加工に係る情報を、この表示装置11に表示させる。また、制御装置5は、加工具2の砥石6を回転させる駆動モータに接続され、当該駆動モータの制御を実行する。
【0041】
制御装置5は、記憶部10に記憶される各種データ及び各種プログラムを演算処理部9によって実行し、押圧力発生要素3、加工ユニットUの制御に必要なプログラムを実行する。制御装置5は、測定部4から受信した加工具2の位置情報(数値)を、表示装置11に表示させる。
【0042】
演算処理部9は、加工具2の位置情報から加工開始時における加工具2の移動量Dを算出できる。演算処理部9は、移動量Dを閾値TH1,TH2と比較する判定部12を備える。
【0043】
記憶部10は、測定部4によって取得された加工具2の位置情報の他、押圧力発生要素3、アーム位置制御部8、加工ユニットUの移動機構等を制御するための各種プログラムを記憶している。記憶部10は、基準位置RPの補正に係るプログラム(ソフトウェア)を記憶している。また、記憶部10は、加工具2の移動量Dに係る閾値TH1,TH2を記憶している。閾値TH1,TH2の値は、制御装置5において任意に設定できる。
【0044】
以下、上記構成の板ガラス加工装置1を使用して板ガラスGを製造する方法について説明する。板ガラスGの製造方法は、切断工程と、端面加工工程とを主に備える。必要に応じ、端面加工工程の後工程として、洗浄工程が設けられる。
【0045】
切断工程に供給される板ガラスMGには、公知の各種成形法によって成形されたガラスリボンを切断することによって得られた板ガラスを使用できる。公知の各種成形法として、例えば、フロート法、ロールアウト法、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、リドロー法等を採用できる。オーバーフローダウンドロー法を採用する場合、例えば、断面が略くさび形の成形体の上部に設けられたオーバーフロー溝に溶融ガラスを流し込み、このオーバーフロー溝から両側に溢れ出た溶融ガラスを成形体の両側の側壁部に沿って流下させながら、成形体の下端部で融合一体化し、ガラスリボンを連続成形する。
【0046】
成形されたガラスリボンを徐冷炉により徐冷することで、その歪を除去した後、ガラスリボンを冷却する。冷却されたガラスリボンは、所定の長さで切断すると共に、幅方向の両端部を切断によって除去する。これにより、板ガラスMGが得られる。
【0047】
切断工程に供給された板ガラスMGは、切断によって所望の寸法の板ガラスに切り出される。切断工程では、板ガラスMGから一枚又は複数枚の板ガラスが切り出される。これにより、板ガラス加工装置1の加工対象となる板ガラスGが得られる。この板ガラスMGの切断は、例えばスクライブ切断によって行われる。
【0048】
以下、スクライブ切断について図3を参照しながら説明する。まず、大型の板ガラスMGの切断予定線CLに沿ってスクライブホイールSHを走行させる。これにより、板ガラスMGには、切断予定線CLに沿って所定深さを有するスクライブ線が刻設される。その後、このスクライブ線の周辺に曲げモーメントを作用させ、板ガラスMGをこのスクライブ線に沿って折り割る。この折割りによって複数の板ガラスGが得られる。
【0049】
その後、板ガラスGに対して、図1に示す板ガラス加工装置1による端面加工工程が実施される。端面加工工程は、板ガラスGの端面ESを研削する工程(研削工程)と、研削工程後に当該端面ESを研磨する工程(研磨工程)とを含む。研削工程及び研磨工程では、押圧力発生要素3、測定部4、制御装置5、及びアーム位置制御部8による砥石6の位置制御工程が実行される。
【0050】
以下、端面加工工程の概要について説明する。切断工程を経て構成される板ガラスGは、図示しないコンベア(搬送装置)によって、端面加工工程における加工位置に搬送される。コンベアは板ガラスGを加工位置に配置した後、端面加工が終了するまで一時停止する。また、加工位置に配置された板ガラスGは、図示しない定盤に保持される。
【0051】
板ガラスGが設置されると、加工ユニットUは、移動方向Fに沿って移動を開始する。板ガラスGに近づくと、加工具2の砥石6は、アーム位置制御部8の制御によって待機位置SPから基準位置RPまで移動する。押圧力発生要素3は、加工具2の砥石6が加工始端部C1に接触するタイミングで、アーム部材7を付勢する。この付勢により、砥石6は、一定の押圧力で板ガラスGの端面ESに接触する。
【0052】
そして、加工具2は、加工始端部C1から、加工終端部C2まで、端面ESに対する研削加工等を行う。この間、押圧力発生要素3は、アーム部材7を付勢し続ける。本例では、制御装置5による加工ユニットUの制御により、加工具2の砥石6を板ガラスGの端面ESに接触させた状態で、板ガラスGの長辺における加工始端部C1から加工終端部C2に亘って移動させる。
【0053】
その後、砥石6が板ガラスGの端面ESから離間するタイミングで押圧力発生要素3は付勢を停止し、加工具2は、アーム位置制御部8の制御によって待機位置SPに戻る。なお、加工具2は、板ガラスGの端面ESの一部を加工するように移動しても良い。端面ESの加工が終了すると、定盤は、板ガラスGの保持を解除し、コンベアは、板ガラスGを次工程へと搬送する。
【0054】
次に、図4乃至図11を参照しながら、端面加工工程の加工開始時における位置制御工程の詳細について説明する。図4に示すように、位置制御工程は、加工開始前において加工具2が板ガラスGの端面ESに接触する前に、当該加工具2を基準位置RPに配置する準備工程S1と、測定部4及び制御装置5による測定工程S2と、判定部12による判定工程S3と、制御装置5による補正工程S4とを主に備える。
【0055】
図5乃至図8は、基準位置RPに設置された加工具2が接近方向CDaに移動する場合における制御態様を示す。
【0056】
図5及び図6に示すように、準備工程S1では、移動方向Fに沿って移動する加工具2が板ガラスGに近傍に到達すると、アーム位置制御部8の制御により、待機位置SP(図5において一点鎖線で示す位置)にある加工具2を接近方向CDaに移動させる。これにより、加工具2は、基準位置RP(図5及び図6において実線で示す位置)に設置される。加工具2が基準位置RPに設置されると、押圧力発生要素3は、上記のように加工具2の定圧制御を開始する。
【0057】
図5乃至図7に示すように、基準位置RPに配置された加工具2の溝部6aが板ガラスGの端面ESから離れている場合、押圧力発生要素3は、アーム部材7を押して加工具2を接近方向CDaに移動させる。
【0058】
加工具2が板ガラスGの端面ESに接触すると、板ガラスGの加工が開始する。押圧力発生要素3は、この接触を検出し、加工具2の押圧力が一定となるようにアーム部材7に対する圧力を調整する。
【0059】
制御装置5は、砥石6の位置情報を記憶部10に保存するとともに、砥石6の位置情報に係る時間的変化をグラフとして表示装置11に表示させる。図7は、加工開始時における砥石6の位置情報を示すグラフを示す。図7において、基準位置RPは、0として表示される。また、砥石6が基準位置RPよりも接近方向CDa側に位置する場合、この位置は、正(+)の値として表示される。一方、砥石6が基準位置RPから離反方向CDb側にある場合、この位置は、負(−)の値として表示される。
【0060】
本実施形態では、上記のように、基準位置RPよりも接近方向CDa側にある加工具2の位置を正(+)の値とし、基準位置RPよりも離反方向CDb側にある加工具2の位置を負(−)の値としているが、この正負は、砥石6に係る接近方向CDaの移動と離反方向CDbの移動とを単に区別するために設定される。したがって、上記とは逆に、離反方向CDb側の位置情報を正(+)とし、接近方向CDa側の位置情報を負(−)に設定することも可能である。
【0061】
測定工程S2において、測定部4は、加工具2の位置(加工具2と測定部4との距離)を測定するとともに、その位置情報を制御装置5に送信する。制御装置5の演算処理部9は、測定部4から受信した加工具2の位置情報に基づいて、加工具2が基準位置RPから板ガラスGの端面ESに接触するまでの距離、すなわち正(+)の移動量Dを算出する。
【0062】
判定工程S3において、演算処理部9の判定部12は、算出された加工具2の移動量Dを正(+)の閾値TH1と比較する。移動量Dが閾値TH1を超えている場合、演算処理部9は、次回の加工に係る加工具2の基準位置RPを更新する。すなわち、演算処理部9は、演算により求めた加工具2の移動量Dに基づいて、次回の加工における加工具2の基準位置RPを決定する。
【0063】
次回の加工に係る加工具2の基準位置RPは、以下の式(1)に基づいて決定される。
CV=CF×X ・・・(1)
【0064】
ここで、CVは、基準位置RPに係る補正値であり、CFは、基準位置RPに係る補正率であり、Xは、測定された加工具2の移動量D(mm)である。
【0065】
補正値CVは、次回の加工前に設定されている基準位置RPに加算される正又は負の数値(mm)である。補正率CFは、例えば0から1の間で任意に設定される数値(%)である。
【0066】
加工開始時に加工具2が板ガラスGの端面ESから離れる傾向がある場合、補正率CFを大きく設定して補正値CVを算出することが望ましい。これにより、次回の加工において基準位置RPに設置された加工具2は、板ガラスGの端面ESに可及的に接近した状態となる。
【0067】
一方、加工開始時に加工具2が離反方向CDbに移動する傾向がある場合、次回の加工において、加工具2を端面ESから大きく離れるように基準位置RPを設定すると、加工開始時に加工具2が端面ESに接触せず、板ガラスGに未加工部分が残存するおそれがある。このような事態を防止するために、離反方向CDbに係る加工具2の補正率CFは、接近方向CDaに係る加工具2の補正率CFよりも小さく設定されることが望ましい。
【0068】
接近方向CDa側に基準位置RPを補正する場合の補正率CFは、例えば50〜100%に設定することが望ましい。離反方向CDb側に基準位置RPを補正する場合の補正率CFは、例えば10〜50%に設定することが望ましい。
【0069】
以下、図8を参照しながら、制御装置5による判定工程S3及び補正工程S4について詳細に説明する。図8は、一ロットに含まれる複数の板ガラスGを加工する場合に、演算処理部9によって作成される加工履歴データの一部を例示する。
【0070】
この履歴データは、十枚の板ガラスG1〜G10の加工が完了し、次回の板ガラスG11を加工する場合を示す。履歴データには、各板ガラスG1〜G10に対応する加工具2の移動量Dの値が含まれる。以下では、補正率CFが80%、閾値TH1が+0.040mmに設定されている場合における判定工程S3及び補正工程S4を説明する。
【0071】
制御装置5の演算処理部9は、直近で測定した一枚の板ガラスGに対応する加工具2の移動量Dに基づいて基準位置RPを更新するため、一枚の板ガラスGの加工が終了する度に、判定工程S3を毎回実行する。
【0072】
演算処理部9の判定部12は、板ガラスG11に先立って加工された板ガラスG10に対応する加工具2の移動量Dのデータを閾値TH1と比較する。本例では、板ガラスG10に対応する移動量D(+0.060mm)が閾値TH1(+0.040mm)を超えていることから、補正工程S4が実行される。補正工程S4では、演算処理部9が、上記の式(1)に基づいて、板ガラスG10に対応する移動量Dのデータに、補正率CF(80%)を乗じ、補正値CVとして、0.048mmを得る。なお、本例と異なり、板ガラスG10に対応する移動量Dが閾値TH1を超えていない場合、補正工程S4が実行されることなく、次回の板ガラスG11の加工に係る基準位置RPは、前回の板ガラスG10の加工に係る基準位置RPと同じになる。
【0073】
制御装置5は、直近に行われた板ガラスG10の加工時に設定された基準位置RPの値に、上記の補正値CVを加算して、次回の板ガラスG11の加工に係る新たな基準位置RPを設定する。制御装置5は、更新された基準位置RPに係る制御データをアーム位置制御部8に送信する。板ガラスG11の準備工程S1において、アーム位置制御部8は、砥石6を新たな基準位置RPに設置する。その結果、板ガラスG11の準備工程S1の基準位置RPは、前回の板ガラスG10の準備工程S1の基準位置RPから補正値CVだけ移動する。
【0074】
複数の板ガラスGを順に加工する場合、補正工程S4の移動量Dとして、複数の板ガラスに係る加工具2の移動量Dの平均値を用いることが望ましい。このように平均値を用いる場合の判定工程S3及び補正工程S4について説明する。閾値TH1、補正率CFの値は、上記の例と同じである。本例では、次回の板ガラスG11の加工に対して、直近三回の加工に係る加工具2の移動量Dの平均値、すなわち、板ガラスG8〜G10に係る加工具2の移動量Dの平均値が補正値CVの演算に使用される。
【0075】
判定工程S3では、演算処理部9の判定部12が、板ガラスG11に先立って加工された板ガラスG10に対応する加工具2の移動量Dのデータを閾値TH1と比較する。本例では、板ガラスG10に対応する加工具2の移動量D(+0.060mm)が閾値TH1(+0.040mm)を超えていることから、補正工程S4が実行される。補正工程S4では、制御装置5の演算処理部9が、履歴データを参照して、次回の板ガラスG11に係る加工具2の基準位置RPを設定するために、板ガラスG8〜G10に係る加工具2の移動量Dの平均値(0.040+0.050+0.060)/3を算出する。
【0076】
演算処理部9は、算出した平均値(+0.050mm)に補正率CF(80%)を乗じ、補正値CVとして、+0.040mmを得る。演算処理部9は、上記と同様に、直近に行われた板ガラスG10の加工時に設定された基準位置RPの値に、上記の補正値CVを加算し、次回の板ガラスG11の加工に係る新たな基準位置RPを設定する。そして、制御装置5は、新たな基準位置RPに係る制御信号をアーム位置制御部8に送信する。
【0077】
図9乃至図11は、基準位置RPに設置された加工具2が離反方向CDbに移動する場合における制御態様を示す。
【0078】
図9に示すように、準備工程S1において、加工具2は移動方向Fに沿って移動しながら、アーム位置制御部8により、待機位置SP(一点鎖線で示す位置)にある砥石6を基準位置RP(図9及び図10において実線で示す位置)に移動させる。
【0079】
砥石6が基準位置RPに設置されると、押圧力発生要素3は、当該砥石6の定圧制御を開始する。この例では、砥石6が基準位置RPに設置された直後に板ガラスGの加工始端部C1に接触する。このとき、押圧力発生要素3は、砥石6に作用する過大な押圧力を検出する。砥石6は、押圧力発生要素3によって一定の押圧力で付勢されていることから、基準位置RPから離反方向CDbに移動する。
【0080】
測定工程S2において、制御装置5は、測定部4から受信した加工具2(砥石6)の位置情報に基づいて、当該砥石6の離反方向CDbに係る負(−)の移動量D(図10及び図11参照)を算出する。
【0081】
判定工程S3において、制御装置5は、演算処理部9の判定部12により、算出した砥石6の移動量Dを負(−)の閾値TH2と比較する。移動量Dが閾値TH2を超えている場合、演算処理部9は、上記の式(1)に基づいて、次回の加工に係る加工具2(砥石6)の基準位置RPを更新する。制御装置5は、更新した新たな基準位置RPに係る制御信号をアーム位置制御部8に送信する。
【0082】
なお、砥石6が複数の溝部6aを有する場合、例えば端面加工には複数の溝部6aが順に用いられる。より具体的には、最も上段に位置する溝部6aを用いて端面加工を行った後、上から二段目に位置する溝部6aを用いて端面加工を行い、その後、上から三段目に位置する溝部6aを用いて端面加工を行う。このようにして全ての溝部6aを使用した後、必要に応じて全ての溝部6aにドレッシングを施し、再び、複数の溝部6aを順に端面加工に用いる。このような使用形態では、端面加工を繰り返すうちに、砥石6の各溝部6aは徐々に摩耗し、摩耗の程度は、溝部6aごとに異なることとなる。このため、図12に示すように、加工の進捗に応じて各溝部6aの深さは異なってくる。したがって、板ガラス加工装置1は、深さの異なる溝部6aごとに基準位置RPを設定すれば、加工開始時において、各溝部6aに応じた基準位置RPに加工具2を設置できる。
【0083】
以上説明した本実施形態に係る板ガラスGの製造方法によれば、測定工程S2において加工具2が板ガラスGの端面に接触するときの加工具2の移動量Dを測定し、補正工程S4において、この移動量Dに基づいて次回の加工に係る加工具2の基準位置RPを設定する。これにより、加工具2の摩耗の影響による加工具2と板ガラスGとの位置関係の変化に応じて、次回の加工に係る加工具2の基準位置RPを最適化できる。したがって、板ガラスGの端面ESに対する加工不良の発生を防止するとともに、加工具2の長寿命化を実現できる。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0085】
上記の実施形態では、押圧力発生要素3をエアシリンダにより構成した例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、アーム部材7にリンク機構及びサーボモータを接続し、サーボモータの駆動軸の回転力を、リンク機構を介してアーム部材7の偶力へと変換し、この力を加工具2の押圧力としてもよい。この場合、加工具2の位置情報を、サーボモータの回転角度に基づいて検出してもよい。
【0086】
上記の実施形態では、判定工程S3において、加工具2の移動量Dが閾値TH1,TH2を超えた場合に、補正工程S4を実行する例を示したが、これに限らず、閾値を設定することなく、毎回、補正工程S4を実行してもよい。
【0087】
上記の実施形態では、複数の板ガラスGを順に加工する場合に判定工程S3で移動量Dを用いて判定する例を示したが、これに限らず、判定工程S3の移動量Dとして、複数の板ガラスGに係る加工具2の移動量の平均値を用いてもよい。
【符号の説明】
【0088】
2 加工具
5 制御装置
6a 溝部
CDa 接近方向
CDb 離反方向
D 移動量
ES 板ガラスの端面
G 板ガラス
RP 基準位置
S1 準備工程
S2 測定工程
S3 判定工程
S4 補正工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12