特許第6973246号(P6973246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6973246-廃棄物焼却方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973246
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/50 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   F23G5/50 RZAB
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-70106(P2018-70106)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178850(P2019-178850A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄木 太一
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−180964(JP,A)
【文献】 特開2003−302028(JP,A)
【文献】 特開平11−270828(JP,A)
【文献】 特開昭54−086973(JP,A)
【文献】 特開2017−180962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホッパに投入されシュートを経由して供給された廃棄物を燃焼室で燃焼しボイラで蒸気を発生させる廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法であって、
間欠的に外部から廃棄物をホッパに投入する廃棄物投入工程と、
供給装置に設けられた押出部の往復動の反復により廃棄物を燃焼室へ押し出して供給する廃棄物供給工程と、
燃焼室内へ燃焼用空気を供給して、該燃焼室内で廃棄物を燃焼させる廃棄物燃焼工程と、
燃焼室からの排ガスとの熱交換によりボイラで蒸気を発生させる蒸気発生工程と、
シュート内での廃棄物の性状の測定値に基づいて上記供給装置による廃棄物の供給速度を制御する燃焼制御工程とを備える廃棄物焼却方法において、
上記燃焼制御工程は、投入された廃棄物の性状の測定値を取得する性状測定値取得工程と、
上記性状測定値取得工程で取得された廃棄物の性状の測定値に基づいて、供給装置により燃焼室へ供給される廃棄物の発熱量を一定に維持するための廃棄物の供給速度を算出する演算工程と、
上記演算工程で算出された供給速度での上記押出部の往復動を供給装置に指示する供給速度指示工程とを有し、
上記性状測定値取得工程は、投入された廃棄物について、ホッパ内での廃棄物の表面の高さの測定値、投入された廃棄物の重量の測定値及びシュート内での廃棄物の水分率の測定値を廃棄物の性状の測定値として取得し、
上記演算工程は、
廃棄物の表面の高さの測定値及び廃棄物の重量の測定値に基づいて廃棄物の嵩密度を算出する工程と、
水分率の測定値に基づいて単位重量当たりの発熱量を求める工程と、
下記(1)式に基づいて、単位時間当たりに燃焼室へ供給される廃棄物の発熱量を供給発熱量として算出する工程と、
廃棄物の水分率が変動したとき、変動前の上記供給発熱量が維持されるように、下記(1)式に基づいて、単位時間当たりの押出部の往復回数を廃棄物の供給速度として算出する工程とを有し
さらに、上記シュートにおける水分率の測定位置から上記供給装置の位置までの距離(m)をHとし、上記シュート内での廃棄物の降下速度(m/s)をVとしたとき、上記供給装置の上記押出部の制御は、水分率の測定を行った時刻からH/V秒後に、廃棄物の供給速度を調整するように行われること、
を特徴とする廃棄物焼却方法。
X=Q・M・S・T (1)
X:単位時間当たりの供給発熱量(MJ/h)
Q:単位重量当たりの発熱量(MJ/kg)
M:嵩密度(kg/m
T:供給装置の一回の供給動作により供給される廃棄物の体積(m/回)
S:供給速度としての単位時間当たりの押出部の往復回数(回/h)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパに投入された廃棄物を廃棄物焼却炉の燃焼室で燃焼し、燃焼熱によりボイラで蒸気を発生させる廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理によって発生する熱エネルギーの回収への関心が高まってきており、この熱エネルギーで駆動するボイラ発電設備が設置された廃棄物焼却炉が増加し、高い効率での熱回収を実現できる燃焼運転が要求されている。一方、廃棄物焼却炉から大気中に放出される環境汚染物質の規制が厳しくなるに従い、ダイオキシン類や窒素酸化物など燃焼由来の有害物質の排出を低減する燃焼運転も必要とされている。
【0003】
このように、廃棄物焼却炉に高度な燃焼運転制御が望まれているため、自動燃焼制御装置によって上記の要求を満たす運転制御が行われている。自動燃焼制御装置では、焼却炉が例えばストーカ式焼却炉の場合、操作量である給塵速度、火格子送り速度、燃焼空気量、及び冷却空気量などを制御することにより、蒸気発生量を安定化し、かつ排ガス中のダイオキシン類や窒素酸化物濃度を低く抑え、灰中の未燃成分を少なくする目的を達成するように、廃棄物を安定して燃焼するように運転されている。
【0004】
しかしながら、このような燃焼制御は、廃棄物の投入の時点で該廃棄物の性状を監視することなく、いずれも燃焼の結果発生する燃焼ガスの温度、燃焼ガス中酸素濃度、燃焼ガス中一酸化炭素濃度等を監視する因子として検出したり、あるいは、燃焼後の排ガスの持つ熱量やボイラにおける蒸発量のデータ等から、焼却炉に投入された廃棄物の発熱量を算出し、これらの監視因子又は(算出した)発熱量に対応して各操作量をフィードバック制御するものであり、そのため後追い型の制御となり、焼却炉に投入する廃棄物の性状が変動した場合に遅れることなく即座に操作量を制御することができず、安定した運転制御を行うことができないことがある。
【0005】
このようにフィードバック制御方式による燃焼制御では、突然の廃棄物の性状変動に対応が困難であるので、例えば水分率が高く、非常に発熱量の低い廃棄物が炉内に投入されると、この変動に速やかに対応できずに急激に炉内の燃焼温度が低下し、ボイラの蒸気発生量が低下したり、燃焼運転の安定性が低下して排ガス中の有害物濃度が増加するという問題が生じる。
【0006】
廃棄物焼却炉の燃焼運転の安定性を乱す大きな要因として、投入される廃棄物の性状が一定しないため廃棄物の発熱量が変動することがある。焼却炉へ投入される廃棄物の性状は、廃棄物が収集される地域や、収集される時期、または天候や、季節によって大きく異なることから、廃棄物の発熱量は大きく変動する。
【0007】
そこで、廃棄物が炉内に投入される前に通過するシュート部にて、予め廃棄物の発熱量の増加傾向を予測できれば、燃焼室内に発熱量の高い廃棄物が投入される前に廃棄物の供給量を抑制し、蒸気発生量の変動を抑制するとともに、過剰燃焼を抑制して局所高温場の発生により生じる窒素酸化物濃度の増加を抑制するフィードフォワード制御を行うことが可能になる。
【0008】
また、廃棄物の発熱量の減少傾向を予測できれば、燃焼室内に発熱量の低い廃棄物が投入される前に燃焼室内の温度を上昇するように燃焼用空気供給量を増加させ、燃焼が不活発になることを抑制して蒸気発生量の減少を抑制するフィードフォワード制御を行うことが可能である。
【0009】
シュート部にて廃棄物の発熱量を予測する手段としては、シュートを通過する廃棄物の水分率を計測する方法と、シュートに投入される廃棄物の嵩密度を計測する方法が知られている。特許文献1では、燃焼室へ投入される廃棄物の性状を投入前に求めて、求めた廃棄物の性状により燃焼制御を行う廃棄物焼却炉の制御方法が提案されている。
【0010】
廃棄物の性状のうち、発熱量を大きく左右する因子は廃棄物の水分率であり、特許文献1には、燃焼前の廃棄物の静電容量の測定値から廃棄物中の水分率を算定する方法が開示されている。廃棄物焼却炉の投入口から燃焼室へ向け垂下するシュートの高さ方向中間部に水分率計として静電容量計を配置し、一対の電極間での廃棄物の静電容量を計測することで廃棄物の水分率を得ることとしている。静電容量計は、静電容量の値と水分率との値の対応関係を保有している水分率算定器に接続されており、静電容量計で計測された計測値から上記対応関係にもとづいて水分率を算定できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−216990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には求めた廃棄物の水分率算定値から、廃棄物の発熱量を推定し、それに応じて給塵速度、燃焼火格子送り速度、燃焼空気量など各操作量を制御することができ、安定した燃焼状態を得ることができると記載されている。しかしながら、水分率の計測方法について記載されているものの、得られた水分率に基づきどのように燃焼制御を行うのか明確にされていない。そのため、廃棄物の水分率算定値から発熱量を正確に把握して、発熱量の変動に対して廃棄物焼却炉の燃焼制御を適切に行い、廃棄物焼却炉を安定して運転することが必ずしもできるとは限らない。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑み、廃棄物焼却炉へ供給される廃棄物の水分率が変動しても、その変動に応じた燃焼制御を速やかに行うことができ、安定した燃焼状態を良好に維持することができる廃棄物焼却方法を提供すること、詳しくは、焼却炉の燃焼室へ供給される直前の廃棄物の発熱量の変動を把握して、廃棄物の発熱量の変動に対応して、燃焼室に供給する廃棄物の発熱量を一定に維持するように廃棄物の供給速度を制御し廃棄物焼却炉の安定運転を可能とする廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題は、本発明によれば、次のように構成される廃棄物焼却方法によって解決される。
【0015】
ホッパに投入されシュートを経由して供給された廃棄物を燃焼室で燃焼しボイラで蒸気を発生させる廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法であって、
間欠的に外部から廃棄物をホッパに投入する廃棄物投入工程と、
供給装置に設けられた押出部の往復動の反復により廃棄物を燃焼室へ押し出して供給する廃棄物供給工程と、
燃焼室内へ燃焼用空気を供給して、該燃焼室内で廃棄物を燃焼させる廃棄物燃焼工程と、
燃焼室からの排ガスとの熱交換によりボイラで蒸気を発生させる蒸気発生工程と、
シュート内での廃棄物の性状の測定値に基づいて上記供給装置による廃棄物の供給速度を制御する燃焼制御工程とを備える廃棄物焼却方法において、
上記燃焼制御工程は、投入された廃棄物の性状の測定値を取得する性状測定値取得工程と、
上記性状測定値取得工程で取得された廃棄物の性状の測定値に基づいて、供給装置により燃焼室へ供給される廃棄物の発熱量を一定に維持するための廃棄物の供給速度を算出する演算工程と、
上記演算工程で算出された供給速度での上記押出部の往復動を供給装置に指示する供給速度指示工程とを有し、
上記性状測定値取得工程は、投入された廃棄物について、ホッパ内での廃棄物の表面の高さの測定値、投入された廃棄物の重量の測定値及びシュート内での廃棄物の水分率の測定値を廃棄物の性状の測定値として取得し、
上記演算工程は、
廃棄物の表面の高さの測定値及び廃棄物の重量の測定値に基づいて廃棄物の嵩密度を算出する工程と、
水分率の測定値に基づいて単位重量当たりの発熱量を求める工程と、
下記(1)式に基づいて、単位時間当たりに燃焼室へ供給される廃棄物の発熱量を供給発熱量として算出する工程と、
廃棄物の水分率が変動したとき、変動前の上記供給発熱量が維持されるように、下記(1)式に基づいて、単位時間当たりの押出部の往復回数を廃棄物の供給速度として算出する工程とを有していること、
を特徴とする廃棄物焼却方法。
X=Q・M・S・T (1)
X:単位時間当たりの供給発熱量(MJ/h)
Q:単位重量当たりの発熱量(MJ/kg)
M:嵩密度(kg/m
T:供給装置の一回の供給動作により供給される廃棄物の体積(m/回)
S:供給速度としての単位時間当たりの押出部の往復回数(回/h)
【0016】
本発明では、投入される廃棄物の水分率が変動しても、常に上記(1)式が成立するように、燃焼室への廃棄物の供給速度、すなわち供給装置の押出部の単位時間当たりにおける往復回数を算出することにより、燃焼室に供給される廃棄物の発熱量が一定に維持されることとなり、廃棄物焼却炉の安定運転が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、常に上記(1)式が成立するように、燃焼室への廃棄物の供給速度、すなわち供給装置の押出部の単位時間当たりにおける往復回数を算出することとしたので、投入される廃棄物の水分率が変動した場合であっても、燃焼室に供給される廃棄物の発熱量(供給発熱量)が一定に維持される。したがって、廃棄物焼却炉の安定運転が可能となり、蒸気発生量を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る廃棄物燃焼炉を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る廃棄物燃焼炉を示す概略構成図である。本実施形態に係る廃棄物燃焼炉は、火格子を有する全連型(24時間連続運転)の火格子式廃棄物焼却炉であり、間欠的に外部から廃棄物が投入されるホッパ1と、該ホッパ1から垂下するシュート2と、該シュート2を経由して供給された廃棄物を燃焼するための燃焼室3と、該燃焼室3内へ下方から一次燃焼用空気を供給する一次燃焼用空気供給手段4と、燃焼室3の後流側の二次燃焼領域に二次燃焼用空気を供給する二次燃焼用空気供給手段5と、燃焼室3からの排ガスを受け該排ガスとの熱交換により蒸気を発生させるボイラ6と、シュート2内での廃棄物の性状の測定値に基づいて操作端の操作量を制御する制御装置7とを備えている。ボイラ6の入口近傍には二次燃焼領域が形成されている。
【0021】
ホッパ1は、クレーン(図示せず)によって投入された廃棄物を受ける。該ホッパ1に接続されたシュート2の下部には、燃焼室へ廃棄物を供給する供給装置8が設けられている。該供給装置8は、廃棄物を押し出して燃焼室3内へ供給する往復動の反復が可能な押出部としての押出機8Aを有している。本実施形態では、該押出機8Aによる廃棄物の供給速度、換言すると単位時間当たりの押出機8Aの往復回数を調整することによって、燃焼室3内への廃棄物の供給量が調整されるようになっている。
【0022】
シュート2の側壁には、シュート2内の廃棄物の水分率を測定するための水分率測定手段としての水分率測定器9が設けられている。該水分率測定器9としては種々の方式を採用することができ、例えば、透過型マイクロ波強度方式、接触型マイクロ波強度方式、接触型静電容量方式、透過型静電容量方式、赤外線強度方式等が挙げられる。
【0023】
例えば、透過型マイクロ波強度方式は、発信したマイクロ波を廃棄物に透過させ、受信したマイクロ波の減衰率などから廃棄物の水分率を測定する方式であり、測定できる廃棄物の範囲を広く確保できることができるので、シュート内の廃棄物のように水分率が不均一に分布している場合の測定に適している。
【0024】
透過型マイクロ波強度方式においては、水分率測定器9としての透過型マイクロ波強度水分計が、マイクロ波の発信部と、受信部と、該受信部に接続された水分率算定器とを有している。該発信部はシュート2の一方の壁面に設置され、受信部はシュート2の他方の壁面に設置される。マイクロ波は水分に吸収される特性をもつため、発信部から出たマイクロ波は、廃棄物を透過した際に廃棄物中の水分によって減衰して受信部へ到達する。透過型マイクロ波強度水分計では、このマイクロ波の減衰率に基づいて、廃棄物に含まれる水分率を算定することができる。
【0025】
具体的には、上記透過型マイクロ波強度水分計は、発信部の発信マイクロ波強度に対する受信部での受信マイクロ波強度との強度比(又は強度差)、すなわち発信部における発信電圧に対する受信部における受信電圧の電圧比(又は電圧差)を、マイクロ波が廃棄物を透過した際の減衰率(又は減衰量)として求める。上記水分率算定器は、マイクロ波の減衰率と廃棄物の水分率との相関関係を関係データベースとして予め保持していて、該関係データベースを参照することにより、実測の上記電圧比として求められた上記減衰率から廃棄物の水分率を算定する。水分率算定器は制御装置7の後述の性状測定値取得・演算部20に接続されており、該水分率算定器で算定された廃棄物の水分率が該性状測定値取得・演算部20へ伝送される。
【0026】
また、水分率測定器9として接触型静電容量方式を採用した場合、水分率測定器9としての接触型静電容量水分計が、接触型静電容量式の静電容量計と、該静電容量計に接続された水分率算定器とを有している。該静電容量計はシュート2内の廃棄物の静電容量の計測し、水分率算定器は、予め保持している廃棄物の静電容量と水分率との相関関係から、上記静電容量計による静電容量の計測値に対応する水分率を算定できるようになっている。具体的には、水分率算定器は、廃棄物の静電容量と廃棄物の水分率との相関関係を予め計測して明らかにした関係データベースを保持しており、静電容量計から送られてきた廃棄物の静電容量の計測値を上記関係データベースにおける静電容量と水分率との関係と照合して、測定された廃棄物の水分率を算定する。水分率算定器は制御装置7の後述の廃棄物の性状測定値取得部20に接続されており、該水分率算定器で算定された廃棄物の水分率が該性状測定値取得部20へ伝送される。
【0027】
また、ホッパ1の上部には、ホッパ1内での廃棄物の表面の高さ(レベル)を計測するための廃棄物レベル計10が設けられている。
【0028】
燃焼室3の下部には、燃焼室3内の廃棄物を下流側への移動させる火格子11a,11b,11c,11dが設けられている。該火格子11a〜11dは往復動することにより廃棄物を移動させるとともに、廃棄物の撹拌をも行う。以下、説明の便宜上、必要に応じて火格子11a〜11dを「火格子11」と総称する。
【0029】
一次燃焼用空気供給手段4は、火格子11a,11b,11c,11dの下方にそれぞれ風箱13a,13b,13c,13dを有しており、燃焼室3内へ下方から一次燃焼用空気を供給する。火格子11上のごみは、火格子11上を移動しながら、一次燃焼用空気により乾燥、燃焼、後燃焼が行われた後に灰となり、灰落下口18から外部に排出される。一次燃焼用空気は、一次燃焼用空気ブロア14により各風箱13a〜13dを介して火格子11a〜11dの下方から燃焼室3内に供給される。また、一次燃焼用空気の量は、一次燃焼用空気を供給する配管に設けられたダンパ15により調整される。また、各風箱13a〜13dのそれぞれに供給される一次燃焼用空気の量は、各風箱13a,13b,13c,13dに一次燃焼用空気を供給する各配管に設けられたダンパ15a,15b,15c,15dにより調整される。
【0030】
二次燃焼用空気供給手段5は、燃焼室3の後流側であるボイラ6の入口近傍の二次燃焼領域に二次燃焼用空気を供給する。該二次燃焼用空気は、燃焼用二次空気ブロア16により二次燃焼領域に供給される。二次燃焼用空気の量は、二次燃焼領域へ二次燃焼用空気を供給する配管に設けられたダンパ17により調整される。二次燃焼用空気が二次燃焼領域に供給されることにより、該燃焼室3内で燃焼しきれなかった燃焼ガス中の可燃性ガスが完全に燃焼される。
【0031】
二次燃焼した後の排ガスは、下流側のボイラ6での熱交換により熱エネルギーを回収され、さらに排ガス処理を施された後に、煙突19を通じて外部に排出される。
【0032】
制御装置7は、シュート2内での廃棄物の性状の測定値に基づいて操作端の操作量を、例えばPID制御により制御する。本実施形態における燃焼制御においては、燃焼室内への廃棄物供給量が制御量として設定されている。また、上記廃棄物供給量に対応する操作端は供給装置8の押出機8Aである。つまり、上記廃棄物供給量に対応する操作端の操作量は押出機8Aの単位時間当たりの往復回数、換言すると廃棄物の供給速度である。図1に見られるように、操作端としての押出機8Aは制御装置7の後述の供給速度指示部22により制御されるようになっている。
【0033】
制御装置7は、廃棄物の性状の測定値として廃棄物投入量(重量)、ホッパ1内での廃棄物の表面の高さ、シュート2内での廃棄物の水分率を取得する性状測定値取得部20と、該性状測定値取得部20で算出された廃棄物の性状の測定値に基づいて、押出機8Aにより燃焼室3へ供給される廃棄物の発熱量を一定に維持するための廃棄物の供給速度を算出する演算部21と、演算部21で算出された供給速度での動作を供給装置8に指示する供給速度指示部22とを有している。
【0034】
性状測定値取得部20は、廃棄物がホッパ1に投入された際に、廃棄物レベル計10での計測値、すなわちホッパ1内での廃棄物の表面の高さを取得する。また、性状測定値取得部20は、廃棄物投入量(重量)を取得する。ここで、廃棄物投入量は、例えば、ホッパ1への廃棄物の投入の際、クレーンに設けられた重量計(図示せず)により計測される。さらに、性状測定値取得部20は、水分率測定器9から廃棄物の水分率を取得する。
【0035】
演算部21は、性状測定値取得部20で取得された、廃棄物がホッパ1に投入された際の廃棄物の表面の高さの増加分に、ホッパ1の断面積(水平方向形状の面積)を乗じることにより、ホッパ1内へ投入された廃棄物の体積を算出する。次に、演算部21は、廃棄物投入量を廃棄物体積で除してホッパ1に投入された廃棄物の嵩密度を算出する。
【0036】
また、演算部21は、廃棄物の水分率と単位重量当たりの発熱量との対応関係を関係データベースとして予め保持しており、該関係データベースを参照することにより、性状測定値取得部20で取得された廃棄物の水分率から、その水分率に対応する単位重量当たりの発熱量を求める。
【0037】
さらに、演算部21は、上述のとおり求めた単位重量当たりの発熱量(MJ/kg)をQとし、上述のとおり求めた廃棄物の嵩密度(kg/m)をMとし、供給装置8の一回の供給動作(押出機8Aの押出動作)により供給される廃棄物の体積(m/回)をTとし、廃棄物の供給速度としての単位時間当たりの押出機8Aの往復回数(回/h)をSとしたとき、下記(1)式に基づいて、単位時間当たりに燃焼室3へ供給される廃棄物の発熱量(供給発熱量)Xを算出する。ここで、単位重量当たりの発熱量Qは、廃棄物の水分率が変動したことにより制御を行う都度に求めるものであり、廃棄物の嵩密度Mは、廃棄物がホッパに投入された際に算出されるものであり、一回の押出機8Aの一回の押出動作により供給される廃棄物の体積Tは予め定められた値である。
X=Q・M・S・T (1)
【0038】
供給速度指示部22は、上記(1)式に用いた供給速度Sでの動作(押出機8Aの往復動)を供給装置8に指示する。具体的には、供給速度としての単位時間当たりの押出機8Aの往復回数を指示情報として供給装置8へ発信し、燃焼室3への廃棄物の供給量をフィードフォワード制御により制御する。
【0039】
廃棄物燃焼炉の運転中、廃棄物の水分率が変動したとき、演算部21は、上記関係データベースを参照して、性状測定値取得部20で取得された変動後の水分率に対応する単位重量当たりの発熱量Qを新たに求める。そして、演算部21は、上記供給発熱量Xが水分率の変動前に算出された供給発熱量Xと同じ供給発熱量に維持されるように、新たに求めた上記発熱量Q及び上記(1)式に基づいて、廃棄物の供給速度S、すなわち単位時間当たりの押出機8Aの往復回数を新たに算出する。そして、供給速度指示部22は、演算部21で新たに算出された供給速度Sでの押出機8Aの往復動を供給装置8に指示する。
【0040】
本実施形態では、シュート2における水分率測定位置(水分率測定器9の位置)から供給装置8の位置までの距離(m)をHとし、シュート2内での廃棄物の降下速度(m/s)をVとしたとき、操作端である押出機8Aの制御は、水分率の測定を行った時刻からH/V秒後の、水分率の測定を行った廃棄物が供給装置8の位置に到達したときに、廃棄物の供給速度Sを調整することにより行われる。このようなタイミングでフィードフォワード制御を行うことにより、水分率の変動に応じた燃焼制御をより正確に行うことができる。
【0041】
次に、本実施形態における燃焼制御の要領を説明する。まず、性状測定値取得部20は、廃棄物レベル計10で計測されたホッパ1内での廃棄物の表面の高さ、クレーンの重量計で計測された廃棄物投入量(重量)及び水分率測定器9から廃棄物の水分率の測定値を取得する。
【0042】
演算部21は、既述したように、廃棄物の表面の高さの増加分、ホッパ1の断面積及び廃棄物投入量に基づいて、廃棄物の嵩密度Mを算出する。また、演算部21は、関係データベースを参照することにより、廃棄物の水分率の測定値から、該測定値に対応する単位重量当たりの発熱量Qを求める。さらに、演算部21は、嵩密度M、発熱量Q、供給速度S、体積Tを用いて、上記(1)式に基づき供給発熱量Xを算出する。
【0043】
供給速度指示部22は、上記(1)式に用いた供給速度(S)、すなわち単位時間当たりの押出機8Aの往復回数での往復動を供給装置8に指示することにより、燃焼室3への廃棄物の供給量を制御する。
【0044】
廃棄物の水分率が変動したときには、演算部21は、上記関係データベースを参照して、変動後の水分率に対応する単位重量当たりの発熱量Qを新たに求める。そして、上記供給発熱量Xが水分率の変動前に算出された供給発熱量Xと同じ発熱量に維持されるように、新たに求めた上記発熱量Q及び上記(1)式に基づいて、廃棄物の供給速度Sを新たに算出する。供給速度指示部22は、演算部21で新たに算出された供給速度Sでの往復動を供給装置8に指示する。
【0045】
以上のように、本実施形態では、常に上記(1)式が成立するように、燃焼室3への廃棄物の供給速度、すなわち供給装置8の押出機8Aの単位時間当たりにおける往復回数を算出することとしたので、投入される廃棄物の水分率が変動した場合であっても、燃焼室3に供給する廃棄物の発熱量が一定に維持される。したがって、廃棄物焼却炉の安定運転が可能となり、蒸気発生量を一定に維持することができる。
【0046】
本実施形態では、廃棄物の水分率が変動したとき、押出機8Aの単位時間当たり往復回数が実際に廃棄物の焼却が行われる前に制御される、いわゆるフィードフォワード制御が行われるので、廃棄物の水分率の変動に応じた燃焼制御を速やかに行うことができる。したがって、廃棄物の水分率の急激な変動により廃棄物の供給発熱量が変動することを、時間遅れが生じることなく抑制することができ、安定した燃焼状態を良好に維持することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ホッパ
2 シュート
3 燃焼室
6 ボイラ
7 制御装置
8 供給装置
8A 押出機(押出部)
20 性状測定値取得部
21 演算部
22 供給速度指示部
図1