特許第6973322号(P6973322)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973322
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】化学蓄熱システム
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/00 20060101AFI20211111BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20211111BHJP
   F25B 27/02 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F28D20/00 G
   F25B17/08 C
   F25B27/02 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-149590(P2018-149590)
(22)【出願日】2018年8月8日
(65)【公開番号】特開2020-24073(P2020-24073A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁則
(72)【発明者】
【氏名】平山 敦
(72)【発明者】
【氏名】林 謙年
(72)【発明者】
【氏名】山口 以昌
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−070202(JP,A)
【文献】 特開2014−105926(JP,A)
【文献】 特開2015−197233(JP,A)
【文献】 特開平04−109036(JP,A)
【文献】 特開2016−053438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00
F25B 17/08
F25B 27/02
F02G 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コジェネレーションシステムに用いる化学蓄熱システムであって、
熱を発生する熱源装置と、
該熱源装置の排ガスの熱により水蒸気を生成する水蒸気生成手段と、
脱水反応により吸熱し、水蒸気との反応により発熱する化学蓄熱材が格納された反応槽と、
該反応槽の内部に配設されて前記化学蓄熱材と熱交換を行う熱交換器と、
前記反応槽に連通して設けられ、水の凝縮と蒸発を行う凝縮蒸発器と
前記水蒸気発生手段で発生した水蒸気を蒸気利用施設に送る際に経由する蒸気ヘッダと、
前記熱交換器の一端が接続されている還水タンクとを備え、
前記熱交換器の他端が前記蒸気ヘッダに接続されていて、
蓄熱時においては、前記水蒸気生成手段によって生成された水蒸気を前記蒸気ヘッダから前記熱交換器に供給して、前記化学蓄熱材を加熱して蓄熱し、前記化学蓄熱材との間で熱交換された水蒸気は温水となって前記環水タンクに戻され、
放熱時においては、前記環水タンクから前記熱交換器に加熱する水を供給すると共に、前記凝縮蒸発器から水蒸気を前記化学蓄熱材に供給し前記化学蓄熱材の発熱によって前記熱交換器に供給された水を加熱して水蒸気を生成して蒸気ヘッダに供給するようにしたことを特徴とする化学蓄熱システム。
【請求項2】
前記還水タンクは前記蒸気利用施設に接続されていることを特徴とする請求項1記載の化学蓄熱システム。
【請求項3】
前記凝縮蒸発器に接続されて、該凝縮蒸発器内部を低圧にする真空ポンプを更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の化学蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コジェネレーションシステムに用いる化学蓄熱システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学蓄熱システムを用いたコジェネレーションシステムに関しては、例えば特許文献1に開示された熱出力システムがある。この熱出力システムは、「熱源装置と、該熱源装置からの第一の排ガスの熱により第一の水蒸気を生成し、第二の排ガスを排出する水蒸気生成手段と、脱水反応により吸熱し、水和反応により発熱する固体化学蓄熱材と、該固体化学蓄熱材と、第二の排ガスとを熱交換することにより、該固体化学蓄熱材を予熱する予熱手段と、該固体化学蓄熱材が格納され、該固体化学蓄熱材からの熱出力により第二の水蒸気を生成する蓄熱槽と、該蓄熱槽に連通され、水を溜める水容器と、該水容器内の該水と、少なくとも第二の排ガスとを熱交換することにより、該水を加熱する加熱手段と、を備えていることを特徴とする」ものである。
【0003】
特許文献1に開示の熱出力システムにおいては、蓄熱モードには熱源装置としてのガスエンジンの排ガスと固体化学蓄熱材との間で熱交換を行い、熱出力モードにおいては、固体化学蓄熱材と水との熱交換によって水蒸気(第二の水蒸気)を生成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−105926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、蓄熱モードで固体化学蓄熱材と熱交換する排ガスは、400℃〜500℃の高温であるため、固体化学蓄熱材が必要以上に高温となり、劣化し易いという問題がある。
また、特許文献1の固体化学蓄熱材は、蓄熱モードでは排ガスと熱交換を行い、熱出力モードでは水と熱交換を行うため、固体化学蓄熱材が格納されている蓄熱槽には、蓄熱モード用と熱出力モード用の2系統の伝熱管が必要とされ、蓄熱槽が大型化し、かつ配管系統も複雑して高価になるという問題がある。
さらに、特許文献1の蓄熱モードにおいては、排ガスがボイラに供給されないため水蒸気が供給されないという問題がある。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、化学蓄熱材の劣化を防止して、蓄熱槽(反応槽)がシンプルで小型化し、かつシステムの配管系統もシンプルとなり、さらに蓄熱時においても熱源装置の排ガスの熱により水蒸気を生成して供給できる化学蓄熱システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る化学蓄熱システムは、コジェネレーションシステムに用いるものであって、
熱を発生する熱源装置と、該熱源装置の排ガスの熱により水蒸気を生成する水蒸気生成手段と、脱水反応により吸熱し、水蒸気との反応により発熱する化学蓄熱材が格納された反応槽と、該反応槽の前記化学蓄熱材と熱交換を行う熱交換器と、前記反応槽に連通して設けられ、水の凝縮と蒸発を行う凝縮蒸発器とを備え、
蓄熱時においては、前記熱交換器に前記水蒸気生成手段によって生成された水蒸気を供給して、前記化学蓄熱材を加熱して蓄熱し、
放熱時においては、前記熱交換器に加熱する水を供給すると共に、前記凝縮蒸発器から水蒸気を前記化学蓄熱材に供給して前記化学蓄熱材の発熱によって前記熱交換器に供給された水を加熱して水蒸気を生成するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記凝縮蒸発器における水を蒸発させる熱源として、前記水蒸気生成手段で発生する排ガスを利用するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記凝縮蒸発器における水を蒸発させる熱源として、前記熱源装置のジャケット水を利用するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る化学蓄熱システムにおいては、蓄熱時において排ガスよりも低温の水蒸気によって蓄熱することから、化学蓄熱材の耐久性が向上し、さらに蓄熱時においても熱源装置の排ガスの熱により水蒸気を生成して供給できる。
また、化学蓄熱材は蓄熱時には水蒸気と熱交換し、放熱時には水(温水)と熱交換するため、蓄熱時及び放熱時に使用する熱交換の伝熱管を共通化することができ、反応槽の構造をシンプルにして小型化することができ、システムの配管系統もシンプルにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態の化学蓄熱システムの概略構成と配管系統を説明する図である(蓄熱時)。
図2】本発明の実施の形態の化学蓄熱システムの概略構成と配管系統を説明する図である(放熱時)。
図3】本発明の実施の形態の化学蓄熱システムの反応槽と凝縮蒸発器の作用を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態の化学蓄熱システムの他の態様の概略構成と配管系統を説明する図である(蓄熱時)。
図5】本発明の実施の形態の化学蓄熱システムの他の態様の概略構成と配管系統を説明する図である(放熱時)。
図6】本発明の実施の形態における自動運転方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施の形態に係るコジェネレーションシステムに用いる化学蓄熱システムについて、図1図2に基づいて説明する。なお、図1は蓄熱時の状態を、図2は放熱時の状態をそれぞれ示しているが、まず図1に基づいて本システムを構成する主な機器を説明する。
【0013】
本実施の形態の化学蓄熱システム1は、図1に示すように、熱源装置としてのエンジン3と、水蒸気生成手段としての排ガスボイラ5と、化学蓄熱材7が格納される反応槽9と、反応槽9内に設けられた第1熱交換器11(本発明の熱交換器に相当)と、凝縮蒸発器13とを備えている。
以下、各構成機器とこれに関連する機器について詳細に説明する。
【0014】
<エンジン>
エンジン3は、熱源装置の一態様であって、発電装置の駆動装置として電力及び熱を発生させる装置である。ガスエンジンが、熱と電力の両方を発生させることで、コジェネレーションシステムが構成されている。
【0015】
エンジン3の排ガスは、排ガスボイラ5に供給されて水蒸気を発生させて、排ガスの熱の利用が行われる。
エンジン3の種類としては、ガスエンジンやディーゼルエンジン等がある。
なお熱源装置としては、ジャケット水を必要としない、ガスタービン59も利用できる(図4、5参照)。
【0016】
エンジン3には、冷却のためのジャケット水が供給され、供給されたジャケット水は温水となってポンプ15によって送水されて、温水利用施設で利用されたり、放熱用冷却塔に供給されて放熱されたりして、エンジン3に戻される。
ジャケット水の送水管17と戻り水管19には、分岐管21が接続され、分岐管21には放熱熱源熱交換器23が設けられている。分岐管21には、バルブ(V301)が設けられている。
【0017】
<排ガスボイラ>
排ガスボイラ5は、水蒸気生成手段の一態様であり、エンジン3の排ガスを利用して水蒸気を発生するものである。
排ガスボイラ5で発生した水蒸気は、蒸気ヘッダ25を経て蒸気利用施設に送られて利用され、環水は環水タンク27を経て排ガスボイラ5に戻される。蒸気ヘッダ25には、後述する自動運転に用いる蒸気ヘッダ入り口圧力を計測する圧力計29が設けられている。
なお、排ガスボイラ5や反応槽9で生成される水蒸気では不足する場合に備えて、補助ボイラ31が設けられることがある。補助ボイラ31は、環水タンク27からの送水を加熱して水蒸気にして蒸気ヘッダ25に送出する。
【0018】
<反応槽>
反応槽9は、脱水反応により吸熱し、水蒸気との反応により発熱する化学蓄熱材7を格納するものである。反応槽9には、化学蓄熱材7との熱交換を行う第1伝熱管33を備えた第1熱交換器11が設けられている。第1熱交換器11の詳細は後述する。
【0019】
化学蓄熱材7は、化学的な反応により吸熱および発熱するものであり、化学蓄熱材との反応媒体は水蒸気を用いるのが環境負荷や安全性の点で実用的である。化学蓄熱材と水蒸気との反応様式は、ゼオライト等の固体表面への吸着、酸化マグネシウム等の金属酸化物の水酸化物形成反応、塩化カルシウム等の金属塩の水和反応等が挙げられる。
【0020】
<第1熱交換器>
第1熱交換器11は、反応槽9内に配設されて、第1伝熱管33を流れる水蒸気と化学蓄熱材7との間では、蓄熱時の熱交換を行い、第1伝熱管33を流れる水と化学蓄熱材7との間では放熱時の熱交換を行う。
このように、第1熱交換器11は蓄熱時と放熱時の両方で機能するものであり、蓄熱時と放熱時で異なるものを使用する従来例に比較して、装置を簡略化して小型化できる。
【0021】
第1熱交換器11の第1伝熱管33には、一端が第1伝熱管33に接続され他端が蒸気ヘッダ25に接続され、内部を水蒸気が流通する蒸気流通管35が接続されている。蒸気流通管35には、バルブ(V101)、バルブ(V102)が設けられている。
また、第1伝熱管33には、一端が第1伝熱管33に接続され他端が環水タンク27に接続され、内部を水が流通する水流通管37が接続されている。水流通管37は途中で2経路に分岐して、一つの経路37aにはポンプ39とバルブ(V104)が設けられ、他の経路37bにはバルブ(V103)が設けられている。
【0022】
<凝縮蒸発器>
凝縮蒸発器13は、切替バルブ(VCHP)を有する連通管41を介して反応槽9と連通するように設けられ、水の凝縮と蒸発を行うものである。凝縮蒸発器13は、密閉された容器43と、容器43内部に第2熱交換器45と、容器43内の水位を計測する水位計47と、容器43内の圧力を計測する圧力計49を備えている。
容器43内は、真空ポンプ51によって抜気して低圧にすることができる。
【0023】
凝縮蒸発器13は、蓄熱時には反応槽9で発生する水蒸気を受け入れて凝縮して水として貯留し、放熱時には、第2熱交換器45によって容器43内の水から水蒸気を発生させて反応槽9に供給する。
第2熱交換器45の第2伝熱管53には、冷却塔との間で循環する冷却塔循環配管55と、放熱熱源熱交換器23との間で循環する放熱熱源熱交換器循環配管57が接続されている。
冷却塔循環配管55と放熱熱源熱交換器循環配管57には、バルブ(V201)、バルブ(V202)、バルブ(V203)、バルブ(V204)、バルブ(V205)が設けられている。
【0024】
上記のように構成された化学蓄熱システム1について、蓄熱時と放熱時の動作について説明する。
【0025】
<蓄熱時>
図1は蓄熱時の状態を示しており、図中の各バルブで白抜きのものが開の状態を、黒塗りのものが閉の状態を、それぞれ示している。
蓄熱時は、排ガスボイラ5で生成される水蒸気が余っている状態での運転モードである。
【0026】
蓄熱時には、エンジン3によって発電がされると共に、排ガスボイラ5にはエンジン3の排ガスが供給される。エンジン3のジャケット水は、温水利用施設又は放熱用冷却塔との間で循環し、分岐管21には送水されない。
排ガスボイラ5には、エンジン3の排ガスが供給され、排ガスボイラ5では排ガスの熱によって水蒸気が生成される。生成された水蒸気は、蒸気ヘッダ25を介して蒸気利用施設に送られ、利用された後、環水タンク27を介して排ガスボイラ5に戻される。
【0027】
反応槽9の第1熱交換器11には、蒸気ヘッダ25から蒸気流通管35を介して水蒸気が供給され、反応槽9内の化学蓄熱材7との間で熱交換され、温水となって環水タンク27に戻される。環水タンク27に戻された温水は、排ガスボイラ5に供給される。
反応槽9では、化学蓄熱材7に第1伝熱管33を介して伝熱され、蓄熱を行うと共に、水蒸気が発生する。
発生した水蒸気は、図3に示すように、連通管41を介して凝縮蒸発器13に供給される。凝縮蒸発器13には、冷却塔を循環する循環水が流通しており、凝縮蒸発器13に供給された水蒸気は第2熱交換器45によって熱交換されて凝縮して水になる。
【0028】
<放熱時>
図2は放熱時の状態を示している。
放熱時は、排ガスボイラ5で生成される水蒸気では足りない状態での運転モードである。
放熱時には、蓄熱時と同様に、エンジン3によって発電がされると共に、排ガスボイラ5にはエンジン3の排ガスが供給される。エンジン3のジャケット水は、温水利用施設又は放熱用冷却塔との間で循環すると共に、分岐管21を介して放熱熱源熱交換器23に供給される。
【0029】
排ガスボイラ5には、エンジン3の排ガスが供給され、排ガスボイラ5では排ガスの熱によって水蒸気が生成され、生成された水蒸気は、蒸気ヘッダ25を介して蒸気利用施設に送られ、利用された後、環水タンク27を介して排ガスボイラ5に戻される。この点は、蓄熱時と同様である。
【0030】
凝縮蒸発器13では、真空ポンプ51によって抜気されて内圧が低下した状態になっている。この状態で、第2熱交換器45に、放熱熱源熱交換器23で熱交換されて加熱された温水が供給され、容器43内の水が蒸発して水蒸気が発生する。発生した水蒸気は、連通管41を介して反応槽9に供給される。反応槽9に水蒸気が供給されると、化学蓄熱材7が発熱反応をする(図3参照)。
【0031】
反応槽9の第1熱交換器11には、環水タンク27から水流通管37を介して水(温水)が供給され、反応槽9内の発熱した化学蓄熱材7との間で熱交換され、水蒸気となって蒸気流通管35を介して蒸気ヘッダ25に供給される。蒸気ヘッダ25に供給された水蒸気は、蒸気利用施設に供給される。
放熱時には、排ガスボイラ5と反応槽9によって水蒸気が生成されるが、これでも足りない場合には、補助ボイラ31に環水タンク27の水を供給して水蒸気が生成される。
【0032】
以上のように、本実施の形態では、蓄熱時において排ガスよりも低温(約170℃)の水蒸気を熱源として化学蓄熱材7によって蓄熱することから、化学蓄熱材7の耐久性が向上する。
また、化学蓄熱材7は蓄熱時には水蒸気と熱交換し、放熱時には水(温水)と熱交換するため、蓄熱時及び放熱時に使用する熱交換の第1伝熱管33を共通化することができ、反応槽9の構造をシンプルにして小型化することができ、システムの配管系統もシンプルにすることができる。
さらに、蓄熱時においても熱源装置の排ガスの熱により水蒸気を生成して供給できる。
【0033】
また、本実施の形態では、放熱時における凝縮蒸発器13に供給する熱源として、エンジン3のジャケット水の温水を利用しているので、通常であれば、利用価値の少ない温水を効果的に利用できる。
【0034】
なお、上記の説明では、熱源装置としてエンジン3を用いたものであり、放熱時における凝縮蒸発器13に供給する熱源として、エンジン3のジャケット水の温水を利用する例であったが、熱源装置としてガスタービン59を用いた場合には、ジャケット水がないので、この場合には、排ガスボイラ5の排ガスを、放熱時における凝縮蒸発器13に供給する熱源として利用するようにすればよい。
この場合の配管系統は、図4(蓄熱時)、図5(放熱時)に示す通りであり、放熱熱源熱交換器23に、排ガスボイラ5の排ガスを供給する排ガス供給管61を設けるようにすればよい。
【0035】
蓄熱時及び放熱時の運転モードの切替や、運転の開始や停止は運転状況を遠隔で監視している場合はオペレータが手動で行うようにしてもよいが、図示しない制御装置によって自動的に行うようにしてもよい。
以下においては、制御装置によって行う自動運転方法について図6に基づいて概説する。
【0036】
図6は、蓄熱時と放熱時のそれぞれについて、蓄熱の開始と停止、放熱の開始と停止を行う条件と、その場合の配管系統におけるバルブの開閉制御を示したものである。
蓄熱運転を行うか放熱運転を行うかは、当該コジェネレーションシステムが設置されている施設の熱需要の状況に基づいて、時間帯の設定で行う。すなわち、熱需要が多い時間帯(例えば、午前8時〜午後6時)は放熱運転とし、熱需要の少ない時間帯(例えば、午後6時以降午前8時まで)は蓄熱運転とする。
【0037】
蓄熱運転、放熱運転のいずれの運転モードであっても、運転の開始と停止を自動で行うが、これは凝縮蒸発器13の水位と、蒸気ヘッダ入口圧力(P1)と、凝縮蒸発器13の圧力(P2)に基づいて行う。このため、水位計47と圧力計49を凝縮蒸発器13に、圧力計29を蒸気ヘッダ25にそれぞれ設け、これらの計測値を図示しない制御装置に入力するようにしている。具体的な制御は以下のように行う。
【0038】
<蓄熱運転(系統は図1参照)>
《開始》
凝縮蒸発器13の水位が予め設定した最低水位(LL)よりも低く、かつ蒸気ヘッダ入口圧力(P1)が一定時間(例えば、3分)継続して予め設定した設定値(P0)よりも大きい場合には、蓄熱運転を開始する。
蓄熱運転の開始に際しては、以下のStep1〜Step3に示すようにバルブの開閉を行う。
・Step1
V202、V203、V204を開、V201、V205を閉として、凝縮蒸発器13へ冷却塔の冷水を循環供給する。
・Step2
凝縮蒸発器13の圧力P2が所定圧力以下になるとVCHPを開にする。
・Step3
V101、V102、V103を開、V104を閉として、反応槽9に蒸気ヘッダ25の水蒸気を供給する。
【0039】
《停止》
凝縮蒸発器13の水位が予め設定した最高水位(HL)を超えると蓄熱運転を停止する。
蓄熱運転の停止に際しては、以下のStep1〜Step2に示すようにバルブの開閉を行う。
・Step1
VCHPを閉にする。
・Step2
V101〜V104を閉にして、反応槽9への水蒸気の供給を停止する。
【0040】
<放熱運転(系統は図2参照)>
《開始》
凝縮蒸発器13の水位が予め設定した最低水位(LL)より高く、かつ蒸気ヘッダ入口圧力(P1)が一定時間(例えば、3分)継続して予め設定した設定値(P0)よりも小さい場合には、放熱運転を開始する。
放熱運転の開始に際しては、以下のStep1〜Step3に示すようにバルブの開閉を行う。
・Step1
V201、V205、V301を開、V202、V203、V204を閉として、凝縮蒸発器13へ放熱熱源熱交換器23で加熱された温水を循環供給する。
・Step2
凝縮蒸発器13内で蒸気が発生し、凝縮蒸発器13内の圧力P2が所定圧力以上になるとVCHPを開にする。
・Step3
V101、V102、V104を開、V103を閉として、反応槽9に環水タンク27の水を供給する。
【0041】
《停止》
凝縮蒸発器13の水位が予め設定した最低水位(LL)よりも低くなると放熱運転を停止する。
放熱運転の停止に際しては、以下のStep1〜Step3に示すようにバルブの開閉を行う。
・Step1
V101〜V104を閉にして、反応槽9への給水を停止する。
・Step2
VCHPを閉にする。
・Step3
V301を閉にして、放熱熱源熱交換器23へのジャケット水の供給を停止することで、凝縮蒸発器13への温水の供給を停止する。
【符号の説明】
【0042】
1 化学蓄熱システム
3 エンジン
5 排ガスボイラ
7 化学蓄熱材
9 反応槽
11 第1熱交換器
13 凝縮蒸発器
15 ポンプ
17 送水管
19 戻り水管
21 分岐管
23 放熱熱源熱交換器
25 蒸気ヘッダ
27 環水タンク
29 圧力計(蒸気ヘッダ)
31 補助ボイラ
33 第1伝熱管
35 蒸気流通管
37 水流通管
37a、b 経路
39 ポンプ
41 連通管
43 容器
45 第2熱交換器
47 水位計
49 圧力計(凝縮蒸発器)
51 真空ポンプ
53 第2伝熱管
55 冷却塔循環配管
57 放熱熱源熱交換器循環配管
59 ガスタービン
61 排ガス供給管
図1
図2
図3
図4
図5
図6