(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水素化処理工程において、水素と結合し得る還元材を前記ほう酸塩とともに同時に処理する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
前記水素化処理工程の前に、テトラヒドロほう酸塩と水とを反応させて前記ほう酸塩を得るほう酸塩調製工程をさらに備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
前記予備加熱工程の前に、テトラヒドロほう酸塩と水とを反応させて前記ほう酸塩を得るほう酸塩調製工程をさらに備える、請求項9に記載のテトラヒドロほう酸塩の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。図中のX方向及びY方向が水平方向であり、Z方向が垂直方向である。
【0022】
<テトラヒドロほう酸塩の製造方法>
図1は、テトラヒドロほう酸塩の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示される方法MTは、ほう酸塩を原料としてテトラヒドロほう酸塩を製造する方法である。方法MTは、ほう酸塩調整工程(ステップS10)、予備加熱工程(ステップS12)、及び、水素化処理工程(ステップS14)を有する。
【0023】
方法MTにおいて、ほう酸塩調整工程(ステップS10)及び予備加熱工程(ステップS12)は、必ずしも実行する必要はなく、必要に応じて実行される。このため、最初に水素化処理工程(ステップS14)を説明し、次に、ほう酸塩調整工程(ステップS10)及び予備加熱工程(ステップS12)を説明する。
【0024】
(水素化処理工程:ステップS14)
水素化処理工程は、ほう酸塩を粉砕しつつ水素プラズマにさらす工程である。ほう酸塩は、例えば、メタほう酸塩、四ほう酸塩、又は、五ほう酸塩である。メタほう酸塩は、一例として、NaBO
2、KBO
2、LiBO
2、Ca(BO
2)
2、又は、Mg(BO
2)
2である。四ほう酸塩は、一例として、Na
2B
4O
7、Na
2O・2BO
3、K
2O・B
2O
3、Li
2B
4O
7、又は、Mg
3B
4O
9である。五ほう酸塩は、一例として、NaB
5O
8、Na
2O・5B
2O
3、KB
5O
8、K
2O・5B
2O
9、又は、LiB
5O
8である。ほう酸塩は、天然のほう酸塩鉱物であるNa
2B
4O
7・10H
2O、Na
2B
4O
7・4H
2O、Ca
2B
6O
11・5H
2O、CaNaB
5O
9・6H
2O、Mg
7Cl
2B
17O
30などとしてもよい。入手容易性、入手コスト、化学的安定性、水素脱着容易性、水素貯蔵密度などの観点から、ほう酸塩として上述した例の中からメタほう酸ナトリウム(NaBO
2)を選択してもよい。
【0025】
ほう酸塩は固体であり、形状は特に限定されない。ほう酸塩は、粉末状としてもよい。粉末状のほう酸塩の平均粒子径は、500μm以下とすることができる。粉末状のほう酸塩の平均粒子径は、100 μm以下であってもよい。粉末状のほう酸塩の平均粒子径の下限は、特に限定されないが、5 μmとすることができる。粉末状のほう酸塩を用いることにより、粉砕処理の処理時間が短縮され、後述するプラズマ処理の効率も向上する。
【0026】
水素化処理工程では、ほう酸塩の粉砕処理が行われる。粉砕処理は、ほう酸塩を微細な粉末とする処理である。粉砕処理は、一例としてボールミルが用いられる。ボールミルにおいては、ほう酸塩と粉砕メディアとが同一容器内に収容され、粉砕メディアの衝突により、ほう酸塩が粉砕される。なお、本実施形態において、ボールミルとは広義のボールミル(粉体工学便覧第2版参照)を意味し、いわゆる転動ボールミル(ポットミル、チューブミル及びコニカルミル)、振動ボールミル(円振動型振動ミル、旋回型振動ミル及び遠心ミル)、並びに遊星ミルを含む概念である。
【0027】
水素化処理工程においては、水素プラズマ処理として、粉砕処理中のほう酸塩を水素プラズマにさらす。水素プラズマは、極めて活性の高い水素ラジカル(Hラジカル)や水素イオンを含む。ほう酸塩が水素プラズマにさらされることにより、ほう酸塩が有する酸素原子の結合部が切断され、酸素原子が除去される。そして、酸素原子が結合していた電子対に水素原子が結合することで、ほう酸塩の水素化が行われる。例えば、ほう酸塩としてメタほう酸ナトリウムを用いた場合、本工程にて以下の反応(1)が生じると考えられる。
NaBO
2+4H
2→NaBH
4+2H
2O (1)
【0028】
水素プラズマ処理に用いる水素プラズマは、水素(H)を構成元素として含有するガスを用いて生成される。例えば、水素プラズマは、水素ガス及び炭化水素ガスの少なくとも一種を含む原料ガスを用いて生成することができる。炭化水素ガスは、一例として、CH
4ガス、C
2H
2ガス、又は、C
6H
6ガスである。炭化水素のように水素よりも酸化しやすい元素を含むガスを用いた場合、ほう酸塩の酸素原子の除去が促進される。これにより、テトラヒドロほう酸塩の製造速度の向上が見込まれる。水素プラズマは、NH
3ガスなどを用いて生成されてもよい。
【0029】
原料ガスは、一酸化炭素などのような水素よりも酸化し易い元素を含むガスを含んでもよい。この場合、炭化水素ガスを採用した場合と同様に、ほう酸塩の酸素原子の除去が促進される。これにより、テトラヒドロほう酸塩の製造速度の向上が見込まれる。
【0030】
原料ガスは、アルゴンガス、ヘリウムガス、ネオンガスなどのような、水素との組み合わせにおいてペニング効果が生じるガスを含んでもよい。この場合、水素プラズマのプラズマ濃度を高く保つことができるとともに、水素プラズマを安定的かつ広範囲に発生させることができる。これにより、テトラヒドロほう酸塩の製造速度の向上が見込まれる。
【0031】
水素プラズマ処理は、一例として、半導体プロセスなどに一般的に使用されるプラズマ生成装置を用いて実施することができる。ほう酸塩及び原料ガスが供給される処理容器は、例えば、10〜150Pa程度に減圧される。圧力を上記範囲に制御することにより、プラズマ密度の高い水素プラズマを発生させることができる。
【0032】
水素プラズマは、低周波プラズマ(1〜100 kHzの変動電圧によって励起されたプラズマ)、マイクロ波プラズマ(マイクロ波によって励起されたプラズマ)及びRFプラズマ(RF(Radio Frequency)によって励起されたプラズマ)のいずれであってもよい。これらのプラズマは、パルス励起されたプラズマであってもよく、直流励起されたプラズマであってもよい。
【0033】
低周波プラズマを励起させる変動電圧の周波数は、被処理物や粉砕メディアの量や状態及び処理容器の形状や大きさなどによって最適値が選択され得る。変動電圧は、一例として可変周波数電源などを用いて調整される。低周波プラズマは簡易な構成で実現することができるため、装置コスト及び運用コスト共に安価に抑えることができる。
【0034】
マイクロ波プラズマの励起に用いられるマイクロ波の周波数は、例えば、産業上使用可能な周波数帯であり、かつ、プラズマ密度の高い熱非平衡な水素プラズマを生成可能な周波数帯である1GHz以上に設定され得る。熱的に非平衡なプラズマは、いわゆる低温プラズマである。一例として、周波数2.45GHzのマイクロ波が用いられる。
【0035】
マイクロ波プラズマを励起する際の電力は、300 W以上とすることができる。また、ほう酸塩をプラズマ処理する処理時間は、ほう酸塩の量やプラズマ密度にも依存するが、例えば1時間以下とすることができ、0.5時間以下としてもよい。
【0036】
マイクロ波を用いてマイクロ波プラズマを励起する場合、プラズマ密度が高く広範囲の水素プラズマが発生する。このため、テトラヒドロほう酸塩の製造速度を速めることができる。
【0037】
また、上述した反応(1)のとおり、ほう酸塩から解離した酸素原子が水素プラズマと反応して水が生成される。マイクロ波を用いてマイクロ波プラズマを励起する場合、反応(1)で生成された水をマイクロ波によって効果的に加熱蒸発あるいは電離させることができる。このため、製造されたテトラヒドロほう酸塩と水とが反応してほう酸塩に戻る逆反応を抑制することができる。これにより、テトラヒドロほう酸塩の製造速度を速めることができる。
【0038】
RFプラズマの生成に用いられる励起周波数は、法規制の観点から日本国内では13.56 MHzが一般的であるが、これに限定されない。RFプラズマは産業界で広く用いられているプラズマであるため、装置コスト及び運用コスト共に安価に抑えることができる。RFプラズマにより広範囲の水素プラズマが発生するため、テトラヒドロほう酸塩の製造速度を速めることができる。
【0039】
水素プラズマは、熱平衡プラズマであってもよい。これにより、水素プラズマのプラズマ密度及びイオン温度を高くすることができるので、ほう酸塩の酸素原子の結合部を切断して酸素原子を解離する効果が高くなる。これにより、テトラヒドロほう酸塩の製造速度を速めることができる。なお、熱平衡水素プラズマは、高温プラズマともいう。熱平衡プラズマを用いてほう酸塩を処理する場合、反応(1)で生成された水を高エネルギーにより効果的に蒸発あるいは電離させることができる。このため、製造されたテトラヒドロほう酸塩と水とが反応してほう酸塩に戻る逆反応を抑制することができる。これにより、テトラヒドロほう酸塩の製造速度を速めることができる。
【0040】
低周波プラズマ及びRFプラズマは、誘電体バリア放電によって生成されたプラズマであってもよい。誘電体バリア放電では、少なくとも一対の電極間に配置された絶縁体(誘電体)を介して気体に交流電圧を印加して放電させる。
【0041】
水素プラズマは、プラズマジェットとしてほう酸塩へ供給されてもよい。プラズマジェットは、プラズマをノズルから噴射することで実現し得る。
【0042】
水素化処理工程では、ほう酸塩を加熱しながら粉砕しつつ水素プラズマにさらしてもよい。加熱温度は、一例として40〜300℃とすることができる。ほう酸塩を加熱しながら粉砕しつつ水素プラズマにさらすことにより、反応(1)の逆反応を抑制することができる。なお、上記のとおりマイクロ波プラズマを用いる場合は、当該マイクロ波によって上述した逆反応の抑制効果を奏することができる。
【0043】
水素化処理工程では、水素と結合し得る還元材をほう酸塩とともに同時に処理してもよい。例えば、ほう酸塩は、還元材と共に粉砕されつつ水素プラズマにさられる。水素と結合し得る還元材は、ほう酸塩から解離する酸素原子をトラップし、酸素原子と水素とが反応して水が生成されることを抑制する。このため、反応(1)の逆反応を抑制することができる。還元材の一例は、マグネシウム(マグネシウム系材料)、アルミニウム(アルミニウム系材料)、鉄(鉄系材料)などの還元金属粉末や、炭素粉末である。なお、還元材を用いた場合には、後工程として、テトラヒドロほう酸塩と還元材に由来する不純物(主に金属酸化物)とを分離する工程が必要となる場合もある。しかしながら、還元材の作用により水の生成が抑制されるため、結果として水素化処理工程の効率は向上される。
【0044】
水素化処理工程では、吸湿材をほう酸塩とともに同時に処理してもよい。例えば、ほう酸塩は、吸湿材と共に粉砕されつつ水素プラズマにさらされる。吸湿材は、ほう酸塩から解離する酸素原子と水素プラズマとの反応によって生成される水分子をトラップする。このため、反応(1)の逆反応を抑制することができる。吸湿材の一例は、生石灰、シリカゲル、ベントナイト、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどである。吸湿材の作用により水の生成が抑制されるため、水素化処理工程の効率は向上される。
【0045】
(予備加熱工程:ステップS12)
方法MTは、水素化処理工程前に、ほう酸塩を加熱する予備加熱工程をさらに備えてもよい。予備加熱工程は、ほう酸塩の種類や量に依存するが、例えば40〜300℃にて0.1〜1時間の条件にて実施することができる。予備加熱工程により、ほう酸塩水和物が結晶水として含む水を予め除去することができる。この場合、水素化処理工程において反応(1)の逆反応の原因となる水分が存在しない状況となるため、水素化処理工程の水素プラズマ処理の効率を向上できる。このため、予備加熱工程によって、テトラヒドロほう酸塩を製造する速度を速めることができる。
【0046】
(ほう酸塩調製工程:ステップS10)
方法MTは、水素化処理工程前に(予備加熱工程を設ける場合は予備加熱工程前に)、テトラヒドロほう酸塩と水とを反応させてほう酸塩を得るほう酸塩調製工程をさらに備えてもよい。テトラヒドロほう酸塩を水素キャリアとして用い、水素の需要場にてテトラヒドロほう酸塩に水を加えることにより水素を取出して使用した後、その化学反応において生じた残渣であるほう酸塩を水素供給場に戻して再度水素化することで、テトラヒドロほう酸塩を再生することができる。脱水素と再水素化を繰り返し生じさせて水素を輸送貯蔵できるので、安価に水素を輸送貯蔵することが可能になる。例えば、テトラヒドロほう酸塩としてテトラヒドロほう酸ナトリウムを用いた場合、本工程にて以下の反応(2)が生じると考えられる。
NaBH
4+2H
2O→NaBO
2+4H
2 (2)
反応(2)は、反応(1)の逆反応である。
【0047】
以上で
図1に示される方法MTのフローチャートの説明を終了する。
図1に示される方法MTにより、ほう酸塩調製工程(ステップS10)、予備加熱工程(ステップS12)及び水素化処理工程(ステップS14)が順に実行される。なお、方法MTは、水素化処理工程(ステップS14)のみ実行してもよいし、ほう酸塩調製工程(ステップS10)及び水素化処理工程(ステップS14)のみ実行してもよいし、予備加熱工程(ステップS12)及び水素化処理工程(ステップS14)のみ実行してもよい。
【0048】
<製造されるテトラヒドロほう酸塩>
方法MTによって製造されるテトラヒドロほう酸塩の一例は、上記に例示したほう酸塩に対応する水素化物である。例えば、ほう酸塩としてメタほう酸塩を用いた場合、テトラヒドロほう酸塩は、NaBH
4、KBH
4、LiBH
4、Ca(BH
4)
2、Mg(BH
4)
2などとなる。
【0049】
方法MTにより得られるテトラヒドロほう酸塩は、下記一般式(A)又は(B)で表される組成を有する。
M
xB
yH
z (A)
N
sB
tH
u (B)
式(A)中、MはLi、Na及びKからなる群より選択される少なくとも一種であり、xは0.05以上1.0未満であり0.5以上1.0未満であってもよく、yは0.6以上1.0未満であり、zは4.0である。式(B)中、NはCa及びMgからなる群より選択される少なくとも一種であり、sは0.05以上1.0未満であり0.5以上1.0未満であってもよく、tは1.2以上2.0未満であり、uは8.0である。
【0050】
このように、方法MTによれば、化学量論組成からずれた組成を有するテトラヒドロほう酸塩が得られる。この理由は定かではないが、水素化に際し水素プラズマを用いることで、プラズマを構成する粒子によりホウ酸塩中の一部元素(Li,Na,K,Ca,Mg等)が外部にはじき出されるという現象が生じているのではないかと推察される。
【0051】
つまり、このようなテトラヒドロほう酸塩は、ほう酸塩のプラズマ処理物(混合物)中に存在するといえる。よって、テトラヒドロほう酸塩の組成分析をすることで、テトラヒドロほう酸塩が方法MTによって得られたものであるか否かを検知することができる。すなわち、上記式(A)及び(B)で表される組成を有するテトラヒドロほう酸塩は、方法MTの使用の有無を判別するためのマーカーとして使用することができる。
【0052】
<製造方法の作用効果>
方法MTによれば、水素化処理工程(ステップS14)において、プラズマの高い活性によるほう酸塩の水素化反応促進に加え、粉砕処理を同時に施すことにより、メカノケミカル反応によるほう酸塩のさらなる水素化促進効果が得られる。粉砕メディアの衝突により生じる局所的な高エネルギー場によって引き起こされるメカノケミカル効果により、ほう酸塩が有する酸素原子の結合部が切断されて酸素原子が除去され、また酸素原子が結合していた電子対に水素原子が結合することで、ほう酸塩の水素化が行われる。さらに、プラズマ処理とメカノケミカル処理とを同時に実現することで、プラズマによってあらかじめ高いエネルギー場が提供されている反応場中に、粉砕メディアの衝突によって生じる局所的な高エネルギー場が重畳される。これにより、方法MTによれば、従来方法にない高い局所的高エネルギー場が実現される。よって、方法MTは、従来方法と比較してより強力なほう酸塩の水素化促進効果を得ることができる。
【0053】
また、方法MTによれば、水素化処理工程(ステップS14)において、ほう酸塩を水素化するための反応容器を高温高圧に保つ必要がない。このため、方法MTでは、外部から大量のエネルギーを投入し続ける必要がない。方法MTでは、水素プラズマを用いることにより、従来方法と比較して処理時間が大幅に短くなるため、生産性を向上させることができる。そのため、方法MTは、テトラヒドロほう酸塩を高速かつ大量に製造することができる。
【0054】
さらに、方法MTによれば、水素化処理工程(ステップS14)において、マグネシウムやアルミニウム等の還元金属(還元材)を必須としない。そのため、方法MTでは、還元金属の原材料コストが不要となり、従来方法と比較して格段に低コストを実現することができる。また、マグネシウムやアルミニウム等の還元金属を使った水素化プロセスの場合、処理後の被処理物中ではテトラヒドロほう酸塩と酸化金属(酸化マグネシウムや酸化アルミニウム)とが混在した状態となる。そのため、還元金属を必須とする従来方法においてはこれらの分離処理が別途必要となり、製造コストが高くなるだけでなく、製造時間が長くなる問題がある。一方、方法MTによれば、そのような問題が生じない。ただし、上記記載は、方法MTにおいて、還元金属の使用を排除するものではない。
【0055】
水素化処理工程(ステップS14)は、半導体プロセスなどに一般的に使用される装置を用いることができるため、装置コスト及び運用コスト共に安価に抑えることができる。
【0056】
以上、水素化処理工程(ステップS14)を備える方法MTは、低コストかつ高生産性を実現することができるため、産業応用に適する。
【0057】
<製造装置>
以下では、方法MTに用いられる製造装置を説明する。開示する製造装置は、方法MTを実現する装置の一例であり、方法MTは本開示の製造装置の使用を前提とはしない。
【0058】
図2は、テトラヒドロほう酸塩の製造装置の一例を示す模式図(正面図)である。
図3は、テトラヒドロほう酸塩の製造装置の一例を示す模式図(側面図)である。
図2及び
図3に示す製造装置1は、ボールミルによる粉砕処理と、プラズマ処理とを同一容器内で実施可能な装置である。
【0059】
製造装置1は、ボールミル容器2を有する。ボールミル容器2は、粉砕メディア及びほう酸塩を収容する処理室を内部に有する。処理室は、粉砕処理とプラズマ処理とが行われる密閉可能な空間である。処理室は、粉砕メディア及びほう酸塩の収容時に開放される。処理室の詳細は後述する。ボールミル容器2は、一例として円筒状の耐熱及び耐圧容器である。ボールミル容器2の材質は、ほう酸塩の水素化反応に影響を及ぼさず、水素脆化の影響が少ない金属材料(鋼材)とすることができる。
【0060】
ボールミル容器2は、架台3a,3bを介して回転可能に支持されている。ボールミル容器2の両端面2a,2bのそれぞれの中心部には、ボールミルシャフト4a,4bが連結されている。ボールミルシャフト4a,4bは、図中X方向に延在する回転軸線Mに沿ってそれぞれ設けられている。ボールミルシャフト4a,4bは、架台3a,3bに支持された軸受5a,5bによって、それぞれ回転可能に支持される。
【0061】
製造装置1は、ボールミル容器2を回転させる駆動部6を備える。駆動部6は、ボールミル容器2を回転させることによりほう酸塩を粉砕する。駆動部6は、モータ7と、プーリ8a,8bと、駆動ベルト9とを備える。モータ7は、駆動源であり、回転駆動軸であるモータシャフト7aを有する。プーリ8aはモータシャフト7aに設けられ、プーリ8bはボールミルシャフト4aに設けられる。駆動ベルト9は、プーリ8a,8bの外周に掛けられる。モータシャフト7aの回転力は、駆動ベルト9を介してボールミルシャフト4aに伝えられる。これにより、ボールミルシャフト4aに連結されているボールミル容器2が回転する。ボールミル容器2の内部の処理室では、ボールミル容器2の回転により粉砕メディアによる摩砕力及び衝撃力が発生する。これにより、ほう酸塩がメカノケミカル処理される。
【0062】
ボールミル容器2の外周には、隙間を空けてヒータ10が設けられている。ヒータ10は、円筒状を呈し、その内部にボールミル容器2が配置される。ヒータ10は、ボールミル容器2を支持する架台3a,3bとは異なる架台3cによって支持されている。このため、ボールミル容器2は、静止したヒータ10の内部において回転する。ヒータ10は図示しない電源に接続され、ボールミル容器2を外側から加熱することにより、処理室の温度調整を行う。
【0063】
製造装置1は、処理室の雰囲気(ガス種、圧力)を調整する雰囲気調整部11を備える。雰囲気調整部11は、ガス供給部11aとガス排気部11bとを有する。ガス供給部11aは、処理室へ原料ガスを供給し、処理室を原料ガスの雰囲気とする。ガス供給部11aは、原料ガスの図示しないガスソースに接続され、ガスソースから処理室へ原料ガスを供給する。ガスソースは、炭化水素ガス、水素ガス、水素混合ガスなどのソースである。ガス排気部11bは、図示しない真空ポンプを有し、処理室のガスを排気して処理室を減圧する。
【0064】
ボールミルシャフト4bは中空である。ボールミルシャフト4bの内部には、ガス供給路12及びガス排出路13が配置される。ガス供給路12は、ガス排出路13の内部に設けられる。つまり、ガス供給路12が内側、ガス排出路13が外側となる二重配管を構成する。ガス供給部11aは、ガス供給路12を介して処理室へ原料ガスを供給する。ガス排気部11bは、ガス排出路13を介して処理室の圧力を調整する。
【0065】
ガス排気部11bとガス供給部11aとは、冷却コンデンサ11cを介して接続されている。冷却コンデンサ11cは、排気されたガスから原料ガスと水分とを分離する。ガス排気部11bにより排気されたガスは、冷却コンデンサ11cにより原料ガスと水分とに分離され、原料ガスのみがガス供給部11aへと戻される。このように、原料ガスは循環される。
【0066】
ボールミル容器2には、水素プラズマを生成するプラズマ生成部が設けられる。プラズマ生成部は、電源14から電圧が印加されることにより、水素プラズマを生成する。プラズマ生成部は、以下に説明するとおり、種々の態様で設けられる。
【0067】
<第1プラズマ生成部>
図4は、第1プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図3のA−A断面図である。
図5は、第1プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図2のB−B断面図である。
図4及び
図5に示されるように、ボールミル容器2の内部には、処理室2dが画成される。処理室2dには、粉砕メディアMD及びほう酸塩Wが収容される。
【0068】
第1プラズマ生成部15は、誘電体部材16と、一対の電極17と、絶縁体18とを備える。第1プラズマ生成部15は、ボールミル容器2の内壁上に絶縁体18、一対の電極17、誘電体部材16の順で積層され、積層体として構成される。
【0069】
絶縁体18は、ボールミル容器2の円周曲面内壁上に設けられる。絶縁体18は、ボールミル容器2の内壁の全面に設けられてもよい。絶縁体18は、一対の電極17の間を絶縁する。絶縁体18は、一対の電極17とボールミル容器2との間も電気的に絶縁する。絶縁体18の材料は、一例としてポリイミドや超高分子量ポリエチレンである。
【0070】
一対の電極17は、誘電体部材16に接続され、電源14(
図1)から電圧が印加される。一対の電極17は、誘電体部材16に接するように設けられる。電源14は、一例として1〜50kHzまで供給電圧の周波数を変更可能な可変電源である。電源14は、内容物の量や原料ガスの状態などに基づいて最適な周波数の電圧を供給する。電源14は、ボールミルシャフト4aに設けられた図示しないスリップリングを介して一対の電極17と電気的に接続する。一対の電極17は、第1電極171及び第2電極172を含み、絶縁体18の表面上に設けられる。第1電極171及び第2電極172は離間して配置され、直接導通しないように配置される。一対の電極17は、ボールミル容器2の円周上に複数配置され得る。複数の一対の電極17は、第1電極171及び第2電極172がボールミル容器2の円周上において等間隔に配置される。第1電極171及び第2電極172はそれぞれ櫛歯形状をしており、櫛歯が対称に組み合わせられるように配置される。一対の電極17の材料は、電気伝導性を有する金属などであり、一例として銅、真鋳、鉄、アルミなどである。なお、一対の電極17は、少なくとも一対の電極であればよい。例えば、一対の電極17は、3相電極として3対1組の電極であってもよい。
【0071】
誘電体部材16は、一対の電極17及び絶縁体18の表面上に設けられる。誘電体部材16の表面は処理室2dに面する。つまり、誘電体部材16は、処理室2dの内壁面の少なくとも一部を構成する。
図4,5の例では、誘電体部材16は、処理室2dの円周曲面内壁を構成する。誘電体部材16は、粉砕メディアMDが直接触れるため、耐摩耗性、耐熱性、耐電圧性に優れた材料が用いられる。誘電体部材16の材料は、樹脂系誘電体であり、一例としてポリイミドである。
【0072】
第1プラズマ生成部15は、原料ガスの雰囲気中の処理室2dにて電源14から印加された電圧に基づいた誘電体バリア放電により誘電体部材16の表面に水素プラズマPを生成する。これにより、第1プラズマ生成部15は、ボールミル容器2の回転中においてほう酸塩Wを水素プラズマPにさらす。
【0073】
<第2プラズマ生成部>
図6は、第2プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図3のA−A断面図である。
図7は、第2プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図2のB−B断面図である。
図6及び
図7に示されるように、ボールミル容器2の内部には、処理室2dが画成される。処理室2dには、粉砕メディアMD及びほう酸塩Wが収容される。
【0074】
第2プラズマ生成部15Aは、電圧が印加されることで水素プラズマのプラズマジェットを生成可能に構成される。第2プラズマ生成部15Aは、中空パイプ状の本体部20と、プラズマジェットノズル21とを有する。
【0075】
本体部20には、その内部空間に図示しない電極を有している。電極の材料は、電気伝導性を有する金属などであり、一例として銅、真鋳、鉄、アルミなどである。本体部20の内部空間には、ガス供給部11a(
図1)からガス供給路12を介して原料ガスが供給される。本体部20の電極には、電源14(
図1)から電圧が印加される。電源14は、一例として1〜50kHzまで供給電圧の周波数を変更可能な可変電源である。電源14は、内容物の量や原料ガスの状態などに基づいて最適な周波数の電圧を供給する。電源14は、ボールミルシャフト4aに設けられた図示しないスリップリングを介してプラズマジェットノズル21の電極と電気的に接続する。本体部20の材料は、例えば誘電体(一例として高純度アルミナ)である。本体部20では、電源14から印加された電圧及びガス供給部11aから供給された原料ガスに基づいてプラズマジェットが生成される。
【0076】
プラズマジェットノズル21は、本体部20の先端に設けられている。プラズマジェットノズル21は、ボールミル容器2の処理室2dの中心軸上に配置される。プラズマジェットノズル21は、中空パイプ形状を呈し、パイプ長さ方向へライン状に設けられた間欠穴を有する。この間欠穴から水素プラズマのプラズマジェットPJが噴出される。プラズマジェットノズル21は、処理室2dに収容された粉砕メディアMD及びほう酸塩Wの滞留箇所へプラズマジェットを噴射するように処理室2dに固定配置される。一例として、プラズマジェットノズル21の噴射角度は、粉砕メディアMDの運動エネルギーが最も大きくなる処理室2dの下部付近に噴射されるように設定される。プラズマジェットノズル21の材料は、例えば誘電体(一例として高純度アルミナ)である。
【0077】
プラズマジェットノズル21は、粉砕メディアMDが直接触れる可能性がある。このため、処理室2dの中心部を粉砕メディアMDが通過しないように粉砕メディアMDの量及びボールミル容器2の回転速度が調整されてもよい。
【0078】
第2プラズマ生成部15Aは、処理室2dにて電源14から印加された電圧に基づいて水素プラズマのプラズマジェットPJを生成する。これにより、第2プラズマ生成部15Aは、ボールミル容器2の回転中においてほう酸塩Wを水素プラズマにさらす。
【0079】
<第3プラズマ生成部>
図8は、第3プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図3のA−A断面図である。
図9は、第3プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図2のB−B断面図である。
図8及び
図9に示されるように、ボールミル容器2の内部には、処理室2dが画成される。処理室2dには、粉砕メディアMD及びほう酸塩Wが収容される。
【0080】
第3プラズマ生成部15Bは、一対の電極17Bと、絶縁体18Bとを備える。第3プラズマ生成部15Bは、ボールミル容器2の内壁上に絶縁体18B及び一対の電極17Bの順で積層され、積層体として構成される。
【0081】
絶縁体18Bは、ボールミル容器2の円周曲面内壁上に設けられる。絶縁体18Bは、ボールミル容器2の内壁の全面に設けられてもよい。絶縁体18Bは、一対の電極17Bの間を絶縁する。絶縁体18Bは、一対の電極17Bとボールミル容器2との間も電気的に絶縁する。絶縁体18Bの材料は、一例としてポリイミドや超高分子量ポリエチレンである。
【0082】
一対の電極17Bは、電源14(
図1)から電圧が印加される。電源14は、一例として、パルス電圧を供給可能な電源である。電源14は、例えば、パルス電圧の周期を1周期10msとし、デューティ比(通電と非通電との間隔)を1:9〜9:1の範囲で調整する。電源14は、内容物の量や原料ガスの状態などに基づいて最適なデューティ比のパルス電圧を供給する。電圧をパルス印加することにより、粉砕メディアMD間で生じるスパーク(プラズマ)の温度上昇を抑え、粉砕メディアMDが溶融固着することを防ぐことができる。電源14は、ボールミルシャフト4aに設けられた図示しないスリップリングを介して一対の電極17Bと電気的に接続する。一対の電極17Bは、第1電極171B及び第2電極172Bを含み、絶縁体18Bの表面上に設けられる。第1電極171B及び第2電極172Bは離間して配置され、直接導通しないように配置される。一対の電極17Bは、ボールミル容器2の円周上に複数配置され得る。複数の一対の電極17Bは、第1電極171B及び第2電極172Bがボールミル容器2の円周上において等間隔に配置される。第1電極171B及び第2電極172Bは、ボールミル容器2の中心軸の方向(円周方向に直交する方向)に沿って延在する。
【0083】
一対の電極17Bの表面は処理室2dに面する。つまり、一対の電極17Bは、処理室2dの内壁面の少なくとも一部を構成する。
図8,9の例では、一対の電極17Bは、処理室2dの円周曲面内壁の一部を構成する。一対の電極17Bの材料は、電気伝導性を有する金属などであり、一例として銅、真鋳、鉄、アルミなどである。なお、一対の電極17Bは、少なくとも一対の電極であればよい。例えば、一対の電極17Bは、3相電極として3対1組の電極であってもよい。
【0084】
なお、処理室2dには、図示しないリフタ部材が設けられることがある。リフタ部材は、処理室2dの内容物を容器の回転によって持ち上げるための部材であり、例えば処理室2dの内壁から中心に向かって立設された部材である。一対の電極17Bは、このようなリフタ部材の少なくとも一部を構成してもよい。
【0085】
粉砕メディアMDは、少なくともその表面が電気伝導性を有する。粉砕メディアMDは、処理室2dの円周曲面内壁の一部である一対の電極17Bと接触することで、一対の電極17B間の通電状態が変化する。ボールミル容器2の回転中においては、粉砕メディアMDは流動するため、一対の電極17B間の通電状態は次々と変化する。第3プラズマ生成部15Bは、原料ガスの雰囲気中の処理室2dにて電源14からパルス電圧が印加されることにより、ボールミル容器2の回転中において粉砕メディアMDの表面にスパーク状の水素プラズマPを生成する。これにより、第3プラズマ生成部15Bは、ボールミル容器2の回転中においてほう酸塩Wを水素プラズマPにさらす。
【0086】
<第4プラズマ生成部>
図10は、第4プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図3のA−A断面図である。
図11は、第4プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図2のB−B断面図である。
図10及び
図11に示されるように、ボールミル容器2の内部には、処理室2dが画成される。処理室2dには、粉砕メディアMD及びほう酸塩Wが収容される。
【0087】
第4プラズマ生成部15Cは、一対の電極17Cと、絶縁体18Cとを備える。第4プラズマ生成部15Cは、ボールミル容器2の内壁上に絶縁体18C及び一対の電極17Cの順で積層され、積層体として構成される。
【0088】
第4プラズマ生成部15Cは、第3プラズマ生成部15Bと比較して、一対の電極17Cの延在方向が相違し、その他の構成は同一である。第1電極171C及び第2電極172Cは、ボールミル容器2の中心軸に直交する方向(円周方向)に沿って延在する。なお、一対の電極17Cは、少なくとも一対の電極であればよい。例えば、一対の電極17Cは、3相電極として3対1組の電極であってもよい。
【0089】
第4プラズマ生成部15Cは、原料ガスの雰囲気中の処理室2dにて電源14からパルス電圧が印加されることにより、ボールミル容器2の回転中において粉砕メディアMDの表面にスパーク状の水素プラズマPを生成する。これにより、第4プラズマ生成部15Cは、ボールミル容器2の回転中においてほう酸塩Wを水素プラズマPにさらす。
【0090】
<第5プラズマ生成部>
図12は、第5プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図3のA−A断面図である。
図13は、第5プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図2のB−B断面図である。
図12及び
図13に示されるように、ボールミル容器2の内部には、処理室2dが画成される。処理室2dには、粉砕メディアMD及びほう酸塩Wが収容される。
【0091】
第5プラズマ生成部15Dは、一対の電極17Dと、絶縁体18Dとを備える。第5プラズマ生成部15Dは、ボールミル容器2の内壁上に絶縁体18D及び一対の電極17Dの順で積層され、積層体として構成される。
【0092】
第5プラズマ生成部15Dは、第3プラズマ生成部15Bと比較して、絶縁体18D及び一対の電極17Cの配置箇所が相違し、その他の構成は同一である。絶縁体18Dは、処理室2dの両端面と円周面との両方の内壁に配置される。絶縁体18Dは、処理室2dの両端面の内壁のみに配置されてもよい。第1電極171D及び第2電極172Dは、処理室2dの両端面の内壁において、ボールミル容器2の回転軸を囲うように環状に配置される。第1電極171D及び第2電極172Dは、回転方向に沿って交互に配置される。なお、一対の電極17Dは、少なくとも一対の電極であればよい。例えば、一対の電極17Dは、3相電極として3対1組の電極であってもよい。
【0093】
第5プラズマ生成部15Dは、原料ガスの雰囲気中の処理室2dにて電源14からパルス電圧が印加されることにより、ボールミル容器2の回転中において粉砕メディアMDの表面にスパーク状の水素プラズマPを生成する。これにより、第5プラズマ生成部15Dは、ボールミル容器2の回転中においてほう酸塩Wを水素プラズマPにさらす。
【0094】
<第6プラズマ生成部>
図14は、第6プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図3のA−A断面図である。
図15は、第6プラズマ生成部を有する製造装置を示す
図2のB−B断面図である。
図14及び
図15に示されるように、ボールミル容器2の内部には、処理室2dが画成される。処理室2dには、粉砕メディアMD及びほう酸塩Wが収容される。
【0095】
第6プラズマ生成部15Eは、一対の電極17Eと、絶縁体18Eとを備える。第6プラズマ生成部15Eは、ボールミル容器2の内壁上に絶縁体18E及び一対の電極17Eの順で積層され、積層体として構成される。
【0096】
第6プラズマ生成部15Eは、第5プラズマ生成部15Dと比較して、一対の電極17Eの形状及び配置箇所が相違し、その他の構成は同一である。第1電極171E及び第2電極172Eは、処理室2dの両端面の内壁において、ボールミル容器2の回転軸を囲うように同心円状に配置される。第1電極171E及び第2電極172Eは、半径方向に沿って交互に配置される。なお、一対の電極17Eは、少なくとも一対の電極であればよい。例えば、一対の電極17Eは、3相電極として3対1組の電極であってもよい。
【0097】
第6プラズマ生成部15Eは、原料ガスの雰囲気中の処理室2dにて電源14からパルス電圧が印加されることにより、ボールミル容器2の回転中において粉砕メディアMDの表面にスパーク状の水素プラズマPを生成する。これにより、第6プラズマ生成部15Eは、ボールミル容器2の回転中においてほう酸塩Wを水素プラズマPにさらす。
【0098】
製造装置1は、上述した第1プラズマ生成部15〜第6プラズマ生成部15Eのいずれか1つのプラズマ生成部を採用することができる。
【0099】
製造装置1は、上述した装置構成要素を統括する制御部100(
図2)を備える。制御部100は、例えば、プロセッサ、記憶部、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータである。制御部100の記憶部には、方法MTを実行するためのコンピュータプログラム、及び、方法MTの実行に用いられる各種のデータが、読出可能な状態で格納される。制御部100は、入力されたレシピに基づくプログラムに従って動作し、制御信号を送出する。製造装置1の各構成要素は、制御部100からの制御信号により制御される。方法MTの各工程は、制御部100による制御によって製造装置1の各構成要素を動作させることによって実行され得る。
【0100】
本開示の内容は、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。
【実施例】
【0101】
以下、実施例により本開示をさらに詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0102】
(実施例1)
図1〜
図5に示される製造装置1を用いて、テトラヒドロほう酸塩の製造を行った。ほう酸塩としてNaBO
2・4H
2O(メタほう酸ナトリウム四水和物:キシダ化学株式会社製、含量98質量%)を準備した。これをボールミルで粉砕処理しながら160℃で15分間加熱して結晶水を除去し、粒状のNaBO
2(無水メタほう酸ナトリウム)を得た。粒状のNaBO
2の平均粒子径は100μmであった。平均粒子径はデジタルマイクロスコープにより測定した。
【0103】
次に、NaBH
4を40 kg生成することを想定し、ボールミル容器2内にNaBO
2及び粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)を所定量入れ、ボールミル容器2内を真空引きした。これによりボールミル容器2内の空気(酸素)を排気し、その後、水素を注入した。
【0104】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した。ボールミル容器2の回転中はボールミル容器2内を300℃に加熱するとともに、ボールミル容器2内の圧力が大気圧となるように水素を循環フロー注入した。循環フローにより取り出されたボールミル容器2内雰囲気は冷却コンデンサにより処理され、水分と水素とを分離した後、水素をボールミル容器2内に再注入した。被処理物の単位重量当たりの粉砕エネルギーの時間積E(kJ・s/kg)が所定値になるまで、ボールミル容器2の回転を継続した。
【0105】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した直後、ボールミル容器2の内壁に設けられている一対の電極17の間に10kHz、5kVの低周波電圧を印加した。誘電体バリア放電の生成原理により、誘電体部材16の表面近傍に水素プラズマが生成された。水素プラズマ生成は、ボールミル容器2の回転を継続している間、継続した。
【0106】
その後、プラズマ生成及び回転を停止し、処理後の被処理物を取り出した。被処理物から、テトラヒドロほう酸ナトリウムと、粉砕メディアとを分離し、所望のテトラヒドロほう酸ナトリウムを得た。なお、以上の実験条件の詳細を以下の表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表中、水素化率(転化率)は、次のように算出した。まず、処理後の被処理物中に含まれるテトラヒドロほう酸ナトリウムを加水分解し、それにより生成した水素を定量した。水素量は、生成した気体容積を測定したうえで、気体を空気にて200倍希釈したものを水素検知管(光明理化学工業株式会社製、測定濃度範囲0.05〜0.8%)で測定した水素濃度から算出した。そして、100%転化した場合の水素量を基準とし、上記のように定量された水素量から、水素化率を算出した。
【0109】
(評価1)
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−6300(日本分光株式会社製、製品名)を用いて、処理時間の異なる4種類の試料の赤外吸収スペクトルを測定した。測定の結果、無水メタほう酸ナトリウムに由来するB−O結合のピークが減少し、テトラヒドロほう酸ナトリウムに由来するB−H結合のピークが増加した。これにより、無水メタほう酸ナトリウムに対するプラズマ処理により、テトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることを確認した。
【0110】
また、プラズマ処理後の試料について、XRDにより結晶構造を解析した。得られた試料にはNa
0.6B
0.9H
4.0という組成を有するテトラヒドロほう酸ナトリウムが含まれていた。
【0111】
(実施例2)
図1、
図2、
図3、
図6及び
図7に示される製造装置1を用いて、テトラヒドロほう酸塩の製造を行った。ほう酸塩としてNaBO
2・4H
2O(メタほう酸ナトリウム四水和物:キシダ化学株式会社製、含量98質量%)を準備した。これをボールミルで粉砕処理しながら160℃で15分間加熱して結晶水を除去し、粒状のNaBO
2(無水メタほう酸ナトリウム)を得た。粒状のNaBO
2の平均粒子径は100μmであった。平均粒子径はデジタルマイクロスコープにより測定した。
【0112】
次に、NaBH
4を40 kg生成することを想定し、ボールミル容器2内にNaBO
2及び粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)を所定量入れ、ボールミル容器2内を真空引きした。これによりボールミル容器2内の空気(酸素)を排気し、その後、水素を注入した。
【0113】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した。ボールミル容器2の回転中はボールミル容器2内を300℃に加熱するとともに、ボールミル容器2内の圧力が大気圧となるように水素を循環フロー注入した。循環フローにより取り出されたボールミル容器2内雰囲気は冷却コンデンサにより処理され、水分と水素とを分離した後、水素をボールミル容器2内に再注入した。被処理物の単位重量当たりの粉砕エネルギーの時間積E(kJ・s/kg)が所定値になるまで、ボールミル容器2の回転を継続した。
【0114】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した直後、プラズマジェットノズル21に設けられている電極間に10kHz、10kVの低周波電圧を印加した。低周波プラズマジェットの生成原理により、プラズマジェットノズル21から水素プラズマが生成噴射された。水素プラズマ生成噴射はボールミル容器2の回転を継続している間、継続した。
【0115】
その後、プラズマ生成及び回転を停止し、処理後の被処理物を取り出した。被処理物から、テトラヒドロほう酸ナトリウムと、粉砕メディアとを分離しし、所望のテトラヒドロほう酸ナトリウムを得た。なお、以上の実験条件の詳細を以下の表2に示す。
【0116】
【表2】
【0117】
表中、水素化率(転化率)は、次のように算出した。まず、処理後の被処理物中に含まれるテトラヒドロほう酸ナトリウムを加水分解し、それにより生成した水素を定量した。水素量は、生成した気体容積を測定したうえで、気体を空気にて200倍希釈したものを水素検知管(光明理化学工業株式会社製、測定濃度範囲0.05〜0.8%)で測定した水素濃度から算出した。そして、100%転化した場合の水素量を基準とし、上記のように定量された水素量から、水素化率を算出した。
【0118】
(評価2)
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−6300(日本分光株式会社製、製品名)を用いて、処理時間の異なる4種類の試料の赤外吸収スペクトルを測定した。測定の結果、無水メタほう酸ナトリウムに由来するB−O結合のピークが減少し、テトラヒドロほう酸ナトリウムに由来するB−H結合のピークが増加した。これにより、無水メタほう酸ナトリウムに対するプラズマ処理により、テトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることを確認した。
【0119】
また、プラズマ処理後の試料について、XRDにより結晶構造を解析した。得られた試料にはNa
0.6B
0.9H
4.0という組成を有するテトラヒドロほう酸ナトリウムが含まれていた。
【0120】
(実施例3)
図1、
図2、
図3、
図8及び
図9に示される製造装置1を用いて、テトラヒドロほう酸塩の製造を行った。ほう酸塩としてNaBO
2・4H
2O(メタほう酸ナトリウム四水和物:キシダ化学株式会社製、含量98質量%)を準備した。これをボールミルで粉砕処理しながら160℃で15分間加熱して結晶水を除去し、粒状のNaBO
2(無水メタほう酸ナトリウム)を得た。粒状のNaBO
2の平均粒子径は100μmであった。平均粒子径はデジタルマイクロスコープにより測定した。
【0121】
次に、NaBH
4を40 kg生成することを想定し、ボールミル容器2内にNaBO
2及び粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)を所定量入れ、ボールミル容器2内を真空引きした。これによりボールミル容器2内の空気(酸素)を排気し、その後、水素を注入した。
【0122】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した。ボールミル容器2の回転中はボールミル容器2内を300℃に加熱するとともに、ボールミル容器2内の圧力が大気圧となるように水素を循環フロー注入した。循環フローにより取り出されたボールミル容器2内雰囲気は冷却コンデンサにより処理され、水分と水素とを分離した後、水素をボールミル容器2内に再注入した。被処理物の単位重量当たりの粉砕エネルギーの時間積E(kJ・s/kg)が所定値になるまで、ボールミル容器2の回転を継続した。
【0123】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した直後、ボールミル容器2の内壁に設けられている一対の電極17Bの間に三相交流を全波整流した3.3ms脈動する直流電圧を、8 msの間は通電し2 msの間は非通電とする比率でON・OFFさせる、5Vのパルス電圧を印加した。反応容器内部で流動する粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)衝突時に粉砕メディア間あるいは反応容器内壁と粉砕メディアの衝突時に衝突箇所においてスパーク状の高温水素プラズマが生成された。水素プラズマ生成はボールミル容器2の回転を継続している間、継続した。
【0124】
その後、プラズマ生成及び回転を停止し、処理後の被処理物を取り出した。被処理物から、テトラヒドロほう酸ナトリウムと、粉砕メディアとを分離しし、所望のテトラヒドロほう酸ナトリウムを得た。なお、以上の実験条件の詳細を以下の表3に示す。
【0125】
【表3】
【0126】
表中、水素化率(転化率)は、次のように算出した。まず、処理後の被処理物中に含まれるテトラヒドロほう酸ナトリウムを加水分解し、それにより生成した水素を定量した。水素量は、生成した気体容積を測定したうえで、気体を空気にて200倍希釈したものを水素検知管(光明理化学工業株式会社製、測定濃度範囲0.05〜0.8%)で測定した水素濃度から算出した。そして、100%転化した場合の水素量を基準とし、上記のように定量された水素量から、水素化率を算出した。
【0127】
(評価3)
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−6300(日本分光株式会社製、製品名)を用いて、処理時間の異なる4種類の試料の赤外吸収スペクトルを測定した。測定の結果、無水メタほう酸ナトリウムに由来するB−O結合のピークが減少し、テトラヒドロほう酸ナトリウムに由来するB−H結合のピークが増加した。これにより、無水メタほう酸ナトリウムに対するプラズマ処理により、テトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることを確認した。
【0128】
また、プラズマ処理後の試料について、XRDにより結晶構造を解析した。得られた試料にはNa
0.6B
0.9H
4.0という組成を有するテトラヒドロほう酸ナトリウムが含まれていた。
【0129】
(実施例4)
図1、
図2、
図3、
図10及び
図11に示される製造装置1を用いて、テトラヒドロほう酸塩の製造を行った。ほう酸塩としてNaBO
2・4H
2O(メタほう酸ナトリウム四水和物:キシダ化学株式会社製、含量98質量%)を準備した。これをボールミルで粉砕処理しながら160℃で15分間加熱して結晶水を除去し、粒状のNaBO
2(無水メタほう酸ナトリウム)を得た。粒状のNaBO
2の平均粒子径は100μmであった。平均粒子径はデジタルマイクロスコープにより測定した。
【0130】
次に、NaBH
4を40 kg生成することを想定し、ボールミル容器2内にNaBO
2及び粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)を所定量入れ、ボールミル容器2内を真空引きした。これによりボールミル容器2内の空気(酸素)を排気し、その後水素を注入した。
【0131】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した。ボールミル容器2の回転中はボールミル容器2内を300℃に加熱するとともに、ボールミル容器2内の圧力が大気圧となるように水素を循環フロー注入した。循環フローにより取り出されたボールミル容器2内雰囲気は冷却コンデンサにより処理され、水分と水素とを分離した後、水素をボールミル容器2内に再注入した。被処理物の単位重量当たりの粉砕エネルギーの時間積E(kJ・s/kg)が所定値になるまで、ボールミル容器2の回転を継続した。
【0132】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した直後、ボールミル容器2の内壁に設けられている一対の電極17Cの間に三相交流を全波整流した3.3ms脈動する直流電圧を、8 msの間は通電し2 msの間は非通電とする比率でON・OFFさせる、5Vのパルス電圧を印加した。反応容器内部で流動する粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)衝突時に粉砕メディア間あるいは反応容器内壁と粉砕メディアの衝突時に衝突箇所においてスパーク状の高温水素プラズマが生成された。水素プラズマ生成はボールミル容器2の回転を継続している間、継続した。
【0133】
その後、プラズマ生成及び回転を停止し、処理後の被処理物を取り出した。被処理物から、テトラヒドロほう酸ナトリウムと、粉砕メディアとを分離しし、所望のテトラヒドロほう酸ナトリウムを得た。なお、以上の実験条件の詳細を以下の表4に示す。
【0134】
【表4】
【0135】
表中、水素化率(転化率)は、次のように算出した。まず、処理後の被処理物中に含まれるテトラヒドロほう酸ナトリウムを加水分解し、それにより生成した水素を定量した。水素量は、生成した気体容積を測定したうえで、気体を空気にて200倍希釈したものを水素検知管(光明理化学工業株式会社製、測定濃度範囲0.05〜0.8%)で測定した水素濃度から算出した。そして、100%転化した場合の水素量を基準とし、上記のように定量された水素量から、水素化率を算出した。
【0136】
(評価4)
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−6300(日本分光株式会社製、製品名)を用いて、処理時間の異なる4種類の試料の赤外吸収スペクトルを測定した。測定の結果、無水メタほう酸ナトリウムに由来するB−O結合のピークが減少し、テトラヒドロほう酸ナトリウムに由来するB−H結合のピークが増加した。これにより、無水メタほう酸ナトリウムに対するプラズマ処理により、テトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることを確認した。
【0137】
また、プラズマ処理後の試料について、XRDにより結晶構造を解析した。得られた試料にはNa
0.6B
0.9H
4.0という組成を有するテトラヒドロほう酸ナトリウムが含まれていた。
【0138】
(実施例5)
図1、
図2、
図3、
図12及び
図13に示される製造装置1を用いて、テトラヒドロほう酸塩の製造を行った。ほう酸塩としてNaBO
2・4H
2O(メタほう酸ナトリウム四水和物:キシダ化学株式会社製、含量98質量%)を準備した。これをボールミルで粉砕処理しながら160℃で15分間加熱して結晶水を除去し、粒状のNaBO
2(無水メタほう酸ナトリウム)を得た。粒状のNaBO
2の平均粒子径は100μmであった。平均粒子径はデジタルマイクロスコープにより測定した。
【0139】
次に、NaBH
4を40 kg生成することを想定し、ボールミル容器2内にNaBO
2及び粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)を所定量入れ、ボールミル容器2内を真空引きした。これによりボールミル容器2内の空気(酸素)を排気し、その後、水素を注入した。
【0140】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した。ボールミル容器2の回転中はボールミル容器2内を300℃に加熱するとともに、ボールミル容器2内の圧力が大気圧となるように水素を循環フロー注入した。循環フローにより取り出されたボールミル容器2内雰囲気は冷却コンデンサにより処理され、水分と水素とを分離した後、水素をボールミル容器2内に再注入した。被処理物の単位重量当たりの粉砕エネルギーの時間積E(kJ・s/kg)が所定値になるまで、ボールミル容器2の回転を継続した。
【0141】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した直後、ボールミル容器2の内壁に設けられている一対の電極17D間に三相交流を全波整流した3.3ms脈動する直流電圧を、8 msの間は通電し2 msの間は非通電とする比率でON・OFFさせる、5Vのパルス電圧を印加した。反応容器内部で流動する粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)衝突時に粉砕メディア間あるいは反応容器内壁と粉砕メディアの衝突時に衝突箇所においてスパーク状の高温水素プラズマが生成された。水素プラズマ生成はボールミル容器2の回転を継続している間、継続した。
【0142】
その後、プラズマ生成及び回転を停止し、処理後の被処理物を取り出した。被処理物から、テトラヒドロほう酸ナトリウムと、粉砕メディアとを分離しし、所望のテトラヒドロほう酸ナトリウムを得た。なお、以上の実験条件の詳細を以下の表5に示す。
【0143】
【表5】
【0144】
表中、水素化率(転化率)は、次のように算出した。まず、処理後の被処理物中に含まれるテトラヒドロほう酸ナトリウムを加水分解し、それにより生成した水素を定量した。水素量は、生成した気体容積を測定したうえで、気体を空気にて200倍希釈したものを水素検知管(光明理化学工業株式会社製、測定濃度範囲0.05〜0.8%)で測定した水素濃度から算出した。そして、100%転化した場合の水素量を基準とし、上記のように定量された水素量から、水素化率を算出した。
【0145】
(評価5)
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−6300(日本分光株式会社製、製品名)を用いて、処理時間の異なる4種類の試料の赤外吸収スペクトルを測定した。測定の結果、無水メタほう酸ナトリウムに由来するB−O結合のピークが減少し、テトラヒドロほう酸ナトリウムに由来するB−H結合のピークが増加した。これにより、無水メタほう酸ナトリウムに対するプラズマ処理により、テトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることを確認した。
【0146】
また、プラズマ処理後の試料について、XRDにより結晶構造を解析した。得られた試料にはNa
0.6B
0.9H
4.0という組成を有するテトラヒドロほう酸ナトリウムが含まれていた。
【0147】
(実施例6)
図1、
図2、
図3、
図14及び
図15に示される製造装置1を用いて、テトラヒドロほう酸塩の製造を行った。ほう酸塩としてNaBO
2・4H
2O(メタほう酸ナトリウム四水和物:キシダ化学株式会社製、含量98質量%)を準備した。これをボールミルで粉砕処理しながら160℃で15分間加熱して結晶水を除去し、粒状のNaBO
2(無水メタほう酸ナトリウム)を得た。粒状のNaBO
2の平均粒子径は100μmであった。平均粒子径はデジタルマイクロスコープにより測定した。
【0148】
次に、NaBH
4を40 kg生成することを想定し、ボールミル容器2内にNaBO
2及び粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)を所定量入れ、ボールミル容器2内を真空引きした。これによりボールミル容器2内の空気(酸素)を排気し、その後水素を注入した。
【0149】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した。ボールミル容器2の回転中はボールミル容器2内を300℃に加熱するとともに、ボールミル容器2内の圧力が大気圧となるように水素を循環フロー注入した。循環フローにより取り出されたボールミル容器2内雰囲気は冷却コンデンサにより処理され、水分と水素とを分離した後、水素をボールミル容器2内に再注入した。被処理物の単位重量当たりの粉砕エネルギーの時間積E(kJ・s/kg)が所定値になるまで、ボールミル容器2の回転を継続した。
【0150】
モータ7の電源を入れ、ボールミル容器2の回転を開始した直後、ボールミル容器2の内壁に設けられている一対の電極17Eの間に三相交流を全波整流した3.3ms脈動する直流電圧を、8 msの間は通電し2 msの間は非通電とする比率でON・OFFさせる、5Vのパルス電圧を印加した。反応容器内部で流動する粉砕メディア(平均径30mmクロム鋼球)衝突時に粉砕メディア間あるいは反応容器内壁と粉砕メディアの衝突時に衝突箇所においてスパーク状の高温水素プラズマが生成された。水素プラズマ生成はボールミル容器2の回転を継続している間、継続した。
【0151】
その後、プラズマ生成及び回転を停止し、処理後の被処理物を取り出した。被処理物から、テトラヒドロほう酸ナトリウムと、粉砕メディアとを分離しし、所望のテトラヒドロほう酸ナトリウムを得た。なお、以上の実験条件の詳細を以下の表6に示す。
【0152】
【表6】
【0153】
表中、水素化率(転化率)は、次のように算出した。まず、処理後の被処理物中に含まれるテトラヒドロほう酸ナトリウムを加水分解し、それにより生成した水素を定量した。水素量は、生成した気体容積を測定したうえで、気体を空気にて200倍希釈したものを水素検知管(光明理化学工業株式会社製、測定濃度範囲0.05〜0.8%)で測定した水素濃度から算出した。そして、100%転化した場合の水素量を基準とし、上記のように定量された水素量から、水素化率を算出した。
【0154】
(評価6)
フーリエ変換赤外分光光度計FT/IR−6300(日本分光株式会社製、製品名)を用いて、処理時間の異なる4種類の試料の赤外吸収スペクトルを測定した。測定の結果、無水メタほう酸ナトリウムに由来するB−O結合のピークが減少し、テトラヒドロほう酸ナトリウムに由来するB−H結合のピークが増加した。これにより、無水メタほう酸ナトリウムに対するプラズマ処理により、テトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることを確認した。
【0155】
また、プラズマ処理後の試料について、XRDにより結晶構造を解析した。得られた試料にはNa
0.6B
0.9H
4.0という組成を有するテトラヒドロほう酸ナトリウムが含まれていた。
【0156】
以上、実施例1〜6において、本開示の方法MT及び製造装置1を用いることでテトラヒドロほう酸ナトリウムが得られることが確認された。