特許第6973339号(P6973339)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973339
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】精錬用ランス設備
(51)【国際特許分類】
   F27D 3/18 20060101AFI20211111BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20211111BHJP
   C21C 1/02 20060101ALI20211111BHJP
   C21C 1/04 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   F27D3/18
   F27D21/00 D
   C21C1/02 110
   C21C1/04 101
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-174804(P2018-174804)
(22)【出願日】2018年9月19日
(65)【公開番号】特開2020-46114(P2020-46114A)
(43)【公開日】2020年3月26日
【審査請求日】2020年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】丸山 純輝
【審査官】 宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−172900(JP,U)
【文献】 特開平08−209220(JP,A)
【文献】 特開昭50−099796(JP,A)
【文献】 実開昭60−063549(JP,U)
【文献】 特表2018−508730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 3/16 − 3/18
F27D 21/00
C21C 1/02
C21C 1/04
C21C 5/46
C21C 7/072
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶鉄の精錬に用いられる精錬用ランス設備であって、
酸化剤および精錬剤の少なくとも1つを搬送ガスとともに前記溶鉄に吹き込むランスと、
内部に空間が設けられ、前記ランスの周囲に設けられたダンパーと、
前記ダンパー内に充填された流体と、
前記ダンパーを支持する支持体と、
前記ランスに設けられ、前記ランスの軸方向に直交する方向の加速度を測定する加速度センサーと、
前記流体の圧力を変化させるアクチュエーターと、
前記加速度センサーにより測定された前記加速度を用いて前記アクチュエーターを制御する制御装置と、
を有し、
前記流体の圧力を変化させると前記ダンパーによる前記ランスの保持力が変化する、精錬用ランス設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金分野における溶鉄(溶銑、溶鋼)の精錬処理に用いられる精錬用ランス設備と、当該精錬用ランス設備を用いたランスの制振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶銑の精錬処理は、溶銑を収容した溶銑搬送容器にランスを浸漬させた状態で、当該ランスから溶銑に酸素や酸化剤を吹き込むことで行われる。当該処理では、脱珪や脱燐効率を向上させることを目的として、ランスからの酸素や酸化剤の吹き込み量を調整したり、複数のランスを使用して撹拌効率を向上させたりしている。一方、ランスから酸素や酸化剤を吹き込むと、これらの吹き込みによりランスが振動し、これにより、ランスが短い期間で折損するという問題が生じている。
【0003】
ランスから溶銑に酸素や酸化剤を吹き込むと、溶銑に渦流れが生じる。溶銑に生じた渦の振動数とランスの持つ固有振動数が一致すると、ランスに自励振動が生じる。自励振動によってランスに生じる応力は大きくなるので、ランスの設計にあたっては、この渦流れによる自励振動を抑制させ、自励振動によって生じる応力が許容値以下になるようにする必要がある。
【0004】
特許文献1には、精錬用吹き込みランスの上端部に鉄製羽根板が設けられ、当該鉄製羽根板を振動防止治具に設けられたガイドロールと鉄製羽根受けとで挟み込み、これにより、精錬用吹き込みランスの鉛直方向の振動を抑制する精錬用吹き込みランス設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−231342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
精錬用ランスの固有振動には複数の振動モードがある。そして、精錬用ランスから吹き込まれる酸素や酸化剤の吹き込み量によって異なる振動モードの振動に対応した自励振動が生じる。特許文献1では、ガイドロールと鉄羽根受けで鉄製羽根板を挟み込むことで振動を抑制しているので、異なる振動モードの自励振動により生じる応力を効率よく抑制できるものではなかった。本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、ランスの自励振動により生じる応力を効率よく抑制できる精錬用ランス設備、および、当該精錬用ランス設備を用いたランスの制振方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するための本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)溶鉄の精錬に用いられる精錬用ランス設備であって、酸化剤および精錬剤の少なくとも1つを搬送ガスとともに前記溶鉄に吹き込むランスと、内部に空間が設けられ、前記ランスの周囲に設けられたダンパーと、前記ダンパー内に充填された流体と、前記ダンパーを支持する支持体と、前記流体の圧力を変化させるアクチュエーターと、前記アクチュエーターを制御する制御装置と、を有し、前記流体の圧力を変化させると前記ダンパーによる前記ランスの保持力が変化する、精錬用ランス設備。
(2)前記ランスの振動を測定する振動センサーをさらに有する、(1)に記載の精錬用ランス設備。
(3)(1)または(2)に記載の精錬用ランス設備を用いたランスの制振方法であって、
前記ランスからの吹き込み量に対応させて前記流体の圧力を変化させる、ランスの制振方法。
(4)(2)に記載の精錬用ランス設備を用いたランスの制振方法であって、前記ランスの振動が小さくなるように、前記流体の圧力を変化させる、ランスの制振方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の精錬用ランス設備は、各振動モードに対応してダンバーの流体の圧力を変化できるので、各振動モードに対応した自励振動により生じた応力を効率よく抑制できる。これにより、ランスが短い期間で折損してしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る精錬用ランス設備20を用いて混銑車10に収容された溶銑14に脱燐処理している状態を示す部分断面模式図である。
図2】精錬用ランス設備20の部分断面模式図である。
図3】ランス22に生じる応力の変動を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を発明の実施形態を通じて詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る精錬用ランス設備20を用いて混銑車10に収容された溶銑14に脱燐処理している状態を示す部分断面模式図である。図1では、本実施形態に係る精錬用ランス設備20の動作を説明するために混銑車10のみ断面図で示している。なお、本発明に係る精錬用ランス設備を用いて溶銑の脱燐処理を行う例を用いて本実施形態を説明するが、これに限らず、本発明に係る精錬用ランス設備は、溶鉄(溶銑、溶鋼を含む)の脱珪処理または脱炭処理に用いることもできる。
【0011】
混銑車10は、搬送容器12を有する。高炉から出銑された溶銑14は、搬送容器12に収容される。搬送容器12に溶銑14が収容された後、溶銑14内に精錬用ランス設備20のランス先端部が浸漬され、この状態で溶銑14が脱燐処理される。予め定められた量の酸化剤や脱燐剤が精錬用ランス設備20から吹き込まれ、目標とする燐濃度以下になった溶銑14は、混銑車10によって製鋼用精錬炉(転炉)を備えた製鋼工場へ搬送される。
【0012】
精錬用ランス設備20は、搬送容器12の開口部から鉛直方向に対して斜め方向から挿入され、ランス22が溶銑14に浸漬された状態で保持される。ランス22から酸化剤である酸化鉄と、CaO含有物質とを含む脱燐剤とが、搬送ガスとともに溶銑14に吹き込まれる。ランス22から溶銑14に吹き込まれる酸化剤としては、鉄鉱石、焼結鉱粉、ミルスケール等の酸化鉄源が使用できる。また、搬送ガスとしては、気体酸素、空気、窒素、希ガス等が使用できる。
【0013】
ランス22から酸化剤や脱燐剤等が溶銑14に吹き込まれると、吹き込まれた酸化剤や脱燐剤等により溶銑14に渦流れが生じる。この溶銑14に生じた渦流れの渦の周波数とランス22のもつ固有振動数が一致することで自励振動が生じる。ランス22に自励振動が長期間生じると、当該自励振動によって生じた応力によりランス22が折損する。このため、本実施形態に係る精錬用ランス設備20は、ランス22の自励振動により生じた応力を抑制する構成を有する。
【0014】
図2は、精錬用ランス設備20の部分断面模式図である。精錬用ランス設備20は、ランス22と、支持体24と、昇降装置25と、油圧ダンパー26と、油圧シリンダー30と、加速度センサー32と、制御装置34と、クランプ36と、を有する。図2では、精錬用ランス設備20の構成を説明するために、ランス22とクランプ36以外の構成を断面で示している。
【0015】
ランス22は、外側に不定形耐火物からなる耐火物被覆層が設けられ、内部は単管または二重管構造となっている。支持体24は、円筒形状の部材であり、油圧ダンパー26を支持する。支持体24は、外周面の一部が昇降装置25に固定され、内側に油圧ダンパー26が固定されている。昇降装置25は、直方向に対して斜め方向に移動可能となっており、ランス22の溶銑14への浸漬深さを制御する。昇降装置25には、支持体24と、クランプ36が固定されている。
【0016】
油圧ダンパー26は、ランス22の周囲を保持するように、ランス22を囲むように設けられている。油圧ダンパー26の内部には、油28が充填された空間が設けられており、油28の圧力を変化させると、油圧ダンパー26によるランス22の周方向の保持力が変化する。すなわち、油28の圧力を高めるとランス22の保持力が高まり、油28の圧力を下げるとランス22の保持力が弱まる。なお、本実施形態では、油28が充填された油圧ダンパー26を用いた例を示したが、油28は流体の一例であり、例えば、空気等の気体が充填されたダンパーを用いてもよく、油とは異なる液体が充填されたダンパー用いてもよい。
【0017】
油圧シリンダー30は、制御装置34の制御により、油圧ダンパー26の油圧を所定の油圧に制御する。油圧シリンダー30は、アクチュエーターの一例であり、油圧シリンダー30に代えて、空圧シリンダー、水圧シリンダー、モーター等の他のアクチュエーターを用いてもよい。
【0018】
加速度センサー32は、ランス22が振動することによって生じる振動周波数や加速度を測定する。加速度センサー32は、ランス22に設けられ、ランス22に生じたランス22の軸線方向に直交する方向の加速度を測定し、測定された加速度信号を記録するとともに、当該加速度信号を高速フーリエ変換処理し、ランス22の周波数解析をリアルタイムに実施して振動周波数を算出する。加速度センサー32は、加速度信号と、振動周波数を示す信号とを制御装置34に出力する。なお、加速度センサー32は、ランス22の振動を測定する振動センサーの一例である。
【0019】
制御装置34は、例えば、CPUや記録装置(HDD)を有するコンピュータである。記録装置には、油圧シリンダー30を制御するプログラムや、当該プログラムの実行に用いられるデータや、油圧シリンダー30を制御する制御信号が、予め記録されている。
【0020】
制御装置34は、ランス22からの吹き込まれる酸化剤や精錬剤の吹き込み流量を示す信号を取得する。制御装置34は、吹き込み流量を示す信号を取得すると、当該吹き込み流量に対応した制御信号を、油圧シリンダー30に出力する。
【0021】
また、制御装置34は、加速度センサー32から振動周波数を示す信号を取得した場合には、当該振動周波数に対応した制御信号を出力してもよく、取得した吹き込み流量と、振動周波数とを用いて、記録装置に記録されている吹き込み流量に対応した制御信号を補正してもよい。さらに、加速度センサー32からランス22の加速度信号を取得した場合、当該加速度が小さくなるように、油圧シリンダー30の油圧を動的に制御してもよい。この場合に、制御装置34は、例えば、山登り法を用いて、加速度センサー32から取得される加速度が最小になるように油圧シリンダー30の圧力を動的に制御する。
【0022】
油圧シリンダー30は、油圧ダンパー26の油圧を変化させる。油圧シリンダー30は、制御装置34から制御信号を取得すると、油圧を調整してシリンダーを動作させ、油圧ダンパー26の油圧を制御信号に対応した油圧に変化させる。この油圧の変化により、油圧ダンパー26によるランス22の保持力が調整される。
【0023】
油圧ダンパー26は、支持体24の内周面に固定されて設けられる。前述したように、支持体24は、昇降装置25に固定されているので、油圧ダンパー26によるランス22の保持力が高められると、ランス22は周方向への移動が規制される。一方、油圧ダンパー26によるランス22の保持力が弱められると、ランス22の周方向への移動が許容される。
【0024】
クランプ36は、油圧ダンパー26が設けられた位置の反対側の端部に、昇降装置25に固定されて設けられる。クランプ36は、ランス22の軸線方向および周方向へ移動を規制する。
【0025】
ランス22の自励振動は、ランス22の固有振動数と、ランス22から吹き込まれる酸化剤や脱燐精錬剤の吹き込みによって生じる渦流れの渦の振動数とが一致することで生じる。ランス22の固有振動数には、一次モード、二次モード等の複数の振動モードがあり、溶銑14に生じる渦の振動数によっては、様々な振動モードの自励振動が起こり得る。このように、渦の振動数によって様々な振動モードの自励振動が起こる得る所、発明者らは、ランス22における各モードの固有振動数と渦の振動数とが一致することで生じる自励振動を効率よく抑制できる油圧ダンパー26の保持力は、各振動モードでそれぞれ異なることを見出した。
【0026】
図3は、ランス22に生じる応力を示すグラフである。図3の縦軸は、振動によってランス22に生じた応力(MPa)であり、横軸は吹き込み流量(Nm/min)である。図3に示した各プロファイルは、ランス22からの吹き込み流量を増やすことで溶銑14に生じる渦の振動数を高め、当該渦による振動によってランス22に生じた応力の変動を示す。
【0027】
図3の実線は、油圧ダンパー26を設けていない精錬ランス設備を用いた場合にランス22に生じた応力の変動を示す。図3におけるピークは、左側から、一次モード、二次モード、三次モード、四次モードの固有振動数の自励振動によってランス22に生じた応力である。このように、各固有振動数に対応した自励振動は、ランス22に大きな応力を与えることがわかる。図3の実線から、油圧ダンパー26を設けていない場合には、油圧ダンパー26を設けてランス22の保持力を高めた他の条件よりも、振動によってランス22に生じる応力が大きくなることがわかる。
【0028】
図3の点線は、油圧ダンパー26を設け、ダンパー条件1の油圧でランス22を保持した場合にランス22に生じた応力の変動を示す。ダンパー条件1の油圧は、ダンパー条件2、3より低い。
【0029】
図3の点線からわかるように、油圧をダンパー条件1にすることで一次モードおよび二次モードの固有振動数の自励振動によりランス22に生じた応力は、他のダンパー条件にした場合よりも小さくなった。一方、三次モードおよび四次モードの固有振動数の自励振動により生じた応力は、油圧をダンパー条件1にした場合には、他のダンパー条件にした場合より大きくなった。
【0030】
図3の破線は、油圧ダンパー26を設け、ダンパー条件2の油圧でランス22を保持した場合にランス22に生じた応力の変動を示す。ダンパー条件2の油圧は、ダンパー条件1より高く、ダンパー条件3より低い。
【0031】
図3の破線からわかるように、油圧をダンパー条件2にすることで三次モードの固有振動数の自励振動によりランス22に生じた応力は、他のダンパー条件にした場合よりも小さくなった。一方、一次モード、二次モードおよび四次モードの固有振動数の自励振動によりランス22に生じた応力は、油圧をダンパー条件2にした場合には、他のダンパー条件にした場合より大きくなった。
【0032】
図3の一点鎖線は、油圧ダンパー26を設け、ダンパー条件3の油圧でランス22を保持した場合に、ランス22に生じた応力の変動を示す。ダンパー条件3の油圧は、ダンパー条件1、2より高い。
【0033】
図3の一点鎖線からわかるように、油圧をダンパー条件3にすることで四次モードの固有振動数の自励振動によりランス22に生じた応力は、他のダンパー条件にした場合よりも小さくなった。一方、一次モード、二次モードおよび三次モードの固有振動数の自励振動によりランス22に生じた応力は、油圧をダンパー条件3にした場合には、他のダンパー条件にした場合より大きくなった。
【0034】
これらの結果から、各固有振動数の自励振動によってランス22に生じる応力を効率よく抑制できる油圧ダンパー26の保持力は、各固有振動数によってそれぞれ異なることがわかる。このため、制御装置34は、ランス22から吹き込まれる酸化剤や精錬剤の流量を示すデータを取得し、当該吹き込み流量に対応した自励振動の応力を効率よく低減できる保持力になるように、制御信号を油圧シリンダー30に出力する。油圧シリンダー30は、油圧ダンパー26の油圧が上記保持力になるように油圧を変化させる。これにより、各固有振動数の自励振動によってランス22に生じる応力を効率よく抑制できる。また、自励振動によってランス22に生じる応力を抑制できることは、ランス22に生じた自励振動を制振できることになる。このため、本実施形態に係る精錬用ランス設備20を用いることで、ランス22に生じる自励振動を効率よく制振できるといえる。
【0035】
例えば、ランス22からの吹き込み流量が48Nm/minであった場合に、制御装置34は、油圧シリンダー30に、油圧をダンパー条件3にする制御信号を出力する。これにより、吹き込み流量が48Nm/minの場合にランス22に生じる四次モードの固有振動数に対応した自励振動を効率よく抑制できる。さらに、吹き込み流量を48Nm/minから12Nm/minに変えた場合に、制御装置34は、油圧シリンダー30に油圧をダンパー条件1にする制御信号を出力する。これにより、吹き込み流量が12Nm/minの場合にランス22に生じる二次モードの固有振動数に対応した自励振動を効率よく抑制できる。
【0036】
図3の二点鎖線は、ランス22に設けられた加速度センサー32の加速度が最小になるように油圧ダンパー26の油圧を動的に制御した場合に、ランス22に生じた応力の変動を示す。振動によりランス22に生じる加速度を最小にするということは、当該振動により生じるランス22の振幅を最小にすることになる。このように、振動によるランス22の振幅が最小になるように油圧ダンパー26の油圧が動的に制御されるので、油圧ダンパー26の保持力は、全ての吹き込み量において最も応力を抑制できる保持力に制御される。この結果、図3の二点鎖線からわかるように、全ての吹き込み量において、ランス22に生じる応力を大きく抑制できた。なお、ランス22からの吹き込み量を実験的に変えながら同様の制御を行うことで、各吹き込み量に対応した応力を大きく抑制できる油圧ダンパー26の油圧を事前に取得できる。
【0037】
また、図3に示した例では、制御装置34がランス22から吹き込まれる酸化剤や精錬剤の流量を示すデータを取得し、当該流量に対応した制御信号を油圧シリンダー30に出力する例を示したが、これに限らない。上述したように、加速度センサー32からランス22の振動周波数を取得する場合には、当該振動周波数に対応した制御信号を油圧シリンダー30に出力してもよい。各振動周波数の振動を効率よく制振できる油圧ダンパー26の油圧を事前に取得しておくことで、制御装置34は、取得した固有振動数に対応したランス22の振動を効率良く制振できる制御信号を油圧シリンダー30に出力できる。
【0038】
また、図2に示した例では、加速度センサー32を有する精錬用ランス設備20を示したが、これに限らない。制御装置34は、ランス22から吹き込まれる酸化剤や精錬剤の流量を示すデータを取得し、当該流量に対応した制御信号を油圧シリンダー30に出力する場合には、精錬用ランス設備20は、必ずしも加速度センサー32を有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 混銑車
12 搬送容器
14 溶銑
20 精錬用ランス設備
22 ランス
24 支持体
25 昇降装置
26 油圧ダンパー
28 油
30 油圧シリンダー
32 加速度センサー
34 制御装置
36 クランプ
図1
図2
図3