特許第6973341号(P6973341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973341
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20211111BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20211111BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20211111BHJP
   H01B 7/38 20060101ALI20211111BHJP
   H02G 3/32 20060101ALI20211111BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20211111BHJP
   H01R 9/05 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01B7/00 301
   H01B7/42 D
   H01B7/18 D
   H01B7/38 A
   H02G3/32
   B60R16/02 623A
   B60R16/02 623U
   H01R9/05 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-178535(P2018-178535)
(22)【出願日】2018年9月25日
(65)【公開番号】特開2020-53130(P2020-53130A)
(43)【公開日】2020年4月2日
【審査請求日】2020年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
(72)【発明者】
【氏名】木本 裕一
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−77885(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第3246925(EP,A1)
【文献】 特開2016−197509(JP,A)
【文献】 特開2002−142327(JP,A)
【文献】 特開2016−54030(JP,A)
【文献】 実公昭57−29467(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/42
H01B 7/18
H01B 7/38
H02G 3/32
B60R 16/02
H01R 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線と、
前記芯線の外周を包囲する筒状の電磁シールド部材と、
前記芯線と前記電磁シールド部材との間に充填され、前記芯線の外周面を密着状態で被覆するとともに前記電磁シールド部材の内周面を密着状態で被覆する第1被覆部と、前記電磁シールド部材の外周面を密着状態で被覆する第2被覆部とを有する絶縁被覆と、を有する複数の電線と、
前記複数の電線における前記第2被覆部と一体に形成され、隣り合う前記電線を一体に連結する連結部と、を有し、
前記複数の電線は、前記連結部において分割可能に構成されているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記連結部には、溝部が形成されている請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記溝部は、前記電線の長さ方向に所定の間隔を空けて複数個設けられている請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記連結部と接続される部分の前記第2被覆部の肉厚が、前記第2被覆部の他の部分の肉厚よりも薄く形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記連結部には、前記絶縁被覆と異なる樹脂が含有されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項6】
前記複数の電線は、個々の前記電線に分割された状態でコネクタに接続されている請求項1〜5のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項7】
前記第2被覆部は、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる請求項1〜6のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項8】
前記絶縁被覆の外周面に取り付けられ、前記絶縁被覆を車体に固定するクランプを更に有する請求項7に記載のワイヤハーネス。
【請求項9】
前記絶縁被覆の外周を包囲する筒状の保護管を更に有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【請求項10】
前記各電磁シールド部材の端部が外周面に接続される導電性の筒状部材を更に有し、
前記芯線の端部では、前記電磁シールド部材の端部が前記第2被覆部から露出されるとともに、前記芯線の端部が前記第1被覆部に被覆された状態で前記筒状部材の内部に挿通されており、
前記第2被覆部から露出された前記電磁シールド部材の端部が前記筒状部材の外周面に連結部材によって接続されている請求項1〜9のいずれか一項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスは、高電圧のバッテリとインバータなどの電気機器間を電気的に接続する電線を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−54030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したようにハイブリッド車や電気自動車等の車両で用いられる電気機器としては高電圧のインバータやバッテリ等があり、電線に例えば数百アンペアの大電流が流れる場合がある。電線に大電流が流れると、電線の発熱量が増大して電線の温度が上昇しやすくなるため、ワイヤハーネスにおける放熱性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、放熱性を向上できるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するワイヤハーネスによれば、芯線と、前記芯線の外周を包囲する筒状の電磁シールド部材と、前記芯線と前記電磁シールド部材との間に充填され、前記芯線の外周面を密着状態で被覆するとともに前記電磁シールド部材の内周面を密着状態で被覆する第1被覆部と、前記電磁シールド部材の外周面を密着状態で被覆する第2被覆部とを有する絶縁被覆と、を有する複数の電線と、前記複数の電線における前記第2被覆部と一体に形成され、隣り合う前記電線を一体に連結する連結部と、を有し、前記複数の電線は、前記連結部において分割可能に構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のワイヤハーネスによれば、放熱性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図。
図2】(a)は、一実施形態のワイヤハーネスを示す横断面図(図3における2a−2a断面図)、(b)は、一実施形態のワイヤハーネスを示す横断面図(図3における2b−2b断面図)。
図3】一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図。
図4】一実施形態のワイヤハーネスを示す横断面図(図3における4−4断面図)。
図5】一実施形態のワイヤハーネスを示す概略断面図。
図6】変更例のワイヤハーネスを示す横断面図。
図7】変更例のワイヤハーネスを示す横断面図。
図8】変更例のワイヤハーネスを示す概略平面図。
図9】変更例のワイヤハーネスを示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ワイヤハーネスの一実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示している。
【0010】
図1に示すワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両の床下等を通るように配索される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車両駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0011】
ワイヤハーネス10は、複数の電線20と、複数の電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1と、複数の電線20を車両Vの車体に固定するクランプ70とを有している。各電線20は、例えば、2次元状又は3次元状に曲げられるように形成されている。各電線20は、例えば、ワイヤハーネス10の配索経路に応じた所定形状に曲げられて形成されている。
【0012】
図2(a)に示すように、各電線20は、芯線30と、芯線30の外周を包囲する筒状の電磁シールド部材40と、芯線30と電磁シールド部材40とを一括して埋設する絶縁被覆50とを有している。複数の電線20は、隣り合う電線20の絶縁被覆50の間に形成された連結部60を有している。連結部60は、絶縁被覆50と一体に形成され、隣り合う電線20を一体に連結するように形成されている。複数の電線20は、例えば、車両幅方向(図2(a)において左右方向)に並んで配置されている。
【0013】
各芯線30は、長尺状に形成されている。各芯線30は、ワイヤハーネス10の配索経路に沿う形状に曲げ加工が可能な可撓性を有している。各芯線30としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体(単芯線やバスバ等)や内部が中空構造をなす筒状導体(パイプ導体)などを用いることができる。各芯線30の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。各芯線30は、例えば、押出成形によって成形されている。
【0014】
各芯線30の横断面形状(つまり、芯線30の長さ方向と直交する平面によって芯線30を切断した断面形状)は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。本実施形態の各芯線30の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0015】
各電磁シールド部材40は、筒状をなし、各芯線30の外周を全周に亘って包囲している。但し、各電磁シールド部材40は、各芯線30の外周面から離間した位置に設けられている。換言すると、各電磁シールド部材40は、各芯線30の外周面に接触していない状態で、各芯線30の外周を全周に亘って包囲している。
【0016】
各電磁シールド部材40は、例えば、各芯線30の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の各電磁シールド部材40は、円筒状に形成されている。各電磁シールド部材40は、例えば、各芯線30の長さ方向の略全長に亘って設けられている。
【0017】
各電磁シールド部材40は、例えば、複数の金属素線が筒状に編み込まれた編組部材や金属箔を用いることができる。本実施形態の各電磁シールド部材40は、編組部材である。各電磁シールド部材40は、例えば、各芯線30よりも可撓性に優れている。
【0018】
各絶縁被覆50は、各芯線30と各電磁シールド部材40との間に形成された被覆部51と、電磁シールド部材40の外周を被覆する被覆部52とを有している。各絶縁被覆50は、例えば、被覆部51と被覆部52とが一体に形成されている。複数の絶縁被覆50は、連結部60を介して一体に形成されている。各絶縁被覆50は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレンやポリアミドなどを用いることができる。各絶縁被覆50の材料としては、例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などの硬化性樹脂、または硬化方法の異なる複数種類の樹脂が混合された硬化性樹脂を用いることができる。絶縁被覆50は、例えば、芯線30及び電磁シールド部材40に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。例えば、押出成形により、被覆部51と被覆部52とが同一工程で同時に形成される。
【0019】
各被覆部51は、各芯線30の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。各被覆部51は、各電磁シールド部材40の内周面を全周に亘って密着状態で被覆している。各被覆部51は、各芯線30の外周面と各電磁シールド部材40の内周面との間の空間を充填するように形成されている。すなわち、各被覆部51は、各電磁シールド部材40の内周面よりも内側の空間を充填するように形成されている。このため、本実施形態の各被覆部51の横断面形状は、円柱形状に形成されている。なお、各芯線30は、各被覆部51内に埋設されるように形成されている。
【0020】
各被覆部52は、各電磁シールド部材40の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。これにより、各電磁シールド部材40の外周面が各被覆部52によって被覆され、各電磁シールド部材40の内周面が各被覆部51によって被覆される。換言すると、各電磁シールド部材40は、各絶縁被覆50(被覆部51,52)内に埋設されるように形成されている。
【0021】
各絶縁被覆50(被覆部51,52)は、例えば、各電磁シールド部材40(編組部材)が有する網目に入り込むように形成されている。例えば、各絶縁被覆50は、各電磁シールド部材40が有する網目を充填するように形成されている。
【0022】
各被覆部52の外周の断面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。各被覆部52は、例えば、各芯線30及び各電磁シールド部材40の外周面に沿った形状に形成されている。本実施形態の各被覆部52は、略円柱状に形成されている。但し、本実施形態の各被覆部52は、円柱における周方向の一部が連結部60を通じて隣り合う被覆部52と連結されている。すなわち、本実施形態の複数の電線20では、一方の電線20の被覆部52の円弧部分(曲面)と他方の電線20の被覆部52の円弧部分(曲面)とが連続するように形成されている。
【0023】
本実施形態では、絶縁被覆50の材料として、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いることにより、絶縁被覆50をワイヤハーネス10における保護管として機能させるようにした。例えば、光硬化性樹脂からなる絶縁被覆50を押出成形等により形成した後に、その絶縁被覆50に対して光(紫外線など)を照射することにより、絶縁被覆50の硬度を高めることができる。このため、硬度の高められた絶縁被覆50を、飛翔物や水滴から芯線30を保護する保護管として機能させることができる。なお、絶縁被覆50の材料として熱硬化性樹脂を用いる場合も同様に、熱硬化後の絶縁被覆50を保護管として機能させることができる。
【0024】
例えば、絶縁被覆50の材料として光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いる場合には、電線20を図1に示した配索経路をなすように曲げ加工した後に、光硬化や熱硬化などによって絶縁被覆50が硬化される。この硬化によって、電線20の配索経路を維持することができる。すなわち、この場合の絶縁被覆50は、電線20の配索経路を維持する経路規制部材として機能する。
【0025】
連結部60は、複数の被覆部52と一体に形成されている。換言すると、複数の被覆部52の一部分が連結部60として機能している。連結部60は、例えば、電線20の長さ方向(図2(a)における紙面に直交する方向)に延びるように形成されている。連結部60は、例えば、電線20の長さ方向及び複数の電線20の並設方向(図2(a)における左右方向)の双方に直交する厚さ方向(図2(a)における上下方向)に直線状に延びるように形成されている。
【0026】
連結部60は、隣り合う電磁シールド部材40の間に形成されている。連結部60は、電磁シールド部材40と離間した位置に形成されている。連結部60と各電磁シールド部材40との間には、絶縁被覆50の被覆部52が介在している。本実施形態では、連結部60と各電磁シールド部材40との間に介在する被覆部52(つまり、連結部60と接続される部分の被覆部52)の肉厚が、他の部分における被覆部52の肉厚よりも薄く形成されている。
【0027】
本実施形態の連結部60は、複数の電線20の被覆部52の円弧部分(曲面)同士が互いに重なる位置に設けられている。このため、一方の電線20の被覆部52の円弧部分(曲面)と、他方の電線20の被覆部52の円弧部分(曲面)との間に連結部60が形成されている。なお、本実施形態の連結部60の厚さ方向の寸法は、各電線20のうち芯線30の中心を通る位置における厚さ方向の寸法よりも短くなるように設定されている。
【0028】
図2(b)に示すように、連結部60の所要箇所には、複数の溝部61が形成されている。各溝部61は、例えば、厚さ方向(図2(b)における上下方向)に凹むように形成されている。すなわち、各溝部61は、連結部60の厚さ方向の寸法が短くなるように形成されている。本実施形態の電線20では、厚さ方向の両側に溝部61が形成されている。各溝部61の横断面形状は、任意の形状及び任意の大きさとすることができる。本実施形態の各溝部61の横断面形状は、V字状に形成されている。
【0029】
図3に示すように、複数の溝部61は、電線20の長さ方向において所定の間隔を空けて設けられている。複数の溝部61の間の隙間は、一定の間隔で形成してもよいし、互いに異なる間隔で形成してもよい。各溝部61は、例えば、電線20の長さ方向に延びるように形成されている。これら複数の溝部61によって切取線62が構成されている。すなわち、本実施形態の連結部60には、複数の溝部61によって構成される切取線62が形成されている。この切取線62によって、複数の電線20は連結部60で分割可能に構成されている。すなわち、連結部60を複数の溝部61(切取線62)に沿って切り裂くことにより、複数の電線20を個々の電線20に分割することができる。
【0030】
複数の電線20は、例えば、長さ方向の端部において連結部60(切取線62)に沿って個々の電線20に分割されている。本実施形態の電線20の端部は、個々に分割された状態でコネクタC1に接続されている。すなわち、本実施形態では、複数の電線20の各々は、分割された状態で異なるコネクタC1にそれぞれ接続されている。
【0031】
図4に示すように、個々に分割された(つまり、分割後の)電線20の横断面形状は、例えば、非円形状に形成されている。分割後の各電線20の外周面は、周方向の一部に平面部21を有している。すなわち、分割後の各電線20における被覆部52(絶縁被覆50)の外周面は、周方向の一部に平面部21を有している。このため、分割後の各電線20では、被覆部51の外周の断面形状と被覆部52の外周の断面形状とが互いに異なる形状に形成されている。
【0032】
次に、図5に従って、分割後の電線20の端部構造について説明する。ここでは、インバータ11(図1参照)側の電線20の端部構造について説明する。
分割後の各電線20の端部は、インバータ11(図1参照)に接続されたコネクタC1が有する導電性の筒状部材80に挿通されている。筒状部材80には、例えば、分割後の電線20が1本ずつ挿通される。すなわち、コネクタC1は、複数(ここでは、2つ)の筒状部材80を有している。筒状部材80の材料としては、例えば、鉄系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。筒状部材80は、その構成金属の種類や使用環境に応じて、錫メッキやアルミニウムメッキ等の表面処理を施していてもよい。筒状部材80は、例えば、円筒状に形成されている。
【0033】
各電線20の端部では、絶縁被覆50のうち電磁シールド部材40の外周面を被覆する被覆部52が除去されており、電磁シールド部材40が絶縁被覆50から露出されている。また、各電線20の端部は、芯線30が絶縁被覆50の被覆部51に被覆された状態で、筒状部材80の内部に挿通されている。すなわち、電線20のうち芯線30及び被覆部51のみが筒状部材80の内部に挿通されている。なお、被覆部52の除去は、例えば、レーザなどを用いて樹脂部分(被覆部52)を選択的に除去することにより行うことができる。このとき、電磁シールド部材40が有する網目に充填された絶縁被覆50を除去してもよいし、残るようにしてもよい。
【0034】
絶縁被覆50から露出された電磁シールド部材40の端部は、芯線30の外周を被覆する被覆部51(絶縁被覆50)から離間するように引き出されている。電磁シールド部材40の端部は、筒状部材80の外周面に固定されている。電磁シールド部材40の端部は、例えば、筒状部材80に対してその全周を包囲するように外挿されている。電磁シールド部材40は、筒状部材80の外周面に直接接触するように筒状部材80に外挿されている。
【0035】
電磁シールド部材40の端部は、電磁シールド部材40の外周側に設けられたカシメリング90によって筒状部材80の外周面に接続されている。カシメリング90は、筒状部材80の外周面との間に電磁シールド部材40の端部を挟む態様で筒状部材80に外嵌されている。そして、カシメリング90がカシメ付けられることで、電磁シールド部材40の端部が筒状部材80の外周面に対して直接接触した状態で固着されている。これにより、電磁シールド部材40と筒状部材80との電気的導通が安定的に確保される。
【0036】
上記説明では、インバータ11(図1参照)側の電線20の端部構造について説明したが、高圧バッテリ12(図1参照)側にも同様の端部構造が設けられている。
図3に示すように、クランプ70は、例えば、複数の電線20の絶縁被覆50の外周面に取り付けられている。クランプ70は、図示しない固定部によって、車両の車体に固定されている。このクランプ70によって、複数の電線20が車両の車体に固定されている。クランプ70の材料としては、例えば、樹脂材料や金属材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。金属材料としては、例えば、鉄系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0037】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)各芯線30とその各芯線30の外周を包囲する筒状の各電磁シールド部材40との間に充填された被覆部51と、各電磁シールド部材40の外周面を密着状態で被覆する被覆部52とを有する絶縁被覆50を設けた。この構成によれば、芯線30と電磁シールド部材40との間には被覆部51が充填されるため、芯線30の外周面と電磁シールド部材40の内周面との間に断熱層である空気層が介在することを抑制できる。これにより、芯線30の外周面と電磁シールド部材40の内周面との間の熱抵抗を低くできる。また、被覆部52が電磁シールド部材40の外周面を密着状態で被覆するため、電磁シールド部材40と被覆部52との間に断熱層である空気層が介在することを抑制できる。これにより、電磁シールド部材40の外周面と被覆部52の内周面との間の熱抵抗を低くできる。このため、芯線30で発生した熱が、絶縁被覆50の内部に籠もることが抑制され、芯線30で発生した熱を絶縁被覆50の外周面から効率良く大気中に放出することができる。これにより、芯線30で発生した熱を効率良く放熱させることができ、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。この結果、電線20の温度上昇を抑制することができる。
【0038】
(2)複数の芯線30を一括して被覆するように絶縁被覆50を形成した。このため、例えば1本ずつ芯線を絶縁被覆で被覆した電線を複数本横並びに配設する場合に比べて、隣り合う芯線30同士の間隔を短くできるため、電線20を小型化することができる。
【0039】
(3)連結部60に溝部61を形成し、その連結部60において複数の電線20を個々に分割可能に構成した。溝部61の形成により、その溝部61に沿って連結部60を切り裂いて複数の電線20を個々の電線20に分割することができる。これにより、一体に形成された複数の電線20を、例えばその端部において個々の電線20に分割し、分割した状態でコネクタC1に接続することができる。この場合には、複数の電線20を一体に形成した場合であっても、複数の電線20の各々を個別にコネクタC1に接続できるため、電線20とコネクタC1との接続作業性が悪くなることを抑制できる。
【0040】
(4)連結部60に、電線20の長さ方向において所定の間隔を空けて複数の溝部61を設けた。この構成によれば、複数の電線20を溝部61に沿って切り裂いて個々の電線20に分割する際に、その分割を、溝部61の形成されていない連結部60で止めやすくなる。これにより、複数の電線20を分割する長さを容易に調整することができる。
【0041】
(5)連結部60と接続される部分の被覆部52の肉厚を、その他の部分の被覆部52の肉厚よりも薄く形成した。これにより、連結部60に沿って切り裂きやすくなるため、複数の電線20を容易に分割することができる。
【0042】
(6)絶縁被覆50の材料として、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂を用いた。この絶縁被覆50を、ワイヤハーネス10における保護管として機能させるようにした。例えば、光硬化性樹脂からなる絶縁被覆50を押出成形等により形成した後に、その絶縁被覆50に対して光(紫外線など)を照射することにより、絶縁被覆50の硬度を高めることができる。このため、硬度の高められた絶縁被覆50を、飛翔物や水滴から芯線30を保護する保護管として機能させることができる。なお、絶縁被覆50の材料として熱硬化性樹脂を用いる場合も同様に、熱硬化後の絶縁被覆50を保護管として機能させることができる。この結果、保護管を省略することができ、部品点数を低減することができる。さらに、絶縁被覆50の外周面がワイヤハーネス10の外表面となるため、芯線30で発生した熱を絶縁被覆50の外周面から効率良く大気中に放出することができる。
【0043】
(7)また、電線20を所望の配索経路をなすように曲げ加工した後に、光硬化や熱硬化などによって絶縁被覆50を硬化させることができる。このため、硬化後よりも柔軟性に優れている状態の電線20に対して曲げ加工を実施するため、電線20に対する曲げ加工を容易に行うことができる。一方で、光硬化や熱硬化によって、絶縁被覆50の剛性を高めることができるため、その絶縁被覆50によって電線20の配索経路を維持することができる。
【0044】
(8)絶縁被覆50の外周面に取り付けられ、絶縁被覆50を車体に固定するクランプ70を設けた。この構成によれば、芯線30で発生した熱を、絶縁被覆50及びクランプ70を通じて、表面積の大きい車体に効率良く熱伝達することができる。これにより、芯線30で発生した熱を効率良く放熱させることができ、ワイヤハーネス10の放熱性を向上させることができる。
【0045】
(9)電線20の端部では、電磁シールド部材40の端部が被覆部52から露出され、その露出された電磁シールド部材40の端部が筒状部材80の外周面にカシメリング90によって接続されている。この構成によれば、絶縁被覆50の内部に電磁シールド部材40を埋設した場合であっても、電磁シールド部材40の端部における被覆部52を除去することにより、電磁シールド部材40と筒状部材80との電気的導通を安定的に確保することができる。
【0046】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0047】
・上記実施形態における被覆部51と被覆部52とは、電磁シールド部材40を挟んで積層されていればよく、同一工程で同時に形成される必要はない。例えば、各芯線30の外周を被覆する被覆部51を押出成形等により形成し、それら各被覆部51の外周面に電磁シールド部材40を積層した後に、複数の電磁シールド部材40の外周を被覆する被覆部52を押出成形等により形成してもよい。
【0048】
・上記実施形態における被覆部51と被覆部52とを、互いに異なる樹脂材料で構成するようにしてもよい。例えば、被覆部52を光硬化性樹脂などの硬化性樹脂で構成し、被覆部51を硬化性樹脂よりも安価な樹脂材料で構成するようにしてもよい。このような構成であっても、被覆部52を硬化性樹脂で構成するようにしたため、上記実施形態の(6)及び(7)の作用効果を奏することができる。さらに、被覆部51を安価な樹脂材料で構成することにより、コスト低減を実現することができる。
【0049】
・上記実施形態では、各溝部61の横断面形状をV字状に形成したが、これに限定されない。例えば、各溝部61の横断面形状をU字状やI字状に形成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、連結部60に、電線20の長さ方向において所定の間隔を空けて複数の溝部61を形成するようにした。これに限らず、例えば、連結部60に、電線20の長さ方向の全長に亘って延びる溝部を形成するようにしてもよい。
【0050】
・上記実施形態では、連結部60に対して、厚さ方向の両側に溝部61を形成するようにした。これに限らず、連結部60に対して、厚さ方向の片側のみに溝部61を形成するようにしてもよい。
【0051】
・上記実施形態では、連結部60に溝部61を形成することにより、複数の電線20を連結部60において分割可能に構成したが、これに限定されない。
例えば図6に示すように、連結部60の内部に、絶縁被覆50を構成する樹脂とは異なる樹脂53を含有させるようにしてもよい。樹脂53は、例えば、絶縁被覆50にも含有されている。樹脂53は、連結部60及び絶縁被覆50の内部に点在するように設けられるようにしてもよいし、連結部60及びその連結部60近傍の絶縁被覆50の内部のみに設けられるようにしてもよい。樹脂53としては、例えば、絶縁被覆50を構成する樹脂と密着性の悪い樹脂を用いることができる。この構成によれば、連結部60における脆弱性が増すため、複数の電線20を連結部60に沿って切り裂きやすくなる。これにより、複数の電線20を連結部60で個々の電線20に分割することができる。この場合には、溝部61の形成を省略することができる。
【0052】
・上記実施形態では、絶縁被覆50を略全長に亘って光硬化又は熱硬化させるようにしたが、絶縁被覆50を部分的に光硬化又は熱硬化させるようにしてもよい。この構成によれば、絶縁被覆50(電線20)を部分的に形状固定することができる。
【0053】
・上記実施形態では、電線20の絶縁被覆50の外周面がワイヤハーネス10の外表面となるようにしたが、これに限定されない。
例えば図7に示すように、電線20の絶縁被覆50の外周を包囲する保護管100を設けるようにしてもよい。保護管100は、全体として長尺の筒状をなしている。保護管100の内部には、電線20が挿通されている。保護管100としては、例えば、金属製や樹脂製のパイプ、コルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。金属製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、アルミニウム系や銅系などの金属材料を用いることができる。樹脂製のパイプやコルゲートチューブの材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。
【0054】
このとき、電線20では、電磁シールド部材40の外周面を密着状態で絶縁被覆50の被覆部52によって覆されているため、電磁シールド部材40からの輻射熱が被覆部52で遮られる。すなわち、本変更例の被覆部52が、電磁シールド部材40からの輻射熱を遮蔽する遮蔽部材として機能する。このため、電磁シールド部材40からの輻射熱が保護管100に伝わることを抑制できる。これにより、保護管100の内部で熱が籠もることを抑制できる。
【0055】
なお、本変更例の場合には、保護管100を車体に固定するためのクランプは、保護管100の外周面に取り付けられる。
・上記実施形態では、複数の電線20をその端部で分割し、分割した複数の電線20をそれぞれ異なるコネクタC1に接続するようにした。しかし、電線20とコネクタC1との接続形態やワイヤハーネス10の配索経路は特に限定されない。
【0056】
例えば図8に示すように、複数の電線20を互いに離間させるように分割させた後に、それら離間させた複数の電線20を接近させて1つのコネクタC1に接続させるようにしてもよい。このとき、コネクタC1に接続される複数の電線20の端部は、互いに接近する位置に配置されているが、分割された状態で1つのコネクタC1に接続されている。このように、複数の電線20が連結部60で分割可能に構成されているため、ワイヤハーネス10のレイアウトの自由度を向上させることができる。
【0057】
・上記実施形態では、被覆部52の外周を、芯線30及び電磁シールド部材40の外周に沿った形状に形成したが、これに限定されない。
例えば図9に示すように、絶縁被覆50の横断面形状を、横並びに設けられた複数の芯線30及び電磁シールド部材40を一括して被覆する扁平形状に形成するようにしてもよい。例えば、被覆部52の外周の断面形状を、扁平形状に形成するようにしてもよい。本明細書において、「扁平形状」には、長方形、長円形や楕円形などが含まれる。本変更例の被覆部52の外周の断面形状は、長円形に形成されている。ここで、本明細書における「長円形」は、2つの略等しい長さの平行線と2つの半円形からなる形状である。
【0058】
この構成では、連結部60の厚さ方向の寸法が、図2に示した連結部60よりも厚くなる。具体的には、本変更例の連結部60の厚さ方向の寸法は、各電線20のうち芯線30の中心を通る位置における厚さ方向の寸法と略同じになる。このため、本変更例では、連結部60に溝部61を設けることが好ましい。
【0059】
・上記実施形態では、電磁シールド部材40を筒状部材80の外周面に固定するための連結部材としてカシメリング90を用いたが、これに限定されない。例えば、カシメリング90の代わりに、金属バンド、樹脂製の結束バンドや粘着テープ等を連結部材として用いてもよい。
【0060】
・上記実施形態における芯線30の横断面形状を、長円形、楕円形、長方形、正方形や半円状に形成してもよい。
・上記実施形態では、一体に形成される電線20が2本であったが、これに限定されない。車両の仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、一体に形成される電線20の本数は3本以上であってもよい。例えば、ワイヤハーネス10を構成する電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。
【0061】
・車両におけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、電線20によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続する電線に採用してもよい。すなわち、車両に搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…ワイヤハーネス、20…電線、30…芯線、40…電磁シールド部材、50…絶縁被覆、51…被覆部(第1被覆部)、52…被覆部(第2被覆部)、53…樹脂、60…連結部、61…溝部、70…クランプ、80…筒状部材、90…カシメリング(連結部材)、100…保護管、C1…コネクタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9