(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の座席におけるシートバックに車両の前後方向についての幅が短くなるよう畳まれた状態のサイドエアバッグが収納されており、そのサイドエアバッグに対しガスを供給することにより、前記サイドエアバッグを前記座席に着座した乗員と前記車両のボディサイド部との間で車両の前方に向けて展開及び膨張させるサイドエアバッグ装置において、
前記サイドエアバッグは、
展開及び膨張したときに前記乗員の頭部よりも下側の部分を保護する下側保護部と、展開及び膨張したときに前記下側保護部の上側に位置するとともに同下側保護部よりも車両の前方に突出して前記乗員の頭部を保護する上側保護部と、を備えており、
前記上側保護部を前記下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折り、下方に折られた前記上側保護部における前記下側保護部よりも車両の前方に突出する部分を同下側保護部に対し車両の幅方向内側に位置するよう車両の後方に折った状態のもと、車両の前後方向についての幅が短くなるように畳まれて前記シートバックに収納されている
ことを特徴とするサイドエアバッグ装置。
前記サイドエアバッグの上側保護部は、前記下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折られた部分の下端部が前記下側保護部の上端から上方にはみ出さないよう上方に折り返されており、そのように折られている前記上側保護部における前記下側保護部よりも車両の前方に突出する部分を同下側保護部に対し車両の幅方向内側に位置するよう車両の後方に折った状態のもと、車両の前後方向についての幅が短くなるように畳まれて前記シートバックに収納されている請求項1に記載のサイドエアバッグ装置。
前記サイドエアバッグの上側保護部であって前記下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折られた部分の下端部は、車両の前方側に向かうほど車両の下方側に位置するよう水平面に対して傾斜する折り目に沿って上方に折り返されている請求項2に記載のサイドエアバッグ装置。
前記サイドエアバッグの上側保護部は、前記下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折られた部分であって前記下側保護部よりも車両の前方に突出する部分が、同下側保護部に対し車両の幅方向内側に位置するよう車両の後方に折られており、その後方に折られた部分の後端部が前記下側保護部の前端から前方にはみ出さないよう前方に折り返された状態のもと、車両の前後方向についての幅が短くなるように畳まれて前記シートバックに収納されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
前記サイドエアバッグを車両の前後方向についての幅が短くなるように畳むことは、同サイドエアバッグを車両の前方側から後方側に扁平のロール状に畳むことによって実現されており、
前記サイドエアバッグは、扁平のロール状に畳まれた部分が車両の幅方向において薄くなるよう前記シートバックに収納されている請求項1〜4のいずれか一項に記載のサイドエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、展開及び膨張した上記エアバッグにより、乗員の頭部よりも下側の部分だけでなく乗員の頭部も保護しようとすると、その頭部を保護する部分(以下、上側保護部という)を設けることに伴い、上記エアバッグが大型化することは避けられない。更に、座席のシートバックとボディサイド部との間が狭い車両に対し、上記エアバッグ装置が適用されることもある。この場合、エアバッグがシートバックとボディサイド部との間で展開及び膨張するとき、エアバッグにおける初期に膨張する部分によって同エアバッグの折り畳まれた部分がボディサイド部に対して強く押し付けられるため、その折り畳まれた部分(上側保護部等)を好適に展開できないおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、座席に着座した乗員の頭部を保護するための上側保護部を備えたサイドエアバッグが、好適に展開及び膨張するようになるサイドエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するサイドエアバッグ装置では、車両の座席におけるシートバックに車両の前後方向についての幅が短くなるよう畳まれた状態のサイドエアバッグが収納されており、そのサイドエアバッグに対しガスを供給することにより、同サイドエアバッグを上記座席に着座した乗員と車両のボディサイド部との間で車両の前方に向けて展開及び膨張させる。上記サイドエアバッグは、展開及び膨張したときに乗員の頭部よりも下側の部分を保護する下側保護部と、展開及び膨張したときに前記下側保護部の上側に位置するとともに同下側保護部よりも車両の前方に突出して乗員の頭部を保護する上側保護部と、を備える。また、上記サイドエアバッグは、上側保護部を下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折り、下方に折られた上記上側保護部における下側保護部よりも車両の前方に突出する部分を同下側保護部に対し車両の幅方向内側に位置するよう車両の後方に折った状態のもと、車両の前後方向についての幅が短くなるように畳まれてシートバックに収納されている。
【0008】
上記構成によれば、シートバックに収容されたサイドエアバッグが展開及び膨張するに当たり、その展開及び膨張の初期にはサイドエアバッグにおける車両の前後方向についての幅が短くなるよう畳まれた部分が車両の前後方向に伸びる。その後、サイドエアバッグの下側保護部が膨張すると、同下側保護部をその車両の幅方向の外側から内側に至るまで水平方向に回り込むように位置する上側保護部が、上記膨張する下側保護部によって車両のボディサイド部と座席のシートバックとの間において、それらボディサイド部及びシートバックに押し付けられる。
【0009】
しかし、このときには、下側保護部の膨張に伴って上側保護部における下側保護部の車両の幅方向外側に位置する部分が、上側保護部における下側保護部の車両の幅方向内側に位置する部分を下側保護部とシートバックとの間から抜き出す方向に引っ張る。これにより、上側保護部における下側保護部の車両の幅方向内側に位置する部分が、下側保護部とシートバックとの間から前方に抜き出される。従って、上側保護部における下側保護部の車両の幅方向内側に位置する部分が、下側保護部によりシートバックに押し付けられることによって展開及び膨張できなくなることはない。その後、上側保護部における下側保護部の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部の膨張に伴って下側保護部とボディサイド部との間から上方に抜き出される。従って、上側保護部における下側保護部の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部によりボディサイド部に押し付けられることによって展開及び膨張できなくなることはない。
【0010】
以上のように、サイドエアバッグが展開及び膨張する際、膨張する下側保護部によって上側保護部がシートバック及びボディサイド部に押し付けられるとしても、それによって上側保護部が展開できなくなることはない。従って、サイドエアバッグにおける下側保護部及び上側保護部を好適に展開及び膨張させることができ、座席に着座した乗員の頭部をサイドエアバッグの上側保護部によって保護するとともに、その乗員の頭部よりも下側の部分をサイドエアバッグの下側保護部によって保護することができる。
【0011】
上記サイドエアバッグ装置において、上記サイドエアバッグの上側保護部は、下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折られた部分の下端部が下側保護部の上端から上方にはみ出さないよう上方に折り返されているものとすることが考えられる。そして、そのように折られている上側保護部における下側保護部よりも車両の前方に突出する部分が、同下側保護部に対し車両の幅方向内側に位置するよう車両の後方に折られた状態のもと、サイドエアバッグが車両の前後方向についての幅を短くするように畳まれてシートバックに収納される。
【0012】
上記構成によれば、サイドエアバッグの上側保護部における下側保護部の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部の膨張に伴って下側保護部とボディサイド部との間から上方に抜き出されるとき、上側保護部は下側保護部との間の折り目(下側保護部の上端)を中心に上方に回動(展開)しようとする。上側保護部は上述したように下方に折るとともに上方に折り返されているため、上側保護部の上下方向についての幅を短くすることができ、上側保護部が上述したように回動する際の回動軌跡が小さく抑えられる。従って、サイドエアバッグの上側保護部における下側保護部の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部の膨張に伴って下側保護部とボディサイド部との間から上方に抜き出される際、それが行われやすくなる。
【0013】
上記サイドエアバッグ装置において、上記サイドエアバッグの上側保護部であって下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折られた部分の下端部は、車両の前方側に向かうほど車両の下方側に位置するよう水平面に対して傾斜する折り目に沿って上方に折り返されているものとすることが考えられる。
【0014】
車両の座席において、シートバックのフレームの上部には、シートベルトが挿通されるベルトガイド用のブラケットが取り付けられる場合がある。この場合、サイドエアバッグの上側保護部における下側保護部に対し下方に折られた部分であって車両の後方側に位置する部分が、サイドエアバッグの展開及び膨張時に上記ブラケットの下方に位置する。上記構成によれば、上側保護部における下側保護部に対し下方に折られた部分の下端部を上方に折り返す際の折り目が、上述したように傾斜している。このため、下側保護部の膨張に伴って上側保護部が下側保護部との境界部分(下側保護部の上端)を中心に上方に回動(展開)する際、その回動軌跡が上側保護部における車両の後方側の部分ほど小さくなる。これにより、下側保護部の膨張に伴って上側保護部が上述したように回動するとき、上側保護部における車両の後方側の部分が上記回動時にシートバックのフレームにおける上記ブラケットと干渉することを抑制できる。
【0015】
上記サイドエアバッグ装置において、上記サイドエアバッグの上側保護部は、下側保護部に対し車両の幅方向外側に位置するよう下方に折られた部分であって同下側保護部よりも車両の前方に突出する部分が、その下側保護部に対し車両の幅方向内側に位置するよう車両の後方に折られている。更に、その後方に折られた部分の後端部が下側保護部の前端から前方にはみ出さないよう前方に折り返された状態のもと、サイドエアバッグが車両の前後方向についての幅が短くなるよう畳まれてシートバックに収納されているものとすることが考えられる。
【0016】
上記構成によれば、サイドエアバッグの上側保護部における下側保護部の車両の幅方向内側に位置する部分が、下側保護部の膨張に伴って下側保護部とシートバックとの間から前方に抜き出されるとき、上記部分は下側保護部の前端を中心に前方に回動(展開)しようとする。上記部分に関しては、上述したように後方に折られるとともに前方に折り返されているため、車両の前後方向についての幅を短くすることができる。このため、上記部分が上述したように回動する際の回動軌跡は小さく抑えられる。従って、上記部分が下側保護部の膨張に伴って下側保護部とボディサイド部との間から上方に抜き出される際、それが行われやすくなる。
【0017】
上記エアバッグ装置において、サイドエアバッグを車両の前後方向についての幅が短くなるように畳むことは、同サイドエアバッグを車両の前方側から後方側に扁平のロール状に畳むことによって実現されている。そして、上記サイドエアバッグは、扁平のロール状に畳まれた部分が車両の幅方向において薄くなるようシートバックに収納されているものとすることが考えられる。
【0018】
上記構成によれば、シートバックにおける車両の幅方向において、畳まれたサイドエアバッグを収納するためのスペースを大きくとれない場合であっても、そのスペースに同サイドエアバッグを収納することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、座席に着座した乗員の頭部を保護するための上側保護部を備えたサイドエアバッグが、好適に展開及び膨張するようになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、自動車等の車両に適用されるサイドエアバッグ装置の一実施形態について、
図1〜
図17を参照して説明する。
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、車両の座席1におけるシートバック2の内部に畳まれた状態で収納されるエアバッグ(サイドエアバッグ)3と、そのエアバッグ3に対し膨張用ガスを供給するためのインフレータ4と、を備えている。インフレータ4は、エアバッグ3と共に、シートバック2の内部で同シートバック2に沿って略上下方向に延びるフレーム6に対し固定されている。このフレーム6の上部であってインフレータ4よりも上側には、シートベルトが挿通されるベルトガイド用のブラケット12が取り付けられている。
【0022】
なお、
図1のエアバッグ3においては、畳まれてシートバック2に収納された状態を破線で示す一方、インフレータ4からの膨張用ガスの供給を受けて展開及び膨張した状態を二点鎖線で示している。
【0023】
図2は、シートバック2の内部におけるエアバッグ3周りを拡大して示している。
図2から分かるように、シートバック2の内部に収容されたインフレータ4は、その周りを覆うリテーナ5に対し、かしめ等によって固定されている。更に、リテーナ5は、上下二段にそれぞれ設けられたボルト7及びナット8(
図2には上段のもののみ図示)により、上記畳まれた状態のエアバッグ3と共にフレーム6に固定されている。これにより、インフレータ4がリテーナ5を介してシートバック2のフレーム6に対し固定されているとともに上記エアバッグ3もフレーム6に対し固定されている。
【0024】
図1に示すように、サイドエアバッグ装置は、インフレータ4によるエアバッグ3への膨張用ガスの供給を制御する制御装置9、及び、車両の側突を検出するための衝撃センサ10も備えている。この衝撃センサ10は、側突に基づく衝撃が車両に加わると、制御装置9に対し検出信号を出力する。制御装置9は、衝撃センサ10からの検出信号に基づき、インフレータ4を作動させてエアバッグ3に対し膨張用ガスを供給する。
【0025】
そして、畳まれた状態のエアバッグ3に対しインフレータ4から膨張用ガスが供給されると、同エアバッグ3が展開及び膨張してインフレータ4付近の部分をシートバック2内に残しつつ同シートバック2から前方(
図1の右方)に飛び出す。ちなみに、
図1に二点鎖線で示すように展開及び膨張したエアバッグ3の大きさは、乗員P1の頭部よりも下側の部分を保護するだけでなく、乗員P1の頭部も保護することができる大きさとなっている。
【0026】
上述したようにシートバック2から飛び出したエアバッグ3は、
図3に二点鎖線で示すように、座席1に着座した乗員P1と車両におけるドア及びピラー等のボディサイド部11との間において、車両の前方(
図3の右方)に向けて展開及び膨張される。なお、
図3の白抜き矢印は、車両の側突によってボディサイド部11に衝撃が加わるときの同衝撃の加わる方向を表している。
【0027】
次に、エアバッグ3について詳しく説明する。
図4に示すように、エアバッグ3は、一枚の布片13を折り線L1に沿って二つに折って厚さ方向に重ね、その重ねられた部分の周縁同士を太破線L2で示す位置にて互いに結合させることによって袋状に形成されている。エアバッグ3の下部であって折り線L1の近傍には、布片13同士が結合されていない部分(太破線L2以外の部分)には、エアバッグ3の内外を連通する開口部14が形成されている。そして、この開口部14を介してエアバッグ3の内部にリテーナ5(インフレータ4)を挿入することが可能となっている。
【0028】
また、布片13における折り線L1で二つに折られて厚さ方向に重ねられた部分のうちの一方であって、
図4における開口部14の上側に位置する部分には、上下一対の取付孔15が形成されている。これら取付孔15は、エアバッグ3の後端部(
図4の左端部)をシートバック2のフレーム6(
図2)に取り付けるためのものである。すなわち、リテーナ5をエアバッグ3の内部に挿入した状態のもと、同リテーナ5をフレーム6(
図2)に固定するためのボルト7が布片13の取付孔15(
図4)に通され、そのボルト7及びナット8(
図2)を用いて上記エアバッグ3がリテーナ5と共にフレーム6に対し固定される。なお、こうしたエアバッグ3の上記フレーム6に対する固定は、エアバッグ3におけるリテーナ5から離れた部分が車両の前方側(
図4の右側)に位置した状態となるように行われる。
【0029】
エアバッグ3は、展開及び膨張したときに乗員の頭部よりも下側の部分を保護する下側保護部16と、展開及び膨張したときに上記下側保護部16の上側に位置するとともに同下側保護部16よりも車両の前方に突出して乗員の頭部を保護する上側保護部17と、を備えている。また、上記下側保護部16は、上記開口部14及び上記取付孔15が形成されている初期膨張領域16aと、その初期膨張領域16aの下側に位置する下部膨張領域16bと、を有している。そして、エアバッグ3は、
図4に示すように広げられた状態から折り畳まれ、その折り畳まれた状態でシートバック2の内部に収容されている。以下、シートバック2の内部に収容するためのエアバッグ3の折り畳みの手順について詳しく述べる。
【0030】
(手順1)
図4に示すように、エアバッグ3の下側保護部16における初期膨張領域16aの内部には、開口部14を介してリテーナ5及びインフレータ4が挿入される。そして、初期膨張領域16aの内周部に挿入されたリテーナ5のボルト7が、その初期膨張領域16aに形成された取付孔15に挿通される。この状態のもと、下側保護部16の下部膨張領域16bが、
図5(a)及び
図5(b)に示されるようにエアバッグ3の内部側(
図4の上側)に向けて凹むように内折りに折り畳まれる。なお、
図5(b)は、
図5(a)のエアバッグ3を矢印A−A方向から見た状態を示している。
【0031】
(手順2)
手順1を行った後、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、エアバッグ3における上側保護部17は、下側保護部16に対し車両の幅方向外側(
図6(b)の左側)に位置するよう下方に折られる。なお、
図6(b)は、
図6(a)のエアバッグ3を矢印B−B方向から見た状態を示している。このとき、下方に折られた上側保護部17の前端部(
図6(a)の右端部)は、下側保護部16よりも車両の前方(
図6(a)の右方)に突出するようになる。
【0032】
(手順3)
手順2で下方に折られた上側保護部17(
図6(a))において、その下端部が
図7(a)及び
図7(b)に示すように下側保護部16の上端から上方にはみ出さないよう上方に折り返される。詳しくは、上側保護部17の上記下端部は、車両の前方側(
図7(a)の右方側)に向かうほど車両の下方側に位置するよう水平面に対して傾斜する折り目L3に沿って上方に折り返されている。なお、
図7(b)は、
図7(a)のエアバッグ3を矢印C−C方向から見た状態を示している。
【0033】
(手順4)
その後、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、エアバッグ3(下側保護部16及び上側保護部17)が、リテーナ5付近で上下方向に延びる折り線L4に沿って車両の車幅方向外側(
図8(b)の上側)に倒れるように同車両の後方側(
図8(a)の左方側)に折り返される。なお、
図8(b)は、図(a)のエアバッグ3を下方から見た状態を示している。
【0034】
(手順5)
更に、上側保護部17において、下側保護部16よりも
図8(a)の左方に突出する部分を、
図9(a)及び
図9(b)の右方側に倒れるよう同下側保護部16における上記上側保護部17と反対側に折り畳む。なお、
図9(b)は、
図9(a)のエアバッグ3を下方から見た状態を示している。
【0035】
ちなみに、
図9(a)に示すように折られたエアバッグ3は、仮に手順4での折り線L4に沿った折り返しが行われていないとすると、手順5において次のように折り畳まれている、とも言い換えることができる。すなわち、
図7(a)に示すように、上側保護部17において下側保護部16よりも車両の前方に突出する部分が、
図10(a)に破線、及び、
図10(b)に実線で示すように、下側保護部16に対し車両の幅方向内側(
図10(b)の下側)に位置するよう車両の後方(
図10(b)の左方)に折り畳まれている。なお、
図10(b)は、
図10(a)のエアバッグ3を下方から見た状態を示している。
【0036】
(手順6)
上側保護部17において、手順5で
図9(a)及び
図9(b)の右方側に倒れるように折られた部分の右端部は、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、下側保護部16の左端部から左方にはみ出さないように左方に折り返される。なお、
図11(b)は、
図11(a)のエアバッグ3を下方から見た状態を示している。
【0037】
ちなみに、
図11(a)及び
図11(b)に示すように折られたエアバッグ3は、仮に手順4での折り線L4に沿った折り返しが行われていないとすると、手順6において次のように折られている、とも言い換えることができる。すなわち、
図10に示す上側保護部17であって、下側保護部16に対し車両の幅方向内側(
図10(b)の下側)に位置するよう車両の後方に折られた部分の後端部(
図10(b)の左端部)が、
図12(a)に破線、及び、
図12(b)に実線で示すように、下側保護部16の前端から前方にはみ出さないよう前方に折り返されている。なお、
図12(b)は、
図12(a)のエアバッグ3を下方から見た状態を示している。
【0038】
(手順7)
その後、エアバッグ3を
図13に矢印で示すように扁平のロール状に畳む。このように畳まれるエアバッグ3は、仮に手順4での折り線L4に沿った折り返しが行われていないとすると、手順7において次のように扁平のロール状に畳まれている、とも言い換えることができる。すなわち、
図12(a)に示すエアバッグ3が、
図14に矢印で示すように、車両の前方側(
図14の右方側)から後方側(
図14の左方側)に向けて扁平のロール状となるよう畳まれている。
【0039】
(手順8)
更に、上記エアバッグ3において、上述したように扁平のロール状に畳まれた部分よりもリテーナ5寄りの部分は、車両の前後方向で折り返される蛇腹状態に折り畳まれる。このときの上記エアバッグ3を
図15(a)及び
図15(b)に示す。なお、
図15(b)は、
図15(a)のエアバッグ3を下方から見た状態を示している。そして、エアバッグ3を上述した手順7のように扁平のロール状に畳むとともに手順8のように蛇腹状に折り畳むことにより、同エアバッグ3が車両の前後方向(
図15(a)及び
図15(b)の左右方向)についての幅が短くなるようにされる。
【0040】
以上のように手順1〜8を通じて折り畳まれたエアバッグ3は、
図2に示すように扁平のロール状に畳まれた部分が車両の幅方向(
図2の上下方向)において薄くなるようシートバック2に収納されており、ボルト7及びナット8を用いてリテーナ5と共にシートバック2のフレーム6に対し固定されている。
【0041】
次に、サイドエアバッグ装置の動作について説明する。
側突に基づく衝撃が車両に加わると、座席1のシートバック2の内部で折り畳まれているエアバッグ3(
図2)に対し、インフレータ4からの膨張用ガスが供給されることにより、同エアバッグ3が展開及び膨張し始める。エアバッグ3における展開及び膨張の初期には、同エアバッグ3における車両の前後方向についての幅が短くなるよう畳まれた部分、すなわち蛇腹状に折り畳まれた部分及び扁平のロール状に畳まれた部分が車両の後方側から前方側に向けて伸びる。
【0042】
図16は、展開及び膨張の初期に、エアバッグ3における蛇腹状に折り畳まれた部分、及び、扁平のロール状に畳まれた部分が、車両の後方側から前方側に向けて伸びた状態であって、その伸びた部分の先端を上方から見た状態を示している。このとき、インフレータ4が挿入されている下側保護部16が膨張ガスによって膨張すると、それに伴い下側保護部16における下部膨張領域16b(
図5)が、初期膨張領域16aから下方に飛び出すように伸びる。
【0043】
エアバッグ3が
図16に示す状態のときには、同エアバッグ3の上側保護部17が、下側保護部16を車両の幅方向の外側(
図16の下側)から内側(
図16の上側)に至るまで水平方向に回り込むように位置している。その後、インフレータ4からの膨張ガスの供給に伴い、エアバッグ3の下側保護部16が膨張すると、同下側保護部16によって上記上側保護部17が車両のボディサイド部11と座席1のシートバック2との間において、それらボディサイド部11及びシートバック2に押し付けられる。
【0044】
しかし、このときには、下側保護部16の膨張に伴って上記上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向外側に位置する部分が、上記上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側に位置する部分を、下側保護部16とシートバック2との間から抜き出す方向(
図16の矢印方向)に引っ張る。これにより、上記上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側に位置する部分が、
図16に二点鎖線で示されるように下側保護部16とシートバック2との間から前方(
図16の右方)に抜き出される。従って、上記上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側に位置する部分が、下側保護部16によりシートバック2に押し付けられることによって展開及び膨張できなくなることはない。
【0045】
上記上側保護部17が
図16の二点鎖線で示すように変位したエアバッグ3を車両の後方側から見た状態を
図17に示す。
図17の下側保護部16が膨張すると、上記上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向外側(
図17の右側)に位置する部分が、下側保護部16の膨張に伴って下側保護部16とボディサイド部11との間から
図17の二点鎖線で示すように上方に抜き出される。従って、上記上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部16によりボディサイド部11に押し付けられることによって展開及び膨張できなくなることはない。そして、
図1に二点鎖線で示すように展開及び膨張したエアバッグ3は、側突に基づく衝撃から乗員P1の頭部、及び、それよりも下側の部分を保護する。
【0046】
上述したように、エアバッグ3が展開及び膨張する際、膨張する下側保護部16によって上側保護部17がシートバック2及びボディサイド部11に押し付けられるとしても、それによって上側保護部17が展開できなくなることはない。従って、エアバッグ3における下側保護部16及び上側保護部17を好適に展開及び膨張させることができ、座席1に着座した乗員P1の頭部をエアバッグ3の上側保護部17によって保護するとともに、その乗員P1の頭部よりも下側の部分をエアバッグ3の下側保護部16によって保護することができる。
【0047】
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)座席1に着座した乗員P1の頭部を保護するための上側保護部17を備えたエアバッグ3が、好適に展開及び膨張するようになる。
【0048】
(2)
図17に示すように、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部16の膨張に伴って下側保護部16とボディサイド部11との間から上方に抜き出されるとき、上側保護部17は下側保護部16との間の境界部分(下側保護部16の上端)を中心に上方に回動(展開)しようとする。
【0049】
上側保護部17においては、下側保護部16に対し下方に折るとともに、その折られた部分の下端部が上方に折り返されている。このため、上側保護部17の上下方向についての幅を短くすることができ、上側保護部17が上述したように回動する際の回動軌跡が小さく抑えられる。
【0050】
ちなみに、
図6(b)に示されるように、上側保護部17が下側保護部16に対し下方に折られただけの状態で、上側保護部17が上述したように回動したとすると、その際の回動軌跡は二点鎖線で示されるように大きくなる。一方、本実施形態のように、上側保護部17が下側保護部16に対し下方に折られた後、その折られた部分の下端部が上方に折り返されている場合、上側保護部17が上述したように回動する際の回動軌跡は、
図7(b)に二点鎖線で示されるように小さく抑えられる。
【0051】
従って、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向外側に位置する部分が、下側保護部16の膨張に伴って下側保護部16とボディサイド部11との間から上方に抜き出される際、それが行われやすくなる。
【0052】
(3)
図1に示すように、車両の座席1において、シートバック2のフレーム6の上部には、シートベルトが挿通されるベルトガイド用のブラケット12が取り付けられている。この場合、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16に対し下方に折られた部分であって車両の後方側(
図7(a)の左端側)に位置する部分が、エアバッグ3の展開及び膨張時に上記ブラケット12の下方に位置する。
【0053】
ここで、上側保護部17における下側保護部16に対し下方に折られた部分の下端部を上方に折り返す際の折り目L3は、車両の前方側(
図7(a)の右方側)に向かうほど車両の下方側に位置するよう水平面に対して傾斜している。このため、下側保護部16の膨張に伴って上側保護部17が下側保護部16の上端を中心に上方に回動(展開)する際、その回動軌跡(
図7(b)の二点鎖線)が上側保護部17における車両の後方側(
図7(a)の左端側)の部分ほど小さくなる。
【0054】
従って、下側保護部16の膨張に伴って上側保護部17が上述したように回動するとき、上側保護部17における車両の後方側の部分が上記回動時にシートバック2のフレーム6における上記ブラケット12と干渉することを抑制できる。
【0055】
(4)
図16に示すように、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側(
図16の上側)に位置する部分が、下側保護部16の膨張に伴って下側保護部16とシートバック2との間から前方(
図16の右方)に抜き出されるとき、上記部分は下側保護部16の前端を中心に前方に回動(展開)しようとする。
【0056】
上側保護部17の上記部分に関しては、車両の後方側(
図16の左方側)に位置する部分で前方(
図16の右方)に折り返されているため、車両の前後方向についての幅を短くすることができる。このため、上記部分が上述したように回動する際の回動軌跡は小さく抑えられる。
【0057】
ちなみに、
図10(b)に示されるように、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側(
図10(b)の上側)に位置する部分が、車両の前方側に折り返されていない状態で、上述したように回動したとすると、その際の回動軌跡は
図10(b)に二点鎖線で示されるように大きくなる。一方、本実施形態のように、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側(
図12(b)の下側)に位置する部分が前方に折り返されている場合、その部分における上記回動の際の回動軌跡は、
図12(b)に二点鎖線で示されるように小さく抑えられる。
【0058】
従って、エアバッグ3の上側保護部17における下側保護部16の車両の幅方向内側の部分が、下側保護部16の膨張に伴って下側保護部16とボディサイド部11との間から前方に抜き出される際、それが行われやすくなる。
【0059】
(5)サイドエアバッグ装置において、エアバッグ3を車両の前後方向についての幅が短くなるように畳むことは、同エアバッグ3を車両の前方側から後方側に扁平のロール状に畳むことによって実現されている。そして、上記エアバッグ3は、
図2に示すように、扁平のロール状に畳まれた部分が車両の幅方向(
図2の上下方向)において薄くなるよう、シートバック2の内部に収納されている。従って、シートバック2における車両の幅方向において、畳まれたエアバッグ3を収納するためのスペースSP(
図2)を大きくとれない場合であっても、そのスペースSPに同エアバッグ3を収納することができる。
【0060】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・エアバッグ3をシートバック2の内部に収納するに当たり、必ずしも扁平のロール状に畳まれた部分が車両の幅方向において薄くなるようエアバッグ3をシートバック2の内部に収容する必要はない。
【0061】
・エアバッグ3の車両の前後方向についての幅を短くするため、同エアバッグ3を扁平のロール状に畳むとともに蛇腹状に折り畳んだりしたが、それらの畳み方の一方のみを採用することも可能である。また、エアバッグ3をロール状に畳む際には、必ずしも扁平となるようにする必要はない。
【0062】
・エアバッグ3を畳む際に手順5を省略し、そのように手順5を省略して畳まれたエアバッグ3をシートバック2の内部に収納してもよい。
・エアバッグ3を畳む際の手順3において、折り目L3は必ずしも上記実施形態のように傾斜している必要はない。例えば、折り目L3の水平面に対する傾斜角度を変えたり、折り目L3を水平にしたりすることも可能である。
【0063】
・エアバッグ3を畳む際に手順3を省略し、そのように手順3を省略して畳まれたエアバッグ3をシートバック2の内部に収納してもよい。
・エアバッグ3を畳む際に手順4を省略し、そのように手順4を省略して畳まれたエアバッグ3をシートバック2の内部に収納してもよい。