(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
膨張完了時の外周壁が、乗員を受け止める後壁部と、該後壁部の上縁から前方に延びる上壁部と、前記後壁部の下縁から前方に延びて、前端側で前記上壁部と接続され、膨張用ガスを流入させるための流入用開口を有する下壁部と、前記後壁部の左縁から、前記上壁部と前記下壁部とに上下の縁を接続させつつ前方に延びる左壁部と、前記後壁部の右縁から、前記上壁部と前記下壁部とに上下の縁を接続させつつ前方に延びる右壁部と、を備えて構成されて、
前記後壁部を構成する後面側のパネルが、左右二分割された左後パネルと右後パネルから構成される助手席用エアバッグであって、
前記左後パネルと前記右後パネルとが、
それぞれの前記後壁部の下縁側から左右の縁側にかける部位を、前記下壁部の左側と前記左壁部とを形成する左側パネルの後側縁と、前記下壁部の右側と前記右壁部とを形成する右側パネルの後側縁と、に結合させる構成とするとともに、
前記後壁部の左右の縁側となる部位を、相互の分割ラインと略平行な直線状とし、かつ、下縁側にかけて、左右方向の幅寸法を狭めるような曲線状とし、
前記左側パネルの後側縁と前記右側パネルの後側縁とが、それぞれ、前記左後パネルと前記右後パネルとの前記後壁部の左右の縁側に対応する直線状部位と、前記左後パネルと前記右後パネルとの下縁側に対応する曲線状部位と、を備えるとともに、
前記左側パネルの後側縁と前記右側パネルの後側縁との前記曲線状部位が、前記左側パネルと前記右側パネルとを、それぞれ、前記下壁部の部位を前後方向に沿わせて平らに展開した状態として、前記左後パネルと前記右後パネルとの前記分割ラインの下端と結合される後端部から前記直線状部位にわたる曲線の中央付近を、前記後端部より後方側に突出させる曲線として、構成されていることを特徴とする助手席用エアバッグ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の助手席用エアバッグでは、左後パネルと右後パネルとが、それぞれの下縁側を、下壁部の左右方向に延びる後縁の左側と右側とに連結させ、かつ、左右方向の幅寸法を下縁側に向かって広げるような形状としていることから、膨張完了時、後壁部の下部側の左右両側が膨らみ、容積を大きくしていた。そのため、後壁部の上部の左右両側で、乗員を受け止める左右方向の幅寸法をを確保しつつ、容積を小さくする構成とする場合には、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張完了時の後壁部の上部側における乗員拘束エリアの左右方向の幅寸法を確保して、容積を低減できる助手席用エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る助手席用エアバッグは、膨張完了時の外周壁が、乗員を受け止める後壁部と、該後壁部の上縁から前方に延びる上壁部と、前記後壁部の下縁から前方に延びて、前端側で前記上壁部と接続され、膨張用ガスを流入させるための流入用開口を有する下壁部と、前記後壁部の左縁から、前記上壁部と前記下壁部とに上下の縁を接続させつつ前方に延びる左壁部と、前記後壁部の右縁から、前記上壁部と前記下壁部とに上下の縁を接続させつつ前方に延びる右壁部と、を備えて構成されて、
前記後壁部を構成する後面側のパネルが、左右二分割された左後パネルと右後パネルから構成される助手席用エアバッグであって、
前記左後パネルと前記右後パネルとが、
それぞれの前記後壁部の下縁側から左右の縁側にかける部位を、前記下壁部の左側と前記左壁部とを形成する左側パネルの後側縁と、前記下壁部の右側と前記右壁部とを形成する右側パネルの後側縁と、に結合させる構成とするとともに、
前記後壁部の左右の縁側となる部位を、相互の分割ラインと略平行な直線状とし、かつ、下縁側にかけて、左右方向の幅寸法を狭めるような曲線状とし、
前記左側パネルの後側縁と前記右側パネルの後側縁とが、それぞれ、前記左後パネルと前記右後パネルとの前記後壁部の左右の縁側に対応する直線状部位と、前記左後パネルと前記右後パネルとの下縁側に対応する曲線状部位と、を備えるとともに、
前記左側パネルの後側縁と前記右側パネルの後側縁との前記曲線状部位が、前記左側パネルと前記右側パネルとを、それぞれ、前記下壁部の部位を前後方向に沿わせて平らに展開した状態として、前記左後パネルと前記右後パネルとの前記分割ラインの下端と結合される後端部から前記直線状部位にわたる曲線の中央付近を、前記後端部より後方側に突出させる曲線として、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る助手席用エアバッグでは、後壁部を構成する左後パネルと右後パネルにおける左右方向の幅寸法を狭める曲線状の下縁を、左側パネルと右側パネルとの後縁側における曲線状部位に結合させる構成であり、その曲線状部位は、左後パネルと右後パネルとの分割ラインの下端と結合される後端部から直線状部位にわたる曲線の中央付近を、後端部より後方側に突出させる曲線としている。そのため、後壁部を構成する左後パネルと右後パネルとの下縁側が、左右方向の幅寸法を狭めて、後壁部の下縁側の左右の部位の容積を狭めることとなる。そしてさらに、左後パネルと右後パネルとを結合させてなる後壁部の下縁の中央付近が、前方に湾曲して配置されるような左側パネルと右側パネルとの後端部に結合されて、前方に引っ張られることから、さらに、後壁部の下縁側の左右の幅寸法を実質的に狭めて、その部位の容積を狭める構成となり、その結果、膨張完了時のエアバッグの容積を低減することができる。そして、後壁部は、上部側の左右方向の幅寸法を、乗員を好適に受止可能な寸法に設定しておけば、後壁部を構成する左後パネルや右後パネルの下縁側の左右方向の幅寸法を狭めたり、あるいは、後壁部の下縁側の中央付近を前方に引っ張る構成は、後壁部の上部の左右方向の幅寸法を減少させるような作用を生じさせないことから、容積を低減させても、後壁部の上部側での乗員拘束エリアは、十分確保できる。
【0008】
したがって、本発明に係る助手席用エアバッグでは、膨張完了時の後壁部の上部側における乗員拘束エリアの左右方向の幅寸法を確保して、容積を低減することができる。
【0009】
そして、本発明に係る助手席用エアバッグでは、前記下壁部が、前記流入用開口を含めて、左右に二分割された左下パネルと右下パネルとを相互に結合させて構成されるとともに、
前記左下パネルと前記右下パネルとの相互の結合縁が、平らに展開した状態で、前記流入用開口の部位の後方側で、相互に交差するように湾曲して重なる湾曲部、を配設させて構成されていることが望ましい。
【0010】
このような構成では、膨張完了時に、下壁部が、流入用開口の後方側で、前部側より後部側を下方に曲げるような下方へ湾曲する形状を確保でき、助手席前方における助手席用エアバッグ装置が搭載されるインストルメントパネルの上面側に密着しやすい。そのため、膨張完了時の後壁部の下縁側が左右方向の幅寸法を狭めていても、インストルメントパネルと接触する面積を広く確保できて、乗員受け止め時、インストルメントパネルからの反力を的確に確保できる。
【0011】
この場合、本発明に係る助手席用エアバッグでは、外周壁が、左右に二分割される左側シート材と右側シート材とから構成され、
前記左側シート材が、
前記左側パネルを備えて構成されるとともに、
前記左側パネルの上縁側に、前記上壁部を左右二分割した左側の左上パネルを延設させ、前記左側パネルの後縁側の上部に、前記左後パネルを延設させ、前記左側パネルの下縁側に、前記左下パネルを配設させて構成され、
前記右側シート材が、
前記右側パネルを備えて構成されるとともに、
前記右側パネルの上縁側に、前記上壁部を左右二分割した右側の右上パネルを延設させ、前記右側パネルの後縁側の上部に、前記右後パネルを延設させ、前記右側パネルの下縁側に、前記右下パネルを配設させて構成されていることが望ましい。
【0012】
このような構成では、膨張完了時に、下壁部における流入用開口の後方側が下方に湾曲する形状として、下壁部を形成する左下パネルと右下パネルとが、左右に分離する構成としていても、それらに連なる部位が、左側シート材と右側シート材として、エアバッグ自体を、左右に二分割する構成としている。すなわち、エアバッグ全体が、下壁部の湾曲形状を確保できるように構成するための左側シート材と右側シート材との最少数の構成の二枚のシート材から形成されており、所定の縁相互を結合する箇所を少なくできて、結合作業を、極力、少なくしてエアバッグを製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の助手席用エアバッグ15(以下、適宜、エアバッグと略す)は、
図1,2に示すように、助手席の前方に配置される助手席用エアバッグ装置SAに使用される。助手席用エアバッグ装置SAは、
図1に示すように、ウインドシールド4の下方におけるインストルメントパネル(以下「インパネ」と省略する)1の上面2側の内部に搭載されるトップマウントタイプとされている。
【0015】
このエアバッグ装置SAは、折り畳まれて収納されたエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給するインフレーター8と、エアバッグ15及びインフレーター8を収納保持する収納部位としてのケース12と、エアバッグ15及びインフレーター8をケース12に取り付けるためのリテーナ9と、折り畳まれて収納されたエアバッグ15の上方を覆うエアバッグカバー6と、を備えて構成されている。
【0016】
エアバッグカバー6は、合成樹脂製のインパネ1と一体的に形成されて、展開膨張時のエアバッグ15に押されて前後両側に開く二枚の扉部6a,6bを備えて構成されている。また、エアバッグカバー6における扉部6a,6bの周囲には、ケース12に連結される連結壁部6cが形成されている。連結壁部6cには、ケース12の係止爪12cを係止するための係止孔6dが形成されている。
【0017】
インフレーター8は、複数のガス吐出口8bを有した略円柱状の本体部8aと、インフレーター8をケース12に取り付けるためのフランジ部8cと、を備えて構成されている。
【0018】
収納部位としてのケース12は、上端側に長方形状の開口を有した板金製の略直方体形状に形成され、インフレーター8を下方から挿入させて取り付ける略長方形板状の底壁部12aと、底壁部12aの外周縁から上方に延びてエアバッグカバー6の連結壁部6cを係止する周壁部12bと、を備えて構成されている。周壁部12bの上端には、連結壁部6cの係止孔6dに挿入されて、連結壁部6cを係止する係止爪12cが形成されている。
【0019】
そして、実施形態の場合、エアバッグ15とインフレーター8とは、エアバッグ15内に配置させたリテーナ9の各ボルト9aを、取付手段として、エアバッグ15における後述する流入用開口26の周縁の取付座27、ケース12の底壁部12a、及び、インフレーター8のフランジ部8cに、貫通させて、ナット10止めすることにより、ケース12の底壁部12aに取り付けられている。また、ケース12の底壁部12aには、車両のボディ側に連結される図示しないブラケットが、配設されている。
【0020】
エアバッグ15は、実施形態の場合、
図1〜3に示すように、膨張完了形状を、前端側を先細りとした略四角錐形状としており、膨張完了時の外周壁16が、後端側に配置されて乗員Mを受け止める略長方形状とした後壁部18を備えるとともに、後壁部18の外周縁から略四角錐形状に前方に延びる上壁部21、下壁部25、左壁部31、及び、右壁部33、を備えて構成されている。上壁部21は、後壁部18の上縁18aから前方に延びて、ベントホール22を有し、下壁部25は、後壁部18の下縁18bから前方に延びて、前端(前縁)25a側で上壁部21と接続され、膨張用ガスを流入させるための流入用開口26を有する。左壁部31は、後壁部18の左縁18cから、上壁部21と下壁部25とに上下の縁31a,31bを接続させつつ前方に延び、右壁部33は、後壁部18の右縁18dから、上壁部21と下壁部25とに上下の縁33a,33bを接続させつつ前方に延びている。
【0021】
そして、実施形態のエアバッグ15は、特徴部分として、
図6,7に示すように、後壁部18を構成する後面側のパネルが、左右二分割された左後パネル43と右後パネル53から構成され、そして、左後パネル43と右後パネル53とが、それぞれの後壁部18の下縁18b側から左右の縁18c,18d側にかける部位を、下壁部25の左側と左壁部31とを形成する左側パネル40の後側縁40aと、下壁部25の右側と右壁部33とを形成する右側パネル50の後側縁50aと、に結合させる構成としている。また、左後パネル43と右後パネル53とは、後壁部18の左右の縁18c,18d側となる部位を、相互の分割ラインSLと略平行な直線状とするとともに、下縁43c,53c側にかけて、左右方向の幅寸法を狭めるような曲線状(略1/4の円弧状)とする。そして、左側パネル40の後側縁40aと右側パネル50の後側縁50aとが、それぞれ、左後パネル43と右後パネル53との後壁部18の左右の縁18c,18d側に対応する直線状部位40b,50bと、左後パネル43と右後パネル53との下縁43c,53c側に対応する曲線状部位40c,50cと、を備える。さらに、左側パネル40の後側縁40aと右側パネル50の後側縁50aとの曲線状部位40c,50cが、左側パネル40と右側パネル50とを、それぞれ、下壁部25の部位を前後方向に沿わせて平らに展開した状態として、左後パネル43と右後パネル53との分割ラインSLの下端43e,53eと結合される後端部40d,50dから直線状部位40b,50bにわたる曲線の中央部位40e,50e付近を、後端部40d,50dより後方側に突出させる曲線として、構成されており、これらの構成が、実施形態のエアバッグ15の特徴部分としている。
【0022】
具体的には、実施形態のエアバッグ15は、外周壁16が、
図4〜6に示すように、左右に二分割される左側シート材38と右側シート材48とから構成されている。これらのシート材38,48は、ポリアミド糸やポリエステル糸等の織布から構成されて、左右の後パネル43,53の部位や左右のパネル40,50の部位も含めて、相互に、左右対称形としている。
【0023】
そして、左側シート材38が、左側パネル40を備えて構成されている。さらに、左側シート材38は、左側パネル40の上縁31a側に、上壁部21を左右二分割した左側の左上パネル41を延設させ、左側パネル40の後縁側(後側縁40a)の上部に、左後パネル43を延設させ、左側パネル40の下縁31b側に、下壁部25を左右二分割した左側の左下パネル42を配設させて構成されている。
【0024】
また、右側シート材48が、右側パネル50を備えて構成されている。さらに、右側シート材48は、右側パネル50の上縁33a側に、上壁部21を左右二分割した右側の右上パネル51を延設させ、右側パネル50の後縁側(後側縁50a)の上部に、後面パネル55を左右二分割した右側の右後パネル53を接続させ、右側パネル50の下縁33b側に、下壁部25を左右二分割した右側の右下パネル52を配設させて構成されている。
【0025】
下壁部25を左右に二分割した左下パネル42と右下パネル52とは、相互に結合させる先縁(結合縁)42a,52aが、流入用開口26の部位を含めて、下壁部25を左右に二分割するように形成されるとともに、特に、平らに展開した状態で、流入用開口26の部位の後方側で、相互に交差するように湾曲して重なる湾曲部42c,52c、を配設させて構成されている。
【0026】
なお、エアバッグ15内には、
図4に示すように、流入用開口26の周縁の取付座27を補強する二枚の補強布60、流入用開口26から流入する膨張用ガスを前後両側に案内する整流布62、後壁部18の後方への突出を規制するように、取付座27と後壁部18とを連結する縦テザー65、及び、左壁部31と右壁部33とが離隔しないように、左壁部31と右壁部33とを連結する横テザー69、が配設されている。さらに、整流布62の外縁62b,62b相互の縫合箇所を補強する当て布63、横テザー69における左壁部31と右壁部33との縫合箇所を補強する当て布70、ベントホール22の周縁を補強する補強布72、及び、湾曲部42c,52c相互の縫合箇所を補強する当て布74、を備えて構成されている。これらの布材は、シート材38,48と同様に、ポリアミド糸やポリエステル糸等の織布から構成されている。なお、整流布62は、外縁62b,62b相互を結合すれば、前後両側に膨張用ガスを流出する流出口62cが形成され、さらに、左右両側にも補助的に膨張用ガスを流出させる補助流出口62dを配設させている。
【0027】
実施形態のエアバッグ15の製造工程を説明すると、まず、左側シート材38と右側シート材48とにおいて、当て布70,74と補強布72とを縫合して、横テザー69を形成するための横テザー69の分割体としての帯片69aを縫合するとともに、先縁41a,51a側の強度を上げるために、先縁41a,51a側を折り返した折返し部位41b,51bを縫合する。すなわち、
図5のAに示すように、右側シート材48では、横テザー69の縫合部位に、当て布70を縫合し、湾曲部52cの部位に、当て布74を縫合し、ベントホール22の配設部位に、補強布72を縫合し、また、先縁51a側を折り返して縫合する。そして、
図5のBに示すように、当て布70の縫合箇所に、帯片69aを縫合する。このような作業は、左側シート材38でも、図示しないが、同様に、横テザー69の縫合部位に、当て布70を縫合し、湾曲部42cの部位に、当て布74を縫合し、ベントホール22の配設部位に、補強布72を縫合し、また、先縁41a側を折り返して縫合し、さらに、当て布70の縫合箇所に、帯片69aを縫合することとなる。
【0028】
その後、
図6のAに示すように、左側シート材38と右側シート材48との左右の左下パネル42と右下パネル52との相互の結合縁42a,52aを重ねて、左右方向の中央部位で、前縁側から湾曲部42c,52cの手前までの前部縁42b,52b相互を、縫合する。ついで、
図6のBに示すように、縦テザー65の前側部66の前部66a側と、整流布62の外縁62b,62b側を開いた状態の中央部62aを、流入用開口26の形成部位に重ねる。また、整流布62の外縁62b,62bに、当て布63,63を縫合する。
【0029】
ついで、
図7のAに示すように、流入用開口26の形成部位に、補強布60を重ねて、流入用開口26の周縁で、重ねた部位相互を縫合する。
【0030】
なお、実施形態では、これ以前の状態では、実際上、ベントホール22や流入用開口26は、開口されておらず、流入用開口26の周縁を縫合した後、孔開け加工により、流入用開口26やベントホール22、さらには、取付孔28を開口している。
【0031】
その後、
図7のBに示すように、左上パネル41の先縁41aと右上パネル51の先縁51a、左下パネル42の湾曲部42cと右下パネル52の湾曲部52c、左後パネル43の先縁43dと右後パネル53の先縁53d、をそれぞれ重ねるように、左側シート材38と右側シート材48とを、結合縁42a,52aの前部縁42b,52bの部位で折り返し、そして、重ねた縁41a,51a相互、湾曲部42c,52c相互とその後方側の後部縁42d,52d相互、及び、先縁43d,53d相互、を縫合する。なお、左後パネル43の先縁43dと右後パネル53の先縁53dとの相互の縫合時には、縦テザー65の後側部67の後縁67bも、共縫いする。
【0032】
ついで、
図8のA,Bに示すように、左後パネル43と右後パネル53とを平らに展開して、上縁43a,53aを、それぞれ、左上パネル41と右上パネル51との後縁41c,51cと縫合する。また、左側パネル40の後側縁40aの直線状部位40bと曲線状部位40cとを、左後パネル43の左縁43bと下縁43cとに重ね、同様に、右側パネル50の後側縁50aの直線状部位50bと曲線状部位50cとを、右後パネル53の右縁53bと下縁53cとに重ね、そして、重ねた縁相互を縫合する。
【0033】
その後、流入用開口26を利用して、表裏を反転させて、
図9に示すように、左上パネル41の前縁41dと左下パネル42の前縁42eとを重ね、同様に、右上パネル51の前縁51dと右下パネル52の前縁52eとを重ね、重ねた縁相互を縫合すれば、エアバッグ15の外周壁16を形成することができる。その後、流入用開口26を利用して、縦テザー65の前側部66の後部66bと後側部67の前縁67aとをエアバッグ15外に引き出して、相互を連結するように縫合し、同様に、横テザー69の帯片69a,69a相互を引き出して縫合し、さらに、整流布62の外縁62b,62b相互を引き出して、縫合し、そして、それらの縫合部位を、エアバッグ15内に収納すれば、エアバッグ15を製造することができる。
【0034】
このように製造したエアバッグ15は、各取付孔28からボルト9aを突出させるようにして、内部にリテーナ9を配置させ、そして、折り畳む。ついで、各ボルト9aをケース12の底壁部12aから突出させるようにして、ケース12内に収納させ、底壁部12aから突出している各ボルト9aを、インフレーター8のフランジ部8cに挿通させて、インフレーター8のフランジ部8cから突出した各ボルト9aにナット10を締結させれば、インフレーター8とともに、エアバッグ15をケース12に取り付けることができる。そして、車両に搭載されたインパネ1におけるエアバッグカバー6の連結壁部6cに対して、係止孔6dに係止爪12cを挿入させて、ケース12の周壁部12bを係止させ、ケース12の図示しない所定のブラケットを、車両のボディ側に固定させれば、エアバッグ装置SAを車両に搭載することができる。
【0035】
エアバッグ装置SAの車両への搭載後、車両の前面衝突時や斜突等に、インフレーター8の各ガス吐出口8bから膨張用ガスが吐出されれば、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて、エアバッグカバー6の扉部6a,6bを押し開いて形成される開口を経て、ケース12から上方へ突出するとともに、車両後方側に向かって突出しつつ展開膨張して、
図1,2に示すように、インパネ1の上面2とインパネ1上方のウインドシールド4との間を塞ぐように、膨張を完了させることとなる。
【0036】
そして、実施形態のエアバッグ15では、後壁部18を構成する左後パネル43と右後パネル53における左右方向の幅寸法を狭める曲線状の下縁43c,53cを、左側パネル40と右側パネル50との後縁側40a,50aにおける曲線状部位40c,50cに結合させる構成であり、その曲線状部位40c,50cは、左後パネル43と右後パネル53との分割ラインSLの下端43e,53eと結合される後端部40d,50dから直線状部位40b,50bにわたる曲線の中央部位40e,50e付近を、後端部40d,50dより後方側に突出させる曲線としている(
図7参照)。そのため、後壁部18を構成する左後パネル43と右後パネル53との下縁43c,53c側が、左右方向の幅寸法WDを狭めて(
図2参照)、後壁部18の下縁18b側の左右の部位の容積を狭めることとなる。そしてさらに、左後パネル43と右後パネル53とを結合させてなる後壁部18の下縁18bの中央18bc付近が、前方に湾曲して配置されるような左側パネル40と右側パネル50との後端部40d,50dに結合されて、前方に引っ張られることから(
図1参照)、さらに、後壁部18の下縁18b側の左右の幅寸法WDを実質的に狭めて、その部位の容積を狭める構成となり、その結果、膨張完了時のエアバッグ15の容積を低減することができる。そして、後壁部18は、上部19側の左右方向の幅寸法WUを、乗員Mを好適に受止可能な寸法に設定しておけば(
図2参照)、後壁部18を構成する左後パネル43や右後パネル53の下縁43c,53c側の左右方向の幅寸法WDを狭めたり、あるいは、後壁部18の下縁18b側の中央18bc付近を前方に引っ張る構成は、後壁部18の上部19の左右方向の幅寸法WUを減少させるような作用を生じさせないことから、容積を低減させても、後壁部18の上部19側での乗員拘束エリアRAは、十分確保できる。
【0037】
したがって、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時の後壁部18の上部19側(上縁18a側)における乗員拘束エリアRAの左右方向の幅寸法WUを確保して、容積を低減することができる。
【0038】
そして、実施形態の助手席用エアバッグ15では、下壁部25が、流入用開口26を含めて、左右に二分割された左下パネル42と右下パネル52とを相互に結合させて構成されるとともに、左下パネル42と右下パネル52との相互の結合縁42a,52aが、平らに展開した状態で、流入用開口26の部位の後方側で、相互に接近して交差するように湾曲して重なる湾曲部42c,52c、を配設させて構成されている。
【0039】
そのため、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時に、下壁部25が、流入用開口26の後方側で、前部側より後部側を下方に曲げるような下方へ湾曲する湾曲部29の形状を確保でき、助手席前方における助手席用エアバッグ装置SAが搭載されるインパネ1の上面2側に密着しやすい。そのため、膨張完了時の後壁部18の下縁18b側が左右方向の幅寸法WUを狭めていても、インパネ1と接触する面積を広く確保できて、乗員Mの受け止め時、インパネ1からの反力を的確に確保できる。
【0040】
この場合、実施形態のエアバッグ15では、外周壁16が、左右に二分割される左側シート材38と右側シート材48とから構成されている。そして、左側シート材38が、左側パネル40を備えて構成されている。さらに、左側シート材38は、左側パネル40の上縁31a側に、上壁部21を左右二分割した左側の左上パネル41を延設させ、左側パネル40の後縁側(後側縁40a)の上部に、左後パネル43を延設させ、左側パネル40の下縁31b側に、左下パネル42を配設させて、接続させて構成されている。
【0041】
また、右側シート材48が、右側パネル50を備えて構成されている。さらに、右側シート材48は、右側パネル50の上縁33a側に、上壁部21を左右二分割した右側の右上パネル51を延設させ、右側パネル50の後縁側(後側縁50a)の上部に、右後パネル53を延設させ、右側パネル50の下縁33b側に、右下パネル52を配設させて構成されている。
【0042】
そのため、実施形態のエアバッグ15では、膨張完了時に、下壁部25における流入用開口26の後方側が下方に湾曲する湾曲部29を有する形状として、下壁部25を形成する左下パネル42と右下パネル52とが、左右に分離する構成としていても、それらに連なる部位が、左側シート材38と右側シート材48として、エアバッグ15自体を、左右に二分割する構成としている。すなわち、エアバッグ15全体が、下壁部25の湾曲形状を確保できるように構成するための左側シート材38と右側シート材48との最少数の構成の二枚のシート材から形成されており、所定の縁相互を結合する箇所を少なくできて、結合作業を、極力、少なくしてエアバッグ15を製造することが可能となる。
【0043】
なお、実施形態では、下壁部25を左右二分割した場合を示したが、
図10に示すように、湾曲部29を形成する構成としなければ、左下パネル42と右下パネル52とを連結させた1枚のシート材35から、エアバッグ15Aを形成してもよい。なお、このシート材35では、左下パネル42と右下パネル52とが連なって、その部位の左右両側に、左側パネル40Aと右側パネル50Aとが、予め、連結された状態として、構成されている。左下パネル42と右下パネル52との連結された部位、すなわち、下壁部25を形成する部位には、流入用開口26と取付孔28とが配設される。
【0044】
そして、このエアバッグ15Aでも、後壁部18を構成する後面側のパネルが、左右二分割された左後パネル43と右後パネル53から構成され、そして、左後パネル43と右後パネル53とが、それぞれの後壁部18の下縁18b側から左右の縁18c,18d側にかける部位を、下壁部25の左側と左壁部31とを形成する左側パネル40Aの後側縁40aと、下壁部25の右側と右壁部33とを形成する右側パネル50Aの後側縁50aと、に結合させる。左後パネル43と右後パネル53とは、後壁部18の左右の縁18c,18d側となる部位を、相互の分割ラインSLと略平行な直線状とするとともに、下縁43c,53c側にかけて、左右方向の幅寸法を狭めるような曲線状(略1/4の円弧状)とする。そして、左側パネル40Aの後側縁40aと右側パネル50Aの後側縁50aとが、それぞれ、左後パネル43と右後パネル53との後壁部18の左右の縁18c,18d側に対応する直線状部位40b,50bと、左後パネル43と右後パネル53との下縁43c,53c側に対応する曲線状部位40c,50cと、を備える。さらに、左側パネル40Aの後側縁40aと右側パネル50Aの後側縁50aとの曲線状部位40c,50cが、左側パネル40Aと右側パネル50Aとを、それぞれ、下壁部25の部位を前後方向に沿わせて平らに展開した状態として、左後パネル43と右後パネル53との分割ラインSLの下端43e,53eと結合される後端部40d,50dから直線状部位40b,50bにわたる曲線の中央部位40e,50e付近を、後端部40d,50dより後方側に突出させる曲線として、構成されている。
【0045】
そのため、このエアバッグ15Aでも、後壁部18を構成する左後パネル43と右後パネル53における左右方向の幅寸法を狭める曲線状の下縁43c,53cを、左側パネル40Aと右側パネル50Aとの後縁側における曲線状部位40c,50cに結合させる構成であり、その曲線状部位40c,50cは、左後パネル43と右後パネル53との分割ラインSLの下端43e,53eと結合される後端部40d,50dから直線状部位40b,50bにわたる曲線の中央部位40e,50e付近を、後端部40d,50dより後方側に突出させる曲線としている。そのため、実施形態のエアバッグ15と同様に、後壁部18を構成する左後パネル43と右後パネル53との下縁43c,53c側が、左右方向の幅寸法を狭めて、後壁部18の下縁18b側の左右の部位の容積を狭めることとなる。そしてさらに、左後パネル43と右後パネル53とを結合させてなる後壁部18の下縁18bの中央18bc付近が、前方に湾曲して配置されるような左側パネル40Aと右側パネル50Aとの後端部40d,50dに結合されて、前方に引っ張られることから、さらに、後壁部18の下縁18b側の左右の幅寸法を実質的に狭めて、その部位の容積を狭める構成となり、その結果、膨張完了時のエアバッグ15Aの容積を低減することができる。そして、後壁部18は、上部19側の左右方向の幅寸法を、乗員を好適に受止可能な寸法に設定しておけば、後壁部18を構成する左後パネル43や右後パネル53の下縁43c,53c側の左右方向の幅寸法を狭めたり、あるいは、後壁部18の下縁18b側の中央18bc付近を前方に引っ張る構成は、後壁部18の上部19の左右方向の幅寸法を減少させるような作用を生じさせないことから、容積を低減させても、後壁部18の上部側での乗員拘束エリアは、十分確保でき、実施形態のエアバッグ15と同様なな作用・効果を得ることができる。
【0046】
なお、このシート材35でも、パネル40A,50Aの直線状部位40b,50bをパネル43,53の縁43b,53bに結合させ、パネル40A,50Aの曲線状部位40c,50cをパネル43,53の縁43c,53cに結合させ、パネル43,53の縁43d,53d相互を結合(縫合)する他、縁41c,43a相互、縁51c,53a相互、縁41a,51a相互を結合(縫合)し、さらに、縁41d,51dを縁42e,52eに結合(縫合)すれば、エアバッグ15Aの外周壁16を形成することができる。