(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は本発明に係る真空ポンプの第1の実施の形態を示す図であり、ターボ分子ポンプ10の断面図である。ターボ分子ポンプ10は、ボールベアリングを用いたメカニカル軸受型として例示されている。
ターボ分子ポンプ10は、外筒1とベース2とからなるケーシング3、および電源装置4を有する。電源装置4は、ベース2に固定され、図示はしないが、内部にケーシング3内に収容されたモータやセンサ等に電気的に接続される電力供給用配線基板や制御用配線基板を備えている。
ターボ分子ポンプ10は、以下に記載するように、ケーシング3内に、排気機能部として、タービン翼を備えたターボポンプ部と、螺旋型の溝を備えたHolweckポンプ部とを備えている。
【0009】
ターボ分子ポンプ10のケーシング3内には、ロータ13およびこのロータ13に一体的に設けられたロータ軸14が回転可能に収容されている。ロータ13とロータ軸14は、例えば、アルミニウム合金により形成され、それぞれ、例えば、焼き嵌めや冷し嵌め等の締まり嵌めにより一体化される。ロータ13は、ロータ軸14の軸方向に多段に配列された複数のロータ翼15と、ロータ翼15の下方に設けられた一対のロータ円筒部16a、16bとを有する。各ロータ翼15間にはステータ翼17が配置されている。各ステータ翼17間には、外筒1の内面に沿って配置されたスペーサ18が配置されている。ロータ13に形成された複数段のロータ翼15と、ロータ翼15に対して交互に配置された複数段のステータ翼17とでターボポンプ部TPが構成される。
【0010】
一対のロータ円筒部16a、16bの間にはステータ21が配置されている。ステータ21は、ベース2に固定されている。ステータ21とロータ円筒部16aの一方には、ねじ溝(図示せず)が設けられている。また、ステータ21とロータ円筒部16bの一方には、ねじ溝(図示せず)が設けられている。一対のロータ円筒部16a、16bとステータ21とでHolweckポンプ部が構成される。Holweckポンプ部は、ターボポンプ部の下流側に設けられている。
【0011】
ロータ軸14の軸方向(以下、単に軸方向ということもある)の中間部には、ロータ軸14を回転駆動するモータ22が設けられている。モータ22は、ロータ軸14に設けられたモータロータ22aと、ベース2に固定されたモータステータ22bにより構成される。ロータ軸14は、ロータ軸14の軸方向の上部側に設けられた永久磁石磁気軸受23と、ロータ軸14の軸方向の下部側に設けられたメカニカル軸受25により回転自在に支持されている。
【0012】
永久磁石磁気軸受23は、外筒1に取り付けられた磁石ホルダ24に設けられた複数の永久磁石23aと、ロータ13に設けられた複数の永久磁石23bとから構成される。複数の永久磁石23aと複数の永久磁石23bとは、軸方向に沿って平行に、かつ、等間隔に配列されている。複数の永久磁石23aと複数の永久磁石23bとは、S極とN極とが交互に配置されており、相互に対向する。そのため、複数の永久磁石23aと複数の永久磁石23bとの反発力により、ロータ13およびロータ13に一体化されたロータ軸14は、回転可能に支持される。
【0013】
磁石ホルダ24に設けられた各永久磁石23aとロータ13に設けられた各永久磁石23bは、軸方向において所定量ずれている。
図1の例では、各永久磁石23bは、各永久磁石23aに対して、軸方向に所定量だけ上方に位置している。このため、ロータ13およびロータ軸14には、複数の永久磁石23aと複数の永久磁石23bとの反発力により、ラジアル方向の支持力と、軸方向の上方に向けたスラスト方向の支持力が作用している。
【0014】
磁石ホルダ24には、ロータ軸14の上部側を収容する中空部24aが形成されており、中空部24a内には、ベアリング26が設けられている。ベアリング26の内輪の内側空間内には、ロータ軸14の上端部側に設けられた上部小径部14aが挿通されている。ベアリング26は、ロータ軸14の上部側のラジアル方向の振れを制限するタッチダウンベアリングとして機能する。ロータ13およびロータ軸14が定常回転している状態では、ロータ軸14の上部小径部14aとベアリング26とが接触することはない。しかし、大外乱が加わった場合や、回転の加速時または減速時にロータ13およびロータ軸14の振れ回りが大きくなった場合に、ロータ軸14の上部小径部14aがベアリング26の内輪の内面に接触する。ベアリング26には、例えば深溝玉軸受が用いられる。
【0015】
ベース2の中央部には、軸受配置空間41が形成されており、この軸受配置空間41内には、メカニカル軸受25が配置されている。メカニカル軸受25は、内輪、外輪および転がり素子を有する、例えば、アンギュラコンタクト玉軸受等のボールベアリングである。転がり素子の全表面には、内輪および外輪の各内面との摩擦を低減するためのグリースが塗着されている。メカニカル軸受25の内輪の内側の空間内には、ロータ軸14の下端側に設けられた下部小径部14bが挿通される。メカニカル軸受25は、下部小径部14bに締結されるナット42によりロータ軸14の段部14cに押し当てられて固定される。
ベース2の軸受配置空間41は、ベース2に固定される底板44により外部から密封される。
【0016】
ロータ軸14のモータロータ22aの下方には、筒状中空部を有する薄い円錐台状のバランス調整部材として用いられるカラー31が設けられている。カラー31の外周側面は軸方向上方から下方に向けて径が減少する傾斜面31aとなっている。この実施形態では、後述するように、この傾斜面31aに複数のねじ孔を設け、バランス修正に必要なねじ孔にねじを螺合してバランスを修正する。
【0017】
外筒1の上部には、吸気口32が設けられ、ベース2には、ポンプ部に連通する排気口33が設けられている。また、ベース2には、パージガスを供給するためのガスパージポート34が設けられている。ガスパージポート34の機能を以下に示す。塩素系や硫化フッソ系等の腐食性ガスを排気する場合、腐食系ガスがポンプ部から、ケーシング3内の内部空間43を介してモータ22、およびロータ軸14とベース2の内面との間に入り込み、モータ22やメカニカル軸受25等を腐食する恐れがある。また、ポンプ部内において反応生成物を生成して堆積する恐れがある。このため、ガスパージポート34から、例えば、窒素ガス等のパージガスを供給することにより、モータ22やメカニカル軸受25等を保護する。そのため、ガスパージポートはモータ22やメカニカル軸受25付近に設置することが好ましい。また、ポンプ部内における反応生成物の堆積を抑制する。つまり、ガスパージポート34は、ターボ分子ポンプ10の内部部材を、腐食性ガスによる腐食から保護し、また、ポンプ部内における反応生成物の堆積を抑制するために、パージガスを供給する供給口としての機能を有する。
【0018】
カラー31の外周部に設けられた傾斜面31aは、ガスパージポート34の軸方向に直交して配置されている。つまり、ガスパージポート34は、ベース2におけるメカニカル軸受25が配置された領域の外周部から、カラー31の傾斜面31aに向けて、ロータ軸14の軸心に対して傾斜する直線状に設けられている。ガスパージポート34には、電源装置4に設けた電磁弁45を介してパージガスが供給される。電磁弁45を開くとパージガスが導入され、電磁弁45を閉じるとパージガスの供給が停止される。
【0019】
外筒1の軸方向の中間部には、ベントポート35が設けられている。ベントポート35は、下段側のロータ翼15に対応する位置に設けられている。図示の例では、ベントポート35は、最下段および最下段から2番目のロータ翼15に跨る位置に設けられている。ベントポート35は、ロータ13を停止する際に排気するための排気口としての機能を有し、電磁弁45で閉じられており、排気する際に電磁弁45を開弁させてポンプ内を排気する。
【0020】
ロータ翼15およびロータ円筒部16a、16bを有するロータ13と、ロータ軸14と、複数の永久磁石23bと、モータロータ22aとにより回転体Rが構成される。回転体Rは、モータ22により、毎分数万回転という速度で回転する。回転体Rは、低速回転に達するまでの加速中も低振動であることが求められる。加速中も低振動とするためには、回転体Rを弾性体として扱い、曲げモードによる回転体の変形を考慮する必要がある。3次またはそれ以上のn次危険速度にまで対応可能なバランス修正方法として多面(n面)法が知られている。この方法を用いるには、アンバランス要因の部品によって発生する曲げ振動を抑えるため、アンバランス要因の部品付近でバランス修正を行う必要がある。
【0021】
本実施の形態に示すターボ分子ポンプ10は、バランス修正を3次危険速度にまで対応できるように、上部・中間・下部のバランス修正部A1〜A3を有する。
上部バランス修正部A1は、回転体Rの軸方向上部側に、中間バランス修正部A2は、回転体Rの重心付近に、下部バランス修正部A3は、回転体Rの下部側に、それぞれ、設けられている。上部・中間・下部のバランス修正部A1〜A3は、いずれも、ケーシング3の外部からアクセス可能であり、回転体Rをケーシング3に組み付けた後、回転体Rのバランス修正を行うことが可能となっている。
以下、上部・中間・下部のバランス修正部A1〜A3について説明する。
【0022】
上部バランス修正部A1は、ロータ13の吸気口32に面して設けられている。上部バランス修正部A1は、最上段のロータ翼15とロータ軸14との間に設けられた複数のねじ孔51を有する。複数のねじ孔51は、ロータ軸14の軸心を中心とする円周上に、中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列されている。各ねじ孔51の軸心は、ロータ軸14の軸方向と平行である。各ねじ孔51には、吸気口32を介してケーシング3の外部からアクセス可能であり、ねじ孔51に、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0023】
中間バランス修正部A2は、ベントポート35に対面する位置に設けられている。中間バランス修正部A2は、最下段および最下段から2番目のロータ翼15の根元の間のロータ13の領域に設けられた複数のねじ孔52を有する。複数のねじ孔52は、ロータ軸14の軸心を中心とする円周上に、中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列されている。各ねじ孔52の軸心は、ロータ軸14の軸方向と直交している。ベントポート35は、各ねじ孔52のアクセス口となっている。つまり、電磁弁45を取外して、回転体Rを回転することにより、いずれのねじ孔52に対しても、ケーシング3の外部からアクセス可能であり、ねじ孔52に、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0024】
下部バランス修正部A3は、モータロータ22aの下面に設けられたカラー31を有する。カラー31の傾斜面31aには、カラー31の軸心を中心とする円周上に中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列された複数のねじ孔53が設けられている。上述したように、カラー31の傾斜面31aは、ガスパージポート34に対面しており、カラー31に設けられた各ねじ孔53の軸心は、ガスパージポート34と同軸上に配置されている。ガスパージポート34は、各ねじ孔53のアクセス口となっている。つまり、電磁弁45を取外して、回転体Rを回転することにより、いずれのねじ孔53についても、ケーシング3の外部からアクセス可能であり、ねじ孔53に、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0025】
本発明の第1の実施の形態によれば、下記の効果を奏する。
(1)ターボ分子ポンプ10は、回転体Rと、回転体Rを回転可能に収容するケーシング3と、回転体Rに設けられた中間バランス修正部A2と、ケーシング3に設けられ、中間バランス修正部A2にケーシング3の外部からアクセス可能なベントポート(アクセス口)34とを備えており、中間バランス修正部A2は、回転体Rのロータ翼15が設けられた領域に設けられている。このため、ケーシング3の外部から回転体Rにアクセスして、3次危険速度にまでバランス修正の対応が可能である。
【0026】
(2)また、真空ポンプに設けられているベントポート35を、中間バランス修正部A2のアクセス口としたので、アクセス口を新たに形成する必要がなく、従来品との互換性を維持することができる。
【0027】
(3)ロータ軸14の下端部に配置された軸受をメカニカル軸受25とした。ロータ軸14を支持する軸受が磁気軸受の場合には、回転体Rを軸受から浮上した状態でバランス修正を行う為、バランス修正をバランス治具により行った後、ケーシングに組み付けても、アンバランスが生じ難い。しかし、メカニカル軸受では、軸受と軸受固定部との間に隙間が存在するので、回転体Rをバランス治具に取付けてバランス調整をしても、ケーシング3に組み込み後に、再度、バランス調整が必要となる可能性が高い。本実施の形態では、メカニカル軸受25で支持される回転体Rに対して、ケーシング3に組み付け後に、アンバランスの修正が可能である。
【0028】
(4)ロータ軸14におけるモータ22の下方に下部バランス修正部A3が設けられ、ケーシング3に、下部バランス修正部A3にケーシング3の外部からアクセス可能なガスパージポート(アクセス口)33が設けられている。アンバランス要因となるモータ22の付近に、ケーシング3の外部からアクセス可能な下部バランス修正部A3が設けられているため、低振動を実現することが可能である。
【0029】
(5)また、ガスパージポート34を下部バランス修正部A3としたので、アクセス口を新たに形成する必要がなく、従来品との互換性を維持することができる。
【0030】
(6)下部バランス修正部A3のアクセス口は、ケーシング3におけるロータ円筒部16a、16bの下方から下部バランス修正部A3に向けて、ロータ軸14の軸心に対して傾斜して設けられている。このような構成とすることにより、ロータ円筒部16a、16bおよびメカニカル軸受25を避けて、ベース2に下部バランス修正部A3を設けることが可能となる。
【0031】
(7)中間・下部のバランス修正部A2、A3に加え、ロータ13の上部に、ケーシング3の吸気口32からアクセス可能な上部バランス修正部A1を設けた。このため、3面すべてのバランス修正を、回転体Rをケーシング3に組み込んだ後に行うことが可能である。
【0032】
−第2の実施の形態−
図2は、本発明に係る真空ポンプの第2の実施の形態を示す図である。
第2の実施の形態では、下部バランス修正部A3へのアクセス口を排気口33Aとしたものである。
図2に示されるように、真空ポンプ10の排気口33Aは、第1の実施の形態のガスパージポート34と同じように、ベース2におけるメカニカル軸受25が配置された領域の外周部から、カラー31の傾斜面31aに向けて、ロータ軸14の軸心に対して傾斜する直線状に設けられている。カラー31に設けられた各ねじ孔53の軸心は、排気口33Aと同軸上に配置されている。つまり、排気口33Aは、各ねじ孔53のアクセス口となっている。排気口33Aは、バックポンプに接続する管路が接続可能とされ、第1の実施の形態の電磁弁45を有していない。このため、第2の実施の形態では、下部バランス修正部A3でバランス修正を行うに際し、電磁弁45を脱着する手間は不要となる。
【0033】
第2の実施の形態におけるその他の構成は、第1の実施の形態と同様であり、対応する部材に同一の符号を付して説明を省略する。従って、第2の実施の形態においても。第1の実施の形態の効果(1)〜(3)、(6)、(7)と同様な効果を奏する。なお、図示はしないが、第2の実施の形態において、パージガスを供給するため、専用のガスパージポートを設けてもよい。
【0034】
上記各実施の形態では、ロータ軸14をメカニカル軸受25および永久磁石磁気軸受23により支持する構造として例示した。しかし、メカニカル軸受25に替えて、磁気軸受を用いる構造としてもよい。この場合、ロータ軸14の上・下部にラジアル磁気軸受を配し、ロータ軸14に、このロータ軸より径の大きいディスクを取り付けて、このディスクの上下に一対のスラスト磁気軸受を配する構造にしてもよい。この構造とすれば、永久磁石磁気軸受23を無くすこともできる。
【0035】
上記各実施の形態では、ロータ軸14とロータ13とは、締まり嵌めにより一体化される構造としたが、ロータ軸14とロータ13とは、ボルト締結構造により一体化する構造としてもよい。
【0036】
上記各実施の形態では、上部・中間・下部のバランス修正部A1〜A3では、ねじ孔51〜53に、バランス修正用ビスをねじ込んでバランス修正を行う方法として例示した。しかし、予め、ねじ孔51〜53にバランス修正用ビスをねじ込んでおき、バランス修正用ビスを取り外すことによりアンバランスを修正するようにしてもよい。
【0037】
また、上部・中間のバランス修正部A1、A2は、ロータ13に、直接、ねじ孔51、52を設けた構造として例示したが、ねじ孔51、52を設けたバランス修正用部材を、ロータ13に取り付ける構造としてもよい。あるいは、バランス修正部材には、ねじ孔を設けず、バランス修正時に、バランス修正部材の一部を削り取ることによりアンバランスを修正するようにしてもよい。
【0038】
上記では、真空ポンプとしてターボ分子ポンプ10を一例として説明した。しかし、本発明は、ターボポンプ部のみを備えるターボ分子ポンプに適用することができる。
【0039】
上記実施の形態では、3面法によるバランス修正が可能な真空ポンプについて説明した。しかし本発明は、さらなる低振動化、高速回転化によって発生する振動モードの増加に対応するため、4面法によるバランス修正が可能な真空ポンプ、すなわち、回転体Rが4つ以上のバランス修正部を有する真空ポンプとすることも可能である。次に、このような第3の実施の形態について説明する。
【0040】
−第3の実施の形態−
図3は本発明に係る真空ポンプの第3の実施の形態を示す図であり、ターボ分子ポンプ(真空ポンプ)100の断面図である。ターボ分子ポンプ100は、以下に示すように複数の吸気口132a〜132cを備えており、例えば、質量分析装置等の真空装置用の真空ポンプとして用いられる。
ターボ分子ポンプ100は、外筒101とベース102とからなるケーシング103を有する。
【0041】
真空ポンプ100は、以下に記載するように、ケーシング103内に、2つのターボポンプ部TP1、TP2と、1つのHolweckポンプ部SPとを備えている。
真空ポンプ100のケーシング3内には、ロータ軸114が収容されている。ロータ軸114にはロータ円筒基部116が設けられており、ロータ円筒基部116の外周側には、ベース102の底面102a側に向かって延在する一対のロータ円筒部116a、116bが設けられている。
ロータ軸114に設けられた複数のロータ翼115aと、ロータ翼115a間に配置された複数のステータ翼117aにより第1のターボポンプ部TP1が構成されている。複数のステータ翼117aは、各ステータ翼117a間に配置された複数のスペーサ118aにより挟圧されて保持されている。また、ロータ軸114に設けられた複数のロータ翼115bと、ロータ翼115b間に配置された複数のステータ翼117bにより第2のターボポンプ部TP2が構成されている。複数のステータ翼117bは、各ステータ翼117b間に配置された複数のスペーサ118bにより挟圧されて保持されている。
図3におけるロータ軸114に向かって右側が流路の上流側であり、第2のターボポンプ部TP2は、第1のターボポンプ部TP1の下流側に設けられている。
【0042】
ロータ軸114のロータ円筒基部116に設けられた一対のロータ円筒部116a、116bの間にはステータ121が配置されている。ステータ121は、ベース102に固定されている。ステータ121の内周面とロータ円筒部116aの外周面のいずれか一方には、ねじ溝(図示せず)が設けられている。また、ステータ121の外周面とロータ円筒部116bの内周面のいずれか一方には、ねじ溝(図示せず)が設けられている。一対のロータ円筒部116a、116bとステータ121とでHolweckポンプ部SPが構成される。Holweckポンプ部SPは、第2のターボポンプ部TP2の下流側に設けられている。
【0043】
ロータ軸114の軸方向におけるベース102側の端部側には、ロータ軸114を回転駆動するモータ122が設けられている。モータ122は、ロータ軸114に設けられたモータロータ122aと、ベース102に固定されたモータステータ122bにより構成される。ロータ軸114は、ロータ軸114の軸方向の上流側の端部側に設けられた永久磁石磁気軸受123と、ロータ軸14の軸方向の下流側の端部側に設けられたメカニカル軸受125により回転自在に支持されている。
【0044】
永久磁石磁気軸受123は、外筒101に取り付けられた磁石ホルダ124に設けられた複数の永久磁石123aと、ロータ軸114に設けられた複数の永久磁石123bとから構成される。複数の永久磁石123aと複数の永久磁石123bとは、軸方向に沿って平行に、かつ、等間隔に配列されている。
【0045】
磁石ホルダ124には、ロータ軸114の上部側を収容する中空部124aが形成されており、中空部124a内には、ベアリング126が設けられている。ベアリング126の内輪の内側空間内には、ロータ軸114の端部に設けられた上部小径部114aが挿通されている。
【0046】
ベース102の中央部には、軸受配置空間141が形成されており、この軸受配置空間141内には、メカニカル軸受125が配置されている。メカニカル軸受125の内輪の内側の空間内には、ロータ軸114の下端側に設けられた下部小径部114bが挿通される。メカニカル軸受125は、下部小径部114bに締結されるナット142によりロータ軸114の段部114cに押し当てられて固定されている。
ベース102の軸受配置空間141は、ベース102に固定される底板144により外部から密封される。
【0047】
ロータ軸114のモータロータ122aのベース102側の面には、筒状中空部を有する薄い円錐台状のバランス調整部材として用いられるカラー131が設けられている。カラー131の外周側面は軸方向上方から下方に向けて径が減少する傾斜面131aとなっている。第3の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様、この傾斜面31aに複数のねじ孔を設け、バランス修正に必要なねじ孔にねじを螺合してバランスを修正する。
【0048】
外筒101の上部には、不図示の真空装置に取り付けられるフランジ部136が設けられている。フランジ部136には、外筒101の内部空間143に連通する3つの吸気口132a、132b、132cが設けられている。吸気口132aは、第1のターボポンプ部TP1の上流側の内部空間143aに対応する領域に設けられている。吸気口132bは、第2のターボポンプ部TP2の上流側、換言すれば、第2のターボポンプ部TP2と第1のターボポンプ部TP1との間の内部空間143bに対応する領域に設けられている。吸気口132cは、ロータ円筒基部116と、第2のターボポンプ部TP2を構成するステータ翼117bうちの最下流のステータ翼117bとの間の内部空間143cに対応する領域に設けられている。
【0049】
ベース102には、Holweckポンプ部SPに連通する排気口133が設けられている。また、ベース102には、パージガスを供給するためのガスパージポート134が設けられている。
【0050】
カラー131の外周部に設けられた傾斜面131aは、第1の実施の形態と同様、ガスパージポート34の軸方向に直交して配置されており、ガスパージポート134には、ベース102に設けた電磁弁145を介してパージガスが供給される。電磁弁145を開くとパージガスが導入され、電磁弁145を閉じるとパージガスの供給が停止される。
【0051】
ロータ軸114、ロータ翼115a、115b、ロータ円筒部116a、116bを有するロータ円筒基部116、複数の永久磁石123b、およびモータロータ122aにより回転体Rが構成される。
【0052】
第3の実施の形態に示す真空ポンプ100は、バランス修正を4次危険速度にまで対応できるように、第1〜第4の4つのバランス修正部B1〜B4を有する。
第1バランス修正部B1は、回転体Rにおける第1のターボポンプ部TP1の上流側に、第2バランス修正部B2は、回転体Rにおける第1のターボポンプ部TP1と第2のターボポンプ部TP2の間に、第3バランス修正部B3は、回転体Rにおける第2のターボポンプ部TP2とロータ円筒基部116との間に、第4バランス修正部B4は、回転体Rに設けられたモータ122の下流側に、それぞれ、設けられている。第1〜第4バランス修正部B1〜B4は、いずれも、ケーシング103の外部からアクセス可能であり、回転体Rをケーシング103に組み付けた後、回転体Rのバランス修正を行うことが可能となっている。
以下、第1〜第4バランス修正部B1〜B4について説明する。
【0053】
第1バランス修正部B1は、回転体Rにおける第1のターボポンプ部TP1の上流側に設けられている。第1バランス修正部B1は、ロータ軸114に設けられた複数のねじ孔151aを有する。複数のねじ孔151aは、ロータ軸114の軸心を中心とする円周上に、中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列されている。各ねじ孔151aの軸心は、ロータ軸114の軸方向と直交して配置されている。各ねじ孔151aには、吸気口132aを介してケーシング103の外部からアクセス可能であり、ねじ孔151aに、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0054】
第2バランス修正部B2は、回転体Rにおける第1のターボポンプ部TP1と第2のターボポンプ部TP2の間に、換言すれば、第2のターボポンプ部TP2と設けられている。第2バランス修正部B2は、ロータ軸114に設けられた複数のねじ孔151bを有する。複数のねじ孔151bは、ロータ軸114の軸心を中心とする円周上に、中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列されている。各ねじ孔151bの軸心は、ロータ軸114の軸方向と直交して配置されている。各ねじ孔151bには、吸気口132bを介してケーシング103の外部からアクセス可能であり、ねじ孔151bに、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0055】
第3バランス修正部B3は、回転体Rにおける第2のターボポンプ部TP2とロータ円筒基部116との間に、換言すれば、第2のターボポンプ部TP2とHolweckポンプ部SPとの間に設けられている。第3バランス修正部B3は、ロータ軸114に設けられた複数のねじ孔151cを有する。複数のねじ孔151cは、ロータ軸114の軸心を中心とする円周上に、中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列されている。各ねじ孔151cの軸心は、ロータ軸114の軸方向と直交して配置されている。各ねじ孔151cには、吸気口132cを介してケーシング103の外部からアクセス可能であり、ねじ孔151cに、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0056】
第4バランス修正部B4は、モータロータ122aの下面に設けられたカラー131を有する。カラー131の傾斜面131aには、カラー131の軸心を中心とする円周上に中心角20〜45°程度の間隔で等間隔に配列された複数のねじ孔153が設けられている。上述したように、カラー131の傾斜面131aは、ガスパージポート134に対面しており、カラー131に設けられた各ねじ孔153の軸心は、ガスパージポート134と同軸上に配置されている。ガスパージポート134は、各ねじ孔153のアクセス口となっている。つまり、電磁弁145を取外して、回転体Rを回転することにより、いずれのねじ孔153についても、ケーシング103の外部からアクセス可能であり、ねじ孔153に、バランス修正用ビス(図示せず)をねじ込んでバランスを調整することができる。
【0057】
以上説明した通り、第3の実施の形態の真空ポンプ100は、ケーシング103外部からアクセス可能な第1〜第4バランス修正部B1〜B4を備えており、回転体Rの4次危険速度にまでバランス修正の対応が可能となる。
なお、上記各実施の形態では、3面および4面の修正面を有するバランス修正について例示した。しかし、本発明は、5つ以上の修正面を持つ、n面(
n≧3)バランス修正に幅広く適用できるものである。
また、上記各実施の形態では、外部からのアクセス口を各バランス修正面に対して設けた構成として例示した。しかし、バランス修正面が近接する位置に設けられているような構成では、1つのアクセス口から、複数のバランス修正面にアクセスできるようにすることも可能である。
【0058】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。上記各実施の形態の態様を組み合わせたり、適宜、変形したりしてもよく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。