(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。図面の説明において、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0015】
図1及び
図2に示されるように、搬送車システム1は、物品を搬送するシステムを構成する。物品は、例えば複数の半導体ウェハを格納する容器であるが、ガラス基板及び一般部品等であってもよい。搬送車システム1は、軌道4、搬送車6及びコントローラ50を備える。
【0016】
軌道4は、搬送車6を走行させるための予め定められた経路である。軌道4は、例えば作業者の頭上スペースである天井付近に敷設されている。軌道4は、天井から吊り下げられている。軌道4には、複数のポイントマークが、当該軌道4の延在方向に沿って一定間隔で並ぶように貼付されている。ポイントマークとしては、バーコード等が挙げられる。軌道4は、直進及びカーブのルートを含む。軌道4を構成する各ルートには、通過するのに要する予測時間等に関する経路コストが予め設定されている。
【0017】
軌道4のルートは、搬送車6が一方向のみに走行する一方通行のルートである。軌道4は、一つのルートを複数のルートへ分ける地点である分岐点Pを含む。分岐点Pを介して一方側へ進む一方側ルートと他方側へ進む他方側ルートとのそれぞれには、走行の優先順位が設定されている。搬送車6は、一方側ルート及び他方側ルートのうちの優先順位が高い何れかへ、優先的に走行する。なお、軌道4のレイアウトは特に限定されず、種々のレイアウトを採用することができる。
【0018】
搬送車6は、軌道4に沿って走行可能、すなわち、予め定められた経路に沿って走行可能な車両である。搬送車6は、物品を搬送する。搬送車6は、天井走行式無人搬送車である。搬送車6は、例えば台車(搬送台車)、天井走行車(天井走行台車)、又は、走行車(走行台車)とも称される。搬送車システム1が備える搬送車6の台数は、特に限定されず、複数である。搬送車6は、例えばリニアモータ駆動の車両であり、駆動源として例えば電磁式リニアモータを有する。これにより、搬送車6は、スムーズで且つ無駄のない加減速、及び、短い車間での高速連続運転を可能とする。
【0019】
搬送車6は、当該搬送車6の軌道4上の位置に関する位置情報を取得する位置取得部(不図示)を有する。位置取得部は、軌道4のポイントマークを読み取る読取部等から構成されている。搬送車6の位置情報は、例えば、読取部によって得られるポイントマークの情報、及び、当該ポイントマークを通過してからの走行距離に関する情報を含む。
【0020】
コントローラ50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等からなる電子制御ユニットである。コントローラ50は、例えばROMに格納されているプログラムがRAM上にロードされてCPUで実行されるソフトウェアとして構成することができる。コントローラ50は、電子回路等によるハードウェアとして構成されてもよい。コントローラ50は、一つの装置で構成されてもよいし、複数の装置で構成されてもよい。複数の装置で構成されている場合には、これらがインターネット又はイントラネット等の通信ネットワークを介して接続されることで、論理的に一つのコントローラ50が構築される。
【0021】
コントローラ50は、管轄エリア(所定エリア)内の複数の搬送車6との間で周期的な通信を行う。例えばコントローラ50は、管轄エリア内の搬送車6に対して状態問合せを送信し、状態問合せを受信した搬送車6は、自己の位置情報及び速度情報等を含む状態報告をコントローラ50に送信する。コントローラ50は、このような通信を複数の搬送車6との間で順次周期的に行うことで、管轄エリア内の各搬送車6の状態(現在位置及び停止中か走行中か等を含む)を把握する。管轄エリアは、特に限定されない。管轄エリアは、仕様等に応じてその大小を設定してもよい。例えば管轄エリアは、システムの全エリアとしてもよいし、一部エリアとしてもよい。
【0022】
コントローラ50は、管轄エリア内の複数の搬送車6との間で通信を行い、これらの複数の搬送車6を制御する。コントローラ50は、上位コントローラ(不図示)との間で有線又は無線により通信を行う。コントローラ50は、各種の指令を上位コントローラから受信する。例えばコントローラ50は、搬送車6に物品を搬送させる搬送指令を上位コントローラから受信する。例えばコントローラ50は、搬送車6を所定位置(例えば予測される搬送指令の搬送元、あるいは搬送元の手前)まで呼び込む(移動させる)移動指令を上位コントローラから受信する。例えばコントローラ50は、軌道4に含まれる巡回経路にて巡回するように搬送車6を走行させるための巡回指令を上位コントローラから受信する。
【0023】
コントローラ50は、受信した搬送指令を、空きの搬送車6に対して割り付ける。空きの搬送車6は、未だ搬送指令が割り付けられていない搬送車6であって、物品を搬送していない空の状態の搬送車6を含む。コントローラ50は、受信した移動指令ないし巡回指令を、未だ各種の指令が割り付けられていない空きの搬送車6に対して割り付ける。
【0024】
コントローラ50は、軌道4のレイアウトに関するデータであるレイアウトデータを読み込み、そのレイアウトデータから軌道4のルートマップを作成する。ルートマップは、ルート構成と、進行方向と、各ルートの長さと、分岐点Pに繋がる一方側ルート及び他方側ルートの優先順位と、を少なくとも含む。
【0025】
本実施形態のコントローラ50は、経路探索部51、経路管理部52、記憶部53、追い出し対象車決定部54及び追い出し制御部55を有する。
【0026】
経路探索部51は、管轄エリア内の各搬送車6の走行予定経路を探索する。走行予定経路は、搬送車6が走行を予定する経路である。経路探索の手法は特に限定されず、公知の種々の手法を用いることができる。例えば経路探索部51は、各搬送車6から受信した状態報告と、上位コントローラから受信した指令と、軌道4のレイアウトに関するデータであるレイアウトデータと、に少なくとも基づいて、各搬送車6の走行予定経路を探索する。
【0027】
経路管理部52は、経路探索部51で探索した走行予定経路(管轄エリア内の全ての搬送車6の走行予定経路)を管理する。記憶部53は、経路管理部52で管理している走行予定経路に関する情報を、記憶すると共に周期的に更新する。記憶部53は、管轄エリア内の各搬送車6の現在位置及び状態に関する情報を、記憶すると共に周期的に更新する。記憶部53は、レイアウトデータから作成された軌道4のルートマップに関する情報を記憶する。
【0028】
追い出し対象車決定部54は、記憶部53に記憶されている各情報に基づいて、追い出し制御によって追い出す対象の搬送車6である追い出し対象車6E(
図6参照)を決定する。追い出し対象車6Eは、走行中の搬送車6の前方に停止中の別の搬送車6であって、走行中の搬送車6に対して一定距離以下の車間距離になるまで接近した搬送車6である。追い出し対象車6Eを決定する具体的な処理は後述する。
【0029】
追い出し制御部55は、決定した追い出し対象車6Eを対象として、追い出し制御を実行する。追い出し制御は、追い出し対象車6Eがその後方から接近する搬送車6の走行の邪魔にならないように、追い出し対象車6Eを移動させる(追い出す)制御である。追い出し制御では、追い出し対象車6Eが含まれる管轄エリア内において、全ての搬送車6の走行予定経路から外れた追い出し地点を探索し、その追い出し地点へ走行させる指令を走行指令として送信する。
【0030】
追い出し地点は、追い出し制御による追い出し先の地点である。追い出し地点は、軌道4における分岐点Pの手前の地点である。追い出し地点から分岐点Pまでの距離は、分岐点Pを介した進行方向を一方側から他方側へ搬送車6が切り替えるために必要な走行距離(例えば1m〜2m)以上の距離である。
【0031】
追い出し制御では、探索した追い出し地点から追い出し対象車6Eの停止地点へ戻る戻り経路を取得し、取得した戻り経路についての停止地点への戻り易さを評価するスコアを、戻り経路についての距離、走行に要する時間及び経路コストの少なくとも何れかに基づいて算出する。追い出し制御では、算出したスコアが閾値未満の場合における当該追い出し地点へ走行させる指令を、走行指令とする。
【0032】
追い出し制御における追い出し地点の探索では、管轄エリア内の軌道4を追い出し対象車6Eの停止地点から進行方向の前側に辿る。そして、管轄エリア内における全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点が発見された場合に、発見された当該地点に基づいて追い出し地点を決定する。一方、管轄エリア内における全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点が、停止地点から所定距離内で発見されない場合に、停止地点から所定距離離れた地点に基づいて追い出し地点を決定する。所定距離は、予め定められて記憶部53に記憶されている。所定距離は、例えばユーザの操作入力により適宜に変更することできる。所定距離としては、例えば50mである。追い出し地点を探索する具体的な処理は後述する。
【0033】
次に、コントローラ50で実行される処理の一例について、
図2〜
図5のフローチャートを参照して具体的に説明する。
【0034】
まず、追い出し対象車決定部54により、記憶部53に記憶されている各種の情報に基づいて、管轄エリア内の全ての搬送車6の中から停止中の搬送車6を検索する(ステップS1)。追い出し対象車決定部54により、記憶部53に記憶されている各種の情報に基づいて、管轄エリア内で停止中の搬送車6の中から追い出し対象車6Eを検索する(ステップS2)。例えば上記ステップS2では、管轄エリア内で走行している全ての搬送車6の位置及び走行経路と、管轄エリア内で停止している全ての搬送車6の位置と、に基づいて、走行中の搬送車6との車間距離が一定距離以下になるまで接近している停止中の別の搬送車6を、追い出し対象車6Eとして導出する。
【0035】
上記ステップS2で追い出し対象車6Eが検索されない場合には、本周期の処理を終了し、その後の次周期において上記ステップS1から処理が繰り返し実行される。上記ステップS2で追い出し対象車6Eが検索された場合には、追い出し制御部55により次の追い出し制御を実行する。
【0036】
すなわち、記憶部53から、管轄エリア内の全ての搬送車6の走行予定経路及びルートマップを取得する(ステップS11)。取得した当該ルートマップと当該走行予定経路とを照合する(ステップS12)。これにより、軌道4に含まれる全ルートにおいて、全ての搬送車6の走行予定経路から外れたルートである走行予定外ルートを特定する。追い出し地点を探索する追い出し地点探索処理を実行する(ステップS13,詳しくは後述)。
【0037】
記憶部53に記憶された各種の情報に基づいて、上記ステップS13で探索した追い出し地点へ移動する経路である追い出し経路を探索する(ステップS14)。上記ステップS14における経路探索の手法は特に限定されず、公知の種々の手法を用いることができる。追い出し地点へ追い出し経路に沿って走行させる走行指令を生成し、この走行指令を追い出し対象車6Eへ送信する(ステップS15)。
【0038】
ここで、上記ステップS13の追い出し地点探索処理について、
図4及び
図5のフローチャートを参照して、より具体的に説明する。
【0039】
追い出し地点の探索を開始する(ステップS21)。上記ステップS21では、追い出し対象車6Eの停止地点から、分岐点Pを発見するまで進行方向に沿ってルートを辿り始める。探索距離(停止位置から辿った位置までのルート上の距離)が所定距離内で、新たな分岐点Pを発見したか否かを判定する(ステップS22)。
【0040】
上記ステップS22でYESの場合、発見した分岐点Pについて、上記ステップS12の照合で特定された走行予定外ルート上に無いかどうか、つまり、全ての搬送車6の走行予定経路から外れているかどうかを判定する(ステップS23)。上記ステップS23でNOの場合、追い出し地点の探索を継続する(ステップS24)。
【0041】
探索の継続では、発見した分岐点Pから分岐する一方側ルートと他方側ルートとのうちの優先順位が低い方を辿る。探索の継続では、一方側ルートと他方側ルートとのうちの優先順位が低い方が既に探索済みの場合には、一方側ルートと他方側ルートとのうちの優先順位が高い方を辿る。探索の継続では、一方側ルートと他方側ルートとの双方が既に探索済みの場合には、1つ上流側の分岐点Pへ遡って探索を継続する。探索の継続では、探索距離が所定距離を越えた場合、1つ上流側の分岐点Pへ遡って探索を継続する。
【0042】
上記ステップS23でYESの場合、発見した分岐点Pの手前の地点を追い出し地点に設定する(ステップS25)。追い出し地点の設定数が、予め規定された規定数に達したか否かを判定する(ステップS26)。上記ステップS26でNOの場合には、上記ステップS24の処理へ移行する。上記ステップS26でYESの場合には、追い出し地点の探索を終了する(ステップS27)。上記ステップS22でNOの場合には、追い出し地点の探索を終了する(ステップS28)。上記ステップS28の後、設定された追い出し地点が無いか否かを判定する(ステップS29)。
【0043】
上記ステップS27の後、又は上記ステップS29でNOの場合、設定した複数の追い出し地点それぞれの戻り経路を取得する(ステップS31)。戻り経路は、探索した追い出し地点から追い出し対象車6Eの停止地点へ戻る経路である。戻り経路は、追い出し地点を起点とし、追い出し対象車6Eが現在停止している地点を終点として、これらの地点を繋ぐ経路である。戻り経路の取得は、公知の種々の経路探索手法を用いることができる。
【0044】
戻り経路それぞれのスコアを算出する(ステップS32)。スコアは、追い出し対象車6Eの停止地点への戻り易さを評価する指標である。スコアが大きいほど、追い出し対象車6Eは、追い出し地点から停止地点へ戻り難くなる。スコアは、戻り経路の距離、戻り経路に沿っての搬送車6の走行に要する時間、及び、戻り経路の経路コストの少なくとも何れかに基づいて、算出される。
【0045】
戻り経路の距離が大きいほど、スコアは高くなる。戻り経路に沿っての搬送車6の走行に要する時間が大きいほど、スコアが高くなる。戻り経路を構成するルートに設定されている経路コストが大きいほど、スコアが高くなる。経路コストは、例えば通行させたいルートでは低く設定され、通行させたくないルートでは高く設定されている。経路コストは、渋滞が生じやすいルートでは高く設定されている。スコア及びその算出手法としては、公知の種々の経路評価指標及びその算出手法を用いることができる。
【0046】
算出したスコアが閾値以上か否かを判定する(ステップS33,戻り経路判定)。上記ステップS33における戻り経路判定の結果、全ての戻り経路のスコアが閾値以上か否かを判定する(ステップS34)。
【0047】
上記ステップS34でYESの場合には、複数の追い出し地点の中から、最初の上記ステップS25にて設定された追い出し地点を選択する。選択した追い出し地点を、追い出し制御による走行指令の追い出し地点の探索結果として決定する(ステップS35)。上記ステップS34でNOの場合には、スコアが閾値未満の戻り経路に係る複数の追い出し地点の中から、最初に上記ステップS25にて設定された追い出し地点を選択する。選択した追い出し地点を、追い出し制御による走行指令の追い出し地点の探索結果として決定する(ステップS36)。
【0048】
他方、上記ステップS29でYESの場合、探索距離が所定距離内でかつ探索距離が最も大きい分岐点Pの手前の地点を暫定的地点とし、この暫定的地点を追い出し地点として選定する(ステップS37)。つまり、探索距離を所定距離内とする条件下において全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点が軌道4上に発見されない場合に、停止地点から所定距離離れた地点に基づいて追い出し地点を選定する。
【0049】
次に、上述した追い出し地点探索処理を含む追い出し制御の一例について説明する。
【0050】
図6(a)に示されるケースでは、停止中の追い出し対象車6Eの周辺に、搬送指令が割り付けられて走行中の搬送車61,62が存在している。追い出し対象車6Eは、例えば、移動指令により呼び込まれたため、前方の搬送車6に起因したブロッキング制御のため、分岐点Pないし合流点を他の搬送車6が通過するのを待機するため、又は、異常が発生したと判断されたため、停止している。搬送車61は、追い出し対象車6Eに対して後方から接近している。搬送車61の走行予定経路L1は、ルートR10を進み、分岐点P1を介してルートR12へ進む経路である。搬送車62の走行予定経路L2は、ルートR20を進み、分岐点P4を介してルートR41へ進み、ルートR10,R11を進み、分岐点P2を介してルートR22へ進む経路である。
【0051】
このようなケースの追い出し地点探索処理では、まず、追い出し対象車6Eの停止地点からルートR10に沿ってルートを辿り始め、分岐点P1が発見される。分岐点P1は、走行予定経路L1,L2から外れた走行予定外ルート上には存在せず、よって、探索が継続される。ここでは、ルートR11がルートR12よりもルートの優先順位が低いため、ルートR11側へ探索が継続される。
【0052】
図6(b)に示されるように、分岐点P1からルートR11に沿ってルートを辿り、分岐点P2が発見される。分岐点P2は、走行予定経路L1,L2から外れた走行予定外ルート上には存在せず、よって、探索が継続される。ここでは、ルートR21がルートR22よりもルートの優先順位が低いため、ルートR21側へ探索が継続される。
【0053】
図7(a)に示されるように、分岐点P2からルートR21に沿ってルートを辿り、分岐点P3が発見される。分岐点P3は、走行予定経路L1,L2から外れた走行予定外ルート上には存在する。よって、分岐点P3の手前の地点が、最初の追い出し地点O1として設定される。続いて、2つ目の追い出し地点を発見すべく、探索が継続される。
【0054】
1つ前の分岐点Pである分岐点P2まで戻って探索が継続される。分岐点P2からルートR22に沿ってルートを辿った結果、探索距離が所定距離を越えるため、探索を中断し、1つ前の分岐点Pである分岐点P1まで戻って探索が継続される。
図7(b)に示されるように、分岐点P1からルートR12に沿ってルートを辿り、分岐点P4が発見される。分岐点P4は、走行予定経路L1,L2から外れた走行予定外ルート上には存在せず、よって、探索が継続される。ここでは、ルートR42がルートR41よりもルートの優先順位が低いため、ルートR42側へ探索が継続される。
【0055】
図8(a)に示されるように、分岐点P4からルートR42に沿ってルートを辿り、分岐点P5が発見される。分岐点P5は、走行予定経路L1,L2から外れた走行予定外ルート上には存在する。よって、分岐点P5の手前の地点が、2つ目の追い出し地点O2として設定される。
【0056】
続いて、
図8(b)に示されるように、追い出し地点O1,O2それぞれから追い出し対象車6Eの停止地点までの戻り経路M1,M2を取得する。戻り経路M1,M2それぞれのスコアを算出する。ここでは、戻り経路M1,M2のスコアが共に閾値未満であることから、
図9(a)に示されるように、最初に設定された追い出し地点O1を、追い出し制御による走行の目的地点として選定する。その後、通常の経路探索を実行し、
図9(b)に示されるように、追い出し地点O1へ移動する追い出し経路Fを探索する。この追い出し経路Fに沿って走行させる走行指令を追い出し対象車6Eに送信する。
【0057】
以上、搬送車システム1では、走行中の搬送車6が追い出し対象車6Eに接近した際、追い出し制御を実行し、管轄エリア内における全ての搬送車6の走行予定経路から外れた追い出し地点O1へ追い出し対象車6Eを移動させる。このように、追い出し制御で移動させる追い出し地点O1を、全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点(全ての走行中の搬送車6の邪魔にならない箇所)とすることができる。よって、繰り返し追い出し制御を行うことが必要となる状況を発生し難くすることができる。すなわち、追い出し制御が繰り返し行われることを抑え、追い出し対象車6Eの後続の対象車6の減速(加速)による搬送効率の低下及びエネルギーの無駄な消費を防止することが可能となる。
【0058】
搬送車システム1では、追い出し地点O1は、軌道4における分岐点Pの手前の地点である。これにより、追い出し制御により追い出し地点O1に移動させた追い出し対象車6Eが、例えば新たな指令が割り付けられて次の行き先に向かう場合に、分岐点Pを介した一方側ルート及び他方側ルートの何れにも進むことができ、当該次の行き先へ向かうための走行経路の選択肢を拡げることができる。
【0059】
搬送車システム1において、追い出し制御では、探索した追い出し地点O1から追い出し対象車6Eの停止地点へ戻る戻り経路M1を取得する。取得した戻り経路M1についての停止地点への戻り易さを評価するスコアを、戻り経路M1についての距離、走行に要する時間及び経路コストの少なくとも何れかに基づいて算出する。算出したスコアが閾値未満の場合における当該追い出し地点O1へ走行させる指令を、走行指令とする。これにより、追い出し制御により追い出し地点O1に移動した追い出し対象車6Eは、当該移動の前に停止していた停止地点へ比較的速やかに(比較的短時間で)戻ることができる。追い出し対象車6Eは、当該移動の前に実行しようとしていた搬送指令を実行できる可能性(搬送指令が割り付けられる可能性)を高めることができる。
【0060】
搬送車システム1において、追い出し制御における追い出し地点O1の探索では、管轄エリア内の軌道4のルートを、追い出し対象車6Eの停止地点から進行方向の前側に辿る。管轄エリア内における全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点が発見された場合には、発見された地点に基づき追い出し地点O1を選定する。探索距離が所定距離内において全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点が発見されない場合には、探索距離が所定距離の地点に基づき追い出し地点を決定する、具体的には、探索距離が所定距離内で最も大きい分岐点Pの手前の地点を追い出し地点として決定する。これにより、探索距離が所定距離内において全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点が発見されない場合、追い出し対象車6Eは、探索距離が所定距離の地点に基づく追い出し地点へ一旦移動させられる。そしてその後、追い出し対象車6Eは、再び実行される追い出し制御により再び移動させられることになる。すなわち、全ての搬送車6の走行予定経路から外れた地点について、現時点での追い出し制御では探索困難な場合には、その後に変遷した経路状況下で再び実行される追い出し制御によって改めて探索することができる。
【0061】
なお、搬送車システム1では、次の作用効果も奏する。搬送車6を停止させている限り、搬送指令が割り付けられた搬送車6の走行の妨げになることを抑制することができ、搬送能力を向上させることが可能となる。追い出し制御の実行回数を減らすことができ、後方の搬送車6との車間距離が狭まる(詰まる)リスクを低減させることができる。極力、停止させた付近に追い出し対象車6Eを留めておくことができる。搬送完了時に停止させることで、電力消費量を減少させることができ、省エネルギー化に寄与することが可能となる。
【0062】
ちなみに、上述した追い出し制御では、以下に例示されるように、種々のケース又は状況に応じて追い出し地点を決定することができる。
【0063】
図10(a)は、戻り経路のスコアが閾値未満の追い出し地点が複数存在するケースを示す例である。
図10(b)は、
図10(a)のケースにおける追い出し制御の処理結果を示すテーブルである。例えば
図10(a)及び
図10(b)に示されるケースの追い出し制御では、全ての搬送車6の走行予定経路から外れた分岐点P1,P2,P3をこの順に発見する。分岐点P1,P2,P3それぞれの手前の地点を、追い出し地点A1,B1,C1としてこの順に設定する。追い出し地点A1,B1,C1それぞれに上記戻り経路判定を行った結果、追い出し地点A1,B1,C1それぞれの各戻り経路は、そのスコアが閾値未満である(図中において「success」)。よって、追い出し地点A1,B1,C1の中から、設定順序が最も早い追い出し地点A1を選定する。
【0064】
図11(a)は、戻り経路のスコアが閾値未満の追い出し地点の優先度が低いケースを示す例である。
図11(b)は、
図11(a)のケースにおける追い出し制御の処理結果を示すテーブルである。例えば
図11(a)及び
図11(b)に示されるケースの追い出し制御では、全ての搬送車6の走行予定経路から外れた分岐点P1,P2,P3をこの順に発見する。分岐点P1,P2,P3それぞれの手前の地点を、追い出し地点A2,B2,C2としてこの順に設定する。追い出し地点A2,B2,C2それぞれに上記戻り経路判定を行った結果、追い出し地点A2の戻り経路は、そのスコアが閾値未満である(図中において「success」)が、追い出し地点B2,C2の各戻り経路は、そのスコアが閾値以上である(図中において「failed」)。よって、スコアが閾値未満の戻り経路に係る追い出し地点A2を選定する。
【0065】
図12(a)は、戻り経路のスコアが閾値未満の追い出し地点が存在しないケースを示す例である。
図12(b)は、
図12(a)のケースにおける追い出し制御の処理結果を示すテーブルである。例えば
図12(a)及び
図12(b)に示されるケースの追い出し制御では、全ての搬送車6の走行予定経路から外れた分岐点P1,P2,P3をこの順に発見する。分岐点P1,P2,P3それぞれの手前の地点を、追い出し地点A3,B3,C3としてこの順に設定する。追い出し地点A3,B3,C3それぞれに上記戻り経路判定を行った結果、追い出し地点A3,B3,C3それぞれの各戻り経路は、そのスコアが閾値以上である(図中において「failed」)。よって、追い出し地点A3,B3,C3の中から、設定順序が最も早い追い出し地点A3を選定する。
【0066】
図13は、追い出し地点のパターンを例示するテーブルである。
図13に示される例では、追い出し地点A,B,Cはこの順に設定されている。
図13において、戻り経路判定結果が「success」とは、戻り経路のスコアが閾値未満であることを意味する。戻り経路判定結果が「failed」とは、戻り経路のスコアが閾値以上であることを意味する。
【0067】
図13のパターン1に示されるように、追い出し制御の結果、探索距離が所定距離内の追い出し地点が存在しない場合には、探索距離が最も大きい分岐点Pの手前の地点を暫定的地点とし、この暫定的地点を追い出し地点として選定する。
図13のパターン2に示されるように、追い出し制御結果、追い出し地点Aが設定され、追い出し地点Aの戻り経路判定結果が「success」である場合には、追い出し地点Aを選定する。
【0068】
図13のパターン3に示されるように、追い出し制御の結果、追い出し地点Aが存在し、追い出し地点Aの戻り経路判定結果が「failed」である場合には、追い出し地点Aを選定する。
図13のパターン4に示されるように、追い出し制御の結果、追い出し地点A,Bが存在し、追い出し地点Aの戻り経路判定結果が「success」であり、追い出し地点Bの戻り経路判定結果が「failed」である場合には、追い出し地点Aを選定する。
図13のパターン5に示されるように、追い出し制御の結果、追い出し地点A,Bが存在し、追い出し地点Aの戻り経路判定結果が「failed」であり、追い出し地点Bの戻り経路判定結果が「success」である場合には、追い出し地点Bを選定する。
【0069】
図13のパターン6に示されるように、追い出し制御の結果、追い出し地点A,Bが設定され、追い出し地点A,Bの戻り経路判定結果が共に「failed」である場合には、追い出し地点Aを選定する。
図13のパターン7に示されるように、追い出し制御探索処理の結果、追い出し地点A,B,Cが存在し、追い出し地点Aの戻り経路判定結果が「failed」であり、追い出し地点B,Cの戻り経路判定結果が「success」である場合には、追い出し地点Bを選定する。
図13のパターン8に示されるように、追い出し制御の結果、追い出し地点A,B,Cが存在し、追い出し地点A,B,Cの戻り経路判定結果が共に「failed」である場合には、追い出し地点Aを選定する。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
上記実施形態では、搬送車6として天井走行式無人搬送車を用いたが、搬送車6は特に限定されない。搬送車6は、天井走行式シャトルであってもよい。搬送車6は、床上の軌道に沿って走行可能な有軌道式無人搬送台車であってもよい。搬送車6は、磁気テープ等で構成された経路に沿って走行可能な磁気誘導式無人搬送車であってもよい。搬送車6は、レーザ光により誘導されることで、定められた経路に沿って走行可能なレーザ誘導式無人搬送台車であってもよい。
【0072】
上記実施形態は、搬送車6は、駆動源として電磁式リニアモータを有するが、搬送車6の駆動源は特に限定されない。搬送車6は、駆動原として、通常の回転モータを有していてもよい。搬送車6が回転モータ駆動である場合、動き続けていると電力が消費されるため、追い出し制御が繰り返し行われることを抑える効果は顕著である。
【0073】
上記実施形態では、コントローラ50と搬送車6との間を中継する1又は複数の別のコントローラを備えていてもよい。上記実施形態の各構成については、材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。