(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973367
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】通信端末及び接続対象の基地局選択プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/32 20090101AFI20211111BHJP
H04W 36/36 20090101ALI20211111BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W36/36
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-238311(P2018-238311)
(22)【出願日】2018年12月20日
(65)【公開番号】特開2020-102690(P2020-102690A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 広明
【審査官】
野村 潔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−288153(JP,A)
【文献】
特開2002−369237(JP,A)
【文献】
特開2012−244274(JP,A)
【文献】
特開2014−127741(JP,A)
【文献】
特開2015−65560(JP,A)
【文献】
特開2010−74779(JP,A)
【文献】
特開2011−114600(JP,A)
【文献】
特開2004−120080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局とセルラー通信するセルラー通信部(3)と、
自端末の現在位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部(2c)と、
前記位置情報取得部により取得された位置情報を前記セルラー通信部から通信ネットワークに送信させる位置情報送信部(2d)と、
自端末の近傍に位置する近傍基地局を示す近傍基地局情報が前記通信ネットワークから前記セルラー通信部に受信されることで、前記近傍基地局情報を取得する近傍基地局情報取得部(2e)と、
3GPPの規格にしたがって所定周期及び所定アルゴリズムにて基地局の電波の受信レベルを測定し、受信レベルが高い順番のリストを作成する受信レベル測定部(2f)と、
何れかの基地局を接続対象として選択して接続を試みる接続制御部(2g)と、を備え、
前記接続制御部は、前記受信レベル測定部により測定された電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を試み、その接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外し、前記近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局を接続対象として選択して接続を試みる通信端末。
【請求項2】
前記セルラー通信部と接続中の基地局である自局の電波の受信レベルを自局レベルとして測定する自局受信レベル測定部(2a)と、
前記自局受信レベル測定部により測定された自局レベルを第1所定閾値と比較判定する比較判定部(2b)と、を備え、
位置情報送信部は、自局レベルが第1所定閾値よりも低下していると前記比較判定部により判定された場合に、前記位置情報取得部により取得された位置情報を前記セルラー通信部から通信ネットワークに送信させる請求項1に記載した通信端末。
【請求項3】
前記接続制御部は、前記近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局を接続対象として選択して接続を試み、その接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外する請求項1又は2に記載した通信端末。
【請求項4】
前記接続制御部は、前記近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局を接続対象として選択して接続を試みる場合に、電波の受信レベルが第2所定閾値以上の基地局を接続候補とし、その接続候補の何れかの基地局を接続対象として選択して接続を試みる請求項1から3の何れか一項に記載した通信端末。
【請求項5】
前記接続制御部は、前記受信レベル測定部により測定された電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択した場合に、その接続対象として選択した基地局に接続を複数回試みる請求項1から4の何れか一項に記載した通信端末。
【請求項6】
前記接続制御部は、前記近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局を接続対象として選択した場合に、その接続対象として選択した基地局に接続を複数回試みる請求項1から5の何れか一項に記載した通信端末。
【請求項7】
基地局とセルラー通信するセルラー通信部(3)を備えた通信端末(1)の制御部(2)に、
自端末の現在位置を示す位置情報を取得する位置情報取得手順と、
前記位置情報取得手順により取得した位置情報を前記セルラー通信部から通信ネットワークに送信させる位置情報送信手順と
自端末の近傍に位置する近傍基地局を示す近傍基地局情報が前記通信ネットワークから前記セルラー通信部に受信されることで、前記近傍基地局情報を取得する近傍基地局情報取得手順と、
3GPPの規格にしたがって所定周期及び所定アルゴリズムにて基地局の電波の受信レベルを測定し、受信レベルが高い順番のリストを作成する受信レベル測定手順と、
前記受信レベル測定手順により測定した電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を試みる第1接続手順と、
前記第1接続手順による接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外する接続候補除外手順と、
前記近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局を接続対象として選択して接続を試みる第2接続手順と、を実行させる接続対象の基地局選択プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末及び接続対象の基地局選択プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在のセルラー通信の標準仕様(3GPP:3rd Generation Partnership Project)では、携帯電話機や車載通信機等の通信端末は、複数の基地局から送信された電波を受信し、その複数の基地局のうち電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を試みる仕様となっている。この場合、例えば地形や障害物の影響等により、通信端末の現在位置から最も近い基地局が、電波の受信レベルが最も高い基地局とならない場合がある。そのため、3GPPの仕様通りに通信端末を実装すると、基地局から送信された電波が通信端末に受信される一方で通信端末から送信された電波が基地局に受信されない所謂オーバーリーチが発生し、セルラー通信が成立しない場合がある。そのため、緊急通報サービスの機能を有する通信端末では、例えば衝突事故等の非常事態が発生した場所でオーバーリーチが発生していると、通信圏内であるにも拘らず、緊急通報サービスが受けられない事態になってしまう。
【0003】
このようなオーバーリーチの対策の1つの手法として、例えば特許文献1には、通信端末の現在位置から所定距離外の基地局を接続候補から除外し、通信端末の現在位置から所定距離内の基地局のみを接続候補とし、その所定距離内の接続候補の基地局のうち電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を試みる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−288153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている構成では、所定距離をどのように決定するかが課題となる。一方、オーバーリーチの対策の別の手法として、通信端末の近傍に位置する近傍基地局から送信された電波の受信レベルを測定し、電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を試み、その接続の失敗回数が規定回数に達すると、その接続の失敗回数が規定回数に達した基地局を接続候補から一定時間除外する構成がある。この手法では、次に近傍基地局の受信レベルを測定するときに、接続の失敗回数が規定回数に達した基地局を接続候補から除外しているので、電波の受信レベルが次に(2番目に)高い基地局を接続対象として選択して接続を試みる。
【0006】
しかしながら、上記した手法では以下に示す2つの問題がある。1つ目の問題としては、オーバーリーチが発生する可能性が高い基地局が複数存在すると、接続候補から除外する基地局の数が増え、セルラー通信が成立するまでに要する時間が長くなる。2つ目の問題としては、通信端末が移動する場合、接続候補から除外した基地局に通信端末が近づいても、その接続候補から一旦除外した基地局が接続候補に復帰するまで当該基地局を接続対象として選択することができず、最適な基地局に接続を試みることができない。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、オーバーリーチの影響を低減しつつ、セルラー通信を適切に成立させることができる通信端末及び接続対象の基地局選択プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、セルラー通信部(3)は、基地局とセルラー通信する。位置情報取得部(2c)は、自端末の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報送信部(2d)は、位置情報が位置情報取得部により取得されると、その取得された位置情報をセルラー通信部から通信ネットワークに送信させる。近傍基地局情報取得部(2e)は、自端末の近傍に位置する近傍基地局を示す近傍基地局情報が通信ネットワークからセルラー通信部に受信されることで、近傍基地局情報を取得する。受信レベル測定部(2f)は、3GPPの規格にしたがって所定周期及び所定アルゴリズムにて基地局の電波の受信レベルを測定し、受信レベルが高い順番のリストを作成する。接続制御部(2g)は、何れかの基地局を接続対象として選択して接続を試みる。
【0009】
接続制御部は、受信レベル測定部により測定された電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を試み、その接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外する。そして、接続制御部は、近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局を接続対象として選択して接続を試みる。
【0010】
3GPPの規格にしたがって測定した電波の受信レベルが最も高い基地局に接続を試み、その接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外し、近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局に接続を試みるようにした。オーバーリーチが発生する可能性が高い基地局が複数存在する場合であっても、その複数の基地局のうち最初にオーバーリーチが発生する可能性が高い基地局だけを接続候補から除外し、残りの基地局を接続候補から除外せず、自端末の現在位置から近い順に基地局に接続を試みるので、セルラー通信が成立するまでに要する時間を短くすることができる。又、接続候補から除外する基地局の数を低減するので、通信端末が移動する場合でも、最適な基地局に接続する可能性を高めることができる。これにより、オーバーリーチの影響を低減しつつ、セルラー通信を適切に成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】近傍基地局情報の更新処理を示すフローチャート
【
図5】通信圏内への復帰判定処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を、車両に搭載されている車載通信機に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。車載通信機1は、制御部2と、セルラー通信部3と、測位部4と、記憶部5とを有する。制御部2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含むマイコンを有し、非遷移的実体的記憶媒体に格納されている制御プログラムを実行して各種処理を行い、車載通信機1の動作を制御する。制御部2が実行する制御プログラムには、接続対象の基地局選択プログラムが含まれる。
【0013】
セルラー通信部3は、通信ネットワーク6との間でセルラー通信を行う。通信ネットワーク6は、3GPPの規格による通信方式にしたがう通信ネットワークであり、広域に亘って点在する多数の基地局7と、それら多数の基地局7を統括する制御局8とを有する。制御局8は、基地局7と車載通信機1との接続状態を監視し、車載通信機1が通信圏内であるか通信圏外であるかを管理する。
【0014】
測位部4は、GPS(Global Positioning System)受信機、地磁気センサ、加速度センサ等を有する。測位部4は、GPS信号から抽出したパラメータの演算結果、地磁気センサの検知結果、加速度センサの検知結果等を用いて車載通信機1の現在位置を測位し、その測位結果を制御部2に出力する。尚、本実施形態では、車載通信機1の内部に測位部4が設けられている構成を例示しているが、車載通信機1の外部に測位部4が設けられ、例えば測位結果が車載LAN(Local Area Network)を介して車載通信機1に送信される構成でも良い。
【0015】
制御部2は、自局受信レベル測定部2aと、比較判定部2bと、位置情報取得部2cと、位置情報送信部2dと、近傍基地局情報取得部2eと、受信レベル測定部2fと、接続制御部2gとを有する。これらの各部2a〜2gは、マイコンが実行する接続対象の基地局選択プログラムの処理に該当する。
【0016】
自局受信レベル測定部2aは、セルラー通信部3と接続中の基地局7である自局の電波の受信レベルを自局レベルとして測定する。比較判定部2bは、自局レベルが自局受信レベル測定部2aにより測定されると、その測定された自局レベルを第1所定閾値と比較判定する。
【0017】
位置情報取得部2cは、測位部4から測位結果が入力されることで、車載通信機1の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報送信部2dは、自局レベルが第1所定閾値よりも低下していると比較判定部2bにより判定されると、位置情報取得部2cより取得された位置情報をセルラー通信部3から通信ネットワーク6に送信させる。通信ネットワーク6において、制御局8は、車載通信機1から送信された位置情報を基地局7を介して受信すると、その受信した位置情報から車載通信機1の現在位置を特定し、車載通信機1の近傍に位置する近傍基地局を特定する。制御局8は、その特定した近傍基地局を示す近傍基地局情報を基地局7を介して車載通信機1に送信する。
【0018】
近傍基地局情報取得部2eは、近傍基地局情報が通信ネットワーク6からセルラー通信部3に受信されることで、通信ネットワーク6から近傍基地局情報を取得し、その取得した近傍基地局情報を記憶部5に記憶させる。通信ネットワーク6から取得される近傍基地局情報は、車載通信機1の現在位置から近い順にソートされている。受信レベル測定部2fは、3GPPの規格にしたがって所定周期及び所定アルゴリズムにて基地局の電波の受信レベルを測定し、受信レベルが高い順番のリストを作成する。接続制御部2gは、何れかの基地局を接続対象として選択して接続を試みる。
【0019】
図2に示すように、車載通信機1の周囲に基地局A〜Hが存在する場合であれば、車載通信機1は、位置情報をセルラー通信部3から通信ネットワーク6に送信させることで、
図3に示すような近傍基地局情報が通信ネットワーク6から受信され、近傍基地局情報を取得する。
図3の例示では、車載通信機1の現在位置から近い順が、基地局C、基地局F、基地局D、基地局B、基地局H、基地局E、基地局A、基地局Gであり、電波の受信レベルの高い順が、基地局D、基地局B、基地局H、基地局C、基地局F、基地局E、基地局A、基地局Gの場合を例示している。即ち、
図3の例示では、基地局D、基地局B、基地局Hは、電波の送信レベルが高く、基地局C、基地局Fよりも車載通信機1の現在位置から離れているにも拘らず、車載通信機1において、基地局C、基地局Fよりも電波の受信レベルが高い。即ち、基地局D、基地局B、基地局Hが車載通信機1から送信される電波の到達範囲外であれば、基地局D、基地局B、基地局Hでオーバーリーチが発生する可能性が高い。
【0020】
次に、上記した構成の作用について
図4から
図6を参照して説明する。ここでは、近傍基地局情報の更新処理、通信圏内への復帰判定処理について説明する。
(1)近傍基地局情報の更新処理
制御部2は、車載通信機1が通信圏外であるときには、予め設定されている圏外サーチ間隔に基づく圏外サーチの実施タイミングになると、近傍基地局情報の更新処理を開始する。制御部2は、近傍基地局情報の更新処理を開始すると、3GPPの規格にしたがって自局レベル及び周辺基地局レベルを測定する(S1)。制御部2は、その測定した自局レベルを第1所定閾値と比較判定し、自局レベルが第1所定閾値よりも低下しているか否かを判定する(S2)。
【0021】
制御部2は、自局レベルが第1所定閾値よりも低下していないと判定すると(S2:NO)、近傍基地局情報の更新処理を終了し、次の圏外サーチの実施タイミングを待機する。制御部2は、自局レベルが第1所定閾値よりも低下していると判定すると(S2:YES)、測位部4から入力された測位結果により車載通信機1の現在位置を示す位置情報を取得する(S3、位置情報取得手順)。制御部2は、位置情報を取得すると、その取得した位置情報を無線通信部3から通信ネットワーク6に送信させ(S4、位置情報送信手順)、通信ネットワーク6からの近傍基地局情報の受信を待機する(S5)。
【0022】
制御部2は、通信ネットワーク6から送信された近傍基地局情報が無線通信部3により受信されたと判定すると(S5:YES)、その受信された近傍基地局情報を取得する(S6、近傍基地局情報取得手順)。制御部2は、その取得した近傍基地局情報を記憶部5に記憶させることで、記憶部5に記憶されている近傍基地局情報を更新し(S7)、近傍基地局情報の更新処理を終了し、次の圏外サーチの実施タイミングを待機する。
【0023】
(2)通信圏内への復帰判定処理
制御部2は、車載通信機1が通信圏内から通信圏外に移行したと判定すると、通信圏内への復帰判定処理を開始する。制御部2は、通信圏内への復帰判定処理を開始すると、3GPPの規格にしたがって所定周期及び所定アルゴリズムにて基地局の電波の受信レベルを測定し、受信レベルが高い順番のリストを作成する(S11、受信レベル測定手順)。制御部2は、リストを作成すると、電波の受信レベルが最も高い基地局を接続対象として選択して接続を複数回試みる(S12、第1接続手順)。制御部2は、その接続に成功したか否かを判定し(S13)、接続に成功したと判定すると(S13:YES)、その接続に成功した基地局を自局として通信圏内への復帰処理を行い(S14)、通信圏内への復帰判定処理を終了する。
【0024】
一方、制御部2は、その接続に失敗したと判定すると(S13:NO)、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外する(S15、接続候補除外手順)。制御部2は、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外した近傍基地局情報を参照し、近傍基地局のうち車載通信機1の現在位置から最も近い基地局を接続対象として選択して接続を複数回試みる(S16、第2接続手順)。制御部2は、その接続に成功したか否かを判定し(S17)、接続に成功したと判定すると(S17:YES)、その接続に成功した基地局を自局として通信圏内への復帰処理を行い(S14)、通信圏内への復帰判定処理を終了する。
【0025】
一方、制御部2は、その接続に失敗したと判定すると(S17:NO)、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外する(S18)。制御部2は、その接続に失敗した基地局を接続候補から除外した近傍基地局情報を参照し、電波の受信レベルが第2所定閾値以上の接続候補が存在するか否かを判定する(S19)。制御部2は、電波の受信レベルが第2所定閾値以上の接続候補が存在すると判定すると(S19:YES)、ステップS16に戻り、ステップS16以降を繰り返す。制御部2は、電波の受信レベルが第2所定閾値以上の接続候補が存在しないと判定すると(S19:NO)、通信圏内への復帰処理を行うことなく、通信圏内への復帰判定処理を終了する。
【0026】
制御部2は、
図3に示すような近傍基地局情報であれば、
図6に示すように、最初に車載通信機1の現在位置から最も近くはないが受信レベルが最も高い基地局Dに接続を試みる。制御部2は、基地局Dへの接続に成功すると、基地局Dを自局として通信圏内に復帰するが、基地局Dへの接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局Dを接続候補から除外し、接続候補のうち車載通信機1の現在位置から最も近い基地局Cに接続を試みる。制御部2は、基地局Cへの接続に成功すると、基地局Cを自局として通信圏内に復帰するが、基地局Cへの接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局Cを接続候補から除外し、接続候補のうち車載通信機1の現在位置から次に近い基地局Fに接続を試みる。制御部2は、基地局Fへの接続に成功すると、基地局Fを自局として通信圏内に復帰するが、基地局Fへの接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局Fを接続候補から除外し、接続候補のうち車載通信機1の現在位置から次に近い基地局Bに接続を試みる。制御部2は、同様の処理を繰り返す。
【0027】
以上に説明したように本実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。車載通信機1において、3GPPの規格にしたがって電波の受信レベルが最も高い基地局7に接続を試み、その接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局7を接続候補から除外し、近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局7に接続を試みるようにした。オーバーリーチが発生する可能性が高い基地局7が複数存在する場合であっても、その複数の基地局7のうち最初にオーバーリーチが発生する可能性が高い基地局7だけを接続候補から除外し、残りの基地局7を接続候補から除外せず、自端末の現在位置から近い順に基地局7に接続を試みるので、セルラー通信が成立するまでに要する時間を短くすることができる。又、接続候補から除外する基地局7の数を低減するので、自端末が移動する場合でも、最適な基地局7に接続する可能性を高めることができる。これにより、オーバーリーチの影響を低減しつつ、セルラー通信を適切に成立させることができる。
【0028】
車載通信機1において、自局レベルが第1所定閾値よりも低下している場合に、位置情報をセルラー通信部3から通信ネットワーク6に送信するようにした。位置情報を定期的に通信ネットワーク6に送信すると通信ネットワーク6の負荷を無用に高めたり、位置情報の送信が課金される仕組みでは通信料金を無用に高めたり、電力消費を無用に高めたりすることになるが、自局レベルが第1所定閾値よりも低下している条件を付加することで、それらの不具合の発生を未然に回避することができる。
【0029】
車載通信機1において、近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局7を接続対象として選択して接続を試み、その接続に失敗すると、その接続に失敗した基地局7を接続候補から除外するようにした。接続に失敗した基地局7を接続候補から除外することで、接続に成功する可能性が低い基地局7に接続を再度試みてしまう事態を未然に回避することができる。
【0030】
車載通信機1において、自端末の現在位置から近い順に基地局7を接続対象として選択して接続を試みる場合に、電波の受信レベルが第2所定閾値以上の基地局7を接続候補とし、その接続候補の何れかの基地局7を接続対象として選択して接続を試みるようにした。電波の受信レベルが第2所定閾値未満の基地局7を接続候補から除外することで、接続に成功する可能性が低い基地局7に接続を試みてしまう事態を未然に回避することができる。
【0031】
車載通信機1において、3GPPの規格にしたがって電波の受信レベルが最も高い基地局7を接続対象として選択した場合に、その接続対象として選択した基地局7に接続を複数回試みるようにした。接続を複数回試みることで、偶発的な接続の失敗を排除することができ、基地局7への接続に成功する可能性を高めることができる。
【0032】
車載通信機1において、近傍基地局のうち自端末の現在位置から近い順に基地局7を接続対象として選択した場合でも、その接続対象として選択した基地局7に接続を複数回試みるようにした。この場合も、接続を複数回試みることで、偶発的な接続の失敗を排除することができ、基地局7への接続に成功する可能性を高めることができる。
【0033】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
通信端末として車載通信機に適用する構成を例示したが、スマートフォンやタブレット等の携帯端末に適用しても良い。
【0034】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【符号の説明】
【0035】
図面中、1は車載通信機(通信端末)、2は制御部、2aは自局受信レベル測定部、2bは比較判定部、2cは位置情報取得部、2dは位置情報送信部、2eは近傍基地局情報取得部、2fは受信レベル測定部、2gは接続制御部である。