(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
合成繊維フィラメントから構成された織物の片面に、エラストマー樹脂が塗布されてなるエアバッグ用コーティング基布であって、幅方向の引裂強力の変動係数(CV%)が経方向、緯方向共に5%以下であり、かつ糊玉欠点の発生数が2.0点/100m以下であることを特徴し、且つ樹脂の塗布方法がナイフオンエアー方式であり、前後で異なる形状をしたナイフを用いることを特徴とするエアバッグ用コーティング基布の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を詳述する。
本発明において、合成繊維フィラメントから構成された織物とは、合成繊維フィラメント糸条を用いて製織される織物を意味する。織物は、機械的強度に優れ、厚さを薄くできるという点で優れている。織物の組織は、例えば、平織、綾織、朱子織およびこれらの変化織、多軸織などが適用でき、なかでも機械的強度により優れる平織物が特に好ましい。
【0014】
合成繊維としては、特にナイロン66、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン12等の脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維のような芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維が使用される。他には、全芳香族ポリエステル繊維、ポリパラフェニン・ベンゾビス・オキサゾール繊維(PBO繊維)、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルケトン繊維等が挙げられる。ただし、経済性を勘案すると、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維が好ましく、特に好ましくはポリアミド66である。また、これらの繊維はその一部または全部が再利用された原材料より得られるものでもよい。
【0015】
また、これらの合成繊維には、原糸製造工程や後加工工程での工程通過性を向上させるために、各種添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、平滑剤、帯電防止剤、増粘剤、難燃剤等が挙げられる。また、この合成繊維は原着糸や製糸後染色したものでもよい。また、単糸の断面は、通常の丸断面のほか、異形断面であってもよい。合成繊維は、72フィラメント以上のマルチフィラメント糸を用いることが、柔軟性、コーティング面の平滑性の点から好ましい。
【0016】
使用する原糸の沸水収縮率を5〜10%とすることでしわの少ない高品質の基布が得られるので好ましい。原糸の沸水収縮率が5%未満であれば、製織後の加工処理で原糸が収縮しても、コーティング前の織物(以下、ベース基布という)の空隙が埋まらず、結果として通気度の上昇や糸の目ズレが生じやすい基布となる。また10%を超える収縮率になると、後加工処理で空隙がより埋まる方向になるが、製糸性が極めて困難になる。より好ましくは5.5〜9.5%である。
【0017】
ベース基布の製織時に使用される織機についてはウォータージェットルーム、エアージェットルーム、レピア織機等既存に存在する織機が適用出来、開口機はジャガード等の既知の装置が使用出来る。製織された基布は糊剤や過剰な油剤成分や汚れの除去の精練洗浄をすることがあるが、精練せずに織物に仕上げても構わない。
【0018】
織物は、収縮させる目的で70〜98℃のお湯槽に1秒以上10分以下の時間通過させても良い。このお湯槽通過時は進行方向への走行テンションのみを付与し、緯糸方向には拡張させず、緯糸を収縮させることが好ましい。その後、乾燥工程において所定の水分量まで乾燥させることが出来る。この織物は乾燥することによって、コーティング基布用のベース基布を得ることが出来る。
【0019】
ベース基布に塗布されるコーティング樹脂は、耐熱性、耐寒性、難燃性を有するエラストマー樹脂が好ましいが、最も好ましいのはシリコーン系樹脂である。シリコーン系樹脂の具体例としては付加重合型シリコーンゴム等が挙げられる。例えば、ジメチルシリコーンゴム、メチルビニルシリコーンゴム、メチルフェニルシリコーンゴム、トリメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン、メチルビニルシリコーンレジン、エポキシ変性シリコーンレジン、アクリル変性シリコーンレジン、ポリエステル変性シリコーンレジンなどが挙げられる。なかでも、硬化後にゴム弾性を有し、強度や伸びに優れ、コスト面でも有利な、メチルビニルシリコーンゴムが好適である。
【0020】
本発明において、使用するシリコーン系樹脂の樹脂粘度は5000〜40000mPa・secが好ましく、7000〜38000mPa・secがより好ましい。樹脂粘度が40000mPa・secより大きくなると50g/m
2以下の塗布量を達成するのに、必要以上に経方向に張力をかける必要があり、基布に対してダメージを与えるので好ましくない。5000mPa・sec未満の場合、樹脂がベース基布内部に浸透し、所望の通気度を達成することが出来ないため好ましくない。上記の粘度の範囲内に調整できるのであれば、溶剤系、無溶剤系どちらでも構わないが、環境への影響を考慮すると、無溶剤系が好適である。
【0021】
なお、本発明では、樹脂以外の添加剤を含有する樹脂組成物の粘度、すなわち、実際にベース基布に塗布される樹脂の粘度を「樹脂の粘度」とする。
【0022】
本発明のコーティング基布の樹脂層を構成するアルケニル基含有ポリシロキサンは、樹脂が硬化後、ゴム弾性を有するシリコーン樹脂膜になるために、1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有することが必要である。アルケニル基含有ポリシロキサン骨格中におけるアルケニル基が結合するケイ素原子の位置としては、例えば、分子鎖末端および/または分子鎖途中(分子鎖非末端)が挙げられるが、両方にケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状のものが好ましい。
【0023】
アルケニル基含有ポリシロキサン成分の25℃における粘度は、硬化物の繊維に対する接着性、ゴム強度、耐ブロッキング性等の物理的特性や作業性の点から、10〜50Pa・secが好ましく、15〜45Pa・secがより好ましい。
【0024】
シリコーン系樹脂を構成するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基含有ポリシロキサンとヒドロシリル化付加反応し、架橋剤として作用する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、例えば、直鎖状、環状、分岐鎖状、または三次元網目構造のいずれでも良い。
【0025】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個(通常、2〜300個程度)以上のケイ素原子に結合した水素原子を有する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状構造を有する場合、これらのケイ素原子に結合した水素原子は、分子鎖末端及び分子鎖途中(すなわち、分子鎖非末端)のどちらか一方にのみ位置していても、その両方に位置していてもよい。
【0026】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)は、25℃における粘度が0.1〜1,000mPa・secであることが好ましく、0.1〜500mPa・secであることがより好ましい。
【0027】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(B)の配合量は、(A)成分中のケイ素原子に結合するアルケニル基1個に対して、(B)成分中のケイ素原子に結合する水素原子が、通常1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個の範囲となる量である。
【0028】
シリコーン系樹脂を使用する場合には、反応硬化剤を用いても良く、その代表例は、白金または白金化合物触媒(白金系触媒)である。公知のものが使用できるが、具体的には、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体などが例示される。白金化合物触媒は混合すればするほどヒドロシリル化反応が促進されるが、一般的に組成物に対して白金金属量で100〜2000ppm添加しているのが一般的である。
【0029】
シリコーン系樹脂と基布との接着性を向上させるために、シリコーン系樹脂に接着助剤を含有させることが好ましい。接着助剤としては、例えば、アミノ系シランカップリング剤、エポキシ変性シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、クロル系シランカップリング剤、およびメルカプト系シランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
また必要に応じて、例えば、ヒュームドシリカ、乾式シリカ等の補強性無機質充填剤、末端基を調整した架橋性シリコーン(シリコーンレジン)、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、二酸化チタン等の非補強性無機充填剤を添加することが出来る。これらの無機充填剤の使用量は、アルケニル基含有ポリシロキサン成分の0.1〜200質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましい。
【0031】
さらに着色剤として無機顔料や有機顔料を添加してもよく、無機顔料ならば例えばカーボンブラック、酸化チタン、赤ベンガラ、黒ベンガラ、チタンイエロー、コバルトブルー等が挙げられ、有機顔料ならば例えば縮合アゾ系(黄色、茶色、赤色)、イソインドリノン系(黄色、橙色)、キナクリドン系(赤色、紫色)、ジケトピロロピロール系(橙色、赤色、紫色)、アンスラキノン系(黄色、赤色、青色)、ジオキサジン系(紫色)、ベンズイミダゾロン系(橙色)、銅フタロシアニン系(青色)、アリルアマイド系(黄色)等が挙げられる。
【0032】
本発明において、コーティング基布の糊玉欠点を減少させることと幅方向の引裂強力バラツキを低減させるためには、コーティング時に用いるナイフ、またナイフの直後にある支持体を通した基布の走行角度は大変重要である。樹脂を塗布する方法としては、従来の公知の方法が用いられるが、コーティング量の調整の容易さや異物(突起物)混入時の影響の点から、ナイフコートが好ましく、ナイフオンエアー方式によるコート方法がより好ましい。用いるナイフは一体型のドクターナイフとブレード式ナイフであってもどちらでも良いが、ナイフのメンテナンス性を考慮するとブレード式ナイフの方が好ましい。ナイフオンベッド方式では、樹脂が織物内部まで浸透させ易いが、コーティング面の織物表面、特に頭頂部に樹脂を存在させにくくなり、本来コーティング基布に求められる通気抑制を達成することが出来なくなる。
【0033】
コーティング時におけるナイフ刃は、塗工する樹脂を堰き止め、幅方向に広げて均一の塗布量に塗布する役割を有する。このナイフコートの際に使用されるナイフ刃の先端形状として、半円状、角状等が使用されてきたが、これは主に樹脂の塗布量の調整を目的とするものであった。
本発明者は、刃の先端を前面と後面で異なる形状をしたナイフを用いることで基布へのダメージ軽減と糊玉欠点の解消を両立することを見出したものである。
【0034】
従来、ナイフ刃が布と接する部分、すなわち刃の先端形状が、160度以上の範囲を有する半円状のものが好ましく用いられてきた。半円形状でコーティングした際にも糊玉は観測される。これは、塗工される樹脂がナイフ刃に沿って圧縮され、基布への塗布を行った後、塗布に使われず残った微量の樹脂がナイフ刃通過後、ナイフ刃による押し込み圧力から解放される際にナイフ刃に沿って裏側に回り込む現象が生じるためと推定される。微量の樹脂が生産レベルでは目視出来る量まで蓄積されることで、ついには、基布上に落下し、糊玉欠点となると考えられる。
【0035】
本願発明において、好ましいナイフ形状の例としては、前部は1/4円状、後部は角状(直角型)の形状(
図3)のものを用いる。前部は1/4円状、後部は一部角型に削った形状(
図4)等様々な組み合わせが出来るが、前部は1/4円状(ラウンド型)後部が角状(直角型)の形状が最も好ましい。
【0036】
好ましい例として、前部の1/4円状の半径は0.2mm〜1.5mmのものが好ましい。この時の円状が開始する部分の刃厚は0.4mm〜3.0mmが好ましい範囲となる。この範囲であれば、樹脂の塗布量が多くなりすぎず、かつ、基布へのダメージを最小限に抑えることが出来る。
ナイフの耐久性の面から基布に接するナイフ先端から接しない刃の根元までの刃厚を一定にすることが好ましい。
【0037】
一方でナイフ刃を押し込む際に、基布の走行角度が3〜15°であることが好ましい。より好ましいのは、4〜10°である。走行角度が3°未満であるとナイフ刃の形状を変更しても樹脂が刃の裏側に周り込むことを抑えることが出来ないために糊玉欠点が増加する傾向となり好ましくない。一方で15°より走行角度が大きいと糊玉欠点は抑えることが出来るが、結果として過剰な力で布を押し込むことになり、樹脂の塗布量が過剰になるだけでなく、基布の幅方向の物性の均一化が困難となる。
【0038】
上述した、基布の走行角度は、ナイフ前後に位置する基布の支持体間を結んだ線を基準とし、コーティング時にナイフ刃により押し込まれることで形成される、基準線と実際の基布が形成する角度を言う。支持体としては、ベッドと呼ばれる平坦面を有するものでも、ローラーにより基布を送り出しても構わない。ベッドの場合、基布の走行方向に沿って(地面に対して並行に)平坦面を配置しても良いが、基布の基準線の高/低を変更するため、あるは基布を平滑にするために張力を調整する目的で、ナイフベッド自体を傾けて設置しても構わない。この傾け角度が大きすぎると、基布へのダメージが生じるため好ましくない。地面に対して平行での配置を0°とした際、好ましくは−30°〜+30°、より好ましくは、−20°〜+20°である。ローラーを用いた場合は、ローラーと布が最後に接する位置、あるいはコーティングされた基布がローラーに最初に接する位置間を結ぶ線を基準線とすれば良い。
【0039】
基準線と基布間の角度はナイフ刃の通過前後の2ヶ所計測されるが、角度が小さい法を採用すれば良い。一般的には、コーティング刃の前よりもコーティングされた後の角度の方が小さいことが多く、コーティングされた後の角度を採用することが多い。
【0040】
またコーティング前の基布に一定の温度を与えながら張力を与えると糊玉欠点を抑制することが可能なため、好ましい。これは加温下で一定の張力が付与されることで基布が平滑になり、コーティング後の微量の樹脂が残りにくくなるためと考えられる。加温の温度、張力はベース基布の密度変化が起こらない程度であれば特に制限はないが、80〜130℃が好ましく、より好ましくは90〜120℃である。80℃未満ではベース基布の平滑化の効果が現れにくい。一方で120℃を超えると、耳タブリが大きいベース基布ではより中央部と耳端部で熱のかかり方が異なり、結果として基布が平滑化しない問題が発生する。この加温装置としては、加熱ロールを通過させる方法、加熱オーブン内を通過させる方法等、公知の方法が使用出来る。また張力はしわが発生しない程度の走行テンションを下限とし、密度が変化しない範囲を上限とすれば良い。
【0041】
本発明のコーティング基布は、幅方向の引裂強力のバラツキが小さいことを特徴とする。幅方向の引裂強力は、コーティング基布の幅方向に均等に12分割し、その中央10点について、引裂強力を測定する。測定された値から、平均値と分散を求め、分散を平均値で割り100分率で示した値(変動係数)が経方向と緯方向共に5%以下である。好ましくは4.5%以下、より好ましくは4.0%以下である。幅方向における引裂強力の変動係数が5%以下である場合、同じエアバッグ内で部位による引裂強力の差が少なくなることから、安定したエアバッグの展開性能が得られるメリットが生じる。
【0042】
本発明のコーティング基布は糊玉欠点の発生数が2.0点/100m以下である。糊玉欠点の対象はその長い部分が2mm以上とした際に、糊玉欠点の発生量は得られたコーティング基布を2000m検査して、発生した糊玉欠点の発生量が2.0点/100m以下である。好ましくは1.0点/100m以下である。2.0点/100m以下の糊玉欠点であれば、エアバッグの展開挙動が得られるメリットがある。この糊玉欠点は目視検査により発見可能なものである。
【0043】
塗布後のコーティング剤を乾燥、硬化させる方法としては、熱風、赤外光、マイクロウェーブ等など、一般的な加熱方法を使用することができる。加熱温度、時間については、エラストマー樹脂が硬化するのに十分な温度に達していればよく、好ましくは加熱温度が150〜220℃であり、加熱時間が0.2〜5分である。
【0044】
織物(ベース基布)を構成するフィラメント糸条の総繊度は、200〜1000dtexであることが好ましい。総繊度が1000dtexを超えると、織物(ベース基布)の厚さが増大し、エアバッグの収納性が悪化しやすくなる。一方、総繊度が200dtex未満では、コーティング基布の引裂機械特性などのエアバッグ作動時の機械特性が低下しやすくなる。
【0045】
織物(ベース基布)のカバーファクターは、1,700〜2,500が好ましく、1,900〜2,450がより好ましい。カバーファクターが1,700未満であると、エアバッグとして必要な物理特性(引張強度等)が低下する。一方、カバーファクターが2,500を超える場合には、製織時、ならびに収納性による限界がある。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における各種評価は、下記の方法にしたがって評価した。
【0047】
(1)総繊度
JIS L−1095 9.4.1記載の方法で測定する。
【0048】
(2)フィラメント数
フィラメント糸条の断面写真よりフィラメント数を数える。
【0049】
(3)織物の密度
JIS L−1096 8.6.1記載の方法で測定する。
【0050】
(4)カバーファクター(CF)
CF=√(経糸の総繊度)×経糸密度+√(緯糸の総繊度)×緯糸密度
なお、総繊度の単位はdtex、織密度の単位は本/2.54cmである。
【0051】
(5)コーティング量
エラストマー樹脂を硬化させた後のコーティング基布を5cm角で採取し、質量を測定する。ベース基布である繊維のみを溶かす溶剤(ポリアミド66の場合は、ヘキサフルオロイソプロパノール)に浸漬してベース基布を溶解させた後、不溶物であるエラストマー樹脂層のみを回収してアセトン洗浄を行い、真空乾燥後、試料の秤量を行った。なお、塗布量は、1m
2あたりの質量(g/m
2)で表した。
【0052】
(6)コーティング基布幅方向の引裂強力
ISO13937−2記載の方法で測定する。ただしサンプリングの方法は、コーティング基布を幅方向に均等に12分割した後、両端の2区画は採用せず、中央の10区画で測定を行う。経方向は中央で10分割した各区画の出来るだけ中央でサンプリングを行う。緯方向はNz側の5点はNz方向から引き裂かれるように、反Nz側の5点は反Nz方向から引き裂かれるように、分割した領域の端からサンプリングを行う。
【0053】
(7)糊玉欠点の発生数
コーティング後の基布2000mに対して、最も長い部分で2mm以上の糊玉欠点数を目視によりカウントし、100m当たりの発生数を計算した。
【0054】
(実施例1)
原糸強度が8.4cN/dtexで総繊度が470dtex、72フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、95℃の沸水にて収縮加工した後、130℃で乾燥仕上げをし、経密度46本/2.54cm、緯密度46本/2.54cm、カバーファクターが1,994の織物を得た。
【0055】
この織物(ベース基布)を用い、
図1の装置を用いてコーティングを行った。ナイフは先端部厚みが1.0mmで、前部ラウンド型、後部直角型(
図3)のものを用いた。
この織物(ベース基布)の片面に、樹脂粘度が14000mPa・secである付加重合型の無溶剤ビニルメチルシリコーン樹脂をナイフオンエアー方式にて塗布した。その後、200℃で1分間硬化処理し、塗布量が25g/m
2であるコーティング基布を得た。この時塗布する前に使用した加熱ローラは110℃に設定し、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度は8°であった。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数が低く、糊玉欠点に対する品位は優れていた。
【0056】
(実施例2)
原糸強度が8.3cN/dtexで総繊度が470dtex、144フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、95℃の沸水にて収縮加工した後、130℃で乾燥仕上げをし、経密度46本/2.54cm、緯密度46本/2.54cm、カバーファクターが1,994の織物を得た。
【0057】
この織物(ベース基布)を用い、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。この時使用したナイフは先端部厚みが0.45mmで、前部ラウンド型、後部直角型(
図3)のものを用いた。
この織物(ベース基布)の片面に、樹脂粘度が18000mPa・secである付加重合型の無溶剤ビニルメチルシリコーン樹脂をナイフオンエアー方式にて塗布した。その後、200℃で1分間硬化処理し、塗布量が20g/m
2であるコーティング基布を得た。この時塗布する前に使用した加熱ローラは110℃に設定し、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度は5°であった。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数が低く、糊玉欠点に対する品位は優れていた。
【0058】
(実施例3)
実施例2の織物(ベース基布)を用い、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。この時使用したナイフは先端部厚みが0.60mmで、前部ラウンド型、後部一部角型に削った形状(
図4)のものを用いた。
この織物(ベース基布)の片面に、樹脂粘度が37000mPa・secである付加重合型の無溶剤ビニルメチルシリコーン樹脂をナイフオンエアー方式にて塗布した。その後、200℃で1分間硬化処理し、塗布量が25g/m
2であるコーティング基布を得た。この時塗布する前に使用した加熱ローラは115℃に設定し、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度は4°であった。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数が低く、糊玉欠点に対する品位は優れていた。
【0059】
(実施例4)
原糸強度が8.4cN/dtexで総繊度が350dtex、108フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、95℃の沸水にて収縮加工した後、130℃で乾燥仕上げをし、経密度55本/2.54cm、緯密度55本/2.54cm、カバーファクターが2,208の織物を得た。
【0060】
この織物(ベース基布)を用い、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。この時使用したナイフは先端部厚みが0.35mmで、前部ラウンド型、後部直角型(
図3)のものを用いた。
この織物(ベース基布)の片面に、樹脂粘度が17000mPa・secである付加重合型の無溶剤ビニルメチルシリコーン樹脂をナイフオンエアー方式にて塗布した。その後、200℃で1分間硬化処理し、塗布量が20g/m
2であるコーティング基布を得た。この時塗布する前に使用した加熱ローラは120℃に設定し、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度は5°であった。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数が低く、糊玉欠点に対する品位は優れていた。
【0061】
(実施例5)
原糸強度が8.5cN/dtexで総繊度が235dtex、72フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、95℃の沸水にて収縮加工した後、130℃で乾燥仕上げをし、経密度73本/2.54cm、緯密度73本/2.54cm、カバーファクターが2,238の織物を得た。
【0062】
この織物(ベース基布)を用い、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。この時使用したナイフは先端部厚みが0.50mmで、前部ラウンド型、後部直角型(
図3)のものを用いた。
この織物(ベース基布)の片面に、樹脂粘度が14000mPa・secである付加重合型の無溶剤ビニルメチルシリコーン樹脂をナイフオンエアー方式にて塗布した。その後、200℃で1分間硬化処理し、塗布量が17g/m
2であるコーティング基布を得た。この時塗布する前に使用した加熱ローラは110℃に設定し、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度は7°であった。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数が低く、糊玉欠点に対する品位は優れていた。
【0063】
(実施例6)
原糸強度が8.4cN/dtexで総繊度が940dtex、144フィラメントのポリアミド66マルチフィラメント糸を、平織りにてウォータージェットルームにて製織した。次いで、95℃の沸水にて収縮加工した後、130℃で乾燥仕上げをし、経密度37本/2.54cm、緯密度37本/2.54cm、カバーファクターが2.269の織物を得た。
【0064】
この織物(ベース基布)を用い、実施例1と同様の方法でコーティングを行った。この時使用したナイフは先端部厚みが2.50mmで、前部ラウンド型、後部直角型(
図3)のものを用いた。
この織物(ベース基布)の片面に、樹脂粘度が8000mPa・secである付加重合型の無溶剤ビニルメチルシリコーン樹脂をナイフオンエアー方式にて塗布した。その後、200℃で1分間硬化処理し、塗布量が45g/m
2であるコーティング基布を得た。この時塗布する前に使用した加熱ローラは110℃に設定し、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度は8°であった。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表1に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数が低く、糊玉欠点に対する品位は優れていた。
【0065】
(比較例1)
実施例2と同様のベース基布を用い、ナイフの先端形状が前部、後部で変化無く、ラウンド型のもの(
図6)を用いる以外は実施例2と同様の樹脂、コーティング方法で実施した。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表2に示した。得られたコーティング基布は、幅方向の引裂強力の変動係数は範囲内であるが、糊玉欠点の発生数が多いために品位が優れているとは言えなかった。
【0066】
(比較例2)
実施例3と同様のベース基布を用い、ナイフの先端形状が前部、後部で変化無く、角型のもの(
図5)を用いる以外は実施例3と同様の樹脂、コーティング方法で実施した。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表2に示した。得られたコーティング基布は、糊玉欠点に対する品位は優れていたが、幅方向の引裂強力の変動係数が経方向、緯方向共に高かった。
【0067】
(比較例3)
実施例4と同様のベース基布を用い、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度を18°に設定する以外は実施例4と同様の方法でコーティングを実施した。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表2に示した。得られたコーティング基布は、糊玉欠点に対する品位は優れていたが、ナイフ刃による押し込み量が多すぎるために、ナイフ刃による基布へのダメージが大きく、幅方向の引裂強力の変動係数が経方向、緯方向共に高い結果であった。
【0068】
(比較例4)
実施例4と同様のベース基布を用い、ナイフと直後の支持体の基布の走行角度を2°に設定する以外は実施例4と同様の方法でコーティングを実施した。
得られたコーティング基布の特性を評価し、表2に示した。得られたコーティング基布は、実施例4に比較し、樹脂の付着量が多くなった。また、糊玉欠点の発生数が多いために品位が優れているとは言えなかった。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】