【文献】
A Panigrahi,Structural and electrical properties of Ba5RTi2ZrNb7O30 [R=La, Nd, Sm, Eu, Gd, Dy] ceramic system,Indian Journal of Physics,2000年,74A(2),P. 147-149
【文献】
N.K. Singh,Electrical Conductivity in Ba5RTi3-xZrxNb7O30 [R = La or Dy] Ceramics,Asian Journal of Chemistry,2003年01月,Vol. 15, No. 1,P. 388-394
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主成分100モルに対して、副成分としてMn、Mg、Co、V、W、Mo、Si、Li、B、Alから選択される少なくとも一種を0.10モル以上20.00モル以下含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【背景技術】
【0002】
例えば、積層セラミックコンデンサはその信頼性の高さやコストの安さから、多くの電子機器に用いられている。具体的には、情報端末、家電、自動車電装品に用いられている。これらの用途における、特に、車載用などを用途とする積層セラミックコンデンサでは、通常の積層セラミックコンデンサに比べて、より高温領域までの保証が求められることがあり、より高い信頼性が必要である。印加される電圧に対して破壊しない、つまり耐電圧が高いことが必要である。さらに、高温領域で電圧を長時間印加しても絶縁抵抗が劣化しにくい、つまり高温負荷寿命が長いことも必要である。
【0003】
特許文献1には、室温において高い比誘電率を示し、180℃の高温域においても高い比抵抗を有する誘電体セラミック組成物が開示されている。具体的には、組成式(K
1−yNa
y)Sr
2Nb
5O
15(但し、0≦y<0.2)で表されるタングステンブロンズ型複合酸化物を主成分として含み、且つ、上記主成分100モル部に対して0.1モル部以上、40モル部以下の第一副成分と第二副成分とを含む誘電体セラミック組成物を用いた積層セラミックコンデンサに関する技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、前記組成式を見て分かるように、特許文献1では主成分の構成元素としてアルカリ金属元素であるカリウム(K)及びナトリウム(Na)を含んでいる。アルカリ金属は揮発性が高いために、工程内にアルカリ金属元素を補填する工程を取り入れる必要があるなど、製造時の取り扱いが煩雑になりやすいという問題があった。
また、揮発性の高いアルカリ金属を含むことにより、高温で熱処理を行う脱バインダ工程や焼成工程、再酸化工程で、誘電体組成物中にアルカリ金属に起因した格子欠陥が生成し易く、高い耐電圧が得られ難いという問題点があった。このため、前記特許文献1においては、高温領域において、高い比誘電率と高い耐電圧についての技術の開示はなされていない。
【0005】
また、特許文献2には、20℃において高い品質係数Qと良好な温度係数を有し、150℃の耐電圧が高い組成式(Ca
1−x(Ba,Sr)
x)
k(Zr
1−yTi
y)O
3からなるペロブスカイト型酸化物に、複数の添加物を添加した誘電体磁器層を備えた磁器コンデンサについての技術が開示されている。
【0006】
前記特許文献2においては、150℃という高温域で高い耐電圧を示しているが、20℃における比誘電率が最大でも125程度しか得られず、今後使用が期待される175℃以上の高温領域において、所望の静電容量を得ることが難しいという問題点があった。
【0007】
また、非特許文献1には、比誘電率が高く誘電損失が小さいタングステンブロンズ型誘電体Ba
2MTi
2Nb
3O
15(M=Bi
3+、La
3+、Nd
3+、Sm
3+、Gd
3+)についての技術が開示されている。室温での比誘電率が100〜700程度と高く、室温でのtanδが5%以下という良好な値を得ている。また、非特許文献2には、比誘電率が高く誘電損失が小さいタングステンブロンズ型誘電体Ba
2Sm
2Ti
4Ta
6O
30が開示されている。室温での比誘電率が120程度と高く、室温でのtanδが3%以下という良好な値を得ている。しかし、前記非特許文献1は、高温負荷寿命に関する記述がない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0024】
本実施形態に係る誘電体組成物は、
主成分が 化学式(Sr
1.00−s−tBa
sCa
t)
6.00−xR
x(Ti
1.00−aZr
a)
x+2.00(Nb
1.00−bTa
b)
8.00−xO
30.00で表され、
前記Rが
Y、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも一種の元素であり、
s、t、x、a、bが、0.50≦s≦1.00、0≦t≦0.50、0.50≦s+t≦1.00、0.50<x≦1.50、0.30≦a≦1.00、0≦b≦1.00を満たすタングステンブロンズ型複合酸化物である主成分を有することを特徴とする。
【0025】
本実施形態に係る誘電体組成物が、前記化学式で表されるタングステンブロンズ型複合酸化物を主成分とすることで、高い耐電圧が得られやすくなる。この要因について、発明者等は以下のように考えている。本実施形態の主成分である前記タングステンブロンズ型複合酸化物は、バンドギャップが広いという特徴があるため、価電子帯にある電子が伝導帯へ励起し難く、伝導に関わっている多数キャリアである電子のキャリア濃度を抑制することが可能となる。また、耐電圧の代表的な破壊モードである電子なだれでは、多数キャリアである伝導電子のキャリア濃度が影響していることが考えられる。本発明の誘電体組成物では、この多数キャリアである電子のキャリア濃度を低く抑えることが可能となるため、電子なだれによる破壊が発生し難くなったものと考えられる。
【0026】
更に、バンドギャップが広いため、高い電界強度が印加されてもある程度の広さのバンドギャップを維持することが出来るため、高電界でも高い耐電圧が得られ易いものと思われる。また、アルカリ金属を含まないため、格子欠陥を生じ難く、伝導電子が生成され難いため、比抵抗、耐電圧が高いという特徴がある。また、高温、高電界下で電解還元反応が起きにくいと考えられる。このため、還元反応により生じる伝導電子の増加を抑制できるため、長い高温負荷寿命を示すものと考えられる。
【0027】
前記化学式のs、tが0.50≦s≦1.00、0≦t≦0.50、0.50≦s+t≦1.00であることで、高い耐電圧を得られ易くなる。好ましくは、前記化学式のs、tが0.60≦s≦1.00かつ、0.20≦t≦0.50、0.80≦s+t≦1.00であることで、より高い耐電圧が得られ易くなる。一方、Sr、Ba、Ca以外にアルカリ金属元素であるKまたはNaを含む場合は、これらの元素の揮発性が高いので、格子欠陥が生じてしまい、結果として高い耐電圧が得られ難くなる傾向となる。また、tはCaの置換量を表しているが、Caは任意の成分であり、その置換量の上限は0.50である。前記化学式のxが0.50<x≦1.50であることで長い高温負荷寿命を得ることができる。
【0028】
前記化学式のRがY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも一種の元素であることで、高い耐電圧が得られ易くなる。
【0029】
前記化学式のxが0.50<x≦1.50である例えば、x=1.00の(Sr
1.00−s−tBa
sCa
t)
5.00R
1.00(Ti
1.00−aZr
a)
3.00(Nb
1.00−bTa
b)
7.00O
30.00等のタングステンブロンズ型複合酸化物を主成分とすることで、長い高温負荷寿命が得られ易い。
一方、xが0.50以下の場合やxが1.50より大きい場合、例えば、化学式Ba
6Ti
2Nb
8O
30や化学式Ba
4La
2Ti
4Nb
6O
30等の複合酸化物では、高温負荷寿命が短くなってしまう。
【0030】
前記化学式中のZrの置換量aが0.30≦a≦1.00であることで、バンドギャップが広くなるため、高い耐電圧が得られ易くなる。一方、置換量aが0.30未満の場合、バンドギャップを広めることが困難となり、結果として、高い耐電圧が得られ難くなってしまう。
【0031】
さらに、前記化学式のZrの置換量aが0.50≦a≦1.00であることで、よりバンドギャップが広くなるため、高い耐電圧が得られ易くなる。
【0032】
前記化学式中のNbをTaに置き換えた複合酸化物においても、タングステンブロンズ型の結晶構造は維持可能であり、さらにそのTaの置換量bを0.10≦b≦1.00にすることでより高い耐電圧が得られ易くなる。
【0033】
副成分として、Mn、Mg、Co、V、W、Mo、Si、Li、B、Alから選択される少なくとも一種以上の元素を含むことが好ましい。これらの元素と、前記主成分に含まれるZrとの相互作用により、高い耐電圧とともに、高い比抵抗が得られ易くなる。好ましくはZrの置換量aが0.80≦a≦1.00であることで、相互作用が高まり、より高い耐電圧が得られ易くなる。
【0034】
また、前記副成分の含有量を、前記主成分100モルに対して0.10モル以上20.00モル以下とすることで、200℃において9.00×10
12Ωcm以上の高い比抵抗を得ることが可能となる。さらに、175℃以上の高い温度においてもより高い耐電圧を得ることが可能となる。
【0035】
また、主成分に含まれるRとは別に、第2副成分としてY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLuから選ばれる少なくとも一種の元素を含んでいてもよい。第2副成分は任意の成分であり、その含有量の上限は、発明の目的が達成できる範囲で決定される。
【0036】
なお、誘電体組成物はまた、本発明の効果である誘電特性、すなわち比誘電率や比抵抗、耐電圧を大きく劣化させるものでなければ、微少な不純物やその他副成分を含んでいてもかまわない。よって、主成分の含有量は特に限定されるものではないが、たとえば前記主成分を含有する誘電体組成物全体に対して50モル%以上、100モル%以下である。
【0037】
次に積層セラミックコンデンサを例示し説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す。積層セラミックコンデンサ1は誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0038】
誘電体層2の厚みは、特に限定されず、積層セラミックコンデンサ1の用途に応じて適宜決定すれば良い。
【0039】
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、Ni、Pd、Ag、Pd−Ag合金、CuまたはCu系合金が好ましい。なお、Ni、Pd、Ag、Pd−Ag合金、CuまたはCu系合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
【0040】
次に、
図1示す積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
【0041】
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を塗布して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
【0042】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
【0043】
まず、主成分が所望の割合となるように原料を用意し、混合し、800℃以上で熱処理(仮焼成)することで、仮焼粉を得ることができる。好ましくは、800℃〜1000℃で熱処理し、仮焼粉の粒子径は0.1μm以上5.0μm以下となるようにする。異方性形状を有するBa
5Nb
4O
15のような異相が仮焼粉に含まれないことが好ましい。
【0044】
原料には、SrやBa、Ca、Ti、Zr、Nb、Taを主として構成する酸化物やその混合物を原料粉として用いることができる。さらには、焼成により上述した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。具体的には、Srの原料としてSrOを用いてもよいし、SrCO
3を用いてもよい。
【0045】
また、本実施形態に係る誘電体組成物が、上記副成分を含有する場合には、副成分の原料も準備する。副成分の原料としては、特に限定されず、各成分の酸化物やその混合物を原料粉として用いることができる。さらには、焼成により上述した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。具体的には、Mgの原料としてMgO用いても良いし、MgCO
3を用いても良い。
【0046】
準備した主成分の仮焼粉および、副成分の原料を所定の組成比となるように秤量して混合し、誘電体組成物原料を得る。混合する方法としては、たとえば、ボールミルを用いて行う湿式混合や、乾式ミキサーを用いて行う乾式混合が挙げられる。
【0047】
この誘電体組成物原料を塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
【0048】
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
【0049】
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
【0050】
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0051】
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
【0052】
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1重量%〜5重量%程度、溶剤は10重量%〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
【0053】
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
【0054】
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
【0055】
後述する焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5℃/時間〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180℃〜500℃、温度保持時間を好ましくは0.5時間〜24時間とする。また、脱バインダ処理の雰囲気は、空気もしくは還元雰囲気とする。
【0056】
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000℃〜1400℃、より好ましくは1100℃〜1360℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量変化率の悪化が生じやすくなる。また、前記範囲を超えると誘電体粒子が粗大化して、耐電圧を低下させてしまう恐れがある。
【0057】
これ以外の焼成条件としては、チップの均一焼成を達成するために、昇温速度を好ましくは50℃/時間〜500℃/時間、より好ましくは200℃/時間〜300℃/時間、焼結後の粒度分布を0.1μm〜10.0μmの範囲内に制御するために、温度保持時間を好ましくは0.5時間〜24時間、より好ましくは1時間〜3時間、冷却速度を好ましくは50℃/時間〜500℃/時間、より好ましくは200℃/時間〜300℃/時間とする。
【0058】
上記した脱バインダ処理において、N
2ガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5℃〜75℃程度が好ましい。また、脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
【0059】
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4の表面に、めっき等により被覆層を形成する。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、表2において※印を付した試料は、本発明の範囲外である。
【0062】
主成分の原料として、SrCO
3、BaCO
3、CaCO
3、TiO
2、ZrO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Y
2O
3、La
2O
3、Pr
2O
3、Nd
2O
3、Sm
2O
3、Eu
2O
3、Gd
2O
3、Tb
2O
3、Dy
2O
3、Ho
2O
3、Er
2O
3、Tm
2O
3、Yb
2O
3、Lu
2O
3の各粉末を用意した。
【0063】
これらを表1の主成分組成となるように秤量して、ボールミルにて湿式混合した後、乾燥、800℃で仮焼し、主成分の仮焼粉を得た。誘電体組成物原料を準備した。副成分の原料として、SiO
2、MgO、Co
2O
3、V
2O
5、WO
3、MoO
3、MnO、Li
2CO
3、B
2O
3、Al
2O
3、Fe
3O
4の各粉末を準備し、それぞれ主成分と副成分とが表1の比率となるように混合して、試料No.1から試料No.65の誘電体組成物原料を得た。
【0064】
【表1】
表1に記載の「−」は、成分が含まれていないことを示している。
【0065】
このようにして得られた誘電体組成物原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを作製した。
【0066】
また、上記とは別に、Pd粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化してPd内部電極層用ペーストを作製した。また、Pd内部電極層用ペーストと同様に、Ni粒子を用いてNi内部電極層用ペーストを作製した。
【0067】
そして、作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが7μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、内部電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極層を有するグリーンシートを作製した。なお、試料No.1から試料No.62を用いたグリーンシートにはPd内部電極層ペーストを用い、試料No.63から試料No.65を用いたグリーンシートにはNi内部電極層用ペーストを用いて、それぞれ内部電極層を有するグリーンシートを作製している。次いで、内部電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
【0068】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理(昇温速度:10℃/時間、保持温度:400℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中)を行い、焼成(昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000〜1400℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気:空気中)を行い積層セラミック焼成体を得た。
【0069】
得られた積層セラミック焼結体について誘電体層の結晶構造をX線回折(XRD)測定したところ、タングステンブロンズ型複合酸化物となっていることを確認した。また、得られたコンデンサ素子本体の誘電体層について誘電体組成物の組成をICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析)により測定したところ、表1の組成となっていることを確認した。
【0070】
得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Ga共晶合金を塗布し、
図1に示す積層セラミックコンデンサと同形状の試料No.1から試料No.65の積層セラミックコンデンサを得た。得られた積層セラミックコンデンサのサイズは、いずれも3.2mm×1.6mm×1.2mmであり、誘電体層の厚み5.0μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は10とした。
【0071】
得られた試料No.1から試料No.65の積層セラミックコンデンサについて、耐電圧、比誘電率(εs)、比抵抗、および高温負荷寿命を下記に示す方法により測定し、表2に示した。
【0072】
[比誘電率(εs)]
積層セラミックコンデンサに対し、25℃及び200℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率εs(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。比誘電率は高いほうが好ましく、500以上を良好であると判断した。
【0073】
[比抵抗]
積層セラミックコンデンサ試料に対し、180℃および200℃において、デジタル抵抗メータ(ADVANTEST社製R8340)にて、測定電圧30V、測定時間60秒の条件で絶縁抵抗を測定した。コンデンサ試料の電極面積および誘電体層の厚みから比抵抗の値を算出した。比抵抗は高いほうが好ましく1.00×10
12Ωcm以上より好ましくは9.00×10
12Ωcm以上を良好であると判断した。比抵抗が低いとコンデンサとしては漏れ電流が大きくなり、電気回路において誤動作を起こしてしまう。
【0074】
[耐電圧]
積層セラミックコンデンサ試料に対し、180℃および200℃において、100V/sec昇圧速度で直流電圧を印加し、漏れ電流が10mAを超えたところを直流耐電圧とした。直流耐電圧は高い方が好ましく、150V/μm以上、より好ましくは160V/μm以上、さらに好ましくは175V/μm以上を良好であると判断した。
【0075】
[高温負荷寿命]
積層セラミックコンデンサ試料に対し、250℃において、40V/μmの直流電圧を印加し、絶縁抵抗が1ケタ劣化するまでの時間を高温負荷寿命とした。高温負荷寿命は長い方が好ましく、30時間以上、より好ましくは40時間以上を良好であると判断した。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示すように、主成分であるBa、CaおよびSrの含有量s、tおよび1.00−(s+t)がそれぞれ0.50≦s≦1.00、0≦t≦0.50、0.50≦s+t≦1.00である試料No.1から試料No.2および試料No.5から試料No.7、試料No.9から試料No.10は25℃の比誘電率が高く、200℃の比抵抗が高く、200℃の耐電圧が高い。sが0.5未満の試料No.3および試料No.4、tが0.5を超えている試料No.8は、200℃の耐電圧が低い。
【0078】
表2に示すように、主成分であるRの置換量xが0.50<x≦1.50である試料No.12から試料No.14は、250℃における高温負荷寿命が長い。xが0.50以下の試料No.11およびxが1.50を超えている試料No.15は高温負荷寿命が短い。
【0079】
表2に示すように、主成分であるRがY、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luから選ばれる少なくとも一種の元素である試料No.13および、試料No.16から試料No.29は、200℃の耐電圧が高い。
【0080】
表2に示すように、主成分であるZrの置換量aが0.30≦a≦1.00である試料No.13および、試料No.34から試料No.37は200℃の耐電圧が高い。aが0.3未満の試料No.31から試料No.33は200℃の耐電圧が低い。
【0081】
表2に示すように、主成分であるNbをTaに置き換えた試料No.38から試料No.41はタングステンブロンズ構造を維持されているため、比誘電率、高温負荷寿命、比抵抗が維持されていることがわかる。また、0.1≦b≦1.00の場合には、200℃の耐電圧が高いことがわかる。
【0082】
表2に示すように、主成分100モルに対する副成分のモル量が、0.10モル≦副成分≦20.00モルである試料No.43から試料No.46は、200℃の耐電圧がより高い。
【0083】
表2に示すように、副成分としてMn、Mg、Co、V、W、Mo、Si、Li、B、Alから選択される少なくとも一種を含んでいる試料No.44および試料No.48から試料No.56及び試料No.58、試料No.59は、200℃の比抵抗がより高い。また、主成分であるZrの置換量aが0.30≦a≦1.00である試料No.13に対して、副成分としてMn、Mg、Co、V、W、Mo、Si、Li、B、Alから選択される少なくとも一種を含み、かつ、主成分であるZrの置換量aが0.30≦a≦1.00である試料No.43は、より比抵抗が高く、より耐電圧が高い。Ni内部電極を用いて還元雰囲気焼成で作成した試料No.63から試料No.65においても、200℃の比抵抗、および直流耐電圧が高い値を示すことが確認できた。
(比較例)
【0084】
表3に示す試料No.66および試料No.67では、主成分にアルカリ金属元素を含むタングステンブロンズ型複合酸化物を用いて積層セラミックコンデンサを作製した。具体的作製法を以下に挙げる。なお、表3において※印を付した試料は、比較例である。
【0085】
試料No.66および試料No.67では、予め合成されたアルカリ金属元素を含むタングステンブロンズ型複合酸化物K(Sr
0.3Ba
0.3Ca
0.4)
2Nb
5O
15粉末を主成分として準備し、また、主成分に添加する副成分の出発原料となるMnCO
3粉末を準備した。そして、主成分であるK(Sr
0.3Ba
0.3Ca
0.4)
2Nb
5O
15粉末と副成分の出発原料であるMnCO
3粉末とを秤量して、主成分100モルに対して副成分が所定の比率となるように混合して混合粉末を調製した。
【0086】
この主成分と副成分との混合粉末を誘電体組成物原料とする。
【0087】
誘電体組成物原料を用いた他は実施例と同様にして誘電体層用ペーストを作製し、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが7μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いでこの上にNiを主成分とする内部電極用ペーストを用いて、内部電極層を所定のパターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極層を有するグリーンシートを作製した。引き続き実施例と同様にグリーンシートを用いて、グリーンチップを得た。
【0088】
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理(昇温速度:10℃/時間、保持温度:350℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:窒素中)を行い、焼成(昇温速度:200℃/時間、保持温度:1100℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、酸素分圧:10
−9〜10
−12Pa、雰囲気:H
2−N
2−H
2O混合ガス)を行い積層セラミック焼成体を得た。
【0089】
得られた積層セラミック焼成体の両端面にB
2O
3−SiO
2−BaO系のガラスフリットを含有するAgペーストを塗布し、焼き付け処理(温度:800℃、雰囲気:N
2ガス)を行い、
図1に示す積層セラミックコンデンサと同形状の試料No.66および試料No.67の積層セラミックコンデンサを得た。得られた積層セラミックコンデンサのサイズは、いずれも4.5mm×3.2mm×0.5mmであり、誘電体層の厚み6.0μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は5とした。
【0090】
得られた試料No.66および試料No.67の積層セラミックコンデンサについて、実施例と同様に、比誘電率、比抵抗、および直流耐電圧を測定し、この結果を表3に示した。
【表3】
【0091】
表3に示すように、アルカリ金属元素を主成分に含むタングステンブロンズ型複合酸化物である試料No.66および試料No.67では、揮発性が高いアルカリ金属元素による格子欠陥が生成し易く、伝導電子が生じやすいため、耐電圧および比抵抗がともに低い値となることが確認できる。