【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、総務省「巨大データ流通を支える次世代光ネットワーク技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【文献】
ZHONG, Kang Ping et al.,Linewidth-Tolerant and Low-Complexity Two-Stage Carrier Phase Estimation Based on Modified QPSK Partitioning for Dual-Polarization 16-QAM Systems,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2013年,Vol.31, No.1,p.50-57
【文献】
BILAL, Syed Muhammad et al.,Multistage Carrier Phase Estimation Algorithms for Phase Noise Mitigation in 64-Quadrature Amplitude Modulation Optical Systems,JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY,2014年,Vol.32, No.17,p.2973-2980
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディシジョンフィードバック型の周波数誤差推定方式を用いた場合、フィードバックループが収束しなければ、周波数誤差を推定できない。QPSK信号の場合、周波数引き込み範囲が広いため、周波数誤差が大きくてもフィードバックループは収束する。しかし、16QAM信号の場合、周波数引き込み範囲がQPSK信号に比べて狭いため、周波数誤差が大きいとフィードバックループが収束しない。このため、トレーニング信号を用いてフィードバックループを収束させる必要がある。32QAMや64QAMといった超高多値変調信号の場合、周波数引き込み範囲は16QAMと比べてさらに狭くなるため、わずかな周波数誤差があるとフィードバックループが収束せず、周波数誤差を推定できない。
【0007】
本発明の目的は、周波数引き込み範囲が狭い信号処理方式において、トレーニング信号を用いなくても、周波数誤差推定のフィードバックループを収束させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、偏波多重かつ多値変調された光信号と局所光を干渉させることにより複数の出力光を生成する光フロントエンドと、
前記複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する信号変換手段と、
前記複数のデジタル信号に対して前記局所光と前記光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する周波数差補償手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の信号配置に従って判定する第1シンボル判定手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する第2シンボル判定手段と、
前記周波数差補償手段における補償信号を生成する補償信号生成手段と、
を備え、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を仮生成した後、前記第1シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を本生成
し、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を仮生成する光信号受信装置が提供される。
【0009】
本発明によれば、偏波多重かつ多値変調された光信号を送信する光信号送信装置と、
前記光信号を処理する光信号受信装置と、
を備え、
前記光信号受信装置は、
前記光信号と局所光を干渉させることにより複数の出力光を生成する光フロントエンドと、
前記複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する信号変換手段と、
前記複数のデジタル信号に対して前記局所光と前記光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する周波数差補償手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の信号配置に従って判定する第1シンボル判定手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する第2シンボル判定手段と、
前記周波数差補償手段における補償信号を生成する補償信号生成手段と、
を備え、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を仮生成した後、前記第1シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を本生成
し、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を仮生成する光通信システムが提供される。
【0010】
本発明によれば、偏波多重かつ多値変調された光信号と局所光を干渉させることにより複数の出力光を生成する光フロントエンドと、
前記複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する信号変換手段と、
前記複数のデジタル信号に対して前記局所光と前記光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する周波数差補償手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の信号配置に従って判定する第1シンボル判定手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する第2シンボル判定手段と、
を有する光受信装置の前記周波数差補償手段における補償信号の生成方法であって、
前記第2シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を仮生成した後、前記第1シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を本生成
し、
前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を仮生成する光信号受信装置の補償信号の生成方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周波数引き込み範囲が狭い信号処理方式において、トレーニング信号を用いなくても、周波数誤差推定のフィードバックループを収束させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
図11は、本実施形態に係る光信号受信装置40の構成の一例を示す図である。本実施形態に係る光信号受信装置40は、光フロントエンド42、光信号変換部46、周波数差補償部510、第1シンボル判定部521、第2シンボル判定部522、及び補償信号生成部550を有している。
【0016】
光フロントエンド42は、偏波多重かつ多値変調された光信号と局所光を干渉させることにより、複数の出力光を生成する。光信号変換部46は、光フロントエンド42が生成した複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する。周波数差補償部510は、光信号変換部46が生成した複数のデジタル信号に対して局所光と光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する。
【0017】
第1シンボル判定部521は、キャリア再生信号のシンボル位置を、上記した多値変調の信号配置に従って判定する。第2シンボル判定部522は、キャリア再生信号のシンボル位置を、多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する。補償信号生成部550は、周波数差補償部510における補償信号を生成する。
【0018】
そして、補償信号生成部550は、第2シンボル判定部522の判定結果を用いて補償信号を仮生成した後、第1シンボル判定部521の判定結果を用いて補償信号を本生成する。上記したように、第2シンボル判定部522は、キャリア再生信号のシンボル位置を、多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する。従って、第2シンボル判定部522を用いない場合と比較して、補償信号生成部550が生成する補償信号は収束しやすくなる。以下、詳細に説明を行う。
【0019】
図1は、光信号受信装置40を用いた光通信システム10の構成の一例を示すブロック図である。光通信システム10は、光信号受信装置40の他に、光信号送信装置20、及び光伝送路30を有している。本実施形態に係わる光通信システム10は、QPSK信号よりもキャリア再生部500の周波数引き込み範囲が狭い信号、具体的にはQAM信号、例えば16QAM以上の信号配置を有する信号を用いて通信を行うシステムである。
【0020】
光信号送信装置20は、光源21、シンボルマッピング22、デジタル/アナログ変換部23、および光変調器24を有している。光源21は、例えばレーザ発振器であり、搬送波となるレーザ光を発振する。シンボルマッピング22は、入力されたバイナリ信号をQAM信号の信号配置に置き換える。デジタル/アナログ変換部23は、シンボルマッピング22から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。光変調器24は、デジタル/アナログ変換部23が出力したアナログ信号を用いて、光源21が出力したレーザ光を変調することにより、光信号を生成する。この光信号は、例えば上記したQAM信号である。以下、光信号をQAM信号として説明を行う。
【0021】
光信号受信装置40は、局所光源41、光フロントエンド42、光電変換部43、アナログ/デジタル変換部(A/D)44、および信号処理装置45を有している。信号処理装置45は、複素信号生成部451、分散補償部452、偏波分離部453およびキャリア再生部500から構成される。なお、光電変換部43及びアナログ/デジタル変換部44は、
図11の光信号変換部46の一例である。
【0022】
局所光源41は、例えばレーザ発振機であり、局所光を発振する。局所光は、光信号送信装置20の光源21と同一の周波数を有する。ただし、この局所光の周波数と光源21が発信した光の周波数には誤差がある。
【0023】
光フロントエンド42は、受信したQAM信号を局所光源41から出力された局所光と干渉させ、直交偏波と直交位相を基底とする4成分の光信号を出力する。光電変換部43は、光フロントエンド42が出力した4つの光信号のそれぞれを電気信号(アナログ信号)に変換して出力する。A/D変換部44は、光電変換部43が出力した4つのアナログ信号のそれぞれをデジタル信号に変換して出力する。
【0024】
信号処理装置45は、例えば一つまたは複数の集積回路(LSI)であり、アナログ/デジタル変換部44が出力した4成分のデジタル信号に各種信号処理を施して復調信号を出力する。信号処理装置45は、複素信号生成部451、分散補償部452、偏波分離部453、およびキャリア再生部500を有している。複素信号生成部451は、4成分のデジタル信号から偏波ごとに2成分の複素信号を生成して出力する。分散補償部452は、複素信号を等化し、QAM信号が光伝送路30で受けた波長分散による波形歪みを補償する。偏波分離部453は、複素信号を適応等化し、直交偏波成分ごとに分離して等化信号を出力する。
【0025】
キャリア再生部500は、QAM信号と局所光の光源周波数誤差を補償してキャリア再生信号を出力する。
【0026】
図2は、キャリア再生部500の詳細な機能構成の一例を示す図である。キャリア再生部500は、周波数差補償部510、シンボル判定部520、誤差計算部530、ループフィルタ部540、および補償信号生成部550を有している。
【0027】
周波数差補償部510は、複数のデジタル信号における局所光と光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する。シンボル判定部520は、第1シンボル判定部521および第2シンボル判定部522を有している。第1シンボル判定部521は、周波数差が補償されたキャリア再生信号のシンボル位置を、多値変調の信号配置に従って判定する。第2シンボル判定部522は、周波数差が補償されたキャリア再生信号のシンボル位置を、多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する。ループフィルタ部540および補償信号生成部550は、周波数差補償部510が用いる補償信号を生成する。詳細には、ループフィルタ部540および補償信号生成部550は、第2シンボル判定部522の判定結果を用いて補償信号を仮生成した後、第1シンボル判定部521の判定結果を用いて補償信号を本生成する。以下、キャリア再生部500について詳細に説明する。
【0028】
周波数差補償部510は、乗算器511および遅延器512を有している。乗算器511は、光源周波数誤差ωを含む等化信号e(t
n)と、遅延器512から出力された補正信号c(t
n−1)とを掛けあわせて、キャリア再生信号e´(t
n)を出力する。なお、等化信号e(t
n)は以下の式(1)で示され、キャリア再生信号e´(t
n)は以下の式(2)で示される。
【0030】
シンボル判定部520は、第1シンボル判定部521と第2シンボル判定部522を有している。第1シンボル判定部521は、キャリア再生信号のシンボル位置を、そのQAM信号の多値数で判定する。言い換えると、第1シンボル判定部521は、キャリア再生信号を、そのQAM信号の論理に従って判定する。一方、第2シンボル判定部522は、キャリア再生信号のシンボル位置を、そのQAM信号の多値数よりも少なくした信号配置(言い換えると、シンボル数を減らした信号配置)に従って判定する。例えばQAM信号が64QAM信号の場合、第1シンボル判定部521は、キャリア再生信号を64QAM信号と扱う。一方、第2シンボル判定部522は、キャリア再生信号を、16QAM信号又はQPSK信号と仮定してシンボル位置の判定を行う。
【0031】
第1シンボル判定部521の動作を、例えばQAM信号が64QAM信号の場合について、
図3を用いて説明する。第1シンボル判定部521に入力されたキャリア再生信号e'(t_n )はIQ平面上の×印で示されている。第1シンボル判定部521は、閾値I=I
thおよびQ=Q
thを境界として、キャリア再生信号e´(t
n)から最も近いQAM信号のシンボル位置を判定し、判定信号d
QAMを出力する。なお、閾値I
thおよびQ
thは以下の(3)式で示される。また、判定信号d
QAMは、以下の(4)式で示され、かつ、
図3において○印で示された64シンボルのうちのどれか一つである。第2シンボル判定部522については後述する。
【0033】
誤差計算部530は、複素共役計算器531、乗算器532、および偏角計算器533を有している。複素共役計算器531は、判定信号d(t
n)の複素共益d
*(t
n)を計算して出力する。乗算器532は、キャリア再生信号e´(t
n)と判定信号の複素共益d
*(t
n)を掛けあわせて、キャリア再生信号と判定信号の誤差を出力する。この出力は、複素表現されている。偏角計算器533は、複素表現された誤差から偏角を計算して、この偏角を位相誤差θ
err(t
n)をとして出力する。
【0034】
ループフィルタ部540は、増幅器541,542、加算器543,544、および遅延器545を有している。ループフィルタ部540は、式(5)の伝達関数LF(Z)にしたがった構成を有しており、位相誤差θ
err(t
n)を平均化して周波数誤差ω
eを推定し、ω
eΔtを出力する。
【0036】
シンボル数が少ない信号(例えばQPSK信号)であれば、位相誤差θ
err(t
n)の許容範囲が大きい。このため、K
1、1/K
2を大きく設定でき、その結果、周波数誤差ω
eの許容範囲が大きくなる。一方、位相誤差θ
err(t
n)の許容範囲は、シンボル数が大きくなるに従って小さくなる。このため、シンボル数が多い信号(例えばQAM信号)の場合、K
1、1/K
2を小さく設定する必要があり、周波数誤差ω
eの許容範囲が小さくなる。一般に、各信号のK
1およびK
2の大小は、式(6)で示される。
【0038】
補償信号生成部550は、加算器551、遅延器552、および複素計算器553を有している。加算器551と遅延器552は、ループフィルタ部の出力ω
eΔtを積算し、その積算値を推定位相ω
et
nとして出力する。複素計算器553は、推定位相ω
et
nから補正信号c
z(t
n)を計算して出力する。なお、補正信号c
z(t
n)は、以下の式(7)で示される。
【0040】
補償信号生成部550の出力は、周波数差補償部510に入力される。このように、キャリア再生部500はフィードバックループを有する。そして、このフィードバックループが収束すれば、周波数誤差ω
eはQAM信号と局所光の光源周波数誤差ωとほぼ一致し、その結果、周波数差補償部510は光源21と局所光源41の周波数の差が精度よく補償されたキャリア再生信号を出力することができるようになる。
【0041】
その後、光通信システム10の運用を開始する。
【0042】
キャリア再生部500が最初の演算を開始するためには、遅延器512,545,552の初期値が必要である。シンボル数が少ないQPSK信号であれば、周波数誤差ω
eの許容範囲が大きいため、概算した初期値でもフィードバックループは容易に収束した。しかし、QAM信号のシンボル数が増加するにしたがって、周波数誤差ω
eの許容範囲が小さくなるため、遅延器545の初期値を許容される周波数誤差の大きさに応じて適切に設定しなければ、フィードバックループが収束しなかった。
【0043】
そこで、64QAM信号や32QAM信号の場合、任意の初期値から演算を開始してもフィードバックループが収束するように、遅延器545を光源周波数誤差の量に応じて適切な値に誘導する必要がある。
【0044】
そこで本実施形態に係るキャリア再生部500は、遅延器545を制御するため、制御部560を有している。制御部560は、第1シンボル判定部521、第2シンボル判定部522、および増幅器541,542に接続されている。制御部560は、
図4に示すシーケンスにしたがって、第1シンボル判定部521、第2シンボル判定部522、および増幅器541,542を制御して、遅延器545を光源周波数誤差の量に応じた適切な値に誘導する。
【0045】
図4に示す処理において、まず、遅延器545には、あらかじめ任意の初期値ω
0Δtが設定されている(ステップS1)。制御部560は、第2シンボル判定部522をONにし、増幅器541,542の係数K
1,K
2を設定する。制御部560は、増幅器541,542の係数K
1,K
2を、以下の式(8)に従って設定する(ステップS2)。
【0047】
このとき、第1シンボル判定部521はONのままであってもよいし、OFFになっていてもよい。
【0048】
第1シンボル判定部521がONのままである場合における、第2シンボル判定部522の動作の一例を、
図5を用いて説明する。
図5は、QAM信号が64QAMの場合を示している。第1シンボル判定部521の出力はIQ平面上の○印で示されている。第2シンボル判定部522は、閾値I=0,Q=0を境界としてd
QAMから最も近いQPSK信号のシンボル位置を判定し、以下の式(9)に示される判定信号を出力する。判定信号は△印で示された4シンボルのうちのどれか一つである。
【0050】
次に、制御部560は第1シンボル判定部521をOFFにした場合における第2シンボル判定部522の動作を、
図6を用いて説明する。
図6も、QAM信号が64QAMの場合を示している。キャリア再生信号はIQ平面上の×印で示されている。第2シンボル判定部522は、閾値I=0,Q=0を境界として、キャリア再生信号e´(t
n)から最も近いQPSK信号のシンボル位置を判定し、上記した式(9)に示される判定信号d
QPSKを出力する。この判定信号も、△印で示された4シンボルのうちのどれか一つである。
【0051】
そして、誤差計算部530は、位相誤差θ
errを出力する。ループフィルタ部540は、初期値ω
0を起点として計算を開始し、周波数誤差ω
eを推定してω
eΔtを出力する。シンボル判定部520はQAM信号をQPSK信号とみなして判定するため、QAM信号であっても周波数誤差ω
eの許容範囲が大きく、任意の初期値であっても、フィードバックループが収束して周波数誤差ω
eの仮の値を推定することが可能となる。このとき、遅延器545には、ω
eQPSKΔtが格納されている(ステップS3)。
【0052】
フィードバックループが収束したら(ステップS4)、制御部560は第1シンボル判定部521がオフの場合はオンにする。また、第2シンボル判定部522をオフにし、増幅器541,542の係数K1,K2を以下の式(10)に示す値に設定する(ステップS5)。
【0054】
増幅器の係数をK
1PQSKからK
1QAMへ、K2
PQSKからK
2QAMへと切り替えるとき、係数の設定値を段階的に遷移させてもよい。また、フィードバックループの収束判断は、例えばキャリア再生信号をモニタしてEVM(Error Vector Mgunitude)を計算したり、キャリア再生信号をバイナリデータまで復調してBER(Bit Error Rate)を計算してもよい。
【0055】
第2シンボル判定部522をオフにすると、第1シンボル判定部521は、以下の式(11)に示す判定信号をそのまま出力する。
【0057】
誤差計算部530は、位相誤差θ
errを出力する。ループフィルタ部540は、初期値ω
eQPSKΔtを起点として計算を開始し、周波数誤差ω
eを推定してω
eΔtを出力する。
【0058】
QAM信号の場合、周波数誤差ω
eの許容範囲が小さいが、初期値が適切に設定されているため、フィードバックループが収束して周波数誤差ω
eを推定することが可能となる。このとき、遅延器545は、ω
eQAMΔtを格納している(ステップS6)。
【0059】
フィードバックループが収束したら(ステップS7)、運用を開始する。
【0060】
このように、本実施形態では、例えばQAM信号においてQPSK判定を行うなど、シンボル数を減らした信号判定を行うことにより、周波数引き込み範囲が広い周波数誤差推定を実現できる。その結果、超高多値変調信号でも周波数誤差の推定が容易になる。
【0061】
(第2実施形態)
本実施形態に係わる光通信システム10は、キャリア再生部500の機能構成を除いて、第1の実施形態に係わる光通信システム10と同様の構成である。
【0062】
図7は、キャリア再生部の構成を示すブロック図である。本実施形態に係わるキャリア再生部500は、以下の点を除いて第1の実施形態に示したキャリア再生部500と同様の構成である。
【0063】
キャリア再生部500は、
図2に示す構成に加えて、位相補償部570を備えている。位相補償部570はm
th−powerアルゴリズムを用いてキャリア再生信号e´(t
n)に残存する光源周波数誤差をさらに取り除き、キャリア再生信号e´´(t
n)を出力する。なお、シンボル判定部520および誤差計算部530は、位相補償部570に入る前の信号を処理する。言い換えると、位相補償部570は、フードバックループの外に位置している。
【0064】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、従来よりも周波数引き込み範囲が広い周波数誤差推定を実現し、超高多値変調信号でも周波数誤差推定ができる。また、位相補償部570を有しているため、光源の周波数誤差をさらに減らすことができる。
【0066】
本実施形態に係わる光通信システム10は、キャリア再生部500の機能構成を除いて、第2の実施形態に係わる光通信システム10と同様の構成である。
【0067】
図8は、キャリア再生部の構成を示すブロック図である。本実施形態に係わるキャリア再生部500は、以下の点を除いて第2の実施形態に示したキャリア再生部500と同様の構成である。
【0068】
キャリア再生部500は、
図7に示す構成に加えて、差動位相計算部580を備えている。また、
図7と比較して誤差計算部530とループフィルタ部540の構成が異なっている。そして本実施形態において、補償信号生成部550は、キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて補償信号を生成する。
【0069】
具体的には、誤差計算部530は、シンボル判定部520を含み、さらに偏角計算器533、加算器534,535,543、増幅器541、および遅延器536を有している。誤差計算部530は等化信号e´(t
n)から位相誤差θ
err(t
n)を計算して出力する。
【0070】
詳細には、偏角計算器533は、乗算器511に入力する等化信号e(t
n)の偏角を計算する。偏角計算器533の出力は、加算器534および加算器535に出力される。加算器534は、偏角計算器533の出力と遅延器536を加算する。シンボル判定部520は、加算器534の出力を用いてシンボル判定を行う。加算器535は、シンボル判定部520の出力と偏角計算器533の出力を加算する。加算器535の出力は、増幅器541および差動位相計算部580に入力される。
【0071】
差動位相計算部580は、位相誤差θ
err(t
n)の差動値を計算して出力する。差動位相計算部580の出力は、ループフィルタ部540の増幅器542に入力される。
【0072】
ループフィルタ部540は、増幅器542、加算器543および遅延器545から構成される。ループフィルタ部540は以下の式(12)に示す伝達関数LF(Z)にしたがった構成となっており、位相誤差を平均化して周波数誤差ω
eを推定し、ω
eΔtを出力する。
【数12】
【0073】
なお、補償信号生成部550には、増幅器542の出力が入力される。また、増幅器542の出力は、第2の実施形態と同様に加算器543にも入力される。そして、加算器543の出力は、遅延器536を介して加算器534に入力される。
【0074】
本実施形態によっても、従来よりも周波数引き込み範囲が広い周波数誤差推定を実現し、超高多値変調信号でも周波数誤差推定ができる。
【0075】
(第4実施形態)
図9は、第4の実施形態に係わる光信号受信装置40の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係わる光信号受信装置40は、以下の点を除いて第1から第3の実施形態に示した光信号受信装置40のいずれかと同様の構成である。
【0076】
まず、分散補償部452は、周波数領域等化(FDE:Frequency Domain Equalization)回路から成る。FDE回路は、複素信号を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)して周波数領域信号に変換し、フィルタ処理を施した後、逆フーリエ変換(IFFT:Inverse FFT)して時間領域信号に戻す。このとき、周波数領域信号を周波数シフトすることにより、周波数領域で光源周波数誤差を補償することができる。
【0077】
そこで、キャリア再生部500で推定した周波数誤差ω
eから周波数シフト量を計算し、FDEで光源周波数誤差を補償する。
【0078】
このように、本実施形態によれば、静的な光源周波数誤差は分散補償部452で、動的な光源周波数誤差はキャリア再生部500で補償することにより、超高多値変調信号でも安定した周波数誤差推定ができる。
【0079】
(第5実施形態)
図10は、第5の実施形態に係わる光信号受信装置40の構成を示すブロック図である。本実施形態に係わる光信号受信装置40は、以下の点を除いて第1から第3の実施形態に示した光信号受信装置40と同様の構成である。
【0080】
光信号受信装置40は、さらに、光源周波数誤差モニタ部454を有する。光源周波数誤差モニタ部454は、変調方式無依存な方式で、複素信号をモニタして、キャリア再生部500よりも広範囲な周波数誤差モニタが可能である。
【0081】
そこで、光源周波数誤差モニタ部454でモニタした周波数誤差から周波数シフト量を計算し、この周波数シフト量を用いて、分散補償部452のFDEで光源周波数誤差をあらかじめ補償する。
【0082】
このようにして、静的でおおまかな光源周波数誤差は分散補償部452で、動的な光源周波数誤差はキャリア再生部500で補償することにより、周波数引き込み範囲がさらに広い周波数誤差推定を実現し、超高多値変調信号でも安定した周波数誤差推定ができる。
【0083】
以下、参考形態の例を付記する。
1.偏波多重かつ多値変調された光信号と局所光を干渉させることにより複数の出力光を生成する光フロントエンドと、
前記複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する信号変換手段と、
前記複数のデジタル信号に対して前記局所光と前記光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する周波数差補償手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の信号配置に従って判定する第1シンボル判定手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する第2シンボル判定手段と、
前記周波数差補償手段における補償信号を生成する補償信号生成手段と、
を備え、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を仮生成した後、前記第1シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を本生成する光信号受信装置。
2.1に記載の光信号受信装置において、
前記多値変調の信号配置は16QAM以上の信号配置であり、
前記多値変調の多値数を減らした信号配置はQPSKの信号配置である光信号受信装置。
3.1又は2に記載の光信号受信装置において、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差を用いて前記補償信号を仮生成する光信号受信装置。
4.3に記載の光信号受信装置において、
前記補償信号生成手段は、前記第1シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差を用いて前記補償信号を本生成する光信号受信装置。
5.1又は2に記載の光信号受信装置において、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を仮生成する光信号受信装置。
6.5に記載の光信号受信装置において、
前記補償信号生成手段は、前記第1シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を本生成する光信号受信装置。
7.偏波多重かつ多値変調された光信号を送信する光信号送信装置と、
前記光信号を処理する光信号受信装置と、
を備え、
前記光信号受信装置は、
前記光信号と局所光を干渉させることにより複数の出力光を生成する光フロントエンドと、
前記複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する信号変換手段と、
前記複数のデジタル信号に対して前記局所光と前記光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する周波数差補償手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の信号配置に従って判定する第1シンボル判定手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する第2シンボル判定手段と、
前記周波数差補償手段における補償信号を生成する補償信号生成手段と、
を備え、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を仮生成した後、前記第1シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を本生成する光通信システム。
8.7に記載の光通信システムにおいて、
前記多値変調の信号配置は16QAM以上の信号配置であり、
前記多値変調の多値数を減らした信号配置はQPSKの信号配置である光通信システム。
9.7又は8に記載の光通信システムにおいて、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差を用いて前記補償信号を仮生成する光通信システム。
10.9に記載の光通信システムにおいて、
前記補償信号生成手段は、前記第1シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差を用いて前記補償信号を本生成する光通信システム。
11.7又は8に記載の光通信システムにおいて、
前記補償信号生成手段は、前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を仮生成する光通信システム。
12.11に記載の光通信システムにおいて、
前記補償信号生成手段は、前記第1シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を本生成する光通信システム。
13.偏波多重かつ多値変調された光信号と局所光を干渉させることにより複数の出力光を生成する光フロントエンドと、
前記複数の出力光のそれぞれを光電変換し、さらにアナログ−デジタル変換することにより複数のデジタル信号を生成する信号変換手段と、
前記複数のデジタル信号に対して前記局所光と前記光信号の周波数差を補償することによりキャリア再生信号を生成する周波数差補償手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の信号配置に従って判定する第1シンボル判定手段と、
前記キャリア再生信号のシンボル位置を、前記多値変調の多値数を減らした信号配置に従って判定する第2シンボル判定手段と、
を有する光受信装置の前記周波数差補償手段における補償信号の生成方法であって、
前記第2シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を仮生成した後、前記第1シンボル判定手段の判定結果を用いて前記補償信号を本生成する光信号受信装置の補償信号の生成方法。
14.13に記載の光信号受信装置の補償信号の生成方法において、
前記多値変調の信号配置は16QAM以上の信号配置であり、
前記多値変調の多値数を減らした信号配置はQPSKの信号配置である光信号受信装置の補償信号の生成方法。
15.13又は14に記載の光信号受信装置の補償信号の生成方法において、
前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差を用いて前記補償信号を仮生成する光信号受信装置の補償信号の生成方法。
16.15に記載の光信号受信装置の補償信号の生成方法において、
前記第1シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差を用いて前記補償信号を本生成する光信号受信装置の補償信号の生成方法。
17.13又は14に記載の光信号受信装置の補償信号の生成方法において、
前記第2シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を仮生成する光信号受信装置の補償信号の生成方法。
18.17に記載の光信号受信装置の補償信号の生成方法において、
前記第1シンボル判定手段の判定結果が示すシンボル位置と前記キャリア再生信号の複素表現上の偏角の差の差動値を用いて前記補償信号を本生成する光信号受信装置の補償信号の生成方法。
【0084】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0085】
この出願は、2016年3月30日に出願された日本出願特願2016−068282号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。