(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体が流れる管網をモデル化した電気回路に含まれる複数のノードにおける電圧と、前記複数のノードと異なる前記電気回路のノードである内部ノードにおける電圧と、の関係を表す伝達特性を導出する伝達特性導出手段と、
前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力を算出する算出手段と、
を備え、
前記伝達特性導出手段は、電圧の周波数に応じた前記伝達特性を導出し、
前記算出手段は、前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力の推移の特徴である第1の特徴とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における、前記流体の圧力の推移の特徴である第2の特徴を算出する、
解析装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示に関連する事項について説明する。
【0015】
例えば、水道網においては、水道網を構成する構成要素である配水管(パイプ状の流体管、以下「パイプ」と称する場合がある)、各種バルブ、タンク等の状況を監視することにより、これらの構成要素を管理すること、すなわち配管管理が重要である。この配管管理は、例えば、配管網を構成する構成要素における、破損等の不具合の未然防止、および、老朽化対策等を含む。
【0016】
また、例えば、水道網においては、流体の状況(例えば、水量、水圧等)を監視することによる、適切な配水制御が求められる。この配水制御は、例えば、急激な水圧変動による配管網の破損の防止、給水点における適切な水圧の維持、および、水の供給量や需要量の急変への対応等を含む。
【0017】
上記のような配管管理、あるいは配水制御のため、配管網を構成する構成要素(例えば、パイプ、タンク、バルブ等)、および、当該配管網により輸送される流体の状況を解析できる技術が求められている。
【0018】
例えば、配管網に対して各種のセンサ等を設置することにより、配管網を構成する構成要素と、当該配管網により輸送される流体の状況とを監視することが可能である。しかしながら、大規模な配管網に対して大量のセンサを設置することは、コストや設置工数の観点から必ずしも現実的ではない。
【0019】
センサの設置数を抑えつつ、配管網により輸送される流体の状況を監視する方法の一つとして、配管網および当該配管網により輸送される流体を適切にモデル化し、シミュレートすることで解析することが考えられる。
【0020】
シミュレーションによる配管網を流れる流体の解析において、シミュレーションのための解析モデル(配管網の情報)は、一般に設計データや測定から作成される。しかし、設計データや測定における誤差や、配管網の経年劣化などにより、解析モデルに基づく流体の挙動と実際に配管網を流れる流体の挙動との差が生じることがある。そこで、より精確な解析のためには、実測とシミュレーションとの比較を行うことで、解析モデルを評価し、修正することが重要である。
【0021】
一般的には、解析モデルの精度を評価する方法として、解析モデルによる、管網を流れる流体のシミュレーションの結果と、実測のデータとを比較する方法が考えられる。この場合、流体の流れをシミュレートするために、シミュレーションの範囲の端部に流入する、または端部から流出する流体の挙動を表現する必要がある。端部における流体の挙動を表現するには、端部における流体の流量および圧力を知る必要がある。
【0022】
以下、本発明を実施する形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態に記載されている構成は単なる例示であり、本願発明の技術範囲はそれらには限定されない。
【0023】
なお、以下の各実施形態において説明する解析装置は、専用のハードウェアにより実現されてもよい。解析装置は、当該解析装置を構成する1以上の構成要素が、1以上の物理的あるいは論理的な情報処理装置(物理的なコンピュータや、仮想的なコンピュータ等)を用いて実現されたシステムとして構成されてもよい。
【0024】
以下の説明においては、解析の対象は、水を輸送(配送)する水道管網であるとして説明する。しかしながら、本実施形態を例に説明する本願発明は、これには限定されず、水以外の任意の流体が流れる管網に適用可能である。たとえば、その任意の流体は、水以外の液体でもよく、天然ガスなどの気体でもよい。
【0025】
<<第1の実施形態>>
<構成>
本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る解析装置11の構成を示すブロック図である。
【0026】
解析装置11は、入出力部101と、伝達特性導出部102と、算出部103とを備える。
【0027】
入出力部101は、外部とのデータのやりとりを行う。入出力部101は、たとえば、ユーザがデータを入力および閲覧できるインタフェースを有していてもよい。入出力部101は、データを記憶する記憶媒体と接続されていてもよい。入出力部101は、表示機能を有する出力装置に接続されていてもよい。
【0028】
入出力部101は、解析装置11の各構成要素とのデータのやりとりも行う。
【0029】
たとえば入出力部101は、管網の情報を、伝達特性導出部102に入力する。管網の情報は、たとえば、ユーザが管網を流れる流体のシミュレーションを行うために用いる情報である。具体的には、管網の情報は、たとえば、管網を構成するパイプの接続関係、長さ、直径、材質および粗さ等の情報を含む。パイプの材質および粗さの情報は、例えば流量係数で表現されてもよい。
【0030】
また、入出力部101は、解析装置11による解析の対象となる範囲の指定およびその範囲内にある内部の点の指定を伝達特性導出部102に入力する。入出力部101は、解析の対象となる範囲の指定として、その範囲を規定する点(すなわち、その範囲の管網の端点)の指定を取得してもよい。以下、解析の対象となる範囲を規定する点を、「端部の点」と表記する。
【0031】
入出力部101は、管網の情報および範囲と内部の点との指定を、ユーザによる入力によって取得すればよい。あるいは、入出力部101は、上記の情報および上記の指定を、図示しない記憶装置に保存されたデータを読み取ることにより取得してもよい。
【0032】
入出力部101は、伝達特性導出部102に対し、端部の点を流れる流体の水圧に関する情報を入力してもよい。たとえば、入出力部101は、端部の点を流れる流体の水圧が、どのような水圧の範囲で変動するかを示す情報を入力してもよい。この情報は、伝達特性導出部102による後述する伝達特性の導出に際して用いられうる。
【0033】
また、入出力部101は、算出部103に対し、管網の端部の点における水圧の情報を入力する。入力される水圧の情報は、例えば、各端部の点に相当する管網の地点において実測された水圧の値である。
【0034】
伝達特性導出部102は、入出力部101から入力された管網の情報に基づいて、入出力部101により指定された端部の点および内部の点に基づいた伝達特性を導出する。伝達特性とは、電気回路網内の、複数の端子における電圧および電流の関係を表す値、または値の組である。すなわち、伝達特性導出部102は、管網を電気回路網でモデル化したときの、指定された端部の点および内部の点に相当する端子に関する伝達特性を導出する。
【0035】
管網を電気回路網でモデル化するとは、管網を流れる流体の流量を電流、圧力を電圧に対応付けて、管網を流れる流体の状態をシミュレートできる、電気回路網のモデルを作る(または想定する)ことである。モデル化された電気回路網における電流と管網を流れる流体の流量は、互いに変換することが可能である。また、電気回路網における電圧と管網を流れる流体の圧力は、互いに変換することが可能である。
【0036】
伝達特性導出部102は、例えば、端部の点および内部の点に基づく伝達特性として、端部の点に相当する端子および内部の点に相当する端子における電圧と、電流とを、関係づける式の係数を導出する。
【0037】
例として、まず、伝達特性導出部102は、指定された範囲の管網の状態を電気回路網で置き換えてモデル化し、その電気回路の振る舞いをシミュレートする。伝達特性導出部102は、そのシミュレーションに基づいて、電気回路網内の、入出力部101により指定された端部の点に相当する端子(ノード)および内部の点に相当する端子(ノード)間の、電圧と電流の関係を、伝達特性として導出する。
【0038】
伝達特性は、たとえば、次の式における行列部分によって表される。
【0039】
【数1】
ただし、上式において、I
k(1≦k≦n)は、k番目のノード(指定された点に対応する)において、電気回路網の外から流れ込む(または、電気回路網の外に流れ出る)電流、V
kは、k番目のノードにおける電圧である。
【0040】
この行列は、一般に、アドミタンス行列(アドミッタンス行列)と呼ばれる。
【0041】
アドミタンス行列は、電気回路網の各ノードにおいて、電気回路網の外から流れ込む(または、電気回路網の外に流れ出る)電流を、各ノードの電圧から求めることを可能とする計算式に用いることができる。
【0042】
アドミタンス行列は、例えばSPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)等の電気回路シミュレータによって、モデル化された電気回路網と電磁気学的な諸法則とに基づいて計算されることができる。電気回路シミュレータは、例えば、特性曲線法を用いたシミュレータや、有限要素法、粒子法を用いて電気の流れを計算できる一般的なシミュレータでよい。
【0043】
伝達特性導出部102は、図示しない電気回路シミュレータと協働して、アドミタンス行列を計算してもよい。電気回路シミュレータは、解析装置11の外部にあってもよい。あるいは、伝達特性導出部102が、電気回路シミュレータと同等の機能を含んでいてもよい。伝達特性導出部102は、入出力部101から入力された管網の情報から、その管網をモデル化した電気回路網と、指定された点とを、電気回路シミュレータに入力し、電気回路シミュレータにアドミタンス行列を計算させる。伝達特性導出部102は、計算されたアドミタンス行列を、伝達特性として取得する。このようにして、伝達特性導出部102は、たとえば、式(1)で示される伝達特性を導出する。
【0044】
伝達特性導出部102は、電気回路シミュレータを備えなくとも、アドミタンス行列を計算するのに必要な機能を備えていればよい。
【0045】
式(1)において、たとえば、1〜n−1番目のノードが端部の点に相当し、n番目のノードが内部の点に相当するとする。その場合、伝達特性導出部102は、n番目のノードの電流に関連する要素、すなわちY
n1〜Y
nnのみを、伝達特性として導出してもよい。
【0046】
算出部103は、伝達特性と、入出力部101により入力された管網の端部の点における水圧の情報とに基づいて、内部の点における水圧を算出する。
【0047】
算出部103が内部の点における水圧を算出できる原理を説明する。以下の説明において、水圧の算出の対象となる内部の点はn番目のノードであるとする。
【0048】
式(1)から、次の式(2)が導かれる。
【0050】
式(2)において、n番目のノードは、内部の点に相当する端子であるため、この点において電流が外部に流れ出ることはない。すなわち、I
nは、I
n=0とすることができる。これに従い、式2にI
n=0を代入し、V
nについて解くと、次の式(3)が得られる。
【0052】
この式(3)は、n番目のノード以外のノードの電圧から、内部の点であるn番目のノードの電圧を求める式として理解される。すなわち、式(3)に基づけば、算出部103は、Y
n1〜Y
nnの値と、V
1〜V
n−1の値がわかれば、V
nを算出することができる。
【0053】
特に、1〜n−1番目のノードが端部の点に相当する場合、式(3)において、V
1〜V
n−1は、端部の点における水圧から変換できる変数である。したがって、算出部103は、伝達特性(Y
n1〜Y
nn)および端部の点における水圧から、V
nの値を求めることができる。算出部103は、V
nを求め、求めたV
nを、水圧に変換すればよい。変換された値は、内部の点における水圧を表す。このようにして、算出部103は、内部の点における水圧を求めることができる。
【0054】
なお、式(3)は、本実施形態により開示される技術思想を逸脱しない範囲で変形されてよい。たとえば、式(3)は、電圧と水圧との間の対応付けに基づき、端部の点における水圧と内部の点における水圧との関係を表す式に変形されてもよい。算出部103は、その式によって、端部の点における水圧から、内部の点における水圧を直接求めてもよい。
【0055】
入出力部101は、算出部103が算出した、内部の点における水圧を出力する。
【0056】
<動作>
第1の実施形態に係る解析装置11の動作を、具体的な例を示しながら説明する。
【0057】
例として、シミュレーションおよび解析の対象は、
図2に示されるような水道管網であるとする。この水道管網では、点1,2,4が端部の点であり、点5が内部の点である。点3は分岐点であり、本説明での計算式には直接関与しない。
【0058】
動作の説明を行う。
図3は、本実施形態に係る解析装置11の動作の流れを示すフローチャートである。
【0059】
まず、入出力部101が、伝達特性導出部102に、解析に必要な、管網等の情報を入力する(ステップS31)。具体的には、入出力部101は、
図2に例示する管網の情報を入力する場合、点1,2,3,4,5の接続関係と、各点間のパイプに関するパラメータとを入力する。例として、入出力部101は、点1−点5間の管長を100m、管の直径を30mm、流量係数を100、点5−点3間の管長を20m、管の直径を30mm、流量係数を100、点3−点2間の管長を80m、管の直径を25mm、流量係数を80、点3−点4間の管長を120m、管の直径を30mm、流量係数を100として入力したとする。
【0060】
また、入出力部101は、算出部103に、端部の点(
図2に示される例では、点1,2,4)における水圧を入力する。
【0061】
伝達特性導出部102は、管網の情報に基づいて、伝達特性を導出する(ステップS32)。
図2に例示する管網の情報が入力された場合は、伝達特性導出部102は、たとえば、その管網をモデル化した電気回路網における、点1,2,4,5に相当するノードにおける電圧と電流との関係を表すアドミタンス行列を算出する。
【0062】
上述のアドミタンス行列を算出するにあたり、伝達特性導出部102は、入出力部101により入力された管網の情報に基づいて、管網を電気回路網にモデル化する。具体的には、伝達特性導出部102は、管網を模した電気回路網をシミュレートするためのデータを生成する。
【0063】
伝達特性導出部102は、管網を構成する要素(パイプ等)を、回路素子の組み合わせによってモデル化してもよい。例えば、管網を構成するパイプ301は、
図5に例示するように、コイル311とコンデンサ312と抵抗313とで構成される電気回路302と対応付けられてもよい。したがって、伝達特性導出部102は、たとえば、
図2で示される点間をつなぐパイプ301を、それぞれ電気回路302でモデル化してもよい。このとき、電気回路302における、コイル311のインダクタンスL、コンデンサ312のキャパシタンスC、抵抗313の抵抗値Rは、それぞれ次の式(4)によって求められる。
【0065】
伝達特性導出部102は、たとえば、管網の各点間のパイプを
図6に示すようなコイル311とコンデンサ312と抵抗313とで構成される電気回路302で置き換えることにより生成する電気回路網を、仮想的に構築する。具体的には、たとえば、伝達特性導出部102は、各点間のパイプを電気回路302でモデル化した電気回路網を作成するためのデータを生成し、そのデータを回路シミュレータに入力する。これにより、管網に基づいた電気回路網が仮想的に生成する。
【0066】
各パイプを上記の電気回路302でモデル化することで作成される電気回路網は、
図6に示される通りである。
図6において、数字が付された破線は、
図2に示される管網の各点に相当する端子の位置を表す。
【0067】
伝達特性導出部102は、抵抗313の代わりに、抵抗313によって損失する圧力の大きさ(圧力損失)をモデル化する回路素子を用いてもよい。圧力損失をPとすると、Pは、たとえば、ヘーゼン・ウィリアムスの式に基づく次の式(5)で表されうる。
【0069】
式(5)において、流量係数とは、ヘーゼン・ウィリアムスの式において、管内の流体の流れやすさを表し、配管の材質および経年変化の度合いに応じて定まる係数である。ただし、式(5)は管網を流れる流体が水である場合の例であり、圧力損失を表す式は、流体の種類や様々な条件に応じて適切な式が用いられうる。
【0070】
伝達特性導出部102は、たとえば、式(5)で示されるような圧力損失を表す回路素子を、電気回路網に用いてもよい。たとえば、伝達特性導出部102は、電流に依存して出力電圧が変化する非線形電圧源を用いて、抵抗313をモデル化してもよい。
【0071】
伝達特性導出部102は、電気回路シミュレータに、上記のようにしてモデル化される電気回路網をシミュレートするためのデータを入力する。そして、伝達特性導出部102は、電気回路シミュレータに、その電気回路網に基づいた、端部の点および内部の点に相当するノード(
図2に示す例では、点1,2,4,5)に関するアドミタンス行列を計算させる。
【0072】
伝達特性導出部102は、電気回路シミュレータによって、たとえば、小信号解析と呼ばれる、振幅の小さい入力信号を用いた解析を行うことで、アドミタンス行列を計算する。小信号解析は、入力信号の振幅が小さいことを仮定することで電気回路中の非線形な素子を線形な素子とみなすことができる解析手法である。小信号解析では、入力信号の振幅が小さいという仮定のもと、線型な素子で構成された小信号モデルが想定され、指定された周波数の電圧に対する出力を算出することができる。すなわち、小信号解析によれば、電気回路が、上述のような、電圧と電流との間の非線形な関係を表す回路素子を含む場合でも、アドミタンス行列を近似的に数値計算することができる。
【0073】
伝達特性導出部102は、計算により得られたアドミタンス行列を、伝達特性として取得する。伝達特性導出部102は、たとえば、
図2に示す例における点1,2,4,5に関するアドミタンス行列を計算した場合、式(1)のアドミタンス行列の各要素に相当する、Y
11、Y
12、Y
14、Y
15、Y
21、Y
22、Y
24、Y
25、Y
41、Y
42、Y
44、Y
45、Y
51、Y
52、Y
54、およびY
55の値を、伝達特性として導出する。伝達特性導出部102は、点5に関する要素の値のみを求めてもよい。すなわち、伝達特性導出部102は、式(2)におけるY
n1〜Y
nnに相当する、Y
51、Y
52、Y
54、およびY
55を、伝達特性として求めればよい。伝達特性導出部102は、導出した伝達特性を、算出部103に送信する。
【0074】
算出部103は、伝達特性と、入出力部101により入力された、端部の点(
図2に示す例では、点1,2,4)における水圧とに基づいて、内部の点(
図2に示す例では、点5)における水圧を求める(ステップS33)。具体的に、
図2に示す例について説明すると、まず、算出部103は、V
1〜V
4の値(式(3)におけるV
1〜V
n−1に相当する)を、端部の点における水圧の値を電圧の値に変換することにより、算出する。そして、算出部103は、式(3)に、V
1〜V
4およびY
51〜Y
55の値を代入し、V
5(式(3)におけるV
nに相当する)値を求める。算出部103は、求められたV
5を、水圧の値に変換し、変換した値を内部の点における水圧の値として算出する。
【0075】
最後に、入出力部101は、算出された水圧を出力する(ステップS34)。
【0076】
<主要な動作>
なお、本実施形態の解析装置11の主要な動作は、
図4に示すフローチャートの通りである。ステップS41にて、伝達特性導出部102は、管網をモデル化した電気回路に含まれる複数のノードにおける電圧と、複数のノードと異なるノードである内部ノードにおける電圧と、の関係を表す伝達特性を導出する。なお、内部ノードとは、電気回路の内部のノードである。ステップS42にて、算出部103は、伝達特性と、複数のノードに相当する管網内の位置における流体の圧力とに基づいて、内部ノードに相当する管網内の位置における流体の圧力を算出する。
【0077】
<効果>
本実施形態によれば、出力先(たとえばユーザ)は、端部の点における水圧のデータから算出される、内部の点における水圧の値を、取得することができる。出力先は、この水圧を、実測された水圧の値と比較することにより、シミュレーションに用いる管網の情報の精確さを評価することができる。
【0078】
すなわち、本実施形態によれば、流量の情報を用いることなく管網のモデルの精度を評価することができる。
【0079】
<<第2の実施形態>>
解析装置は、端部の点における水圧の推移の特徴から、内部の点における水圧の推移の特徴を算出するよう構成されてもよい。そのように構成される場合の各構成の動作を、第2の実施形態として、以下で説明する。
【0080】
第2の実施形態の構成は、第1の実施形態と同様である。また、想定する管網および端部の点および内部の点も、第1の実施形態における例と同様であるとして説明する。
【0081】
入出力部101は、端部の点(
図2に示す例では、点1,2,4)における、水圧の波形データを取得する。水圧の波形データとは、水圧の推移の特徴を表すデータである。水圧の推移の特徴とは、たとえば、管網の状態等に応じて変化し得る、水圧の推移に関する情報である。別の言葉では、水圧の推移の特徴とは、水圧の推移に関する意味のある情報である。水圧の波形データは、たとえば、水圧の経時変化を表すデータである。このデータは、たとえば、センサにより取得される実測値である。
【0082】
図7は、複数の点のそれぞれにおける水圧の経時変化を表すデータの具体例である。
図7において、グラフを指し示す番号は、
図2に示される各点の番号を表す。なお、
図7で示す例では各データがグラフで表されているが、解析装置11が扱うデータは、グラフ化されている必要はない。データは、時刻と水圧とが関連付けられているデータ列でもよい。
【0083】
水圧の波形データは、たとえば、水圧の周波数ごとの振幅の情報、すなわち周波数分布で表されていてもよい。この場合、水圧の波形データは、水圧の周波数ごとの位相の情報を含んでいてもよい。
【0084】
入出力部101は、取得した水圧の波形データを、算出部103に入力する。このとき、入出力部101は、取得した水圧の波形を、適宜、周波数分布に変換して算出部103に入力する。たとえば、取得した波形が水圧の経時変化である場合、入出力部101は、波形をフーリエ変換することにより、周波数分布を得ることができる。入出力部101は、周波数分布を、算出部103に入力する。
【0085】
伝達特性導出部102は、本実施形態の場合、電圧の周波数ごとに、伝達特性を導出する。
【0086】
たとえば、伝達特性導出部102は、電気回路シミュレータに対し、端子に様々な周波数の正弦波を入力し、出力される電流を取得することで、周波数ごとに、伝達特性を求める。
【0087】
伝達特性導出部102は、電気回路シミュレータに対しインパルス波形を入力したときの応答特性から、フーリエ変換によって周波数ごとの伝達特性を求めてもよい。
【0088】
算出部103は、周波数ごとの伝達特性と、入出力部101から入力された周波数分布とに基づいて、内部の点における周波数分布を算出する。具体的には、算出部103は、周波数ごとに、伝達特性と、各端部の点における振幅の値とに基づき、内部の点における水圧の振幅を算出する。これにより、算出部103は、周波数ごとの、内部の点における水圧の振幅、すなわち周波数分布を得る。
【0089】
なお、算出部103は、得られた周波数分布を、逆フーリエ変換等によって、経時変化の波形データに変換してもよい。以下、算出部103の算出によって生成された波形データ(周波数分布を表すデータを含む)を、計算内部波形データとも称する。
【0090】
入出力部101は、算出部103が算出した計算内部波形データを出力する。
【0091】
これにより、出力先(たとえばユーザ)は、端部の点の波形データに基づく計算による、内部の点における水圧の波形データを取得することができる。出力先は、たとえば、この波形データを実際の波形データと比較することにより、シミュレーションに用いる管網の情報(解析モデル)の精度を評価することができる。
【0092】
<<第3の実施形態>>
先の実施形態において、入出力部101は、伝達特性の計算に用いられる管網の情報を、特定の装置(たとえば、外部の記憶装置)から取得してもよい。第3の実施形態として、解析装置が特定の装置から管網の情報を取得する構成を説明する。
【0093】
図8は、本発明の第3の実施形態に係る解析装置13の構成を示すブロック図である。解析装置13の構成は、第1または第2の実施形態における解析装置11または12と同様でよい。第1または第2の実施形態の構成要素と同一の符号が付された構成要素は、第1または第2の実施形態の当該構成要素と同等の機能を有する。
【0094】
本実施形態の解析装置13の入出力部101は、解析モデル20を取得する。
【0095】
解析モデル20は、管網を表す情報である。解析モデル20は、第1の実施形態で説明された、管網の情報であってもよい。解析モデル20は、たとえば、管網内を流れる流体をシミュレートするシミュレーション装置(不図示)により用いられる。解析モデル20は、管網をモデル化する電気回路網を表す情報であってもよい。解析モデル20は、たとえば、上記のシミュレーション装置が備える記憶装置等により保持される。解析モデル20は、解析装置13を実装するコンピュータにより保持されていてもよい。
【0096】
入出力部101は、解析モデル20のうち、解析の対象となる範囲の指定と、内部の点の指定とを取得し、取得した指定を伝達特性導出部102に入力する。解析の対象となる範囲の指定と内部の点の指定とは、たとえば、解析モデル20を参照可能なユーザによって、入出力部101に入力されればよい。また、入出力部101は、解析の対象となる範囲内の、管網の情報を抽出し、抽出した情報を伝達特性導出部102に入力する。
【0097】
本構成により、解析モデル20で表される管網を対象にした解析が行える。
【0098】
解析の結果は、入出力部101によって、例えばユーザに出力される。ユーザは、解析モデル20中の、指定した範囲の端部の点における圧力(波形データを含む)から計算で求められる、指定した内部の点における圧力を知ることができる。ユーザは、解析モデル20で示される管網の内の、水圧を測定可能な点を、端部の点および内部の点として選択すれば、本解析装置13の計算による内部の点における圧力と、実測した圧力とを比較することができる。
【0099】
<<第4の実施形態>>
本発明の第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係る解析装置14は、解析モデル20の精度を評価することができる。
【0100】
<構成>
図9は、第4の実施形態に係る解析装置14の構成を示すブロック図である。解析装置14は、
図8で示される第3の実施形態の構成に加えて、波形変換部104および波形比較部105を備える。
【0101】
第3の実施形態の構成要素と同一の符号が付された構成要素は、第3の実施形態の当該構成要素と同等の機能を有する。
【0102】
入出力部101は、第3の実施形態における入出力部101の機能と同等の機能を有する。加えて、本実施形態の入出力部101は、波形変換部104に対し、内部の点(
図2に示す例では、点5)における水圧の波形データを入力する。以下、入出力部101が入力する内部の点における水圧の波形データを、入力内部波形データとも称す。入力内部波形データは、時間領域の波形でもよいし、周波数分布でもよい。
【0103】
波形変換部104は、入出力部101から取得した入力内部波形データを変換する。たとえば、波形変換部104は、入出力部101から点5における水圧の時間領域の波形を受け取ると、フーリエ変換等によって、水圧の周波数分布に変換することができる。波形変換部104は、変換した波形データを、入力内部波形データとして波形比較部105に出力する。
【0104】
波形比較部105は、波形変換部104により出力された入力内部波形データと、算出部103により算出された計算内部波形データとを比較する。比較に用いられる波形データは、周波数分布でもよいし、時間領域の波形でもよい。比較する波形データの種類を統一するため、波形比較部105は、一方の波形の種類を他方の波形データの種類に変換してもよい。たとえば、波形比較部105は、時間領域の波形で2つの波形を比較する場合、周波数分布を、逆フーリエ変換等によって、時間領域の波形に変換してもよい。
【0105】
2つの波形の比較として、2つの波形データの間の相違を算出する。相違とは、たとえば、2つのデータの類似のしていなさの程度を表す情報である。相違とは、別の言葉では、不一致の度合いを表す情報である。2つの波形データの不一致の度合いを表す情報(以下、「不一致度」)は、たとえば、不一致の大きさまたは割合で表されてもよい。2つの波形データの不一致度は、たとえば、2つの波形データのそれぞれの特徴点における数値の差の絶対値の合計で求めてもよい。不一致度の算出方法はこれに限られない。また、波形比較部105は、不一致度ではなく一致の度合い(類似の度合い)を算出してもよい。一致の度合いは、たとえば、それぞれの波形データにおける上位8個の特徴点のうち周波数が一致した数、等により算出されてもよい。
【0106】
入出力部101は、波形比較部105による比較の結果を出力する。たとえば、入出力部101は、比較の結果として、波形比較部105が算出した不一致度を出力する。
【0107】
<動作>
第4の実施形態に係る解析装置14の動作を、具体的な例を示しながら説明する。
【0108】
図10は、第4の実施形態に係る解析装置14の動作の流れを示すフローチャートである。
【0109】
ステップS101〜S103は、第1の実施形態におけるステップS31〜S33に相当する。したがって、ステップS101〜S103の説明を省略する。
【0110】
また、ステップS101において、入出力部101は、波形変換部104に対し、内部の点における水圧の時間領域の波形を入力したとする。波形変換部104は、時間領域の波形を、フーリエ変換により、周波数分布に変換する。
【0111】
ステップS104にて、算出部103は、周波数ごとの伝達特性と、入出力部101から入力された周波数分布とに基づいて、計算内部波形データを算出する。この処理は、第2の実施形態と同様でよい。
【0112】
ステップS105にて、波形比較部105は、算出部103が算出した計算内部波形データと、波形変換部104が出力した入力内部波形データとを、比較する。具体的には、波形比較部105は、算出部103が求めた計算内部波形データと、波形変換部104が出力した入力内部波形データとの間の不一致度を算出する。
【0113】
本説明では、波形比較部105は、周波数分布で表された上記2つの波形データの間の不一致度を算出する。例として、波形比較部105は、不一致度として、1Hzから10Hzまでの0.5Hzごとの周波数の水圧の差の絶対値をそれぞれ求め、それらの値を合計する。その結果、波形比較部105は、たとえば、不一致度の値として、「0.29」のように、値を算出する。
【0114】
最後に、入出力部101は、波形比較部105が算出した不一致度の値を出力する(ステップS106)。
【0115】
入出力部101は、ステップS106において、算出部103が求めた計算内部波形データのグラフと、波形変換部104が求めた入力内部波形データのグラフとを、重ねて表示してもよい。
図11は、上記2つの波形データのグラフを重ねて表示した例である。
図11において、グラフ601は入力内部波形データのグラフであり、グラフ602は計算内部波形データのグラフである。このような表示により、出力先(たとえばユーザ)は2つの波形データの不一致度を直感的にも理解することができる。
【0116】
<効果>
本実施形態によれば、出力先は解析モデルの精度を知ることができる。その理由は、波形比較部105が、算出部103が計算により求めた計算内部波形データと、波形変換部104が出力した、入力内部波形データとの間の、不一致度を算出するからである。入力内部波形データが実測のデータに基づくデータである場合、算出される不一致度は、解析モデルの精度の指標となる。すなわち、出力先は、不一致度の値が大きいほど、解析モデルの精度が低いと理解することができる。
【0117】
<<第5の実施形態>>
本発明の第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係る解析装置15は、解析モデル20の精度を向上させることができる。
【0118】
<構成>
図12は、第5の実施形態に係る解析装置15の構成を示すブロック図である。解析装置15は、
図9で示される第3の実施形態の構成に加えて、判定部106および修正部107を備える。
【0119】
第4の実施形態の構成要素と同等の機能を有する構成要素には、同一の符号を付し、その機能に関する説明を省略する。
【0120】
入出力部101は、第4の実施形態における入出力部101の機能と同等の機能を有する。加えて、本実施形態の入出力部101は、判定部106に対して、判定基準の情報を入力する。判定基準は、判定部106による判定の基準である。判定基準の情報は、たとえば、許容する不一致度の値の範囲である。判定基準の情報は、許容する不一致度の上限、すなわち閾値であってもよい。この場合、判定基準は、不一致度がその閾値以下であること、である。
【0121】
また、入出力部101は、修正部107に対し、解析モデル20の、解析の範囲内のパイプに関するパラメータの中で、修正の対象となるパラメータの指定を入力する。入出力部101は、たとえば、解析モデル20の、解析の範囲内のパイプに関するパラメータのうち1つ以上を、修正の対象のパラメータとして、修正部107に対して指定する。修正の対象のパラメータは、例えば、いずれかの点間の管の、長さや摩擦係数である。入出力部101は、修正の対象のパラメータを、例えばユーザからパラメータの指定を受け付けることによって取得すればよい。この場合、ユーザは、例えば、使用年数等に基づいて、実際の値と解析モデル20における値との間にずれがあると考えられるパラメータを1つ以上、修正の対象となるパラメータとして指定すればよい。
【0122】
判定部106は、波形比較部105により算出された不一致度が、入出力部101からの入力に基づく判定基準を満たすか否かを判定する。不一致度が判定基準を満たしていない場合は、解析装置15は、修正部107による後述の処理を実行する。不一致度が判定基準を満たしている場合は、解析装置15は、入出力部101により解析の結果を出力する。判定基準の具体例および解析の結果については後述する。
【0123】
修正部107は、解析モデル20における、入出力部101から指定されたパラメータの値を修正する。修正部107は、たとえば、パラメータの値を、不一致度の値に基づいて修正すればよい。修正においては、判定部106による判定と修正とを繰り返すことによってパラメータの値を最適な値に近づけることが可能なアルゴリズムを用いる。修正部107は、たとえば、Nelder−Mead法や、遺伝的アルゴリズムに基づく方法により、上述の修正を行えばよい。修正方法は、カルマンフィルタを用いる方法であってもよい。なお、上記に挙げた修正方法は、修正対象のパラメータが2つ以上であっても適用可能である。
【0124】
修正部107は、修正した値、すなわち修正値を、たとえば、入出力部101に送信する。入出力部101は、受け取った修正値を反映させた管網の情報を、伝達特性導出部102に入力する。これにより、修正値が反映された管網の情報に基づいて、伝達特性導出部102が再び伝達特性を計算する。
【0125】
入出力部101は、不一致度が判定基準を満たしていると判定された時に、解析の結果を出力する。解析の結果とは、たとえば修正の結果である。修正の結果は、例えば修正値および最後に算出された不一致度の値である。解析モデルが修正されなかった場合は、修正の結果は、修正がなかったことを示す情報および不一致度の値でよい。また、入出力部101は、修正された解析モデル20全体を表すデータを出力してもよい。
【0126】
<動作>
第5の実施形態に係る解析装置15の動作を、具体的な例を示しながら説明する。
【0127】
図13は、解析装置15の動作の流れを示すフローチャートである。
【0128】
まず、入出力部101は、解析に必要な情報を各部に入力する(ステップS131)。
【0129】
たとえば、入出力部101は、第4の実施形態のステップS101と同様、伝達特性導出部102に管網等の情報を入力する。また、入出力部101は、算出部103に、管網の端部の点における水圧の波形データを入力する。また、入出力部101は、波形変換部104に対し、内部の点における水圧の時間領域の波形を入力してもよい。
【0130】
また、入出力部101は、修正部107に対し、解析モデル20において修正の対象となるパラメータの指定を入力する。例として、指定されたパラメータは、点3と点4との間の管の長さ、であるとする。
【0131】
また、入出力部101は、判定部106に対して、判定基準の情報を入力する。たとえば、入出力部101が、判定基準の情報として、「0.1」という数値を判定部106に入力する。判定部106は、この情報に基づき、判定基準を「不一致度が0.1以下であること」として後述のステップS136の判定を行う。
【0132】
ステップS132からステップS134の処理は、第4の実施形態のステップS102からステップS104と同様でよい。伝達特性導出部102は、管網の情報に基づいて、伝達特性を導出する(ステップS132)。算出部103は、伝達特性に基づいて、端部の点における圧力から、内部の点における圧力を算出する(ステップS133)。算出部103は、計算内部波形データを生成する(ステップS134)。
【0133】
次に、波形比較部105は、入力内部波形データと、計算内部波形データとを比較する(ステップS135)。たとえば、波形比較部105は、2つの波形の各特徴点の水圧の差の絶対値をそれぞれ求め、それらの値の合計値を不一致度として算出する。例として、波形比較部105が算出した不一致度は0.29であったとする。
【0134】
次に、判定部106が、不一致度が判定基準を満たしているかを判定する(ステップS136)。波形比較部105により算出された不一致度が、判定基準を満たさない場合(ステップS136においてNO)、解析装置15の処理は、繰り返し処理を抜けずに、ステップS137に進む。
【0135】
本動作例の説明での判定基準は、上述したように「不一致度が0.1以下であるか否か」である。不一致度が0.29である場合は判定基準を満たさないため、解析装置15の処理はステップS137へと進む。
【0136】
なお、不一致度が判定基準を満たす場合(ステップS136においてYES)は、解析装置15の処理はステップS138へと進む。
【0137】
ステップS137において、修正部107は、パラメータの値の修正を行う。例として、修正の対象のパラメータは、点3−点4間の管の長さであるとする。修正部107は、点3−点4間の管の長さの値を、パラメータの値を修正するアルゴリズムを用いて修正する。解析装置15は、修正部107により修正された値を用いて、再びステップS132〜ステップS136の動作を行う。解析装置15は、この処理を、不一致度の値が判定基準を満たすまで繰り返す。これにより、判定基準を満たす当該パラメータの値が求められる。
【0138】
なお、判定部106は、上記繰り返し処理において、所定回数または所定時間の経過後になお不一致度が判定基準を満たさない場合や、不一致度が改善されない場合には、繰り返し処理を終了するよう、構成されてもよい。
【0139】
点3と点4との間の管の長さが150mに修正された時に、不一致度の値が0.08となったとする。この値は判定基準を満たしているので、解析装置15の処理は、繰り返し処理を抜け、ステップS138に進む。
【0140】
最後に、ステップS138において、解析装置15は、入出力部101によって、上記ステップS137までで行った解析の結果を出力する。
【0141】
入出力部101は、出力において、修正値を用いて算出された計算内部波形データのグラフと、入力内部波形データのグラフとを、重ねて表示してもよい。
図14は、上記2つの波形データのグラフを重ねて表示した例である。
図14において、グラフ601は入力内部波形データのグラフであり、グラフ702は計算内部波形データのグラフである。このような表示により、出力先は2つの波形データの不一致度を直感的にも理解することができる。また、入出力部101は、修正前のパラメータの値を用いて算出される計算内部波形データを表示してもよい。これにより、たとえば、出力先は、修正値を用いることによって解析モデル20の精度が向上されうるかどうかを、容易に認識できる。たとえば、計算内部波形データが、
図11に示されるグラフ602から、
図14に示されるグラフ702のように変化した場合、出力先は、後者のグラフの方が入力内部波形データによく類似することが明瞭に理解できる。出力先は、この表示に基づいてパラメータの修正の可否を決定してもよい。
【0142】
<効果>
本実施形態の解析装置によれば、解析モデル20の精度を向上させることができる。その理由は、修正部107が、判定基準を満たすまでパラメータの値を修正するからである。
【0143】
ユーザは、出力された情報を見て、当該パラメータの修正の可否を判断してもよい。これにより、解析装置による解析と、ユーザの判断とに基づいた、解析モデルの修正が可能となる。
【0144】
あるいは、入出力部101が、解析モデル20の当該パラメータの値を、修正部107により算出された値に修正してもよい。そのような構成により、解析モデル20は、より精度の高い解析モデルへと自動的に修正される。
【0145】
<<ハードウェアおよびソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)の構成>>
以下、上記説明した各実施形態を実現可能なハードウェア構成について説明する。
【0146】
上述した解析装置、あるいは、当解析装置の構成要素は、
図15に例示するようなハードウェアの一部または全部と、そのハードウェアによって実行される各種ソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)との可能な組み合わせによって実現されてもよい。
【0147】
図15における演算装置1501は、汎用のCPUやマイクロプロセッサ等の演算処理装置である。演算装置1501は、例えば後述する不揮発性記憶装置1502に記憶された各種ソフトウェア・プログラムを記憶装置1503に読み出し、読み出したソフトウェア・プログラムに従って処理を実行してもよい。なお、各実施形態における伝達特性導出部102、算出部103、波形変換部104、波形比較部105、判定部106、修正部107は、演算装置1501を用いて、それぞれの演算処理を実行してもよい。
【0148】
記憶装置1503は、演算装置1501から参照可能な、RAM(Random Access Memory)等のメモリ装置であり、ソフトウェア・プログラムや各種データ等を記憶する。なお、記憶装置1503は、揮発性のメモリ装置であってもよい。
【0149】
不揮発性記憶装置1502は、例えば磁気ディスクドライブや、フラッシュメモリによる半導体記憶装置のような、不揮発性の記憶装置である。不揮発性記憶装置1502は、ソフトウェア・プログラムやデータ等を記憶可能である。管網の構成要素と、当該管網の構成要素をモデル化する電気回路網の構成要素とを関連付けた変換情報は、ファイルやデータベース等の形式により、不揮発性記憶装置1502に保存されてもよい。
【0150】
通信インタフェース1508は、通信ネットワーク1509に接続するインタフェース装置である。通信インタフェース1508は、例えば有線および無線のLAN(Local Area Network)接続用インタフェース装置等でもよい。なお、各実施形態における入出力部101は、通信インタフェース1508を介して、図示しない他のシステム等から、解析モデル20、端部および内部の波形データ、修正の対象のパラメータ等の入力を受け付けてもよい。
【0151】
ドライブ装置1507は、例えば、後述する記録媒体1506に対するデータの読み込みや書き込みを処理する装置である。
【0152】
記録媒体1506は、例えば光ディスク、光磁気ディスク、半導体フラッシュメモリ等、データを記録可能な記録媒体である。
【0153】
入出力インタフェース1510は、外部装置との間の入出力を制御する装置である。例えば、解析装置のユーザは、入出力インタフェース1510を介して解析装置に接続された入出力装置(例えば、キーボード、マウス、ディスプレイ装置、プリンタ等)を用いて、解析装置に対して、管網の情報、解析の範囲および内部の点の指定、波形データ、あるいは、各種の指示等を入力してもよい。なお、各実施形態における入出力部101は、入出力インタフェース1510に接続された入出力装置を用いて実現されてもよい。
【0154】
上述した各実施形態では、例えば、
図15に例示したハードウェア装置1500により解析装置が実現されてもよい。具体的には、解析装置は、ハードウェア装置1500に対して、各実施形態において説明した機能を実現可能なソフトウェア・プログラムを供給することにより実現されてもよい。この場合、ハードウェア装置1500に対して供給したソフトウェア・プログラムを、演算装置1501が実行することによって、各実施形態が実現されてもよい。
【0155】
上述した各実施形態において、上記各図(例えば、
図1、8、9、12)に示した各部は、上述したハードウェアにより実行されるソフトウェア・プログラムの機能(処理)単位である、ソフトウェアモジュールとして実現することができる。ただし、これらの図面に示した各ソフトウェアモジュールの区分けは、説明の便宜上の構成である。ソフトウェアモジュールの実装に際しては、様々な構成が想定され得る。
【0156】
例えば、
図1、8、9、12に例示した各部をソフトウェアモジュールとして実現する場合、これらのソフトウェアモジュールを不揮発性記憶装置1502が記憶していてもよい。演算装置1501は、それぞれの処理を実行する際に、これらのソフトウェアモジュールを記憶装置1503に読み出すよう構成されていてもよい。
【0157】
また、これらのソフトウェアモジュール間は、共有メモリやプロセス間通信等の適宜の方法により、相互に各種データを伝達できるように構成されていてもよい。このような構成により、これらのソフトウェアモジュール間は、相互に通信可能に接続可能である。
【0158】
更に、上記各ソフトウェア・プログラムは記録媒体1506に記録されてもよい。上記通信装置等の出荷段階、あるいは運用段階等において、適宜ドライブ装置1507を通じて、当該ソフトウェア・プログラムは不揮発性記憶装置1502に格納されてもよい。
【0159】
なお、上記の場合において、上記解析装置への各種ソフトウェア・プログラムの供給方法として、出荷前の製造段階、あるいは出荷後のメンテナンス段階等において、適当なジグを利用して当該装置内にインストールする方法が採用されてもよい。また、各種ソフトウェア・プログラムの供給方法として、インターネット等の通信回線を介して外部からダウンロードする方法等のように、現在では一般的な手順が採用されてもよい。
【0160】
そして、このような場合において、各実施形態の解析装置は、ソフトウェア・プログラムを構成するコードが記録された、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体によって構成されると捉えることができる。
【0161】
また、上述した解析装置、あるいは、当解析装置の構成要素は、
図15に例示するハードウェア装置1500を仮想化した仮想化環境と、当該仮想化環境において実行される各種ソフトウェア・プログラム(コンピュータ・プログラム)とによって実現されてもよい。この場合、
図15に例示するハードウェア装置1500の構成要素は、当該仮想化環境における仮想デバイスとして提供される。なお、この場合も、
図15に例示するハードウェア装置1500を物理的な装置として構成した場合と同様の構成にて、各実施形態の解析装置を実現可能である。
【0162】
また、上記各実施形態において説明した解析装置の一部または全部は、専用のハードウェアにより構成されてもよい。その場合、各構成要素の一部又は全部は、統合されたハードウェア(処理を実行するロジックを実装した集積回路等)として実現されてもよい。
【0163】
例えば、各構成要素をハードウェアにより実現する場合、各構成要素は、それぞれの機能を提供可能な回路が集積したSoC(System on a Chip)等として実装されてもよい。この場合、例えば、各構成要素が保持するデータは、SoCとして統合されたRAM領域やフラッシュメモリ領域に記憶されてもよい。
【0164】
また、この場合、各構成要素を接続する通信回線としては、周知の通信バスを採用してもよい。また、各構成要素を接続する通信回線はバス接続に限られない。それぞれの構成要素間はピアツーピアで接続されてもよい。
【0165】
図16は、本発明の第5の実施形態の解析装置15の各構成要素を回路で構成した場合を表すブロック図である。
図16において、入出力回路111は入出力部101として機能する。伝達特性導出回路112は伝達特性導出部102として機能する。算出回路113は算出部103として機能する。波形変換回路114は波形変換部104として機能する。波形比較回路115は波形比較部105として機能する。判定回路116は判定部106として機能する。修正回路117は修正部107として機能する。
【0166】
以上、本発明を、上述した実施形態に適用した例として説明した。しかしながら、本発明の技術的範囲は、上述した各実施形態に記載した範囲には限定されない。当業者には、上述した各実施形態に対して多様な変更又は改良を加えることが可能であることは明らかである。そのような場合、変更又は改良を加えた新たな実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。更に、上述した各実施形態、あるいは、変更又は改良を加えた新たな実施形態を組み合わせた実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。そしてこのことは、請求の範囲に記載した事項から明らかである。
【0167】
本出願は、2016年3月28日に出願された日本出願特願2016−064103を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0168】
上記実施形態の一部または全部は以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
【0169】
<<付記>>
[付記1]
流体が流れる管網をモデル化した電気回路に含まれる複数のノードにおける電圧と、前記複数のノードと異なる前記電気回路のノードである内部ノードにおける電圧と、の関係を表す伝達特性を導出する伝達特性導出手段と、
前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力を算出する算出手段と、
を備える解析装置。
[付記2]
前記伝達特性導出手段は、電圧の周波数に応じた前記伝達特性を導出し、
前記算出手段は、前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力の推移の特徴である第1の特徴とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における、前記流体の圧力の推移の特徴である第2の特徴を算出する、
付記1に記載の解析装置。
[付記3]
前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における圧力の推移の特徴である第3の特徴を取得する入出力手段と、
前記第2の特徴と前記第3の特徴とに基づいて、前記第2の特徴と前記第3の特徴との間の相違を算出する波形比較手段と、
をさらに備える、付記2に記載の解析装置。
[付記4]
前記相違が所定の基準を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記相違が前記所定の基準を満たさないと判定された場合に、前記相違に基づいて前記管網の情報のうちの所定のパラメータの値の修正を行う修正手段と、をさらに備え、
前記修正手段は、前記判定手段が、前記修正が反映された前記管網の情報に基づいて算出された前記相違が前記所定の基準を満たすと判定するまで、前記修正を繰り返す、
付記3に記載の解析装置。
[付記5]
流体が流れる管網をモデル化した電気回路に含まれる複数のノードにおける電圧と、前記複数のノードと異なる前記電気回路のノードである内部ノードにおける電圧と、の関係を表す伝達特性を導出し、
前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力を算出する、
解析方法。
[付記6]
電圧の周波数に応じた前記伝達特性を導出し、
前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力の推移の特徴である第1の特徴とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における、前記流体の圧力の推移の特徴である第2の特徴を算出する、
付記5に記載の解析方法。
[付記7]
前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における圧力の推移の特徴である第3の特徴を取得し、
前記第2の特徴と前記第3の特徴とに基づいて、前記第2の特徴と前記第3の特徴との間の相違を算出する、
付記6に記載の解析方法。
[付記8]
前記相違が所定の基準を満たすか否かを判定し、
前記相違が前記所定の基準を満たさないと判定された場合に、前記相違に基づいて前記管網の情報のうちの所定のパラメータの値の修正を行い、
前記修正が反映された前記管網の情報に基づいて算出された前記相違が前記所定の基準を満たすと判定するまで、前記修正を繰り返す、
付記7に記載の解析方法。
[付記9]
コンピュータに、
流体が流れる管網をモデル化した電気回路に含まれる複数のノードにおける電圧と、前記複数のノードと異なる前記電気回路のノードである内部ノードにおける電圧と、の関係を表す伝達特性を導出する伝達特性導出処理と、
前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力を算出する算出処理と、
を実行させる、プログラム。
[付記10]
前記伝達特性導出処理は、電圧の周波数に応じた前記伝達特性を導出し、
前記算出処理は、前記伝達特性と、前記複数のノードに相当する前記管網内の位置における前記流体の圧力の推移の特徴である第1の特徴とに基づいて、前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における、前記流体の圧力の推移の特徴である第2の特徴を算出する、
付記9に記載のプログラム。
[付記11]
コンピュータに、
前記内部ノードに相当する前記管網内の位置における圧力の推移の特徴である第3の特徴を取得する入出力処理と、
前記第2の特徴と前記第3の特徴とに基づいて、前記第2の特徴と前記第3の特徴との間の相違を算出する波形比較処理と、
をさらに実行させる、請求項10に記載のプログラム。
[付記12]
前記相違が所定の基準を満たすか否かを判定する判定処理と、
前記判定処理により前記相違が前記所定の基準を満たさないと判定された場合に、前記相違に基づいて前記管網の情報のうちの所定のパラメータの値の修正を行う修正処理と、をさらに前記コンピュータに実行させ、
前記修正処理は、前記判定処理が、前記修正が反映された前記管網の情報に基づいて算出された前記相違が前記所定の基準を満たすと判定するまで、前記修正を繰り返す、
付記11に記載のプログラム。