特許第6973382号(P6973382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973382非水電解質二次電池用の負極、非水電解質二次電池の負極用バインダ及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973382
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用の負極、非水電解質二次電池の負極用バインダ及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20211111BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20211111BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20211111BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20211111BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   C08L33/02
   H01M4/134
   H01M4/38 Z
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-514503(P2018-514503)
(86)(22)【出願日】2017年4月14日
(86)【国際出願番号】JP2017015336
(87)【国際公開番号】WO2017188032
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2020年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-91979(P2016-91979)
(32)【優先日】2016年4月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】栗原 均
【審査官】 原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−169137(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/051811(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/200003(WO,A1)
【文献】 特開2013−065494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/62
C08L 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体上に形成され、活物質とバインダとを有する合剤層と、を備え、
前記バインダには、不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在した分子鎖間ネットワークが形成されており、
前記可逆結合は、2価以上の金属カチオンによるイオン結合を含み、
前記バインダでは、架橋可能な反応基の全数に対し、0.01mol%以上2.0mol%以下に相当する反応基が架橋に関与しており、
前記バインダは、一部が2価以上の金属カチオンによる塩となっており、
前記バインダは、主バインダと補助バインダとを含み、
前記主バインダは、分子量100万以上500万以下のエチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる高分子であり、
前記補助バインダは、分子量1000以上1万以下のアクリル酸マレイン酸共重合体であることを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項2】
請求項において、
前記主バインダは、不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在し、
前記補助バインダは、不可逆結合による架橋を含まないことを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項3】
請求項又はにおいて、
前記主バインダの不可逆結合による架橋密度は、前記主バインダのカルボン酸基数に対し、0.01mol%以上3.0mol%以下に相当する基が架橋に関与することを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項4】
請求項の何れか一項において、
前記主バインダと前記補助バインダに与えられる可逆結合の架橋量の総和は、前記主バインダの不可逆結合による架橋に関与した反応基数の1倍以上9倍以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項5】
請求項の何れか一項において、
前記主バインダと前記補助バインダに与えられる可逆結合が、カルシウムイオンによる金属イオン結合であることを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項6】
請求項の何れか一項において、
前記主バインダに与えられる不可逆結合は、架橋剤として、アジリジン系化合物が用いられることを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項7】
請求項の何れか一項において、
前記補助バインダを構成するマレイン酸部位の一部が、隣り合うカルボキシル基と分子内酸無水化処理されていることを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項8】
請求項1〜の何れか一項において、
前記活物質は、ナノシリコンであることを特徴とする非水電解質二次電池用の負極。
【請求項9】
集電体と、前記集電体上に形成される合剤層とを備える非水電解質二次電池の、前記合剤層に含まれるバインダであって、
不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在した分子鎖間ネットワークが形成されており、
前記可逆結合は、2価以上の金属カチオンによるイオン結合を含み、
前記バインダでは、架橋可能な反応基の全数に対し、0.01mol%以上2.0mol%以下に相当する反応基が架橋に関与しており、
前記バインダは、一部が2価以上の金属カチオンによる塩となっており、
前記バインダは、主バインダと補助バインダとを含み、
前記主バインダは、分子量100万以上500万以下のエチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる高分子であり、
前記補助バインダは、分子量1000以上1万以下のアクリル酸マレイン酸共重合体であることを特徴とする非水電解質二次電池の負極用バインダ。
【請求項10】
請求項1〜の何れか一項に記載の非水電解質二次電池用の負極と、
正極と、
前記負極と前記正極との間に配置された非水電解質と、を備えることを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用の負極、非水電解質二次電池の負極用バインダ及び非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油使用量や温室効果ガス削減、エネルギー基盤の更なる多様化や効率化を目指し、繰り返し充放電可能な二次電池として、非水電解質二次電池(例えば、Liイオン二次電池)に注目が集まっている。Liイオン二次電池は、特に、電気自動車やハイブリッド電気自動車、燃料電池車への用途展開が見込まれている。電気自動車においては、航続距離の向上が要求されることから、今後、Liイオン二次電池の高エネルギー密度化が一層要求されていくことになる。
【0003】
現状のLiイオン二次電池の負極に注目すると、黒鉛電極が一般に用いられている。黒鉛の理論容量は、活物質1gあたり372mAh(すなわち、372mAhg(活物質)−1)である。これに対し、黒鉛を上回る容量を示す活物質として、SiやSnが近年注目されている。Siの理論容量は、4200mAhg(活物質)−1であり、Snは、990mAhg(活物質)−1である。しかしながら、Siは、黒鉛の約11倍の容量を持っているために、Li吸蔵や放出に伴う体積変化も大きくなる。例えば、黒鉛と比べて、SiはLi吸蔵により体積は約4倍増加する。黒鉛と比べて、大容量を有する活物質(Si、Sn)を用いた電極は、充放電に伴う大きな体積変化から、電極の導電パスの切断や微粉化に伴う電極からの脱離、集電体と合剤層の剥離等の恐れがある。このことは、Liイオン二次電池の寿命特性を低下させる要因となる可能性がある。
【0004】
これに対し、近年、種々の高分子バインダを適用することにより、電極構造の維持と寿命特性の改善が報告されている。例えば、高分子バインダとして、カルボキシメチルセルロースやポリアミドイミド、ポリアクリル酸、アルギン酸ナトリウムが挙げられる。これらは、従来からバインダとして用いられているポリビニリデンフロライドよりも硬いバインダである。
【0005】
バインダの機械特性を改善するために、特許文献1では、ポリアクリル酸を架橋したものを用いている。架橋したポリアクリル酸は、無架橋のポリアクリル酸に比べ、電極構造が破壊され難くなり、寿命特性が改善されることが報告されている。一方、非特許文献1に示されるように、金属イオンによる架橋アルギン酸ナトリウムについても、寿命特性が改善することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−157709号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Chem.Commun.,2014,50,6386−6389.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、本発明者は、架橋効果について鋭意検討したところ、架橋剤を用いた共有結合による架橋は、機械強度が高くなるが、結合にムラが多く、局所的な応力集中によって、破断されてしまい、寿命特性を十分に改善することが難しいという結論に至った。一方、金属イオン結合は、可逆的な結合であることから、結合の均一性は高いものの、共有結合に比べ、機械強度は低く、十分な寿命特性の改善を為すことが難しいという結論に至った。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような点に着目したものであって、寿命特性に優れた非水電解質二次電池用の負極、非水電解質二次電池の負極用バインダ及び非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、化学結合による架橋の効果を十分に生かすために、架橋のムラによる局所的な応力集中を抑制すべく、例えば金属イオン結合等の可逆的な結合(可逆結合)と、例えば共有結合等の不可逆的な結合(不可逆結合)とを組み合わせた負極用バインダを開発するに至った。
すなわち、本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用の負極は、集電体と、前記集電体上に形成され、活物質とバインダとを有する合剤層と、を備え、前記バインダには、不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在した分子鎖間ネットワークが形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る非水電解質二次電池の負極用バインダは、集電体と、前記集電体上に形成される合剤層とを備える非水電解質二次電池の、前記合剤層に含まれるバインダであって、不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在した分子鎖間ネットワークが形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る非水電解質二次電池は、上記の非水電解質二次電池用の負極と、正極と、前記負極と前記正極との間に配置された非水電解質と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、寿命特性に優れた(例えば、サイクル特性を向上させうる)非水電解質二次電池用の負極、非水電解質二次電池の負極用バインダ及び非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池用の負極10の構成例を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池100の構成例を模式的に示す断面図である。
図3】実施例1で作製したバインダの引張試験結果を示す図である。
図4】実施例2〜5のサイクル評価結果であり、バインダの架橋量と寿命特性との関係を示すグラフである。
図5】実施例6〜10のサイクル評価結果であり、バインダにおける可逆結合/不可逆結合の割合と、寿命特性との関係を示すグラフである。
図6】実施例11、比較例1のサイクル評価結果であり、バインダにおける可逆結合の有無と、容量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本発明の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0015】
(非水電解質二次電池用の負極)
図1は、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池用の負極10の構成例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、この非水電解質二次電池用の負極10は、集電体1と、集電体1上に形成された合剤層3とを有する。すなわち、負極10は、集電体1上に、合剤層3が積層された構造である。
【0016】
集電体1は、良導電性の材質が好ましく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、ステンレス、チタン、白金等の金属箔単体若しくはこれら金属を2種以上含む合金から構成される。
合剤層3は、例えば、バインダと、活物質と、導電助剤とを有する。また、本実施形態において、バインダは、不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在して該バインダ内に分子鎖間ネットワークを形成している。ここで、上記可逆結合は、2価以上の金属カチオンによるイオン結合を含むものであってもよい。
【0017】
(1)バインダ
合剤層3が有するバインダは、エチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる高分子を含んでいればよく、例えば、分子量100万以上500万以下(高分子量)のエチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる高分子と、分子量1000以上1万以下(前述の高分子に比べて低分子量)であり、柔軟性を有するモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸化合物との共重合体と、を含む。
【0018】
例えば、上記のバインダは、主バインダと補助バインダとを含む。主バインダは、分子量100万以上500万以下のエチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる。補助バインダは、柔軟性を有するモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸化合物との共重合体からなる。この共重合体の分子量は1000以上1万以下である。ここで、主バインダと補助バインダとは、一部が2価以上の金属カチオンによる塩となっていてもよい。また、主バインダは、共有結合と金属イオン結合による架橋を有し、補助バインダは、共有結合を含まず、金属イオン結合を含んでいても良い。つまり、主バインダには不可逆結合による架橋が存在し、補助バインダには不可逆結合による架橋が存在しなくてもよい。さらに、主バインダと補助バインダの金属イオンによるイオン結合は、カルシウムイオンによってなされていてもよい。
【0019】
このように、本実施形態では、主バインダとして、分子量100万以上500万以下のエチレン性不飽和カルボン酸化合物(つまり、高分子量のバインダ)を有する。このため、合剤層3全体の機械強度を向上でき、合剤層3でのクラック発生を抑制できる。また、主バインダに架橋処理を施すため、合剤層3のクラック発生を抑制できる高い効果を得る。その結果、導電パスの切断を抑制でき、寿命特性を良好なものにすることができる。
【0020】
また、本実施形態では、補助バインダとして、分子量1000以上1万以下であり、柔軟性を有するモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸化合物との共重合体(つまり、低分子量のバインダ)を有する。このため、活物質表面へ付着しやすく、活物質と電解液の接触を抑制するとともに、活物質の体積変化にも安定な膜を付与できる。この膜は、SEI(Solid Electrolyte Interphase)としての作用が期待できる。その結果、繰り返し充放電での継続的なSEIの破壊と生成を抑制し、寿命特性を向上することができる。
【0021】
また、主バインダに用いられる、エチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる高分子としては、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、アクリル酸酢酸ビニル重合体等のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等が望ましい。そのなかでも特に、後述するように寿命特性を向上させる点で、ポリアクリル酸ナトリウムが望ましい。
【0022】
また、補助バインダに用いられる、柔軟性を有するモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸化合物との共重合体としては、例えば、アクリル酸マレイン酸共重合体、アクリル酸スチレン共重合体、アクリル酸オレフィン共重合体等が望ましい。そのなかでも特に、アクリル酸マレイン酸共重合体が望ましい。なお、補助バインダは、マレイン酸部位を含んだ共重合体であり、そのマレイン酸部位の一部が、隣り合うカルボキシル基と分子内酸無水化処理されたものであってもよい。
さらに、補助バインダの割合は、バインダ(主バインダと補助バインダ)の全重量に対し、0.1質量%以上50質量%以下である。
【0023】
また、主バインダの共有結合による架橋処理は、架橋剤を用いて行われる。架橋剤としては、例えば、カルボン酸と反応して架橋形成するものを使用できる。
なお、主バインダと補助バインダとを含むバインダでは、可逆結合及び不可逆結合による架橋可能な反応基の総和に対し、0.01mol%以上2.0mol%以下に相当する反応基が架橋に関与してもよい。また、主バインダ及び補助バインダの可逆結合による架橋に関与した反応基数の総数は、主バインダの不可逆結合による架橋に関与した反応基数の1倍以上9倍以下であってもよい。
【0024】
合剤層3は、例えば集電体1上に負極スラリを塗布して形成される。負極スラリは、高分子水溶液に架橋剤を滴下し、共有結合による架橋反応を完了させ、続いて、カルシウム塩による金属イオン結合による架橋処理を行い、その後、補助バインダを加え、最後に、導電助剤や活物質を混合して作成する。
架橋剤としては、カルボン酸基と反応して架橋形成する架橋剤であれば、特に制限はない。本実施形態における架橋剤としては、例えば、公知の架橋剤を使用すれば、室温下、数分で架橋反応を完了できる、カルボジイミド系化合物やアジリジン系化合物を使用することが望ましい。そのなかでも特に、アジリジン系化合物が望ましい。また、主バインダは、モノマー重合の段階から、多官能性モノマーを少量加えて、合成した高分子であっても良い。
【0025】
(2)活物質
本実施形態の活物質としては、Liを可逆的に吸蔵及び放出できるものであれば、特に制限がなく、公知の活物質も使用できるがLiと合金化する材料を使用することが望ましい。特に、活物質に使用される材料が、黒鉛よりも容量が大きい材料であれば、本実施形態の効果が顕著に得られる。
【0026】
Liと合金化する材料としては、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Al、Ag、Zn、Hg、及びAuからなる群から選択された1つ以上の合金を使用できる。好ましくは、SiOxであり、より好ましくは、xは0以上1.5以下であることが好ましい。xが1.5より大きい場合、十分なLiの吸蔵及び放出量を確保することができない。また、このような活物質のみならず、黒鉛も活物質として加えてもよい。
【0027】
(3)導電助剤
導電助剤としては、例えば、カーボンブラックや天然黒鉛、人造黒鉛、さらには、酸化チタンや酸化ルテニウム等の金属酸化物、金属ファイバー等を使用できる。そのなかでもストラクチャー構造を呈するカーボンブラックが好ましく、特にその一種であるファーネスブラックやケッチェンブラック、アセチレンブラック(AB)が望ましい。なお、カーボンブラックと、その他の導電剤、例えば、気相成長炭素繊維(VGCF)との混合系も好ましい。
【0028】
(非水電解質二次電池)
図2は、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池100の構成例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、この非水電解質二次電池100は、負極10と、正極30と、負極10と正極30との間に充填された非水電解質20と、を備える。また、非水電解質20が液体電解質(すなわち、電解液)の場合、負極10と正極30との間にはセパレータが介在していてもよい。
【0029】
非水電解質二次電池に用いる電解液の溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の低粘度の鎖状炭酸エステル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の高誘電率の環状炭酸エステル、γ‐ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ビニレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、スルホラン、及びこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
電解液に含まれる電解質としては、特に制限がなく、公知のものも使用できる。本実施形態における電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiI、LiAlCl等及びそれらの混合物等を使用できる。好ましくは、LiBF、LiPFのうちの1種または2種以上を混合したリチウム塩である。
【0030】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、バインダは、高い機械強度を有する。例えば、主バインダは合剤層の破壊を抑制する。さらに、体積変化の大きい活物質表面を覆う補助バインダは、活物質表面に安定な皮膜を形成することができるので、繰り返し充放電に伴う継続的なSEI生成を抑制することが可能である。
【0031】
より詳細に説明すると、本実施形態は以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る非水電解質二次電池用の負極10は、集電体1と、集電体1上に形成された合剤層3とを備える。そして、合剤層3におけるバインダは、不可逆結合と可逆結合とが混在して該バインダ内に分子鎖間ネットワークを形成している。例えば、バインダは架橋処理がなされており、バインダを構成する少なくとも一つの高分子は、不可逆結合と可逆結合のいずれも含む架橋処理がなされている。このような構成によれば、バインダの機械強度が増し、繰り返しの充放電に伴う合剤層3の破壊を抑制できる。これにより、寿命特性に優れた非水電解質二次電池用の負極10を提供することができる。
【0032】
(2)また、上記の負極10において、バインダを構成する高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸化合物からなる高分子である。このような構成によれば、不可逆結合と可逆結合による架橋処理において、カルボン酸基を結合サイトとして用いることができる。
(3)また、上記の負極10において、バインダは、主バインダと補助バインダとを有する。主バインダは、分子量100万以上500万以下のエチレン性不飽和カルボン酸からなる高分子からなる。補助バインダは、分子量1000以上1万以下の、柔軟性を有するモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸化合物との共重合体からなる。
このような構成によれば、主バインダにより、合剤層3の形状を保持することができる。また、補助バインダにより、繰り返し充放電に伴う継続的なSEIの破壊と生成を抑制することができる。
【0033】
(4)また、上記の負極10において、バインダを構成する高分子の可逆結合による架橋処理には、2価以上の金属カチオン(例えば、カルシウムイオン)が用いられている。このような構成によれば、架橋処理をより適切に行うことができる。
(5)また、上記の負極10において、バインダを構成する主バインダは、不可逆結合による架橋処理がなされ、補助バインダは、不可逆結合による架橋処理がなされていない。すなわち、主バインダには不可逆結合による架橋と可逆結合による架橋とが混在し、補助バインダは不可逆結合による架橋を含まない。このような構成によれば、合剤層の形状保持のための高い破断強度を有する主バインダと、活物質の体積変化に追随しやすい伸びの高い補助バインダを実現することができる。
【0034】
(6)また、上記の負極10において、補助バインダは、マレイン酸部位を含んだ共重合体である。このような構成によれば、負極作製工程の中で、マレイン酸部位は脱水縮合されて環を生成する。すなわち、マレイン酸部位の一部が、隣り合うカルボキシル基と分子内酸無水化処理されて環状の炭化水素部位を生成する。この炭化水素部位は、カルボン酸基を含まないので、柔軟性を付与することができる。
【0035】
(7)また、上記の負極10において、バインダを構成する主バインダの不可逆結合による架橋処理密度は、主バインダの架橋結合できる反応基の全数に対し、0.01mol%〜3.0mol%に相当する反応基が架橋に関与する密度である。このような構成によれば、バインダをより適切に形成できる。
(8)また、上記の負極10において、主バインダ及び補助バインダの可逆結合による架橋に関与した各反応基数の総数は、主バインダの不可逆結合による架橋に関与した反応基数の1倍以上9倍以下である。このような構成によれば、バインダをより適切に形成できる。
【0036】
(9)また、上記の負極10において、バインダを構成する主バインダの不可逆結合による架橋剤は、アジリジン系化合物である。このような構成によれば、主バインダのカルボキシル基と架橋剤のアジリジン基とが反応して、不可逆な結合を、主バインダに与えることができる。
(10)また、上記の負極10において、主バインダと補助バインダは、一部が2価以上の金属カチオンによる塩となっている。例えば、主バインダと補助バインダに与えられる可逆結合による架橋剤は、カルシウム塩である。このような構成によれば、主バインダと補助バインダのカルボキシル基とカルシウムイオンが金属イオン結合を形成し、主バインダと補助バインダに可逆な結合を与えることができる。
(11)また、上記の負極10において、活物質は、ナノシリコンである。このような構成によれば、活物質の劣化が抑制され、負極のサイクル特性を向上させることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明は、実施例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
水92.54gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.96gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.15gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液2.34gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0038】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を0.5%まで水で希釈し、シャーレに移し、40℃で乾燥した。得られたフィルムを20×50mm角に切り取った。さらに、105℃減圧乾燥を5時間行った。23.3℃および46%の湿度に調整された調湿ブースに3日間保管した。以上により、引張試験用サンプルとしてのバインダを得た。後述するように、このバインダについて引張試験を行った。
【0039】
(引張試験とその結果)
本発明者は、実施例1で得られたバインダについて、引張試験を実施した。
図3(a)は、実施例1で作製したバインダの引張試験結果を示すグラフである。また、図3(b)は、この引張試験により破断した後のバインダを示す写真図である。
図3(a)に示すように、実施例1では、不可逆結合による架橋に、可逆結合による架橋を加えたことで、伸びが1000%を示した。これは、架橋ムラを抑制していることを示し、バインダ中の局所的な負荷の集中を抑制し、破断しにくいバインダを作製できたことによる。さらに、不可逆結合による架橋も備えることから、図3(b)に示すように、引張試験後のサンプルは、破断前とほぼ同じ形状及び寸法に復帰することができた。
【0040】
(実施例2)
実施例1で作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0041】
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。これを密度が1.0g/cmになるようプレスした。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。得られた電極を用いて、ハーフコインセルを作成してサイクル評価を行った。
【0042】
(実施例3)
水94.84gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)2.97gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.09gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液2.10gを加えてさらに攪拌した。以上により、3%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0043】
作製した3%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液41.91gに水1.78gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.13gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)4.41gとアセチレンブラック(AB)0.88gと気相成長炭素繊維(VGCF)0.88gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0044】
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。これを密度が1.0g/cmになるようプレスした。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0045】
(実施例4)
水94.32gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)2.96gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.09gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液2.62gを加えてさらに攪拌した。以上により、3%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0046】
作製した3%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液41.91gに水1.78gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.13gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)4.41gとアセチレンブラック(AB)0.88gと気相成長炭素繊維(VGCF)0.88gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0047】
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。これを密度が1.0g/cmになるようプレスした。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0048】
(実施例5)
水93.81gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)2.96gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.09gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液3.14gを加えてさらに攪拌した。以上により、3%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0049】
作製した3%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液41.91gに水1.78gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.13gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)4.41gとアセチレンブラック(AB)0.88gと気相成長炭素繊維(VGCF)0.88gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0050】
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。これを密度が1.0g/cmになるようプレスした。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0051】
(実施例6)
水94.11gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.93gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.67gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液0.29gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0052】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。プレスは行わなかった。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0053】
(実施例7)
水93.89gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.93gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.59gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液0.58gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0054】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。プレスは行わなかった。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0055】
(実施例8)
水93.22gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.95gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.37gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液1.48gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0056】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。プレスは行わなかった。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0057】
(実施例9)
水92.55gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.96gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.15gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液2.34gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0058】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。プレスは行わなかった。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0059】
(実施例10)
水92.32gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.97gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.07gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液2.64gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0060】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(2.5μm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。プレスは行わなかった。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0061】
(実施例11)
水92.55gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製、分子量500万)4.96gを加え、ディスパにて攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(日本触媒社製、PZ−33)の10倍希釈水溶液0.15gを加えて、20分間攪拌した。続いて、塩化カルシウムの100倍希釈水溶液2.34gを加えてさらに攪拌した。以上により、5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液を作製した。
【0062】
作製した5%架橋ポリアクリル酸ナトリウム水溶液33.53gに水8.06gを加えてディスパにて攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.18gを加えてさらに攪拌した。次に、Si粒子(100nm)5.88gとアセチレンブラック(AB)1.18gと気相成長炭素繊維(VGCF)1.18gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0063】
(比較例1)
水24.00gに、ポリアクリル酸ナトリウム(日本触媒社製)1.00gを加え、ディスパで攪拌した。続いて、この高分子溶液に、アジリジン系化合物(PZ−33)の10%水溶液0.10gを加えて、室温下、20分間攪拌した。続いて、50%アクリル酸マレイン酸共重合体水溶液0.11gを加えて攪拌した。次に、Si粒子(100nm)3.53gとアセチレンブラック(AB)0.71gと気相成長炭素繊維(VGCF)0.71gを加えて攪拌した。続いて、フィルミックスで本分散し、負極スラリを得た。
【0064】
得られた負極スラリを集電体に塗布した。集電体としては、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極スラリは、1.0mg/cmの目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分間予備乾燥した。最後に、105℃で5時間減圧乾燥を行った。これにより、電極(負極)を得た。
【0065】
(充放電評価とその結果)
(1)コインセルの作製
本発明者は、実施例2〜11、比較例1で得られた電極を用いて、コインセルを作成して繰り返しの充放電評価(すなわち、サイクル評価)を行った。
具体的には、実施例2〜11、比較例1で得られた電極(負極)と、Li極(正極)とを用いて、コインセルを作成した。そして、このコインセルについて、充電1600mA/g、放電1600mA/gで、0.01V〜1.0Vの電圧範囲で充放電を繰り返し、サイクル評価を行った。
【0066】
放電容量の維持率は、(所定のサイクルでの放電容量)/(1サイクル目での放電容量)×100で算出した。コインセルは2032型を使用した。電極は、直径15mmの円板に打ち抜き、Li極は、直径18mmの円板に打ち抜いて、評価を行なった。コインセルは、電極及びLi極、セパレータ(旭化成社、ハイポア ND525)を基本構成とした。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とが3:7(wt/wt)の混合溶液に、LiPFを1Mとなるように加えたものに、フルオロエチレンカーボネート(FEC)10質量%加えたものを使用した。
【0067】
(2)架橋量と寿命特性との関係について
本発明者は、実施例2〜5で得られたコインセルを用いてサイクル評価を行い、バインダの架橋量と、寿命特性との関係を調査した。
図4は、実施例2〜5のサイクル評価結果であり、バインダの架橋量と寿命特性との関係を示すグラフである(バインダの架橋結合した反応基の割合と、コインセルの寿命との関係を評価した結果を示す図である。)。ここでは、寿命特性として、各サイクルでの放電容量の維持率(%)を算出した。
【0068】
実施例2のバインダの架橋量は、バインダの架橋結合できる反応基の全数に対し、0.9mol%に相当する量である。実施例3のバインダの架橋量は、バインダの架橋結合できる反応基の全数に対し、1.3mol%に相当する量である。実施例4のバインダの架橋量は、バインダの架橋結合できる反応基の全数に対し、1.6mol%に相当する量である。実施例5のバインダの架橋量は、バインダの架橋結合できる反応基の全数に対し、1.9mol%に相当する量である。実施例2〜5のいずれも良好な維持率を示し、20サイクル後で70%以上の維持率を示した。また、0.01mol%より少ない架橋量であると架橋効果は得られなかった。
【0069】
(3)可逆結合/不可逆結合の割合と、寿命特性との関係について
本発明者は、実施例6〜10で得られたコインセルを用いてサイクル評価を行い、バインダにおける可逆結合/不可逆結合の割合と、寿命特性との関係を調査した。
図5は、実施例6〜10のサイクル評価結果であり、バインダにおける可逆結合/不可逆結合の割合と、寿命特性との関係を示すグラフである。ここでも、寿命特性として、各サイクルでの放電容量の維持率(%)を算出した。実施例6〜10を用いた評価では、架橋量を0.9mol%に固定し、可逆結合と不可逆結合の架橋の比を検討した。
【0070】
実施例6では、可逆結合による架橋で消費される主バインダ及び補助バインダの各反応基数の総和は、不可逆結合による架橋で消費される主バインダの反応基数の0.1倍である。つまり、実施例6では、可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数は、不可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数の0.1倍である。
実施例7では、可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数は、不可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数の0.3倍である。実施例8では、可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数は、不可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数の1倍である。実施例9では、可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数は、不可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数の4倍である。実施例10では、可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数は、不可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数の9倍である。
【0071】
放電容量の維持率は、実施例6〜10のいずれも15サイクル後に80%以上の維持率を示した。特に、望ましくは、実施例8および実施例9、実施例10に示す1倍以上の架橋量である。つまり、可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数が、不可逆結合による架橋で消費されるバインダの反応基数よりも多いときが、特に望ましい。このとき、放電容量の維持率は85%以上となり、寿命特性がより優れることがわかった。
【0072】
(4)ナノシリコンの有無と寿命との関係について
本発明者は、実施例11、比較例1で得られたコインセルを用いてサイクル評価を行い、可逆結合による架橋の有無と、寿命特性との関係を調査した。
図6は、実施例11、比較例1のサイクル評価結果であり、バインダにおける可逆結合の有無と、容量との関係を示すグラフである。ここでは、寿命特性として、各サイクルでの、活物質1gあたりの容量値(mAhg−1)を求めた。
【0073】
なお、実施例11では、実施例2と実施例9に相当するバインダを用いた。また、実施例11、比較例1では、負極の活物質にそれぞれナノシリコンを用いた。ナノシリコンを用いることで、寿命試験における活物質の劣化による要素を抑え、バインダの効果を反映しやすい結果になる。
図6に示すように、実施例11の可逆結合と不可逆結合による架橋は、150サイクルにわたり、安定な容量を得ることができる。一方で、比較例1の不可逆結合のみの架橋は、徐々に容量が低下した。これは、バインダの安定性の差である。
【0074】
(付記)
以上、本発明について実施形態及び実施例を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態及び実施例に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更または改良を加えることが可能であり、また、上記実施形態及び実施例を任意に組み合わせてもよい。その様な変更等が加えられた態様も本発明の技術的範囲に含まれ得る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係る非水電解質二次電池用の負極、非水電解質二次電池の負極用バインダ及び非水電解質二次電池は、各種携帯用電子機器の電源、また、高エネルギー密度が求められる電気自動車等の駆動用蓄電池、さらに、ソーラーエネルギーや風力発電等の各種エネルギーの蓄電装置、あるいは家庭用電気器具の蓄電源等の電極に用いられる。
【符号の説明】
【0076】
1 集電体
3 合剤層
10 負極(非水電解質二次電池用の負極)
20 非水電解質
30 正極
100 非水電解質二次電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6