特許第6973411号(P6973411)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973411接着剤組成物並びにこれを用いたカバーレイフィルム、ボンディングシート、銅張積層板及び電磁波シールド材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973411
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】接着剤組成物並びにこれを用いたカバーレイフィルム、ボンディングシート、銅張積層板及び電磁波シールド材
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20211111BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 163/02 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 163/04 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 7/22 20180101ALI20211111BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20211111BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20211111BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20211111BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C09J123/26
   C09J151/06
   C09J163/00
   C09J163/02
   C09J163/04
   C09J11/06
   C09J11/04
   C09J7/22
   H01B1/20 B
   B32B7/12
   B32B15/088
   B32B27/34
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-557728(P2018-557728)
(86)(22)【出願日】2017年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2017045038
(87)【国際公開番号】WO2018116967
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年9月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-249501(P2016-249501)
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
(72)【発明者】
【氏名】山田 成志
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−088332(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190411(WO,A1)
【文献】 特許第5700166(JP,B2)
【文献】 国際公開第2016/042837(WO,A3)
【文献】 特開2007−251138(JP,A)
【文献】 特開2016−151046(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/047289(WO,A3)
【文献】 特開2014−141603(JP,A)
【文献】 特開2013−159762(JP,A)
【文献】 特開2016−089090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00− 5/10
7/00− 7/50
9/00−201/10
B32B 1/00− 43/00
H01B 1/00− 1/24
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)変性ポリオレフィン系樹脂と、(B)エポキシ樹脂とを含有する接着剤組成物であって、
前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィン樹脂がα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、
前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)が、変性ポリプロピレン樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂(B)の含有量は、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部であり、
前記エポキシ樹脂(B)が2種類以上のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、カバーレイフィルム用、銅張積層板用、又は、電磁波シールド材用の接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(B)が、ノボラック型エポキシ樹脂を含む請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂を含む請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有するエポキシ樹脂を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記α,β−不飽和カルボン酸の誘導体が、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合が、前記変性ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して0.1〜20質量%である請求項1〜のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
更に、(C)アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物を含有し、前記アルコキシシリル基含有イミダゾール系化合物(C)の含有量が、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.3〜5質量部である請求項1〜のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
更に、(D)酸化防止剤を含有し、前記酸化防止剤(D)の含有量が、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部である請求項1〜のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
更に、(E)リン含有化合物を含有し、前記リン含有化合物(E)の含有量が、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.5〜50質量部である請求項1〜のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
更に、(F)導電フィラーを含有し、前記導電フィラー(F)の含有量が、前記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び前記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、10〜350質量部である請求項1〜のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1〜1のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層が、ポリイミドフィルムの片面に形成されていることを特徴とするカバーレイフィルム。
【請求項12】
請求項1〜1のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層が、ポリイミドフィルムの少なくとも片面と銅箔との間に積層されていることを特徴とする銅張積層板。
【請求項13】
請求項1〜1のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を構成成分とすることを特徴とする電磁波シールド材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性、はんだ耐熱性及び誘電特性に優れ、電子部品の接着に適した接着剤組成物、並びにこれを用いたカバーレイフィルム、ボンディングシート、銅張積層板及び電磁波シールド材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高密度化等の多様化に伴い、フレキシブルプリント配線板関連製品(以下、「FPC関連製品」ともいう)の需要が増大している。FPC関連製品としては、例えば、ポリイミドフィルムと銅箔とを貼り合わせたフレキシブル銅張積層板、フレキシブル銅張積層板に回路を形成して得られたフレキシブルプリント配線板、フレキシブルプリント配線板と補強板とを貼り合わせた補強板付きフレキシブルプリント配線板、フレキシブル銅張積層板或いはフレキシブルプリント配線板を重ねて積層した多層板、基材フィルムに銅配線を貼り合わせたフレキシブルフラットケーブル等がある。これら製品のうち、フレキシブル銅張積層板を製造する場合、ポリイミドフィルムと銅箔との接着に、通常、接着剤が用いられる。
【0003】
また、フレキシブルプリント配線板を製造する場合、配線部分を保護するために、通常、「カバーレイフィルム」と呼ばれるフィルムが用いられる。このカバーレイフィルムは、絶縁樹脂層と、その表面に形成された接着剤層とを備え、絶縁樹脂層の形成には、ポリイミド樹脂組成物が広く用いられている。そして、例えば、熱プレス等を利用して、配線部分を有する面に、接着剤層を介してカバーレイフィルムを貼り付けることにより、フレキシブルプリント配線板が製造される。このとき、カバーレイフィルムの接着剤層は、配線部分及びフィルム基層の両方に対して、強固な接着性が必要である。
【0004】
また、プリント配線板としては、基板の表面に、導体層と有機絶縁層とを交互に積層するビルドアップ方式の多層プリント配線板が知られている。このような多層プリント配線板を製造する場合、導体層及び有機絶縁層を接合するために、「ボンディングシート」と呼ばれる、絶縁接着層形成材料が用いられる。絶縁接着層には、配線部分への埋め込み性や回路を形成している導体部の構成材料(銅等)及び有機絶縁層(ポリイミド樹脂等)の両方に対して、強固な接着性が必要である。
【0005】
このようなFPC関連製品に使用される接着剤としては、エポキシ樹脂及びこのエポキシ樹脂と高い反応性を有する熱可塑性樹脂を含有するエポキシ系接着剤組成物が提案されている。
例えば、特許文献1には、エポキシ系接着剤を主成分とし、更に、オレフィン−酸系エステル共重合ゴム及び硬化剤を含有する接着剤を用いる技術が開示されており、具体的には、エチレン−アクリル酸エステル共重合ゴム/エポキシ樹脂系接着剤が用いられている。
特許文献2には、(A)エポキシ当量1000以下のビスフェノール型エポキシ樹脂、(B)エポキシ当量200〜500のノボラック型エポキシ樹脂、(C)エポキシ当量400〜2500、重量平均分子量20000以上で、かつ分子末端以外の分子鎖中にグリシジル基を有し、スチレンに由来する単位を有する熱可塑性エラストマー、(D)重量平均分子量10000以上のビスフェノール型エポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂、(E)エポキシ樹脂硬化剤、(F)硬化促進剤、(G)無機充填剤、及び、(H)溶剤を含有するフレキシブル配線板用接着剤組成物が開示されており、具体的には、グリシジル基含有熱可塑性エラストマー/エポキシ樹脂系接着剤が用いられている。
特許文献3には、エポキシ樹脂を含有するベース樹脂と、スチレン−マレイン酸共重合体とを含有するエポキシ系接着剤が開示されている。これらの文献に記載されている接着剤組成物は、ゴムやエラストマー成分のカルボキシ基とエポキシ樹脂との反応性を利用することにより、速やかな硬化反応を実現し、接着性にも優れている。
また、特許文献4には、プリプレグの製造に用いる接着剤として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(I)、芳香族ビニル化合物と無水マレイン酸とを必須成分としてなる共重合樹脂(II)および1分子中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール化合物(III)を必須成分としてなるエポキシ樹脂組成物が開示されている。
上記接着剤には、従来の接着機能に加えて、例えば、放熱性や導電性といった機能が要求されることも増えてきており、その要求を達成するために、接着剤に多量の無機フィラーが添加されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−235767号公報
【特許文献2】特開2001−354936号公報
【特許文献3】特開2007−2121号公報
【特許文献4】特開平10−17685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、需要が急速に拡大している携帯電話、情報機器端末等の移動体通信機器においては、大量のデータを高速で処理する必要があるため、信号の高周波数化が進んでいる。信号速度の高速化、及び、信号の高周波数化に伴い、FPC関連製品に用いる接着剤には、接着後、硬化した材料(硬化物)に対して、高周波数領域における優れた誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)が求められている。
しかしながら、上記文献に記載された接着剤組成物の硬化物は、極超短波のマイクロ波帯(1〜3GHz)における誘電特性が十分ではなかった。
また、プリント配線板には、電子部品等を搭載する際に用いるはんだ材料の鉛フリー対応が進むにつれて、260℃程度のリフロー温度におけるはんだ耐熱性が要求される。例えば、ポリイミドフィルム及び金めっきされた銅箔が接着剤により接合されてなるフレキシブル銅張積層板をリフロー工程に供した後においても、良好な接着状態を有することが求められている。
【0008】
本発明は、ポリイミド樹脂等を含むフィルム、銅等の金属又は合金を含む箔等の各種物品に対する接着性が良好であるだけでなく、優れた誘電特性を有する硬化物を与える接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、リフロー工程を適用してFPC関連製品を製造するために用いられるフレキシブル銅張積層板等の前駆体に対してはんだ耐熱性を付与することができる接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の構造を有する変性ポリオレフィン系樹脂と、少なくとも2種のエポキシ樹脂とを含有し、エポキシ樹脂の合計含有量を特定の割合とする接着剤組成物により、優れた接着性だけでなく、優れた誘電特性及びはんだ耐熱性が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1.(A)変性ポリオレフィン系樹脂と、(B)エポキシ樹脂とを含有する接着剤組成物であって、
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィン樹脂がα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、
上記エポキシ樹脂(B)の含有量は、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部であり、
上記エポキシ樹脂(B)が2種類以上のエポキシ樹脂を含むことを特徴とする接着剤組成物。
2.上記エポキシ樹脂(B)が、ノボラック型エポキシ樹脂を含む上記項1に記載の接着剤組成物。
3.上記エポキシ樹脂(B)が、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂を含む上記項2に記載の接着剤組成物。
4.上記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有するエポキシ樹脂を含む上記項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
5.上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)が、変性ポリプロピレン樹脂を含む上記項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
6.上記α,β−不飽和カルボン酸の誘導体が、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である上記項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
7.上記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分の含有割合が、上記変性ポリオレフィン系樹脂100質量%に対して0.1〜20質量%である上記項1〜6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
8.更に、(C)アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物を含有し、上記アルコキシシリル基含有イミダゾール系化合物(C)の含有量が、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び上記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.3〜5質量部である上記項1〜7のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
9.更に、(D)酸化防止剤を含有し、上記酸化防止剤(D)の含有量が、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び上記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.1〜10質量部である上記項1〜8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
10.更に、(E)リン含有化合物を含有し、上記リン含有化合物(E)の含有量が、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び上記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、0.5〜50質量部である上記項1〜9のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
11.更に、(F)導電フィラーを含有し、上記導電フィラー(F)の含有量が、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)及び上記エポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、10〜350質量部である上記項1〜10のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
12.上記項1〜11のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層が、ポリイミドフィルムの片面に形成されていることを特徴とするカバーレイフィルム。
13.上記項1〜11のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層が、離型性フィルムの表面に形成されていることを特徴とするボンディングシート。
14.上記項1〜11のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層が、ポリイミドフィルムの少なくとも片面と銅箔との間に積層されていることを特徴とする銅張積層板。
15.上記項1〜11のいずれか1項に記載の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を構成成分とすることを特徴とする電磁波シールド材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接着剤組成物は、ポリイミド樹脂等を含むフィルム、銅等の金属又は合金を含む箔等の各種物品に対して接着性に優れるだけでなく、誘電特性(低誘電率及び低誘電正接)等に優れた硬化物を与える。また、本発明の接着剤組成物は、リフロー工程を適用してFPC関連製品を製造するために用いられる前駆体に対してはんだ耐熱性を付与することができる。従って、本発明の接着剤組成物及びこれを用いて形成された、ボンディングシート、カバーレイフィルム、銅張積層板等の接着剤層付き積層体は、FPC関連製品の製造等に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
1.接着剤組成物
本発明の接着剤組成物は、(A)変性ポリオレフィン系樹脂と、(B)エポキシ樹脂とを含有する接着剤組成物であって、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィン樹脂がα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤でグラフト変性された樹脂であり、上記エポキシ樹脂(B)の含有量は、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部であり、上記エポキシ樹脂(B)が2種類以上のエポキシ樹脂であることを特徴とする。本発明の接着剤組成物は、溶剤、添加剤等を、更に含有することができる。
【0013】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、ポリオレフィン樹脂に由来する部分と、変性剤に由来するグラフト部分とを有する樹脂であり、好ましくは、後述する溶剤に溶解する樹脂である。
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、好ましくは、ポリオレフィン樹脂の存在下に、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤をグラフト重合することにより得られたものである。上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)のグラフト重合による製造は、公知の方法で行うことが可能であり、製造の際にはラジカル開始剤を用いてもよい。上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)の具体的な製造方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂をトルエン等の溶剤に加熱溶解し、変性剤及びラジカル開始剤を添加する溶液法、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、ポリオレフィン樹脂、変性剤及びラジカル開始剤を溶融混練する溶融法等が挙げられる。溶融法の場合、ポリオレフィン樹脂、変性剤及びラジカル開始剤の使用方法は、特に限定されず、これらを、反応系に一括添加しても、逐次添加してもよい。
【0014】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)を製造する場合には、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む変性剤のグラフト効率を向上させるための変性助剤、樹脂の安定性を調整するための安定剤等を、更に使用することができる。
【0015】
グラフト重合に供されるポリオレフィン樹脂は、オレフィンに由来する構造単位を有するものであれば、特に限定されない。上記ポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4−メチル−1−ペンテン等の炭素原子数2〜20のオレフィンの単独重合体又は共重合体が好ましく用いられる。本発明においては、炭素原子数2〜6のオレフィンの単独重合体又は共重合体が特に好ましい。ポリオレフィン樹脂中の、上記オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、任意に選択できる。尚、グラフト重合に供されるポリオレフィン樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂及び非変性ポリオレフィン樹脂のいずれでもよい。本発明の接着剤組成物を用いて、難接着性被着体への接着を行う場合は、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、非変性ポリオレフィン樹脂の変性物であることが好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体又はエチレン−プロピレン−ブテン共重合体の変性樹脂、即ち、変性ポリプロピレン樹脂を含むことがより好ましい。この場合、プロピレン単位の含有割合が50モル%以上であるポリオレフィン樹脂を用いて得られた変性ポリプロピレン樹脂を含む接着剤組成物により、更に優れた接着性を得ることができる。従って、本発明において、上記ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレンを含むことが特に好ましい。また、プロピレン単位の含有割合が50モル%以上であるポリオレフィン樹脂を用いて得られた変性ポリオレフィン系樹脂(A)を含有する接着剤組成物を用いると、例えば、2つの部材を接着した後の接着部(接着層)に柔軟性を付与することができる。ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に制限されない。
【0016】
変性剤は、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体の少なくとも一方を含む。α,β−不飽和カルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸等が挙げられる。また、α,β−不飽和ポリカルボン酸の誘導体としては、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等が挙げられる。上記変性剤としては、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸及び無水シトラコン酸が好ましく、無水イタコン酸及び無水マレイン酸が、接着性の点で特に好ましい。変性剤を用いる場合、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体から選ばれる1種以上であればよく、α,β−不飽和カルボン酸1種以上とその誘導体1種以上の組み合わせ、α,β−不飽和カルボン酸2種以上の組み合わせ、又は、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体2種以上の組み合わせとすることもできる。
【0017】
本発明に係る変性剤は、目的に応じて、α,β−不飽和カルボン酸等に加えて、他の化合物(他の変性剤)を含むことができる。他の化合物(他の変性剤)としては、例えば、アクリル酸又はメタクリル酸(以下、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を「(メタ)アクリル」という)、(メタ)アクリル酸の誘導体、芳香族ビニル化合物、シクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらの他の化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上記(メタ)アクリル酸の誘導体として、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。
CH2=CR1COOR2 (1)
(式中、R1は、水素原子又はメチル基であり、R2は、炭化水素基である。)
上記一般式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基であり、好ましくはメチル基である。R2は、炭化水素基であり、好ましくは炭素原子数8〜18のアルキル基、炭素原子数8〜18のシクロアルキル基又は炭素原子数8〜18のアリール基である。
上記一般式(1)で示される化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、耐熱接着性が改良されることから、他の変性剤は、炭素原子数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。炭素原子数8〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル及び(メタ)アクリル酸ステアリルが特に好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、イソシアネート基含有(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン等が挙げられる。
上記変性剤として、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体と、他の変性剤とを併用することで、変性剤によるグラフト率を向上させたり、得られる変性ポリオレフィン系樹脂(A)の溶媒に対する溶解性を向上させたり、この変性ポリオレフィン系樹脂(A)を含有する接着剤組成物による接着性を更に向上させたりすることができる。
【0020】
上記のように、変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、少なくとも変性剤に由来するグラフト部分を有する。以下、変性ポリオレフィン系樹脂(A)に含まれるグラフト部分の含有割合(以下、「グラフト質量」ともいう)について、説明する。
【0021】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)は、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分を有する。上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)において、α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分のグラフト質量は、接着剤組成物による接着性の観点から、変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量%に対して、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは0.2〜18質量%である。グラフト質量が0.1質量%以上であると、溶媒に対する変性ポリオレフィン系樹脂(A)の溶解性に優れ、金属等からなる被着体に対する接着性に特に優れる。また、グラフト質量が20質量%以下であると、樹脂等からなる被着体に対する接着性に特に優れる。
【0022】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)におけるα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来するグラフト部分のグラフト質量は、アルカリ滴定法により求めることができるが、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体が酸基を持たないイミド等であった場合、グラフト質量は、フーリエ変換赤外分光法で求めることができる。
【0023】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)が、他の変性剤である、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来するグラフト部分を含む場合、そのグラフト質量は、変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量%に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.3〜25質量%である。上記(メタ)アクリル酸エステルに由来するグラフト部分のグラフト質量が0.1〜30質量%であると、溶媒に対する変性ポリオレフィン系樹脂(A)の溶解性に優れ、接着剤組成物が、後述する他の樹脂又はエラストマーを含む場合にこれらとの相溶性に優れ、被着体に対する接着性を更に向上させることができる。
【0024】
上記グラフト部分が、上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来するグラフト部分を含む場合、得られた変性ポリオレフィン系樹脂(A)におけるグラフト部分のグラフト質量は、フーリエ変換赤外分光法で求めることができる。
【0025】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)を、ラジカル開始剤を用いて製造する場合、ラジカル開始剤は、公知のものから、適宜、選択できる。本発明においては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0026】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)を製造する場合、変性助剤、安定剤等を用いることができる。変性助剤としては、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。また、安定剤としては、ヒドロキノン、ベンゾキノン、ニトロソフェニルヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0027】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000〜250,000であり、より好ましくは50,000〜200,000である。重量平均分子量(Mw)が30,000〜250,000であることにより、溶媒への溶解性に優れ、接着剤組成物の、被着体に対する初期接着性に優れ、更に、接着後の接着部に対する耐溶剤性にも優れる。
【0028】
上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)の酸価は、好ましくは0.1〜50mgKOH/gであり、より好ましくは0.5〜40mgKOH/g、更に好ましくは1.0〜30mgKOH/gである。この酸価が0.1〜50mgKOH/gである変性ポリオレフィン系樹脂(A)を含有する接着剤組成物を用いることにより、十分に硬化した接着部を形成することができ、良好な接着性、耐熱性及び樹脂流れ出し性が得られる。
【0029】
本発明の接着剤組成物において、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の固形分(溶媒を除く)100質量%に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。但し、上限は、好ましくは99質量%である。この含有量が50質量%未満の接着剤組成物では、形成される接着剤層の柔軟性が得られない場合があり、また、得られる一体化物に反り等の変形が生じる場合がある。
【0030】
上記エポキシ樹脂(B)は、100〜200℃程度の加熱条件下、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)中のカルボキシ基と反応することで、反応生成物の、被着体に対する高い接着性や、反応生成物を含む硬化物が発揮する耐熱性を発現させる成分である。
【0031】
上記エポキシ樹脂(B)は、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂の水素添加物、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂等の脂環骨格を有するエポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;リン含有エポキシ樹脂;ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂;トリフェニルメタン型エポキシ樹脂;テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂等が挙げられる。尚、上記エポキシ樹脂(B)は、これらに限定されるものではない。
【0032】
上記エポキシ樹脂(B)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、及び、脂環骨格を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0033】
本発明に係るエポキシ樹脂(B)が、一分子中に2個以上のエポキシ基を有することにより、変性ポリオレフィン系樹脂(A)との反応で架橋構造を効率よく形成させ、得られる硬化物に高い耐熱性を発現させることができる。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、2種以上のエポキシ樹脂を含有することを特徴とする。2種以上のエポキシ樹脂を含有することにより、相乗効果で、被着体との接着性、並びに、硬化物の耐熱性及び誘電特性を満足することができる。本発明において、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を2種以上用いることにより、この効果を確実に得ることができる。
具体的には、被着体との接着性に優れた接着剤組成物を得るためには、ノボラック型エポキシ樹脂を含有することが好ましく、誘電特性に優れた硬化物を与える接着剤組成物を得るためには、脂環骨格を有するエポキシ樹脂を含有することが好ましい。また、これらのエポキシ樹脂を併用すると、接着性や誘電特性が相乗的に良好となる。ノボラック型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂がより好ましく、また、脂環骨格を有するエポキシ樹脂としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。
【0035】
本発明において、上記効果を確実に得るためのエポキシ樹脂(B)は、以下の通りである。
(1)脂環骨格を有するエポキシ樹脂と、ノボラック型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂のいずれか一方とを併用し、両者の含有割合を、両者の合計100質量%とした場合に、好ましくは20〜95質量%及び5〜80質量%、より好ましくは30〜85質量%及び15〜70質量%とする態様
(2)ノボラック型エポキシ樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とを併用し、両者の含有割合を、両者の合計100質量%とした場合に、好ましくは20〜95質量%及び5〜80質量%、より好ましくは30〜85質量%及び15〜70質量%とする態様
【0036】
本発明の接着剤組成物に含まれる上記エポキシ樹脂(B)の合計含有量の割合は、被着体との接着性、並びに、硬化物の耐熱性及び誘電特性の観点から、上記変性ポリオレフィン系樹脂(A)100質量部に対して1〜20質量部であり、好ましくは3〜15質量部である。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)を含有することができる。
イミダゾール系化合物は、一般的にエポキシ樹脂の硬化剤として使用されるが、本発明において、変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)と、上記アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)とを併含する接着剤組成物を用いると、特異的に金めっきされた銅箔に対する接着性が向上する。これは、アルコキシシリル基及びイミダゾール構造が金及び変性ポリオレフィン系樹脂(A)のいずれとも高い親和性を示すために、その相互作用により接着性が向上すると推定される。更に、イミダゾール構造は、エポキシ樹脂(B)とも反応し得るため、ポリイミドフィルム及び金めっきされた銅箔が、アルコキシシリル基含有イミダゾール系化合物(C)を含有する接着剤組成物により接合されてなるフレキシブル銅張積層板を、リフロー工程に供した場合でも、この優れた接着性を維持することができると推定される。
【0038】
上記アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)としては、下記一般式(2)で表される化合物又はその酸付加物が好ましい。このような化合物を含有する接着剤組成物は、上記効果を十分に発現させることができる。
【化1】
(式中、R1及びR2は、それぞれ、独立して、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる1種であり、R3及びR4は、それぞれ、独立して、水素原子、及び、置換又は非置換のアルキル基からなる群より選ばれる1種であり、R3の少なくとも1つは置換又は非置換のアルキル基である。nは1〜3である。R5は、アルキレン鎖又はアルキレン鎖の一部が、下記式(3)、(4)、(5)及び(6)で表される基の少なくとも1つに置換された2価の基である。)
【化2】
(式中、R6は、水素原子又はヒドロキシ基である。)
【化3】
(式中、R7は、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基から選ばれる1種である。)
【化4】
【化5】
(式中、R8及びR9は、それぞれ、独立して、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基から選ばれる1種である。)
【0039】
上記一般式(2)で表されるアルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物は、一分子中にイミダゾール基及びアルコキシシリル基を共に有する化合物である。イミダゾール基を構成するイミダゾール環は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基を有していてもよいが、上記一般式(2)のアルコキシシリル基含有イミダゾール系化合物のR1又はR2は、それぞれ、独立して、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる1種である。
上記一般式(2)で表される化合物において、アルコキシシリル基及びイミダゾール基は、好ましくは、炭素原子数1〜10のアルキレン鎖又は当該アルキレン鎖の一部が式(3)、(4)、(5)及び(6)で表される基の少なくとも1つに置換された2価の基を介して結合されている。上記一般式(2)で表される化合物のうち、下記一般式(7)及び(8)で表される化合物が好ましい。
【化6】
(式中、R1及びR2は、それぞれ、独立して、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる1種であり、R3及びR4は、それぞれ、独立して、水素原子、及び、置換又は非置換のアルキル基からなる群より選ばれる1種であり、R3の少なくとも1つは置換又は非置換のアルキル基であり、R6は、水素原子又はヒドロキシ基である。mは1〜30であり、nは1〜3である。)
【化7】
(式中、R1及びR2は、それぞれ、独立して、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基からなる群より選ばれる1種であり、R3及びR4は、それぞれ、独立して、水素原子、及び、置換又は非置換のアルキル基からなる群より選ばれる1種であり、R3の少なくとも1つは置換又は非置換のアルキル基であり、R7は、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、及び、置換又は非置換のアリール基から選ばれる1種である。mは1〜30であり、nは1〜3である。)
【0040】
上記アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)の具体例としては、1−(2−ヒドロキシ−3−トリメトキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−トリエトキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−トリプロポキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−トリブトキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−トリエトキシシリルプロポキシプロピル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシ−3−トリエトキシシリルプロポキシプロピル)−4−メチルイミダゾール、1−(3−オキソ−4−トリメトキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾール、1−トリメトキシシリルプロピルアミノ)−イミダゾール等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(2)で表される化合物は、イミダゾール、2−アルキルイミダゾール、2,4−ジアルキルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール等のイミダゾール化合物と、3−グリシドキシアルキルシラン化合物等との反応により得ることができる。上記アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)としては、上記一般式(2)で表される化合物だけでなく、この化合物の塩又は酸付加物を用いることができる。付加する酸としては、酢酸、乳酸、サリチル酸、安息香酸、アジピン酸、フタル酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、トリメリット酸、リン酸、イソシアヌル酸等が挙げられる。これらの酸は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記一般式(2)で表される化合物のアルコキシシリル基の加水分解により生じるシラノール化合物、シラノール化合物の脱水縮合反応により生じるポリオルガノシロキサン化合物等を用いることもできる。
【0042】
上記一般式(7)で示される化合物は、イミダゾール、2−アルキルイミダゾール、2,4−ジアルキルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール等のイミダゾール化合物と、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−グリシドキシプロピルアルコキシジアルキルシラン等の3−グリシドキシプロピルシラン化合物とを反応させる等により得ることができる。これらのうち、特に好ましい原料は、イミダゾール及び3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、反応生成物は、1−(2−ヒドロキシ−3−トリメトキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾールである。
上記一般式(8)で示される化合物は、イミダゾール化合物と、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等とを反応させる等により得ることができる。
【0043】
上記アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)として、上記一般式(7)で表される化合物又はその酸付加物及び上記一般式(8)で示される化合物又はその酸付加物を含有する接着剤組成物は、耐熱性が良好な硬化物を与え、好ましい組成物である。また、これらの化合物は、溶剤に対する溶解性も良いので好ましく、より好ましくは上記一般式(7)で表される化合物の酸付加物である。
【0044】
本発明の接着剤組成物が上記アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)を含有する場合、その含有量は、変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、金めっきされた銅箔に対する密着性及び耐リフロー性の観点から、好ましくは0.3〜5.0質量部であり、より好ましくは0.5〜3.0質量部である。上記アルコキシシリル基含有イミダゾール系化合物(C)の含有量が少ない場合は、本発明の接着剤組成物の金めっきされた銅箔に対する密着性と耐リフロー性が低下し、一方、この含有量が多すぎると、接着剤組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0045】
本発明の接着剤組成物は、それぞれの目的に応じて、酸化防止剤(D)、リン含有化合物(E)、導電フィラー(F)等を含有することができる。
【0046】
上記酸化防止剤(D)の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノ−ル、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト、テトラキス〔メチレン−3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ−ト〕メタン等のフェノ−ル系酸化防止剤;ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネ−ト、ジミリスチル−3,3’−ジチオプロピオネ−ト等のイオウ系酸化防止剤;トリスノニルフェニルホスファイト及びトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の接着剤組成物が酸化防止剤(D)を含有する場合には、本発明の接着剤組成物に含まれる成分の酸化分解を抑制することができ、接着剤組成物の硬化物の誘電特性の悪化やはんだ処理後の接着性低下を抑制することができる。
本発明の接着剤組成物が、酸化防止剤(D)を含有する場合、酸化防止剤(D)の含有量は、変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、好ましくは0.1〜10質量部であり、より好ましくは0.2〜5質量部である。上記酸化防止剤(D)の含有料がこの範囲であると、接着剤組成物の酸化を抑制することができる。
【0047】
上記リン含有化合物(E)は、上記リン系酸化防止剤以外の化合物であり、具体例としては、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、リン酸グアニジン、ポリリン酸グアニジン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アミドアンモニウム、ポリリン酸アミドアンモニウム、リン酸カルバメート、ポリリン酸カルバメート、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記リン含有化合物(E)は、本発明の接着剤組成物に難燃性を向上させる効果を与える。 本発明の接着剤組成物が、リン含有化合物(E)を含有する場合、リン含有化合物(E)の含有量は、接着剤としての特性を悪化させない限りにおいて、特に限定されないが、変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、好ましくは0.5〜50質量部であり、より好ましくは1〜30質量部である。
【0048】
上記導電フィラー(F)の具体例としては、カ−ボンブラック;銅粉、アルミニウム粉、銀粉等の金属粉等が挙げられる。
上記導電フィラー(F)は、本発明の接着剤組成物に耐熱性を向上させると共に、接着剤層に導電性を付与する作用を有する。従って、上記導電フィラー(F)を含有する接着剤組成物は、導電性接着剤の構成成分又は電磁波シールド材の形成材料として、特に好適に用いることができる。
本発明の接着剤組成物が、導電フィラー(F)を含有する場合、その含有量は、接着剤層の耐熱性及び導電性の観点から、変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の合計を100質量部とした場合に、好ましくは10〜350質量部である。該含有量が多すぎると、金めっきされた銅箔等に対する接着性が十分でない場合がある。
【0049】
また、本発明の接着剤組成物には、他の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、他の難燃剤、アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)以外の硬化剤又は硬化促進剤、他のフィラー、カップリング剤、レベリング剤、消泡剤、顔料、溶剤等を、接着剤組成物の機能に影響を与えない程度に含有することができる。
【0050】
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記粘着付与剤としては、例えば、クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、p−t−ブチルフェノール−アセチレン樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、キシレン−ホルムアルデヒド樹脂、石油系炭化水素樹脂、水素添加炭化水素樹脂、テレピン系樹脂等を挙げることができる。これらの粘着付与剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
他の難燃剤は、有機系難燃剤及び無機系難燃剤のいずれでもよい。有機系としては、メラミン、メラム、メラミンシアヌレート等のトリアジン系化合物や、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、トリアゾール系化合物、テトラゾール化合物、ジアゾ化合物、尿素等の窒素系難燃剤;シリコーン化合物、シラン化合物等のケイ素系難燃剤等が挙げられる。また、無機系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化ニッケル等の金属酸化物;炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水和ガラス等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用することができる。
【0053】
他の硬化剤としては、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。アミン系硬化剤としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のメラミン樹脂;ジシアンジアミド、4,4’−ジフェニルジアミノスルホン等が挙げられる。また、酸無水物系硬化剤としては、芳香族系酸無水物、及び脂肪族系酸無水物が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の接着剤組成物が他の硬化剤を含有する場合、他の硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部であり、より好ましくは5〜70質量部である。
【0054】
上記硬化促進剤は、変性ポリオレフィン系樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応を促進させるものであり、上記アミン系硬化剤を除く第三級アミン系硬化促進剤又は第三級アミン塩系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用することができる。
【0055】
第三級アミン系硬化促進剤としては、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。
【0056】
第三級アミン塩系硬化促進剤としては、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、o−フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩や、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、o−フタル酸塩、フェノール塩又はフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
【0057】
イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−メチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0058】
本発明の接着剤組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは2〜5質量部である。硬化促進剤の含有量が上記範囲内であれば、優れた接着性及び耐熱性を有する。
【0059】
また、上記カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシラン等のシラン系カップリング剤;チタネート系カップリング剤;アルミネート系カップリング剤;ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
他のフィラーの具体例としては、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、フュームドシリカ、他のシリカ等の粉体からなる無機フィラー;フッ素樹脂パウダー等の樹脂フィラー等が挙げられる。他のフィラーの添加効果は、本発明の接着剤組成物により形成される接着剤層に耐熱性を向上させること等である。また、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等の比較的熱伝導性の高いフィラーを用いることで、接着剤層の熱伝導性を向上させることができる。更にフュームドシリカを用いることで、接着剤組成物の塗工性を改良することができる。
【0061】
上記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の接着剤組成物が、溶剤を含む溶液又は分散液(樹脂ワニス)であると、基材への塗工及び塗膜の形成を円滑に行うことができ、所望の厚さの接着剤層を容易に得ることができる。
本発明の接着剤組成物が溶剤を含む場合、この溶剤の含有量は、接着剤層の形成を含む作業性等の観点から、好ましくは20〜97質量%であり、より好ましくは50〜90質量%である。溶剤の含有量が上記範囲内であると、溶液の粘度が適度であり、均一に塗工し易い。
【0062】
本発明の接着剤組成物は、好ましくは、変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)が溶剤に溶解し、他の成分が、この溶液に分散又は溶解した組成物である。
【0063】
本発明の接着剤組成物は、変性ポリオレフィン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及びその他成分を混合することにより製造することができる。原料成分の混合方法は、均一な組成物が得られる限りにおいて、特に限定されない。
【0064】
本発明の接着剤組成物は、同一材料又は異なる材料からなる2つの部材同士の接着に好適である。また、本発明の接着剤組成物は、1の部材の表面に、接着性を有する層(接着剤層)を有する製品、即ち、接着剤層付き積層体の製造に好適である。後者の場合、溶剤を含む液状の接着剤組成物を、部材の表面に塗布し、塗膜を硬化させない温度で乾燥させることにより、好ましくはBステージ状の、接着性を有する層(接着剤層)を有する製品(カバーレイフィルム、ボンディングシート等)を製造することができる。Bステージ状の接着剤層を有する部材と、他の部材とを、好ましくは、加圧条件下、100℃以上に加熱することにより、十分な接着性を有する一体化物を製造することができる。
【0065】
本発明において、上記導電フィラー(F)等の導電成分を含有しない接着剤組成物を用いて、接着剤層を形成した後、更に加熱して硬化物を形成した場合には、この硬化物の、周波数1GHzで測定した誘電率(ε)を2.5以下とすることができ、誘電正接(tanδ)を0.01未満とすることができる。従って、本発明の接着剤組成物は、誘電特性に優れるFPC関連製品の製造に好適である。また、周波数1GHzで測定した接着剤硬化物の誘電正接(tanδ)が、0.01未満であることが好ましい。誘電率及び誘電正接は、接着剤組成物に含まれる変性ポリオレフィン系樹脂(A)及びエポキシ樹脂(B)の種類とこれらの含有割合により調整できるので、用途に応じて、種々の構成の接着剤組成物を設定することができる。尚、誘電率及び誘電正接の測定方法は後述する。
【0066】
2.カバーレイフィルム
本発明の接着剤組成物を用いて、電気絶縁性の基材フィルムの片面に接着剤層を形成することで、カバーレイフィルムを製造することができる。
【0067】
上記基材フィルムに含まれる樹脂としては、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、アラミド、ポリエチレンナフタレート、液晶ポリマー等が挙げられる。これらの中でも、接着剤層の、基材フィルムへの接着性及び誘電特性の観点から、ポリイミド、ポリエチレンナフタレート及び液晶ポリマーが好ましく、ポリイミドが特に好ましい。本発明の一実施形態に係るカバーレイフィルムは、上記本発明の接着剤組成物を用いて得られた接着剤層が、ポリイミドフィルムの片面に形成されていることを特徴とする。
【0068】
本発明のカバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、溶剤を含有する接着剤組成物(樹脂ワニス)を、ポリイミド等を含む基材フィルムの表面に塗布して塗膜(樹脂ワニス層)を形成した後、塗膜から溶剤を除去することにより、Bステージ状の接着剤層が形成されたカバーレイフィルムを製造することができる。
上記基材フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは5〜50μmm、更に好ましくは5〜30μmである。
上記溶剤を除去する温度は、好ましくは40〜250℃であり、より好ましくは70〜170℃である。溶剤を除去する方法は、特に限定されないが、通常、塗膜付きフィルムを、熱風加熱、遠赤外線加熱、高周波誘導加熱等がなされる炉の中で乾燥する方法が適用される。上記塗膜の乾燥後の厚さ、即ち、接着剤層の厚さは、好ましくは5〜45μmであり、より好ましくは10〜35μmである。
【0069】
本発明のカバーレイフィルムの製造に好適な基材フィルムは、市販されており、例えば、東レ・デュポン社製「カプトン(登録商標)」、東洋紡績社製「ゼノマックス(登録商標)」、宇部興産社製「ユーピレックス(登録商標)−S」、カネカ社製「アピカル(登録商標)」等を使用することができる。
また、他のカバーレイフィルムを製造する場合、基材フィルムとして、帝人デュポンフィルム社製「テオネックス(登録商標)」等のポリエチレンナフタレートフィルム、クラレ社製「ベクスター(登録商標)」、プライマテック社製「バイアック(登録商標)」等の液晶ポリマーフィルム等を用いることができる。基材フィルムは、該当する樹脂を所望の厚さにフィルム化して得られたものとすることもできる。
【0070】
尚、本発明のカバーレイフィルムは、必要に応じて、接着剤層の表面に、離型性フィルム層を備えてもよい。上記離型性フィルム層を形成する場合、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、フッ素系樹脂フィルム等の、公知の離型性フィルムが用いられる。離型性フィルム層を備えるカバーレイフィルムは、接着剤層が保護されるため、保管の際等に有用である。
【0071】
3.ボンディングシート
本発明のボンディングシートは、接着剤層付き積層体の別の態様である。
本発明のボンディングシートは、上記本発明の接着剤組成物を用いて、離型性フィルムの表面に接着剤層が形成されたものである。また、本発明のボンディングシートは、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。本発明のボンディングシートは、離型性フィルムをはく離して使用される。離型性フィルムとしては、上記本発明のカバーレイフィルムの製造に用いるものと同様の離型性フィルムを用いることができる。
【0072】
本発明のボンディングシートを製造する方法としては、例えば、離型性フィルムの表面に、溶剤を含有する接着剤組成物(樹脂ワニス)を塗布して塗膜(樹脂ワニス層)を形成した後、塗膜から溶剤を除去する方法を適用することができる。溶剤を除去する場合、上記本発明のカバーレイフィルムを製造する方法における溶剤除去方法を適用することができる。
上記離型性フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは5〜50μm、更に好ましくは5〜30μmである。
【0073】
本発明のボンディングシートにおける接着剤層の厚さは、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜70μm、更に好ましくは10〜50μmである。
【0074】
上記接着剤組成物が、上記導電フィラー(F)を含有する場合、この導電フィラー(F)及び溶媒を含有する接着剤組成物(樹脂ワニス)を用いることで、導電性を有する接着層を備える導電性ボンディングシートを製造することができる。
【0075】
4.銅張積層板
本発明の銅張積層板は、上記本発明の接着剤組成物を用いて、ポリイミドフィルムと銅箔とが貼り合わされた積層体である。即ち、本発明の銅張積層板は、基材フィルム、接着剤層及び銅箔の順に構成されたものである。本発明の銅張積層板において、接着剤層及び銅箔は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。即ち、本発明の銅張積層板は、基材フィルムの1面側及び他面側に、接着剤層及び銅箔を、順次、備える積層体であってもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性に優れるので、本発明の銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。尚、本発明の銅張積層板に含まれる接着剤層は、硬化物からなるものであってよいし、未硬化物からなるものであってもよい。
本発明の銅張積層板における接着剤層の厚さは、好ましくは5〜45μmであり、より好ましくは10〜35μmである。
【0076】
本発明の銅張積層板を製造する方法としては、例えば、上記本発明のカバーレイフィルムの接着剤層と銅箔とを面接触させ、80℃〜150℃で熱ラミネートを行い、更にアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法を適用することができる。アフターキュアの条件は、例えば、100℃〜200℃、30分〜4時間とすることができる。尚、上記銅箔は、特に限定されず、電解銅箔、圧延銅箔等を用いることができる。
【0077】
5.電磁波シールド材
本発明の電磁波シールド材は、上記本発明の接着剤組成物を用いて形成された接着剤層を備える物品である。本発明において好ましい態様は、接着剤層が導電フィラー(F)を含有する電磁波シールド材である。これにより、電磁波のノイズによる電子機器の誤動作や、通信電波の傍受による機密情報の漏洩等を防止することができる。
本発明の電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、導電フィラー(F)を含有する接着剤層を備える導電性ボンディングシートと、シールド材とを接合する方法を適用することができる。
【実施例】
【0078】
本発明について、実施例及び比較例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
1.原料
1−1.変性ポリオレフィン系樹脂(A)
下記の方法で得られた変性ポリオレフィン系樹脂a1〜a4を用いた。
(1)変性ポリオレフィン系樹脂a1
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位75モル%及びブテン単位25モル%からなるプロピレン−ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸22質量部及びジ−t−ブチルパーオキサイド6質量部をトルエン溶媒に溶かして、この溶液を、1Lオートクレーブ中で140℃に昇温し、この温度で、更に3時間撹拌した。次いで、得られた反応液を冷却し、この反応液を、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、遠心分離により、残留する未反応物等を分離、精製した。そして、回収した樹脂を、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、変性ポリオレフィン系樹脂a1を製造した。変性ポリオレフィン系樹脂a1は、重量平均分子量が5.5万、酸価が30mgKOH/gであった。また、この変性ポリオレフィン系樹脂a1を構成するグラフト部分の含有割合は、5.2質量%であった。
(2)変性ポリオレフィン系樹脂a2
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位75モル%及びブテン単位25モル%からなるプロピレン−ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸18質量部及びジ−t−ブチルパーオキサイド6質量部をトルエン溶媒に溶かして、この溶液を、1Lオートクレーブ中で140℃に昇温し、この温度で、更に3時間撹拌した。次いで、得られた反応液を冷却し、この反応液を、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、遠心分離により、残留する未反応物等を分離、精製した。そして、回収した樹脂を、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、変性ポリオレフィン系樹脂a2を製造した。変性ポリオレフィン系樹脂a2は、重量平均分子量が6.5万、酸価が20mgKOH/gであった。また、この変性ポリオレフィン系樹脂a2を構成するグラフト部分の含有割合は、3.5質量%であった。
(3)変性ポリオレフィン系樹脂a3
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位97モル%及びエチレン単位3モル%からなるプロピレン−エチレンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸1.5質量部、メタクリル酸ラウリル0.8質量部及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.2質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応させた。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、変性ポリオレフィン系樹脂a3を製造した。変性ポリオレフィン系樹脂a3は、重量平均分子量が13万、酸価が15mgKOH/gであった。また、この変性ポリオレフィン系樹脂a3を構成するグラフト部分の含有割合は、2.6質量%であった。
(4)変性ポリオレフィン系樹脂a4
旭化成社製水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体「タフテックH1052」(商品名)を100質量部、無水マレイン酸1.5質量部、メタクリル酸ラウリル0.8質量部及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.2質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応させた。その後、押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去して、変性ポリオレフィン系樹脂a4を製造した。変性ポリオレフィン系樹脂a4は、重量平均分子量が6万、酸価が15mgKOH/gであった。また、この変性ポリオレフィン系樹脂a4を構成するグラフト部分の含有割合は、2.6質量%であった。
【0080】
1−2.エポキシ樹脂(B)
(1)エポキシ樹脂b1
DIC社製ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂「EPICLON N−865」(商品名)
(2)エポキシ樹脂b2
DIC社製ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂「EPICLON HP−7200」(商品名)
(3)エポキシ樹脂b3
日本化薬社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「EOCN−102S」(商品名)
(4)エポキシ樹脂b4
三菱化学社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂「JER 828」(商品名)
【0081】
1−3.アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)
(1)イミダゾール系化合物c1
1−(2−ヒドロキシ−3−トリメトキシシリルプロポキシプロピル)−イミダゾール
(2)イミダゾール系化合物c2
イミダゾール系化合物c1の酢酸付加物
1−4.酸化防止剤(D)
アデカ社製フェノール系酸化防止剤「アデカスタブA330」(商品名)
1−5.リン含有化合物(E)
クラリアント社製ジメチルホスフィン酸アルミニウム「Exolit OP935」(商品名)
1−6.導電フィラー(F)
福田金属箔粉工業社製銅粉「FCC−115A」(商品名)
1−7.硬化促進剤
四国化成工業社製イミダゾール系硬化促進剤「キュアゾールC11−Z」(商品名)
1−8.他のフィラー
日本アエロジル社製フュームドシリカ「アエロジルR974」(商品名)(平均粒径12nm)
1−9.溶剤
メチルシクロヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン及びメタノールからなる混合溶媒(質量比=270:180:5:2)
【0082】
実施例1〜14及び比較例1〜4
撹拌装置付きフラスコに、上記の原料を表1に示す割合で添加し、60℃加温下で6時間撹拌して、溶剤に、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)及び硬化促進剤を溶解させ、成分(E)、成分(F)及び他のフィラーを分散させることにより、実施例1〜14及び比較例1〜4の液状接着剤組成物を製造した。
これらすべての液状接着剤組成物を用いて、カバーレイフィルム、ボンディングシート、並びに、接着試験片A及びBを作製し、下記の(i)〜(v)の評価を行った。また、実施例1〜14及び比較例1〜4の液状接着剤組成物の成分(F)を除く成分を用いて液状接着剤組成物(導電フィラーなし)を製造し、下記の(vi)の評価を行った。
【0083】
(1)カバーレイフィルムの作製
厚さ25μmポリイミドフィルムの表面に、液状接着剤組成物を、乾燥後の厚さが40μmとなるようロ−ル塗布し、140℃で2分間乾燥させて、接着剤層を有するカバーレイフィルムを得た。
【0084】
(2)接着試験片Aの作製
厚さ35μmの、金めっきされた銅箔を用意した。そして、この金めっき処理面を上記カバーレイフィルムの接着剤層面に接触するように重ね合わせ、150℃、0.3MPa及び1m/分の条件でラミネ−トを行った。得られた積層体(ポリイミドフィルム/接着剤層/金めっき銅箔)を、150℃及び3MPaの条件で5分間加熱して圧着した後、更に、オ−ブンにて160℃で2時間のアフタ−キュアを行うことにより、接着試験片Aを得た。
【0085】
(3)ボンディングシートの作製
厚さ35μm離型性PETフィルムを用意した。そして、その表面に、液状接着剤組成物を、乾燥後の厚さが25μmとなるようロ−ル塗布し、140℃で2分間乾燥させて、接着剤層を有するボンディングシートを得た。
(4)接着試験片Bの作製
厚さ300μmのニッケルめっきされたSUS304板を用意し、ニッケルめっき処理面が上記ボンディングシートの接着剤層に対し接触するように重ね合わせ、150℃及び0.3MPa、1m/分の条件でラミネ−トを行って、積層体X(SUS304板/ボンディングシート)を得た。
一方、厚さ25μmのポリイミドフィルムと、その一面側の表面に形成された、銅の回路パターンと、回路パターンに接着剤層を接触させて回路パターンを被覆するカバーレイフィルム部(ポリイミド層の厚さ25μm)とを備えるフレキシブルプリント配線板を用意した。尚、回路パターンを被覆するカバーレイフィルム部には、直径1mmのスルーホールが形成されており、このスルーホールを通じて、銅の回路パターンが露出している。
上記積層体Xから離型性PETフィルムを剥離して、SUS304板に接着されている接着剤層と、上記フレキシブルプリント配線板のカバーレイフィルム部側表面とを全面接触させ、150℃及び3MPaの条件で5分間圧着した。そして、更に、オ−ブン内にて、160℃で2時間のアフタ−キュアを行うことにより、接着試験片B(SUS304板/接着剤層/フレキシブルプリント配線板)を作製した。
【0086】
(i)はく離接着強さ
接着性を評価するために、JIS C 6481「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、各接着試験片Aの金メッキ処理した銅箔をポリイミドフィルムから剥がすときの180°はく離接着強さ(N/mm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0087】
(ii)はんだ耐熱性
JIS C 6481に準拠し、下記の条件で試験を行った。
ポリイミドフィルムの面を上にして、上記接着試験片Aを260℃のはんだ浴に60秒間浮かべ、接着剤層の膨れ、剥がれ等の外観異常の有無を目視により評価した。その結果、膨れ、剥がれ等の外観異常が確認されなかったものを「○」、膨れ、剥がれ等の外観異常が確認されたものを「×」として表示した。
更に、上記はんだ浴から取り出した試験片をJIS C 6481に準拠し、23℃において、ポリイミドフィルムを金めっきされた銅箔から剥がすときの180°はく離接着強さ(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとし、引張速度は50mm/分とした。
【0088】
(iii)難燃性
上記カバーレイフィルムを160℃で2時間加熱硬化させ、UL−94に準拠して難燃性の評価を行った。試験に合格(VTM−0クラス)のものを「○」、不合格のものを「×」として表示した。
【0089】
(iv)導電性(接続抵抗)
上記接着試験片B(SUS板/接着剤層/フレキシブルプリント配線板)のSUS板とフレキシブルプリント配線板の回路パターンの銅部分との間の接続抵抗値を抵抗値測定器で測定した。その結果、接続抵抗値が1Ω未満のものを「○」、1〜3Ωのものを「△」、3Ωを超えたものを「×」として表示した。
【0090】
(v)はんだ処理後の導電性(接続抵抗)
上記接着試験片Bを260℃のはんだ浴に60秒間浮かべた。その後、はんだ浴から取出した接着試験片BのSUS板とフレキシブルプリント配線板の回路パターンの銅部分との間の接続抵抗値を抵抗値測定器で測定した。その結果、接続抵抗値が1Ω未満のものを「○」、1〜3Ωのものを「△」、3Ωを超えたものを「×」として表示した。
【0091】
(vi)誘電特性(誘電率及び誘電正接)
厚さ38μmの離型性ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、液状接着剤組成物(導電フィラーなし)を、ロ−ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、塗膜を、120℃で3分間乾燥させて被膜(接着剤層)を形成し、ボンディングシートを得た。次に、このボンディングシートを、オーブン内に静置して、180℃で30分間加熱処理をした。その後、離型性フィルムを剥がして、誘電特性評価用の硬化試験片を作製した。
15mm×80mm×50μmの硬化試験片に対して、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)を、アジレント社製「ネットワークアナライザー85071E−300」を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃及び周波数1GHzの条件で測定した。
【0092】
【表1】
【0093】
評価結果を表2に示す。
【表2】
【0094】
表2の結果から、以下のことが明らかである。
実施例1〜14の接着剤組成物は、いずれも、金めっきされた銅箔への接着性に優れていた。これらのうち、実施例1及び8は、アルコキシシリル基を有するイミダゾール系化合物(C)を含有する接着剤組成物の例であり、これを含有しない実施例9に比べて、金めっきされた銅箔への密着性及び耐リフロー性に更に優れていた。
一方、比較例1〜3は、1種のみのエポキシ樹脂を含有する組成物であるため、耐リフロー性及び誘電特性のいずれか一方又は両方が劣っており、エポキシ樹脂を含有していない比較例4は、耐リフロー性が不十分であった。
また、実施例1〜14の接着剤組成物(導電フィラーなし)は、いずれも、硬化物の誘電特性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の接着剤組成物は、樹脂フィルム、金めっきされた銅箔等の被着体への接着性、及び、硬化物の誘電特性に優れ、また、はんだ耐熱性にも優れる。更に、導電性フィラーを含有する接着剤組成物を用いて得られた硬化物は、導電性にも優れる。そのため、本発明の接着剤組成物は、カバーレイフィルム、フレキシブル銅張積層板、ボンディングシート、導電性ボンディングシート、電磁波シールド材等の製造に好適である。