(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配管の長手方向で互いに異なる位置にそれぞれ設けられた少なくとも2個のトランスデューサであって、電気信号を超音波信号に変換し、もしくは、超音波信号を電気信号に変換する第1及び第2のトランスデューサを備え、前記第1及び第2のトランスデューサのうちの少なくとも一方から他方に、超音波信号を送信信号として送信して受信信号を受信し、前記受信信号と、所定の基準波信号との間の相関係数に基づいて所定の目的信号を分離した後、前記目的信号に基づいて前記配管の内部における流体の流量を測定する流量測定装置において、
前記超音波信号よりも広い帯域を有する超音波信号、もしくは異なる複数の周波数範囲をそれぞれ有する複数の超音波信号を送信信号として用いて送信する送信手段と、
前記流体中での超音波信号の所定の周波数帯域における減衰率が前記配管中での超音波信号の前記周波数帯域における減衰率と異なることを利用して、前記受信信号から前記流体を通過した目的信号を分離し、分離した目的信号に基づいて流量を測定する受信手段とを備えることを特徴とする流量測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の超音波流量計では、送信器の駆動周波数を時間的に変更し送信を行う。残響や反射波が受信信号に与える影響が一定でなくなり分散平均化するため、測定誤差の偏りをなくすことができるが、測定のたびに周波数を切り替えて、確率的に誤差を減らす手法であるため、多数の測定回数が必要で計測時間が増大するという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2では、超音波振動子を、配管への入射角度が等しくなるように2個配管に設置し、それぞれの測定信号の差分によりノイズを除去する。2個の超音波センサが必要であり、2個の超音波センサを用いることで信号の伝播方法がそれぞれで異なり、ノイズ成分のみを除去するのが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、従来技術に比較して簡単な測定方法でかつ測定時間を短縮できる流量測定装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、ノイズがあるときであっても、従来技術に比較して高い精度で流量を測定することができる流量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る流量測定装置は、配管の長手方向で互いに異なる位置にそれぞれ設けられた少なくとも2個のトランスデューサであって、電気信号を超音波信号に変換し、もしくは、超音波信号を電気信号に変換する第1及び第2のトランスデューサを備え、前記第1及び第2のトランスデューサのうちの少なくとも一方から他方に、超音波信号を送信信号として送信して受信信号を受信し、前記受信信号と、所定の基準波信号との間の相関係数に基づいて所定の目的信号を分離した後、前記目的信号に基づいて前記配管の内部における流体の流量を測定する流量測定装置において、
前記超音波信号よりも広い帯域を有する超音波信号、もしくは異なる複数の周波数範囲をそれぞれ有する複数の超音波信号を送信信号として用いて送信する送信手段と、
前記流体中での超音波信号の所定の周波数帯域における減衰率が前記配管中での超音波信号の前記周波数帯域における減衰率と異なることを利用して、前記受信信号から前記流体を通過した目的信号を分離し、分離した目的信号に基づいて流量を測定する受信手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、前記流量測定装置において、
前記送信信号は、第1の帯域と、前記第1の帯域よりも高い第2の帯域とを有し、
前記基準波信号は、前記送信信号の第2の帯域が前記第1の帯域に比較して減衰するように設定されることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記流量測定装置において、
前記送信信号は、第1の帯域と、前記第1の帯域よりも高い第2の帯域とを有し、
前記流体中での超音波信号の所定の周波数帯域における減衰率が前記配管中での超音波信号の前記周波数帯域における減衰率に実質的に同一であって、前記受信手段が前記目的信号を分離できないときは、前記送信信号が、前記送信信号の第2の帯域よりも高い第3の帯域を有するように構成されることを特徴とする。
【0012】
またさらに、前記流量測定装置において、
前記送信信号は、第1の帯域と、前記第1の帯域よりも高い第2の帯域とを有し、
前記流体中での超音波信号の所定の周波数帯域における減衰率が前記配管中での超音波信号の前記周波数帯域における減衰率よりも所定のしきい値以上大きい場合であって、前記受信手段が前記目的信号を分離できないときは、前記送信信号が、前記送信信号の第1の帯域よりも低い第4の帯域を有するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明によれば、従来技術に比較して簡単な測定方法でかつ測定時間を短縮できる。また、ノイズがあるときであっても、従来技術に比較して高い精度で流量を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る流量測定装置50の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の制御回路20により実行される超音波流量測定処理を示すフローチャートである。
【
図3A】
図1の流量測定装置から送信される送信信号の一例を示す波形図である。
【
図3B】
図1の流量測定装置により受信される受信信号の一例を示す波形図である。
【
図3C】
図1の流量測定装置により計算される相関係数の一例を示す波形図である。
【
図3E】従来例における問題点を示す相関係数の波形図である。
【
図4A】実施形態において用いる送信信号である広帯域の超音波を含む送信信号Taの一例を示す波形図である。
【
図4B】実施形態において用いる送信信号である、異なる周波数範囲を有する複数の広帯域の超音波を含む送信信号Tbの一例を示す波形図である。
【
図5A】実施形態において目的信号の分離方法を示す、送信信号T1の一例を示す波形図である。
【
図5B】実施形態において目的信号の分離方法を示す、配管中の受信信号R1の一例を示す波形図である。
【
図5C】実施形態において目的信号の分離方法を示す、流体中の受信信号R2の一例を示す波形図である。
【
図6A】実施形態において目的信号の分離方法を示す、送信信号T11の一例を示す波形図である。
【
図6B】実施形態において目的信号の分離方法を示す、受信信号R11の一例を示す波形図である。
【
図6C】実施形態において目的信号の分離方法を示す、受信信号R12の一例を示す波形図である。
【
図7A】実施形態において目的信号の分離方法を示す、一般的な相関基準波である送信信号T21の一例を示す波形図である。
【
図7B】実施形態において目的信号の分離方法を示す、高周波が減衰した波形を含む相関基準である送信信号T22の一例を示す波形図である。
【
図8A】変形例においてノイズがあるときの送信信号の第1の変更方法を示す、変更前の受信信号R21の一例を示す波形図である。
【
図8B】変形例においてノイズがあるときの送信信号の第1の変更方法を示す、変更後の受信信号R22の一例を示す波形図である。
【
図9A】変形例においてノイズがあるときの送信信号の第2の変更方法を示す、変更前の受信信号R31の一例を示す波形図である。
【
図9B】変形例においてノイズがあるときの送信信号の第2の変更方法を示す、変更後の受信信号R32の一例を示す波形図である。
【
図10】変形例に係る流量測定装置50の一部の構成例を示すブロック図である。
【
図11】変形例に係る流量測定装置50の一部の構成例を示すブロック図である。
【
図12A】送信信号発生器2が出力する送信信号の一例を示す波形図である。
【
図12B】
図12Aの送信信号を送信したときに、トランスデューサ1aが出力する送信信号の一例を示す波形図である。
【
図12C】トランスデューサ1a,1bの周波数特性の一例を示すスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかる実施形態及び変形例について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0016】
実施形態.
図1は実施形態に係る流量測定装置50の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係る流量測定装置50は、所定の断面積を有する配管10の内部における流体11の流量を測定する。流体11は、液体であってもよく、気体であってもよい。
図1では、配管10が、直径2Rを有する円形の断面形状を有する場合を示すが、それに限定されず、配管10は他の任意の断面形状を有してもよい。
【0017】
図1において、流量測定装置50は、配管10における流体11の流れ方向100(配管10の長手方向)で互いに異なる位置にそれぞれ設けられたトランスデューサ1a,1bを含む超音波センサ1を備える。各トランスデューサ1a,1bは、電気信号を超音波信号に変換し、もしくは、超音波信号を電気信号に変換する。トランスデューサ1aはスイッチSW1の端子aを介して送信信号発生器2に接続されるとともに、スイッチSW1の端子bを介して受信信号検出器3に接続される。また、トランスデューサ1bはスイッチSW2の端子aを介して送信信号発生器2に接続されるとともに、スイッチSW2の端子bを介して受信信号検出器3に接続される。トランスデューサ1a,1bは、方向100で互いに距離Lを有するように、かつ、トランスデューサ1a,1bの検出面の中央部を結ぶ直線が配管10の内面10aに対して角度θを有するように、配管10にそれぞれ設けられる。
【0018】
流量測定装置50は、超音波センサ1と、送信信号発生器2と、受信信号検出器3と、信号分析器4と、信号分離器5と、制御回路20と、操作部21と、表示部22とを備える。ここで、操作部21及び表示部22は制御回路20に接続され、制御回路20は、操作部21を用いた操作に基づいて、
図2の超音波流量測定処理を実行し、処理結果を表示部22に表示する。
【0019】
流量測定装置50は、送信信号発生器2からトランスデューサ1aを介してトランスデューサ1bに対して、また、送信信号発生器2からトランスデューサ1bを介してトランスデューサ1aに対して、配管10の内部における流体11を介し、所定の周波数及び所定の時間長を有する送信信号を送信して受信する。信号分析器4は、受信された受信信号を信号相関法を用いて分析し、分析結果の相関係数を計算して信号分離器5に出力する。信号分離器5は入力される相関係数に基づいて、検出された受信信号から、後述する所定の信号分離方法を用いて目的信号を分離して制御回路20に出力する。
【0020】
図2は
図1の制御回路20によって実行される超音波流量測定処理を示すフローチャートである。
【0021】
図2のステップS1において、スイッチSW1を端子a側に切り替え、スイッチSW2を端子b側に切り替える。そして、送信信号発生器2を用いて送信信号を発生して超音波センサ1のトランスデューサ1aから送信信号を配管10内に送信し、超音波センサ1のトランスデューサ1bにより受信した受信信号を、受信信号検出器3により検出する。次いで、ステップS2において、スイッチSW1を端子b側に切り替え、スイッチSW2を端子a側に切り替える。そして、送信信号発生器2を用いて送信信号を発生して超音波センサ1のトランスデューサ1bから送信信号を配管10内に送信し、超音波センサ1のトランスデューサ1aにより受信した受信信号を、受信信号検出器3により検出する。ステップS3において、信号分析器4は、送信信号f(x)と、信号分析器4が検出した受信信号g(x)を離散時間m=1,…,Mでそれぞれサンプリングし、離散化された信号f(m)及びg(m)を得る。信号f(m),g(m−n)を、信号相関法を用いて分析し、分析結果の相関係数を計算する。この場合、時刻nにおける相関係数R(n)は例えば次式で計算される。
【0023】
相関係数R(n)がピーク値になるときの時刻nは、測定信号を受信した瞬間を示す。
【0024】
次いで、ステップS4において計算された相関係数に基づいて、検出された受信信号から目的信号を分離する。
【0025】
ステップS5では、目的信号を分離できたか否かが判断され、YESのときはステップS7に進む一方、NOのときはステップS6に進む。ステップS6では、送信信号発生器2を制御して、詳細後述するように送信信号を変更し、ステップS1に戻り、上述の処理を繰り返す。一方、ステップS7では、分離した目的信号に基づいて伝播時間を計算する。伝播時間の計算方法は以下の通りである。
【0026】
流体11の速度をvとし、音速をcとするとき、トランスデューサ1aからトランスデューサ1bへの超音波の送信信号の伝搬時間Taは、次式で表される。
【0028】
また、トランスデューサ1bからトランスデューサ1aへの超音波の送信信号の伝搬時間Tbは次式で表される。
【0030】
従って、流体11の速度vは次式で表される。
【0032】
流体11の流量Qは、配管10の断面積と、流体11の速度vとの積で表される。従って、
図1の例では、流体11の流量Qは次式で表される。
【0034】
図2に戻り、ステップS8では、計算された伝播時間に基づいて流量を計算して表示部22に表示し、ステップS1に戻る。
【0035】
図2では、測定信号の伝搬時間に基づいて流体11の流量を計算する場合について説明したが、代替として、測定信号に生じたドップラーシフトに基づいて流体11の流量を計算してもよい。送信された測定信号の周波数をfaとし、受信された測定信号の周波数をfbとする。周波数fbは次式で表される。
【0036】
fb=fa×(c+v・cosθ)/(c−v・cosθ)
【0038】
v=c/(2cosθ)・(fb−fa)/fb
【0039】
従って、
図1の例では、流体11の流量Qは、Q=πr
2vで表される。この場合、トランスデューサ1a,1b間で測定信号を一方向のみに送信してもよい。測定信号が複数の周波数を含む場合であっても、上述したものと実質的に同様の方法で、流体11の流量を計算することができる。
【0040】
図3Aは
図1の流量測定装置から送信される送信信号の一例を示す波形図であり、
図3Bは
図1の流量測定装置により受信される受信信号の一例を示す波形図である。また、
図3Cは
図1の流量測定装置により計算される相関係数(信号101)の一例を示す波形図であり、
図3Dは
図3Cの信号部分102の拡大図である。さらに、
図3Eは従来例における問題点を示す相関係数の波形図である。
【0041】
例えば周波数変調を行った広帯域超音波信号(
図3A)を送信信号として送信した場合、受信された受信信号(
図3B)を、基準波形である送信信号との間で信号相関法により上記の相関係数(
図3C及び
図3D)を計算し、目的信号の到達時間を算出する。なお、受信信号を基準波形としてもよい。ここで、超音波送信信号は配管10内を伝搬するが、超音波送信→配管→流体→配管→超音波受信だけではなく、超音波送信→配管→超音波受信の経路などもあり得るため、
図3Eに示すように、目的信号103のほかに目的外信号104も受信してしまう。そのため、相関処理を施したときに、目的外信号104の相関ピークが立つことがある。本実施形態では、この問題点を解決するために、信号分析器4により目的信号の分離を行うことを特徴としている。
【0042】
図4Aは実施形態において用いる送信信号である広帯域の超音波を含む送信信号Taの一例を示す波形図であり、
図4Bは実施形態において用いる送信信号である、異なる周波数範囲を有する複数の広帯域の超音波を含む送信信号Tbの一例を示す波形図である。
【0043】
本実施形態では、広帯域の超音波信号(
図4A)もしくは異なる周波数範囲を有する複数の超音波信号(
図4B)を用いて、流体11を通過した受信信号から目的信号を特定することで、流量精度を高精度にすることを特徴とする。
【0044】
ところで、液体などの流体中の超音波の減衰係数αは公知の通り次式で表される。
【0046】
ここで、fは周波数であり、Kは体積粘性率であり、ηはずり粘性率である。上記式から明らかなように、減衰係数αはf
2に比例する。
【0047】
本実施形態では、配管10中と流体11中で超音波の減衰特性が異なること、すなわち、伝搬物質毎に周波数の減衰率が異なることを利用し、所定の目的信号を分離する。例えば、流体11中での高周波成分が減衰することを利用する。具体的には、信号分離法として相関係数での判定もしくはFFT(Fast Fourier Transformation)にて高周波成分と低周波成分との割合にて判定する。すなわち、配管10中と流体11中で超音波の減衰特性が異なることを利用し、目的信号に特徴が現出することを利用する。
【0048】
図5Aは実施形態において目的信号の分離方法を示す、送信信号T1の一例を示す波形図である。また、
図5Bは実施形態において目的信号の分離方法を示す、鋼管などの配管10中の受信信号R1の一例を示す波形図であり、
図5Cは実施形態において目的信号の分離方法を示す、液体などの流体11中の受信信号R2の一例を示す波形図である。
図5Aに示す送信信号を送信したときに、鋼管などの配管10と、流体11とで受信信号R1,R2の周波数特性に違いが現出する。従って、
図5Cのように、流体11中を通過した受信信号R2が目的信号であるので、例えば
図5Cのごとく減衰特性を有する受信信号R2を検出できれば、
図2のステップS5において目的信号を分離できたと判断する。
【0049】
以上の実施形態においては、FFTを用いて受信信号の信号分離を行っているが、本発明はこれに限られず、STFT(Short-Time Fourier Transformation)もしくは、以下の
図6A〜
図6Cを参照して説明するバンドパスフィルタなどの周波数フォルタを用いて信号分離を行ってもよい。
【0050】
図6Aは実施形態において目的信号の分離方法を示す、送信信号T11の一例を示す波形図である。また、
図6Bは実施形態において目的信号の分離方法を示す、受信信号R11の一例を示す波形図であり、
図6Cは実施形態において目的信号の分離方法を示す、受信信号R12の一例を示す波形図である。この分離方法では、例えば互いに離隔した通過帯域幅B1,B2,B3をそれぞれ有する3個のバンドパスフィルタを用いて、各通過帯域幅B1,B2,B3での強度又は信号電力を検出することで、上記の減衰特性を有する受信信号R2を検出してもよい。この分離方法によれば、FFTなどを用いる方法に比較して計算時間を短縮できる。
【0051】
図7Aは実施形態において目的信号の分離方法を示す、一般的な相関基準波である送信信号T21の一例を示す波形図である。また、
図7Bは実施形態において目的信号の分離方法を示す、高周波が減衰した波形を含む相関基準である送信信号T22の一例を示す波形図である。
【0052】
通常、送信信号と相関をとると、液体などの流体11を通った目的の受信信号は高周波側強度が小さくなるため、配管10だけを通った目的外信号よりも相関値が低くなる。従って、
図7Bに示すように、高周波域が減衰した波形信号(所定の第1の帯域よりも高い第2の帯域が減衰した波形信号をいう)を基準波信号とすることで、液体などの流体11を通過した目的信号が基準波信号と類似し、相関係数が
図7Aの通常の基準波信号を用いる場合に比較して高くなる。これにより、信号分離方法の精度を
図7Aの通常の基準波信号を用いる場合に比較して高くすることができる。
【0053】
次いで、ノイズがあるときの送信信号の変更方法(変形例)について以下に説明する。
【0054】
図8Aは変形例においてノイズがあるときの送信信号の第1の変更方法を示す、変更前の受信信号R21の一例を示す波形図であり、
図8Bは変形例においてノイズがあるときの送信信号の第1の変更方法を示す、変更後の受信信号R22の一例を示す波形図である。
図9Aは変形例においてノイズがあるときの送信信号の第2の変更方法を示す、変更前の受信信号R31の一例を示す波形図であり、
図9Bは変形例においてノイズがあるときの送信信号の第2の変更方法を示す、変更後の受信信号R32の一例を示す波形図である。
【0055】
ノイズがある場合で、ノイズを分離できない場合(配管のみを通ってきた信号と目的信号(液体などの流体11を通ってきた信号)の周波数が異ならない場合)は、
図2のステップS5において信号分離できないと判定し、送信周波数の帯域を変更することを特徴としている。ここで、以下のように条件を分ける
【0056】
(1)目的信号が減衰しない場合(
図8Aの201;すなわち、低域の減衰率と高域の減衰率が実質的に同一である場合)、次回の送信において送信信号を高周波側に変更することで、受信信号を高周波側に延在させた信号とする(
図8Bの202)。もしくは送信信号の周波数帯域を高周波側にシフトさせた信号としてもよい。この場合、例えば送信信号が第1の帯域と、前記第1の帯域よりも高い第2の帯域とを有するとき、前記送信信号が、前記送信信号の第2の帯域よりも高い第3の帯域を有するように構成される。
【0057】
(2)目的信号が減衰しすぎる場合(
図9Aの211;すなわち、高域の減衰率が所定のしきい値以上減衰する場合)、次回の送信において送信信号を低周波側に変更する。すなわち、送信信号の周波数帯域を低周波側にシフトしてもよいし、送信信号の周波数帯域を低周波側に延在させてもよい(212)。この場合、例えば送信信号が第1の帯域と、前記第1の帯域よりも高い第2の帯域とを有するとき、前記送信信号が、前記送信信号の第1の帯域よりも低い第4の帯域を有するように構成される。
【0058】
以上説明したように、本実施形態に係る流量測定装置によれば、従来技術に比較して簡単な測定方法でかつ測定時間を短縮できる。また、変形例に係る流量測定装置によれば、ノイズがあるときであっても、従来技術に比較して高い精度で流量を測定することができる。
【0059】
以上の実施形態において配管10がテフロン(登録商標)であり、流体11が気体であってもよい。なお、本実施形態では、配管10における所定の超音波周波数における減衰率と、流体11における当該超音波周波数における減衰率との差(相違すること)を利用して、受信信号から流体11を通過した目的信号を分離し、分離した目的信号に基づいて流量を測定することを特徴としている。
【0060】
以上の実施形態では、いわゆるZ法と呼ばれる透過法を用いて、流量を測定しているが、本発明はこれに限らず、下記のV法と呼ばれる公知の反射法(
図10)、もしくはX法と呼ばれる公知の透過法を用いて、流量を測定してもよい。
【0061】
(A)V法と呼ばれる反射法:
図10に示すように、トランスデューサ1aが送信した超音波信号が配管10の内面で反射された後、トランスデューサ1bで受信し、もしくは、トランスデューサ1bが送信した超音波信号が配管10の内面で反射された後、トランスデューサ1aで受信して、流量を測定してもよい。ここで、トランスデューサ1a,1bは、互いに配管10の長手方向のみ移動させた位置に設けられる。
【0062】
(B)X法と呼ばれる透過法:
図11に示すように、トランスデューサ1aが送信した超音波信号が流体11を介して、トランスデューサ1bで受信し、もしくは、トランスデューサ1cが送信した超音波信号が流体11を介して、トランスデューサ1dで受信して、流量を測定してもよい。ここで、トランスデューサ1a,1cは、互いに配管10の長手方向のみ移動させた位置に設けられる。超音波センサ1Aはトランスデューサ1b,1dを含み、トランスデューサ1b,1dは、互いに配管10の長手方向のみ移動させた位置に設けられる。なお、トランスデューサ1a,1dは互いに配管10及び流体11を挟んで対向する長手方向の所定の第1の位置に設けられ、トランスデューサ1b,1cは互いに配管10及び流体11を挟んで対向する長手方向の所定の第2の位置(前記第1の位置と異なる)に設けられる。
【0063】
以上の実施形態では、例えば基準波信号として送信信号を用いているが、以下の種々の基準波信号を用いることができる。以下、これについて、
図12A〜
図12C等を参照して詳述する。
【0064】
図12Aは送信信号発生器2が出力する送信信号の一例を示す波形図であり、
図12Bは
図12Aの送信信号を送信したときに、トランスデューサ1aが出力する送信信号の一例を示す波形図である。
図12Cはトランスデューサ1a,1bの周波数特性の一例を示すスペクトル図である。
【0065】
トランスデューサ1a,1bの周波数特性(超音波素子の1種である圧電素子を用いて構成するため、所定の共振周波数を有するため)に依存して、送信信号発生器2からの信号波形と、トランスデューサ1a,1bから送信される信号波形は異なります。また、受信信号でも同様に異なります。ここで、送信信号の信号波形を1回毎に測定することは、精度向上にはつながりますが、処理回路の負荷が上がるという問題点がある。そこで、当該基準波信号の信号波形を決めてしまい処理負荷を減らすことも考えられます。基準波信号の信号波形として以下のように決定してもよい。
(1)送信信号を1回毎にモニタリングして基準波信号とする。
(2)送信信号を複数回モニタして平均化したものを基準波信号とする。
(3)送信信号発生器2からの信号波形を基準波信号とする。
(4)上記(3)の基準波信号を、トランスデューサ時1a,1bの周波数特性を考慮して修正ものを基準波信号とする。
(5)理想状態で受信信号の信号波形を測定しておき、基準波信号とする。
【0066】
なお、上記(4)の場合においては、例えば、送信信号発生器2からの送信信号に対して、
図12Cの周波数特性を掛け合わせたものを基準波信号としてもよい。もしくは、送信信号発生器2からの送信信号に対して、共振周波数付近の強度を上げる、などの変化を加えることで基準波としてもよい。