(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査用センサは、検査対象である金属板と近接して走査する探触子を有し、前記探触子は前記台車が走行する金属板面に沿って、少なくとも1軸方向に移動可能に前記台車に取り付けられ、
前記探触子を、前記台車を自律走行させる制御手段と連動し、または独立して、位置制御するアクチュエータをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の金属板用自走式検査装置。
前記駆動部は、4つの車輪の各々に対応して設けられ、前記4つの車輪の各々を回転駆動する第一の駆動系と、前記台車が走行する金属板面と直行し、かつ前記4つの車輪の各々に対し台車中心側にオフセットする軸まわりに、前記4つの車輪の各々を90°以上旋回駆動することが可能な第二の駆動系とにより構成されることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の金属板用自走式検査装置。
前記台車に設けられ、検査対象である金属板のエッジを検知するためのエッジ検知用センサをさらに具備することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の金属板用自走式検査装置。
前記検査用センサとして、検査対象である金属板と近接して走査する探触子を有するものを用い、前記探触子を前記台車が走行する金属板面に沿って、少なくとも1軸方向に移動可能に前記台車に取り付け、
前記探触子を、前記台車を自律走行させる制御手段と連動し、または独立して、アクチュエータにより位置制御することを特徴とする請求項8乃至11のうちいずれか一項に記載の金属板用自走式検査方法。
前記駆動部は、4つの車輪の各々を回転駆動するとともに、前記台車が走行する金属板面と直行し、かつ前記4つの車輪の各々に対し台車中心側にオフセットする軸まわりに、前記4つの車輪の各々を90°以上旋回駆動することを特徴とする請求項8乃至12のうちいずれか一項に記載の金属板用自走式検査方法。
前記台車に、検査対象である金属板のエッジを検知するためのエッジ検知用センサを設け、前記エッジ検知用センサにより金属板のエッジを検知しながら前記台車を金属板のエッジに沿って走行させることを特徴とする請求項8乃至13のうちいずれか一項に記載の金属板用自走式検査方法。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板等の金属板の品質を保証するために、鋼板等の傷や内部欠陥を、超音波探傷にて検査することが行われている。例えば、生産ラインの送りローラ上を搬送される鋼板等の金属板に、複数個並列に並べられた超音波探傷ヘッドを接触させて検査し、生産ラインから外れた鋼板等の金属板に超音波探傷を接触させて、人手により走査させて検査している。
【0003】
超音波探傷ヘッドは探傷ケーブルで超音波探傷器と接続され、超音波探傷ヘッドで探索された出力が超音波探傷器に入力され、その出力がデータ処理装置に入力されて処理され、傷の有無が探査される。また、鋼板等の金属板の探傷面には、超音波の媒体としての水が散水される。したがって、この検査方法では、金属板の全面が水で濡れて滑り易い状態となり、検査員が段差がある金属板上を移動する際に転倒する危険性がある。
このような危険性を回避するために、自動探傷装置(自走式検査装置)が開発されている。最も単純なものは、金属板上を移動できる装置に探傷ヘッドを搭載したものがある。このような検査装置では被検査板の全面を走査するのに被検査板の周囲にリブ板等を取り付ける必要がある。
【0004】
また、特許文献1に開示された板面探傷装置は、
図24に示すように、キャタピラー状の履帯8aで走行する履帯台車8を備えている。履帯台車8は、横方向に移動する際は、横方向移動車輪8bで走行する。履帯台車8の前後には金属板端縁検出センサ2bが設けられ、ガイドレールに金属板1上の傷を検査する探触子2aが設けられている。履帯台車8は金属板1の端縁に設けられたメジャーAと金属板1の基準点Pに設けられた伸縮自在メジャーBによって探査位置が算出できるようになされている。
また、自走する検査装置の位置を測定する手法としては、誘導線を走行経路に設置する方法、走行経路の床面や天井面をテレビカメラで撮影して、その映像を画像処理する方法、ジャイロセンサを搭載して、走行速度と角速度を高速に積算して、現在位置を算出する方法が広く知られている。
【0005】
特許文献2に示す金属板用自走式検査装置は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査装置である。実施例においては、JISG0801圧力容器用鋼板の超音波探傷検査方法として、垂直探傷法による事例を紹介している。垂直探傷法はパルス反射法の一つであり、探触ヘッド1つにつき1つの超音波発信元(振動子)を有し、検査データとしては一次情報である反射エコー(Aスコープ)となる。Aスコープに含まれる情報のうち、欠陥エコーピーク高さから「きずの程度」、超音波伝搬時間から「きずの深さ方向位置」の情報を抽出可能としている。検査データはリアルタイムで演算される検査位置情報とともに、搭載コンピュータからホストコンピュータに伝達され、金属板の内部のきず(欠陥)の配置を、金属板平面上でマップ化処理し、表示することにより、きず(欠陥)の平面的な配置を可視化することができるとしている。
【0006】
特許文献2に示す金属板用自走式検査装置において、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムについて、測量用の光源としては、光線を用いることが一般的である。一般に、衛星航法システム(GPS:Global Position System)は3つ以上のGPS人工衛星を用いてGPS受信機の位置に符合する3次元座標値(以下、「座標値」という)を認識及び決定する装置であり、このような概念を屋内に適用した屋内位置測定システムがIGPS(Indoor Global Position System)である。IGPSについては、米国特許第6,501,543号明細書に詳細に記載されている。
【0007】
特許文献2に示す金属板用自走式検査装置における屋内位置測定システム(IGPS)においては、各航法用送信機は、2つの回転ファンビーム(扇形ビーム)を射出する。回転ファンビームはレーザファンビームであってもよく、他の光放射手段であってもよい。航法用受信機は各航法用送信機から射出される回転ファンビームを受信して、多数の航法用送信機からの相対的位置を把握できるようになっている。このとき、回転ファンビームは所定の角度でずれており、これを受信する航法用受信機の座標値、すなわち、位置または高さを測定することができる。航法用受信機における受信情報はホストコンピュータに無線伝送され、ホストコンピュータにより、三角測量の原理に従って、航法用受信機の位置を演算する。したがって、航法用受信機の位置をこのような手法で演算することにより、航法用受信機を搭載した走行中の台車の現在位置、姿勢情報をリアルタイムで得ることができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示す板面探傷装置においては、履帯台車8の走行方向に対して直交する方向に履帯台車8の幅以上を走査し得る探触子2aが履帯台車8の前後に備えられている。また、履帯台車8には、位置測定のためのメジャーが常に接続されており、走行距離に合わせてメジャーを引出しながら位置計測を行わねばならない煩わしさがあり、メジャーの測定距離が長くなるにつれて相対的に位置測定分解能が劣化し、測定精度が著しく低下する欠点がある。さらに、特許文献1の技術は、金属板1の全面と探傷ピッチを変えて部分的に探傷を行うものであり、金属板1の外周を探傷することはできない欠点がある。
【0010】
また、特許文献1に示す板面探傷装置は、縦方向はキャタピラー状の履帯8aで走行し、横方向に移動する際は、横方向移動車輪8bが降下し、必要な距離だけ探傷装置を横方向に移動させる。つまり、装置の縦方向及び横方向の進行方向は設置状態により決定され、それ以外の方向への進行方向の微調整は困難であるため、各種外乱に対して目標走行ルートに対する直進性を確保できない欠点があり、最悪の場合、所定の探傷範囲を逸脱する可能性がある。
【0011】
また、その他の技術でも、以下のような問題がある。すなわち、誘導線を用いる位置検出方法では、被検査板が金属板である場合には、誘導線を設置することができない欠点がある。画像処理を用いる位置検出方法では、被検査対象の金属板の情報を被検査対象が変わる毎に金属板にマーキングを書き込み、検査作業が終了後にマーキングを消す作業を行わねばならないので、煩雑である。被検査板に上方に画像処理用マークを施して位置検出する方法では、通常このような製造工場では天井にクレーンが走行しており、画像処理用マークを使用できない場合が多い。ジャイロセンサを用いて位置を検出する場合は、角速度を積算して位置を算出しており、時間の経過とともに位置計算に誤差が生じる欠点がある。
【0012】
一方、特許文献2に示す金属板用自走式検査装置によれば、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを構成し、屋内位置側テム信号を発信または受信する航法用信号発信機若しくは航法用受信機を、金属板の傷を検査する検査用センサを備えた台車に設置し、屋内位置測定システム信号を用いて自己位置を認識する。このため、金属板のマーキングや画像処理用のマークを用いることなく、金属板上の台車の位置及び角度を認識することができる。また、そのように認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて車輪の正転・逆転・停止を指示して台車を所定の目標位置に自立走行させるので、金属板の外周も検査することができ、また、目標走行ルートに対する直進性を確保することができる。
【0013】
しかしながら、特許文献2に示す金属板用自走式検査装置の場合、回転ファンビームが航法用受信機で受信される間、回転ファンビームは周辺構造物の床面や壁面で反射し、複数の経路から同じビームを受信してしまうことがある。以下、同現象をマルチパスと称する。特に、探傷作業においては、探触子と被探傷材との間に水を供給する必要があるため、表面に水乗りした金属板が存在することになるが、同環境は非常にマルチパスを発生しやすい。マルチパスが発生した場合、反射を介さず直接受信する経路よりも遅れて受信することとなり、上述の航法用受信機の座標値の測定における外乱要因となる。誤った座標値を台車の現在位置、姿勢情報として、誘導制御に用いた場合、台車の暴走、板からの落下による破損を誘発する恐れがある。また、同座標値に基づき、金属板の内部のきず(欠陥)の配置を、金属板平面上でマップ化処理し、表示する過程においても、きず(欠陥)の位置が実際とずれることになるため、探傷結果の信頼性を低下させることになる。
【0014】
従って、本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、その目的は、屋内位置測定システムを用いて金属板を検査するに際し、マルチパスによる測定外乱を低減して金属板上の台車の位置及び角度を高精度に認識することができる金属板用自走式検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、マルチパスによる測定外乱について考察した。特許文献2に示す金属板用自走式検査装置において、各航法用送信機から射出される回転ファンビームはレーザであっても他の光線の場合であっても、電磁波の特性として、電界が進行方向と垂直に振動する特性を持つ。偏光は一般に楕円偏光であり、電界が互いに直交する成分に分けられる。電磁波が界面で反射される状況においては、
図25に示すように、電界が入射面IS内で振動する偏光の成分をp成分(p偏光)と呼び、電界が入射面ISに対して垂直に振動する偏光の成分をs成分(s偏光)と称する。一般的に、
図26に示すように、s成分(s偏光)の方がp成分(p偏光)より反射率が大きいので、界面からの反射光は一般にp成分(p偏光)が少なく、s成分(s偏光)を多く含む光となる。
図26及び
図27に示すように、p成分(p偏光)及びs成分(s偏光)を含む光がブリュースター角ΦBでガラス表面に入射すると、反射光は完全にs成分(s偏光)のみとなる。つまり、回転ファンビームが水乗りした金属板上で反射した場合、その反射ビームはp成分(p偏光)が少なく、s成分(s偏光)を多く含むことになる。
【0016】
本発明者らは、p成分(p偏光)を透過し、航法用受信機で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを、航法用送信機と航法用受信機との間に設置することより、反射ビームに多く含まれるs成分(s偏光)は遮断され、反射を介さず直接受信されるビームに含まれるp成分(p偏光)のみを受信することができ、マルチパスによる測定外乱を低減することができることに着目した。
【0017】
従って、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る金属板用自走式検査装置は、 三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査装置であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車と、前記台車に装着され、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を受信する航法用受信機と、前記台車に設けられた、金属板の傷を検査する検査用センサと、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させる制御手段とを具備し、前記屋内位置測定システムはIGPSであり、前記台車に装着された航法用受信機が、前記IGPSの1つ以上の航法用送信機から射出された回転ファンビームを、p成分を透過し、航法用受信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの回転ファンビームを前記屋内位置測定システム信号として認識するものであることを要旨とする。
【0018】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査装置は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査装置であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車と、前記台車に装着され、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を受信する航法用受信機と、前記台車に設けられた、金属板の傷を検査する検査用センサと、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させる制御手段とを具備し、前記屋内位置測定システムは光線を利用して測距及び測位するシステムであり、前記台車に装着された航法用受信機が、前記システムの1つ以上の航法用送信機から射出された光線を、p成分を透過し、航法用受信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの光線を前記屋内位置測定システム信号として認識するものであることを要旨とする。
【0019】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査装置は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査装置であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車と、前記台車に装着され、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を受信する航法用受信機と、前記台車に設けられた、金属板の傷を検査する検査用センサと、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させる制御手段とを具備し、前記屋内位置測定システムは赤外線を利用して測距及び測位するシステムであり、前記台車に装着された航法用受信機が、前記システムの1つ以上の航法用送信機から射出された赤外線を、p成分を透過し、航法用受信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの赤外線を前記屋内位置測定システム信号として認識するものであることを要旨とする。
【0020】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査装置は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査装置であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車と、前記台車に装着され、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を送信及び受信する航法用送信機と、前記台車に設けられた、金属板の傷を検査する検査用センサと、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させる制御手段とを具備し、前記屋内位置測定システムはレーザ三角測量技術を用いたものであり、前記台車に装着された航法用送信機がレーザを投光及び受光する機能を有するレーザ三角測量として構成され、前記航法用送信機から投光したレーザを、p成分を透過し、航法用送信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して1つ以上のリフレクタで反射させ、反射光を前記航法用送信機が前記フィルタを介して前記屋内位置測定システム信号として受光することを要旨とする。
【0021】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査方法は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査方法であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車に、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を受信する航法用受信機と、前記金属板の傷を検査する検査用センサとを装着し、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示して、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させるものであり、前記屋内位置測定システムはIGPSであり、前記台車に装着された航法用受信機が、前記IGPSの1つ以上の航法用送信機から射出された回転ファンビームを、p成分を透過し、航法用受信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの回転ファンビームを前記屋内位置測定システム信号として認識するものであることを要旨とする。
【0022】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査方法は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査方法であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車に、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を受信する航法用受信機と、前記金属板の傷を検査する検査用センサとを装着し、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させるものであり、前記屋内位置測定システムは光線を利用して測距及び測位するシステムであり、前記台車に装着された航法用受信機が、前記システムの1つ以上の航法用送信機から射出された光線を、p成分を透過し、航法用受信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの光線を前記屋内位置測定システム信号として認識するものであることを要旨とする。
【0023】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査方法は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査方法であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車に、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を受信する航法用受信機と、前記金属板の傷を検査する検査用センサとを装着し、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させるものであり、前記屋内位置測定システムは赤外線を利用して測距及び測位するシステムであり、前記台車に装着された航法用受信機が、前記システムの1つ以上の航法用送信機から射出された赤外線を、p成分を透過し、航法用受信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの赤外線を前記屋内位置測定システム信号として認識するものであることを要旨とする。
【0024】
また、本発明の別の態様に係る金属板用自走式検査方法は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムを用いて、金属板を検査する金属板用自走式検査方法であって、正転・逆転可能な少なくとも2つの車輪と、前記車輪を回転駆動するとともに、前記車輪を各々独立に、90°以上旋回駆動する駆動部とを有し、金属板面を走行する台車に、前記屋内位置測定システムを構成し、屋内位置測定システム信号を送信及び受信する航法用送信機と、前記金属板の傷を検査する検査用センサとを装着し、前記屋内位置測定システム信号を用いて認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて前記駆動部に前記車輪の正転・逆転・停止、および前記各車輪の旋回を指示し、前記台車に、左右移動、斜め移動、前後移動、またはその場での旋回をさせ、前記台車を所定の目標位置に自律走行させるものであり、前記屋内位置測定システムはレーザ三角測量技術を用いたものであり、前記台車に装着された航法用送信機がレーザを投光及び受光する機能を有するレーザ三角測量として構成され、前記航法用送信機から投光したレーザを、p成分を透過し、航法用送信機で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して1つ以上のリフレクタで反射させ、反射光を前記航法用送信機が前記偏光板を介して前記屋内位置測定システム信号として受光することを要旨とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る金属板用自走式検査装置及び検査方法によれば、屋内位置測定システムを用いて金属板を検査するに際し、マルチパスによる測定外乱を低減して金属板上の台車の位置及び角度を高精度に認識することができる金属板用自走式検査装置及び検査方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る屋内位置測定システムを用いた金属板用自走式検査装置を含む全体システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る屋内位置測定システムを用いた金属板用自走式検査装置を含む全体システムの概略構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る屋内位置測定システムを用いた金属板用自走式検査装置を含む全体システムのブロック図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置に用いられる台車の側面図である。但し、
図1においては、台車に装着された航法用受信機が、IGPSの航法用送信機から射出された回転ファンビームを、台車に設置された偏光板を介して受信する様子をともに示してある。
【
図5】偏光板の設置変更例を示す
図4と同様の図である。
【
図6】
図1に示す金属板用自走式検査装置から偏光板を取り外した状態で、台車に装着された航法用受信機が、IGPSの航法用送信機から射出された回転ファンビームを受信する様子を説明するための図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置に用いられる台車の正面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置に用いられる台車の駆動部を拡大して示す断面図である。
【
図10】金属板用自走式検査装置の走行方向を決定するステアリングパターンを説明するための説明図である。
【
図11】金属板の位置および姿勢情報を取得する手法を説明するための図である。
【
図12】金属板の位置および姿勢情報を取得する際のシステム構成を示す図である。
【
図13】金属板の位置および姿勢検出のためのフローチャートである。
【
図14】金属板の位置および姿勢検出の作業フローにおける板端の測定点に基づいて設定する座標系を示す図である。
【
図15】目標検査位置および検査経路の設定方法のフローチャートである。
【
図16】JISG0801圧力容器用鋼板の超音波探傷検査方法の7.6探傷箇所(走査箇所及び範囲)に規定される走査区分および探傷箇所を説明する図である。
【
図17】探傷において得られる一次情報であるAスコープ、Aスコープと走査位置の情報と紐付けて被探傷材の垂直断面に関するマップ化表示を行ったBスコープ、水平断面に関するマップ化表示を行ったCスコープの概念図である。
【
図18】金属板内部に存在するきず(欠陥)の例を示す図である。
【
図19】
図18に示した金属板内部のきず(欠陥)の配置を金属板平面上でマップ化処理して表示した例を示す図である。
【
図20】きず(欠陥)の深さ方向位置の情報を追加して、金属板内部のきず(欠陥)の配置を厚み方向にも把握した例を示す図である。
【
図21】四周辺探傷時の台車の動きを説明するための説明図である。
【
図22】金属板内部探傷時の台車の動きを説明するための説明図である。
【
図23】金属板四周辺探傷および内部の検査を行った場合の検査位置および経路を示す図である。
【
図25】電磁波が界面において反射する際のp成分(p偏光)及びs成分(s偏光)を説明するための図である。
【
図26】p成分(p偏光)とs成分(s偏光)に対するガラスの反射率を説明するためにグラフである。
【
図27】p成分(p偏光)及びs成分(s偏光)を含む光がブリュースター角でガラス表面に入射したときの反射光を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0028】
図1には、本発明の第1実施形態に係る屋内位置測定システムを用いた金属板用自走式検査装置を含む全体システムの概略構成が示されており、全体システム100は、屋内位置測定システム200と、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300とを備えている。
屋内位置測定システム200は、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムのうち、金属板用自走式検査装置300側に航法用受信機12を搭載する例として、IGPSを用いている。具体的には、屋内位置測定システム200は、複数の航法用送信機11と、航法用受信機12と、位置演算用ソフトウェアを含むホストコンピュータ13とから構成される。
第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300は、金属板10上を走行する台車14と、台車14に設けられた航法用受信機12および検査用センサである探触子を備えた探傷ヘッド35を含む検査機器15と、台車14を所定の目標位置に自立走行させるためのソフトウェアを含むホストコンピュータ13とから構成される。
【0029】
屋内位置測定システム(IGPS)200においては、各航法用送信機11は、2つの回転ファンビーム(扇形ビーム)を射出する。回転ファンビームは、赤外線レーザであるが、他のレーザであっても、他の光線であってもよい。一方、航法用受信機12は、複数の航法用送信機11から射出される回転ファンビームを受信して、複数の航法用送信機11からの相対的位置を把握できる。このとき、回転ファンビームは所定の角度でずれており、これを受信する航法用受信機12の座標値、すなわち、位置または高さを測定することができる。航法用受信機12における受信情報はホストコンピュータ13に無線伝送され、ホストコンピュータ13により、三角測量の原理に従って、航法用受信機12の位置を演算する。したがって、航法用受信機12の位置をこのような手法で演算することにより、航法用受信機12を搭載した走行中の台車14の現在位置、姿勢情報をリアルタイムで得ることができる。
【0030】
ここで、各航法用送信機11から射出される回転ファンビームはレーザであっても他の光線の場合であっても、電磁波の特性として、電界が進行方向と垂直に振動する特性を持つ。偏光は一般に楕円偏光であり、電界が互いに直交する成分に分けられる。電磁波が界面で反射される状況においては、前述した
図25に示すように、電界が入射面IS内で振動する偏光の成分をp成分(p偏光)と呼び、電界が入射面ISに対して垂直に振動する偏光の成分をs成分(s偏光)と称する。一般的に、
図26に示すように、s成分(s偏光)の方がp成分(p偏光)より反射率が大きいので、界面からの反射光は一般にp成分(p偏光)が少なく、s成分(s偏光)を多く含む光となる。
図26及び
図27に示すように、p成分(p偏光)及びs成分(s偏光)を含む光がブリュースター角ΦBでガラス表面に入射すると、反射光は完全にs成分(s偏光)のみとなる。つまり、回転ファンビームが水乗りした金属板上で反射した場合、その反射ビームはp成分(p偏光)が少なく、s成分(s偏光)を多く含むことになる。
【0031】
従って、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300においては、
図1及び
図4に示すように、p成分(p偏光)を透過し、、航法用受信機12で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタ18を、航法用受信機12を囲繞するように台車14上に設置し、金属板10上の水Wから反射する反射ビームに多く含まれるs成分(s偏光)を遮断し、反射を介さず直接受信されるビームに含まれるp成分(p偏光)のみを受信し、マルチパスによる測定外乱を低減するようにしている。つまり、台車14に装着された航法用受信機12が、IGPSの複数の航法用送信機11から射出された回転ファンビームを、p成分を透過し、航法用受信機12で検出するs成分が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタ18を介して受信してこの回転ファンビームを屋内位置測定システム信号として認識するようにしている。これにより、屋内位置測定システム200を用いて金属板10を検査するに際し、マルチパスによる測定外乱を低減して金属板10上の台車14の位置及び角度を高精度に認識することができる。
【0032】
なお、フィルタ18は、航法用受信機12を囲繞するように台車14上に設置する必要は必ずしもなく、台車14に装着された航法用受信機12が、IGPSの複数の航法用送信機11から射出された回転ファンビームをフィルタ18を介して受信できる箇所に設置すればよい。例えば、筒状のフィルタ18を、
図5に示すように、各航法用送信機11の周囲を囲繞するように設置してもよい。この場合、各航法用送信機11から射出された回転ファンビームはp成分(p偏光)のみとなり、金属板10上の水wでp成分(p偏光)が屈折し、直接受信されるビーム中のp成分(p偏光)のみが航法用受信機12に受信される。これにより、マルチパスによる測定外乱を低減することができる。
また、フィルタ18の形状は、筒状に限定されるものではなく、台車に装着された航法用受信機12が、IGPSの複数の航法用送信機11から射出された回転ファンビームをフィルタ18を介して受信できる形状にすればよい。
【0033】
一方、
図6に示すように、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300からフィルタ18を取り外した状態で、台車14に装着された航法用受信機12が、IGPSの航法用送信機11から射出された回転ファンビームを受信する場合、金属板10上の水Wから反射する反射ビームに多く含まれるs成分(s偏光)と、反射を介さず直接受信されるビームに含まれるp成分(p偏光)及びs成分(s偏光)とが受信され、マルチパスによる測定外乱が生じる。
また、
図2には、本発明の第2実施形態に係る屋内位置測定システムを用いた金属板用自走式検査装置を含む全体システムの概略構成が示されており、全体システム100′は、屋内位置測定システム200′と、第2の実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′とを備えている。
【0034】
屋内位置測定システム200′は、IGPSとは逆に、三角測量の原理に基づいて屋内空間内での自己位置測定を行う屋内位置測定システムのうち、金属板用自走式検査装置300′側に航法用送信機12′を搭載する例として、オフィスビル内を自律走行する清掃ロボットに搭載されたレーザ三角測量技術を用いている(例えば、http://robonable.typepad.jp/news/2009/11/25subaru.html参照)。具体的には、屋内位置測定システム200′は、台車14の上部に設置した航法用送信機12′と、複数のリフレクタ11′と、位置演算用ソフトウェアを含むホストコンピュータ13とから構成される。
【0035】
第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′は、金属板10上を走行する台車14と、台車14の上部に設けられた航法用送信機12′と、検査用センサである探触子を備えた探傷ヘッド35を含む検査機器15と、台車14を所定の目標位置に自立走行させるためのソフトウェアを含むホストコンピュータ13とから構成される。
本実施形態では航法用送信機12′はレーザ三角測量として構成され、台車14の自律走行は、レーザ三角測量である航法用送信機12′と、例えば壁面に設置したリフレクタ11′により行う。航法用送信機12′を構成するレーザ三角測量は台車14の上部に設けられ、レーザを投光および受光する機能を有する。そして、航法用送信機(レーザ三角測量)12′から360°レーザLを投光し、リフレクタ11′からの反射光を航法用送信機12′は屋内位置測定システム信号として受光し、反射光が戻ってくるまでの時間からそれまでの距離を、角度から各リフレクタ11′の方向をそれぞれ認識し、事前に登録したリフレクタの座標位置と比較することで位置や方向を算出することが可能となる。
【0036】
そして、第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′においては、
図2に示すように、p成分(p偏光)を透過し、航法用送信機12′で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有する筒状のフィルタ18を、航法用送信機12′を囲繞するように台車14上に設置している。そして、航法用送信機12′から投光したレーザを、p成分を透過し、航法用送信機12′で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタ18を介して1つ以上のリフレクタ11′で反射させ、反射光を航法用送信機12′が前述のフィルタ18を介して屋内位置測定システム信号として受光するようにしている。これにより、金属板10上の水Wでの反射を介さず直接受信されるビームに含まれるp成分(p偏光)のみを受光し、マルチパスによる測定外乱を低減するようにしている。これにより、屋内位置測定システム200′を用いて金属板10を検査するに際し、マルチパスによる測定外乱を低減して金属板10上の台車14の位置及び角度を高精度に認識することができる。
【0037】
ここで、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300と、第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′とは、台車14に航法用受信機12が設けられているか、または航法用送信機12′が設けられている違いだけであるので、以下の説明は、台車14に航法用受信機12を搭載した第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300を用い、屋内位置測定システム(IGPS)200を用いた場合について説明する。
ホストコンピュータ13は、
図3に示すように、航法用受信機12の位置を演算するための現在位置演算用ソフトウェア16と、目標検査位置、経路情報を設定し、また台車14からの検査データ、検査位置情報を評価する設定・評価ソフトウェア17とを有する。
【0038】
図3に示すように、台車14は、屋内位置測定システム200の一部である航法用受信機12と、探傷ヘッド35を含む検査機器15と、搭載コンピュータ21と、金属板10のエッジを検知するエッジ検知用センサ22と、IOボード23と、走査用アクチュエータ24と、コントローラおよびドライバを含む駆動制御部25と、走行するための車輪26と、車輪駆動用および旋回用の車輪用モータ27とが本体に取り付けられた状態で構成されている。
台車14は、目標ルートに沿って自律走行する機能と、金属板10の検査を行う機能の2つの機能を有する。
【0039】
前者の機能については、先に説明した屋内位置測定システム200の一部である航法用受信機12、搭載コンピュータ21、駆動制御部25、車輪26、および車輪用モータ27が担う。すなわち、前述のホストコンピュータ13における演算結果である台車の現在位置、姿勢情報および目標検査位置に関する情報は、それぞれ無線通信により台車に搭載された搭載コンピュータ21に無線伝送され、搭載コンピュータ21において目標検査位置に対する現在位置の偏差を演算する。同偏差のうち台車本体の位置および姿勢に依存する偏差が0となるように、駆動制御部25から車輪用モータ27に制御信号を出力して、車輪26の速度、ステアリング角度のフィードバック制御を行うことで目標走行ルートに沿った自律走行を行う。
【0040】
後者の機能については、金属板10と接触させて検査を行う探触子(検査用センサ)を備えた探傷ヘッド35を含む検査機器15、検査用センサである探触子を含む探傷ヘッド35を水平方向に走査するための走査用アクチュエータ24、搭載コンピュータ21、および駆動制御部25が担う。すなわち、搭載コンピュータ21においてホストコンピュータ13からの目標検査位置と現在台車位置情報より、検査機器15の構成要素である探触子を含む探傷ヘッド35を走査する走査用アクチュエータ24の必要走査量を演算し、駆動制御部25はその必要走査量分だけ走査用アクチュエータ24を走査させる。走査用アクチュエータ24の位置情報は搭載コンピュータ21にフィードバックされ、台車現在位置情報と合わせて検査位置情報として演算される。検査機器15における検査データは検査機器からIOボード23を介して搭載コンピュータ21に取り込み、検査位置情報と合わせて、ホストコンピュータ13に無線送信する。このとき、走査用アクチュエータ24は、台車14を自立走行させる制御と連動して探触子の位置制御をしてもよいし、台車14の自立走行と独立して探触子の位置制御をしてもよい。
【0041】
次に、金属板用自走式検査装置300の主要部をなす台車14の構成について、
図4、
図7、
図8及び
図9を参照して説明する。
図4は台車14の側面図、
図7は
図4におけるA−A線に沿う断面図、
図8は台車の正面図、
図9は台車14の駆動部を拡大して示す断面図である。
台車14は、台車本体31を有しており、台車本体31は、上段部31a、中段部31b、及び下段部31cに分かれている。
上段部31aには、航法用受信機12、搭載コンピュータ21、IOボード23の他、検査機器15の一部をなす超音波探傷器32および無線通信ユニット33が設けられている。そして、上段部31aの上面には、前述した筒状の偏光板18が航法用受信機12の周囲を囲繞するように設置されている。
【0042】
中段部31bには、水供給手段としての水タンク34が設けられている。超音波探傷による金属板10の検査を行う場合には、探触子と金属板10との間は、常時、水Wで満たしておく必要があるため、水タンク34から水供給用ホース(図示せず)を介して、探触子と金属板10との間に、常時、水Wを供給する。なお、水タンク34の容積には限界があるので、水源を外部に設けてホースで供給するようにしてもよい。
また、下段部31cには、その周囲に設けられたエッジ検知用センサ22、走行用の車輪26、駆動制御部25、車輪用モータ27としての車輪駆動用モータ27aおよび旋回用モータ27b、検査機器15の一部をなす探傷ヘッド35、エッジ検知用センサコントローラ37、及びバッテリー38が設けられている。
【0043】
探傷ヘッド35は、検査用センサである探触子を有しており、探傷ヘッド支持機構36により支持されている。探傷ヘッド35は、探傷ヘッド支持機構36を介して垂直軸39に取り付けられており、垂直軸39は垂直レール40に沿って垂直方向に移動可能となっている。また、垂直軸39は取付部41により水平レール42に取り付けられており、水平レール42は走査用アクチュエータ24(
図4、7、8では図示せず)により水平走査軸43に沿って走査される。
【0044】
エッジ検知用センサ22は、渦流式センサにより構成されており、これにより、金属板10上を台車14が自律走行している際に金属板10の板端を検知し、台車14が金属板10からはみ出して落下することを防止する。また、これと同時にエッジ検知用センサ22は、四周辺探傷時の板端の探傷において、板端に沿って走行するためのセンサとして用いられる。例えば、
図7に示すように、探傷ヘッド35が設置されている側の辺については、2つのエッジ検知用センサ22が探傷ヘッド35と同一線上となるように設置されている。これにより、2つのエッジ検知用センサ22が常に板端を検出するように台車14の走行方向を制御することにより、板端に沿った探傷ヘッド35による検査が可能である。また、探傷ヘッド35が設置されていない側の辺についても、同様に左右各2つのエッジ検知用センサ22が配置されている。
【0045】
車輪26は、台車14の底部に各々独立に90°以上旋回可能に4つ設置されており、これらによる全方向制御が可能である。複数の車輪用モータ27のそれぞれの符合するモータエンコーダ(図示せず)を用いてモータの作動状態を検出した後、検出された信号を用いて通常のロボットの制御に用いられる全方向制御が行われるようになる。
駆動部50は、各車輪26を独立して駆動するもので車輪26毎に1つずつ設けられており、それぞれ、
図9示すように、車輪用モータ27として、車輪車輪駆動用モータ27aとステアリングのための旋回用モータ27bとを有する。ステアリングのための旋回用モータ27bの軸にはピニオンギア51が取り付けられており、そのピニオンギア51をステアリングターンテーブル52の外円周縁のラックギア53に噛合されている。
【0046】
図9に示すように、ステアリングターンテーブル52の上部には車輪車輪駆動用モータ27aのハウジング(図示せず)が装着されており、車輪車輪駆動用モータ27aの減速ギアの出力回転軸54がステアリングターンテーブル52を通過して下方に延びている。出力回転軸54の下端には、第1交差軸ギア55が結合されている。第1交差軸ギア55には第2交差軸ギア56が噛合されており、第2交差軸ギア56は車輪26の軸部材57に結合されている。軸部材57は、ステアリングターンテーブル52から下方に延びた懸架構造58により回転可能に支持されている。
【0047】
したがって、車輪駆動用モータ27aにより各車輪26が回転され、旋回用モータ27bにより車輪26がステアリングターンテーブル52および懸架構造58とともに旋回されるようになっている。車輪車輪駆動用モータ27aは、車輪26を正転・逆転させることができ、旋回用モータ27bは、台車14が走行する金属板面と直行し、かつ車輪26に対し台車中心側にオフセットする軸まわりに90°以上旋回することができるようになっている。
【0048】
次に、金属板用自走式検査装置300の走行方向を決定するステアリングパターンを説明する。
図10はそのステアリングパターンを説明するための説明図である。(a)は左右移動、(b)は斜め移動、(c)は前後移動、(d)は超信地旋回のステアリング状態である。
なお、超信地旋回とは、油圧ショベルや戦車など履帯(クローラー)を持つ車輌が左右のクローラーを同速度で互いに反対に回転させることによって、移動することなく車体の向きを変えることをいう。
【0049】
次に、第1実施形態に係る屋内位置測定システム(IGPS)を用いた金属板用自走式検査装置300における検査動作について説明する。
最初に、目標検査位置および検査経路の設定の前過程における、金属板10の位置および姿勢情報の取得について説明する。
図11は金属板10の位置および姿勢情報を取得する手法を説明するための図、
図12はその際のシステム構成を示す図である。
図11及び
図12に示すように、ここでは屋内位置測定システム200の航法用受信機12を取り付けた金属板位置および姿勢検出用治具60の接触式プローブ61を、測定ターゲットである金属板10の隅位置にあてがってその位置測定を行う。その際の接点座標を高精度に測定するため、航法用受信機12と接触式プローブ61の幾何学的位置関係は通常±50マイクロメートル以内の高い精度で決定している。屋内位置測定システム200において、航法用受信機12の位置(X,Y,Z)および姿勢(θx,θy,θz)の情報が得られるため、航法用受信機12と接触式プローブ61との位置関係が決まっていれば、航法用受信機12の位置情報を接触プローブ位置での位置情報に換算する演算を行うことができる。
【0050】
図13は金属板10の位置および姿勢検出のためのフローチャート、
図14は金属板10の位置および姿勢検出の作業フローにおける板端の測定点に基づいて設定する座標系を示す図である。
まず、屋内位置測定システム200を構成するホストコンピュータ13における操作画面において、金属板の端縁位置検出モードを選択する(工程1)。続いて金属板位置及び姿勢検出用冶具60を用いて、原点の板端隅(コーナ)として、測定点A位置を測定する(工程2)。続いて、測定点Aと圧延方向に隣り合う板隅(コーナ)として、板端測定点B位置を測定する(工程3)。続いて測定点Aと対角板隅(コーナ)として、板端測定点C位置を測定する(工程4)。このようにして金属板10の4隅(コーナ)のうち、少なくとも3隅(コーナ)において端縁位置を検出した上で、同3点を隅(コーナ)に含む矩形形状を演算することにより、金属板10の位置および姿勢を検出することができる。そして、上記測定点A(原点)、B、Cの測定位置座標データを3隅(コーナ)に含む矩形形状を仮定した場合の金属板10の位置と姿勢をホストコンピュータ13にて演算し、測定点Aを原点とし、測定点AからBへのベクトル方向をX方向、それと直行する方向をY方向とする座標系を設定する(工程5)。なお、本座標系は以降、金属板座標系と称する。
【0051】
なお、金属板10は必ずしも矩形状ではないため、そのような場合を想定し、金属板10の4隅を線上で結ぶ4角形状として、金属板10の位置および姿勢を検出するようにしてもよい。
なお、第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′の場合は、屋内位置測定システム200′のレーザ三角測量で構成される航法用送信機12′を取り付けた金属板位置および姿勢検出用治具に上記の接触式プローブ61設け、それを測定ターゲットである金属板10の隅位置にあてがってその位置測定を行えばよい。
【0052】
次に、目標検査位置および検査経路の設定方法について説明する。
図15は目標検査位置および検査経路の設定方法のフローチャートである。前述したように金属板座標系を設定した後、ホストコンピュータ13における設定・評価ソフトウェア17において、金属板の目標検査位置設定モードを選択し(工程6)、工業規格、顧客との契約に基づき金属板の検査パターンを選択する(工程7)。引き続き、設定・評価ソフトウェア17上において、金属板四周辺の探傷については、探傷箇所、ピッチ、回数を指定し(工程8)、鋼板内部の探傷については、探傷箇所、探触子の走査方向、ピッチを指定する(工程9)。同指定と金属板10の位置および姿勢情報に基づき設定・評価ソフトウェア17は金属板座標系において目標検査位置および検査経路を決定する(工程10)。
【0053】
検査パターンの例として、
図16に、JISG0801圧力容器用鋼板の超音波探傷検査方法の7.6探傷箇所(走査箇所及び範囲)に規定される走査区分および探傷箇所を説明する図を示す。同規格においては、探傷箇所としては、金属板の四周辺および鋼板内部の探傷が指定されており、四周辺については探傷ピッチ、鋼板内部については探傷ピッチおよび走査方向に関して指定がある。このような金属板の検査に関しては、JISに限らず、海外規格含め様々な規格が存在する上、最終的には顧客との契約に基づく検査を実施する必要があるため、上記検査パターンの選択においては、必要に応じて事前に検査パターンを設定するためのソフトウェアを準備しておくことで顧客の要求に応じた柔軟な対応が可能となる。
【0054】
図17は、探傷において得られる一次情報であるAスコープ、Aスコープと走査位置の情報と紐付けて被探傷材の垂直断面に関するマップ化表示を行ったBスコープ、水平断面に関するマップ化表示を行ったCスコープの概念図である。Aスコープは、探傷における一次情報として得られるものであり、エコーピーク高さより「きずの程度」、超音波伝搬時間より「きずの深さ方向位置」の情報を抽出可能である。
JISG0801圧力容器用鋼板の超音波探傷検査方法における「9.きずの分類及び評価」には、エコーピーク高さに基づく「きずの程度」の判定方法を規定しているが、「きずの深さ方向位置」の表示に関しては規定が無いのが現状である。しかし、Aスコープの超音波伝搬時間より「きずの深さ方向位置」の情報を抽出可能である。品質保証、顧客の要求に応じた柔軟な対応のためには「きずの深さ方向位置」も含め、製品である鋼板内の3次元なきずの分布を把握しておく必要がある。
【0055】
探触子を目標検査位置および検査経路に走査させる際に、探触子の現在位置を同定しながら検査し、金属板10の平面上での検査位置情報と関連付けられた探傷情報を得ることにより、欠陥の位置を正確に把握することができる。例えば、金属板10の内部に、
図18に示すようなきず(欠陥)が存在する場合に検査位置情報と関連付けられた探傷情報に基づき、
図19に示すように、金属板10の内部のきず(欠陥)の配置を、金属板平面上でマップ化処理し、表示することにより、きず(欠陥)の平面的な配置を可視化することができ、欠陥の把握を容易に行うことができる。また、「金属板平面上」での検査位置情報と関連付けられた探傷情報に、超音波伝搬時間に基づく「きずの深さ方向位置」の情報を追加することにより、
図20に示すように、金属板10の内部のきず(欠陥)の配置を厚み方向にも把握することができ、金属板平板内で3次元的にマップ化処理し、表示することが可能となる。具体的には、
図17に示すように、Aスコープと走査位置の情報と紐付けて被探傷材の垂直断面に関するマップ化表示を行ったBスコープ、水平断面に関するマップ化表示を行ったCスコープを得ることができる。
【0056】
前述した航法用受信機12と接触式プローブ61からなる金属板位置および姿勢検出用冶具60による金属板10の位置および姿勢情報の取得においては、金属板10の形状は矩形形状を前提としているため、金属板10に曲がりがある場合等は前記方法による金属板10の板端認識位置と実際の板端位置に差異が生じ、矩形形状を前提として決定した目標検査位置及び検査経路に基づいて走行した場合には、台車14が金属板10から落下する可能性がある。したがって、前述のように、四周探傷時には目標検査位置および検査経路に加え、装置周囲に設置されたエッジ検知用センサで補正しながら走行する。
【0057】
図21は四周辺探傷時の自走式検査装置(台車)の動きを説明するための説明図である。
(1)
図21における金属板10の下側の板端を検査する際には探傷ヘッド35と同一線上となるように台車14の側面に設置された、2つのエッジ検知用センサ22が常に板端を検出するように台車14は、その走行方向を制御して走行する。
(2)目標検査位置および検査経路に基づき、走行方向の先にある板端位置が近づいてくると、台車14は減速を開始し、
(3)最終的に台車14の正面に設置された、2つのエッジ検知用センサ22が金属板10のエッジを検出した時点で一旦停止する。
【0058】
(4)続いて探傷ヘッド35を水平方向に走査するためのアクチュエータ(図示せず)により、探傷ヘッド35が板端位置に到るまで移動される。
(5)台車14は停止した状態で旋回用モータ(図示せず)を駆動し、車輪26をそれまでの進行方向と直行する向きとなるようにステアリングする。
(6)台車14を前進させ、
図21における金属板10の左側の板端の検査を行う。以下、所定の四周探傷が完了するまで繰り返す。
【0059】
図22は金属板内部探傷時の自走式検査装置(台車)の動きを説明するための説明図である。
金属板10の内部は板端に依存せず、前述の目標検査位置および検査経路に基づいて検査を行う。目標検査位置経路に応じ、目標台車位置および探触子(探傷ヘッド35)を走査するアクチュエータ(図示せず)の目標走査量を決定し、車輪26の駆動、ステアリングに関する制御および探触子走査用アクチュエータを走査する。
図23は金属板四周辺探傷および内部の検査を行った場合の検査位置および経路を示す図である。ここでは、最初に、(a)に示すように、四周探傷を板端および板端から75mm内側の2周実施した後、(b)〜(e)に示すように、隣り合う走査線からの距離を50mmピッチで圧延方向に検査を行ったケースを示している。
【0060】
以上のように、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300によれば、空間に設置された屋内位置測定システム(IGPS)200の1つ以上の航法用送信機11から射出された回転ファンビームを受信してこの回転ファンビームをIGPS信号として認識する航法用受信機12を、金属板10の傷を検査する検査用センサを備えた台車14に設置し、IGPS信号を用いて自己位置を認識し、第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′によれば、金属板10の傷を検査する検査用センサを備えた台車14に航法用送信機12′を設置し、そこからレーザ三角測量で360°レーザを投光し、リフレクタ11′からの反射光を受信することで自己位置を認識する。これにより、金属板のマーキングや画像処理用のマークを用いることなく、金属板上における台車の位置および角度を高精度で認識することができる。また、そのように認識した自己位置と目標位置からの偏差を演算し、その偏差に応じて車輪の正転・逆転・停止を指示して台車を所定の目標位置に自律走行させるので、金属板の外周も検査することができ、また、目標走行ルートに対する直進性を確保することができる。
【0061】
そして、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300によれば、屋内位置測定システム200はIGPSであり、台車14に装着された航法用受信機12が、IGPSの1つ以上の航法用送信機11から射出された回転ファンビームを、p成分を透過し、航法用受信機12で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタ18を介して受信してこの回転ファンビームを屋内位置測定システム信号として認識する。これにより、屋内位置測定システム200を用いて金属板10を検査するに際し、マルチパスによる測定外乱を低減して金属板10上の台車14の位置及び角度を高精度に認識することができる。
【0062】
また、第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′によれば、屋内位置測定システム200′はレーザ三角測量技術を用いたものであり、台車14に装着された航法用送信機12′がレーザを投光及び受光する機能を有するレーザ三角測量として構成され、航法用送信機12′から投光したレーザを、p成分を透過し、航法用送信機12′で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタ18を介して1つ以上のリフレクタ11′で反射させ、反射光を航法用送信機12′がフィルタ18を介して屋内位置測定システム信号として受光する。これにより、屋内位置測定システム200′を用いて金属板10を検査するに際し、マルチパスによる測定外乱を低減して金属板10上の台車14の位置及び角度を高精度に認識することができる。
【0063】
また、いずれの実施形態に係る金属板用自走式検査装置300、300′においても、予め測定した金属板10の位置および姿勢情報に基づき、金属板10と近接して走査する探触子の走査パターン、ならびに所定パターンに対応した検査位置および経路を決定し、その走査経路を達成するように、探触子の台車14に対する位置を決定するアクチュエータおよび台車位置の目標位置を決定することができるので、種々な走査パターンに対応できる。特に台車位置については目標位置と航法用受信機12に基づく現在位置との偏差が探傷上の許容量以下となるように制御することができるので、どのような走査パターンであっても高精度で対応することができる。
【0064】
さらに、いずれの実施形態に係る金属板用自走式検査装置300、300′においても、金属板10の上面を走行する台車14が、正転・逆転可能な4つの車輪26を有し、駆動部50が、各車輪26に対応して設けられ、車輪用モータ27が、各車輪26を回転駆動させる車輪車輪駆動用モータ27aと、台車14が走行する金属板10面と直行し、かつ車輪26に対し台車中心側にオフセットする軸まわりに、車輪26を90°以上旋回させることが可能な旋回用モータ27bとにより構成されることよって、台車14は、一般的な前進後進に加え、台車14の正面の向きを保持した状態での斜め移動、左右移動が可能、更にその場での旋回動作が可能となり、目標位置に対する現在位置の偏差を生じさせる各種外乱に対して、台車14のきめ細かい位置調整が可能であり、目標走行経路に対する直進性を極めて高いものとすることができる。
【0065】
さらにまた、金属板面を走行する台車に、検査対象である金属板のエッジを検知するためのエッジ検知用センサを設けたので、台車が金属板からはみ出して落下することが防止され、かつ金属板のエッジの検査の際に、金属板のエッジに沿った検査が可能となる。
さらにまた、いずれの実施形態に係る金属板用自走式検査装置300、300′においても、金属板10の製品検査規格に則って金属板表面の傷や内部欠陥を自動的に探傷することが可能であり、検査員が探傷ヘッドを操作して金属板表面の傷を探査する必要がなくなり、水を散水した金属板上での転倒事故等から解放される利点がある。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
例えば、屋内位置測定システム200は、IGPSに限らず、他の光線を利用して測距及び測位するシステムであってもよい。この場合、台車14に装着された航法用受信機が、このシステムの1つ以上の航法用送信機から射出された光線を、p成分を透過し、航法用受信機12で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの光線を屋内位置測定システム信号として認識するものとする。
【0067】
また、屋内位置測定システム200は、赤外線を利用して測距及び測位するシステムであってもよい。この場合、台車14に装着された航法用受信機が、システムの1つ以上の航法用送信機から射出された赤外線を、p成分を透過し、航法用受信機12で検出するs成分(s偏光)が環境光のビーム強度以下となるような透過率を有するフィルタを介して受信してこの赤外線を屋内位置測定システム信号として認識するものとする。
また、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300が適用される屋内位置測定システム200における航法用送信機11の数、および第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′が適用される屋内位置測定システム200′におけるリフレクタ11′の数は1つ以上あればよい。
【0068】
また、第1実施形態に係る金属板用自走式検査装置300において、フィルタ18は、前述したように、航法用受信機12を囲繞するように台車14上に設置する必要は必ずしもなく、台車14に装着された航法用受信機12が、IGPSの複数の航法用送信機11から射出された回転ファンビームをフィルタ18を介して受信できる箇所に設置すればよい。また、フィルタ18の形状も、前述したように、筒状に限定されるものではなく、台車に装着された航法用受信機12が、IGPSの複数の航法用送信機11から射出された回転ファンビームをフィルタ18を介して受信できる形状にすればよい。
また、第2実施形態に係る金属板用自走式検査装置300′において、フィルタ18は、筒状に形成され、航法用送信機12′を囲繞するように台車14上に設置されているが、フィルタ18の形状及び設置位置は、これに限られない。
また、台車14に設置される車輪26は、4つに限らず、少なくとも2つ以上あればよい。