特許第6973429号(P6973429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田中央研究所の特許一覧

<>
  • 特許6973429-プラズマ装置 図000002
  • 特許6973429-プラズマ装置 図000003
  • 特許6973429-プラズマ装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973429
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】プラズマ装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/26 20060101AFI20211111BHJP
   C23C 16/509 20060101ALN20211111BHJP
【FI】
   H05H1/26
   !C23C16/509
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-29132(P2019-29132)
(22)【出願日】2019年2月21日
(65)【公開番号】特開2020-136112(P2020-136112A)
(43)【公開日】2020年8月31日
【審査請求日】2020年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中西 和之
(72)【発明者】
【氏名】太田 理一郎
【審査官】 中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−060871(JP,A)
【文献】 特開平10−129627(JP,A)
【文献】 特開2004−353066(JP,A)
【文献】 特開2005−005065(JP,A)
【文献】 特開2005−072347(JP,A)
【文献】 特開2006−302623(JP,A)
【文献】 特開2011−165718(JP,A)
【文献】 特開2013−258137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/26
C23C 16/509
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが供給される導入部と、
該導入部の下流側に配設され、上流側から順に積層された第1絶縁体、第1電極、第2絶縁体および第2電極を有する生成部とを備え、
該生成部は、該第1絶縁体、該第1電極、該第2絶縁体および該第2電極を上流側から下流側に貫通して導入部から連通する連通孔を有し、
該導入部は、該連通孔へガスを流入させ、
該第1電極は、該第1絶縁体および該第2絶縁体に対して面方向に相対変位でき、
該第1電極と該第2電極の間に電圧が印加されたときに、該連通孔の一部を構成する該第1電極の内周面と該第2電極の内周面との間で生成されたプラズマを、該連通孔の下端開口からワークに向けて噴出させ得るプラズマ装置。
【請求項2】
前記第1電極は、両面全体が前記第1絶縁体と前記第2絶縁体により覆われている請求項1に記載のプラズマ装置。
【請求項3】
前記第電極は、記第2絶縁体に対して、面方向に相対変位し得る請求項1または2に記載のプラズマ装置。
【請求項4】
さらに、前記導入部と前記第1電極を連結する第1連結具を備え、
該導入部および該第1連結具は導電材からなる請求項1〜3のいずれかに記載のプラズマ装置。
【請求項5】
前記第1連結具は、前記第1絶縁体に遊貫されている請求項4に記載のプラズマ装置。
【請求項6】
さらに、少なくとも前記連通孔の下流側を準大気圧雰囲気とする排気手段を備える請求項1〜5のいずれかに記載のプラズマ装置。
【請求項7】
さらに、前記連通孔の下流側に配設され、処理対象であるワークを載置できるステージを備える請求項1〜6のいずれかに記載のプラズマ装置。
【請求項8】
前記ステージは、前記ワークの移動手段を有する請求項7に記載のプラズマ装置。
【請求項9】
前記ステージは、前記ワークの温度調整手段を有する請求項7または8に記載のプラズマ装置。
【請求項10】
前記第1電極は、前記第2電極に対してプラズマ発生に必要な電位とされ、
前記ステージは、前記第2電極に対して同電位またはバイアス電位とされる請求項7〜9のいずれかに記載のプラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマの発生またはプラズマを用いた処理を可能とするプラズマ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体の分子(原子)が陽イオンと電子(両者を併せて単に「荷電粒子」という。)に電離した状態となるプラズマは、様々な分野で利用されている。特にグロー放電等により形成される低温プラズマは制御性に優れ、半導体層や絶縁層等の形成、DLC等の薄膜形成(特にCVD)、表面処理(表面改質)、エッチング等の各種処理に広く利用されている。
【0003】
もっとも、従来のプラズマを用いた処理は、主に、数百Pa以下の低圧雰囲気中でなされていた。このプラズマを用いた処理が大気圧〜準大気圧の雰囲気(単に「大気圧近傍雰囲気」という。)で可能となれば、処理コストの大幅な低減が可能となる。そこで、大気圧近傍雰囲気下でプラズマを発生させ得る装置等に関する提案が種々なされており、例えば、下記の特許文献に関連する記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−272318号公報
【特許文献2】特開2008−98128号公報
【特許文献3】特開2004−353066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2では、誘電体バリア放電によりプラズマを発生させている。誘電体バリア放電では、電極間の誘電体により放電電流が制限され、アーク放電が生じる前に終息する。つまり、誘電体バリア放電は、常にパルス的な放電となり、ジュール加熱も抑制さる。その結果、誘電体バリア放電を用いると、大気圧非平衡プラズマが安定的に得られる。しかし、誘電体バリア放電は、放電電流の抑制により電流密度が小さく、表面改質等の処理に十分なプラズマ密度が得られ難い。
【0006】
特許文献3は、ホローカソード電極の電極孔内で、マイクロカソードプラズマ放電をさせて、プラズマを発生させている。もっとも、その電極はチャンバ内に露出しており、放電は電極孔のみならず、電極とチャンバ間でも生じ得る。例えば、特許文献3の図1を見ると、電極である有孔導電部材4bとチャンバ2の間には、直流電源7により電圧が印加されている。そして、チャンバ2内でもプラズマが生成される旨が記載されている([0026]、[0027]、[0037]等)。このため、特許文献3の装置では、電極孔(3)内で高密度なプラズマが生成され難く、電極孔からワークへプラズマ(ラジカル、イオン等)を効率的に付与できない。また、特許文献3の装置では、チャンバ内でもプラズマを生成させるため、チャンバー内壁面が汚染等され易く、頻繁なメンテナンスを必要とする。
【0007】
さらにいうと、大気圧近傍雰囲気でプラズマを発生させる場合、電極は高温になり易い。このため特許文献3の場合なら、セラミックスからなる有孔スペーサ4aと金属からなる有孔導電部材4bとの間で、相応に大きな熱膨張差が生じ得る。しかし、特許文献3の有孔スペーサ4aと有孔導電部材4bは、両側端が拘束されたまま固定されている。つまり、特許文献3の装置では、熱膨張差(高温対策)が何ら考慮されておらず、この点に関して特許文献3は全く言及していない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる新たな構造を有し、大気圧近傍雰囲気下でも、プラズマの発生やプラズマを用いた処理を安定的に行えるプラズマ装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、貫通孔内に露出した電極の内周壁面間だけで放電(プラズマ発生)をさせて、その貫通孔からラジカルやイオン等をワークに向けて噴出させることを着想した。これを具現化した新たな構造のプラズマ装置を完成させた。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
【0010】
《プラズマ装置》
(1)本発明は、ガスが供給される導入部と、該導入部の下流側に配設され、上流側から順に積層された第1絶縁体、第1電極、第2絶縁体および第2電極を有する生成部とを備え、該生成部は、該第1絶縁体、該第1電極、該第2絶縁体および該第2電極を上流側から下流側に貫通して導入部から連通する連通孔を有し、該導入部は、該連通孔へガスを流入させ、該第1電極と該第2電極の間に電圧が印加されたときに、該連通孔の一部を構成する該第1電極の内周面と該第2電極の内周面との間で生成されたプラズマを、該連通孔の下流側開口からワークに向けて噴出させ得るプラズマ装置である。
【0011】
(2)本発明のプラズマ装置(単に「装置」ともいう。)によれば、導入部内では放電が生じず、連通孔内に露出した第1電極の内周面と第2電極の内周面の間でのみ放電を生じ、連通孔内に高密度なプラズマを効率的に生成させ得る。連通孔内に生じた高密度な電子、ラジカル、イオン等は、連通孔の上流側にある上端開口から導入されたガスの流れ(気流)に押し出されて、連通孔の下流側にある下端開口から流出(さらには噴出)する。このように本発明の装置によれば、誘電体バリア放電の場合と異なり、大きな放電電流により、高い電流密度のプラズマを生成でき、大気圧近傍雰囲気(大気圧〜準大気圧の雰囲気)にあるワークに対しても、効率的なプラズマ処理が可能となる。
【0012】
《発生方法/処理方法》
本発明は、上述した装置を用いたプラズマ発生方法、または、その装置を用いて発生させたプラズマを利用した各種の処理方法(表面改質、成膜、洗浄等)としても把握できる。本明細書では、プラズマを利用した種々の処理を、単に「プラズマ処理」という。
【0013】
《その他》
(1)本明細書でいう放電は、特に断らない限り、グロー放電またはアーク放電である。
【0014】
本明細書でいう準大気圧(P)は、大気圧(P)未満で、大気圧の1/100(0.01P)以上の圧力(P>P≧0.01P)、さらには大気圧の1/10(0.1P)以上の圧力(P>P≧0.1P)である。例えば、大気圧が標準気圧(P=1.01325×10Pa≒1×10Pa)なら、準大気圧(P)は概ね、1×10Pa>P≧1×10Pa、さらには1×10Pa>P≧1×10Paの範囲と考えればよい。
【0015】
(2)本明細書でいう上流と下流は、導入部または生成部(特に連通孔)において、ガスまたはプラズマが流れる方向に沿う。特に断らない限り、鉛直方向(実際の配置)とは関係なく、その流れる方向を上下方向という。例えば、適宜、上流側にある面、端等を上面、上端等といい、その反対側である下流側にある面、端等を下面、下端等という。他の部位等についても同様とする。
【0016】
本明細書でいう面方向は、各部材(電極、絶縁体)やワークの主たる面が延在する方向である。通常、上述した上下方向に交差(さらには直交)する方向である。
【0017】
(3)本明細書でいう「x〜y」は、特に断らない限り、下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
【0018】
(4)本明細書でいう「x〜ymm」は、特に断らない限り、xmm〜ymmを意味する。他の単位系(kHz等)についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】プラズマ装置の一例を模式的に示す断面図である。
図2】その一部を拡大した断面図である。
図3】そのプラズマ装置によりプラズマが発生している様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、装置としてのみならず方法にも適宜該当する。方法的な構成要素であっても物に関する構成要素ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
【0021】
《生成部》
(1)電極と絶縁体
生成部は、少なくとも上流側から順に、第1絶縁体、第1電極、第2絶縁体、第2電極が配設(積層)されてなる。第1電極は、第1絶縁体と第2絶縁体の間に介装されている。このため、第1電極に高電圧が印加されても、第1電極の外周囲にある他の金属体(例えばチャンバー等の囲い)との間で放電は生じ難い。つまり、連通孔内における第1電極と第2電極の間でのみ放電が生じ、連通孔内でプラズマが効率的に発生し得る。
【0022】
特に、第1電極の両面全体が第1絶縁体と第2絶縁体により覆われているとよい。さらに、第1電極の外周側も絶縁体で覆われているとよい。例えば、環状絶縁体(絶縁環)と、その両側に配設された板状の第1絶縁体および第2絶縁体とにより形成される(閉)空間内に、第1電極が収容されているとよい。
【0023】
第1電極を絶縁体で包囲(囲繞)したとき、第1電極への通電(電源への配線)は、導入部を介して行ってもよい。例えば、導入部と第1電極を連結する第1連結具を設け、導入部および第1連結具を導電材とすればよい。このとき、導入部と第1電極は略同電位となるため、両者間(導入部内)で放電等が生じることもない。
【0024】
第1連結具は第1絶縁体に遊貫されているとよい。装置の稼働中(特に大気圧近傍雰囲気で稼働中)に生成部(特に電極)の温度が上昇すると、少なくとも、第1電極と第1絶縁体の間で熱膨張係数差による熱膨張差(熱応力)が生じ得る。第1連結具が第1絶縁体に遊貫されており、両者間に間隙(クリアランス)があると、その熱膨張差(熱応力)が吸収され得る。これにより生成部(特に第1絶縁体)の損傷(割れ等)が回避される。
【0025】
電極が鋼材で絶縁体がセラミックスからなるとき、両者の熱膨張係数差は約10-5/Kである。500〜1200K(℃)の昇温を許容するなら、上記クリアランスは、例えば、基準長の0.005〜0.012倍以上(例えば0.008倍以上)とするとよい。なお、基準長は、例えば、第1電極の最大長でもよいし、第1連結具を設ける位置のピッチでもよい。具体例をいうなら、第1連結具の軸径:d、第1絶縁体の穴径:d、穴ピッチ:pとして、d≧d +2×(0.005〜0.012)pとするとよい。また、別な具体例として、第1電極の外周側に環状の絶縁体(絶縁環)を設ける場合なら、第1電極の外径:D、絶縁環の内径:Dとして、D≧D+2×(0.005〜0.012)Dとするとよい。
【0026】
第1電極は、第1絶縁体や第2絶縁体に対して、熱膨張量が大きくなる面方向へ相対変位可能な状態であるとよい。つまり、第1電極が各絶縁板に対して強固に固定または接着等されておらず(拘束または規制されておらず)、第1電極が各絶縁板に対して摺接等して移動可能であるとよい。同様に、第2電極も第2絶縁体に対して、面方向に相対変位可能であるとよい。ちなみに、第2電極は、放電(プラズマ生成)に伴う発熱に加えて、加熱されたステージやワークからの輻射熱によっても加熱され得る。
【0027】
第2電極は、下面側が絶縁体で覆われていたり、全体(連通孔を除く)が絶縁体で囲繞されていてもよい。但し、第2電極は、ワークや他部材(ステージ、チャンバー等)との電位差が小さければ、それらの間で放電が生じることはない。第2電極の下面側に絶縁体を設けないことにより、第2電極の下面(連通孔の下端開口)をワーク(ステージ)へ、より近接させることもできる。
【0028】
各電極は、例えば、ステンレス鋼、鉄、銅、チタン、タングステン、アルミニウム等の金属材からなる。絶縁体は、例えば、セラミックス、石英、ガラス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド(例えばカプトン)等からなる。セラミックスには、例えば、耐熱性にも優れたアルミナ(Al)窒化アルミニウム(AlN)、窒化ボロン(BN)等がある。
【0029】
各電極の厚さは、例えば、1〜30mmさらには5〜15mmである。各絶縁体の厚さは、例えば、0.1〜20mmさらには1〜10mmである。特に、第1絶縁体の厚さ(第1電極と第2電極の間隔)は0.1〜5mmさらには0.5〜3mmとするとよい。この厚さが過小では絶縁体が部分的に絶縁破壊して放電が不安定となる。この厚さが過大では放電電圧が非常に大きくなり、電源の装置コストが高くなる。
【0030】
(2)連通孔
生成部は、第1絶縁体、第1電極、第2絶縁体および第2電極を上流側から下流側に貫通する連通孔を有する。連通孔の内周面の一部は、第1電極の内周面と第2電極の内周面からなる。第1電極と第2電極の間に電圧が印加されたときに、各電極の内周面間で放電(主にグロー放電)が生じて、連通孔内でプラズマが発生する。なお、当然、第1絶縁体の内周面と第2絶縁体の内周面は、連通孔の他の内周面を構成する。
【0031】
連通孔は導入部からワーク側(またはステージ側)へ連通しており、連通孔内には導入部からワークへ向かう気流が生じる。連通孔内で発生したプラズマは、その気流により搬送されて、下端開口からワークに向けて流出(噴出)される。
【0032】
連通孔は、一つもでも複数でもよい。連通孔が複数あると、プラズマの発生密度や処理効率を高められる。複数の連通孔の配置は、規則的でも不規則でもよく、例えば、格子状、放射状等に配置される。連通孔の孔数は、例えば、1〜100000個/mさらには100〜40000個/mとするとよい。
【0033】
連通孔の形状も種々あり得る。連通孔は、通常、円筒状のノズルを構成する。その孔径は、例えば、φ0.1〜10mmさらにはφ0.5〜5mmとするとよい。連通孔(孔径)が過小になると長時間の成膜によりノズルが詰まるおそれがある。連通孔が過大になるとプラズマの吹出長さが小さくなる。
【0034】
《導入部》
導入部は、ガス源等から供給されるガスを連通孔へ導き入れる。導入部は、例えば、連通孔の上端開口(または第1絶縁体の上端開口)を囲うように、第1絶縁体の上面側に密接して配設された中空状(キャップ状)の容体である。この場合、供給されたガスは殆ど外部へ漏出することなく、連通孔のみへ流入する。また、連通孔が複数ある場合なら、導入部は、供給されたガスを均一的に分配して各連通孔へ流入させる。
【0035】
《ステージ》
ステージは、生成部の下流側に配設され、連通孔の下端開口に対面させたワークを載置する。ステージは、ワークを加熱または冷却する温度調整手段を有してもよい。例えば、ステージにはヒーター等が内蔵されていてもよい。またステージは、ワークを移動させる移動手段を備えてもよい。例えば、ワークを面方向に移動させると、連通孔の下端開口から放出されるプラズマ等を広範囲へ照射したり、その照射位置を自在に変更できる。これにより、ワーク表面に対して均一的な処理をしたり、ワークの特定域のみを効率的に処理できる。
【0036】
連通孔の下端開口からワークまでの距離(間隔)は0.1〜20mmさらには0.5〜10mmとするとよい。その間隔が過大では効率的な処理ができず、その間隔が過小では連通孔内の気流やプラズマの噴出が不安定になる。
【0037】
《電源》
電源から各電極間に、プラズマ発生に必要な電圧が印加される。電源は、直流電源でも、交流電源でも、パルス電源でもよい。交流電源またはパルス電源は、例えば、周波数を1k〜100kHzさらには10k〜75kHzとするとよい。
【0038】
印加電圧(ピーク・ピーク値/最大と最小の電圧差)は、例えば、−200〜−3000Vさらには−400〜−1500Vとするとよい。通常、第2電極に対してプラズマ発生に必要な電位が、第1電極に付与される。第2電極は、例えば、接地されているとよい。ステージは、第2電極に対して同電位でもよいし、バイアス電位でもよい。バイアス電圧を印加しないとき、第2電極とステージを共に接地してもよい。金属製のチャンバーを設けるときは、そのチャンバーも接地するとよい。
【0039】
《雰囲気》
本発明の装置によるプラズマの発生やそのプラズマを用いた処理は、種々の雰囲気下でなされ得る。例えば、本発明の装置は、低圧雰囲気中の処理に利用されても、大気圧近傍雰囲気下の処理に利用されてもよい。本発明の装置では、連通孔内でプラズマが発生するため、ワーク周辺(連通孔の下流側)だけが所望の雰囲気にされてもよい。例えば、少なくとも連通孔の下流側を準大気圧雰囲気とする場合なら、それらを囲うチャンバー等の内部を排気するとよい。排気手段は、例えば、ドラフト装置、真空ポンプ等である。勿論、ワークを載置するステージを含む装置全体を、チャンバー等内に収容して排気してもよい。少なくともワーク周辺を排気して準大気圧雰囲気とすることにより、処理に用いたガスやプラズマ等の外部への漏出や拡散を防止でき、好適な作業環境の維持が図られる。
【0040】
《ガス》
導入部には種々のガスを供給し得る。例えば、不活性ガス(希ガス(Ar、Ne、He等)、N等)、炭化水素等の原料ガス、それらの混合ガス等である。なお、導入部へ供給するプラズマ源ガスとは別に、プラズマと反応させる原料ガスを、連通孔の下端開口近傍またはワークの表面近傍へ供給してもよい。
【0041】
《用途》
本発明の装置は、種々のプラズマ処理に用いられる。例えば、電子部品や機械部品に対する表面改質、成膜、洗浄等に本発明の装置を用いることができる。
【実施例】
【0042】
プラズマ装置の一例を示しつつ、本発明をより具体的に説明する。
【0043】
《装置構成》
本発明の一実施例であるプラズマ装置S(単に「装置S」という。)の概要を模式的に図1に示した。また、その一部の拡大図を図2に示した。なお、説明の便宜上、上下方向また左右方向は、図中に示した矢印方向とする。
【0044】
装置Sは、ガスgの供給部1と、プラズマの生成部2と、ステージ3と、排気部4と、チャンバー5と、電源6を備える。
【0045】
(1)供給部1は、キャップ11(導入部)、導管12、ボルト13(第1連結具)を有する。キャップ11は、段付き状の有底円筒体からなる。キャップ11の上円筒部111には導管12が連結されている。プラズマ源となるガスgは、ガス源から導管12を通じてキャップ11内へ供給される。キャップ11内へ供給されたガスgは、上円筒部111から大径な下円筒部112へ拡散し、後述する各ノズル20(連通孔)内へ上端開口20aから流入する。
【0046】
キャップ11は、生成部2の絶縁板211の上端面に、下円筒部112の側壁部112aの下端面を密接させて、ボルト13により固定される。ボルト13は、側壁部112aと絶縁板211を貫通して、電極板221のねじ穴221aに螺合する。
【0047】
ここで、絶縁板211の貫通穴211aの内径(穴径:d)は、ボルト13のねじ部13aの外径(軸径:d)よりも大きくなっている。つまり、ねじ部13aと貫通穴211aの間に隙間が形成されている。この隙間(c)は、装置Sの稼働中に生じる絶縁板211と電極板221の熱膨張差よりも十分に大きく設定される。例えば、電極板221がステンレス鋼からなり、絶縁板211がセラミックスからなる場合、貫通穴211aの左右ピッチ:pとして、c=d―d=2×0.008×pと設定される。
【0048】
なお、キャップ11とボルト13は金属(例えばステンレス鋼)からなり、導管12は絶縁材(例えば樹脂製チューブ)からなる。
【0049】
このようにボルト13は絶縁板211に遊貫されている。このため、装置Sの稼働中に生成部2(特に電極板221)が高温になっても、熱応力(熱膨張差)に起因した割れ等の損傷が絶縁板211に生じることがない。なお、当然、キャップ11、絶縁板211はおよび電極板221は、隣接間で左右方向(面方向)に相対変位(摺動)し得る。本明細書でいう相対変位は、熱膨張差を解消する程度に移動できればよい。ちなみに、絶縁板211、電極板221、絶縁体212、絶縁環213および電極222に関しても同様に、隣接間で相対変位し得る。
【0050】
(2)生成部2は、上方から順に、絶縁板211(第1絶縁体)、電極板221(第1電極)および絶縁環213、絶縁板212(第2絶縁体)、電極板222(第2電極)が積層されてなる。絶縁板211、絶縁板212、電極板221および電極板222は円板状であり、絶縁環213は円環状である。
【0051】
絶縁板211、絶縁環213および絶縁板212はボルト23により連結されている。ボルト23は、それらを遊貫し、電極板222のねじ穴に螺合している。電極板221は、絶縁板211、絶縁環213および絶縁板212により形成された薄い円筒状の窪み(空間)に収容されている。電極板221の熱膨張量を考慮して、絶縁環213の内径は電極板221の外径より十分に大きくなっている。
【0052】
なお、絶縁板211は、上述したボルト13により、キャップ11と電極板221で挟持された状態ともなっている。また、絶縁板212は、電極板222の中央域に形成された薄い円筒状の窪みに収容され、両者の上端面は面一状態となっている。
【0053】
ちなみに、各絶縁板および絶縁環はセラミックス(例えばアルミナ)からなり、各電極板は金属(例えばステンレス鋼)からなり、ボルト23はセラミックス(例えばアルミナ)からなる。
【0054】
(3)生成部2には、上下方向に貫通した円筒状のノズル20が複数形成されている。ノズル20は、積層された絶縁板211の孔2110、電極板221の孔2210、絶縁板212の孔2120、電極板222の孔2220が積層されてなる。電極板211と電極板221の間に高電圧が印加されると、孔2210の内周面2210aと孔2220の内周面2220aとの間で放電が生じて、ノズル20内にプラズマpが発生する。プラズマpは、上流から下流に向かうノズル20内の気流に押されて、ノズル20の下端開口20bから噴出する。
【0055】
(4)ステージ3は、基台31と、基台31内に内蔵されたヒータ32と、基台31を面方向(X軸方向および/Y軸方向)へ移動される駆動機構(図略)と、ヒータ32と駆動機構を制御する制御装置(図略)とを備える。ヒータ32と制御装置(温度調整手段)により、基台31に載置されたワークwの温度管理がなされる。駆動機構と制御装置(移動手段)により、基台31に載置されたワークwの位置管理(処理範囲の調整等)がなされる。
【0056】
(5)供給部1、生成部2およびステージ3はチャンバー5内に収容されている。チャンバー5の内圧は、排気ポンプ41(真空ポンプ)と調整弁42(圧力制御バルブ)により、準大気圧とされる。準大気圧は、原料ガス(プラズマの生成用ガス、プラズマとの反応ガス)が漏出しない程度に、チャンバー5内が排気されるだけ足る。
【0057】
(6)電源6は、電極板221と電極板222の間に、プラズマ生成に必要な高電圧を印加する。電極板221への通電は、キャップ11およびボルト13を介してなされる。また、電極板222、ステージ3およびチャンバー5は共に接地されている。
【0058】
《プラズマ生成》
装置Sを実際に試作して、プラズマの発生を確認した。
【0059】
各電極板221、222にはステンレス鋼(SUS304)の圧延板を、絶縁板211、212および絶縁環213にはアルミナ(Al)の焼成体を用いた。電極板221の厚みは2mm、電極板222の中央域の厚みは1mm、その外周域の厚みは2mmとした。絶縁板211の厚みは2mm、212の厚みは1mm、絶縁環213の厚みは2mmとした。
【0060】
ノズル20は、中心とその周囲6箇所との合計7箇所に形成した。ノズル20はいずれも、孔径φ1mm×長さ6mmとした。
【0061】
キャップ11には、ステンレス鋼(SUS304)のプレス成形品を用いた。ボルト13の材質はSUS304、ボルト23の材質はアルミナとした。
【0062】
導管12には、ガスボンベから0.2MPaのArガスを供給した。チャンバー5内は準大気圧(2.0×10Pa)とした。電源にはパルス電源を用いた。パルス電圧は、周波数50kHzの矩形波で、0〜600Vの間で変化させた。
【0063】
こうして、電極板222の下面側を観察したところ、図3に示すように、ノズル20の下端開口20bから紫色のグロー放電が噴出されている様子が観察され、プラズマの発生が確認された。
【符号の説明】
【0064】
S プラズマ装置
1 供給部
11 キャップ(導入部)
2 生成部
20 ノズル(連通孔)
211 絶縁板(第1絶縁体)
212 絶縁板(第2絶縁体)
221 電極板(第1電極)
222 電極板(第2電極)
3 ステージ
図1
図2
図3