(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような電動ポンプは、基本的な性能として、防水性能及び低振動性能が要求される場合がある。また、上記のような複数の部材によって構成される電動ポンプは、組立が容易であると共に、組立後に部材のがたつきが生じないことが要求される場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、防水性能及び低振動性能を確保できると共に、組立が容易であり、しかも、組立後の部材のがたつきを抑制できる電動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の電動ポンプは、インペラと、前記インペラに固定されたロータと、前記ロータの径方向外側に設けられたステータとを有するモータ部と、前記インペラを収容するポンプ室を有するポンプハウジングと、前記ロータを内側に収容する内筒部と、前記内筒部の径方向外側に形成され、前記内筒部との間に前記ステータを収容する外筒部とを有するモータハウジングと、前記モータハウジングに対する前記ポンプハウジングと反対側に配置された支持部材と、前記支持部材に対する前記モータハウジングと反対側に配置された回路基板と、前記支持部材に対する前記モータハウジングと反対側に配置され、前記回路基板を収容する基板ハウジングと、前記ステータ及び前記モータハウジングと前記支持部材との間に介在された第一ガスケットと、前記支持部材と前記基板ハウジングとの間に介在された第二ガスケットと、前記ステータに形成された第一係止部と、前記第一係止部と係止された第一被係止部を有し、前記支持部材に形成された第一弾性片とを有する第一スナップフィット構造と、前記モータハウジングに形成された第二係止部と、前記第二係止部と係止された第二被係止部を有し、前記支持部材に形成された第二弾性片とを有する第二スナップフィット構造と、前記支持部材に形成された第三係止部と、前記第三係止部と係止された第三被係止部を有し、前記基板ハウジングに形成された第三弾性片とを有する第三スナップフィット構造と、を備える。
【0009】
この電動ポンプによれば、ステータ及びモータハウジングと支持部材との間には、第一ガスケットが介在されており、支持部材と基板ハウジングとの間には、第二ガスケットが介在されている。したがって、ステータ及びモータハウジングと支持部材との間、及び、支持部材と基板ハウジングとの間から水が浸入することを、第一ガスケット及び第二ガスケットにより阻止することができる。これにより、防水性能を確保することができる。
【0010】
また、上述のように、ステータ及びモータハウジングと支持部材との間には、第一ガスケットが介在され、支持部材と基板ハウジングとの間には、第二ガスケットが介在されているので、モータ部の作動時にステータに生じる振動がモータハウジングに伝達しても、この振動を第一ガスケット及び第二ガスケットで吸収することができる。これにより、低振動性能を確保することができる。
【0011】
さらに、ステータ及び支持部材には、第一スナップフィット構造が設けられ、モータハウジング及び支持部材には、第二スナップフィット構造が設けられ、支持部材及び基板ハウジングには、第三スナップフィット構造が設けられている。
【0012】
そして、第一スナップフィット構造では、ステータに形成された第一係止部に、支持部材に形成された第一弾性片の第一被係止部が係止することにより、ステータが支持部材に組み付けられる。
【0013】
また、第二スナップフィット構造では、モータハウジングに形成された第二係止部に、支持部材に形成された第二弾性片の第二被係止部が係止することにより、モータハウジングが支持部材に組み付けられる。
【0014】
さらに、第三スナップフィット構造では、支持部材に形成された第三係止部に、基板ハウジングに形成された第三弾性片の第三被係止部が係止することにより、基板ハウジングが支持部材に組み付けられる。
【0015】
このように、第一スナップフィット構造、第二スナップフィット構造、及び第三スナップフィット構造を用いて、ステータ、モータハウジング、及び基板ハウジングを支持部材に組み付けることができるので、組立を容易にすることができる。
【0016】
しかも、上述のように、ステータ及びモータハウジングと支持部材との間には、第一ガスケットが介在され、支持部材と基板ハウジングとの間には、第二ガスケットが介在されている。したがって、第一ガスケット及び第二ガスケットの弾性力により、第一係止部と第一被係止部との間、第二係止部と第二被係止部との間、及び、第三係止部と第三被係止部との間には係止力(引っ掛かり力)が強まる方向に荷重が作用する。これにより、組立後の部材のがたつき、すなわち、具体的には、ステータ、支持部材、モータハウジング、及び基板ハウジングのがたつきを抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の電動ポンプは、請求項1に記載の電動ポンプにおいて、前記第二弾性片には、前記基板ハウジングの側から切り欠かれた形状の切欠部が形成され、前記切欠部と前記第三係止部とは、前記支持部材の周方向における同じ位置にあり、前記第三被係止部は、前記第三弾性片が前記切欠部の内側に挿入された状態で、前記第三係止部と係止されている。
【0018】
この電動ポンプによれば、第二弾性片に形成された切欠部と、第三係止部とは、支持部材の周方向における同じ位置にあり、第三被係止部は、第三弾性片が切欠部の内側に挿入された状態で、第三係止部と係止されている。したがって、第二スナップフィット構造及び第三スナップフィット構造を支持部材の周方向の同じ場所に集約できるので、例えば、第二スナップフィット構造及び第三スナップフィット構造が支持部材の周方向の異なる場所にそれぞれ設けられる場合に比して、電動ポンプの外周部の構造を簡素化することができる。
【0019】
請求項3に記載の電動ポンプは、請求項2に記載の電動ポンプにおいて、前記第一弾性片は、前記第二弾性片及び前記第三弾性片よりも前記支持部材の径方向内側に配置され、前記第一係止部、前記第一被係止部、前記第二係止部、前記第二被係止部、前記第三係止部、及び前記第三被係止部は、前記支持部材の軸方向に沿った前記第二弾性片の長さ方向の範囲内に配置されている。
【0020】
この電動ポンプによれば、第一弾性片は、第二弾性片及び第三弾性片よりも支持部材の径方向内側に配置されており、第一係止部、第一被係止部、第二係止部、第二被係止部、第三係止部、及び第三被係止部は、第二弾性片の長さ方向の範囲内に配置されている。したがって、例えば、第一弾性片が第二弾性片及び第三弾性片と支持部材の軸方向に並んで形成され、第一係止部及び第一被係止部が第二弾性片の長さ方向の範囲外にある場合に比して、電動ポンプを軸方向に小型化することができる。
【0021】
請求項4に記載の電動ポンプは、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の電動ポンプにおいて、前記ステータは、ステータコアと、前記ステータコアが内側に圧入されたステータヨークとを有し、前記支持部材は、円筒部と、前記円筒部の外周面に形成された環状凸部とを有し、前記ステータヨーク、前記外筒部、及び前記基板ハウジングの周壁部は、前記円筒部の径方向外側に位置し、前記ステータヨーク及び前記外筒部は、前記環状凸部の軸方向第一側から前記環状凸部と対向し、前記周壁部は、前記環状凸部の軸方向第二側から前記環状凸部と対向し、前記第一ガスケットは、前記ステータヨーク及び前記外筒部と前記環状凸部との間に介在され、前記第二ガスケットは、前記周壁部と前記環状凸部との間に介在され、前記第一ガスケットの内周面及び前記第二ガスケットの内周面は、前記円筒部の外周面に全周に亘ってそれぞれ密着している。
【0022】
この電動ポンプによれば、第一ガスケットは、ステータヨーク及び外筒部と環状凸部との間に介在され、第二ガスケットは、周壁部と環状凸部との間に介在されている。そして、第一ガスケットの内周面及び第二ガスケットの内周面は、円筒部の外周面に全周に亘ってそれぞれ密着している。したがって、円筒部の外周面に沿って外筒部の内側空間(モータ室)から基板ハウジングの内側空間(回路室)へ異物が移動してしまうことを第一ガスケット及び第二ガスケットによって抑止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態について説明する。
【0025】
図1〜
図5に示されるように、本発明の第一実施形態に係る電動ポンプP1は、インペラ10と、モータ部20と、ポンプハウジング50と、モータハウジング60と、支持部材70と、回路基板80と、基板ハウジング90と、第一ガスケット100と、第二ガスケット110とを備える。矢印A1は、電動ポンプP1の軸方向第一側を示し、矢印A2は、電動ポンプP1の軸方向第二側を示している。
【0026】
インペラ10は、後述するロータ21の軸方向第一側に配置されている。このインペラ10は、一例として樹脂製であり、複数の羽根11と、カバー部12とを有している。複数の羽根11は、インペラ10の中心部を中心に渦巻き放射状に延びている。カバー部12は、円環盤状に形成されており、インペラ10の軸方向第一側から複数の羽根11を覆っている。インペラ10は、後述するロータ21のロータ本体部22と共に樹脂で一体に形成されており、これにより、インペラ10の全体は、ロータ21に固定されている。
【0027】
モータ部20は、ロータ21と、ステータ31と、モータシャフト41とを有する。ロータ21は、ロータ本体部22と、軸受23と、ロータマグネット24と、ロータコア25とを有している。ロータ本体部22は、樹脂製であり、円筒状に形成されている。軸受23は、ロータ本体部22の内周部に設けられており、ロータコア25は、ロータ本体部22の外周部に設けられている。ロータコア25は、内周部及び外周部を有する二重の円筒構造となっており、ロータマグネット24は、ロータコア25の内周部と外周部との間に設けられている。
【0028】
このロータ21は、全体として概略円筒状(軸芯部に孔を有する概略円柱状)に形成されている。軸受23の内側には、モータシャフト41が挿入されており、ロータ21は、モータシャフト41に回転可能に支持されている。ロータ21(ロータマグネット24)は、後述するステータ31の径方向内側にステータ31と対向して配置されている。
【0029】
ステータ31は、ロータ21の径方向外側に設けられている。このステータ31は、ステータコア32と、インシュレータ33と、巻線34と、ステータヨーク35とを有している。ステータコア32は、放射状に延びる複数のティース部36を有している。インシュレータ33は、ステータ31に装着されており、巻線34は、インシュレータ33を介してティース部36に巻回されている。ステータヨーク35は、筒状に形成されており、ステータコア32は、ステータヨーク35の内側に圧入されている。このステータ31は、全体として概略円環状に形成されている。
【0030】
ポンプハウジング50は、後述するモータハウジング60の軸方向第一側に配置されている。このポンプハウジング50は、モータハウジング60側に開口する凹状に形成されており、ポンプハウジング50の内側は、インペラ10を収容するポンプ室51として形成されている。ポンプハウジング50は、例えば、このポンプハウジング50の周壁部52が後述するモータハウジング60の周壁部62に溶着されることにより、モータハウジング60に組み付けられている。
【0031】
このポンプハウジング50は、インレットパイプ53と、アウトレットパイプ54とを有している。インレットパイプ53は、ポンプハウジング50の中心部からモータハウジング60と反対側に延びており、アウトレットパイプ54は、ポンプハウジング50の外側部からポンプハウジング50の接線方向に延びている。インレットパイプ53には、ポンプ室51と連通する吸入口55が形成されており、アウトレットパイプ54には、ポンプ室51と連通する吐出口56が形成されている。
【0032】
モータハウジング60は、いずれも有底筒状である内筒部63及び外筒部64を有する二重構造となっている。外筒部64は、内筒部63の径方向外側に形成されている。内筒部63は、ポンプハウジング50側に開口し、外筒部64は、ポンプハウジング50と反対側に開口している。
【0033】
内筒部63の内側には、ロータ21が回転可能に収容されており、内筒部63と外筒部64との間には、ステータ31が内筒部63及び外筒部64に圧入された状態で収容されている。内筒部63の底壁部には、ポンプハウジング50側に開口する凹状のシャフト支持部65が形成されており、このシャフト支持部65には、モータシャフト41がインサート成形されている。なお、モータシャフト41は、シャフト支持部65に圧入されても良い。外筒部64の底壁部は、内筒部63の開口側の端部と連結されている。
【0034】
支持部材70は、モータハウジング60に対するポンプハウジング50と反対側に配置されている。この支持部材70は、モータハウジング60の軸方向にモータハウジング60と対向する円盤部71と、この円盤部71の外周部の一部から円盤部71の径方向外側に突出するコネクタ部72とを有する。支持部材70は、コネクタ部72を有することから、コネクタ部材と称される場合がある。コネクタ部72には、接続端子73が設けられており、この接続端子73には、ターミナル部74が一体に形成されている。
【0035】
この支持部材70には、後に詳述する第一スナップフィット構造120によって、ステータ31が組み付けられている。また、この支持部材70には、後に詳述する第二スナップフィット構造130によって、モータハウジング60が組み付けられている。このように、第一スナップフィット構造120及び第二スナップフィット構造130によってステータ31及びモータハウジング60が支持部材70に組み付けられた状態で、ステータ31及びモータハウジング60と支持部材70との間には、防水性及び防振性を有する弾性材である第一ガスケット100が介在されている。
【0036】
回路基板80は、支持部材70の円盤部71に対するモータハウジング60と反対側に配置されている。回路基板80は、円盤部71と対向しており、この円盤部71に固定されている。回路基板80には、ステータ31から延びる巻線34の端末部が接続されている。この回路基板80には、ステータ31の巻線34に給電するためのモータドライバや、モータドライバを制御するための制御素子等が実装されている。また、回路基板80には、接続端子73から延びるターミナル部74が接続されている。
【0037】
基板ハウジング90は、支持部材70に対するモータハウジング60と反対側に配置されている。この基板ハウジング90は、支持部材70側に開口する凹状に形成されている。基板ハウジング90は、後に詳述する第三スナップフィット構造140によって支持部材70に組み付けられている。このように、第三スナップフィット構造140によって基板ハウジング90が支持部材70に組み付けられた状態で、支持部材70と基板ハウジング90との間には、第一ガスケット100と同様に防水性及び防振性を有する弾性材である第二ガスケット110が介在されている。
【0038】
なお、電動ポンプP1には、複数の第一スナップフィット構造120、複数の第二スナップフィット構造130、及び複数の第三スナップフィット構造140が設けられている。第一実施形態では、一例として、支持部材70の周方向の二箇所に第一スナップフィット構造120が設けられると共に、支持部材70の周方向の四箇所に第二スナップフィット構造130及び第三スナップフィット構造140がそれぞれ設けられている。
【0039】
そして、この電動ポンプP1では、回路基板80によってステータ31が給電されると、ステータ31によって回転磁界が形成され、この回転磁界によってロータ21に回転力が生じることにより、ロータ21と共にインペラ10が回転する。また、インペラ10が回転すると、インレットパイプ53の吸入口55から流体が吸入されてポンプ室51に搬送され、このポンプ室51に搬送された流体がアウトレットパイプ54の吐出口56から吐出される。
【0040】
続いて、
図6を参照しながら、第一ガスケット100及び第二ガスケット110による防水構造の詳細と、第一スナップフィット構造120、第二スナップフィット構造130、及び第三スナップフィット構造140による組付構造の詳細について説明する。
図6は、
図5のA部を拡大した図である。
【0041】
支持部材70に形成された円盤部71は、より具体的には、円盤部71の周壁部を形成する円筒部71Aと、この円筒部71Aの外周面71Bに形成された環状凸部71Cとを有する。環状凸部71Cは、円筒部71Aの周方向に沿って環状に形成されている。環状凸部71Cは、円筒部71Aの外周面71Bの軸方向中央部に形成されている。環状凸部71Cが円筒部71Aの外周面71Bの軸方向中央部に形成されることにより、円筒部71Aの外周面71Bは、環状凸部71Cのモータハウジング60側に位置する第一外周面71B1と、環状凸部71Cの基板ハウジング側90に位置する第二外周面71B2とを有する。円筒部71Aと環状凸部71Cとの間には、第一弾性片123の第一被係止部122を金型で成形する際に金型の一部によって孔75が形成される。この孔75は、支持部材70の軸方向に貫通している。
【0042】
ステータヨーク35及び外筒部64は、円筒部71A(第一外周面71B1)の径方向外側に位置し、さらに、外筒部64は、ステータヨーク35の径方向外側に位置する。また、基板ハウジング90の周壁部91は、円筒部71A(第二外周面71B2)の径方向外側に位置する。ステータヨーク35及び外筒部64における環状凸部71C側の端部35A、64Aは、環状凸部71Cの軸方向第一側から環状凸部71Cとそれぞれ対向している。また、基板ハウジング90の周壁部91における環状凸部71C側の端部91Aは、環状凸部71Cの軸方向第二側から環状凸部71Cとそれぞれ対向している。
【0043】
第一ガスケット100は、ステータヨーク35及び外筒部64における環状凸部71C側の端部35A、64Aと、環状凸部71Cとの間に設けられている。この第一ガスケット100は、円筒部71A(第一外周面71B1)の径方向外側に位置する。
【0044】
ステータヨーク35及び外筒部64は、第一スナップフィット構造120及び第二スナップフィット構造130によって円盤部71に組み付けられている。このように、ステータヨーク35及び外筒部64が円盤部71に組み付けられた状態では、ステータヨーク35及び外筒部64の端部35A、64Aと環状凸部71Cとの間に、第一ガスケット100が圧縮変形した状態で介在される。つまり、第一スナップフィット構造120及び第二スナップフィット構造130の拘束力により、ステータヨーク35及び外筒部64の端部35A、64Aは、第一ガスケット100に押し付けられている。
【0045】
第二ガスケット110は、基板ハウジング90の周壁部91における環状凸部71C側の端部91Aと環状凸部71Cとの間に設けられている。この第二ガスケット110は、円筒部71A(第二外周面71B2)の径方向外側に位置する。
【0046】
基板ハウジング90の周壁部91は、第三スナップフィット構造140によって円盤部71に組み付けられている。このように、基板ハウジング90の周壁部91が円盤部71に組み付けられた状態では、周壁部91の端部91Aと環状凸部71Cとの間に、第二ガスケット110が圧縮変形した状態で介在される。つまり、第三スナップフィット構造140の拘束力により、周壁部91の端部91Aは、第二ガスケット110に押し付けられている。
【0047】
第一スナップフィット構造120は、ステータヨーク35に形成された第一係止部121と、支持部材70の円筒部71Aに形成され、第一被係止部122を有する第一弾性片123とによって構成されている。ステータヨーク35には、ステータコア32よりも支持部材70側に突出する突出部37が形成されており、第一係止部121は、突出部37に形成されている。この第一係止部121は、一例として、ステータヨーク35の径方向に貫通する穴の内周面における支持部材70側の部分によって形成されている。
【0048】
第一弾性片123は、円筒部71Aの周方向の一部に形成されており、この円筒部71Aからステータ31側に延びている。第一弾性片123の先端部には、円筒部71Aの径方向外側に突出する突起状の第一被係止部122が形成されている。第一弾性片123は、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の内側に配置されている。
【0049】
そして、第一弾性片123がステータヨーク35の内側に挿入されると共に、第一被係止部122が第一係止部121に対する円筒部71Aと反対側から第一係止部121に係止されることにより、ステータヨーク35が円筒部71Aに組み付けられている。また、第一係止部121及び第一被係止部122の拘束力により、ステータヨーク35の端部35Aが第一ガスケット100に押し付けられている。
【0050】
第二スナップフィット構造130は、モータハウジング60の外筒部64に形成された第二係止部131と、支持部材70の環状凸部71Cに形成され、第二被係止部132を有する第二弾性片133とによって構成されている。第二係止部131は、外筒部64の外周面に形成されている。この第二係止部131は、一例として、外筒部64の外周面から径方向外側に突出する突起によって形成されている。
【0051】
第二弾性片133は、環状凸部71Cの外周部に形成されている。この第二弾性片133は、環状凸部71Cの周方向の一部に形成されており、この環状凸部71Cの外周部からモータハウジング60側に延びている。第二弾性片133の先端部には、環状凸部71Cの径方向内側に突出する突起状の第二被係止部132が形成されている。第二弾性片133は、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の外側に配置されている。
【0052】
そして、第二弾性片133が外筒部64の外周面に沿ってスライドされると共に、第二被係止部132が第二係止部131に対する環状凸部71Cと反対側から第二係止部131に係止されることにより、外筒部64が環状凸部71Cに組み付けられている。また、第二係止部131及び第二被係止部132の拘束力により、外筒部64の端部64Aが第一ガスケット100に押し付けられている。
【0053】
第三スナップフィット構造140は、支持部材70の環状凸部71Cに形成された第三係止部141と、基板ハウジング90の周壁部91に形成され、第三被係止部142を有する第三弾性片143とによって構成されている。第三係止部141は、一例として、環状凸部71Cの外周側におけるモータハウジング60側の端面によって形成されている。
【0054】
第三弾性片143は、基板ハウジング90の周壁部91の外周面に形成されている。この第三弾性片143は、周壁部91の周方向の一部に形成されており、この周壁部91からモータハウジング60側に延びている。第三弾性片143の先端部には、周壁部91の径方向内側に突出する突起状の第三被係止部142が形成されている。第三弾性片143は、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の外側に配置されている。
【0055】
そして、第三弾性片143が環状凸部71Cの外周面に沿ってスライドされると共に、第三被係止部142が第三係止部141に対する環状凸部71Cと反対側から第三係止部141に係止されることにより、周壁部91が環状凸部71Cに組み付けられている。また、第三係止部141及び第三被係止部142の拘束力により、周壁部91の端部91Aが第二ガスケット110に押し付けられている。
【0056】
また、上述の第二弾性片133には、基板ハウジング90の側から切り欠かれた形状の切欠部134が形成されている。切欠部134と第三係止部141とは、支持部材70の周方向における同じ位置にあり、第三被係止部142は、第三弾性片143が切欠部134の内側に挿入された状態で、第三係止部141と係止されている。
【0057】
また、第一弾性片123は、第二弾性片133及び第三弾性片143よりも支持部材70の径方向内側に配置されている。そして、第一係止部121、第一被係止部122、第二係止部131、第二被係止部132、第三係止部141、及び第三被係止部142は、支持部材70の軸方向に沿った第二弾性片133の長さ方向の範囲L内に配置されている。
【0058】
次に、第一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
以上詳述したように、第一実施形態に係る電動ポンプP1によれば、ステータ31及びモータハウジング60と支持部材70との間には、第一ガスケット100が介在されており、支持部材70と基板ハウジング90との間には、第二ガスケット110が介在されている。したがって、ステータ31及びモータハウジング60と支持部材70との間、及び支持部材70と基板ハウジング90との間から水が浸入することを、第一ガスケット100及び第二ガスケット110により阻止することができる。これにより、防水性能を確保することができる。
【0060】
また、上述のように、ステータ31及びモータハウジング60と支持部材70との間には、第一ガスケット100が介在され、支持部材70と基板ハウジング90との間には、第二ガスケット110が介在されているので、モータ部20の作動時にステータ31に生じる振動がモータハウジング60に伝達しても、この振動を第一ガスケット100及び第二ガスケット110で吸収することができる。これにより、低振動性能を確保することができる。
【0061】
さらに、ステータ31及び支持部材70には、第一スナップフィット構造120が設けられ、モータハウジング60及び支持部材70には、第二スナップフィット構造130が設けられ、支持部材70及び基板ハウジング90には、第三スナップフィット構造140が設けられている。
【0062】
そして、第一スナップフィット構造120では、ステータ31に形成された第一係止部121に、支持部材70に形成された第一弾性片123の第一被係止部122が係止することにより、ステータ31が支持部材70に組み付けられる。
【0063】
また、第二スナップフィット構造130では、モータハウジング60に形成された第二係止部131に、支持部材70に形成された第二弾性片133の第二被係止部132が係止することにより、モータハウジング60が支持部材70に組み付けられる。
【0064】
さらに、第三スナップフィット構造140では、支持部材70に形成された第三係止部141に、基板ハウジング90に形成された第三弾性片143の第三被係止部142が係止することにより、基板ハウジング90が支持部材70に組み付けられる。
【0065】
このように、第一スナップフィット構造120、第二スナップフィット構造130、及び第三スナップフィット構造140を用いて、ステータ31、モータハウジング60、及び基板ハウジング90を支持部材70に組み付けることができるので、組立を容易にすることができる。
【0066】
しかも、上述のように、ステータ31及びモータハウジング60と支持部材70との間には、第一ガスケット100が介在され、支持部材70と基板ハウジング90との間には、第二ガスケット110が介在されている。したがって、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の弾性力により、第一係止部121と第一被係止部122との間、第二係止部131と第二被係止部132との間、及び、第三係止部141と第三被係止部142との間には係止力(引っ掛かり力)が強まる方向に荷重が作用する。これにより、組立後の部材のがたつき、すなわち、具体的には、ステータ31、支持部材70、モータハウジング60、及び基板ハウジング90のがたつきを抑制することができる。
【0067】
また、第一実施形態に係る電動ポンプP1によれば、第二弾性片133に形成された切欠部134と、第三係止部141とは、支持部材70の周方向における同じ位置にあり、第三被係止部142は、第三弾性片143が切欠部134の内側に挿入された状態で、第三係止部141と係止されている。したがって、第二スナップフィット構造130及び第三スナップフィット構造140を支持部材70の周方向の同じ場所に集約できるので、例えば、第二スナップフィット構造130及び第三スナップフィット構造140が支持部材70の周方向の異なる場所にそれぞれ設けられる場合に比して、電動ポンプP1の外周部の構造を簡素化することができる。また、第二スナップフィット構造130及び第三スナップフィット構造140を直列に配置することで、ほぼ第二スナップフィット構造130のみの体積分だけ電動ポンプP1の外側に張り出すことになり、電動ポンプP1の径方向の体格の増加を抑制できる。
【0068】
また、第一実施形態に係る電動ポンプP1によれば、第一弾性片123は、第二弾性片133及び第三弾性片143よりも支持部材70の径方向内側に配置されており、第一係止部121、第一被係止部122、第二係止部131、第二被係止部132、第三係止部141、及び第三被係止部142は、第二弾性片133の長さ方向の範囲L内に配置されている。したがって、例えば、第一弾性片123が第二弾性片133及び第三弾性片143と支持部材70の軸方向に並んで形成され、第一係止部121及び第一被係止部122が第二弾性片133の長さ方向の範囲L外にある場合に比して、電動ポンプP1を軸方向に小型化することができる。さらに、第一弾性片123が、第二弾性片133及び第三弾性片143よりも径方向内側に位置していることで、第二弾性片133及び第三弾性片143が軸方向に並んだ配置にすることができ、このことによっても電動ポンプP1を軸方向に小型化することができる。
【0069】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。
【0070】
上記実施形態において、第二スナップフィット構造130及び第三スナップフィット構造140は、より好ましくは、支持部材70の周方向における同じ位置に設けられるが、支持部材70の周方向における異なる位置に設けられても良い。
【0071】
また、上記実施形態において、第一係止部121、第一被係止部122、第二係止部131、第二被係止部132、第三係止部141、及び第三被係止部142は、より好ましくは、第二弾性片133の長さ方向の範囲L内に配置されるが、このように構成されていなくても良い。例えば、第三係止部141及び第三被係止部142は、第二弾性片133の長さ方向の範囲L外に配置されても良い。
【0072】
また、第一スナップフィット構造120、第二スナップフィット構造130、第三スナップフィット構造140の複数の組合せは、周方向に90度ピッチで4セット、又は12度ピッチで3セットに配置されてもよい。また、第一スナップフィット構造120、第二スナップフィット構造130、第三スナップフィット構造140の複数の組合せは、周方向に不均等に配置されても良い。
【0073】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
【0074】
本発明の第二実施形態は、上述の第一実施形態の改良に関する。はじめに、上述の第一実施形態において、第一の改良が要求される点について説明する。
図7は、第一実施形態に係る電動ポンプP1から回路基板80及び基板ハウジング90を取り外した状態で電動ポンプP1を軸方向第二側から見た図である。
【0075】
なお、第一実施形態では、一例として、支持部材70の周方向の二箇所に第一スナップフィット構造120が設けられているが、
図7の例では、支持部材70の周方向の三箇所に第一スナップフィット構造120が設けられている。
図8は、
図7のB部について第二ガスケット110を支持部材70に取り付ける様子を示す図である。
【0076】
図7、
図8に示されるように、支持部材70の円盤部71には、上述の第一弾性片123の第一被係止部122を金型で成形する際に金型の一部によって孔75が形成される。この孔75は、支持部材70の軸方向に貫通している。また、この孔75の一部は、円筒部71Aの外周面71Bよりも径方向内側に位置する。このため、外周面71Bに支持部材70の軸方向に貫通する凹部75Aが形成される。
【0077】
上述の第一ガスケット100の内周面(
図6参照)及び第二ガスケット110の内周面は、外周面71Bに密着して設けられるが、この第一ガスケット100及び第二ガスケット110によって凹部75Aが塞がれないため、この凹部75A(
図6〜
図8参照)を通じて外筒部64の内側空間(モータ室)から基板ハウジング90の内側空間(回路室)へ異物が移動してしまう虞がある。
【0078】
そこで、第二実施形態では、第一の改良が施されている。以下、第一の改良について説明する。
図9は、第二実施形態に係る電動ポンプP2から回路基板80及び基板ハウジング90を取り外した状態で電動ポンプP2を軸方向第二側から見た図である。
図10は、
図9のC部について第二ガスケット110を支持部材70に取り付ける様子を示す図である。
【0079】
図9、
図10に示されるように、第一の改良では、上述の凹部75A(
図7、
図8参照)がなくなるまで円筒部71Aの外周面71Bが縮径されており、孔75が円筒部71Aの外周面71Bに接する位置に形成されている。そして、これにより、凹部75Aが廃止されている。
図11は、第二実施形態に係る電動ポンプP2における
図6に対応する部分の断面図である。
【0080】
図11に示されるように、第二実施形態では、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の内径も、円筒部71Aの外周面71Bが縮径されることに合わせて縮径されている。そして、これにより、第一ガスケット100の内周面及び第二ガスケット110の内周面は、円筒部71Aの外周面71Bに全周に亘って密着している。したがって、この第一の改良によれば、円筒部71Aの外周面71Bに沿って外筒部64の内側空間(モータ室)から基板ハウジング90の内側空間(回路室)へ異物が移動してしまうことを第一ガスケット100及び第二ガスケット110によって抑止できる。
【0081】
また、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の幅が、第一実施形態に比して増加するため、第一ガスケット100及び第二ガスケット110による防水性及び防振性を向上させることができる。また、モータハウジング60及びステータ31と支持部材70との間の安定性、及び、支持部材70と基板ハウジング90との間の安定性をそれぞれ向上させることができる。
【0082】
続いて、上述の第一実施形態において、第二の改良が要求される点について説明する。
図12は、第二実施形態に係る電動ポンプP2における第三弾性片143の斜視図である。
図13は、第二実施形態に係る電動ポンプP2における第三弾性片143の第三被係止部142が第三係止部141に係止される様子を示す斜視図である。
図12、
図13は、第二の改良が施された第二実施形態を示す図であるが、この
図12、
図13を用いて、第一実施形態において、第二の改良が要求される点について説明する。
【0083】
上述の第一実施形態において、第三弾性片143は、縦壁部144と、この縦壁部144の頂部に形成された第三被係止部142のみによって構成されている。しかしながら、このように第三弾性片143が構成されていると、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の反力により縦壁部144が外側へ反るように変形してしまい、第三スナップフィット構造140(
図6参照)の固定機能が損なわれる虞がある。
【0084】
ここで、縦壁部144の横幅方向の両側に縦壁部144の高さ方向に延びる一対のリブを設けると共に、この一対のリブの上端を第三被係止部142に接続して縦壁部144を補強することも考えられる。このように第三弾性片143が構成されていると、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の反力により縦壁部144が外側へ反るように変形することを抑制できるので、第三スナップフィット構造140の固定機能を確保できる。しかしながら、一対のリブにより第三弾性片143の大きさが大きくなってしまう。
【0085】
そこで、第二実施形態では、第二の改良が施されている。以下、第二の改良について説明する。
図12に示されるように、第二の改良では、縦壁部144の横幅方向の中央部に縦壁部144の高さ方向に延びるリブ145が形成されると共に、このリブ145の上端が第三被係止部142に接続されることで縦壁部144が補強されている。このように構成されていると、第三弾性片143の大きさが大きくなることを抑制しつつ、第一ガスケット100及び第二ガスケット110の反力により縦壁部144が外側へ反るように変形することを抑制できるので、第三スナップフィット構造140の固定機能を確保できる。
【0086】
なお、この第二の改良では、第三弾性片143の成形性を考慮して、縦壁部144に対するリブ145の突出高さを、縦壁部144に対する第三被係止部142の突出高さに一致させている。また、縦壁部144の横幅方向の中央部にリブ145が形成されたことに対応して、
図13に示されるように、二つの第三係止部141が並んで形成されている。これにより、第三被係止部142を二つの第三係止部141に係止することができる。
【0087】
以上、本発明の第一及び第二実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。