特許第6973436号(P6973436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973436
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/10 20060101AFI20211111BHJP
   G05B 19/416 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B25J9/10 A
   G05B19/416 Q
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-53319(P2019-53319)
(22)【出願日】2019年3月20日
(65)【公開番号】特開2020-151815(P2020-151815A)
(43)【公開日】2020年9月24日
【審査請求日】2020年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】小河原 徹
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−192487(JP,A)
【文献】 特開2009−27816(JP,A)
【文献】 特開2009−28851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10
G05B 19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する第1カーブ算出部と、
上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出する合成カーブ算出部と、
上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する加速度判定部と、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正する合成カーブ補正部と、
上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する第2カーブ算出部と
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置において、
上記合成カーブ算出部は、
上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分がゼロから極大値まで増加する加速期間については、上記合成速度は上記離脱動作の速度成分と上記同期速度がなす速度成分とを合成した値をとり、
上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分が上記極大値からゼロまで減少する減速期間については、この減速期間の始期に、上記合成速度が極大値から減少し始め、かつ、上記減速期間の終期に、上記合成速度がゼロとなる態様で、
上記合成カーブを算出する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の制御装置において、
上記合成カーブ補正部は、上記合成カーブを与える上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間の終期に対して上記合成速度がゼロになる時刻を遅らせて、上記合成カーブを補正する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する第1カーブ算出部と、
上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する第2カーブ算出部と、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とに基づいて、合成加速度を算出する合成加速度算出部と、
上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する加速度判定部と、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長して、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように補正する合成加速度補正部と、
上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新するカーブ更新部と
を備えたことを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の制御装置において、
上記第2カーブ算出部は、上記減速期間に対して上記同期終了期間が一致する態様で、上記第2カーブを算出することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御装置において、
上記合成加速度補正部は、上記減速期間と上記同期終了期間とが一致する態様で、上記減速期間と上記同期終了期間の終期を延長する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一つに記載の制御装置において、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間の始期、終期で、それぞれ上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分がゼロであり、
上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間の始期、終期で、それぞれ上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分がゼロである
ことを特徴とする制御装置。
【請求項8】
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御方法であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出し、
上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出し、
上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定し、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正し、
上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御方法であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出し、
上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出し、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とに基づいて、合成加速度を算出し、
上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定し、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長し、
上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は制御装置に関し、より詳しくは、マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置に関する。また、この発明は、そのような制御を行う制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の制御装置としては、例えば次に掲げる非特許文献1に開示されているように、一定周期(例えば、0.5msec〜1msec程度の周期)で、マスタ装置の各軸(本明細書を通して「制御軸」を意味する。)への指令値(または各軸の測定された現在値)に基づいてスレーブ装置の各軸への指令値を演算によって求めて、マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する装置が開発されている。これにより、マスタ装置とスレーブ装置とを精度良く同期させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“NJ501-4 NJシリーズ NJ Robotics CPUユニット/特長 | オムロン制御機器”、[online]、2017年7月20日、[2019年1月29日検索]、インターネット< URL :https://www.fa.omron.co.jp/products/family/3387/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産現場では、マスタ装置としてのベルトコンベアの動きに同期して、スレーブ装置としての6軸多関節ロボットを制御する場合がある。例えば、ベルトコンベアによって一方向に搬送されるワーク(作業対象物)を、ベルトコンベアの一方向の動きに同期して、ロボットの先端に取り付けられたエンドエフェクタによって、拾い上げる場合がある。ワークを拾い上げた後、上記制御装置の制御に応じて、上記ロボットのエンドエフェクタは、拾い上げられたワークがベルトコンベア上の後続のワークと衝突するのを避けるために、上記ベルトコンベアから離れる動作(離脱動作)を行いながら、上記一方向の動きを止める動作(同期終了動作)を行う。このように、マスタ装置からスレーブ装置を離脱させる離脱動作と、マスタ装置に対するスレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とが並行して行われる(同期終了モード)。これにより、タクトタイムが短縮されて、生産性の向上が図られる。
【0005】
同期終了モードでは、例えば図7(A)に示すように、離脱動作(鉛直方向であるz方向の動きとする。)に関して、上記ロボットのエンドエフェクタの速度成分vzと加速度成分azの変化が設定される。この例では、加速度成分azは時刻t=0でゼロから増加し始め、時刻t21で正のピークを示し、時刻t23でゼロとなり、時刻t24で負のピークを示し、時刻t26でゼロとなっている。加速度成分azの変化は直線的であり、離脱動作の加速期間(t=0〜t23)と減速期間(t=t23〜t26)とで、それぞれ三角制御がなされている。これに応じて、速度成分vzは、時刻t=0でゼロから緩やかに増加し始め、時刻t23で緩やかな極大を示し、時刻t26で緩やかにゼロとなっている。速度成分vzが示す曲線と横軸(時間軸)とで囲まれた領域(斜線で示す)の面積Szは、上記ロボットのエンドエフェクタがベルトコンベアの搬送面(上面)からz方向に離脱した距離(離脱距離)に相当する。また、図7(B)に示すように、同期終了動作(水平方向であるx方向の動きとする。)に関して、上記ロボットのエンドエフェクタの速度成分vxと加速度成分axの変化が設定される。この例では、この例では、時刻t=0〜t22の間は、上記ロボットのエンドエフェクタとベルトコンベアとの同期が維持されていることから、上記ロボットのエンドエフェクタの速度成分vxはベルトコンベアのx方向の速度vxm(一定値)に一致し、これに応じて加速度成分axはゼロに維持されている。この例では、加速度成分axは時刻t22で減少し始め、時刻t25で負のピークを示し、時刻t27でゼロとなっている。加速度成分axの変化は直線的であり、減速期間(t=t22〜t27)では、三角制御がなされている。上述のような離脱動作、同期終了動作における三角制御は、それぞれ速度の変化を緩やかに開始し、かつ、緩やかに終了するために採用されている。
【0006】
ここで、図7(C)は、離脱動作の速度成分vzと同期終了動作の速度成分vxとを合成して得られる合成速度vc、離脱動作の加速度成分azと同期終了動作の加速度成分axとを合成して得られる合成加速度acを示している。この図7(C)から分かるように、図7(A)に示す離脱動作と、図7(B)に示す同期終了動作とが並行して行われた場合、合成加速度acが示す負のピークacpの大きさ(絶対値)が大きくなる。このため、上記ロボットのモータにかかる負荷が大きくなり過ぎる可能性がある。また、ワークの慣性力が大きくなって、上記ロボットのエンドエフェクタがワークを落とす可能性がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作の加速度成分と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作の加速度成分とを含む合成加速度の大きさを抑制できるものを提供することにある。また、この発明の課題は、そのような制御装置のための制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の局面では、この開示の制御装置は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する第1カーブ算出部と、
上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出する合成カーブ算出部と、
上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する加速度判定部と、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正する合成カーブ補正部と、
上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する第2カーブ算出部と
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本明細書で、「離脱動作の速度成分」、「同期終了動作の速度成分」、「合成速度」を求めるときは、それぞれ「速度成分」、「速度」を与える加速度成分、加速度を求めてもよい。
【0010】
「スレーブ装置の同期速度」とは、上記スレーブ装置が上記マスタ装置に同期して動作しているときの速度を意味する。例えば、上記マスタ装置が一方向に一定の速度で移動している場合は、上記スレーブ装置の同期速度は、そのマスタ装置の速度を意味する。
【0011】
上記合成カーブを与える合成加速度のための「予め定められた負の閾値」は、上記スレーブ装置の仕様の範囲内で、例えばそのスレーブ装置が取り扱うワークの慣性力を考慮して、予め設定される。より具体的には、例えば、上記スレーブ装置が6軸多関節ロボットからなる場合、そのロボットのエンドエフェクタがワークを落とさないような値に設定される。
【0012】
この開示の制御装置では、第1カーブ算出部が、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する。合成カーブ算出部は、上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出する。加速度判定部は、上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する。上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、合成カーブ補正部は、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正する。第2カーブ算出部は、上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する。このようにして、上記第1カーブと上記第2カーブとが作成される。
【0013】
上記制御装置が実行する同期終了モードでは、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分が上記第1カーブに従って制御され、また、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分が上記第2カーブに従って制御される。これに伴って、上記スレーブ装置は上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度で動作する。このとき、上記合成速度を与える合成加速度(上記離脱動作の加速度成分と上記同期終了動作の加速度成分とを含む)は上記負の閾値を下回らないものになっている。したがって、この制御装置によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0014】
一実施形態の制御装置では、
上記合成カーブ算出部は、
上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分がゼロから極大値まで増加する加速期間については、上記合成速度は上記離脱動作の速度成分と上記同期速度がなす速度成分とを合成した値をとり、
上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分が上記極大値からゼロまで減少する減速期間については、この減速期間の始期に、上記合成速度が極大値から減少し始め、かつ、上記減速期間の終期に、上記合成速度がゼロとなる態様で、
上記合成カーブを算出することを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の制御装置では、上記合成カーブ算出部は、上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分がゼロから極大値まで増加する加速期間については、上記合成速度は上記離脱動作の速度成分と上記同期速度がなす速度成分とを合成した値をとり、上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分が上記極大値からゼロまで減少する減速期間については、この減速期間の始期に、上記合成速度が極大値から減少し始め、かつ、上記減速期間の終期に、上記合成速度がゼロとなる態様で、上記合成カーブを算出する。つまり、上記合成カーブのうち上記減速期間に相当する部分を、上記合成カーブが表されるべき座標平面上で、2点を定めて、それら2点の間を滑らかに接続する態様で作成する。このようにして、上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記合成カーブが算出される。
【0016】
一実施形態の制御装置では、
上記合成カーブ補正部は、上記合成カーブを与える上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間の終期に対して上記合成速度がゼロになる時刻を遅らせて、上記合成カーブを補正する
ことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の制御装置では、さらに、上記合成カーブ補正部は、上記合成カーブを与える上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間の終期に対して上記合成速度がゼロになる時刻を遅らせて、上記合成カーブを補正する。このようにして、上記合成カーブが補正される。
【0018】
第2の局面では、この開示の制御装置は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する第1カーブ算出部と、
上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する第2カーブ算出部と、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とに基づいて、合成加速度を算出する合成加速度算出部と、
上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する加速度判定部と、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長して、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように補正する合成加速度補正部と、
上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新するカーブ更新部と
を備えたことを特徴とする。
【0019】
この開示の制御装置では、第1カーブ算出部が、上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する。第2カーブ算出部が、上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する。合成加速度算出部は、上記第1カーブと上記第2カーブとに基づいて、上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とを用いて、合成加速度を算出する。加速度判定部は、上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する。上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、合成加速度補正部は、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長して、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように補正する。カーブ更新部は、上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新する。このようにして、上記第1カーブと上記第2カーブとが作成される。
【0020】
上記制御装置が実行する同期終了モードでは、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分が上記第1カーブに従って制御され、また、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分が上記第2カーブに従って制御される。これに伴って、上記スレーブ装置は上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度で動作する。このとき、上記合成速度を与える合成加速度(上記離脱動作の加速度成分と上記同期終了動作の加速度成分とを含む)は上記負の閾値を下回らないものになっている。したがって、この制御装置によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0021】
一実施形態の制御装置では、上記第2カーブ算出部は、上記減速期間に対して上記同期終了期間が一致する態様で、上記第2カーブを算出することを特徴とする。
【0022】
本明細書で、減速期間に対して同期終了期間が「一致」するとは、上記減速期間の始期と上記同期終了期間の始期とが一致し、かつ、上記減速期間の終期と上記同期終了期間の終期とが一致することを意味する。
【0023】
一実施形態の制御装置では、上記第2カーブ算出部は、上記減速期間に対して上記同期終了期間が一致する態様で、上記第2カーブを算出する。上記減速期間と上記同期終了期間とが一致していれば、上記離脱動作と上記同期終了動作とが同時に終了する。したがって、離脱動作と同期終了動作とが別々に終了する場合とは異なり、ユーザに違和感を与え難い。
【0024】
一実施形態の制御装置では、上記合成加速度補正部は、上記減速期間と上記同期終了期間とが一致する態様で、上記減速期間と上記同期終了期間の終期を延長することを特徴とする。
【0025】
この一実施形態の制御装置では、上記第1カーブ、上記第2カーブが更新されたとしても、上記減速期間と上記同期終了期間とが一致しているので、上記離脱動作と上記同期終了動作とが同時に終了する。したがって、ユーザに違和感を与え難い。
【0026】
一実施形態の制御装置では、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間の始期、終期で、それぞれ上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分がゼロであり、
上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間の始期、終期で、それぞれ上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分がゼロである
ことを特徴とする。
【0027】
この一実施形態の制御装置では、上記第1カーブは、上記減速期間の始期で緩やかに減速を開始し、上記減速期間の終期で緩やかにゼロになる。上記第2カーブは、上記同期終了期間の始期で緩やかに減速を開始し、上記同期終了期間の終期で緩やかにゼロになる。したがって、上記第1カーブと上記第2カーブとを合成してなる合成カーブが緩やかになって、上記スレーブ装置にかかる負荷が軽くなる。
【0028】
第3の局面では、この開示の制御方法は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御方法であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出し、
上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出し、
上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定し、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正し、
上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する
ことを特徴とする。
【0029】
この開示の制御方法によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0030】
第4の局面では、この開示の制御方法は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御方法であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出し、
上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出し、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とに基づいて、合成加速度を算出し、
上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定し、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長し、
上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新する
ことを特徴とする。
【0031】
この開示の制御方法によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0032】
第5の局面では、この開示のプログラムは、第3の局面または第4の局面の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0033】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記第3の局面または第4の局面の制御方法を実施することができる。
【発明の効果】
【0034】
以上より明らかなように、この開示の制御装置、制御方法およびプログラムによれば、上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作の加速度成分と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作の加速度成分とを含む合成加速度の大きさを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】この発明の一実施形態の制御装置と、ベルトコンベアを含むマスタ装置と、6軸多関節ロボットを含むスレーブ装置とを備えた制御システムの外観を模式的に示す図である。
図2】上記制御システムのブロック構成を示す図である。
図3】上記制御装置による第1の制御方法のフローを示す図である。
図4図4(A)は、上記第1の制御方法によって算出された、上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作の速度成分vz11、加速度成分az11の経時変化を示す図である。図4(B)は、上記第1の制御方法によって一旦算出された合成速度vc10、合成加速度ac10の経時変化、および、補正された合成速度vc10′、合成加速度ac10′の経時変化を示す図である。図4(C)は、上記第1の制御方法によって算出された、上記マスタ装置に対する上記ロボットの同期を終了させる同期終了動作の速度成分vx12、加速度成分ax12の経時変化を示す図である。
図5】上記制御装置による第2の制御方法のフローを示す図である。
図6図6(A)は、上記第2の制御方法によって一旦算出された離脱動作の速度成分vz21、加速度成分az21の経時変化、および、更新された離脱動作の速度成分vz21′、加速度成分az21′の経時変化を示す図である。図6(B)は、上記第2の制御方法によって一旦算出された合成速度vc20、合成加速度ac20の経時変化、および、補正された合成速度vc20′、合成加速度ac20′の経時変化を示す図である。図6(C)は、上記第2の制御方法によって一旦算出された同期終了動作の速度成分vx22、加速度成分ax22の経時変化、および、更新された同期終了動作の速度成分vx22′、加速度成分ax22′の経時変化を示す図である。
図7図7(A)は、従来の制御方法による、ベルトコンベアからロボットを離脱させる離脱動作の速度成分vz、加速度成分azの経時変化を示す図である。図7(B)は、上記従来の制御方法による、上記ベルトコンベアに対する上記ロボットの同期を終了させる同期終了動作の速度成分vx、加速度成分axの経時変化を示す図である。図7(C)は、上記従来の制御方法による、上記離脱動作の速度成分vzと上記同期終了動作の速度成分vxとを含む合成速度vc、上記離脱動作の加速度成分azと上記同期終了動作の加速度成分axとを含む合成加速度acの経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図1は、この発明の一実施形態の制御装置10を適用した制御システム100の外観を模式的に示している。また、図2は、その制御システム100のブロック構成を示している。これらの図に示すように、この制御システム100は、大別して、1軸のベルトコンベアであるマスタ装置101と、6軸多関節ロボットを含むスレーブ装置102と、これらのマスタ装置101とスレーブ装置102とを一定周期ts(例えば、ts=0.5msec〜1msec程度の周期)で同期させて制御する制御装置10とを備えている。
【0038】
図1に示すように、マスタ装置101は、この例では、制御装置10からの指令値CVmに応じてベルト101AをX軸方向に駆動するモータ111と、このモータ111と一体に構成され、モータ111の現在値(現在位置)CVm′を測定するエンコーダ112と、制御装置10からの指令値CVmおよびエンコーダ112からの現在値CVm′を表す信号に基づいてモータ111を駆動するサーボアンプ113とを含んでいる。この例では、ベルト101A上の作業対象物(以下「ワーク」と呼ぶ。)90は、矢印Aで示すように、X軸方向に移動される。この例では、マスタ装置101のX軸は、ベルト101Aの搬送面(この例では、水平面)に沿っているものとする。
【0039】
スレーブ装置102は、この例では、6軸多関節ロボット121と、制御装置10からの指令値CVnを表す信号に応じてロボット121を駆動するロボットアンプ122とを含んでいる。
【0040】
この例では、マスタ装置101は、1軸(X軸)の自由度を有している。スレーブ装置102は、6軸x,y,z,yaw,pitch,rollの自由度を有している。
【0041】
図2に示すように、制御装置10は、ユーザによって指定されたプログラムを実行するプログラム実行部50と、マスタ装置指令値演算部20と、中央演算部30と、スレーブ装置指令値演算部40とを備えている。この例では、マスタ装置指令値演算部20、中央演算部30、およびスレーブ装置指令値演算部40が、演算部を構成している。
【0042】
マスタ装置指令値演算部20は、プログラム実行部50からの指示を受けて、或る軸数m(この例では、m=1)のマスタ装置101を制御するために、その軸数mと同数mの要素からなる、マスタ装置101への指令値(マスタ装置指令値)CVmを演算して作成する。このマスタ装置指令値CVmを表す信号は、マスタ装置101の各軸(この例では、X軸)の動作計画を表す情報として、マスタ装置101へ送信される。マスタ装置101のサーボアンプ113は、各軸(この例では、X軸)のマスタ装置指令値CVmを、エンコーダ112からの現在値CVm′を反映して一定周期tsで更新して、モータ111を駆動する。現在値CVm′は、マスタ装置指令値演算部20へ送信される。これにより、制御装置10(特に、マスタ装置指令値演算部20)によって、マスタ装置101が制御される。以下の例では、マスタ装置101は、X軸方向に一定の速度vxmで移動しているものとする。
【0043】
スレーブ装置指令値演算部40は、中央演算部30からの指示を受けて、或る軸数n(この例では、n=6)のスレーブ装置102を制御するために、その軸数nと同数nの要素からなる、スレーブ装置102への指令値(スレーブ装置指令値)CVnを演算して作成する。このスレーブ装置指令値CVnを表す信号は、スレーブ装置102の各軸(この例では、x,y,z,yaw,pitch,roll軸)の動作計画を表す情報として、スレーブ装置102へ送信される。スレーブ装置102のロボットアンプ122は、各軸のスレーブ装置指令値CVnを、ロボット121からの各軸の現在値CVn′を反映して一定周期tsで更新して、ロボット121を駆動する。現在値CVn′は、スレーブ装置指令値演算部40へ送信される。これにより、制御装置10(特に、スレーブ装置指令値演算部40)によって、スレーブ装置102が制御される。
【0044】
中央演算部30は、マスタ装置指令値演算部20からのマスタ装置指令値CVmに基づいて、スレーブ装置指令値演算部40を介して、マスタ装置101とスレーブ装置102とを同期させて制御する(同期制御)。この同期制御では、スレーブ装置102は、指令値CVnを表す信号を受けて、図1中に矢印Bで示すように、マスタ装置101の位置の変化(すなわち、矢印Aで示したワーク90の移動)に同期して、x軸に関して単純追従を行い、z軸に関してカム曲線pに従って加速または減速されて移動する。
【0045】
この同期制御により、例えば、ベルト101AによってX方向に搬送されるワーク90を、ベルト101AのX方向の動きに同期して、ロボット121の先端に取り付けられたエンドエフェクタ121eによって、拾い上げることができる。
【0046】
特に、この例では、制御装置10は、同期制御を終了するための同期終了モードを有する。この同期終了モードでは、マスタ装置101からスレーブ装置102をz方向に離脱させる離脱動作と、マスタ装置101に対するスレーブ装置102のx軸に関する同期を終了させる同期終了動作とが並行して実行される。
【0047】
この同期終了モードでは、例えば、ワーク90を拾い上げた後、ロボット121のエンドエフェクタ121eは、拾い上げられたワーク90がベルト101A上の後続のワーク(図示せず)と衝突するのを避けるために、ベルト101Aから上方(z方向)へ離れる動作(離脱動作)を行いながら、x方向の動きを止める動作(同期終了動作)を行う。これにより、タクトタイムが短縮されて、生産性の向上が図られる。
【0048】
ここで、同期終了モードでは、スレーブ装置102は上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度で動作する。このため、ロボット121のモータにかかる負荷が大きくなり過ぎる可能性がある。また、ワーク90の慣性力が大きくなって、ロボット121のエンドエフェクタ121eがワーク90を落とす可能性がある。そこで、この制御装置10では、次のような第1の制御方法または第2の制御方法によって、合成加速度の大きさを抑制する。
【0049】
(第1の制御方法)
図3は、制御装置10による第1の制御方法のフローを示している。
【0050】
まず、同期終了命令が起動されると、図3のステップS1で、中央演算部30は第1カーブ算出部として働いて、図4(A)に示すように、スレーブ装置102の離脱動作の速度成分vz11の経時変化を表す第1カーブC11を算出する。具体的には、まず速度成分vz11を与える加速度成分az11の経時変化を設定し、これに応じて、速度成分vz11の経時変化を算出する。なお、図3中のステップS1〜S4の処理は、この例では時刻t=0の直前に行われるものとする。図4(A)〜図4(C)の時間軸tは、同期制御の周期ts(=0.5msec〜1msec程度)よりも極めて大きい範囲(秒オーダ)を表している。この点、後述の図6(A)〜図6(C)でも同様である。
【0051】
この例では、図4(A)中に実線で示すように、加速度成分az11は、時刻t=0でゼロから増加し始め、時刻t1で正のピークを示し、時刻t2でゼロとなり、時刻t3までゼロを維持し、時刻t3でゼロから減少し始め、時刻t4で負のピークaz11pを示し、時刻t6でゼロとなっている。離脱動作の加速期間ta(t=0〜t2)と減速期間td(t=t3〜t6)とで、それぞれ三角制御がなされている。これに応じて、図4(A)中に1点鎖線で示すように、速度成分vz11は、時刻t=0でゼロから緩やかに増加し始め、時刻t2で緩やかに極大値vz11pに達し、時刻t3まで極大値vz11pを維持し、時刻t3で極大値vz11pから緩やかに減少し始め、時刻t6で緩やかにゼロとなっている。中央演算部30は、このような速度成分vz11の経時変化を表す第1カーブC11を算出する。
【0052】
なお、速度成分vz11が示す第1カーブC11と横軸(時間軸)とで囲まれた領域(図4(A)中に斜線で示す)の面積Sz11は、ロボット121のエンドエフェクタ121eがベルト101Aの搬送面(上面)からz方向に離脱する距離(離脱距離)に相当する。
【0053】
次に、図3のステップS2で、中央演算部30は合成カーブ算出部として働いて、図4(B)に中に1点鎖線で示すように、第1カーブC11とスレーブ装置102の同期速度vxmとに基づいて、離脱動作の速度成分vz11と同期終了動作の速度成分vx12とを含む合成速度vc10の経時変化を表す合成カーブC10を算出する。
【0054】
この例では、合成速度vc10は次のような態様になっている。
【0055】
まず、合成速度vc10は、時刻t=0〜t3の期間については、第1カーブC11が表す速度成分vz11と一定の同期速度vxmがなす速度成分(vxmと同じ値をもつ)とを合成して得られるものに相当する。具体的には、図4(B)中に示す合成速度vc10は、時刻t=0でvxm(同期速度の値)から緩やかに増加し始め、時刻t2で緩やかに極大値vc10pに達し、時刻t3までvc10pを維持する。合成速度vc10の極大値vc10pは、離脱動作の速度成分vz11の極大値vz11pと同期速度がなす速度成分vxmとを合成した値になっている。この例では、z軸とx軸とが直交していることから、vc10p={(vz11p)+(vxm)1/2になっている。
【0056】
次に、合成速度vc10は、減速期間td(時刻t=t3〜t6の期間)については、減速期間の始期(時刻t3)で極大値vc10pから緩やかに減少し始め、減速期間の終期(時刻t6)で緩やかにゼロとなる。つまり、合成カーブC10のうち減速期間tdに相当する部分は、合成カーブC10が表されるべき座標平面上で、2点(t3,vc10p)、(t6,0)を定めて、それら2点の間を滑らかに接続する態様で算出される。
【0057】
このとき、図4(B)中に実線で示すように、合成速度vc10を与える合成加速度ac10は、加速期間taを含む時刻t=0〜t3の間については、離脱動作の加速度成分az11と全く同じ経時変化を示す。また、合成加速度ac10は、減速期間tdについては、時刻t3でゼロから減少し始め、時刻t4で負のピークac10pを示し、時刻t6でゼロとなっている(三角制御)。ここで、この例では、離脱動作の速度成分vz11の極大値vz11pに比して合成速度vc10の極大値vc10pの方が大きい(vxm分だけ大きい)ことに由来して、合成加速度ac10が示す負のピークac10pの大きさ(絶対値)は、離脱動作の加速度成分az11が示す負のピークaz11pの大きさ(絶対値)に比して大きくなっている。
【0058】
次に、図3のステップS3で、中央演算部30は加速度判定部として働いて、合成カーブC10を与える合成加速度ac10が予め定められた負の閾値acthを下回っているか否かを判定する。ここで、負の閾値acthは、スレーブ装置102の仕様の範囲内で、例えばスレーブ装置102が取り扱うワークの慣性力を考慮して、予め設定される。より具体的には、そのロボット121のエンドエフェクタ121eがワーク90を落とさないような値に設定される。この例では、図4(B)中に示すように、負のピークac10p(時刻t4)を含む前後の期間で、合成加速度ac10が負の閾値acthを下回っているものとする(図3のステップS3でYES)。
【0059】
合成加速度ac10が負の閾値acthを下回っているとき、図3のステップS4に進んで、中央演算部30は合成カーブ補正部として働いて、合成加速度ac10が負の閾値acthと同じになるか又は上回るように合成カーブC10を補正する。この例では、図4(B)中に破線で示すように、合成加速度ac10が負の閾値acthで飽和するように、減速期間の終期(時刻t6)に対して合成速度vc10がゼロになる時刻をt7まで遅らせる。図4(B)中に、補正された合成加速度を符号ac10′、補正された合成カーブを符号C10′、補正された合成速度を符号vc10′で、それぞれ表している。このようにして、合成カーブC10がC10′に補正される。
【0060】
次に、この例では、概念的には、スレーブ装置指令値演算部40とスレーブ装置102のロボットアンプ122とが第2カーブ算出部として働いて、第1カーブC11と補正された合成カーブC10′とに基づいて、図4(C)中に1点鎖線で示すように、スレーブ装置102の同期終了動作の速度成分vx12の経時変化を表す第2カーブC12を算出する(図3のステップS5〜S10)。この例では、補正された合成カーブC10′が表す合成速度vc10′から第1カーブC11が表す離脱動作の速度成分vz11を、時刻(この例では、同期制御の周期ts)毎に除去して、同期終了動作の速度成分vx12を算出する。これにより、第2カーブC12が得られる。第1カーブC11が終端する時刻(離脱動作が終了する時刻)t6に対して、第2カーブC12が終端する時刻(同期終了動作が終了する時刻)t7は、遅れた態様になる。この例では、z軸とx軸とが直交していることから、速度成分vx12の大きさ(絶対値)は、|vx12|={(vc10′)−(vz11)1/2に相当する。同期終了動作の速度成分vx12を与える加速度成分ax11は、時刻t4でゼロから減少し始め、時刻t6で負のピークを示し、時刻t7でゼロとなっている。
【0061】
これらの第1カーブC21と第2カーブC22とを表す情報によって、ロボット121が駆動される。
【0062】
具体的には、スレーブ装置102のロボットアンプ122は、第1カーブC11と補正された合成カーブC10′を表す情報を、スレーブ装置指令値演算部40を介してスレーブ装置指令値CVnとして受けながら、図3のステップS5に示すように、制御周期ts毎の処理を開始する。或る制御周期tsについて、第1カーブC11が表す離脱動作の速度成分vz11に基づいて、離脱動作の軌跡を算出する(ステップS6)。その制御周期tsについて、合成速度vc10′から離脱動作の速度成分vz11を除去して、同期終了動作の速度成分vx12を算出する(ステップS7)。その制御周期tsについて、同期終了動作の速度成分vx12に基づいて、同期終了動作の軌跡を算出する(ステップS8)。その制御周期tsについて、離脱動作と同期終了動作の軌跡を合成する(ステップS9)。次の制御周期tsについて、ステップS6〜S9の処理を繰り返す。このようにして、ロボット121が停止するまで、制御周期ts毎にステップS6〜S9の処理を繰り返す(ステップS10)。
【0063】
なお、合成加速度ac10が負の閾値acthを下回っていないとき(図3のステップS3でNO)、合成カーブC10は、補正されること無く維持される。その場合は、合成カーブC10が表す合成速度vc10から第1カーブC11が表す離脱動作の速度成分vz11を時刻(この例では、同期制御の周期ts)毎に除去することによって、第2カーブC12が得られる(図3のステップS5〜S10)。
【0064】
この制御装置10が実行する同期終了モードでは、スレーブ装置102の離脱動作の速度成分vz11が第1カーブC11に従って制御され、また、スレーブ装置102の同期終了動作の速度成分vx12が第2カーブC12に従って制御される。これに伴って、スレーブ装置102は離脱動作の速度成分vz11と同期終了動作の速度成分vx12とを含む合成速度vc10(合成カーブC10に従う)で動作する。このとき、この第1の制御方法によれば、合成速度vc10を与える合成加速度ac10(離脱動作の加速度成分az11と同期終了動作の加速度成分ax12とを含む)は負の閾値acthを下回らないものになっている。したがって、合成加速度ac10の大きさを抑制できる。
【0065】
また、上の例では、第1カーブC11における減速期間tdの始期(時刻t3)、終期(時刻t6)で、それぞれ加速度成分az11がゼロになっている。同様に、第2カーブC12における同期終了期間tcの始期(時刻t3)、終期(時刻t7)で、それぞれ加速度成分ax12がゼロになっている。この結果、第1カーブC11と第2カーブC12とを合成してなる合成カーブC10′が緩やかになって、スレーブ装置102にかかる負荷が軽くなる。
【0066】
(第2の制御方法)
図5は、制御装置10による第2の制御方法のフローを示している。
【0067】
まず、同期終了命令が起動されると、図5のステップS11で、中央演算部30は第1カーブ算出部として働いて、図6(A)に示すように、マスタ装置101からスレーブ装置102を離脱させる離脱動作の速度成分vz21の経時変化を表す第1カーブC21を算出する。具体的には、まず速度成分vz21を与える加速度成分az21の経時変化を設定し、これに応じて、速度成分vz21の経時変化を算出する。なお、図5中のステップS11〜S16の処理は、この例では時刻t=0の直前に行われるものとする。
【0068】
この例では、図6(A)中に実線で示すように、加速度成分az21は、時刻t=0でゼロから増加し始め、時刻t11で正のピークを示し、時刻t12でゼロとなり、時刻t13までゼロを維持し、時刻t=13でゼロから減少し始め、時刻t14で負のピークaz21pを示し、時刻t16でゼロとなっている。離脱動作の加速期間ta(時刻t=0〜t12の期間)と減速期間td(時刻t=t13〜t16の期間)とで、それぞれ三角制御がなされている。これに応じて、図6(A)中に1点鎖線で示すように、速度成分vz21は、時刻t=0でゼロから緩やかに増加し始め、時刻t12で緩やかに極大値vz21pに達し、時刻t13まで極大値vz21pを維持し、時刻t13で極大値vz21pから緩やかに減少し始め、時刻t16で緩やかにゼロとなっている。中央演算部30は、このような速度成分vz21の経時変化を表す第1カーブC21を算出する。
【0069】
次に、図5のステップS12で、中央演算部30は、離脱動作の減速期間tdを取得して、同期終了動作のための同期終了期間tcとする。すなわち、減速期間tdの始期(時刻t13)を同期終了期間tcの始期とし、また、減速期間tdの終期(時刻t16)を同期終了期間tcの終期とする。これにより、減速期間tdと一致する態様で、同期終了期間tcを定める。
【0070】
次に、図5のステップS13で、中央演算部30は第2カーブ算出部として働いて、図6(C)に示すように、スレーブ装置102の同期終了動作の速度成分vx22の経時変化を表す第2カーブC22を算出する。具体的には、まず同期終了期間tcにおいて、速度成分vx22を与える加速度成分ax22の経時変化を設定し、これに応じて、速度成分vx22の経時変化を算出する。
【0071】
この例では、図6(C)中に実線で示すように、加速度成分ax22は、時刻t=0〜t13までゼロを維持し、時刻t13でゼロから減少し始め、時刻t14で負のピークax22pを示し、時刻t16でゼロとなっている。同期終了期間tcにおいて、三角制御がなされている。これに応じて、図6(C)中に1点鎖線で示すように、速度成分vx22は、時刻t=0〜t13までvxm(同期速度の値)を維持し、時刻t13でvxmから緩やかに減少し始め、時刻t16で緩やかにゼロとなっている。中央演算部30は、このような速度成分vx22の経時変化を表す第2カーブC22を算出する。
【0072】
次に、図5のステップS14で、中央演算部30は合成加速度算出部として働いて、第1カーブC21における離脱動作の速度成分vz21を与える加速度成分az21と、第2カーブC22における同期終了動作の速度成分vx22を与える加速度成分ax22とに基づいて、図6(B)に示すように、合成加速度ac20を算出する。この例では、離脱動作の加速度成分az21と同期終了動作の加速度成分ax22とを、時刻(この例では、同期制御の周期ts)毎に合成して、合成加速度ac20を算出する。なお、この例では、z軸とx軸とが直交していることから、合成加速度ac20の大きさ(絶対値)は、|ac20|={(az21)+(ax22)1/2に相当する。
【0073】
この例では、図6(B)中に実線で示すように、合成加速度ac20は、加速期間taを含む時刻t=0〜t13の間については、離脱動作の加速度成分az21と全く同じ経時変化を示す。また、合成加速度ac20は、減速期間tdについては、時刻t13でゼロから減少し始め、時刻t14で負のピークac20pを示し、時刻t16でゼロとなっている(三角制御)。これに応じて、図6(B)中に1点鎖線で示すように、合成速度vc20(合成カーブC20)は、時刻t=0でvxm(同期速度の値)から緩やかに増加し始め、時刻t12で緩やかに極大値vc20p(={(vz21p)+(vxm)1/2)に達し、時刻t13まで極大値vc20pを維持し、時刻t13で極大値vc20pから緩やかに減少し始め、かつ、時刻t16で緩やかにゼロとなる(三角制御)。
【0074】
なお、この例では、減速期間td(=同期終了期間tc)における合成加速度ac20について注目しているため、時刻t=0〜t13の間については、合成加速度ac20の算出を省略してもよい。
【0075】
次に、図5のステップS15で、中央演算部30は加速度判定部として働いて、合成カーブC20を与える合成加速度ac20が予め定められた負の閾値acthを下回っているか否かを判定する。ここで、負の閾値acthは、先の例と同様に、スレーブ装置102の仕様の範囲内で、例えばスレーブ装置102が取り扱うワークの慣性力を考慮して、予め設定される。より具体的には、そのロボット121のエンドエフェクタ121eがワーク90を落とさないような値に設定される。この例では、図6(B)中に示すように、負のピークac20p(時刻t14)を含む前後の期間で、合成加速度ac20が負の閾値acthを下回っているものとする(図5のステップS15でYES)。
【0076】
合成加速度ac20が負の閾値acthを下回っているとき、図5のステップS16に進んで、中央演算部30は合成加速度補正部として働いて、減速期間tdと同期終了期間tcとをそれぞれ延長して、合成加速度ac20が負の閾値acthと同じになるか又は上回るように補正する。この例では、図6(B)中に破線で示すように、合成加速度ac20の三角制御の面積(合成加速度ac20が示すV状の線分と時間軸tとが作る三角形の面積)を維持しながら、負のピークac20pが負の閾値acthと同じになるまで、三角制御の終期(時刻t16)を時刻t17まで遅らせる。図6(B)中に、補正された合成加速度を符号ac20′で表している。この例では、補正された合成加速度ac20′の負のピークは、時刻t15で負の閾値acthと同じになっている。これに伴って、減速期間tdと同期終了期間tcの終期は、時刻t17まで延長されている。図6(B)中に、延長された減速期間を符号td′、延長された同期終了期間tc′で、それぞれ表している。このようにして、減速期間tdと同期終了期間tcとが一致する態様で、減速期間tdと同期終了期間tcとがそれぞれ延長される。この例では、減速期間tdと同期終了期間tcの長さは、約1.4倍に延長されたものとする。
【0077】
次に、図5のステップS17で、中央演算部30はカーブ更新部として働いて、延長された減速期間td′、延長された同期終了期間tc′に基づいて、それぞれ第1カーブC21、第2カーブC22を更新する。図6(A)中に、更新された第1カーブを符号C21′、更新された離脱動作の速度成分を符号vz21′、それを与える加速度成分を符号az21′で、それぞれ表している。また、図6(C)中に、更新された第2カーブを符号C22′、更新された離脱動作の速度成分を符号vx22′、それを与える加速度成分を符号ax22′で、それぞれ表している。これらの速度成分vz21′,vx22′、加速度成分az21′,ax22′は、減速期間tdと同期終了期間tcの長さが延長された分だけ、経時変化が緩やかになっている(この例では、約1/1.4倍になっている。)。このようにして、第1カーブC21、第2カーブC22が、それぞれ更新される。
【0078】
なお、合成加速度ac20が負の閾値acthを下回っていないとき(図5のステップS15でNO)、合成加速度ac20は、補正されること無く維持される。これに伴って、第1カーブC21、第2カーブC22は、更新されること無く維持される。
【0079】
以下の例では、合成加速度ac20は補正されたものとし(図5のステップS16)、それに伴って、更新された第1カーブC21′と第2カーブC22′とが作成されたものとする(図5のステップS17)。その場合、これらの第1カーブC21′と第2カーブC22′とを表す情報によって、ロボット121が駆動される。
【0080】
具体的には、スレーブ装置102のロボットアンプ122は、第1カーブC21′と第2カーブC22′を表す情報を、スレーブ装置指令値演算部40を介してスレーブ装置指令値CVnとして受けながら、図5のステップS18に示すように、制御周期ts毎の処理を開始する。或る制御周期tsについて、第1カーブC21′が表す離脱動作の速度成分vz21′に基づいて、離脱動作の軌跡を算出するとともに、第2カーブC22′が表す同期終了動作の速度成分vx22′に基づいて、同期終了動作の軌跡を算出する(ステップS19)。その制御周期tsについて、離脱動作と同期終了動作の軌跡を合成する(ステップS20)。次の制御周期tsについて、ステップS19〜S20の処理を繰り返す。このようにして、ロボット121が停止するまで、制御周期ts毎にステップS19〜S20の処理を繰り返す(ステップS21)。
【0081】
この制御装置10が実行する同期終了モードでは、スレーブ装置102の離脱動作の速度成分vz21′が第1カーブC21′に従って制御され、また、スレーブ装置102の同期終了動作の速度成分vx22′が第2カーブC22′に従って制御される。これに伴って、スレーブ装置102は離脱動作の速度成分vz21′と同期終了動作の速度成分vx22′とを含む合成速度vc20′で動作する。このとき、この第2の制御方法によれば、合成速度vc20′を与える合成加速度ac20′(離脱動作の加速度成分az21′と同期終了動作の加速度成分ax22′とを含む)は負の閾値acthを下回らないものになっている。したがって、合成加速度ac20′の大きさを抑制できる。
【0082】
また、この第2の制御方法によれば、第1カーブC21′における減速期間td′と、第2カーブC22′における同期終了期間tc′とが一致しているので、離脱動作と同期終了動作とが同時に終了する。したがって、離脱動作と同期終了動作とが別々に終了する場合とは異なり、同期終了モードの実行が、ユーザに違和感を与えることがない。この点は、第1カーブC21と第2カーブC22が更新されなかった場合であっても、同様である。
【0083】
また、上の例では、第1カーブC21′における減速期間tdの始期(時刻t13)、終期(時刻t17)で、それぞれ加速度成分az21がゼロになっている。同様に、第2カーブC22′における同期終了期間tcの始期(時刻t13)、終期(時刻t17)で、それぞれ加速度成分ax22がゼロになっている。この結果、第1カーブC21′と第2カーブC22′とを合成してなる合成カーブC20′が緩やかになって、スレーブ装置102にかかる負荷が軽くなる。
【0084】
上述の実施形態では、離脱動作の速度成分、同期終了動作の速度成分、および、合成速度を緩やかに変化させるために、加速度(または加速度成分)の三角制御を採用したが、これに限られるものではない。離脱動作の速度成分、同期終了動作の速度成分、および、合成速度は、例えば余弦曲線の半周期に相当する形状で、極大値から緩やかに減少し始め、緩やかにゼロになってもよい。
【0085】
上述の制御装置10は、実質的にコンピュータ装置(例えば、プログラマブルロジックコントローラ(programmable logic controller;PLC)など)によって構成され得る。したがって、上述の第1、第2の制御方法は、コンピュータに実行させるためのプログラムとして構成されるのが望ましい。また、それらのプログラムは、それぞれコンピュータ読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体に記録されるのが望ましい。その場合、記録媒体に記録されたそれらのプログラムをコンピュータ装置に読み取らせ、実行させることによって、上述の第1、第2の制御方法を実施することができる。
【0086】
上の例では、マスタ装置101は1軸のベルトコンベアであり、また、スレーブ装置102は6軸多関節ロボットを含むものとした。しかしながら、これに限られるものではない。マスタ装置、スレーブ装置としては、例えばベルトコンベアのような1軸の装置、X−Yテーブルのような2軸の装置、4軸パラレルリンクロボットのような4軸の装置、5軸水平多関節ロボットのような5軸の装置、6軸多関節ロボットのような6軸の装置など、様々な軸数m,nの装置が対象となり得る。
【0087】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0088】
10 制御装置
30 中央演算部
100 制御システム
101 マスタ装置
102 スレーブ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7