【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の局面では、この開示の制御装置は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する第1カーブ算出部と、
上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出する合成カーブ算出部と、
上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する加速度判定部と、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正する合成カーブ補正部と、
上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する第2カーブ算出部と
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本明細書で、「離脱動作の速度成分」、「同期終了動作の速度成分」、「合成速度」を求めるときは、それぞれ「速度成分」、「速度」を与える加速度成分、加速度を求めてもよい。
【0010】
「スレーブ装置の同期速度」とは、上記スレーブ装置が上記マスタ装置に同期して動作しているときの速度を意味する。例えば、上記マスタ装置が一方向に一定の速度で移動している場合は、上記スレーブ装置の同期速度は、そのマスタ装置の速度を意味する。
【0011】
上記合成カーブを与える合成加速度のための「予め定められた負の閾値」は、上記スレーブ装置の仕様の範囲内で、例えばそのスレーブ装置が取り扱うワークの慣性力を考慮して、予め設定される。より具体的には、例えば、上記スレーブ装置が6軸多関節ロボットからなる場合、そのロボットのエンドエフェクタがワークを落とさないような値に設定される。
【0012】
この開示の制御装置では、第1カーブ算出部が、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する。合成カーブ算出部は、上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出する。加速度判定部は、上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する。上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、合成カーブ補正部は、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正する。第2カーブ算出部は、上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する。このようにして、上記第1カーブと上記第2カーブとが作成される。
【0013】
上記制御装置が実行する同期終了モードでは、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分が上記第1カーブに従って制御され、また、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分が上記第2カーブに従って制御される。これに伴って、上記スレーブ装置は上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度で動作する。このとき、上記合成速度を与える合成加速度(上記離脱動作の加速度成分と上記同期終了動作の加速度成分とを含む)は上記負の閾値を下回らないものになっている。したがって、この制御装置によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0014】
一実施形態の制御装置では、
上記合成カーブ算出部は、
上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分がゼロから極大値まで増加する加速期間については、上記合成速度は上記離脱動作の速度成分と上記同期速度がなす速度成分とを合成した値をとり、
上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分が上記極大値からゼロまで減少する減速期間については、この減速期間の始期に、上記合成速度が極大値から減少し始め、かつ、上記減速期間の終期に、上記合成速度がゼロとなる態様で、
上記合成カーブを算出することを特徴とする。
【0015】
この一実施形態の制御装置では、上記合成カーブ算出部は、上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分がゼロから極大値まで増加する加速期間については、上記合成速度は上記離脱動作の速度成分と上記同期速度がなす速度成分とを合成した値をとり、上記第1カーブにおいて上記離脱動作の速度成分が上記極大値からゼロまで減少する減速期間については、この減速期間の始期に、上記合成速度が極大値から減少し始め、かつ、上記減速期間の終期に、上記合成速度がゼロとなる態様で、上記合成カーブを算出する。つまり、上記合成カーブのうち上記減速期間に相当する部分を、上記合成カーブが表されるべき座標平面上で、2点を定めて、それら2点の間を滑らかに接続する態様で作成する。このようにして、上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記合成カーブが算出される。
【0016】
一実施形態の制御装置では、
上記合成カーブ補正部は、上記合成カーブを与える上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間の終期に対して上記合成速度がゼロになる時刻を遅らせて、上記合成カーブを補正する
ことを特徴とする。
【0017】
この一実施形態の制御装置では、さらに、上記合成カーブ補正部は、上記合成カーブを与える上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間の終期に対して上記合成速度がゼロになる時刻を遅らせて、上記合成カーブを補正する。このようにして、上記合成カーブが補正される。
【0018】
第2の局面では、この開示の制御装置は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御装置であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する第1カーブ算出部と、
上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する第2カーブ算出部と、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とに基づいて、合成加速度を算出する合成加速度算出部と、
上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する加速度判定部と、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長して、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように補正する合成加速度補正部と、
上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新するカーブ更新部と
を備えたことを特徴とする。
【0019】
この開示の制御装置では、第1カーブ算出部が、上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出する。第2カーブ算出部が、上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する。合成加速度算出部は、上記第1カーブと上記第2カーブとに基づいて、上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とを用いて、合成加速度を算出する。加速度判定部は、上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定する。上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、合成加速度補正部は、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長して、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように補正する。カーブ更新部は、上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新する。このようにして、上記第1カーブと上記第2カーブとが作成される。
【0020】
上記制御装置が実行する同期終了モードでは、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分が上記第1カーブに従って制御され、また、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分が上記第2カーブに従って制御される。これに伴って、上記スレーブ装置は上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度で動作する。このとき、上記合成速度を与える合成加速度(上記離脱動作の加速度成分と上記同期終了動作の加速度成分とを含む)は上記負の閾値を下回らないものになっている。したがって、この制御装置によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0021】
一実施形態の制御装置では、上記第2カーブ算出部は、上記減速期間に対して上記同期終了期間が一致する態様で、上記第2カーブを算出することを特徴とする。
【0022】
本明細書で、減速期間に対して同期終了期間が「一致」するとは、上記減速期間の始期と上記同期終了期間の始期とが一致し、かつ、上記減速期間の終期と上記同期終了期間の終期とが一致することを意味する。
【0023】
一実施形態の制御装置では、上記第2カーブ算出部は、上記減速期間に対して上記同期終了期間が一致する態様で、上記第2カーブを算出する。上記減速期間と上記同期終了期間とが一致していれば、上記離脱動作と上記同期終了動作とが同時に終了する。したがって、離脱動作と同期終了動作とが別々に終了する場合とは異なり、ユーザに違和感を与え難い。
【0024】
一実施形態の制御装置では、上記合成加速度補正部は、上記減速期間と上記同期終了期間とが一致する態様で、上記減速期間と上記同期終了期間の終期を延長することを特徴とする。
【0025】
この一実施形態の制御装置では、上記第1カーブ、上記第2カーブが更新されたとしても、上記減速期間と上記同期終了期間とが一致しているので、上記離脱動作と上記同期終了動作とが同時に終了する。したがって、ユーザに違和感を与え難い。
【0026】
一実施形態の制御装置では、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間の始期、終期で、それぞれ上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分がゼロであり、
上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間の始期、終期で、それぞれ上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分がゼロである
ことを特徴とする。
【0027】
この一実施形態の制御装置では、上記第1カーブは、上記減速期間の始期で緩やかに減速を開始し、上記減速期間の終期で緩やかにゼロになる。上記第2カーブは、上記同期終了期間の始期で緩やかに減速を開始し、上記同期終了期間の終期で緩やかにゼロになる。したがって、上記第1カーブと上記第2カーブとを合成してなる合成カーブが緩やかになって、上記スレーブ装置にかかる負荷が軽くなる。
【0028】
第3の局面では、この開示の制御方法は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御方法であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出し、
上記第1カーブと上記スレーブ装置の同期速度とに基づいて、上記離脱動作の速度成分と上記同期終了動作の速度成分とを含む合成速度の経時変化を表す合成カーブを算出し、
上記合成カーブを与える合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定し、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように上記合成カーブを補正し、
上記第1カーブと上記補正された合成カーブとに基づいて、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出する
ことを特徴とする。
【0029】
この開示の制御方法によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0030】
第4の局面では、この開示の制御方法は、
マスタ装置とスレーブ装置とを同期させて制御する制御方法であって、
上記マスタ装置から上記スレーブ装置を離脱させる離脱動作と、上記マスタ装置に対する上記スレーブ装置の同期を終了させる同期終了動作とを並行して実行する同期終了モードを有し、
上記離脱動作の速度成分が極大値からゼロまで小さくなる減速期間を含んで、上記スレーブ装置の離脱動作の速度成分の経時変化を表す第1カーブを算出し、
上記同期終了動作の速度成分が上記スレーブ装置の同期速度からゼロまで小さくなる同期終了期間を含んで、上記スレーブ装置の同期終了動作の速度成分の経時変化を表す第2カーブを算出し、
上記第1カーブにおける上記離脱動作の速度成分を与える加速度成分と、上記第2カーブにおける上記同期終了動作の速度成分を与える加速度成分とに基づいて、合成加速度を算出し、
上記合成加速度が予め定められた負の閾値を下回っているか否かを判定し、
上記合成加速度が上記負の閾値を下回っているとき、上記合成加速度が上記負の閾値と同じになるか又は上回るように、上記減速期間と上記同期終了期間とをそれぞれ延長し、
上記延長された減速期間、上記延長された同期終了期間に基づいて、それぞれ上記第1カーブ、上記第2カーブを更新する
ことを特徴とする。
【0031】
この開示の制御方法によれば、上記合成加速度の大きさを抑制できる。
【0032】
第5の局面では、この開示のプログラムは、第3の局面または第4の局面の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0033】
この開示のプログラムをコンピュータに実行させることによって、上記第3の局面または第4の局面の制御方法を実施することができる。