(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図19を参照しつつ、本発明に係る印刷装置及び印刷方法の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が人の爪に印刷を施すネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置はネイルプリント装置に限定されない。また、ネイルプリント装置は、手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷する場合を例とするが、本発明における印刷装置がネイルプリント装置である場合にその印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪を印刷対象としてもよい。また、ネイルチップや各種アクセサリの表面等、爪以外のものを印刷対象としてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態における印刷装置であるネイルプリント装置の外観斜視図である。
図1に示すように、本実施形態におけるネイルプリント装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の上面(天板)には操作部22が設置されている。
操作部22は、ユーザが各種入力を行う入力部である。
操作部22には、例えば、ネイルプリント装置1の電源をONする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、爪Tに印刷するデザイン画像を選択するデザイン選択釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦が配置されている。
また、本実施形態では、操作部12は後述する表示部23に設けられたタッチパネル式入力部222(
図3及び以下の記載において単に「タッチパネル222」という。)を含んでいる。
【0012】
また、筐体2の上面(天板)には表示部23が設置されている。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態の表示部23の表面には、タッチパネル222が一体的に構成されている。タッチパネル222は、例えば、指先やスタイラスペン(以下、単に「ペン」という。)又は先の尖った棒状の筆記具等の入力部材によって表示部23の表面をタッチするタッチ操作によって各種の入力を行うことができるように構成されたものであり、操作部22として機能する。
【0013】
本実施形態において、この表示部23には、例えば、指U(
図4(a)等参照)を撮影して得た爪画像(すなわち、爪Tの画像を含む指Uの画像)、この爪画像中に含まれる爪の輪郭等の画像、爪に印刷すべきネイルデザインを選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面、告知画面、警告画面等が適宜表示される。
特に本実施形態では、後述するように輪郭比較判定部813が、印刷予定輪郭Cr,Cd(
図6(a)、
図8(a)等参照)と現状輪郭Cb(
図9(b)、
図11(a)等参照)とを比較して設定値以上の差異があるか否かを判定するようになっており、表示部23は、輪郭比較判定部813により判定された差異が設定値以上である場合にユーザに報知する報知手段として機能する。
また、輪郭比較判定部813により判定された差異が設定値以上である場合、表示部23には、現状輪郭Cbの補正をユーザに促す表示画面が表示されてもよい。
さらに、表示部23がタッチパネル222として機能する場合、爪Tの輪郭(爪領域の輪郭、登録輪郭Cr)や後述する下地領域(現状輪郭Cb)等を自動認識した場合に、表示部23には、当該認識結果を修正するための爪輪郭修正画面等が表示され、ユーザがペン等を用いて画面上で手動にて修正できるようにしてもよい。
【0014】
また、筐体2の前面側(
図1において手前側)であって、ネイルプリント装置1のX方向(
図1においてX方向)のほぼ中央部には、ネイルプリント装置1による撮影時や印刷部40による印刷動作時に印刷対象である爪に対応する指を挿入し、撮影部50による撮影が可能な撮影可能位置、印刷部40による印刷が可能な印刷位置に爪をセットするための開口部24が形成されている。
開口部24の内側には、後述するように、爪Tを有する指U(
図4等参照)を固定する指固定機構3が配置されている。
【0015】
図2は、
図1に示すネイルプリント装置1から筐体2を外してネイルプリント装置1の内部構成を示した要部斜視図である。
図2に示すように、筐体2内には、各種の内部構造物が組み込まれた基台10が設けられている。
基台上面20における装置手前側(
図2におけるY方向手前側)であって、装置の幅方向(
図2におけるX方向)のほぼ中央部であり、筐体2の開口部24に対応する位置には、指固定機構3が配置されている。
【0016】
指固定機構3は、印刷対象である爪Tを有する指Uを安定的に保持する機構を有する。
指固定機構3は、装置手前側に開口部31を有する箱状の部材であり、指固定機構3内部には指を固定する指固定部材32が配置されている。
指固定部材32は、指Uを下側から押し上げ支持するものであり、例えば柔軟性を有する樹脂等で形成されている。本実施形態では、指固定部材32は、幅方向(
図2におけるX方向)のほぼ中央部が窪んだ形状となっており、指Uを指固定部材32上に載置した際に、指Uの腹部分を指固定部材32が受けて、装置幅方向(
図1及び
図2におけるX方向)に指ががたつくのを防止することができる。
【0017】
指固定機構3の天面奥側は開口する窓部33となっている。窓部33からは指固定機構3内に挿入された指Uの爪Tが露出するようになっている。
また、指固定機構3の天面手前側は指の浮き上がりを防止して指Uの上方向の位置を規制する指押え部34となっている。
さらに、本実施形態では、指挿入方向の奥側には、印刷対象である爪Tの先端部分を載置させて爪Tの高さ方向の位置を規制する爪載置部35が設けられている。爪載置部35の上面に爪Tの先を載置させることにより、爪Tの水平方向(すなわち、X方向及びY方向)の位置が規定されるとともに、その高さ方向の位置も規制される。
なお、指固定機構3は、装置内から取り外せるように、着脱自在に構成されていてもよい。
【0018】
また、筐体2の内部には、印刷対象面(すなわち、印刷対象である爪Tの表面)に印刷を施す印刷部40が設けられている。
印刷部40は、後述する輪郭比較判定部813による判定結果に基づいて設定される印刷領域に印刷を施す。
印刷部40は、印刷ヘッド41、印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42、印刷ヘッド41をX方向(
図1及び
図2等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に移動させるための移動機構を構成するX方向移動モータ46(
図3参照)、印刷ヘッド41をY方向(
図1及び
図2等におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に移動させるためのY方向移動ステージ47及びY方向移動モータ48(
図3参照)等を備えている。
【0019】
本実施形態において印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42)は、X方向(
図1及び
図2等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)に延在するガイド軸455(
図2参照)に摺動可能に取り付けられている。
また、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42)は、基台10における装置幅方向(
図1及び
図2等におけるX方向、ネイルプリント装置1の左右方向)の両側部に、それぞれY方向(
図1及び
図2等におけるY方向、ネイルプリント装置1の前後方向)に延在して設けられたY方向移動ステージ47上をガイド軸455に支持されたままY方向に沿って移動可能に構成されている。
【0020】
本実施形態の印刷ヘッド41は、インクジェット方式で印刷を行うインクジェットヘッドである。
印刷ヘッド41は、例えば、イエロー(Y;YELLOW)、マゼンタ(M;MAGENTA)、シアン(C;CYAN)のインクに対応する図示しないインクカートリッジと各インクカートリッジにおける印刷対象(爪Tの表面)に対向する面に設けられた図示しないインク噴射面とが一体に形成されたインクカートリッジ一体型のヘッドである。インク噴射面には、それぞれの色のインクを噴射する複数のノズルからなるノズルアレイの噴射口(インク噴射口、図示せず)が列状に形成されている。印刷ヘッド41は、インクを微滴化し、インク噴射面(インク噴射面のインク噴射口)から爪の表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行う。なお、印刷ヘッド41は、上記3色のインクを噴射させるものに限定されない。その他のインクを貯留するインクカートリッジ及びインク噴射口を備えていてもよい。
【0021】
本実施形態では、X方向移動モータ46とY方向移動モータ48等により印刷ヘッド41をXY平面上においてX方向及びY方向に移動可能なヘッド移動機構49(
図3参照)が構成されており、ヘッド移動機構49は、後述する制御装置80(特に印刷制御部815、
図3参照)によりその動作が制御される。
【0022】
また、本実施形態では、印刷ヘッド41を支持するヘッドキャリッジ42の一部に撮影部50が取り付けられている。具体的には、ヘッドキャリッジ42の上面が側方に一部張り出しており、当該張り出し部分の下側面に、撮影部50が設けられている。
撮影部50は、爪Tを撮影して、爪Tを含む指Uの画像である爪画像を取得する撮影手段である。撮影部50は、撮影装置51と、照明装置52とを備えている。
本実施形態の撮影部50は、指Uを指固定機構3に固定し、爪先を爪載置部35に載置した状態で、照明装置52で爪Tを照明して、撮影装置51によって撮影する。
この撮影部50は、後述する制御装置80の撮影制御部811(
図3参照)に接続され、該撮影制御部811によって制御されるようになっている。
なお、撮影部50によって撮影された画像の画像データは、後述する爪情報記憶領域822等に記憶されてもよい。
本実施形態の撮影部50は、X方向移動モータ46とY方向移動モータ48等で構成されるヘッド移動機構49により、X方向及びY方向に移動可能に構成されている。
なお、撮影部50は、指固定機構3内に配置されている爪Tを撮影できるものであればよく、その具体的な配置等は特に限定されない。
ヘッド移動機構49とは別に撮影部50をX方向及びY方向に移動させる移動機構を設け、この移動機構により撮影部50が移動するように構成してもよい。また、撮影部50は、筐体2の上面(天板)の内側であって、指固定機構3の窓部33の上方位置等に固定配置されていてもよい。
【0023】
制御装置80は、例えば筐体2天面の下面側(すなわち、装置内側面)等に配置された図示しない基板等に設置されている。なお基板は筐体2天面の下面側等に配置されたメインの基板の他に、X方向移動ステージ45やヘッドキャリッジ42等にも分散して設けられていてもよく、この場合には、これら複数の基板同士が電気的に接続されることで各部が統括的に制御され、連係して動作するように構成される。
図3は、本実施形態における制御構成を示す要部ブロック図である。
制御装置80は、
図3に示すように、図示しないCPU(Central Processing Unit)等により構成される制御部81と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部82とを備えるコンピュータである。
【0024】
記憶部82には、ネイルプリント装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
具体的には、記憶部82には、例えば爪画像から爪Tの形状や爪T(爪領域)の輪郭(印刷予定輪郭)、爪Tの幅、爪Tの曲率等の各種の爪情報を検出するための爪情報検出プログラム、印刷予定輪郭と現状輪郭とを比較判定する輪郭比較判定プログラム、印刷用データを生成するための印刷データ生成プログラム、印刷処理を行うための印刷プログラム等の各種プログラムが格納されており、これらのプログラムが制御装置80によって実行されることによって、ネイルプリント装置1の各部が統括制御されるようになっている。
【0025】
また、本実施形態の記憶部82には、爪Tに印刷されるネイルデザインの画像データを記憶するネイルデザイン記憶領域821、撮影部50によって取得されたユーザの爪Tの爪画像や爪画像を解析することで得られた各種の爪情報(爪Tの輪郭や爪Tの幅、爪Tの傾斜角度(爪Tの曲率)等)を記憶する爪情報記憶領域822等が設けられている。
爪情報記憶領域822は、爪Tの輪郭として既に登録されている登録輪郭Cr等(
図4(b)等参照)を記憶する。
本実施形態において、印刷予定領域は、爪Tの表面である爪領域の全面又はその一部であり、ネイルデザインが合わせ込まれた爪Tの領域である。
例えば、爪Tの表面に全体用のネイルデザイン(
図5のネイルデザインDa等)を印刷する場合には、爪領域の全面が印刷予定領域となる。具体的には、ユーザが印刷したいネイルデザインDaが爪全体に印刷されるデザインである場合(
図6(a)参照)には、ネイルデザインDaが配置される爪全体の領域が印刷予定領域となり、この時の印刷予定領域の輪郭は登録輪郭Crと一致する。また、爪領域の一部に部分用のネイルデザイン(
図7のネイルデザインDf等)を印刷する場合には、当該部分が印刷予定領域となる。具体的には、ユーザが印刷したいネイルデザインDfが爪先のみに印刷されるフレンチネイルである場合(
図8(a)参照)には、ネイルデザインDfが配置される爪先部分が印刷予定領域となる。
【0026】
制御部81は、機能的に見た場合、撮影制御部811、爪情報検出部812、輪郭比較判定部813、印刷データ生成部814、印刷制御部815、表示制御部816等を備えている。これら撮影制御部811、爪情報検出部812、輪郭比較判定部813、印刷データ生成部814、印刷制御部815、表示制御部816等としての機能は、制御部81のCPUと記憶部82に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0027】
撮影制御部811は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影装置51により、指固定機構3に固定された指Uの爪Tの画像を含む指Uの画像(爪画像)を撮影させるものである。
本実施形態では、撮影制御部811は、撮影部50を制御して下地を塗布する前の爪Tを撮影して爪画像を取得させる。また、爪Tの表面に下地を塗布した後、例えば実際の印刷を行う直前に現状の爪Tを撮影させて、現状の爪画像を取得させる。
撮影部50により取得された爪画像の画像データは、記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶されてもよい。
【0028】
爪情報検出部812は、撮影装置51によって撮影された爪画像に基づいて爪情報を検出するものである。
ここで、爪情報とは、例えば、爪Tの水平位置のXY座標等、爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置、爪Tの垂直位置)、爪Tの曲率(湾曲度合)等である。なお、爪情報はここに例示したものに限定されない。
また本実施形態では、爪情報検出部812は、爪Tの輪郭(爪領域の輪郭、爪形状)を検出する輪郭検出部として機能する。
これらの爪情報は、爪情報検出部812が爪画像を解析することにより検出される。解析の具体的な手法は特に限定されず、各種の画像解析の手法を適用することができる。
爪情報検出部812によって検出された結果である爪情報は、記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶される。
【0029】
具体的には、爪情報検出部812は、印刷予定領域であるユーザの爪T(爪Tの表面)の全部の輪郭を、下地等が塗布される前に予め検出する。爪情報検出部812によって予め検出された爪Tの輪郭は、登録輪郭(登録輪郭Cr、
図4(b)等参照)として爪情報記憶領域822に記憶される。また、ネイルデザインDfが爪Tに合わせ込まれた場合には、爪情報検出部812は、ネイルデザインDfが合わせ込まれたユーザの爪Tの一部の輪郭を、印刷予定領域として下地等が塗布される前に検出する。なお、ここで検出された輪郭の情報は爪情報記憶領域822に記憶されなくてもよい。
例えば、ユーザの指Uが、
図4(a)に示すような爪Tを有する指Uの場合、爪情報検出部812は、
図4(b)に示すように、爪領域を画する爪Tの輪郭(登録輪郭Cr)を検出する。
爪情報検出部812による爪Tの輪郭の検出は、例えば爪画像を解析して、爪Tとそれ以外の指Uの皮膚部分等との色や明度の違い等を検出することで行われる。なお、検出の手法は特に限定されない。各種のパターンマッチング等を用いてもよい。爪Tの輪郭の検出は、左右の手の10本の指Uについて行い、それぞれ指種等と対応付けて爪情報記憶領域822に記憶されることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態では、爪情報検出部812は、この爪領域の外周(爪Tの輪郭)に接する外接矩形(
図6(b)等における外接矩形Ft等)を設定する。そして、外接矩形Ftにおける爪幅方向の長さ(横幅)を「tw」、爪Tの伸びる方向(爪Tの付け根から爪先まで)の長さ(縦長、爪長)を「tl」としてそれぞれの値を爪情報記憶領域822に記憶させる。
【0031】
なお、爪情報記憶領域822に記憶させる対象は外接矩形の横幅tw及び縦長(爪長)tlに限定されない。例えば、外接矩形の縦横比(例えばtl/tw)でもよいし、爪Tの輪郭そのもの(輪郭(登録輪郭Cr)を構成する個々の点の座標位置)等であってもよい。さらに、ユーザが爪Tに印刷したいネイルデザインとして全体用のネイルデザイン(
図5のネイルデザインDa等)を選択し、当該ネイルデザインDaの爪Tへの合わせ込みが行われた場合には、ネイルデザインDaの輪郭や、当該輪郭に接する外接矩形が爪情報記憶領域822に記憶されてもよい。爪情報記憶領域822に記憶させる対象はこれらの各情報のうちの一部であってもよいし、全部であってもよい。
また、登録輪郭Crやその外接矩形Ft等は、どのようなタイミングで取得されたものでもよい。例えば、ネイルプリント装置1をユーザが入手して、初期設定の1つとして、ユーザの爪Tの輪郭を検出し、左右どちらのどの指であるかの指種等と対応付けて記憶(登録)させてもよい。1台のネイルプリント装置1を複数人で使用する場合であれば、ユーザを区別する情報も対応付けておく。
【0032】
爪Tの全体に印刷を施す場合(例えばユーザが選択したネイルデザインDaが爪の全体に印刷するデザインである場合)には、爪情報検出部812は、印刷予定輪郭Ctとして、爪領域のネイルデザインDaが施される印刷予定領域の輪郭を検出する。
この場合、ユーザが爪Tに施したいネイルデザインとしてネイルデザインDaを選択すると、爪情報検出部812は、爪領域のネイルデザインDaの印刷が施される印刷予定領域の輪郭(印刷予定輪郭Ct)として、登録輪郭Crを爪情報記憶領域822から読みだす。
この時に、
図5に示すように、制御装置80がネイルデザインDaをユーザの印刷したい爪Tに合わせ込み、
図6(a)に示すように、爪全体にネイルデザインDaが乗るようにユーザによりサイズや向き等が調整されてもよい。
【0033】
また、爪情報検出部812は、このネイルデザインDaが配置される領域(印刷予定領域)の外周(爪Tの輪郭)に接する外接矩形(
図6(b)等における外接矩形Ft、なお、
図6(b)等ではネイルデザインDaが配置される爪Tの部分を二点鎖線で示している。)を設定する。そして、この外接矩形Ftにおける爪幅方向の長さ(横幅)を「tw」、これに直交する縦方向の長さ(縦長)を「tl」としてそれぞれの値を検出する。
【0034】
なお、爪Tの一部にしか印刷を施さない場合(例えばユーザが選択したネイルデザインDfが爪先のみに印刷するフレンチネイルである場合)には、爪情報検出部812は、印刷予定輪郭Cdとして、爪領域のうちネイルデザインDfが施される印刷予定領域の輪郭を検出する。
この場合、ユーザが爪Tに施したいネイルデザインとしてフレンチネイル用のネイルデザインDfを選択すると、
図7に示すように、まず、制御装置80が当該ネイルデザインDfをユーザの印刷したい爪Tに合わせ込み、ユーザはサイズや向き等を調整する。
具体的には、ネイルデザインDfをユーザの爪Tの爪先側から合わせ込み、
図8(a)に示すように、爪先側に隙間が空かないように配置したときのネイルデザインDfの輪郭を検出し、印刷予定輪郭Cdとして検出する。
【0035】
また、爪情報検出部812は、このネイルデザインDfが配置される領域(印刷予定領域)の外周(爪Tに合わせ込まれたネイルデザインDfの輪郭)に接する外接矩形(
図8(b)等における外接矩形Fd、なお、
図8(b)等ではネイルデザインDfが配置される爪Tの部分を二点鎖線で示している。)を設定する。そして、この外接矩形Fdにおける爪幅方向の長さ(横幅)を「dw」、これに直交する縦方向の長さ(縦長)を「dl」としてそれぞれの値を検出する。
【0036】
また、本実施形態の爪情報検出部812は、輪郭検出部として、印刷時点における印刷対象領域の現状の輪郭である現状輪郭Cbを検出する。
印刷対象領域の現状の輪郭とは、例えば爪Tに下地を塗布した場合には、爪Tの表面のうち下地を塗布された下地領域Bの輪郭である。
【0037】
爪Tに印刷した際の発色をよくする等のために、本実施形態では、印刷前に、印刷予定領域(すなわち、全体用のネイルデザインDaを施す場合には爪全体、部分用のネイルデザインDfを施す場合には爪先等のネイルデザインDfが設定される部分)に下地として、白色又はそれに近い色のインクを塗布する(
図9(a)、
図11(a)等参照)。下地を塗布する手法は特に限定されないが、例えばユーザがペンや筆等を用いて手動で行う。
爪Tは周りの皮膚等と近い色であるため、そのままでは爪画像を解析しても検出しづらいが、爪Tに白色等の下地を塗布することで、周囲との識別がしやすくなる。このため、下地が塗布された状態において、印刷時点における印刷対象領域の現状輪郭Cbを検出することで、爪領域の検出精度を向上させることができる。
【0038】
しかし、前記のように下地の塗布はユーザが手動で行うため、
図9(a)及び
図9(b)(全体用のネイルデザインDaを施す場合)や
図11(a)(部分用のネイルデザインDfを施す場合)に示すように、印刷予定領域内に過不足なく正しく塗布できるとは限らない。
例えば、爪Tの全域に全体用のネイルデザインDaを施したい場合に、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、正しい下地領域B(Br)の他に、爪Tの縦方向(すなわち、爪Tの付け根方向)や横方向である非印刷対象に、はみ出して塗布されたはみ出し領域Boが生じる場合がある。
この場合、輪郭検出部としての爪情報検出部812は、正しい下地領域B(Br)とはみ出し領域Boとを合わせた下地領域Bの輪郭を現状輪郭Cbとして検出してしまう(
図10(b)参照)。
【0039】
また、例えば、爪Tの一部に部分用のネイルデザインDfを施したい場合にも、
図11(b)に示すように、正しい下地領域B(Br)の他に、縦方向(すなわち、爪Tの付け根方向)等にはみ出して塗布されたはみ出し領域Boが生じる場合がある。
この場合、輪郭検出部としての爪情報検出部812は、正しい下地領域B(Br)とはみ出し領域B(Bo)とを合わせた下地領域Bの輪郭を現状輪郭Cbとして検出してしまう。
また逆に、
図11(c)に示すように、一部に塗残し領域Bnが生じてしまった場合には、輪郭検出部としての爪情報検出部812は、
図11(a)に示す正しく下地が塗布された場合の下地領域B(Br)と比較して、狭い下地領域B(すなわち、Br−Bnの領域)の輪郭を現状輪郭Cbとして検出してしまう。
【0040】
さらに、下地が正しい下地領域B(Br)のみに正しく塗布された場合でも、下地領域Bを爪画像から検出する際に、爪情報検出部812が当該領域を誤認識する場合もある。
爪情報検出部812が誤認識する原因としては、例えば下地が白色等であるために、撮影部50が爪T(爪Tを含む指U)を撮影した際に照明装置52の光が爪Tの表面で反射すること等により、実際の領域よりも広い範囲が白く光ってしまい、爪情報検出部812が、反射によって白く見えている部分までを下地領域Bとして認識してしまうこと等が考えられる。
この場合には、実際より広く誤認識された下地領域Bの輪郭が現状輪郭Cbとして検出されてしまう。本実施形態では、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ct,Cdとほぼ等しいかに関わらず、爪Tに白色等の下地が塗布された状態を印刷準備済の状態とする。
【0041】
輪郭比較判定部813は、ネイルデザインDa又はネイルデザインDfに基づく印刷予定輪郭Ct(登録輪郭Cr)又は印刷予定輪郭Cdと、輪郭検出部である爪情報検出部812により検出された現状輪郭Cbと、を比較して設定値以上の差異があるか否かを判定する。
本実施形態において、輪郭比較判定部813は、印刷予定輪郭Ct,Cdに設定される外接矩形Ft,Fdの縦長tl,dl及び横幅tw,dwと現状輪郭Cbである下地領域の輪郭に設定される外接矩形Fbの縦長bl及び横幅bwとを比較して、縦長bl及び横幅bwのいずれか一方でも下地領域の輪郭(現状輪郭Cb)の方が設定値以上大きい場合には、差異が設定値以上であると判定する。
なお、外接矩形Ft,Fdは、爪情報検出部812によって設定されてもよいし、爪情報検出部812によって検出された輪郭に基づいて、輪郭比較判定部813が設定してもよい。
【0042】
すなわち、爪Tの全域に全体用のネイルデザインDaを施したい場合、
図12に示すように、爪Tの輪郭である印刷予定輪郭Ct(すなわち登録輪郭Cr)に設定される外接矩形Ftの縦長tlと現状輪郭Cbに設定される外接矩形Fbの縦長bl同士、及び外接矩形Ftの横幅twと外接矩形Fbの横幅bw同士を比較する。そして、縦長bl及び横幅bwがいずれも縦長tl及び横幅twと同じかこれよりも小さい場合には、輪郭比較判定部813は、差異が設定値より小さいと判定する。なお、縦長bl及び横幅bwのいずれか一方が縦長tl及び横幅twよりも設定値以上小さい場合にも設定値以上の差異があると判定してもよい。
これに対して、
図13に示すように、縦長bl及び横幅bwのいずれか一方でも縦長tl及び横幅twよりも設定値以上大きい場合には、設定値以上の差異があると判定する。
図13では、差異を「α」で表しており、縦長bl及び横幅bwのいずれも「α」だけ差異がある場合を示している。
輪郭比較判定部813が、差異が設定値より小さい(すなわち本実施形態では、縦長bl及び横幅bwがいずれも縦長tl及び横幅twと同じかこれよりも小さい)と判定した場合には、
図5に示すように、爪T全体の現状輪郭Cbに全体用のネイルデザインDaを合わせ込んで印刷を行うことで、指Uにインクがはみ出すことなく、所望のネイルデザインDaを爪Tに印刷することができる。
【0043】
また、爪Tの一部分に部分用のネイルデザインDfを施したい場合、
図14に示すように、ネイルデザインDfの輪郭である印刷予定輪郭Cdに設定される外接矩形Fdの縦長dlと現状輪郭Cbに設定される外接矩形Fbの縦長bl同士、及び外接矩形Fdの横幅dwと外接矩形Fbの横幅bw同士を比較して、縦長bl及び横幅bwがいずれも縦長dl及び横幅dwと同じ場合には、輪郭比較判定部813は、差異が設定値より小さい(両者はほぼ同じである)と判定する。
これに対して、
図15に示すように、縦長bl(又は横幅bw)が縦長dl(又は横幅dw)よりも設定値以上大きい場合には、差異が設定値以上であると判定する。
さらに、
図16に示すように、横幅bw(又は縦長bl)が横幅dw(又は縦長dl)よりも設定値以上小さい場合にも、差異(差異の絶対値)が設定値以上であると判定する。
輪郭比較判定部813が、差異が設定値より小さいと判定した場合には、
図8(a)に示すように、現状輪郭CbにネイルデザインDfを合わせ込んで印刷を行うことで、下地の塗布されている領域内に収まるように所望のネイルデザインDfを爪Tの所定の領域(例えばフレンチネイルなら爪先の領域)に印刷することができる。
【0044】
図15では、現状輪郭Cbに設定される外接矩形Fbの縦長bl(又は横幅bw)が印刷予定輪郭Cdに設定される外接矩形Fdの縦長dl(又は横幅dw)よりも大きい場合の両者の差異を「α」で表しており、縦長blのみが「α」だけ差異がある場合を例示している。
また、
図16では、現状輪郭Cbに設定される外接矩形Fbの横幅bw(又は縦長bl)が印刷予定輪郭Cdに設定される外接矩形Fdの横幅dw(又は縦長dl)よりも小さい場合の両者の差異を「−α」で表しており、横幅bwのみが「α」だけ差異がある場合を例示している。
【0045】
ここで、「設定値」をどの程度とするかは適宜設定可能な事項であり、例えば、0.5mm〜1mm程度である。爪Tに印刷する場合、0.5mm〜1mm程度よりも下地領域Bがはみ出すと、当該領域に印刷した際に爪Tの周りの指U(指Uの皮膚)に付着するインク汚れが無視できない程度であると考えられる。なお、爪Tの大きさや形状によっては1mm以上下地領域Bがはみ出しても目立たない場合もあり得る。このため、「設定値」については、デフォルトとして0.5mm〜1mm程度との設定があっても事後的にユーザ等が調整・変更できるようにしておいてもよい。
また、横幅bwの差異αの「設定値」を0.3mmとし、縦長blの差異αの「設定値」は0.8mmをする等、はみ出した際の目立ちやすさ等に応じて縦と横とで許容される「設定値」を変えてもよい。
さらに、爪Tの全域に全体用のネイルデザインDaを施す場合(
図12、
図13参照)と、爪Tの一部分に部分用のネイルデザインDfを施す場合(
図14〜
図16参照)とで、許容される「設定値」を変えてもよい。
【0046】
なお、輪郭比較判定部813が印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとを比較する手法は上記の手法に限定されない。
例えば、輪郭比較判定部813は、印刷予定輪郭Ct,Cdに設定される外接矩形Ft,Fd及び現状輪郭Cbである下地領域の輪郭に設定される外接矩形Fbの縦長bl及び横幅bwの縦横比を比較して、両者の縦横比が設定値以上異なる場合に差異が設定値以上であると判定してもよい。
縦横比が大きく異なっている場合、爪情報検出部812が、下地を塗布した後の現状輪郭Cbの認識に失敗している可能性があり、このまま印刷を行うと正しい範囲に印刷を行うことができないおそれがある。
この場合の「設定値」は、例えば、現状輪郭Cbに設定される外接矩形Fbの縦横比(横幅bw分の縦長bl)と印刷予定輪郭Ct,Cdに設定される外接矩形Ft,Fdの縦横比(横幅tw,dw分の縦長tl,dl)とを比較したときの差異の程度が10%程度である。なお、この場合も、上記と同様、「設定値」については、デフォルトとして10%程度との設定があっても事後的にユーザ等が調整・変更できるようにしておいてもよい。
【0047】
印刷データ生成部814は、爪情報検出部812により検出された爪情報に基づいて、印刷ヘッド41により爪Tに施される印刷用のデータを生成する。
また、本実施形態では、印刷データ生成部814は、輪郭比較判定部813による判定結果に基づいて印刷領域を設定する。すなわち、印刷データ生成部814は、輪郭比較判定部813によって、印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとを比較した結果、設定値以上の差異がないと判定された場合に、現状輪郭Cbの範囲内を印刷領域として設定する。そして、印刷データ生成部814は、この印刷領域に合うように、印刷用データを生成する。
【0048】
具体的には、印刷データ生成部814は、爪情報検出部812により検出された現状輪郭Cbに基づいてネイルデザインの画像データを拡大、縮小、切出し等することにより爪Tの形状に合わせ込む合せ込み処理を行う。
さらに、印刷データ生成部814は、適宜補正を行って印刷対象面である爪Tの表面に印刷する印刷用データを生成する。
また、爪情報検出部812により爪Tの曲率等が取得されている場合には、印刷データ生成部814は、例えば爪Tの曲率に応じて爪Tの両端部における印刷濃度が低下しないように濃度調整を行う等の曲面補正を適宜行ってもよい。
【0049】
印刷制御部815は、印刷データ生成部814によって生成された印刷用データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷用データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、印刷ヘッド41等を制御する制御部である。
【0050】
表示制御部816は、表示部23を制御して、各種の表示画面を表示させるものである。
本実施形態では、表示制御部816は、例えば、指Uを撮影して得られた爪画像や、爪Tに印刷すべき画像(すなわち、「ネイルデザイン」)を選択するためのデザイン選択画面、デザイン確認用のサムネイル画像、各種の指示を表示させる指示画面等を表示部23に表示させるようになっている。
本実施形態では、表示制御部816は、輪郭比較判定部813により判定された差異が設定値以上である場合に、現状の下地領域(すなわち、現状輪郭Cbの範囲内)に印刷したのでは、ネイルデザインが正しく印刷されない可能性があることをユーザに報知する報知画面、警告画面等を表示部23に表示させて、表示部23を報知手段として機能させるようになっている。
また、輪郭比較判定部813により判定された差異が設定値以上である場合、表示制御部816は、現状輪郭Cbの補正をユーザに促す表示画面や爪情報検出部812による認識結果を修正するための爪輪郭修正画面等を表示させるように表示部23を制御してもよい。
【0051】
次に、
図17〜
図19等を参照しつつ、本実施形態における印刷装置であるネイルプリント装置1による印刷方法について説明する。
【0052】
本実施形態では、まず、事前にユーザがネイルプリント装置1の指固定機構3に指Uをセットし、撮影部50による指Uの撮影を行う。これにより、
図17に示すように、爪画像が取得される(ステップS1)。
このとき左右の手の指Uを順次セットして両手の全10指について撮影を行い、各指Uの爪画像を取得してもよい。この場合、順次指Uを設定位置にセットするようユーザに促す告知画面等が、表示部23等に表示されてもよい。
【0053】
例えば
図4に示すような爪画像が取得されると、爪情報検出部812が爪領域の輪郭を検出し(
図7参照)、登録輪郭Crとして記憶部82に記憶させる(ステップS2)。
なお、このとき、検出結果である輪郭を爪画像に重畳して表示部23に表示させる等により、検出結果についてユーザの確認を求めてもよい。また、検出結果を手動で修正したい場合には、表示部23の表示画面上で正しい輪郭をペンでなぞる等により適宜修正できるようにしてもよい。この場合には、修正後の輪郭を登録輪郭Crとするようにデータが更新される。
なお、手動で輪郭が修正された場合には、手先のブレ等によって輪郭が滑らかとならない場合がある。このため、適宜各種の平滑化フィルタを適用したエッジの平滑化(スムージング,smoothing)処理等を行うことにより、輪郭が滑らかに繋がるように補正することが好ましい。平滑化フィルタとしては、例えば移動平均フィルタ、加重平均フィルタ、ガウシアンフィルタ等の各種フィルタを適用することができる。
【0054】
また、表示制御部816は、表示部23にデザイン選択画面を表示させ、ユーザは操作部22の操作釦やタッチパネル222等を操作して、デザイン選択画面に表示された複数のネイルデザインの中から所望のネイルデザインを選択する。これにより、操作部22から選択指示信号が出力されて、爪Tに印刷するネイルデザインとして一つのネイルデザインが選択される(ステップS3)。
以上によって、印刷前の事前準備が終了する。この事前準備は、実際にネイルプリントを行う直前に行われてもよいし、数日前、数か月前等に行われてもよく、ユーザの任意のタイミングで行われる。
【0055】
このネイルプリント装置1により印刷を行う場合、制御装置80は、まず、選択されているネイルデザインが爪全体用のものか否かを判断する(ステップS4)。
そして、ネイルデザインが爪全体用のものである場合(ステップS4;YES)には、全体デザインモードでの印刷処理が行われる(ステップS5、
図18参照)。他方、ネイルデザインが爪全体用のものでない場合(ステップS4;NO)には、部分デザインモードでの印刷処理が行われる(ステップS6、
図19参照)。
【0056】
まず、全体デザインモードでの印刷処理(
図17のステップS5)は以下のように行われる。
すなわち、この場合には、ユーザが爪T全体に下地を塗布した上で指固定機構3に指Uをセットする。なお、爪全体用のネイルデザインDaが選択されている場合に、爪T全体に下地を塗布して指Uをセットするように促す指示画面が表示部23に表示されるようにしてもよい。
指Uがセットされると、
図18に示すように、爪T全体に下地が塗布された爪T(爪Tを含む指U)を撮影部50により撮影して、例えば
図9(a)や
図10(a)のような爪画像を取得する(ステップS11)。
そして、爪情報検出部812が、下地の塗布された下地領域Bの輪郭を現状輪郭Cbとして爪画像から検出する(ステップS12、
図9(b),
図10(b)参照)。
【0057】
輪郭比較判定部813は、全体デザインモードにおける印刷予定輪郭Ctである登録輪郭Crを記憶部82の爪情報記憶領域822から読み出して、これと、爪情報検出部812によって検出された現状輪郭Cbとしての下地領域Bとを比較し、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctよりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。
本実施形態では、印刷予定輪郭Ct及び現状輪郭Cbにそれぞれ外接矩形(すなわち、
図12及び
図13における印刷予定輪郭Ctの外接矩形Ft、
図12及び
図13における現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が設定され、輪郭比較判定部813は、この外接矩形Ft,Fbの横幅tw,bw、縦長tl,blを比較することで、印刷予定輪郭Ctと現状輪郭Cbとの大小を判定する。
【0058】
現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctよりも大きくない場合、すなわち、本実施形態では、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctと同程度かそれよりも小さい場合(ステップS13;NO)には、印刷データ生成部814が、選択されている爪全体用のネイルデザインDaを現状輪郭Cbの範囲内、すなわち、下地領域Bにフィッティングし、適宜曲面補正等を行った上で、印刷用データを生成する(ステップS14)。そして、印刷制御部815が印刷用データを印刷部40に出力し、印刷用データに基づく印刷が行われる(ステップS15)。
【0059】
他方、現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が印刷予定輪郭Ct(印刷予定輪郭Ctの外接矩形Ft)よりも大きい場合(ステップS13;YES)には、表示部23等にアラート表示等を行い、その旨をユーザに報知する(ステップS16)。
アラート表示の仕方は特に限定されないが、例えば文字による表示であってもよいし、印刷予定輪郭Ctと現状輪郭Cbとを重畳表示させて、両者が合致する部分、はみ出している部分等を示してもよい。重畳表示させる場合には、はみ出している部分に色を付す等によってユーザに分かりやすく提示することが好ましい。
なお、アラートは表示に限定されず、例えば、図示しないランプを点灯、点滅させたり、図示しないスピーカーを備える場合には、音声案内等を行ってもよい。
なお、アラートを行った結果、ユーザが輪郭比較判定部813による判定結果を承認した場合には、はみ出し等にかかわらず、現状輪郭Cbを印刷領域として印刷用データを生成し、印刷を行ってもよい。
また、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctとほぼ等しい場合以外、すなわち、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctよりも所定の値(設定値)以上大きい場合(はみ出している場合)のみならず、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctよりも所定の値(設定値)以上小さい場合(塗残しがある場合)にも、表示部23等にアラート表示等を行い、その旨をユーザに報知してもよい。塗り残しがある場合には、下地を塗り足す等により現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Ctとほぼ同じとなるように修正する。この場合、再度修正後の爪Tを撮影して爪画像を取得し、現状輪郭Cbの検出をやり直してもよい。
【0060】
また、アラートを出したときには、現状輪郭Cbである下地領域Bの輪郭を補正するよう促す表示を表示部23に行ってもよい(ステップS17)。例えば現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が印刷予定輪郭Ct(印刷予定輪郭Ctの外接矩形Ft)よりも大きいと判定されたのが、下地領域Bの誤認識等によるものである場合には、ユーザが現状輪郭Cbを手動で修正できるようにしてもよい。この場合、表示部23の表示画面上で下地領域Bの正しい輪郭をペンでなぞる等により適宜修正する。現状輪郭Cbが修正された場合には、修正後の輪郭を現状輪郭Cbとするようにデータが更新される。
なお、この場合も手動で修正された輪郭について適宜各種の平滑化フィルタを適用したエッジの平滑化処理等を行うことにより、輪郭が滑らかに繋がるように補正することが好ましい。
他方で、現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が印刷予定輪郭Ct(印刷予定輪郭Ctの外接矩形Ft)よりも大きいと判定されたのが、ユーザによる下地塗布の失敗(はみ出し)である場合には、一旦指固定機構3から指Uを外して、除光液(リムーバ)等で下地のはみ出し領域B(Bo、
図10(b)参照)を除去して現状輪郭Cbが正しい下地領域Bとほぼ同じとなるように修正する。この場合、再度修正後の爪Tを撮影して爪画像を取得し、下地領域Bの輪郭(現状輪郭Cb)の検出をやり直してもよい。また、印刷予定輪郭Ctと現状輪郭Cbの重なっている部分を印刷領域として印刷用データを生成し、印刷を行ってもよい。
【0061】
他方、部分デザインモードでの印刷処理(
図17のステップS6)は以下のように行われる。
すなわち、この場合には、
図19に示すように、制御装置80は、例えば
図17のステップS2で検出された爪領域の輪郭(登録輪郭Cr)に、選択されている部分用のネイルデザインDfをフィッティングする(ステップS21、
図7参照)。
そして、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、印刷予定輪郭Cdとしてフィッティングの結果であるネイルデザインDfの輪郭を検出する(ステップS22)。
【0062】
ユーザは、爪先部分等、ネイルデザインDfが配置される印刷予定輪郭Cdに対応する範囲に下地を塗布した上で指固定機構3に指Uをセットする。なお、爪先部分等に下地を塗布して指Uをセットするように促す指示画面が表示部23に表示されるようにしてもよい。
指Uがセットされると、爪先部分等、爪の一部分に下地が塗布された爪T(爪Tを含む指U)を撮影部50により撮影して、例えば
図11(a)〜
図11(c)のような爪画像を取得する(ステップS23)。
そして、爪情報検出部812が、下地の塗布された下地領域Bの輪郭を現状輪郭Cbとして爪画像から検出する(ステップS24)。
【0063】
輪郭比較判定部813は、印刷予定輪郭Cdと、爪情報検出部812によって検出された現状輪郭Cbとしての下地領域Bとを比較し、現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Cdとほぼ等しいか否か、すなわち差異がないか、あるとしても設定値以内であるかを判定する(ステップS25)。
現状輪郭Cbが印刷予定輪郭Cdとほぼ等しい場合(ステップS25;YES、
図14参照)には、印刷データ生成部814が、選択されている部分用のネイルデザインDfを現状輪郭Cbの範囲内、すなわち、下地領域Bにフィッティングし、適宜曲面補正等を行った上で、印刷用データを生成する(ステップS26)。そして、印刷制御部815が印刷用データを印刷部40に出力し、印刷用データに基づく印刷が行われる(ステップS27)。
【0064】
他方、現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が印刷予定輪郭Cd(印刷予定輪郭Cdの外接矩形Fd)と比較したとき設定値以上差異がある場合(ステップS25;NO)、すなわち、
図15に示すように、現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)の方が設定値以上大きい場合や
図16に示すように、現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)の方が設定値以上小さい場合には、表示部23等にアラート表示等を行い、その旨をユーザに報知する(ステップS28)。なお、アラート表示の仕方や、アラートの報知の手法について特に限定されないことは全体デザインモードの場合と同様である。
【0065】
また、アラートを出したときには、全体デザインモードの場合と同様に、現状輪郭Cbである下地領域Bの輪郭を補正するよう促す表示を表示部23に行ってもよい(ステップS29)。例えば現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が印刷予定輪郭Cd(印刷予定輪郭Cdの外接矩形Fd)よりも大きい又は小さいと判定されたのが、下地領域Bの誤認識等によるものである場合には、ユーザが現状輪郭Cbを手動で修正できるようにしてもよい。この場合、表示部23の表示画面上で下地領域Bの正しい輪郭をペンでなぞる等により適宜修正する。現状輪郭Cbが修正された場合には、修正後の輪郭を現状輪郭Cbとするようにデータが更新される。
なお、この場合も手動で修正された輪郭について適宜各種の平滑化フィルタを適用したエッジの平滑化処理等を行うことにより、輪郭が滑らかに繋がるように補正することが好ましい。
他方で、現状輪郭Cb(現状輪郭Cbの外接矩形Fb)が印刷予定輪郭Cd(印刷予定輪郭Cdの外接矩形Fd)よりも大きい又は小さいと判定されたのが、ユーザによる下地塗布の失敗(はみ出しや塗残し)である場合には、一旦指固定機構3から指Uを外して、除光液(リムーバ)等で下地のはみ出し領域B(Bo、
図11(b)参照)を除去したり、塗り残し領域Bnに下地を塗り足したりして現状輪郭Cbが正しい下地領域Bとほぼ同じとなるように修正する。この場合、再度修正後の爪Tを撮影して爪画像を取得し、下地領域Bの輪郭(現状輪郭Cb)の検出をやり直してもよい。
【0066】
このように、本実施形態では、印刷予定輪郭Ct,Cdと下地塗布後の現状輪郭Cb(爪T全体又は爪Tの一部分)とを比較して設定値以上ずれている場合にはユーザに報知するため、適宜対応して印刷を開始することができ、優れた仕上がりのネイルプリントを行うことができる。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、印刷予定領域の輪郭として印刷予定輪郭Ct,Cdと、印刷時点における印刷対象領域の輪郭として現状輪郭Cbとを比較して、両者の差異がある場合にはユーザに報知するようになっている。
このため、誤った範囲に印刷領域が設定されている場合には、ユーザが印刷前に気付き、適宜対処することが可能となる。これにより、デザインが崩れたり、はみ出したりしたまま印刷されることを防止でき、ネイルプリントの失敗を未然に防いで、良好な印刷を行うことができる。
【0068】
また、本実施形態において、印刷予定領域は、爪Tの表面である爪領域の全面又はその一部であり、現状輪郭Cbは、爪Tの表面のうち下地が塗布された下地領域Bの輪郭である。
下地が塗布された状態の爪Tは比較的皮膚等との区別がつきやすく、正確な輪郭検出をしやすい反面、下地が手動で塗布される場合には下地の塗布範囲が適切でない場合もあり得る。下地の塗布に失敗している場合、下地領域として認識された範囲にそのままネイルプリントを施すと、本来印刷すべきでない部分にまで印刷領域が設定され、爪T以外の部分にまでインクが付着してしまうおそれがある。この点、本実施形態では、当初の印刷予定輪郭Ct,Cdと下地領域B(現状輪郭Cb)とにずれがないかを簡易に確認することができ、ネイルプリントの失敗を防止することができる。
【0069】
そして、当初の印刷予定輪郭Ct,Cdと下地領域B(現状輪郭Cb)とを比較する場合に、印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとにそれぞれ外接矩形Ft,Fd,Fbを設定し、この外接矩形Ft,Fd,Fb同士の縦長及び横幅を比較して、縦長及び横幅のいずれか一方でも下地領域Bの輪郭の方が設定値以上大きい場合には、差異が設定値以上であると判定するとしてもよい。
この場合、誤った範囲に印刷されることを防いで、良好なネイルプリントを行うことができる。
【0070】
また、上記のように外接矩形Ft,Fd,Fbを設定して当初の印刷予定輪郭Ct,Cdと下地領域B(現状輪郭Cb)とを比較する場合に、この外接矩形Ft,Fd,Fbの縦長及び横幅の縦横比を比較して、両者の縦横比が設定値以上異なる場合に差異が設定値以上であると判定するとした場合には、ネイルデザインが崩れる可能性のある場合にユーザに適切に報知することができる。
このため、ネイルプリントの失敗を未然に防ぐことができる。
また、外接矩形Ft,Fd,Fbを設定して判定を行うため、輪郭の細部の差異を認識・比較する場合よりも簡易かつ迅速な処理で良好な印刷を実現することができる。
【0071】
また、印刷予定領域が、爪Tの表面であってフレンチネイルを施す予定である爪先の領域である場合にも、本実施形態に示す手法によれば、下地がネイルデザインDfに対応する領域に過不足なく塗布されているかを簡易に判断することができる。
このため、下地を塗布する範囲を誤ってしまった場合等でも、印刷前に適切に対処することができる。
【0072】
また、本実施形態では、輪郭比較判定部813により判定された差異が設定値以上である場合には、現状輪郭の補正をユーザに促す表示画面が表示部23に表示される。
このため、ユーザが容易に補正動作を行うことができる。
【0073】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0074】
例えば、本実施形態では、輪郭比較判定部813が当初の印刷予定輪郭Ct,Cdと下地領域B(現状輪郭Cb)とを比較する場合に、印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとにそれぞれ外接矩形Ft,Fd,Fbを設定し、この外接矩形Ft,Fd,Fb同士の比較等を行う場合を例示したが、印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとに外接矩形Ft,Fd,Fbを設定することは必須ではない。
輪郭比較判定部813は、印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとを輪郭データ同士で比較等してもよい。この場合には、両者の輪郭を構成する個々の点同士をパターンマッチング等の手法によって精緻に比較等することができ、印刷予定輪郭Ct,Cdと現状輪郭Cbとの差異やずれをより高精度に判定することができる。
【0075】
また、本実施形態では、輪郭比較判定部813が外接矩形Ft,Fd,Fb同士の比較等を行う際に、外接矩形Ft,Fd,Fbの縦長及び横幅を比較する場合を例示したが、比較する対象はこれに限定されず、例えば横幅のみであってもよい。
縦長は、経時的に爪が伸びること等によって変動することがあるが、横幅はほぼ変動しない。このため、当初の印刷予定輪郭Ct,Cdと下地領域B(現状輪郭Cb)とで、その横幅が設定値以上変化している場合には、爪情報検出部812が輪郭の認識を誤った可能性が高いと判断できる。そこで、アラートを出して印刷前にユーザの確認を求めることが好ましい。
【0076】
また、本実施形態では、現状輪郭Cbが印刷対象領域(爪全体又は爪Tの一部分)として発色をよくする等のための白色等の下地が塗布された領域である場合を例示したが、下地が塗布されることは必須ではない。下地が塗布されない場合には、爪Tに何も塗らない、あるいは爪表面を滑らかにするための透明のベースコート等やインクを受容するインク受容体等が塗られた状態を印刷準備済の状態とする。
印刷時点での現状輪郭が当初認識され登録された登録輪郭Crと異なっている場合には、本発明を適用することができる。
例えば当初認識された指Uの爪T1が
図20(a)に示すように、縦長tl1、横幅tw1であり、印刷時点で認識された指Uの爪T2が
図20(b)に示すように、縦長tl2、横幅tw2である場合、輪郭比較判定部813は、認識時点の異なる2つの爪T1、T2を比較し、差異が設定値以上であるか否かを判定してもよい。
【0077】
例えば、爪Tは経時的に伸びていき、形状(特に縦長)が変化する。このため、当初登録輪郭Crを登録した時点でネイルデザインも選択し、爪領域に合わせ込む等して用意していた場合、印刷時点で当該合わせ込み後のネイルデザインから印刷用データを生成しようとするとネイルデザインの配置や構成が崩れてしまったり間延びしてしまったりするおそれがある。
この点、爪情報検出部812によって当初認識・登録された爪T1の輪郭(登録輪郭)がCr1、印刷時点で認識された爪T2の輪郭(現状輪郭)がCr2であり、それぞれに外接矩形Fr1,Fr2を設定した場合、現状輪郭Cr2の外接矩形Fr2の縦長rl2、横幅rw2がいずれも登録輪郭Cr1の外接矩形Fr1の縦長rl1、横幅rw1とほぼ等しいかこれよりも小さい場合(
図21参照)であれば、輪郭比較判定部813は、差異が設定値より小さいと判断し、そのまま印刷処理が続行される。
これに対して、現状輪郭Ct2の外接矩形Fr2の縦長rl2、横幅rw2のうちのいずれか一方でも登録輪郭Cr1の外接矩形Fr1の縦長rl1、横幅rw1よりも大きい場合(
図22参照)には、輪郭比較判定部813は、差異が設定値以上であると判定し、アラートを出す等、ユーザに注意喚起を促すようにしてもよい。
【0078】
なお、輪郭比較判定部813は、登録輪郭Cr1と現状輪郭Cr2との比較を実際の輪郭形状等に基づいて比較・判定を行うものに限定されない。
例えば、ユーザについて爪Tの伸び方(1週間に何mm伸びる等)の傾向を登録しておき、登録輪郭Cr1が検出されてからの経過時間に応じて現状輪郭Cr2の形状(特に縦長、爪長)を予測し、ネイルデザインを合わせ込む上で無視できない程度に形状が変化している可能性がある場合にはアラートを出すようにしてもよい。
この場合、具体的には、設定値が1mmであり、ユーザの爪Tが8日間で1mm伸びる傾向にある場合であれば、登録輪郭Cr1が検出されてから8日間以上経過していたら、輪郭比較判定部813は、差異が設定値以上であると判定し、アラートを出す等、ユーザに注意喚起を促す。
なお、爪Tの伸び方の傾向等は、同一のユーザでも指種ごとに設定されていてもよい。また、厳密にユーザごとの登録、設定等を行わなくても、年齢や性別等を登録することで、当該年齢や性別等に応じた爪Tの伸び方の傾向等が自動的に設定され、輪郭比較判定部813は、自動的に設定された傾向等に応じて、差異が設定値以上であるか否かを判定するようにしてもよい。
また、爪Tを切った場合には、当該情報も装置に入力することで、ユーザの登録情報に追加され、爪Tを切った時点で、爪Tの長さが初期状態にリセットされるようにしてもよい。
【0079】
また、本実施形態では、ユーザが全体用のネイルデザインと部分用のネイルデザインの中から所望のネイルデザインを選択することで印刷処理のモードが切り替わるとしたが、これに限定されない。
例えば、ユーザが全体デザインモード又は部分デザインモードを選択することで、選択されたモードに合った印刷予定輪郭Ct,Cdが表示部23に表示されるとしてもよい。この場合には、部分デザインモードの選択時には印刷予定輪郭Cdがユーザの所望の輪郭となるように、適宜調整が可能であることが好ましい。また、このような場合には、ネイルデザインの選択及び印刷予定輪郭Ct,Cdへのフィッティングは、モード選択の直後でもよいし、下地領域の輪郭の比較後でもよいし、ネイルデザインの選択のみモード選択の直後に行いフィッティングは下地領域の比較後に行うのでもよい。
【0080】
また、本実施形態では、爪全体にネイルデザインDaを施す場合には、下地を塗布する前の段階ではネイルデザインDaを爪Tに合わせ込む処理は行わず、初期状態の爪Tの輪郭Ctを登録輪郭Crとして記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶させ、印刷予定輪郭Ctである登録輪郭Cr又はこの印刷予定輪郭Ct(登録輪郭Cr)と接する外接矩形Ftを現状輪郭Cbと比較する場合を例示したが、爪全体にネイルデザインDaを施す場合にも、下地を塗布する前の初期状態でネイルデザインDaを爪Tに合わせ込む処理を行い、合わせ込まれた当該ネイルデザインDaの輪郭を印刷予定輪郭として記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶させておいてもよい。
【0081】
また、登録輪郭は、爪Tの輪郭そのものではなく、これの輪郭と接する外接矩形を登録輪郭として記憶部82の爪情報記憶領域822に記憶させておいてもよい。
【0082】
また、本実施形態では、部分デザインモードにおいて、下地領域の輪郭とデザインの輪郭が設定値以上差異がある際に、ユーザによる下地塗布の失敗(はみ出しや塗残し)が原因である場合には、下地のはみ出し領域B(Bo、
図11(b)参照)を除去したり、塗り残し領域Bnに下地を塗り足したりして現状輪郭Cbが正しい下地領域Bとほぼ同じとなるように修正するとしたが、はみ出しが爪Tの幅方向でない場合(bwがdwよりも大きくない場合)には、下地領域の輪郭に合わせてネイルデザインDfのフィッティングを再度行ってもよい。このようにすることで、例えば、現状輪郭Cbの爪Tの根本側の輪郭が思いがけず波形となった場合にも、波形も合わせてネイルデザインとすることができる。
【0083】
また、本実施形態では、ネイルデザイン記憶領域821、爪情報記憶領域822等が制御装置80の記憶部82内に設けられている場合を例としたが、これら各記憶領域は制御装置80の記憶部82(ROM、RAM)に設けられている場合に限定されず、別途記憶部が設けられていてもよい。
また、ネイルプリント装置1を外部の端末装置と連携させて、外部の端末装置に記憶されている情報を用いてもよい。
【0084】
また、ネイルデザインの画像データは端末装置の記憶部に設けられていてもよいし、ネイルプリント装置1の記憶部に記憶されていてもよい。
また、ネットワーク回線等を介して接続可能なサーバ装置等にネイルデザインの画像データを記憶させておき、端末装置又はネイルプリント装置1がサーバ装置等にアクセスしてネイルデザインの画像データを参照可能に構成してもよい。
このようにすることで、より多くのネイルデザインの中から印刷するデザインを選択することが可能となる。
【0085】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1が単体で印刷動作を完結できるように構成されている例を示したが、ネイルプリント装置1はここに示すようなものに限定されない。
例えば、ネイルプリント装置1が端末装置と連携して印刷システムを構成し、印刷開始指示の入力や、印刷領域(すなわち爪の領域)の検出、各種補正や印刷用データの生成等を端末装置側で行った上で、爪に印刷を行う印刷動作をネイルプリント装置1側で行うようにしてもよい。この場合には、各種指示を入力する操作部や表示部、印刷用データを生成する印刷データ生成部等を、ネイルプリント装置1と連携する端末装置側に設けて、端末装置の制御装置がこれらの機能を実現するようにしてもよい。
【0086】
また、本実施形態では、ネイルプリント装置1がインクジェット方式で印刷を行う構成としたが、ネイルプリント装置1が印刷を行う手法はインクジェット方式に限定されない。
例えば、爪の表面にペン先を接触させて印刷を行う印刷用のペンを保持するペンホルダを備え、ペンを用いて印刷を行うようにしてもよい。また、本実施形態のようなインクジェット方式の印刷手段と印刷用のペンを保持するペンホルダとを両方備え、複数の印刷手段を用いて印刷を行う構成としてもよい。
【0087】
また、ネイルプリント装置1に、印刷後にインクを乾燥させるためのヒータやファンを備える乾燥部が設けられていてもよい。
例えば、指待機部350等に乾燥部を設けることで、他の指の爪に印刷を行っている間に、印刷済みの爪を乾燥させることができ、ネイルプリントに要する時間を短縮することができる。
【0088】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
印刷対象の印刷領域に印刷を施す印刷部と、
前記印刷対象と、前記印刷対象に隣接する非印刷対象と、を含む領域内の印刷準備済の状態の印刷対象領域の現状の輪郭である現状輪郭を検出する輪郭検出部と、
前記印刷対象の印刷が施される予定の印刷予定領域の輪郭である印刷予定輪郭と、前記現状輪郭と、を比較して設定値以上の差異があるか否かを判定する輪郭比較判定部と、
前記輪郭比較判定部により判定された差異が設定値以上である場合にユーザに報知する報知手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記印刷対象と前記非印刷対象は、それぞれ爪の表面と前記爪を有する指の表面であり、
前記印刷予定領域は、前記爪の表面の爪領域内の全面又はその一部の、ユーザが所望するネイルデザインに対応する領域であり、
前記印刷対象領域は、前記爪及び前記指の表面のうち下地が塗布された下地領域であって、
前記輪郭比較判定部は、前記印刷予定輪郭及び前記現状輪郭に設定される外接矩形の縦長及び横幅の縦横比を比較して、両者の縦横比が設定値以上異なる場合に前記差異が設定値以上であると判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記印刷対象と前記非印刷対象は、それぞれ爪の表面と前記爪を有する指の表面であり、
前記印刷予定領域は、前記爪の表面の爪領域内の全面又はその一部の、ユーザが所望するネイルデザインに対応する領域であり、
前記印刷対象領域は、前記爪及び前記指の表面のうち下地が塗布された下地領域であって、
前記輪郭比較判定部は、前記印刷予定輪郭及び前記現状輪郭に設定される外接矩形同士の縦長及び横幅を比較して、縦長及び横幅のいずれか一方でも前記下地領域の輪郭の方が設定値以上大きい場合には、前記差異が設定値以上であると判定することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記爪の爪情報を記憶する記憶部を更に備え、
前記記憶部は、前記輪郭検出部により検出された前記爪領域の輪郭を登録輪郭として記憶することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記印刷部の動作を制御する印刷制御部を更に備え、
前記印刷制御部は、前記印刷部に、前記輪郭比較判定部による判定結果に基づいて設定される前記印刷領域に印刷を施させることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記印刷予定領域は、爪の表面であってフレンチネイルを施す予定である爪先の領域であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記輪郭比較判定部により判定された前記差異が設定値以上である場合に前記現状輪郭の補正をユーザに促す表示画面を表示させる表示部をさらに備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項8>
印刷対象の印刷領域に印刷を施す印刷装置の印刷方法であって、
前記印刷対象と、前記印刷対象に隣接する非印刷対象と、を含む領域内の印刷準備済の状態の印刷対象領域の現状の輪郭である現状輪郭を検出し、
前記印刷対象の印刷が施される予定の印刷予定領域の輪郭である印刷予定輪郭と、前記現状輪郭とを比較して設定値以上の差異があるか否かを判定して、
判定された前記差異が設定値以上である場合にユーザに報知することを特徴とする印刷方法。