(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
充電制御装置を備える車両に搭載され、複数の車載ECUと通信するための通信線が接続される車内通信部を複数備え、前記複数の車載ECUから送信されるメッセージを前記車内通信部間にて中継する車載中継装置であって、
前記メッセージの中継を制御する制御部を備え、
前記制御部は、車外の外部サーバから取得した更新プログラムを更新対象の車載ECUに中継する際、複数の中継モードによって、前記更新プログラム又は前記メッセージを中継し、
前記複数の中継モードは、
前記更新対象の車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第1中継モードと、
前記更新対象の車載ECU及び前記充電制御装置に関連する車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第2中継モードとを含み、
前記制御部は、所定の条件に基づき、前記第1中継モード又は前記第2中継モードを選択し、
前記所定の条件は、前記車両の充電に関する条件を含み、
前記制御部は、
前記車両の充電が実行されている場合、前記第2中継モードを選択する
車載中継装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載中継装置は、充電制御装置を備える車両に搭載され、複数の車載ECUと通信するための通信線が接続される車内通信部を複数備え、前記複数の車載ECUから送信されるメッセージを前記車内通信部間にて中継する車載中継装置であって、
前記メッセージの中継を制御する制御部を備え、
前記制御部は、車外の外部サーバから取得した更新プログラムを更新対象の車載ECUに中継する際、複数の中継モードによって、前記更新プログラム又は前記メッセージを中継し、
前記複数の中継モードは、
前記更新対象の車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第1中継モードと、
前記更新対象の車載ECU及び前記充電制御装置に関連する車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第2中継モードとを含み、
前記制御部は、所定の条件に基づき、前記第1中継モード又は前記第2中継モードを選択する。
【0011】
本態様にあたっては、車載中継装置は、車外の外部サーバから取得した更新プログラムを更新対象の車載ECUに出力(中継)する際、第1中継モード及び第2中継モードを含む複数の中継モードにて、新プログラム又はメッセージを中継する。第1中継モードによる中継は、更新対象の車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止するため、不要な中継を行うことなく、外部サーバから取得した更新プログラム等を更新対象の車載ECUへ効率的に中継(出力)することができる。第2中継モードによる中継は、更新対象の車載ECU及び充電制御装置に関連する車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止するため、例えば、車両が充電制御装置によって充電中であっても、当該充電制御装置に関連する車載ECUへのメッセージの中継は継続させ、充電を継続することができる。車載中継装置は、所定の条件に基づき、第1中継モード又は第2中継モードを選択するため、車両の状態に応じて適切な中継モードによって、外部サーバから取得した更新プログラム等を更新対象の車載ECUへ効率的に中継(出力)することができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載中継装置は、前記所定の条件は、前記車両の充電に関する条件を含み、
前記制御部は、
前記車両の充電が実行されていない場合、第1中継モードを選択し、
前記車両の充電が実行されている場合、第2中継モードを選択する。
【0013】
本態様にあたっては、車載中継装置は、充電制御装置による車両の充電状態、すなわち充電が実行されているか否かに応じて、第1中継モード又は第2中継モードを選択する。そして、車載中継装置は、充電制御装置による車両の充電が実行されていない場合、第1中継モードを選択する。車両の充電が実行されていない場合、充電制御装置に関連する車載ECUのメッセージの中継は不要となるところ、車載中継装置は、充電が実行されていない場合は第1中継モードを選択するため、不要な中継を行うことなく、外部サーバから取得した更新プログラム等を、更新対象の車載ECUへ効率的に中継(出力)することができる。電が実行されている場合は第2中継モードを選択するため、充電を継続しつつ、更新プログラムの中継を行うことができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載中継装置は、前記所定の条件は、前記充電制御装置に関連する車載ECUと、前記車内通信部との接続態様に関する条件を含み、
前記接続態様は、
同一の車内通信部に前記充電制御装置に関連する車載ECUが接続される第1接続態様と、
異なる車内通信部夫々に前記充電制御装置に関連する車載ECUが接続される第2接続態様とを含み、
前記制御部は、
前記接続態様が、第1接続態様の場合、第1中継モードを選択し、
前記接続態様が、第2接続態様の場合、第2中継モードを選択する。
【0015】
本態様にあたっては、充電制御装置に関連する車載ECUの車内通信部との接続態様は、同一の車内通信部に接続される第1接続態様と、異なる車内通信部に接続される第2接続態様とを含む。同一の車内通信部に接続される第1接続態様においては、充電制御装置に関連する単一又は複数の車載ECUは、車載中継装置を介することなく、すなわち車載中継装置による中継がされることなく、これら充電制御装置に関連する車載ECU間の通信を行い、充電制御装置による車両の充電を継続することができる。従って、充電制御装置は、第1接続態様の場合、第1中継モードを選択することにより、不要な中継を行うことなく、外部サーバから取得した更新プログラム等を、更新対象の車載ECUへ効率的に中継(出力)することができる。異なる車内通信部夫々に第2接続態様においては、充電制御装置による車両の充電を継続するためには、充電制御装置に関連する車載ECU間の通信を行う必要がある。これに対し、充電制御装置は、第2接続態様の場合、第2中継モードを選択することにより、充電制御装置に関連する車載ECUのメッセージに中継を継続し、充電制御装置による充電を継続させつつ、外部サーバから取得した更新プログラム等を更新対象の車載ECUへ効率的に中継(出力)することができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載中継装置は、前記複数の車載ECUから送信されるメッセージは、CANのプロトコルを用いたCANメッセージを含み、
前記制御部は、前記複数の車載ECUから送信される前記CANメッセージに含まれる識別子に基づき、前記充電制御装置に関連する車載ECUからのメッセージを特定する。
【0017】
本態様にあたっては、車載中継装置は、CAN(Controller Area Network)メッセージに含まれる識別子(CAN−ID)に基づき、充電制御装置に関連する車載ECUからのメッセージを特定するため、CANプロトコルが用いられる車載LANにおいて、充電制御装置に関連する車載ECUからのメッセージを効率的に特定することができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載中継装置は、前記複数の車載ECUから送信されるメッセージは、イーサネットのプロトコルを用いたIPパケットを含み、
前記制御部は、前記複数の車載ECUから送信される前記IPパケットに含まれる送信元アドレス又は送信先アドレスに基づき、前記充電制御装置に関連する車載ECUからのメッセージを特定する。
【0019】
本態様にあたっては、車載中継装置は、IPパケットに含まれる送信元アドレス又は送信先アドレスに基づき、充電制御装置に関連する車載ECUからのメッセージを特定するため、イーサネットプロトコルが用いられる車載LANにおいて、充電制御装置に関連する車載ECUからのメッセージを効率的に特定することができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、
車外の外部サーバから更新プログラムを取得し、
所定の条件に基づき、更新対象の車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第1中継モード又は、前記更新対象の車載ECU及び充電制御装置に関連する車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第2中継モードを選択し、
前記選択した中継モードによって、前記更新プログラム又はメッセージを中継する
処理を実行させる。
【0021】
本態様にあたっては、コンピュータを車載中継装置として機能させることができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る中継方法は、コンピュータに、
車外の外部サーバから更新プログラムを取得し、
所定の条件に基づき、更新対象の車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第1中継モード又は、前記更新対象の車載ECU及び充電制御装置に関連する車載ECU以外の車載ECU間のメッセージの中継を禁止する第2中継モードを選択し、
前記選択した中継モードによって、前記更新プログラム又はメッセージを中継する
処理を実行させる。
【0023】
本態様にあたっては、車両が充電中であっても、制御プログラムを更新するための適切な処理を行う中継方法を提供することができる。
【0024】
[本発明の実施形態の詳細]
本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。本開示の実施形態に係る車載中継装置2を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る車載中継システムの構成を示す模式図である。
図2は、車載中継装置2等の構成を示すブロック図である。車載中継システムSは、車両Cに搭載された車外通信装置1及び車載中継装置2を含み、車外ネットワークNを介して接続された外部サーバ100から取得したプログラム又はデータを、車両Cに搭載されている車載ECU3(Electronic Control Unit/車載制御装置)に送信(中継)する。
【0026】
外部サーバ100は、例えばインターネット又は公衆回線網等の車外ネットワークNに接続されているサーバ等のコンピュータであり、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)又はハードディスク等による記憶部101を備え、プログラム提供装置に相当する。外部サーバ100には、車載ECU3の製造メーカ等によって作成された当該車載ECU3を制御するためのプログラム又はデータが、記憶部101に保存されている。当該プログラム又はデータは、更新プログラムとして、後述のごとく車両Cに送信され、車両Cに搭載されている車載ECU3のプログラム又はデータを更新するために用いられる。このように構成された外部サーバ100は、OTA(Over The Air)サーバとも称される。車両に搭載される車載ECU3は、外部サーバ100から無線通信により送信された更新プログラムを取得し、当該更新プログラムを実行するプログラムとして適用することにより、自ECUが実行するプログラムを更新(リプログラミング)することができる。
【0027】
以降、プログラムは、車載ECU3が処理を行うための制御構文等を含むプログラムコード及び、当該プログラムコードを実行するにあたり参照するデータが記載される外部ファイルを含むものとして説明する。更新プログラムの送信時において、これらプログラムコード及びデータが記載される外部ファイルは、例えば暗号化されたアーカイブファイルとして、外部サーバ100から送信される。
【0028】
車両Cには、車外通信装置1、車載中継装置2、表示装置5、及び種々の車載機器を制御するための複数の車載ECU3が搭載されている。更に、車両Cには、車外に設けられている充電装置と通信可能により接続され、当該充電装置から出力される電力を当該車両Cに搭載されるバッテリ8に充電するため制御を行う充電制御装置、当該充電制御装置と通信可能に接続される充電ECU31及びインレット81と、受電パッド80とが搭載されている。車外通信装置1と車載中継装置2とは、例えばシリアルケーブル等のハーネスにより通信可能に接続されている。車載中継装置2及び車載ECU3は、CAN(Control Area Network/登録商標)又はEthernet(イーサネット/登録商標)等の通信プロトコルに対応した車内LAN4によって通信可能に接続されている。
【0029】
充電装置9は、車両駆動用のバッテリ8を搭載したプラグインハイブリッド自動車、又は電気自動車等の車両Cへ電力を送電し、バッテリ8の充電を行う装置である。充電装置9は、車両C外、例えば給電ステーションに設置されている。充電装置9は、車両Cへ非接触にて電力を供給(送電)する送電パッド91を備える。車両Cには、送電パッド91から送電された電力を受電する受電パッド80が設けられている。受電パッド80により受電された電力によって、バッテリ8は充電される。すなわち車両Cは充電される。充電装置9は、例えばWi−Fi(登録商標)、又はBluetooth(登録商標)等の通信プロトコルを用いて無線通信を行う無線通信部90を備える。無線通信部90は、接続されたアンテナ90aを介して、車両Cに搭載された後述の充電制御装置7と通信(データの送受信)を行う。
【0030】
充電装置9は、更に、先端部に充電ガンが設けられた給電線(充電ケーブル)92を備え、給電線92を介して電力を車両Cへ直流にて供給し、バッテリ8を充電する機能を有する。給電線92による充電の際に、充電ガンは、車両Cに設けられたインレット81に接続される。インレット81は、車内給電線によりバッテリ8と接続され、電力線搬送通信(PLC/Power Line Communication)を行うための通信線41により後述の充電制御装置7が備えるPLC通信装置71と接続されている。バッテリ8は、給電線92、インレット81、及び車内給電線を介して充電装置9から供給された電力により充電される。充電装置9は、給電線92を用いた電力線搬送通信により充電制御装置7と有線通信が可能である。充電装置9は、非接触の給電(送電パッド91による給電)と、給電線92による給電との両方の給電が可能である構成としてあるが、どちらか一方の給電のみが可能な構成であってもよい。例えば、充電装置9は、給電線92による給電のみを行う場合、無線通信部90を備えていなくてもよい。充電装置9は、図示しない通信装置を備え、外部サーバ100と通信可能であってもよい。充電装置9と外部サーバ100との通信は、例えば、車外ネットワークNを介して行われるものであってもよい。
【0031】
充電制御装置7は、無線通信装置70と、PLC通信装置71とを備える。無線通信装置70は、例えばWi−Fi、又はBluetooth等の通信プロトコルを用いて無線通信を行うための通信装置である。無線通信装置70は、自装置に接続されたアンテナ70aを介して、充電装置9と無線通信を行う。無線通信装置70は、例えば、Wi−FiからCAN又はイーサネットへのプロトコル変換を行う。PLC通信装置71は、インレット81に充電ガンが接続されている場合、インレット81及び給電線92を介して充電装置9と電力線搬送通信を行う。PLC通信装置71は、例えば、電力線搬送通信の通信プロトコルからCAN又はイーサネットへのプロトコル変換を行う。充電制御装置7は、無線通信装置70による無線通信により充電装置9と通信を行う。また、PLC通信装置71による電力線搬送通信により充電装置9と通信を行う。本実施形態では、無線通信装置70及びPLC通信装置71は、充電制御装置7の一構成部位として、充電制御装置7にそれぞれ内蔵してあるが、充電制御装置7に内蔵されていなくてもよい。例えば、無線通信装置70及びPLC通信装置71のそれぞれは、充電制御装置7と別装置とし、入出力I/F等によって充電制御装置7と通信可能に接続してあってもよい。
【0032】
充電制御装置7は、複数の車載ECU3における一部の車載ECU3である充電ECU31(充電制御装置に関連する車載ECU3)と通信可能に接続してある。充電ECU31は、充電に関する車載ECU3であり、例えばバッテリ8及び受電パッド80と接続されている。充電ECU31は、例えば、バッテリ8の充電を開始する際、バッテリ8の情報を充電制御装置7へ送信し、バッテリ8の充電中に、バッテリ8の充電率等の充電情報を監視(管理)し、充電情報を充電制御装置7へ送信する。また、受電パッド80からバッテリ8への給電(充電)を監視(管理)する。充電制御装置7は、充電装置9と無線通信又は電力線搬送通信を行い、充電ECU31と共同してバッテリ8の充電(車両Cの充電)を制御する。充電制御装置7は、例えば、給電線92による給電(充電)の場合、給電線92を介して充電装置9と電力線搬送通信を行い、非接触の給電(充電)の場合、無線通信装置70を用いて充電装置9と無線通信を行う。充電制御装置7は、給電線92による給電の場合であっても、無線通信装置70を用いて充電装置9と無線通信を行ってもよい。複数の充電ECU31が車両Cに搭載されていてもよい。例えば、バッテリ8を管理する充電ECU31と、受電パッド80を管理する充電ECU31とが、それぞれ充電制御装置7と接続されていてもよい。
【0033】
車両Cには、単一の充電ECU31又は、複数の充電ECU31が搭載されるものであってもよい。複数の充電ECU31が車両Cに搭載される場合、これら複数の充電ECU31夫々は、例えば、充電制御装置7、バッテリ8、補機用蓄電装置(図示せず)又はオルタネータ(図示せず)等の電力関連の車載装置又は車載機器に通信可能に接続され、充電に関する一連の処理を協働して行うものであってもよい。これら複数の充電ECU31は、充電制御装置に関連する車載ECUに相当する。複数の充電ECU31の内、いずれかの充電ECU31は、充電制御装置7に内蔵されており、充電制御装置7が車載ネットワークに接続されているものあってもよい。
【0034】
本実施形態においては、これら複数の充電ECU31は、異なる通信線41(バス)に接続されており、これら複数の充電ECU31間の通信は、車載中継装置を介して行わるものであり、すなわち、複数の充電ECU31間にて送受信されるメッセージは、車載中継装置によって中継される。
【0035】
充電制御装置7は、車載中継装置2と、いずれかの充電ECU31を介して通信可能に接続されている。本実施形態においては、充電制御装置7は、充電ECU31及び車内LAN4を介して車載中継装置2と通信を行う。車載中継装置2と充電制御装置7とが、例えば車内LAN4により接続され、通信を行ってもよい。充電制御装置7は、バッテリ8の充電完了後に、充電完了通知を車載中継装置2へ送信する。充電制御装置7は、充電装置9との通信を行うことにより又は、受電パッド80、インレット81からの電力の供給(給電)状態に応じて、充電状態に関する情報を取得し、車載中継装置2に出力する。
【0036】
車載中継装置2は、充電制御装置7と通信することにより、自車である車両Cの充電状態に関する情報を取得することができる。車両Cの充電状態に関する情報とは、例えば、充電中であるか否か、充電の進捗状況、充電対象となるバッテリ8の残容量(SOC:State of Charge)である。
【0037】
車載中継装置2は、制御部20、記憶部21及び車内通信部23を含む。車載中継装置2は、車外通信装置1が無線通信によって外部サーバ100から受信した更新プログラムを、車外通信装置1から取得し、車内LAN4を介して当該更新プログラムを所定の車載ECU3(更新対象の車載ECU3)に送信するように構成されている。
【0038】
車載中継装置2は、例えば、ボディ系の車載ECU3、安全系の車載ECU3及び、制御系の車載ECU3等の複数の系統のバス(セグメント)を統括し、これらバス(セグメント)間での車載ECU3同士の通信を中継するゲートウェイ(中継器)である。すなわち、車載中継装置2は、CANプロトコルの中継においてはCANゲートウェイとして機能し、TCP/IPプロトコルの中継においてはレイヤー2スイッチ又はレイヤー3スイッチとして機能する。又は、車載中継装置2は、車両C全体をコントロールするボディECUの一機能部として構成されるものであってもよい。
【0039】
車載中継装置2は、外部サーバ100から受信した更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信する等の更新処理を実施していない状態においては、自装置に接続される車載ECU3同士の通信の中継を行う。外部サーバ100から受信した更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信する等の更新処理を実施していない状態において行われる中継を、通常中継モードと称する。車載中継装置2は、外部サーバ100から受信した更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信する等の更新処理を実施する場合は、上述の通常中継モードとは異なる中継モード(第1中継モード、第2中継モード)にて、中継処理を行う。これについての詳細は、後述する。
【0040】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部21に予め記憶された制御プログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0041】
記憶部21は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記憶してある。記憶部21に記憶された制御プログラムは、車載中継装置2が読み取り可能な記録媒体211から読み出された制御プログラムを記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムをダウンロードし、記憶部21に記憶させたものであってもよい。更に、記憶部21には、車両Cに搭載される全ての車載ECU3の構成情報が記憶される。記憶部21には、外部サーバ100から取得した更新プログラム、及び車載ECU3に更新プログラムを送信する際の進捗状況に関する情報が、記憶される。
【0042】
記憶部21には、車載ECU3間の通信、又は車載ECU3と外部サーバ100との間の通信のための中継処理を行うにあたり用いられる中継経路情報(ルーティングテーブル)が、記憶される。当該中継経路情報は、通信プロトコルに基づき書式が決定される。通信プロトコルがCANの場合、CAN用中継経路情報は、CANメッセージに含まれるメッセージ識別子(CAN−ID)及び、当該CAN−IDに関連付けられた中継先(CAN通信部232のI/Oポート番号)を含む。通信プロトコルがTCP/IPの場合、TCP/IP用中継経路情報は、IPパケットに含まれる送信先アドレス(MACアドレス又はIPアドレス)及び、当該送信先アドレスに関連付けられた中継先(イーサネット通信部231の物理ポート番号)を含む。
【0043】
入出力I/F22は、車外通信装置1の入出力I/Fと同様に、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。入出力I/F22を介して、車載中継装置2は、車外通信装置1、表示装置5(HMI装置)及び、車両Cの起動及び停止を行うIGスイッチ6と通信可能に接続される。
【0044】
車内通信部23は、例えばCAN(Control Area Network)、CAN−FD(CAN with Flexible Data Rate)又はイーサネット(Ethernet/登録商標)の通信プロトコルを用いた入出力インターフェイス(CAN通信部232、イーサネット通信部231)であり、車載中継装置2と車載ECU3とが通信するための通信部として機能する。車内通信部23は、CAN通信部232及びイーサネット通信部231を含む。
【0045】
CAN通信部232は、CAN又は、CAN−FDの通信プロトコルに対応したものであり、CANバス412上にて伝送されるCANメッセージに対応する。CAN通信部232は、ハイ側及びロー側の2本の配線により構成されるCANバス412上の差動電圧の電位差による波形を受信し、受信した波形を1と0のビット列で表される信号に復号するCANトランシーバ又はCAN−FDトランシーバである。又は、CAN通信部232は、CANトランシーバ及びCANコントローラ、又は、CAN−FDトランシーバ及びCAN−FDコントローラを含むものであってもよい。
【0046】
イーサネット通信部231は、100BASE−T1又は1000BASE−T1等のイーサネットケーブル411にて伝送されるTCP/IPのパケットに対応するイーサネットPHY部である。
【0047】
車内通信部23(イーサネット通信部231、CAN通信部232)は、複数個設けられており、車内通信部23夫々に、車載ネットワーク4を構成する通信線41夫々(イーサネットケーブル411、CANバス412)、すなわちバス夫々が接続されている。このように車内通信部23を複数個設けることにより、車載ネットワーク4を複数個のバス(セグメント)に分け、各セグメントに車載ECU3を、当該車載ECU3の機能に応じて接続するものであってもよい。車載中継装置2の制御部20は、車内通信部23を介して車載ネットワーク4に接続されている車載ECU3又は他の中継装置等の車載機器と相互に通信する。
【0048】
車載ECU3は、車載中継装置2と同様に制御部(図示せず)、記憶部(図示せず)及び車内通信部(図示せず)を含む。記憶部は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、車載ECU3のプログラム又はデータが記憶されている。このプログラム又はデータが、プログラム提供装置から送信され、車載中継装置2によって中継される更新プログラムによって、更新される対象である。車載ECU3の車内通信部は、車載中継装置2と同様にイーサネット通信部又はCAN通信部を含み、車載ECU3は、車内通信部を介して車載中継装置2と通信する。異なる通信線41(バス)に接続される車載ECU3夫々は、車載中継装置2を介して通信する。すなわち、異なる通信線41(バス)に接続される車載ECU3間にて送受信されるメッセージは、車載中継装置2によって中継される。上述のとおり、車載ECU3は、充電ECU31を含む。
【0049】
表示装置5は、例えばカーナビゲーションのディスプレイ等のHMI(Human Machine Interface)装置である。表示装置5は、車載中継装置2の入出力I/F22とシリアルケーブル等のハーネスにより通信可能に接続されている。表示装置5には、車載中継装置2の制御部20から入出力I/F22を介して出力されたデータ又は情報が表示される。
【0050】
図3は、車載ECU3の構成情報の一態様を例示する説明図である。上述のとおり、車載ECU3の構成情報は、車載中継装置2の記憶部21に記憶されている。又は、車載ECU3の構成情報は、車両Cに搭載されるいずれかの車載ECU3の記憶部又は、外部サーバ100の記憶部101等、車載中継装置2(制御部20)がアクセス可能な所定の記憶領域に記憶されるものであってよい。
【0051】
車載ECU3の構成情報(車両C構成情報マスターテーブル)は、管理項目(フィールド)として例えば、車載ECU3の製造番号(シリアル番号)、ECU部番(型番)、Software部番、バージョン、CAN−ID(CANメッセージ識別子)、MAC(Media Access Control)アドレス、IPアドレス、機能グループ及び接続ポート番号を含み、個々の車載ECU3において重複しないように設定された連番等によるECU−IDに関連付けられて管理される。
【0052】
製造番号(シリアル番号)は、車載ECU3の製造時に付与される番号であり、生産拠点等を示すロット番号及び製造時の連番等により構成され、当該ECUを一意に特定することができるユニークな番号である。ECU部番(型番)は、車載ECU3の種類を特定する番号であり、例えば部品番号である。Software部番は、更新プログラムのソフトウェアの種類を特定するための番号である。バージョンは、現状において、車載ECU3が実行(適用)しているプログラムのバージョン番号であり、車載ECU3の記憶部21における動作面に記憶されているプログラムのバージョン番号である。
【0053】
CAN−IDは、車載ECU3の車内通信部23がCANプロトコルに対応した通信ポート(CAN通信部232)である場合、当該車載ECU3が送信するCANメッセージにおいて用いられるCANメッセージ識別子である。
【0054】
MACアドレスは、車載ECU3の車内通信部23がイーサネットに対応した通信ポート(イーサネット通信部231)である場合、データリング層に対応するアドレスである。MACアドレスは、当該車内通信部23の製造時付与される番号であり、製造者を示すベンダーコード及び製造時の連番等により構成され、当該ECUを一意に特定することができるユニークな番号である。IPアドレスは、車内通信部23がイーサネットに対応した通信ポートである場合、TCP/IPを用いた通信を行う際のネットワーク層に対応するアドレスである。
【0055】
機能グループは、車載ECU3の機能分類に関する情報であり、当該機能分類は、例えば、ボディ系機能、ADAS系機能及び充電系機能を含む。
【0056】
接続ポート番号は、車載ECU3が接続される通信線41(バス)に対応する車載中継装置2の車内通信部23のポート番号である。すなわち、車載中継装置2及び車載ECU3は、接続ポート番号のフィールドに格納されている接続ポート番号に接続されている通信線41(バス)によって、直接、接続されている。車載ECU3がCANプロトコルにて通信する場合は、当該車載ECU3の接続ポート番号は、CAN通信部232のI/Oポート番号を示す。車載ECU3がイーサネットプロトコルにて通信する場合は、当該車載ECU3の接続ポート番号は、イーサネット通信部231の物理ポート番号を示す。
【0057】
車載中継装置2の制御部20は、記憶部21に記憶されている車載ECU3の構成情報(車両C構成情報マスターテーブル)を参照することにより、車両Cに搭載される複数の車載ECU3の内、いずれの車載ECU3が充電ECU31であるかを特定することができる。当該特定を行うにあたり、車載中継装置2は、例えば、機能グループのフィールドに格納されている内容が、充電系の機能を示す(充電)の車載ECU3を、充電ECU31であると特定するものであってもよい。又は、車載中継装置2は、例えば、CAN−IDのフィールドに格納されている値が、充電系のメッセージに関する番号である車載ECU3を、充電ECU31であると特定するものであってもよい。又は、車載中継装置2は、ECU部番又はSoftware部番に基づき、当該車載ECU3が、充電ECU31であるか否かを判定するものであってもよい。
【0058】
車両Cに搭載される車載ECU3の構成情報は、例えば、当該車両Cの製造時おいて、車載中継装置2の記憶部21に記憶され、保存されている。更に、車載中継装置2の制御部20は、例えば、IGスイッチ6がオンにされた場合、オフにされた場合又は、所定のタイミングにて、定常的又は定期的に車両Cに搭載されている全ての車載ECU3又は特定の車載ECU3に対し、自ECUの構成情報及び当該構成情報の更新履歴を送信することを要求するものであってもよい。そして車載中継装置2は、車載ECU3夫々から送信された構成情報又は更新履歴を取得及び集約し、集約した構成情報等を記憶部21に記憶して、車両C構成情報マスターテーブルを更新するものであってもよい。このように、車両Cの製造後、当該車両Cに追加の車載ECU3又は車載機器等の車載装置が搭載された場合であっても、車載中継装置2は、定常的又は定期的に車載ECU3の構成情報を集約することにより、自車における最新の構成情報を取得し、把握することができる。
【0059】
車載中継装置2の制御部20は、記憶部21に記憶されている制御プログラムを実行することにより、複数の中継モードによって、車外の外部サーバ100から取得した更新プログラム及び、車載ECU3間にて送受信されるメッセージを中継するように構成されている。複数の中継モードは、外部サーバ100から受信した更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信する等の更新処理を実施していない状態において行われる通常中継モード、及び更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信する等の更新処理を実施する際に行われる第1中継モード及び第2中継モードを含む。
【0060】
通常中継モードは、上述のとおり更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信する等の更新処理を実施していない状態において、車載中継装置2の制御部20が行う中継モードであり、制御部20は、例えば、記憶部21に記憶されている中継経路情報(ルーティングテーブル)に基づき、車載ECU3から送信されるメッセージ(CANメッセージ、IPパケット)を中継する。
【0061】
車載中継装置2の制御部20は、所定の条件に応じて、第1中継モード又は第2中継モードの選択を行う。所定の条件とは、例えば、車両Cの充電状態に関する情報に基づく条件であり、当該車両Cが充電装置から給電され、車両Cに搭載されているバッテリ8が充電中であるか否かの条件を含む。車載中継装置2の制御部20は、充電制御装置7と通信することにより、当該車両Cの充電状態に関する情報を取得する。車両Cに搭載されているバッテリ8が充電中でない場合、車載中継装置2の制御部20は、第1中継モードを選択する。車両Cに搭載されているバッテリ8が充電中である場合、車載中継装置2の制御部20は、第2中継モードを選択する。
【0062】
第1中継モードは、更新プログラムを、更新対象の車載ECU3が接続される車内通信部23から出力し、当該更新対象の車載ECU3以外の車載ECU3間のメッセージの中継を禁止する中継モードである。第1中継モードにおいて、車載中継装置2の制御部20は、更新対象の車載ECU3が接続される車内通信部23以外の車内通信部23において、これら車内通信部23に対する中継を行わず、車外通信装置1から取得した更新プログラムを、更新対象の車載ECU3が接続される車内通信部23から出力する。
【0063】
車載中継装置2の制御部20は、外部サーバ100から取得した更新プログラム又は当該更新プログラムに付随する情報に基づき、例えば車両C構成情報マスターテーブルを参照して、更新対象の車載ECU3及び当該車載ECU3が接続されている車内通信部23(接続ポート番号)を特定する。又は、車載中継装置2の制御部20は、車両C構成情報マスターテーブルを参照して、更新対象の車載ECU3が送信するメッセージ識別子を特定し、特定した更新対象の車載ECU3のメッセージ識別子以外のメッセージ識別子が含まれるメッセージの中継を、禁止するものであってもよい。
【0064】
車載中継装置2の制御部20は、特定した車内通信部23(接続ポート番号)から更新プログラムを出力することにより、外部サーバ100から取得した更新プログラムを更新対象の車載ECU3に中継する。車載中継装置2の制御部20は、特定した車内通信部23(接続ポート番号)から更新プログラムを出力する際、又は当該出力の前後にて行う前処理及び後処理を含む更新処理を実施するにあたり、当該特定した車内通信部23以外の車内通信部23への中継を禁止する。一連の更新処理が、複数の車載ECU3に関連する場合、すなわち更新対象の車載ECU3が複数個ある場合、車載中継装置2の制御部20は、これら複数の更新対象の車載ECU3夫々が接続される複数の車内通信部23以外の車内通信部23への中継を禁止するものであってもよい。
【0065】
第1中継モードによる中継処理を行うことにより、更新対象の車載ECU3以外の車載ECU3間のメッセージの中継を禁止するため、不要な中継を行うことなく、外部サーバ100から取得した更新プログラム等を更新対象の車載ECU3へ効率的に中継(出力)することができる。
【0066】
第2中継モードは、更新プログラムを更新対象の車載ECU3が接続される車内通信部23から出力し、当該更新対象の車載ECU3及び充電ECU31(充電制御装置7に関連する車載ECU3)以外の車載ECU3間のメッセージの中継を禁止する中継モードである。第2中継モードにおいて、車載中継装置2の制御部20は、第1中継モードと同様に外部サーバ100から取得した更新プログラムを更新対象の車載ECU3に中継する共に、充電ECU31間にて送受信されるメッセージの中継のみを行う。
【0067】
車載中継装置2の制御部20は、例えば、車両C構成情報マスターテーブルを参照して充電ECU31が用いるメッセージ識別子(CAN−ID)を特定し、当該メッセージ識別子が、ヘッダに含まれるCANメッセージを中継する。又は、車載中継装置2の制御部20は、例えば、車両C構成情報マスターテーブルを参照して充電ECU31のIPアドレスを特定し、当該IPアドレスが送信元アドレス又は送信先アドレスとしてヘッダに含まれるIPパケットを中継する。そして、車載中継装置2の制御部20は、更新プログラム及び充電ECU31によるメッセージ以外のメッセージの中継を禁止する。
【0068】
第2中継モードによる中継処理を行うことにより、更新対象の車載ECU3及び充電ECU31(充電制御装置7に関連する車載ECU3)以外の車載ECU3間のメッセージの中継を禁止するため、車両C(バッテリ8)が充電中であっても、充電ECU31へのメッセージの中継は継続させ、充電を継続することができる。
【0069】
図4は、車載中継装置2の制御部20の処理を例示するフローチャートである。車載中継装置2の制御部20は、例えば車両Cが起動状態(IGスイッチ6がオン)又は停止状態(IGスイッチ6がオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0070】
車載中継装置2の制御部20は、更新プログラムに関する情報があるか否かを判定する(S101)。制御部20は、車外通信装置1を介して外部サーバ100と通信し、更新プログラムに関する情報の有無に関する問い合わせを行い、キャンペーン情報等、当該更新プログラムに関する情報の有無について判定する。当該更新プログラムに関する情報があるか否かの判定は、車載中継装置2から外部サーバ100への問合せによるプル型通信のみならず、外部サーバ100から車載中継装置2へ送信されるメッセージ等のプッシュ型通信に基づき行われるものであってもよい。
【0071】
更新プログラムに関する情報がない場合(S101:NO)、車載中継装置2の制御部20は、再度S101の処理を実行すべく、ループ処理を行う。当該ループ処理を行うことにより、車載中継装置2の制御部20は、外部サーバ100に対する更新プログラムに関する情報の有無に関する問い合わせを周期的に行うものとなる。このように更新プログラムに関する情報がない場合、制御部20は、上述した通常中継モードにて、中継処理を行う。
【0072】
更新プログラムに関する情報がある場合(S101:YES)、車載中継装置2の制御部20は、更新プログラムを取得する(S102)。制御部20は、車外通信装置1を介して、外部サーバ100から更新プログラムを取得する。
【0073】
車載中継装置2の制御部20は、車両Cが充電中であるか否かを判定する(S103)。制御部20は、充電制御装置7と通信することにより、車両Cの充電状態に関する情報を取得し、車両Cが充電中であるか否かを判定する。
【0074】
車両Cが充電中でない場合(S103:NO)、車載中継装置2の制御部20は、第1中継モードを選択する(S1031)。車載中継装置2の制御部20は、第1中継モードにて、更新プログラムを更新対象の車載ECU3に出力(中継)する。制御部20は、第1中継モードを選択し、更新プログラムを更新対象の車載ECU3が接続される車内通信部23から出力し、更新対象の車載ECU3以外の車載ECU3間のメッセージの中継を禁止する。
【0075】
車両Cが充電中である場合(S103:YES)、車載中継装置2の制御部20は、第2中継モードを選択する(S104)。車載中継装置2の制御部20は、第2中継モードにて、更新プログラムを更新対象の車載ECU3に出力(中継)する(S105)。制御部20は、第2中継モードを選択し、更新プログラムを更新対象の車載ECU3が接続される車内通信部23から出力し、更新対象の車載ECU3及び充電ECU31(充電制御装置7に関連する車載ECU3)以外の車載ECU3間のメッセージの中継を禁止する。
【0076】
車載中継装置2の制御部20は、更新プログラムの出力結果に関する情報を、外部サーバ100に送信する(S106)。制御部20は、更新プログラムの出力結果に関する情報として、例えば、当該更新プログラムを更新対象の車載ECU3に送信した日時、送信結果として当該更新対象の車載ECU3から受信した応答結果、又は更新処理が正常に実施された旨を示す情報を、車外通信装置1を介して外部サーバ100に送信(出力)する。制御部20は、当該更新プログラムの出力結果に関する情報を表示装置5に出力するものであってもよい。更新プログラムの出力結果に関する情報を外部サーバ100又は表示装置5に出力することにより、当該情報を外部サーバ100の管理者又は車両Cの操作者に報知することができる。
【0077】
本実施形態によれば、車載中継装置2は、充電制御装置7から車両Cの充電状態に関する情報を取得し、当該車両Cの充電状態に関する情報、すなわち充電が実行されているか否か(充電中である否か)に応じて、第1中継モード又は第2中継モードを選択する。車両Cの充電が実行されていない場合(充電中でない場合)、充電ECU31のメッセージの中継は不要なため、車載中継装置2は、第1中継モードを選択することにより不要な中継を行うことなく、外部サーバ100から取得した更新プログラム等を、更新対象の車載ECU3へ効率的に中継(出力)することができる。車両Cの充電が実行されている場合(充電中の場合)、車載中継装置2は、更新プログラムの中継と共に、充電ECU31にて送受信されるメッセージのみを中継するため、充電を継続することができる。
【0078】
(実施形態2)
図5は、実施形態2に係る車載中継装置2の制御部20の処理を例示するフローチャートである。車載中継装置2の制御部20は、例えば車両Cが起動状態(IGスイッチ6がオン)又は停止状態(IGスイッチ6がオフ)において、定常的に以下の処理を行う。車載中継装置2の制御部20は、実施形態1のS101、S102及びS103の処理と同様に、S201、S202及びS203の処理を行う。
【0079】
車載中継装置2の制御部20は、更新プログラムの出力を優先するか否かの判定を行う(S204)。制御部20は、例えば、バッテリ8の残容量(SOC)等、車両Cの状態に基づいて、更新プログラムの出力を充電よりも優先するか否かの判定を行う。制御部20は、例えば、残容量(SOC)が70%等の所定の閾値よりも高い場合、更新プログラムの出力を充電よりも優先する判定(S204:YES)を行ってもよい。すなわち、残容量(SOC)が70%等の所定の閾値以下の場合、更新プログラムの出力等の更新処理を行うにあたり、十分な電池容量が無いと判断し、更新プログラムの出力を充電よりも優先しない判定(S204:NO)、すなわち更新プログラムの出力よりも充電を優先する判定をしてもよい。
【0080】
更新プログラムの出力を優先しない場合(S204:NO)、車載中継装置2の制御部20は、車両Cの充電が完了したか否かを判定する(S2041)。制御部20は、充電制御装置7と通信することにより、車両Cの充電が完了したか否かを含む情報を取得し、当該情報に基づいて、車両Cの充電が完了したか否かを判定する。
【0081】
車両Cの充電が完了していない場合(S2041:NO)、車載中継装置2の制御部20は、再度S2041の処理を行うべく、ループ処理を行う。当該ループ処理を行うことにより、制御部20は、車両Cの充電が完了するまで待機処理を行う。
【0082】
車両Cの充電が完了した場合(S2041:YES)、車載中継装置2の制御部20は、第1中継モードを選択する(S2031)。制御部20は、実施形態1のS1031及びS1032の処理と同様に、S2031及びS2032の処理を行う。
【0083】
更新プログラムの出力を優先する場合(S204:YES)、車載中継装置2の制御部20は、第2中継モードを選択する(S205)。車載中継装置2の制御部20は、実施形態1のS104、S105及びS106の処理と同様に、S205、S206及びS207の処理を行う。
【0084】
本実施形態によれば、車載中継装置2は、例えば、バッテリ8の残容量(SOC)等に応じて、更新プログラムの出力を充電よりも優先するか否かの判定を行い、第1中継モード又は第2中継モードによって、更新プログラムを更新対象の車載ECU3に中継する。従って、バッテリ8の残容量(SOC)等の車両Cの状態に応じた好適な中継モードによって、更新プログラムを更新対象の車載ECU3に中継することができ、更新プログラムの中継処理を行っている間にバッテリ8から出力される電力が不足し、当該更新プログラムの中継処理が異常終了されることを防止することができる。
【0085】
(実施形態3)
図6は、実施形態3に係る車載中継装置2を含む車載中継システムSの構成を例示する模式図である。
図6においては、複数の充電ECU31夫々は、同じ通信線41(バス)に接続されている。
【0086】
車両Cに搭載される全ての充電ECU31は、同じ通信線41(バス)に接続されている。従って、これら複数の充電ECU31は、車載中継装置2における同一の車内通信部23に接続されている。車両Cに搭載される全ての充電ECU31が、同一の通信線41(バス)に接続されることにより、これら充電ECU31間の通信は、車載中継装置2による中継を不要し、当該同一の通信線41上にて、これら充電ECU31によるメッセージの送受信が行われる。同一の通信線41上に、車両Cに搭載される全ての充電ECU31が接続される態様は、当該充電ECU31が複数あり、複数の充電ECU31の全てが同一の通信線41に接続される態様と、車両Cに搭載される充電ECU31が単一である態様とを含む。
【0087】
実施形態3においては、
図6に示される充電ECU31の接続態様に限定されず、
図1に示される充電ECU31の接続態様であってもよい。すなわち、実施形態3における車載中継装置2は、
図1のような複数の充電ECU31が同一の通信線41(バス)に接続される態様と、
図6のように車両Cに搭載される全ての充電ECU31が同一の通信線41に接続される態様とによる両接続態様に対応するものである。
【0088】
図7は、実施形態3に係る車載中継装置2の制御部20の処理を例示するフローチャートである。車載中継装置2の制御部20は、例えば車両Cが起動状態(IGスイッチ6がオン)又は停止状態(IGスイッチ6がオフ)において、定常的に以下の処理を行う。車載中継装置2の制御部20は、実施形態1のS101、S102及びS103の処理と同様に、S301、S302及びS303の処理を行う。
【0089】
車両Cが充電中でない場合(S303:NO)、車載中継装置2の制御部20は、実施形態1のS1031及び1032の処理と同様に、3031及び3032の処理を行う。
【0090】
車両Cが充電中である場合(S303:YES)、車載中継装置2の制御部20は、異なる車内通信部23夫々に充電制御装置7に関連する車載ECU3が接続されているか否かの判定を行う(S304)。制御部20は、例えば、記憶部21に記憶されている車両C構成情報マスターテーブル又は中継経路情報(ルーティングテーブル)を参照し、機能グループが充電となっている充電ECU31夫々の接続ポートが番号を取得することにより、複数の充電ECU31夫々が異なる車内通信部23夫々に接続されているか否かを判定する。
【0091】
異なる車内通信部23夫々に充電制御装置7に関連する車載ECU3が接続されている場合(S304:YES)、車載中継装置2の制御部20は、第2中継モードを選択する(S305)。車載中継装置2の制御部20は、実施形態1のS104、S105及びS106の処理と同様に、S305、S306及びS307の処理を行う。
【0092】
異なる車内通信部23夫々に充電制御装置7に関連する車載ECU3が接続されていない場合(S304:NO)、車載中継装置2の制御部20は、第1中継モードを選択する(S3031)。異なる車内通信部23夫々に充電ECU31夫々が接続されていない場合、すなわち車両Cに搭載される全ての充電ECU31が、車載中継装置2における同一の車内通信部23に接続され、車載中継装置2による中継を要することなく、これら全ての充電ECU31が同一の通信線41(バス)によってメッセージの送受信が可能な場合は、制御部20は、第1中継モードを選択する。
【0093】
車両Cに搭載される全ての充電ECU31が同一の通信線41(バス)に接続されているため、充電ECU31によって送受信されるメッセージに対する、車載中継装置2による中継は不要である。従って、更新プログラムのみを中継する第1中継モードを行うことにより、不要な中継を抑制しつつ、充電を継続することができる。上述のとおり、車載中継装置2の制御部20は、実施形態1のS1031及び1032の処理と同様に、3031及び3032の処理を行う。
【0094】
本実施形態によれば、車載中継装置2は、充電ECU31の接続態様に応じて、第1中継モード又は第2中継モードを選択する。このような充電ECU31の接続態様は、車種に応じて決定されるものとなるが、充電ECU31の接続態様に応じて中継モードを選択することにより、車載中継装置2を異なる車種に適用する共通部品として用いることができる。すなわち、車両Cに搭載される全ての充電ECU31が同一の通信線41に接続される車種と、充電ECU31夫々が異なる通信線41に接続される車種とに対し、本実施形態における車載中継装置2を搭載することにより、当該車載中継装置2は、いずれの車種における充電ECU31の接続態様に対応することができる。
【0095】
工場での製造時においては、車両Cに搭載される全ての充電ECU31が同一の通信線41に接続される車種であっても、出荷後に例えばオプション品等の車載装置が追加実装されることにより、充電ECU31夫々が異なる通信線41に接続される場合がある。このように、同一の車種において、工場での製造時の接続態様と、出荷後の接続態様とが異なるものとなった場合であっても、本実施形態における車載中継装置2は、現時点の接続態様に応じて、第1中継モード又は第2中継モードを選択し、更新プログラムの中継に併せて、充電を継続することができる。
【0096】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。