(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの波長変換材料として、微小な粒径の半導体ナノ粒子(量子ドット:QD)が用いられている。このような半導体ナノ粒子は、量子閉じ込め効果を発現しうる微小な粒子であり、ナノ粒子のサイズによって、バンドギャップの幅が変わる。そして、光励起、電荷注入等の手段によって半導体粒子内に形成された励起子は、再結合によりバンドギャップに応じたエネルギーの光子を放出するので、半導体ナノ粒子の結晶サイズを調整することにより、発光波長を制御することが可能となり、所望の波長の発光を得ることができる。
【0003】
半導体ナノ粒子を用いるQDデバイスとしては、半導体ナノ粒子の集合体をフィルム化して得られるQDフィルムで、青色光を白色化し、得られる白色光をカラーフィルターを通して、赤、緑、青に変換する方式(QDフィルム方式)と、青色光を半導体ナノ粒子の集合体が用いられているQDカラーフィルターで、直接、赤、緑に変換する方式(QDカラーフィルター方式)がある。
【0004】
QDカラーフィルター方式のQDデバイスの装置構成の一例を、
図1を用いて説明する。
図1に示すように、光源である青色LED1からの青色光を白色光に変換せずに、QDパターン(7、8)を用いて青色光から赤色光又は青色光から緑色光に直接変換する。QDパターン(7、8)は、樹脂中に分散された半導体ナノ粒子の集合体をパターニングすることによって形成され、厚みはディスプレイの構造上の制限から5〜10μm程度となる。青色については、光源である青色LED1からの青色光を、拡散材を含む拡散層9を透過させたものが利用される。なお、符号3は液晶であり、
図1では、偏光板は省略されている。
【0005】
また、QDフィルム方式のQDデバイスの装置構成の一例を、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、光源には青色LED101が用いられており、先ずは、この青色光を白色光に変換することが行われている。青色光から白色光への変換には、半導体ナノ粒子の集合体を樹脂中に分散させて厚みが100μm程度のフィルム状に形成してなるQDフィルム102が好適に用いられている。QDフィルム102のような波長変換層によって得られた白色光は、更に、カラーフィルター(R)104、カラーフィルター(G)105、及びカラーフィルター(B)106によって、それぞれ、赤色光、緑色光、及び青色光に変換される。なお、符号103は液晶であり、
図2では、偏光板は省略されている。
【0006】
これらのうち、QDカラーフィルター方式は、青色光を直接各色に変換するので、QDデバイス全体の波長変換効率が高くなる。そのため、近年は、QDカラーフィルター方式が着目されている。
【0007】
このような背景のもと、半導体ナノ粒子には、本来的に、QDデバイスの波長変換効率を高くするために量子効率が高いこと、及び混色を防ぐために半値幅が狭いことが求められている。
【0008】
半導体ナノ粒子としては、Cdカルコゲナイド半導体ナノ粒子やInPをベースとした半導体ナノ粒子が知られている(例えば、特許文献1〜3)。そして、従来は、Cd系の半導体ナノ粒子の研究が多く行われていた。Cd系の半導体ナノ粒子は、量子効率が高い上に、粒径変化による発光波長の変化が比較的緩やかなので、発光波長の調整がし易いためである。
【0009】
ところが、近年、環境・人体への悪影響への配慮から、非Cd系の半導体ナノ粒子の開発が望まれるようになってきている。非Cd系の半導体ナノ粒子としては、InPをベースとする半導体ナノ粒子が挙げられる。しかし、InPをベースとするInP系の半導体ナノ粒子は、Cd系の半導体ナノ粒子に比べ、量子効率が低く、且つ、粒径変化による発光波長の変化が大きいために、発光波長の調整がし難いという問題がある。
【0010】
そこで、InP系の半導体ナノ粒子としては、以下のような試みがなされている。例えば、特許文献4にはInPからなるコアと、ZnSe及びZnSからなるシェルと、で形成されるコアシェル構造(以下、InP/ZnSe・ZnSコア/シェル構造とも記載)の半導体ナノ粒子が開示されており、吸光度を上げる試みがなされている。特許文献5にはInP/ZnSe・ZnSコア/シェル構造にハロゲンを含有させた半導体ナノ粒子が開示されており、量子効率を向上させる試みがなされている。特許文献6にはInPからなるコアと、ZnSe及びZnSからなるシェルと、で形成されるコアシェル構造(以下、InP/ZnSe・ZnSコア/シェル構造とも記載)の半導体ナノ粒子が開示されており、量子効率を向上させ、かつ半値幅を狭くするための試みがなされている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の半導体ナノ粒子集合体は、In及びPを含有するコアと1層以上のシェルとを有するコア/シェル型半導体ナノ粒子の集合である半導体ナノ粒子集合体であって、
前記半導体ナノ粒子集合体を分散媒中に分散させた状態で450nmの励起光で励起させたときの発光スペクトル(λ
1)のピーク波長(λ
1MAX)が605〜655nmの間にあり、前記発光スペクトル(λ
1)の半値幅(FWHM
1)が43nm以下であり、
前記半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子を、445nmの励起光で励起させて得られる1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)が、以下の要件(1)〜(3):
(1)発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値が28nm以下であること、
(2)発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)が10nm以上30nm以下であること、
(3)発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)が12nm以下であること、
の全てを満たすことを特徴とする半導体ナノ粒子集合体である。
なお、以下において数値範囲を示す符号「〜」は、特に断らない限り、符号「〜」の前後に記載された数値を含む範囲を示す。つまり、〇〜△とは、〇以上且つ△以下を表す。
【0030】
(半導体ナノ粒子)
本発明の半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子は、InおよびPを含有するコアと、1層以上のシェルとを有するコア/シェル型半導体ナノ粒子である。半導体ナノ粒子において、シェルは少なくとも1層あればよく、半導体ナノ粒子としては、例えば、コアと1層のシェルからなるコア/シェル型の半導体ナノ粒子、コアと2層のシェルからなるコア/シェル型の半導体ナノ粒子、コアと3層以上のシェルからなるコア/シェル型の半導体ナノ粒子が挙げられる。特にシェルが2層以上からなることにより、半導体ナノ粒子の蛍光量子効率を維持することができ、半導体ナノ粒子集合体として高い蛍光量子効率を有することが可能となる。また、半導体ナノ粒子の構造としては、シェルがコアの表面の少なくとも一部を覆っていればよいが、シェルがコアの表面全体を覆っている構造が好ましく、シェルがコアの表面全体を均一に覆っている構造が特に好ましい。
【0031】
シェルは、ZnおよびSeを含む組成のシェルを含んでいることが好ましく、シェルの少なくとも1つがZnSeで形成されていることが好ましい。半導体ナノ粒子が2層以上のシェルを有している場合、最外層がZnおよびSを含む組成のシェルであることが好ましく、ZnSであることがさらに好ましい。
【0032】
特に、シェルが、少なくとも、ZnSeで形成されており、コア粒子の外側表面を覆う第一シェルと、ZnSで形成されており、第一シェルの外側表面を覆う第二シェルとからなる場合、蛍光量子効率を高くすることができる。
【0033】
本発明の効果を害さない限り、シェル中の組成が必ずしも量論組成である必要はなく、各シェル中にZn、Se、S以外の元素を含んでいてもよいし、シェル中でシェルを構成する元素の比率が変化する勾配型のシェルを1つ以上有していてもよい。
【0034】
ここで、本発明において、シェルがコアの少なくとも一部を覆っているかどうかや、シェル内部の元素分布については、例えば、透過型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分光法(TEM−EDX)を用いて組成分析解析することにより確認することができる。
【0035】
本発明の半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子は、ハロゲンを含むことができる。半導体ナノ粒子がハロゲンを含む場合、半導体ナノ粒子中のInに対するハロゲンのモル比は、原子換算で、好ましくは0.80〜15.00、特に好ましくは1.00〜15.00である。半導体ナノ粒子に含有されるハロゲンは、F、Cl、Brが好ましい。半導体ナノ粒子がハロゲンを上記範囲で含むことにより、高い蛍光量子効率、狭い半値幅を得ることができる。なお、ハロゲンは半導体ナノ粒子のコアとシェルの界面及び/または半導体ナノ粒子のシェル中に存在することで、前述した効果をより受けることができる。
【0036】
半導体ナノ粒子を構成する元素の分析については、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)あるいは蛍光X線分析装置(XRF)を用いて行うことができる。
【0037】
本発明の半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子としては、少なくともIn、P、Zn、Se及びハロゲンを含有し、原子換算で、Inに対するP、Zn、Se及びハロゲンの各モル比が、P:0.20〜0.95、Zn:11.00〜50.00、Se:7.00〜25.00、ハロゲン:0.80〜15.00、好ましくは1.00〜15.00である半導体ナノ粒子で構成した場合、高い量子効率を達成しやすく、好ましい。
【0038】
本発明の半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子のCd含有量は、100質量ppm以下、好ましくは80質量ppm以下、特に好ましくは50質量ppm以下である。
【0039】
以下に半導体ナノ粒子の作製方法に関する例を開示する。
Inの前駆体、Pの前駆体、および必要に応じて添加物を溶媒中で混合し得られた前駆体混合液を加熱することで、半導体ナノ粒子のコアを形成することができる。溶媒としては配位性溶媒や非配位性溶媒が用いられる。
溶媒の例としては、1−オクタデセン、ヘキサデカン、スクアラン、オレイルアミン、トリオクチルホスフィン、およびトリオクチルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
Inの前駆体としては、前記Inを含む酢酸塩、カルボン酸塩、およびハロゲン化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Pの前駆体としては、前記Pを含む有機化合物やガスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前駆体がガスの場合には、前記ガス以外を含む前駆体混合液にガスを注入しながら反応させることでコアを形成させることができる。
【0040】
半導体ナノ粒子は、本発明の効果を害さない限り、InおよびP以外の元素を1種またはそれ以上含んでいてもよく、その場合は前記元素の前駆体をコア形成時に添加すればよい。添加物としては、例えば、分散剤としてカルボン酸、アミン類、チオール類、ホスフィン類、ホスフィンオキシド類、ホスフィン酸類、およびホスホン酸類などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。分散剤は溶媒を兼ねることもできる。
【0041】
半導体ナノ粒子のコアを形成後、必要に応じてハロゲン化物を加えることで、半導体ナノ粒子の発光特性を向上させることができる。
【0042】
ある実施形態では、In前駆体、および必要に応じて分散剤を溶媒中に添加した前駆体溶液を真空下で混合し、一旦100℃〜300℃で6時間〜24時間加熱した後、さらにP前駆体を添加して200℃〜400℃で3分〜60分加熱後、冷却する。さらにハロゲン前駆体を添加し、25℃〜300℃、好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは150℃〜280℃で加熱処理することで、コア粒子を含むコア粒子分散液を得ることができる。
【0043】
合成されたコア粒子分散液に、シェル形成前駆体を添加することにより、半導体ナノ粒子はコア/シェル構造をとり、蛍光量子効率(QY)および安定性を高めることができる。
【0044】
シェルを構成する元素はコア粒子の表面で合金やヘテロ構造、またはアモルファス構造等の構造を取っていると思われるが、一部は拡散によりコア粒子の内部に移動していることも考えられる。
【0045】
添加されたシェル形成元素は、主にコア粒子の表面付近に存在し、半導体ナノ粒子を外的因子から保護する役割を持っている。半導体ナノ粒子のコア/シェル構造はシェルがコアの少なくとも一部を覆っていることが好ましく、さらに好ましくはコア粒子の表面全体を均一に覆っていることが好ましい。
【0046】
ある実施形態では、前述したコア粒子分散液にZn前駆体とSe前駆体を添加後、150℃〜300℃、好ましくは180℃〜250℃で加熱し、その後Zn前駆体とS前駆体を添加し、200℃〜400℃、好ましくは250℃〜350℃で加熱する。これによりコア/シェル型の半導体ナノ粒子を得ることができる。
【0047】
ここで、特に限定するものではないが、Zn前駆体としては、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛およびミリスチン酸亜鉛等のカルボン酸塩や、塩化亜鉛および臭化亜鉛等のハロゲン化物、ジエチル亜鉛等の有機塩等を用いることができる。
Se前駆体としては、トリブチルホスフィンセレニド、トリオクチルホスフィンセレニドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンセレニドなどのホスフィンセレニド類、ベンゼンセレノールおよびセレノシステインなどのセレノール類、およびセレン/オクタデセン溶液などを使用することができる。
S前駆体としては、トリブチルホスフィンスルフィド、トリオクチルホスフィンスルフィドおよびトリス(トリメチルシリル)ホスフィンスルフィドなどのホスフィンスルフィド類、オクタンチオール、ドデカンチオールおよびオクタデカンチオールなどのチオール類、および硫黄/オクタデセン溶液などを使用することができる。
【0048】
シェルの前駆体はあらかじめ混合し、一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよいし、それぞれ別々に一度で、あるいは複数回に分けて添加してもよい。シェル前駆体を複数回に分けて添加する場合は、各シェル前駆体添加後にそれぞれ温度を変えて加熱してもよい。
【0049】
本発明において半導体ナノ粒子の作製方法は特に限定されず、上記に示した方法の他、従来行われている、ホットインジェクション法や、均一溶媒法、逆ミセル法、CVD法等による作製方法や、任意の方法を採用しても構わない。
【0050】
本発明の半導体ナノ粒子集合体では、本発明の半導体ナノ粒子集合体を、分散媒中に分散させた状態で450nmの励起光で励起させたときの発光スペクトル(λ
1)のピーク波長(λ
1MAX)が、605〜655nmの間にある。発光スペクトル(λ
1)のピーク波長(λ
1MAX)が、上記範囲にあることにより、430〜500nmの青色光による励起で、595〜665nmの波長の赤色の発光を達成することができる。
【0051】
本発明の半導体ナノ粒子集合体では、本発明の半導体ナノ粒子集合体を、分散媒中に分散させた状態で450nmの励起光で励起させたときの発光スペクトル(λ
1)の半値幅(FWHM
1)は、43nm以下、好ましくは38nm以下、特に好ましくは35nm以下である。発光スペクトル(λ
1)の半値幅(FWHM
1)が上記範囲にあることにより、純度の高い発光が得られる。
【0052】
本発明の半導体ナノ粒子集合体では、本発明の半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子を、445nmの励起光で励起させて得られる1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)が、以下の要件(1)〜(3)の全てを満たす。
【0053】
要件(1)発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値が、28nm以下、好ましくは25nm以下であり、24nm以下であることが特に好ましい。なお、「発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値」とは、半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子を、445nmの励起光で励起させて得られる1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)を、1粒子に対して5回ずつ、40粒子の半導体ナノ粒子に対して測定し、得られた計200個の測定値を平均して得られる値を指す。
【0054】
要件(2)発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)が10nm以上30nm以下、好ましくは10nm以上25nm以下である。なお、「発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)」とは、半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子を、445nmの励起光で励起させて得られる1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)を、1粒子に対して5回ずつ、40粒子の半導体ナノ粒子に対して測定し、得られた計200個の測定値から算出して得られる標準偏差の値を指す。
【0055】
要件(3)発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)が12nm以下、好ましくは7nm以下であり、6nm以下であることが特に好ましい。なお、「発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)」とは、半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子を、445nmの励起光で励起させて得られる1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)を、1粒子に対して5回ずつ、40粒子の半導体ナノ粒子に対して測定し、得られた計200個の測定値から算出して得られる標準偏差の値を指す。
【0056】
本発明者等の検討によれば、同じ原料組成で、同じ製法で製造し、ほぼ同一のピーク波長(λ
1MAX)を示す半導体ナノ粒子集合体であっても、その集合体全体の発光スペクトル(λ
1)の半値幅(FWHM
1)や量子効率(QY)といった特性が大きく異なることが度々あった。本発明者等は、その原因について更に詳細な研究を進めた結果、450nmの励起光で605〜655nmの間に発光スペクトル(λ
1)のピーク波長(λ
1MAX)を有する半導体ナノ粒子集合体においては、発光スペクトル(λ
1)の特性と、当該半導体ナノ粒子集合体を構成する個々の半導体ナノ粒子の発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値及びその標準偏差(SD
2)との間に相関があることを見出した。本発明は、係る新規知見に基づいたことによって完成に至ったものである。
【0057】
個々の半導体ナノ粒子は、前記半値幅(FWHM
2)の平均値及び前記標準偏差(SD
2)を制御するために、出来るだけ均一且つ均質な製造条件下で生成されることが重要である。特に、コア粒子を製造する際の加熱時には、出来るだけ急速に昇温してコア粒子の核生成や粒成長のタイミングを揃えることが好ましく、その際、昇温速度が毎分5℃以上であれば、本発明の半導体ナノ粒子集合体を得やすくなる。昇温速度は毎分10℃以上であることが好ましい。本発明の半導体ナノ粒子集合体を製造するにあたって、昇温速度に特に上限はないが、昇温速度を上げるために製造装置が複雑化すると製造コストの上昇につながるため、工業上/商業上の観点からは毎分3000℃以下が現実的である。
【0058】
本発明の半導体ナノ粒子集合体では、要件(1)発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値が、28nm以下であり、要件(2)発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)が10nm以上30nm以下であり、且つ、要件(3)発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)が12nm以下であることにより、本発明の半導体ナノ粒子集合体は、高い量子効率(QY)と高い半値幅(FWHM
1)を両立できる。
【0059】
本発明の半導体ナノ粒子集合体としては、半値幅(FWHM
1)が35nm以下であり、半値幅(FWHM
2)の平均値が24nm以下であり、且つ、標準偏差(SD
2)が6nm以下であるものが、特に狭い半値幅(FWHM
1)を得ることができ、好ましい。
【0060】
本発明の半導体ナノ粒子集合体の量子効率(QY)は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは85%以上であり、90%以上であることが特に好ましい。
【0061】
半導体ナノ粒子集合体の元素分析については、高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)又は蛍光X線分析装置(XRF)を用いて元素分析を行うことができる。ICP測定では、精製した半導体ナノ粒子を硝酸で溶解し加熱後、水で希釈してICP発光分析装置(島津製作所製、ICPS−8100)を用いて検量線法で測定する。XRF測定では、分散液をろ紙に含浸させたものをサンプリングホルダに入れ、蛍光X線分析装置(リガク製、ZSX100e)を用いて定量分析を行う。
【0062】
また、半導体ナノ粒子集合体の発光スペクトル(λ
1)のピーク波長(λ
1MAX)及び半値幅(FWHM
1)、蛍光量子効率(QY)については、蛍光量子効率測定システム(大塚電子製、QE−2000)、可視紫外分光光度計(日本分光製、V670)を用いて測定することができる。半導体ナノ粒子を分散媒に分散させた分散液に、450nmの励起光を当てて発光スペクトルを得る。ここで得られた発光スペクトルより再励起されて蛍光発光した分の再励起蛍光発光スペクトルを除いた再励起補正後の発光スペクトル(λ
1)より、ピーク波長(λ
1MAX)を求め、蛍光量子効率(QY)及び半値幅(FWHM
1)を算出する。分散媒としては、例えば、ノルマルヘキサンやオクタデセン、トルエン、アセトン、PGMEAが挙げられる。測定に用いられる励起光は450nmの単一光とし、分散液としては、吸収率が20〜30%になるように半導体ナノ粒子の濃度を調整したものが用いられる。一方、吸収スペクトルについては、半導体ナノ粒子を分散媒に分散させた分散液に、紫外〜可視光を当てて測定することができる。
【0063】
また、半導体ナノ粒子集合体を構成する個々の半導体ナノ粒子を、445nmの励起光で励起させて得られる1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)及び半値幅(FWHM
2)の測定については、例えば、「Kameyama et al.,ACS Appl.Mater,Interfaces 2018,10,42844−42855」、「Uematsu et al.,NPG Asia Materials(2018)10,713−726」、「Sharma et al.,ACS Nano 2019,13,624−632」等に記載されている公知の方法にて行うことができる。その一例として、1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)及び半値幅(FWHM
2)の測定手順を後述する実施例に記載した。
【0064】
また、後述する実施例において、発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値、ピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)、及び半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)を、上述のようにして得られた1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)及び半値幅(FWHM
2)から計算により求めた。
【0065】
なお、後述する実施例においては、半導体ナノ粒子集合体の発光スペクトル(λ
1)のピーク波長(λ
1MAX)と半値幅(FWHM
1)、及び1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)と半値幅(FWHM
2)の測定する際には、全て小数点第3位まで計測し、四捨五入して小数点第2位までの値とした。また、こうして得られた測定値から、1粒子毎の発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値、ピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)、及び半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)を算出する際には、全て小数点第2位まで計算した。その後、これらの数値は全て小数点第1位を四捨五入して整数位まで求め、それぞれをピーク波長(λ
1MAX)、半値幅(FWHM
1)、ピーク波長(λ
2MAX)、半値幅(FWHM
2)の平均値、標準偏差(SD
1)、及び標準偏差(SD
2)として下表1〜表2に示した。
【0066】
また、一例として、後述する実験例3(実施例)と実験例8(比較例)において1粒子毎に測定した発光スペクトルデータ(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)及び半値幅(FWHM
2)の測定値(各例200個ずつ)の散布図を、
図3として示す。
図3から明らかなように、本発明の実施例に属する実験例と比較例に属する実験例とでは、ピーク波長(λ
2MAX)及び半値幅(FWHM
2)の分布傾向が明確に異なっており、このような分布傾向は、他の実施例や比較例でも同様に見られた。
【0067】
(半導体ナノ粒子集合体分散液)
本発明の半導体ナノ粒子集合体は、極性分散媒に分散されて、半導体ナノ粒子集合体分散液を形成することができる。本発明において、半導体ナノ粒子集合体が分散媒に分散している状態とは、半導体ナノ粒子集合体と分散媒とを混合させた場合に、半導体ナノ粒子複合体が沈殿しない状態、もしくは目視可能な濁り(曇り)として残留しない状態であることを表す。なお、半導体ナノ粒子集合体が分散媒に分散しているものを半導体ナノ粒子集合体分散液と表す。
【0068】
本発明では、本発明の半導体ナノ粒子集合体分散液の有機分散媒として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ノルマルブチル、乳酸エチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類などが選択される。これらの有機分散媒に、本発明の半導体ナノ粒子集合体を分散させることで、後述する硬化膜や樹脂への分散に応用する際に、半導体ナノ粒子集合体の分散性を保ったまま使用することができる。
【0069】
さらに、本発明では、本発明の半導体ナノ粒子集合体分散液の分散媒として、モノマーを選択することができる。モノマーは、特に限定されないが、半導体ナノ粒子の応用先を幅広く選択できる(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。(メタ)アクリルモノマーは半導体ナノ粒子集合体分散液の応用に応じて、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3、5、5−トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n≒2)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチルオキセタン−3−イル)メチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールエトキシ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルりん酸、アクリロイルモルホリン、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イロプロピルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、およびN−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドなどの(メタ)アクリルモノマーから選択される。これらを単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。特にアクリルモノマーは半導体ナノ粒子集合体分散液の応用に応じて、ラウリル(メタ)アクリレート、および1、6−ヘキサジオールジ(メタ)アクリレートから選ばれる1種または2種以上の混合物であることが好ましい。
【0070】
また、本発明では、本発明の半導体ナノ粒子集合体分散液の分散媒として、プレポリマーを選択することができる。プレポリマーは特に限定されないが、アクリル樹脂プレポリマー、シリコーン樹脂プレポリマー、およびエポキシ樹脂プレポリマーが挙げられる。
【0071】
(半導体ナノ粒子集合体組成物)
本発明では、本発明の半導体ナノ粒子集合体分散液の分散媒として、モノマーまたはプレポリマーを選択し、半導体ナノ粒子集合体組成物を形成することができる。つまり、本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物は、本発明の半導体ナノ粒子集合体が、モノマーまたはプレポリマーに分散された半導体ナノ粒子集合体組成物である。モノマーまたはプレポリマーは、特に限定されないが、エチレン性不飽和結合を含むラジカル重合性化合物、シロキサン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、およびフェノール誘導体などが挙げられる。モノマーとしては、例えば、上述した分散媒として用いられるモノマーが挙げられる。また、プレポリマーとしては、上述した分散媒として用いられるプレポリマーが挙げられる。
【0072】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物中のモノマーの種類によって、多官能(メタ)アクリレート、多官能シラン化合物、多官能アミン、多官能カルボン酸、多官能チオール、多官能アルコール、および多官能イソシアネートなどから選択される。
【0073】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物は、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタンおよびクロロホルム等のハロゲン化アルキルなど、硬化に影響しない各種有機溶媒をさらに含むことができる。なお、上記の有機溶媒は、半導体ナノ粒子集合体組成物の希釈用としてだけでなく、有機分散媒としても用いることができる。すなわち、本発明の半導体ナノ粒子集合体を上記の有機溶媒に分散させて、半導体ナノ粒子集合体分散液とすることも可能である。
【0074】
また、本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物は、半導体ナノ粒子集合体組成物中のモノマーの種類によって、適切な開始剤や散乱剤、触媒、バインダー、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、および分散剤等を含んでもよい。
【0075】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物、あるいは後述する本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜の光学特性を向上させるために、半導体ナノ粒子集合体組成物は、散乱剤を含んでもよい。散乱剤は酸化チタンや酸化亜鉛などの金属酸化物であり、これらの粒径は100nm〜500nmであることが好ましい。散乱の効果の観点から、散乱剤の粒径は200nm〜400nmであることがさらに好ましい。散乱剤が含まれることで、吸光度が2倍程度向上する。本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物の散乱剤の含有量は、組成物に対して2質量%〜30質量%であることが好ましく、組成物のパターン性の維持の観点から5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0076】
本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物を、10μmの膜にしたとき、前記膜の法線方向からの波長450nmの光に対する吸光度が1.0以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。これにより、バックライトの光を効率的に吸収できるため、後述の硬化膜の厚みを低減することができ、適用するデバイスを小型化することができる。
【0077】
(希釈組成物)
希釈組成物は、前述の本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物が有機溶媒で希釈されてなるものである。
【0078】
半導体ナノ粒子集合体組成物を希釈する有機溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、へプタン、オクタンおよび石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびミネラルスピリット等の芳香族炭化水素類、およびジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化アルキルなどが挙げられる。これらの中でも、幅広い樹脂への溶解性および塗膜時の被膜均一性の観点からは、グリコールエーテル類およびグリコールエーテルエステル類が好ましい。
【0079】
(半導体ナノ粒子集合体硬化膜)
本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜とは、本発明の半導体ナノ粒子集合体を含有した膜であり、硬化しているものを表す。本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜は、前述の半導体ナノ粒子集合体組成物または希釈組成物を膜状に硬化することで得られる。
【0080】
本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜は、本発明の半導体ナノ粒子集合体に係る半導体ナノ粒子と半導体ナノ粒子の表面に配位したリガンドと、高分子マトリクスを含んでいる。言い換えると、本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜は、本発明の半導体ナノ粒子集合体が、高分子マトリックスに分散した硬化膜である。
【0081】
高分子マトリクスとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。なお、前述した本発明の半導体ナノ粒子集合体組成物を硬化させることで、本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜を得てもよい。本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜は、架橋剤をさらに含んでもよい。
【0082】
膜を硬化させる方法は特に限定されないが、熱処理、紫外線処理など膜を構成する組成物に適した硬化方法により、膜を硬化することができる。
【0083】
本発明の半導体ナノ粒子複合体硬化膜を10μmの厚さとした時、半導体ナノ粒子複合体硬化膜の法線方向からの波長450nmの光に対して、吸光度は1.0以上が好ましく、1.3以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。
【0084】
さらに、本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜には、高い発光特性を有する半導体ナノ粒子集合体を含有しているため、発光特性が高い半導体ナノ粒子集合体硬化膜を提供できる。本発明の半導体ナノ粒子複合体集合体の蛍光量子効率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0085】
本発明の半導体ナノ粒子集合体硬化膜の厚みは、半導体ナノ粒子集合体硬化膜を適用するデバイスの小型化するために、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
【0086】
なお、本明細書の記載の構成、方法、手順、処理等は、例示であって、本発明を限定するものではなく、本発明の範囲において、多数の変形形態が適用可能である。
【実施例】
【0087】
以下の方法に従って、半導体ナノ粒子の作製を行い、得られた半導体ナノ粒子の組成、光学特性を測定した。
【0088】
(実験例1)
<コア粒子の製造>
酢酸インジウム(0.3mmol)およびオレイン酸亜鉛(0.55mmol)を、オレイン酸(0.9mmol)と1−ドデカンチオール(0.1mmol)とオクタデセン(10mL)との混合物に加え、真空下(<20Pa)で毎分10℃の昇温速度で室温から120℃まで加熱し、1時間反応させた。真空(<20Pa)で反応させた混合物を25℃、窒素雰囲気下にして、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(0.23mmol)を加えたのち、毎分10℃の昇温速度で300℃まで加熱し、10分間反応させた。さらに、反応液を25℃に冷却し、オクタン酸クロリド(0.60mmol)を注入し、毎分10℃の昇温速度で250℃まで加熱し、30分間反応させた後、25℃に冷却して、コア粒子の分散溶液を得た。
【0089】
<シェル形成用の前駆体>
40mmolのオレイン酸亜鉛と75mLのオクタデセンを混合し、真空化で110℃にて1時間加熱し、[Zn]=0.4MのZn前駆体溶液を調整した。
22mmolのセレン粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[Se]=2.2Mのセレン化トリオクチルホスフィンを得た。
22mmolの硫黄粉末と10mLのトリオクチルホスフィンを窒素中で混合し、全て溶けるまで撹拌して[S]=2.2Mの硫化トリオクチルホスフィンを得た。
【0090】
<シェルの形成>
コア粒子の分散溶液を250℃まで加熱した。250℃において4.3mLのZn前駆体溶液と1.5mLのセレン化トリオクチルホスフィンを添加し、30分間反応させ、InP系半導体ナノ粒子の表面にZnSeシェルを形成した。さらに、3.8mLのZn前駆体溶液と0.5mLの硫化トリオクチルホスフィンを添加し、280℃に昇温して1時間反応させ、ZnSシェルを形成した。
得られた半導体ナノ粒子を、STEM−EDSによって観察したところ、コア/シェル構造をしていることが確認された。
【0091】
<精製>
上記のようにして得られたコア/シェル型構造の半導体ナノ粒子が分散している溶液にアセトンを加え、半導体ナノ粒子を凝集させた。次いで、遠心分離(4000rpm、10分間)後、上澄みを除去し、半導体ナノ粒子をヘキサンに再分散させた。これを繰り返して、精製された半導体ナノ粒子を得た。
【0092】
<分析>
(組成)
高周波誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP)と蛍光X線分析装置(XRF)を用いて、組成分析を行った。表1に当該分析結果をインジウムに対するモル比で示した。
【0093】
(ピーク波長(λ
1MAX)、半値幅(FWHM
1)、蛍光量子効率(QY)の分析)
前述したように、量子効率測定システムを用いて、半導体ナノ粒子集合体の発光スペクトル(λ
1)を測定し、半導体ナノ粒子集合体の量子効率(QY)、半導体ナノ粒子集合体の半値幅(FWHM
1)及びピーク波長(λ
1MAX)を測定した。この時、励起光を450nmの単一波長とした。測定に用いる分散液としては吸収率が20〜30%になるように濃度を調整したものを用いた。さらに、紫外可視分光光度計を用いて、半導体ナノ粒子の分散液に紫外から可視光を照射し吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルの測定に用いる分散液としては、分散媒を1mLに対して半導体ナノ粒子の量が1mgになるように濃度を調整したものを用いた。表2に当該分析結果を示した。
【0094】
(半値幅(FWHM
2)、ピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)、半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)の分析)
<測定準備>
以下の実験例において、個々の半導体ナノ粒子が発する蛍光発光の分光スペクトル測定には、倒立型サーチ光学顕微鏡(オリンパス社製IX73)を用い、高開口数対物レンズとしてオリンパス社製UPlan FNL 100×/1.30 NA, Oilを用いた。また、顕微鏡には、画像分光測定タイプの顕微鏡接続用イメージング分光器として分光計器社製CLP−50−D型と、高感度電子増倍型CCDカメラとしてAndor Technology社製 iXonを接続した。
個々の半導体ナノ粒子からの蛍光発光は、上記イメージング分光器によって変換されたスペクトル画像として、顕微鏡を介してCCDカメラに一定取込間隔で連続記録されるようにした。
また、顕微鏡と分光器の間には、幅100nmのスリットを配置し、全視野の一部分のみの像を取り込めるようにした。
半導体ナノ粒子を励起するための半導体レーザーとしては、波長445nmの青色レーザー光を発することができるネオアーク社製TC−20−4450を用い、当該レーザー光を顕微鏡に導入し収束させた後、後述する測定サンプルに対して照射されるように構成した。
なお、この際、不必要な励起光や散乱光が検出器に入るのをカットするため、必要な箇所に適宜光学フィルターを設置する。
測定対象の半導体ナノ粒子は、以下に示す方法で石英基板上に分散させて、測定サンプルとした。
先ず、2〜3質量%程度のポリメチルメタクリレート(PMMA)を光学分析用のトルエンに溶解させて得られたトルエン溶液に対し、測定対象の半導体ナノ粒子集合体を構成する半導体ナノ粒子を、凝集が生じないよう分散させた。この際、後述するスペクトル測定において、複数個の粒子を一個の粒子と誤認しないよう、半導体ナノ粒子同士の間隔は1μm以上となるように、密度を調整すると良い。
そして、青色レーザー光によって励起発光しない合成石英基板(大興製作所製、Labo−CG)をスピンコーターに取り付け、その上に上記の半導体ナノ粒子を分散させたトルエン溶液を適量落とし、回転数1000〜3000rpmの範囲で10〜30秒間スピンコートした後、自然乾燥させることによって、PMMA膜中に半導体ナノ粒子が希薄に分散した薄膜を石英基板上に形成した。
これを測定用のサンプル基板として、顕微鏡の対物レンズ上に設置した。なお、以上の準備や作業においては、励起レーザー光により発光する不純物が混入しないよう注意が必要である。
【0095】
<測定>
以下の実験例における観察はすべて、大気中で20〜25℃の室温下で行った。
顕微鏡の倍率および励起光の照射範囲は、サンプル基板上に励起光が当たる範囲がすべてCCDカメラに取り込めるよう、適時設定した。また、半導体ナノ粒子を励起するレーザー光の強度は、サンプル基板に対し、単位面積当たりの励起エネルギーが100〜250W/cm
2の範囲内に収まるよう出力を調整した。
顕微鏡と分光器に間にセットしたスリットを介して数個の半導体ナノ粒子のスペクトル像のみがCCDカメラに取り込まれる状態で、観察されるスペクトル像を1.0秒間隔(1Hz)で100点(100秒間)記録した。
得られたスペクトル画像において、波長については、予め波長が分かっているリファレンス光のスペクトル画像と比較することで算出し、また、強度については、粒子のない部分の強度をバックグランドとして全体の強度から差し引くといった補正を行い、個々の半導体ナノ粒子の波長と強度のデータ点を求め、更に、これを適宜のグラフソフトを用いてガウスフィットさせることで、個々の半導体ナノ粒子の発光スペクトル(λ
2)、発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)、発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)を数値化した。
なお、本実施例において上記数値化は、取り込んだ全ての画像からランダムに40粒子の半導体ナノ粒子を選択し、各粒子毎にランダムに選択した5点のスペクトルに対して行った。こうして得られた計200個の測定データに基づくことにより、半値幅(FWHM
2)の平均値、ピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差(SD
1)、半値幅(FWHM
2)の標準偏差(SD
2)を得た。表2に当該分析結果を併記した。
【0096】
(実験例2〜6)
製造に用いた原材料の組成比を変更した以外は、実験例1と同様にして半導体ナノ粒子を作製した後、実験例1と同様に分析を行った結果を表1及び表2に併記した。
【0097】
(実験例7〜11)
コア粒子の製造時における加熱の昇温速度が毎分3℃であること、及び製造に用いた原材料の組成比を変更したこと以外は、実験例1と同様にして半導体ナノ粒子を作製した後、実験例1と同様に分析を行った結果を表1及び表2に併記した。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表2中、「λ
1MAX」は、発光スペクトル(λ
1)のピーク波長であり、「FWHM
1」は、発光スペクトル(λ
1)の半値幅であり、「FWHM
2の平均」は、発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の平均値であり、「λ
2MAXのSD
1」は、発光スペクトル(λ
2)のピーク波長(λ
2MAX)の標準偏差であり、「FWHM
2のSD
2」は、発光スペクトル(λ
2)の半値幅(FWHM
2)の標準偏差である。