特許第6973480号(P6973480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973480
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】レーザ装置組立体
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/10 20210101AFI20211118BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20211118BHJP
   H01S 5/50 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   H01S5/10
   H01S5/026 610
   H01S5/50 610
【請求項の数】20
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2019-516895(P2019-516895)
(86)(22)【出願日】2018年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2018005410
(87)【国際公開番号】WO2018207422
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2021年1月6日
(31)【優先権主張番号】特願2017-92273(P2017-92273)
(32)【優先日】2017年5月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 孝久
(74)【代理人】
【識別番号】100118290
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 正明
(72)【発明者】
【氏名】幸田 倫太郎
(72)【発明者】
【氏名】河野 俊介
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0037023(US,A1)
【文献】 特開平7−287202(JP,A)
【文献】 特開2002−344079(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0260521(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/035182(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0333479(US,A1)
【文献】 特開平5−152688(JP,A)
【文献】 特開2013−42173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/10
H01S 5/026
H01S 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部及び第2端部を有する第1利得部、
第3端部及び第4端部を有する第2利得部、
1又は多重のリング共振器、
第1利得部から出射されたレーザ光を増幅する半導体光増幅器、及び、
第1利得部と半導体光増幅器との間に配設されたパルス選別器、
を備えており、
リング共振器は、第1利得部と光結合しており、且つ、第2利得部と光結合しており、
第1利得部及び第2利得部のいずれか一方においてレーザ発振がなされるモノリシック型のレーザ装置組立体。
【請求項2】
第1利得部の第1端部における端面に形成された第1光反射部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた第2光反射部によって、共振器が構成されており、
該共振器においてレーザ発振がなされる請求項1に記載のレーザ装置組立体。
【請求項3】
パルス選別器の第1端部と第1利得部の第2端部とは対向しており、
パルス選別器の第2端部と半導体光増幅器とは対向している請求項2に記載のレーザ装置組立体。
【請求項4】
第2利得部の第4端部は、曲げ導波路から構成されている請求項2に記載のレーザ装置組立体。
【請求項5】
第1利得部の第2端部とパルス選別器との間に、光結合器が配されている請求項2に記載のレーザ装置組立体。
【請求項6】
光結合器の一端部は、パルス選別器と対向しており、
光結合器の他端部は、曲げ導波路から構成されている請求項5に記載のレーザ装置組立体。
【請求項7】
第1利得部の第2端部は、曲げ導波路から構成されている請求項5に記載のレーザ装置組立体。
【請求項8】
第2利得部の第4端部は、曲げ導波路から構成されている請求項5に記載のレーザ装置組立体。
【請求項9】
第1利得部の第2端部に形成された光半透過部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた光反射部によって、共振器が構成されており、
該共振器においてレーザ発振がなされる請求項1に記載のレーザ装置組立体。
【請求項10】
第1利得部に形成された光半透過部とパルス選別器とは対向している請求項9に記載のレーザ装置組立体。
【請求項11】
第1利得部の第1端部は、曲げ導波路から構成されている請求項9に記載のレーザ装置組立体。
【請求項12】
第2利得部の第4端部は、曲げ導波路から構成されている請求項9に記載のレーザ装置組立体。
【請求項13】
第1利得部は、モード同期半導体レーザ素子から成る請求項2に記載のレーザ装置組立体。
【請求項14】
第2利得部は、モード同期半導体レーザ素子から成る請求項9に記載のレーザ装置組立体。
【請求項15】
パルス選別器は、正バイアス及び逆バイアスが印加される構造を有し、
パルス選別器に正バイアスが印加されたとき、第1利得部から出射されたレーザ光は半導体光増幅器に入射し、
パルス選別器に逆バイアスが印加されたとき、第1利得部から出射されたレーザ光は、パルス選別器によって半導体光増幅器への入射が阻止される請求項1に記載のレーザ装置組立体。
【請求項16】
パルス選別器は、リング共振器を経由したレーザ光を半導体光増幅器に入射させる請求項15に記載のレーザ装置組立体。
【請求項17】
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器は、同じ構造を有する化合物半導体層の積層構造体から成る請求項1に記載のレーザ装置組立体。
【請求項18】
化合物半導体層は窒化物系化合物半導体から成る請求項17に記載のレーザ装置組立体。
【請求項19】
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器は、基板の第2面上に設けられており、
基板の第1面には、第1電極が形成され、
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器のそれぞれの頂面の少なくとも一部分には、独立した第2電極が設けられている請求項17に記載のレーザ装置組立体。
【請求項20】
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器は、リッジ構造を有する請求項1に記載のレーザ装置組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
超短パルスレーザに関する技術は、1960年後半から進展し始め、近年、急速に発展し、盛んに研究が行われている。ところで、その光源として、主に、チタンサファイアレーザを代表とする高価で大型、且つ、高精度の固体レーザ装置が用いられており、この点が技術の普及を阻害する要因の1つとなっている。もしも超短パルスレーザが半導体レーザ素子で実現できれば、大幅な小型化、低価格化、高安定性化がもたらされ、この分野の高度な科学技術を普及させる上でブレイクスルーになることが期待できる。例えば、波長領域が405nm帯である超短パルスレーザが半導体レーザ素子のみで実現できれば、ブルーレイ(登録商標)の次の体積型次世代光ディスク光源として用いることができるだけでなく、可視光域の全波長帯をカバーした手軽な超短パルス光源が実現できる。それ故、医療、バイオイメージング、光造形等の領域だけでなく、種々の幅広い分野で要求される光源を提供することができ、科学技術の進歩に著しい貢献をもたらすと考えられる。
【0003】
ところで、種々の幅広い分野での使用の拡大には更なる小型化が望まれるが、そのためには、超短パルスレーザを半導体レーザ素子から構成し、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier,SOA)で増幅し、しかも、半導体レーザ素子と半導体光増幅器とを同一基板に集積化する、モノリシック型のレーザ装置組立体の開発が強く望まれている。
【0004】
モノリシック型ではない従来のレーザ装置組立体が、例えば、特開2012−015266公報から周知である。このレーザ装置組立体は、レーザ光源100及び半導体光増幅器200から構成されている。
【0005】
ところで、これまでに開発されてきた半導体レーザ素子は、レーザ光パルスの繰返し周波数をギガヘルツ帯とする設計がなされている。その理由は、半導体光増幅器におけるキャリア寿命がナノ秒オーダーであることから、半導体光増幅器による効果的な増幅を得るためである。半導体レーザ素子におけるレーザ光パルスの繰返し周波数は共振器長で決まるため、共振器長を15cmとすると1ギガヘルツの繰返し周波数を得ることができる。ところで、外部共振器を有していない半導体レーザ素子を想定した場合、共振器長はチップサイズで律速される結果、レーザ光パルスの繰返し周波数は数十ギガヘルツ乃至100ギガヘルツとなってしまう。その結果、半導体光増幅器による効率的な増幅が困難になる。
【0006】
一方、共振器長を長くする手法として、リング共振器が提案されている。リング共振器への光結合の割合(分岐比κ)を低くすることで、実効的な共振器長を物理的なチップサイズ以上にすることが可能である。これまでに、リング共振器長の異なる複数のリング共振器を用いることで、その透過特性の波長依存性を利用して、可変波長光源として様々な提案がされている(例えば、WO2007/029647号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012−015266公報
【特許文献2】WO2007/029647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、所望のレーザ光パルスの繰返し周波数を達成するために適切な長さの共振器長を有し、半導体レーザ素子と半導体光増幅器とが同一基板に集積化されたモノリシック型のレーザ装置組立体は、本発明者らが調べた限り、知られていない。
【0009】
従って、本開示の目的は、所望のレーザ光パルスの繰返し周波数を達成するために適切な長さの共振器長を有し、半導体レーザ素子を構成する利得部と半導体光増幅器とが同一基板に集積化されたモノリシック型のレーザ装置組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本開示のモノリシック型のレーザ装置組立体は、
第1端部及び第2端部を有する第1利得部、
第3端部及び第4端部を有する第2利得部、
1又は多重のリング共振器、
第1利得部から出射されたレーザ光を増幅する半導体光増幅器、及び、
第1利得部と半導体光増幅器との間に配設されたパルス選別器、
を備えており、
リング共振器は、第1利得部と光結合しており、且つ、第2利得部と光結合しており、
第1利得部及び第2利得部のいずれか一方においてレーザ発振がなされる。
【発明の効果】
【0011】
本開示のレーザ装置組立体は、1又は多重のリング共振器を備えているが故に、レーザ光パルスの繰返し周波数を半導体光増幅器に合わせて最適化することができる。しかも、パルス選別器を備えているので、所望の波長を有するパルス光を半導体光増幅器に入射させることができる。そして、以上の結果として、高出力化と小型化が両立されたモノリシック型のレーザ装置組立体を提供することができる。尚、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものでは無く、また、付加的な効果があってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1A及び図1Bは、実施例1のモノリシック型のレーザ装置組立体の模式的な平面図である。
図2図2A及び図2Bは、実施例2のモノリシック型のレーザ装置組立体の模式的な平面図である。
図3図3は、実施例3のモノリシック型のレーザ装置組立体の模式的な平面図である。
図4図4は、実施例3のモノリシック型のレーザ装置組立体の模式的な平面図である。
図5図5は、実施例1のレーザ装置組立体を構成するモード同期半導体レーザ素子の共振器の延びる方向と直角方向に沿った模式的な断面図である。
図6図6は、実施例1のレーザ装置組立体を構成するモード同期半導体レーザ素子の共振器の延びる方向に沿った模式的な端面図である。
図7図7A及び図7Bは、パルス選別器の動作タイミングを模式的に示す図である。
図8図8は、共振器長とリング共振器の半径の関係を示すグラフである。
図9図9は、実施例1のモード同期半導体レーザ素子の変形例の共振器の延びる方向に沿った模式的な端面図である。
図10図10は、実施例1のモード同期半導体レーザ素子の別の変形例の共振器の延びる方向に沿った模式的な端面図である。
図11図11は、実施例1のモード同期半導体レーザ素子の更に別の変形例におけるリッジストライプ構造を上方から眺めた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示のレーザ装置組立体、全般に関する説明
2.実施例1(本開示のレーザ装置組立体、第1形態のレーザ装置組立体)
3.実施例2(実施例1の変形、第2形態のレーザ装置組立体)
4.実施例3(実施例1の変形、第3形態のレーザ装置組立体)
5.その他
【0014】
〈本開示のレーザ装置組立体、全般に関する説明〉
本開示のレーザ装置組立体にあっては、
第1利得部の第1端部における端面に形成された第1光反射部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた第2光反射部によって、共振器が構成されており、
該共振器においてレーザ発振がなされる構成とすることができる。
【0015】
そして、このような構成の本開示のレーザ装置組立体にあっては、
パルス選別器の第1端部と第1利得部の第2端部とは対向しており、
パルス選別器の第2端部と半導体光増幅器とは対向している形態とすることができる。尚、このような形態のレーザ装置組立体を、便宜上、『第1形態のレーザ装置組立体』と呼ぶ。更には、以上に説明した構成、形態において、第2利得部の第4端部は曲げ導波路から構成されている形態とすることができ、これによって、第2利得部の第4端部からの戻り光の発生を抑制することができる。パルス選別器の第1端部と第1利得部の第2端部との間には、後述する積層構造体(あるいはその一部)が存在する場合もあるし、空間が存在する場合もある。また、パルス選別器の第2端部と半導体光増幅器との間には、積層構造体(あるいはその一部)が存在する場合もあるし、空間が存在する場合もある。第1利得部とリング共振器との間には空間が存在するし、第2利得部とリング共振器との間にも空間が存在する。複数のリング共振器が配設されている場合、リング共振器とリング共振器との間に位置する利得部とそれぞれのリング共振器との間にも空間が存在する。
【0016】
あるいは又、このような構成の本開示のレーザ装置組立体にあっては、第1利得部の第2端部とパルス選別器との間に、光結合器が配されている形態とすることができる。尚、このような形態のレーザ装置組立体を、便宜上、『第2形態のレーザ装置組立体』と呼ぶ。第1利得部の第2端部と光結合器とは光結合している。このように、光結合器を配することで、半導体光増幅器において発生した増幅自然放出光が第1利得部に戻り難くなり、更なる戻り光の抑制が可能となる。そして、このような第2形態のレーザ装置組立体において、光結合器の一端部はパルス選別器(具体的には、パルス選別器の第1端部)と対向しており、光結合器の他端部は曲げ導波路から構成されている形態とすることができる。そして、更には、これらの好ましい形態において、第1利得部の第2端部は曲げ導波路から構成されている形態とすることができ、これによって、第1利得部の第2端部からの戻り光の発生を抑制することができる。更には、これらの好ましい形態において、第2利得部の第4端部は曲げ導波路から構成されている形態とすることができ、これによって、第2利得部の第4端部からの戻り光の発生を抑制することができる。光結合器の一端部とパルス選別器(具体的には、パルス選別器の第1端部)との間には、後述する積層構造体(あるいはその一部)が存在する場合もあるし、空間が存在する場合もある。また、パルス選別器の第2端部と半導体光増幅器との間には、積層構造体(あるいはその一部)が存在する場合もあるし、空間が存在する場合もある。第1利得部と光結合器との間には空間が存在するし、第1利得部とリング共振器との間には空間が存在するし、第2利得部とリング共振器との間にも空間が存在する。複数のリング共振器が配設されている場合、リング共振器とリング共振器との間に位置する利得部とそれぞれのリング共振器との間にも空間が存在する。
【0017】
あるいは又、本開示のレーザ装置組立体にあっては、
第1利得部の第2端部に形成された光半透過部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた光反射部によって、共振器が構成されており、
該共振器においてレーザ発振がなされる形態とすることができる。尚、このような形態のレーザ装置組立体を、便宜上、『第3形態のレーザ装置組立体』と呼ぶ。そして、この場合、第1利得部に形成された光半透過部とパルス選別器とは対向している形態とすることができるし、これらの形態にあっては、第1利得部の第1端部は曲げ導波路から構成されている形態とすることができ、これによって、第1利得部の第1端部からの戻り光の発生を抑制することができる。更には、これらの形態にあっては、第2利得部の第4端部は曲げ導波路から構成されている形態とすることができる。光半透過部とパルス選別器(具体的には、パルス選別器の第1端部)との間には、後述する積層構造体(あるいはその一部)が存在する場合もあるし、空間が存在する場合もある。また、パルス選別器の第2端部と半導体光増幅器との間には、積層構造体(あるいはその一部)が存在する場合もあるし、空間が存在する場合もある。第1利得部とリング共振器との間には空間が存在するし、第2利得部とリング共振器との間にも空間が存在する。複数のリング共振器が配設されている場合、リング共振器とリング共振器との間に位置する利得部とそれぞれのリング共振器との間にも空間が存在する。
【0018】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む第1形態あるいは第2形態のレーザ装置組立体において、第1利得部はモード同期半導体レーザ素子から成る形態とすることができるし、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む第3形態のレーザ装置組立体において、第2利得部はモード同期半導体レーザ素子から成る形態とすることができる。
【0019】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本開示のレーザ装置組立体において、
パルス選別器は、正バイアス(順バイアス)及び逆バイアスが印加される構造を有し、
パルス選別器に正バイアス(順バイアス)が印加されたとき、第1利得部から出射されたレーザ光は半導体光増幅器に入射し、
パルス選別器に逆バイアスが印加されたとき、第1利得部から出射されたレーザ光は、パルス選別器によって半導体光増幅器への入射が阻止される形態とすることができる。そして、この場合、パルス選別器は、リング共振器を経由したレーザ光を半導体光増幅器に入射させる形態とすることができる。
【0020】
更には、以上に説明した各種の好ましい構成、形態を含む本開示のレーザ装置組立体において、第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器、更には、光結合器は、同じ構造を有する化合物半導体層の積層構造体から成る形態とすることができ、この場合、化合物半導体層は窒化物系化合物半導体から成る形態とすることができ、更には、これらの場合、
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器、更には、光結合器は、基板の第2面上に設けられており、
基板の第1面には、第1電極が形成され、
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器、更には、光結合器のそれぞれの頂面の少なくとも一部分には、独立した第2電極が設けられている形態とすることができ、更には、これらの場合、第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器、更には、光結合器は、リッジ構造を有する形態とすることができる。尚、第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器を総称して、『半導体レーザ素子等』と呼ぶ場合がある。ここで、リング共振器に第2電極を設けなくともよい場合があるし、第1形態のレーザ装置組立体及び第2形態のレーザ装置組立体にあっては、第2利得部に第2電極を設けなくともよい場合があるし、第3形態のレーザ装置組立体にあっては、第1利得部に第2電極を設けなくともよい場合がある。
【0021】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態、構成を含む本開示のレーザ装置組立体において、モード同期半導体レーザ素子におけるレーザ光パルスの繰返し周波数は1GHz以下であることが好ましい。
【0022】
以上に説明した好ましい構成、形態を含む本開示のレーザ装置組立体(以下、これらを総称して、単に『本開示のレーザ装置組立体等』と呼ぶ場合がある)において、半導体レーザ素子等は、具体的には、
(a)第1導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層、GaN系化合物半導体から成る第3化合物半導体層(活性層)、及び、第1導電型と異なる第2導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層上に形成された第2電極、並びに、
(c)第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を備えている形態とすることができる。第1化合物半導体層は、基板や基体上に形成されている。
【0023】
モード同期半導体レーザ素子は、リッジ構造、具体的には、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造、Separate Confinement Heterostructure)を有するモード同期半導体レーザ素子である形態とすることができる。あるいは又、斜めリッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造を有するモード同期半導体レーザ素子である形態とすることができる。即ち、モード同期半導体レーザ素子の軸線とリッジストライプ構造の軸線とは、所定の角度で交わっている構成とすることができる。ここで、所定の角度として、0.1度乃至10度を例示することができる。リッジストライプ構造の軸線とは、一方の端部におけるリッジストライプ構造の両端の二等分点と、一方の端部とは反対側の積層構造体の他方の端部におけるリッジストライプ構造の両端の二等分点とを結ぶ直線である。また、モード同期半導体レーザ素子の軸線とは、一方の端部及び他方の端部に直交する軸線を指す。リッジストライプ構造の平面形状は、直線状であってもよいし、湾曲していてもよい。
【0024】
あるいは又、モード同期半導体レーザ素子において、第2端部(第4端部)におけるリッジストライプ構造の幅をW2、第1端部(第3端部)におけるリッジストライプ構造の幅をW1としたとき、W1=W2であってもよいし、W2>W1としてもよい。W2は5μm以上である形態とすることができ、W2の上限値として、限定するものではないが、例えば、4×102μmを例示することができる。また、W1は1.4μm乃至2.0μmである形態とすることができる。リッジストライプ構造の各縁部は、1本の線分から構成されていてもよいし、2本以上の線分から構成されていてもよい。前者の場合、リッジストライプ構造の幅は、例えば、第1端部(第3端部)から第2端部(第4端部)に向かって、単調に、テーパー状に緩やかに広げられる構成することができる。一方、後者の場合、リッジストライプ構造の幅は、例えば、第1端部(第3端部)から第2端部(第4端部)に向かって、先ず同じ幅であり、次いで、単調に、テーパー状に緩やかに広げられ、あるいは又、リッジストライプ構造の幅は、例えば、第1端部(第3端部)から第2端部(第4端部)に向かって、先ず広げられ、最大幅を超えた後、狭められる構成とすることができる。
【0025】
モード同期半導体レーザ素子において、レーザ光ビーム(パルス状のレーザ光)が出射される積層構造体の第2端部が端面から構成されている場合、この端面の光反射率は50%以上であることが好ましい。具体的には、この端面には反射コート層が形成されている構成とすることができる。ここで、反射コート層は、例えば、酸化チタン層、酸化タンタル層、酸化ジルコニア層、酸化シリコン層及び酸化アルミニウム層から成る群から選択された少なくとも2種類の層の積層構造から成る。この光反射率の値は、従来の半導体レーザ素子においてレーザ光ビーム(パルス状のレーザ光)が出射される積層構造体の一端面の光反射率(通常、5%乃至10%)よりも格段に高い値である。
【0026】
また、第1利得部の第1端部における端面に形成された第1光反射部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた第2光反射部あるいは光反射部は、高い光反射率、例えば、反射率85%以上、好ましくは反射率95%以上の高い反射率を有することが好ましい。
【0027】
第3形態のレーザ装置組立体において、第1利得部の第2端部に形成された光半透過部は、分布ブラッグ反射鏡層(Distributed Bragg Reflector 層、DBR層)から構成することができる。具体的には、第1利得部の第2端部の屈折率を、レーザ光の伝達方向に沿って周期的に変調(変化)させればよい。
【0028】
半導体レーザ素子等において、積層構造体は、少なくとも第2化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されたリッジ構造を有するが、このリッジ構造は、第2化合物半導体層のみから構成されていてもよいし、第2化合物半導体層及び第3化合物半導体層(活性層)から構成されていてもよいし、第2化合物半導体層、第3化合物半導体層(活性層)、及び、第1化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されていてもよい。リッジ構造の形成は、例えば、エッチング法に基づき行うことができる。
【0029】
半導体レーザ素子等において、積層構造体は、具体的には、AlGaInN系化合物半導体から成る構成とすることができる。ここで、AlGaInN系化合物半導体として、より具体的には、GaN、AlGaN、GaInN、AlGaInNを挙げることができる。更には、これらの化合物半導体に、所望に応じて、ホウ素(B)原子やタリウム(Tl)原子、ヒ素(As)原子、リン(P)原子、アンチモン(Sb)原子が含まれていてもよい。また、発光領域(利得領域)〈後述する可飽和吸収領域を含む〉を構成する第3化合物半導体層(活性層)は、量子井戸構造を有することが望ましい。具体的には、単一量子井戸構造[SQW構造]を有していてもよいし、多重量子井戸構造[MQW構造]を有していてもよい。量子井戸構造を有する第3化合物半導体層(活性層)は、井戸層及び障壁層が、少なくとも1層、積層された構造を有するが、(井戸層を構成する化合物半導体,障壁層を構成する化合物半導体)の組合せとして、(InyGa(1-y)N,GaN)、(InyGa(1-y)N,InzGa(1-z)N)[但し、y>z]、(InyGa(1-y)N,AlGaN)を例示することができる。
【0030】
モード同期半導体レーザ素子において、限定するものではないが、第2電極の幅は、0.5μm以上、50μm以下、好ましくは1μm以上、5μm以下、リッジストライプ構造の高さは、0.1μm以上、10μm以下、好ましくは0.2μm以上、1μm以下であることが望ましい。尚、積層構造体の長さ方向をX方向とし、積層構造体の幅方向をY方向とし、積層構造体の厚さ方向をZ方向とする。半導体レーザ素子等にあっては、第2化合物半導体層において、第3化合物半導体層と電子障壁層との間には、ノンドープ化合物半導体層(例えば、ノンドープGaInN層、あるいは、ノンドープAlGaN層)を形成してもよい。更には、第3化合物半導体層とノンドープ化合物半導体層との間に、光ガイド層としてのノンドープGaInN層を形成してもよい。第2化合物半導体層の最上層を、MgドープGaN層(p側コンタクト層)が占めている構造とすることもできる。電子障壁層、ノンドープ化合物半導体層、光ガイド層、p側コンタクト層は第2化合物半導体層を構成する。
【0031】
半導体レーザ素子等にあっては、半導体レーザ素子等を構成する各種のGaN系化合物半導体層を基板や基体に順次形成するが、ここで、基板や基体として、サファイア基板の他にも、GaAs基板、GaN基板、SiC基板、アルミナ基板、ZnS基板、ZnO基板、AlN基板、LiMgO基板、LiGaO2基板、MgAl24基板、InP基板、Si基板、これらの基板の表面(主面)に下地層やバッファ層が形成されたものを挙げることができる。主に、GaN系化合物半導体層を基板に形成する場合、GaN基板が欠陥密度の少なさから好まれるが、GaN基板は成長面によって、極性/無極性/半極性と特性が変わることが知られている。また、半導体レーザ素子等を構成する各種の化合物半導体層(例えば、GaN系化合物半導体層)の形成方法として、有機金属化学的気相成長法(MOCVD法,MOVPE法)や分子線エピタキシー法(MBE法)、ハロゲンが輸送あるいは反応に寄与するハイドライド気相成長法等を挙げることができる。
【0032】
ここで、MOCVD法における有機ガリウム源ガスとして、トリメチルガリウム(TMG)ガスやトリエチルガリウム(TEG)ガスを挙げることができるし、窒素源ガスとして、アンモニアガスやヒドラジンガスを挙げることができる。また、n型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、n型不純物(n型ドーパント)としてケイ素(Si)を添加すればよいし、p型の導電型を有するGaN系化合物半導体層の形成においては、例えば、p型不純物(p型ドーパント)としてマグネシウム(Mg)を添加すればよい。また、GaN系化合物半導体層の構成原子としてアルミニウム(Al)あるいはインジウム(In)が含まれる場合、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)ガスを用いればよいし、In源としてトリメチルインジウム(TMI)ガスを用いればよい。更には、Si源としてモノシランガス(SiH4ガス)を用いればよいし、Mg源としてシクロペンタジエニルマグネシウムガスやメチルシクロペンタジエニルマグネシウム、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いればよい。n型不純物(n型ドーパント)として、Si以外に、Ge、Se、Sn、C、Te、S、O、Pd、Poを挙げることができるし、p型不純物(p型ドーパント)として、Mg以外に、Zn、Cd、Be、Ca、Ba、C、Hg、Srを挙げることができる。
【0033】
本開示のレーザ装置組立体等における好ましいモード同期半導体レーザ素子として、前述したとおり、可飽和吸収領域を有するモード同期半導体レーザ素子を挙げることができる。可飽和吸収領域への逆バイアス電圧Vsaに基づき発振特性を制御することができるので、発振特性の制御が容易である。具体的には、モード同期半導体レーザ素子は、積層構造体の長さ方向(X方向)に沿って発光領域と可飽和吸収領域とを並置したバイ・セクション(Bi Section)型のモード同期半導体レーザ素子から成り、
バイ・セクション型のモード同期半導体レーザ素子は、
(a)第1導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層、GaN系化合物半導体から成る発光領域及び可飽和吸収領域を構成する第3化合物半導体層(活性層)、並びに、第1導電型と異なる第2導電型を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層上に形成された帯状の第2電極、並びに、
(c)第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極、
を備えており、
第2電極は、発光領域を経由して第1電極に直流電流を流すことで順バイアス状態とするための第1部分と、可飽和吸収領域に電界を加えるための第2部分とに、分離溝によって分離されている形態とすることができる。そして、第2電極の第1部分から発光領域を経由して第1電極に直流電流を流して順バイアス状態とし、第1電極と第2電極の第2部分との間に電圧(逆バイアス電圧Vsa)を印加することによって可飽和吸収領域に電界を加えることで、モード同期動作させることができる。第1化合物半導体層は、基板や基体上に形成されている。
【0034】
モード同期半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域の長さは発光領域の長さよりも短い構成とすることができる。あるいは又、第2電極の長さ(第1部分と第2部分の総計の長さ)は第3化合物半導体層(活性層)の長さよりも短い構成とすることができる。尚、「長さ」は、積層構造体の長さ方向(X方向)に沿った長さである。第2電極の第1部分と第2部分の配置状態として、具体的には、
(1)1つの第2電極の第1部分と1つの第2電極の第2部分とが設けられ、第2電極の第1部分と、第2電極の第2部分とが、分離溝を挟んで配置されている状態
(2)1つの第2電極の第1部分と2つの第2電極の第2部分とが設けられ、第1部分の一端が、一方の分離溝を挟んで、一方の第2部分と対向し、第1部分の他端が、他方の分離溝を挟んで、他方の第2部分と対向している状態
(3)2つの第2電極の第1部分と1つの第2電極の第2部分とが設けられ、第2部分の端部が、一方の分離溝を挟んで、一方の第1部分と対向し、第2部分の他端が、他方の分離溝を挟んで、他方の第1部分と対向している状態(即ち、第2電極は、第2部分を第1部分で挟んだ構造)
を挙げることができる。また、広くは、
(4)N個の第2電極の第1部分と(N−1)個の第2電極の第2部分とが設けられ、第2電極の第1部分が第2電極の第2部分を挟んで配置されている状態
(5)N個の第2電極の第2部分と(N−1)個の第2電極の第1部分とが設けられ、第2電極の第2部分が第2電極の第1部分を挟んで配置されている状態
を挙げることができる。(4)及び(5)の状態は、云い換えれば、
(4’)N個の発光領域[キャリア注入領域、利得領域]と(N−1)個の可飽和吸収領域[キャリア非注入領域]とが設けられ、発光領域が可飽和吸収領域を挟んで配置されている状態
(5’)N個の可飽和吸収領域[キャリア非注入領域]と(N−1)個の発光領域[キャリア注入領域、利得領域]とが設けられ、可飽和吸収領域が発光領域を挟んで配置されている状態
である。(3)、(5)、(5’)の構造を採用することで、モード同期半導体レーザ素子の光出射端面における損傷が発生し難くなる。
【0035】
モード同期半導体レーザ素子において、第2電極を第1部分と第2部分とに分離する分離溝の幅は、1μm以上、モード同期半導体レーザ素子における積層構造体の長さ方向(X方向)に沿った長さの50%以下、好ましくは10μm以上、10%以下であることが望ましい。また、リッジストライプ構造の両側面よりも外側に位置する第2化合物半導体層の部分の頂面から第3化合物半導体層(活性層)までの距離dは1.0×10-7m(0.1μm)以上であることが好ましい。距離dをこのように規定することによって、第3化合物半導体層の両脇(Y方向)に可飽和吸収領域を確実に形成することができる。距離dの上限は、閾値電流の上昇、温度特性、長期駆動時の電流上昇率の劣化等に基づき決定すればよい。
【0036】
第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の1×10倍以上、好ましくは1×102倍以上、より好ましくは1×103倍以上であることが望ましい。尚、このようなモード同期半導体レーザ素子を、便宜上、『第1の構成のモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ。あるいは又、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値は、1×102Ω以上、好ましくは1×103Ω以上、より好ましくは1×104Ω以上であることが望ましい。尚、このようなモード同期半導体レーザ素子を、便宜上、『第2の構成のモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ。
【0037】
このような第1の構成あるいは第2の構成のモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2電極の第1部分と第2部分との間の電気抵抗値を、第2電極と第1電極との間の電気抵抗値の10倍以上とし、あるいは又、1×102Ω以上とすることで、第2電極の第1部分から第2部分への漏れ電流の流れを確実に抑制することができる。即ち、可飽和吸収領域(キャリア非注入領域)へ印加する逆バイアス電圧Vsaを高くすることができるため、パルス時間幅のより短いパルス状のレーザ光を有するモード同期動作を実現できる。そして、第2電極の第1部分と第2部分との間のこのような高い電気抵抗値を、第2電極を第1部分と第2部分とに分離溝によって分離するだけで達成することができる。
【0038】
また、第1の構成及び第2の構成のモード同期半導体レーザ素子にあっては、限定するものではないが、
第3化合物半導体層は、井戸層及び障壁層を備えた量子井戸構造を有し、
井戸層の厚さは、1nm以上、10nm以下、好ましくは、1nm以上、8nm以下であり、
障壁層の不純物ドーピング濃度は、2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下、好ましくは、1×1019cm-3以上、1×1020cm-3以下である形態とすることができる。尚、このようなモード同期半導体レーザ素子を、便宜上、『第3の構成のモード同期半導体レーザ素子』と呼ぶ場合がある。活性層に量子井戸構造を採用することで、量子ドット構造を採用するよりも高い注入電流量を実現することができ、容易に高出力を得ることができる。
【0039】
このように、第3化合物半導体層を構成する井戸層の厚さを1nm以上、10nm以下と規定し、更には、第3化合物半導体層を構成する障壁層の不純物ドーピング濃度を2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下と規定することで、即ち、井戸層の厚さを薄くし、しかも、第3化合物半導体層のキャリアの増加を図ることで、ピエゾ分極の影響を低減させることができ、パルス時間幅が短く、サブパルス成分の少ない単峰化されたレーザ光を発生させ得るレーザ光源を得ることができる。また、低い逆バイアス電圧Vsaでモード同期駆動を達成することが可能となるし、外部信号(電気信号及び光信号)と同期が取れたレーザ光のパルス列を発生させることが可能となる。障壁層にドーピングされた不純物はシリコン(Si)である構成することができるが、これに限定するものではなく、その他、酸素(O)とすることもできる。
【0040】
モード同期半導体レーザ素子においては、前述したとおり、第1電極と第2部分との間に逆バイアス電圧Vsaを印加する構成(即ち、第1電極を正極、第2部分を負極とする構成)とすることが望ましい。尚、第2電極の第2部分には、第2電極の第1部分に印加するパルス電流あるいはパルス電圧と同期したパルス電流あるいはパルス電圧を印加してもよいし、直流バイアスを印加してもよい。また、第2電極から発光領域を経由して第1電極に電流を流し、且つ、第2電極から発光領域を経由して第1電極に外部電気信号を重畳させる形態とすることができる。そして、これによって、レーザ光と外部電気信号との間の同期を取ることができる。あるいは又、積層構造体の一端面から光信号を入射させる形態とすることができる。そして、これによっても、レーザ光と光信号との間の同期を取ることができる。
【0041】
モード同期半導体レーザ素子は、バイ・セクション型(2電極型)のモード同期半導体レーザ素子に限定するものではなく、その他、マルチセクション型(多電極型)のモード同期半導体レーザ素子、発光領域と可飽和吸収領域とを垂直方向に配置したSAL(Saturable Absorber Layer)型や、リッジストライプ構造に沿って可飽和吸収領域を設けたWI(Weakly Index guide)型のモード同期半導体レーザ素子を採用することもできる。
【0042】
半導体レーザ素子等において、第2電極は、例えば、パラジウム(Pd)単層、ニッケル(Ni)単層、白金(Pt)単層、酸化インジウム錫(ITO)単層、パラジウム層が第2化合物半導体層に接するパラジウム層/白金層の積層構造、又は、パラジウム層が第2化合物半導体層に接するパラジウム層/ニッケル層の積層構造から構成することができる。尚、下層金属層をパラジウムから構成し、上層金属層をニッケルから構成する場合、上層金属層の厚さを、0.1μm以上、好ましくは0.2μm以上とすることが望ましい。あるいは又、第2電極を、パラジウム(Pd)単層から構成することが好ましく、この場合、厚さを、20nm以上、好ましくは50nm以上とすることが望ましい。あるいは又、第2電極を、パラジウム(Pd)単層、ニッケル(Ni)単層、白金(Pt)単層、又は、下層金属層が第2化合物半導体層に接する下層金属層と上層金属層の積層構造(但し、下層金属層は、パラジウム、ニッケル及び白金から成る群から選択された1種類の金属から構成され、上層金属層は、第2電極に分離溝を形成する際のエッチングレートが、下層金属層のエッチングレートと同じ、あるいは同程度、あるいは、下層金属層のエッチングレートよりも高い金属から構成されている)から構成することが好ましい。曲げ導波路には第2電極は設けられていない。
【0043】
第1導電型をn型とするとき、n型の導電型を有する第1化合物半導体層に電気的に接続された第1電極は、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、タングステン(W)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、錫(Sn)及びインジウム(In)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましく、例えば、Ti/Au、Ti/Al、Ti/Pt/Auを例示することができる。第1電極は第1化合物半導体層に電気的に接続されているが、第1電極が第1化合物半導体層上に形成された形態、第1電極が導電材料層や導電性の基板や基体を介して第1化合物半導体層に接続された形態が包含される。第1電極や第2電極は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等のPVD法にて成膜することができる。
【0044】
第1電極や第2電極上に、外部の電極あるいは回路と電気的に接続するために、パッド電極を設けてもよい。パッド電極は、Ti(チタン)、アルミニウム(Al)、Pt(白金)、Au(金)、Ni(ニッケル)から成る群から選択された少なくとも1種類の金属を含む、単層構成又は多層構成を有することが望ましい。あるいは又、パッド電極を、Ti/Pt/Auの多層構成、Ti/Auの多層構成に例示される多層構成とすることもできる。
【0045】
本開示のレーザ装置組立体等は、前述したとおり、半導体光増幅器(SOA)を備えている。半導体光増幅器は、第1利得部から系外に出射されたレーザ光を増幅する、III−V族窒化物系半導体層の積層構造体、又は、ワイドギャップ半導体層の積層構造体から成る構成とすることが好ましい。第1利得部から出射されたレーザ光は、半導体光増幅器を経由して系外に出射される。半導体光増幅器において、積層構造体は、具体的には、前述したとおり、AlGaInN系化合物半導体から成る構成とすることができる。半導体光増幅器の構成、構造は、第2電極が分割されていない点を除き、実質的に、モード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができるし、あるいは又、第2電極が分割されているモード同期半導体レーザ素子の構成、構造と同様とすることができる。
【0046】
半導体光増幅器の光閉込め係数を3%以下、望ましくは1%以下とすることが望ましいが、そのためには、半導体光増幅器において、
第1化合物半導体層は、基体側から、第1クラッド層及び第1光ガイド層の積層構造を有し、
積層構造体は、第2化合物半導体層、第3化合物半導体層(活性層)、及び、第1光ガイド層の厚さ方向の一部分から構成されたリッジストライプ構造を有し、
第1光ガイド層の厚さをt1、リッジストライプ構造を構成する第1光ガイド層の部分の厚さをt1’としたとき、
6×10-7m<t1
好ましくは、
8×10-7m≦t1
を満足し、
0(m)<t1’≦0.5・t1
好ましくは、
0(m)<t1’≦0.3・t1
を満足する形態とすることが好ましい。尚、このような形態の半導体光増幅器を、便宜上、『第1の構成の半導体光増幅器』と呼ぶ。このように、第1光ガイド層の厚さt1を規定することで、光閉込め係数を低くすることができ、また、光場強度分布のピークが第3化合物半導体層(活性層)から第1光ガイド層へと移動する結果、高出力動作時に第3化合物半導体層付近の光密度を低下させることができ、光学的損傷を防ぐことができるだけでなく、半導体光増幅器において、増幅レーザ光の飽和エネルギーが増大し、高出力化の達成を図ることができる。しかも、リッジストライプ構造を構成する第1光ガイド層の部分の厚さt1’を規定することで、出力される光ビームの単一モード化を達成することができる。また、スラブ導波路の幅と第1光ガイド層の厚さが同程度となる結果、真円に近い光ビーム断面形状を得ることができ、レンズや光ファイバーを用いる応用において集光特性が劣化する等の弊害が生じることが無い。あるいは又、リッジストライプ構造の幅(例えば、半導体光増幅器の光出射側の端部におけるリッジストライプ構造の幅)をWとしたとき、
0.2×W<t1<1.2×W
好ましくは、
0.2×W<t1≦W
の関係を満足することが好ましい。尚、
1≦3×10-6
を満足することが望ましい。第1ガイド層の厚さt1を3×10-6m以下とする結晶成長を行えば、結晶成長表面モホロジーが荒れることが無く、半導体光増幅器から出力されるレーザ光の特性や電気特性が劣化することを防止し得る。
【0047】
尚、第1の構成の半導体光増幅器において、半導体光増幅器は単一モードの光ビームを出力する形態とすることができる。そして、この場合、半導体光増幅器の光出射側の端部から出力された光ビームのリッジストライプ構造の幅方向の寸法をLBX、リッジストライプ構造の厚さ方向の寸法をLBYとしたとき、
0.2≦LBY/LBX≦1.2
好ましくは、
0.2≦LBY/LBX≦1.0
を満足することが望ましい。更には、半導体光増幅器の光出射側の端部において、リッジストライプ構造の厚さ方向に沿った、積層構造体における活性層中心点から、積層構造体から出力される光ビームの中心点までの距離YCCは、
1’≦YCC≦t1
好ましくは、
1’≦YCC≦0.5・t1
を満足することが望ましい。
【0048】
そして、第1の構成の半導体光増幅器において、第1光ガイド層内には、第1光ガイド層を構成する化合物半導体材料の屈折率よりも高い屈折率を有する化合物半導体材料から成る高屈折率層が形成されている構成とすることができる。
【0049】
具体的には、第1の構成の半導体光増幅器におけるこのような構成にあっては、第1光ガイド層を構成する化合物半導体材料の屈折率をnG-1、高屈折率層を構成する化合物半導体材料の屈折率をnHRとしたとき、
0.01≦nHR−nG-1≦0.1
好ましくは、
0.03≦nHR−nG-1≦0.1
を満足する形態とすることができる。尚、第3化合物半導体層(活性層)を構成する化合物半導体材料の平均屈折率をnAcとしたとき、
HR≦nAc
を満足することが好ましい。更には、第2化合物半導体層は、基体側から、第2光ガイド層及び第2クラッド層の積層構造を有し、第1光ガイド層の厚さは、第2光ガイド層の厚さよりも厚い形態とすることができる。
【0050】
あるいは又、前述したとおり、光閉込め係数を3%以下、望ましくは1%以下とすることが望ましいが、そのためには、半導体光増幅器において、
積層構造体は、少なくとも第2化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されたリッジストライプ構造を有し、
第1化合物半導体層は、0.6μmを超える厚さ(厚さの上限値として、例えば、10μmを例示することができる)を有し、
第1化合物半導体層内には、第1化合物半導体層を構成する化合物半導体材料の屈折率よりも高い屈折率を有する化合物半導体材料から成る高屈折率層が形成されている形態とすることができる。尚、このような形態の半導体光増幅器を、便宜上、『第2の構成の半導体光増幅器』と呼ぶ。
【0051】
このように、第2の構成の半導体光増幅器にあっては、第1化合物半導体層は0.6μmを超える厚さを有するので、光閉込め係数を低くすることができ、また、光場強度分布のピークが第3化合物半導体層(活性層)から第1化合物半導体層へと移動する結果、高出力動作時に第3化合物半導体層付近の光密度を低下させることができ、光学的損傷を防ぐことができるだけでなく、半導体光増幅器において、増幅レーザ光の飽和エネルギーが増大し、高出力化の達成を図ることができる。しかも、第1化合物半導体層内には、第1化合物半導体層を構成する化合物半導体材料の屈折率よりも高い屈折率を有する化合物半導体材料から成る高屈折率層が形成されているので、高屈折率層を設けない場合と比較して、より広い範囲で化合物半導体層の厚さ方向の単一モードの条件を満たすことができ、カットオフ条件の緩和が可能となり、単一モードの光ビームを出力することができる。
【0052】
そして、第2の構成の半導体光増幅器において、
第1化合物半導体層は、基体側から、第1クラッド層及び第1光ガイド層の積層構造を有し、
第1光ガイド層は、0.6μmを超える厚さを有し、
高屈折率層は、第1光ガイド層の内部に形成されている形態とすることができる。即ち、このような形態にあっては、第1光ガイド層は、基体側から、第1光ガイド層の第1の部分、高屈折率層、第1光ガイド層の第2の部分が積層された構成を有する。ここで、第1光ガイド層の第1の部分を、便宜上、『第1−A光ガイド層』と呼び、第1光ガイド層の第2の部分を、便宜上、『第1−B光ガイド層』と呼ぶ。
【0053】
そして、この場合、第3化合物半導体層(活性層)と第1光ガイド層との界面(第3化合物半導体層と第1−B光ガイド層との界面)から、第3化合物半導体層側に位置する第1光ガイド層の部分(第1−B光ガイド層)と高屈折率層との界面までの距離(云い換えれば、第1−B光ガイド層の厚さ)は、0.25μm以上であることが望ましい。尚、第1光ガイド層の厚さから高屈折率層の厚さを減じた値の上限値として、5μmを例示することができる。
【0054】
また、第1光ガイド層を構成する化合物半導体材料の屈折率をnG-1、高屈折率層を構成する化合物半導体材料の屈折率をnHRとしたとき、
0<nHR−nG-1≦0.3
好ましくは、
0.02≦nHR−nG-1≦0.2
を満足する形態とすることができる。尚、第3化合物半導体層(活性層)を構成する化合物半導体材料の平均屈折率をnAcとしたとき、
HR≦nAc
を満足することが好ましい。
【0055】
そして、第2の構成の半導体光増幅器において、半導体光増幅器は単一モードの光ビームを出力する形態とすることができる。そして、この場合、半導体光増幅器の光出射側の端部から出力された光ビームのリッジストライプ構造の幅方向の寸法をLBX、リッジストライプ構造の厚さ方向の寸法をLBYとしたとき、
3×100≦LBY/LBX≦1×103
好ましくは、
1×101≦LBY/LBX≦1×102
を満足することが望ましい。更には、半導体光増幅器の光出射側の端部において、リッジストライプ構造の厚さ方向に沿った、積層構造体における活性層中心点から、積層構造体から出力される光ビームの中心点までの距離YCCは、
0m<YCC≦(第1光ガイド層の厚さ)
好ましくは、
0m<YCC≦(第1−B光ガイド層の厚さ)
を満足することが望ましい。更には、第2化合物半導体層は、基体側から、第2光ガイド層及び第2クラッド層の積層構造を有し、第1光ガイド層の厚さは、第2光ガイド層の厚さよりも厚い形態とすることができる。
【0056】
本開示のレーザ装置組立体を、例えば、光ディスクシステム、通信分野、光情報分野、光電子集積回路、非線形光学現象を応用した分野、光スイッチ、レーザ計測分野や種々の分析分野、超高速分光分野、多光子励起分光分野、質量分析分野、多光子吸収を利用した顕微分光の分野、化学反応の量子制御、ナノ3次元加工分野、多光子吸収を応用した種々の加工分野、医療分野、バイオイメージング分野、量子情報通信分野、量子情報処理分野といった分野に適用することができる。
【実施例1】
【0057】
実施例1は、本開示のレーザ装置組立体に関し、具体的には、第1形態のレーザ装置組立体に関する。実施例1のモノリシック型のレーザ装置組立体の模式的な平面図を図1A及び図1Bに示す。また、実施例1のレーザ装置組立体を構成するモード同期半導体レーザ素子の共振器の延びる方向と直角方向に沿った模式的な断面図を図5に示し、共振器の延びる方向に沿った模式的な端面図を図6に示し、パルス選別器の動作タイミングを模式的に図7A及び図7Bに示す。ここで、図1Aは、実施例1のモノリシック型のレーザ装置組立体10Aを構成する要素を明示した図であり、図1Bは、実施例1のモノリシック型のレーザ装置組立体10Bの全体を見渡した図である。
【0058】
ところで、モード同期半導体レーザ素子とリング共振器とを組み合わせて用いる場合、リング共振器の実効的な共振器長lreffは、リング共振器の周回長をIr、リング共振器とモード同期半導体レーザ素子(具体的には、モード同期半導体レーザ素子の直線導波路の部分)との分岐比をκとしたとき、
lreff={(1−κ2)/κ2}Ir
で表すことができる。それ故、κ=0.1程度の場合、リング共振器の物理的な長さよりも大幅に共振器長を長くすることが可能である。κ=0.1、モード同期半導体レーザ素子の直線導波路の部分の長さを1.0mmとしたときの、共振器長(単位:mm)とリング共振器の半径(単位:mm)の関係を図8のグラフに示す。分岐比κは、例えば、結合モード理論に基づき、所望の値とすることができる。また、リング共振器全体の屈折率を制御することで、リング共振器の光学的な長さを変えることができる結果、リング共振器の共振器長を所望の長さとすることもできる。例えば、リング共振器の頂面に形成する第2電極を構成する材料をITO等の透明導電材料とすることで、リング共振器全体の屈折率を制御することができる。
【0059】
実施例1のモノリシック型のレーザ装置組立体10Aは、
第1端部20A及び第2端部20Bを有する第1利得部20、
第3端部30A及び第4端部30Bを有する第2利得部30、
1又は多重の(実施例1においては1つの)リング共振器40、
第1利得部20から出射されたレーザ光を増幅する半導体光増幅器50、及び、
第1利得部20と半導体光増幅器50との間に配設されたパルス選別器60、
を備えており、
リング共振器40は、第1利得部20と光結合しており、且つ、第2利得部30と光結合しており、
第1利得部20及び第2利得部30のいずれか一方においてレーザ発振がなされる。
【0060】
そして、実施例1のレーザ装置組立体にあっては、第1利得部20の第1端部20Aにおける端面20aに形成された第1光反射部(具体的には、第1光反射面)23、及び、第2利得部30の第3端部30Aにおける端面30aに設けられた第2光反射部(具体的には、第2光反射面)33によって、共振器が構成されている。より具体的には、第1光反射部23及び第2光反射部33は、高反射コート層(HR)から成る光反射面から構成されている。また、この共振器においてレーザ発振がなされる。
【0061】
また、パルス選別器60の第1端部60Aと第1利得部20の第2端部20Bとは対向しており、パルス選別器60の第2端部60Bと半導体光増幅器50とは対向している。第2利得部30の第4端部30Bは曲げ導波路36から構成されており、第2利得部30の第4端部30Bからの戻り光の発生を抑制している。パルス選別器60の第1端部60Aと第1利得部20の第2端部20Bとの間には、積層構造体90が残されている。また、パルス選別器60の第2端部60Bと半導体光増幅器50との間にも、積層構造体90が残されている。第1利得部20とリング共振器40との間には空間が存在するし、第2利得部30とリング共振器40との間にも空間が存在する。参照番号91は、リッジ構造以外の積層構造体の領域を指し、この領域は、少なくとも第2化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されている。即ち、この領域は、第1化合物半導体層の厚さ方向の一部分から構成されていてもよいし、第3化合物半導体層(活性層)及び第1化合物半導体層から構成されていてもよいし、第2化合物半導体層の厚さ方向の一部分、第3化合物半導体層(活性層)及び第1化合物半導体層から構成されていてもよい。これらのリッジ構造及びリッジ構造以外の積層構造体の領域91は、例えば、エッチング法に基づき形成することができる。
【0062】
尚、実施例1における第1利得部20において、第1利得部20とパルス選別器60との間の積層構造体90を除去した場合には、パルス選別器60と対向する第1利得部20の第2端部20Bにおける端面(光出射端面)には、無反射コート層(AR)が形成されている。
【0063】
第1利得部20はモード同期半導体レーザ素子20’から成る。モード同期半導体レーザ素子20’の共振器の延びる方向に沿った(即ち、図5の矢印I−Iに沿った)模式的な端面図を図6に示し、モード同期半導体レーザ素子20’の共振器の延びる方向と直角方向に沿った(即ち、図6の矢印II−IIに沿った)模式的な断面図を図5に示す。
【0064】
モード同期半導体レーザ素子20’は、発光領域(利得領域)21及び可飽和吸収領域22を有する。可飽和吸収領域22は、第1利得部20における第1端面20aの側に設けられている。具体的には、モード同期半導体レーザ素子20’は、共振器方向に発光領域21と可飽和吸収領域22とを並置したバイ・セクション型のモード同期半導体レーザ素子から成る。あるいは又、モード同期半導体レーザ素子20’は、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型(実施例においては、n型導電型)を有する第1化合物半導体層230、
GaN系化合物半導体から成る第3化合物半導体層(活性層)240、及び、
GaN系化合物半導体から成り、第1導電型とは異なる第2導電型(実施例においては、p型導電型)を有する第2化合物半導体層250、
が、順次、積層されて成る積層構造体を有する。第1化合物半導体層230は、基体(具体的には、基板221)上に形成されている。
【0065】
より具体的には、発光波長405nm帯のバイ・セクション型のモード同期半導体レーザ素子20’は、図5及び図6に示すように、
(a)第1導電型(具体的には、n型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層230、GaN系化合物半導体から成る発光領域(利得領域)21及び可飽和吸収領域22を構成する第3化合物半導体層(活性層)240、並びに、第1導電型と異なる第2導電型(具体的には、p型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層250が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層250上に形成された帯状の第2電極262、並びに、
(c)第1化合物半導体層230に電気的に接続された第1電極261、
を備えている。尚、モード同期半導体レーザ素子20’は、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造)を有する。
【0066】
そして、実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3において、モード同期半導体レーザ素子20’は、ピークパワーの光密度が1×1010ワット/cm2以上、好ましくは1.4×1010ワット/cm2以上であり、且つ、キャリア密度が1×1019/cm3以上である電流注入型であって受動モード同期、能動モード同期あるいはハイブリッドモード同期のモード同期半導体レーザ素子である。このように、モード同期半導体レーザ素子から出射されるレーザ光のピークパワーの光密度を規定し、しかも、モード同期半導体レーザ素子におけるキャリア密度の値を規定することで、高い光パワー密度及び高いキャリア密度において自己位相変調を発生させ、これに対して適切な群速度分散値を与えることでサブピコ秒台のパルス状のレーザ光を確実に発生させることができる。しかも、このようなサブピコ秒台のパルス状のレーザ光といったパルス時間幅の狭隘化に加えて、モード同期半導体レーザ素子を電流注入型とすることで、光励起型のモード同期半導体レーザ素子に比較してエネルギー効率が高いといった利点を有する。
【0067】
第2電極262は、発光領域(利得領域)21を経由して第1電極261に直流電流を流すことで順バイアス状態とするための第1部分262Aと、可飽和吸収領域22に電界を加えるための第2部分262B(可飽和吸収領域22に逆バイアス電圧Vsaを加えるための第2部分262B)とに、分離溝262Cによって分離されている。ここで、第2電極262の第1部分262Aと第2部分262Bとの間の電気抵抗値(『分離抵抗値』と呼ぶ場合がある)は、第2電極262と第1電極261との間の電気抵抗値の1×10倍以上、具体的には1.5×103倍である。また、第2電極262の第1部分262Aと第2部分262Bとの間の電気抵抗値(分離抵抗値)は、1×102Ω以上、具体的には、1.5×104Ωである。モード同期半導体レーザ素子20’の全長を1.00mm、第2電極262の第1部分262A、第2部分262B、分離溝262Cのそれぞれの長さを、0.96mm、0.03μm、0.01μmとした。また、リッジストライプ構造255の幅を1.4μmとした。
【0068】
また、第1利得部20、第2利得部30、リング共振器40、半導体光増幅器50及びパルス選別器60は、同じ構造を有する化合物半導体層の積層構造体から成り、具体的には、化合物半導体層は窒化物系化合物半導体から成る。更には、
第1利得部20、第2利得部30、リング共振器40、半導体光増幅器50及びパルス選別器60は、基板221の第2面221B上に設けられており、
基板221の第1面221Aには、第1電極261が形成され、
第1利得部20、第2利得部30、リング共振器40、半導体光増幅器50及びパルス選別器60のそれぞれの頂面の少なくとも一部分には、独立した第2電極が設けられている。また、第1利得部20、第2利得部30、リング共振器40、半導体光増幅器50及びパルス選別器60は、リッジ構造を有する。
【0069】
モード同期半導体レーザ素子20’は、具体的には、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造)を有するモード同期半導体レーザ素子である。より具体的には、このインデックスガイド型のAlGaInNから成るGaN系半導体レーザ素子であり、リッジストライプ構造を有する。そして、第1化合物半導体層230、第3化合物半導体層(活性層)240、及び、第2化合物半導体層250は、具体的には、AlGaInN系化合物半導体から成り、より具体的には、以下の表1に示す層構成を有する。ここで、表1において、下方に記載した化合物半導体層ほど、n型GaN基板221に近い層である。第3化合物半導体層240における井戸層を構成する化合物半導体のバンドギャップは3.06eVである。実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3におけるモード同期半導体レーザ素子20’は、n型GaN基板221の(0001)面上に設けられており、第3化合物半導体層240は量子井戸構造を有する。n型GaN基板221の(0001)面は、『C面』とも呼ばれ、極性を有する結晶面である。
【0070】
[表1]
第2化合物半導体層250
p型GaNコンタクト層(Mgドープ)254
p型GaN(Mgドープ)/AlGaN超格子クラッド層253
p型AlGaN電子障壁層(Mgドープ)252
ノンドープGaInN光ガイド層251
第3化合物半導体層240
GaInN量子井戸活性層
(井戸層:Ga0.92In0.08N/障壁層:Ga0.98In0.02N)
第1化合物半導体層230
n型GaNクラッド層232
n型AlGaNクラッド層231
但し、
井戸層(2層) 8nm ノン・ドープ
障壁層(3層) 14nm Siドープ
【0071】
また、p型GaNコンタクト層254及びp型GaN/AlGaN超格子クラッド層253の一部は、RIE法にて除去されており、リッジストライプ構造255が形成されている。リッジストライプ構造255の両側にはSiO2/Siから成る積層絶縁膜256が形成されている。尚、SiO2層が下層であり、Si層が上層である。ここで、リッジストライプ構造255の有効屈折率と積層絶縁膜256の有効屈折率との差は、5×10-3乃至1×10-2、具体的には、7×10-3である。そして、リッジストライプ構造255の頂面に相当するp型GaNコンタクト層254上には、第2電極(p側オーミック電極)262が形成されている。一方、n型GaN基板221の裏面には、Ti/Pt/Auから成る第1電極(n側オーミック電極)261が形成されている。
【0072】
実施例1あるいは後述する実施例2〜実施例3におけるモード同期半導体レーザ素子20’にあっては、第3化合物半導体層240及びその近傍から発生した光密度分布に、Mgドープした化合物半導体層である、p型AlGaN電子障壁層252、p型GaN/AlGaN超格子クラッド層253及びp型GaNコンタクト層254が出来るだけ重ならないようにすることで、内部量子効率が低下しない範囲で、内部損失を抑制している。そして、これにより、レーザ発振が開始される閾値電流密度を低減させている。具体的には、第3化合物半導体層240からp型AlGaN電子障壁層252までの距離dを0.10μm、リッジストライプ構造255の高さを0.30μm、第2電極262と第3化合物半導体層240との間に位置する第2化合物半導体層250の厚さを0.50μm、第2電極262の下方に位置するp型GaN/AlGaN超格子クラッド層253の部分の厚さを0.40μmとした。
【0073】
ここで、図1A図1B、後述する図2A図2B図3及び図4においては、第1利得部20、第2利得部30、リング共振器40、半導体光増幅器50及びパルス選別器60の頂面に形成された第2電極に、明示のために斜線を付している。第1利得部20における第2電極262には第2電極262を外部へ接続するためのパッド部24,25が設けられている。即ち、発光領域(利得領域)21に対してパッド部24が設けられているし、可飽和吸収領域22に対してパッド部25が設けられている。同様に、リング共振器40における第2電極にはこの第2電極を外部へ接続するためのパッド部41が設けられているし、第2利得部30における第2電極にはこの第2電極を外部へ接続するためのパッド部34が設けられているし、パルス選別器60における第2電極にはこの第2電極を外部へ接続するためのパッド部61が設けられている。基板221には、第1利得部20、第2利得部30、リング共振器40、半導体光増幅器50及びパルス選別器60に共通した第1電極(n側オーミック電極)261が設けられている。
【0074】
そして、第1利得部20において生成したレーザ光の一部(κで決まる)が、リング共振器40に光結合され、リング共振器40へと移る。そして、リング共振器40において或る滞在時間を経た後、リング共振器40内のレーザ光の一部(κで決まる)は第2利得部30に光結合され、第2利得部30へと移る。第2利得部30で利得を得たレーザ光の内、リング共振器40に結合しないレーザ光の部分は曲げ導波路36に進むがこの部分には第2電極が形成されないため、利得が得られない。また、曲げ導波路36とすることで、曲げ導波路36から第2利得部30に戻る光を抑制できる。第2利得部30におけるレーザ光は、以上の説明とは逆に、リング共振器40に光結合され、リング共振器40へと移る。そして、リング共振器40において或る滞在時間を経た後、リング共振器40内のレーザ光の一部(κで決まる)は第1利得部20に光結合され、第1利得部20へと移る。こうして、第1光反射部23及び第2光反射部33によって構成された共振器内でレーザ光が発生する。そして、第1利得部20におけるレーザ光の一部が、パルス選別器60を経由して半導体光増幅器50に入射し、半導体光増幅器50において光増幅され、半導体光増幅器50から出射される。
【0075】
リング共振器40には強い波長依存を持たせることが可能であるので、半導体光増幅器50の増幅自然放出光(ASE)のピークよりも短波側で発振するように、リング共振器40のリング長や積層構造体の屈折率を調整する。また、リング共振器40には第2電極を設けてその電流量により利得が得られる構造としてもよいし、透明電流で動作させてパッシブ導波路として機能させてもよい。ここで、「透明電流で動作させる」とは、リング共振器40に第2電極を設けて、リング共振器40内を流れる電流量を調整することで、リング共振器40において利得を得ない状態でリング共振器40を動作させることを意味する。
【0076】
ここで、実施例1のレーザ装置組立体において、パルス選別器60に第2電極を設けることで、パルス選別器60をモード同期半導体レーザ素子20’と独立して駆動することが可能となる。そして、
パルス選別器60は、正バイアス(順バイアス)及び逆バイアスが印加される構造を有し(即ち、第1電極及び第2電極を有し)、
パルス選別器60に正バイアス(順バイアス)が印加されたとき、一種、パルス選別器60は開状態となり、第1利得部20から出射されたレーザ光は半導体光増幅器50に入射し、
パルス選別器60に逆バイアスが印加されたとき、一種、パルス選別器60は閉状態となり、第1利得部20から出射されたレーザ光は、パルス選別器60によって半導体光増幅器50への入射が阻止される。パルス選別器60は、リング共振器40を経由したレーザ光を半導体光増幅器50に入射させる。パルス選別器60を開状態/閉状態とするタイミングは、パッシブモード同期で駆動する場合には、モード同期半導体レーザ素子20’の可飽和吸収領域22を流れる電流をモニターすることで、最適化することができる。
【0077】
また、パルス選別器60は、半導体光増幅器50からの増幅自然放出光や、モード同期半導体レーザ素子20’からの増幅自然放出光をフィルタリングする機能も有し、これによって、モード同期半導体レーザ素子20’への戻り光や、モード同期半導体レーザ素子20’の増幅自然放出光が半導体光増幅器50によって増幅されることを抑制することができる。
【0078】
ここで、パルス選別器60を図7Aに示すように駆動することで、ノイズ光を抑制することができる。加えて、パルス選別器60に逆バイアスを印加する時間を増やすことで、図7Bに示すように、レーザ光パルスを間引くことが可能になる。レーザ装置組立体の応用分野によっては全てのレーザ光パルスを用いると発熱による異常等が発生する可能性があるが、レーザ光パルスを間引くことで、実質的なレーザ光パルスの繰返し周波数を基本周波数よりも低くすることが可能になる。尚、レーザ光パルスの繰返し周波数が1GHz以下であることが好ましい。
【0079】
実施例1のレーザ装置組立体は、1又は多重のリング共振器を備えているが故に、レーザ光パルスの繰返し周波数を半導体光増幅器に合わせて最適化することができる。しかも、パルス選別器を備えているので、所望の波長を有するパルス光を半導体光増幅器に入射させることができる。そして、以上の結果として、ピークパワーの高いレーザ光パルス光源を小型化することができ、高出力化と小型化が両立されたモノリシック型のレーザ装置組立体を提供することができる。また、戻り光に起因したノイズ等が増加することの無いレーザ光パルス光源を提供することができるし、レーザ光パルスの繰返し周波数を所望の値に制御することができる。
【実施例2】
【0080】
実施例2は、実施例1の変形であるが、第2形態のレーザ装置組立体に関する。実施例2のモノリシック型のレーザ装置組立体10Bの模式的な平面図を図2A及び図2Bに示す。ここで、図2Aは、実施例2のモノリシック型のレーザ装置組立体10Bを構成する要素を明示した図であり、図2Bは、実施例2のモノリシック型のレーザ装置組立体10Bの全体を見渡した図である。
【0081】
実施例2のレーザ装置組立体にあっては、第1利得部20の第2端部20Bとパルス選別器60との間には、光結合器70が配されている。第1利得部20の第2端部20Bと光結合器70とは光結合している。光結合器70の一端部はパルス選別器60(具体的には、パルス選別器60の第1端部60A)と対向しており、光結合器70の他端部は曲げ導波路76から構成されている。また、第1利得部20の第2端部20Bの先端は曲げ導波路26から構成されており、これによって、第1利得部20の第2端部20Bからの戻り光の発生を抑制することができる。第2利得部30の第4端部30Bは曲げ導波路36から構成されている。
【0082】
光結合器70の一端部とパルス選別器60(具体的には、パルス選別器60の第1端部60A)との間には、積層構造体90が残されている。また、パルス選別器60の第2端部60Bと半導体光増幅器50との間にも、積層構造体90が残されている。第1利得部20と光結合器70との間には空間が存在するし、第1利得部20とリング共振器40との間には空間が存在するし、第2利得部30とリング共振器40との間にも空間が存在する。
【0083】
光結合器70は、モード同期半導体レーザ素子20’を構成する積層構造体と同じ構造を有する化合物半導体層の積層構造体から成る。光結合器70は、基板221の第2面221B上に設けられている。光結合器70の頂面には、独立した第2電極が設けられており、第2電極を外部へ接続するためのパッド部71が設けられている。このように、光結合器70を配することで、半導体光増幅器50において発生した増幅自然放出光がモード同期半導体レーザ素子20’に戻らなくなり、更なる戻り光の抑制が可能となる。
【実施例3】
【0084】
実施例3は、実施例1の変形であるが、第3形態のレーザ装置組立体に関する。実施例3のモノリシック型のレーザ装置組立体10Cの模式的な平面図を図3及び図4に示す。ここで、図3は、実施例3のモノリシック型のレーザ装置組立体10Cを構成する要素を明示した図であり、図4は、実施例3のモノリシック型のレーザ装置組立体10Cの全体を見渡した図である。
【0085】
実施例3のレーザ装置組立体にあっては、第1利得部120の第2端部120Bに形成された光半透過部128、及び、第2利得部130の第3端部130Aにおける端面に設けられた光反射部133によって、共振器が構成されており、この共振器においてレーザ発振がなされる。第1利得部120に形成された光半透過部128とパルス選別器60(具体的には、パルス選別器60の第1端部60A)とは対向している。第1利得部120の第1端部120Aは曲げ導波路127から構成されており、これによって、第1利得部120の第1端部120Aからの戻り光の発生を抑制することができるし、反対周り(図3に示す例では反時計回り)を周回する共振モードを抑制することができる。第1利得部120は、実施例1において説明した第2利得部30同じ構成、構造を有する。但し、第2光反射部(具体的には、第2光反射面)33を有する代わりに、光半透過部128を有する点が異なる。第2利得部130の第4端部130Bは曲げ導波路136から構成されている。光半透過部128は、分布ブラッグ反射鏡層から構成されている。第2利得部130を構成するモード同期半導体レーザ素子130’は、実質的に、実施例1において説明したモード同期半導体レーザ素子20’と同じ構成、構造を有する。即ち、第2利得部130は、
(a)第1導電型(具体的には、n型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第1化合物半導体層230、GaN系化合物半導体から成る発光領域(利得領域)131及び可飽和吸収領域132を構成する第3化合物半導体層(活性層)240、並びに、第1導電型と異なる第2導電型(具体的には、p型導電型)を有し、GaN系化合物半導体から成る第2化合物半導体層250が、順次、積層されて成る積層構造体、
(b)第2化合物半導体層250上に形成された帯状の第2電極262、並びに、
(c)第1化合物半導体層230に電気的に接続された第1電極261、
を備えている。尚、モード同期半導体レーザ素子130’から成る第2利得部130は、リッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造(SCH構造)を有する。第2利得部130における第2電極262には第2電極262を外部へ接続するためのパッド部134,135が設けられている。即ち、発光領域(利得領域)131に対してパッド部134が設けられているし、可飽和吸収領域132に対してパッド部135が設けられている。
【0086】
実施例3にあっては、2つのリング共振器40,42が配設されている。リング共振器42における第2電極にはこの第2電極を外部へ接続するためのパッド部43が設けられている。2つのリング共振器40,42の間には、これらのリング共振器40,42と光結合した第3利得部180が配設されている。第3利得部180の一端部及び他端部には、曲げ導波路186,187が配されている。第3利得部180の頂面には、独立した第2電極が設けられており、この第2電極を外部へ接続するためのパッド部184が設けられている。尚、リング共振器の数は2に限定するものではない。また、実施例1あるいは実施例2においても、複数のリング共振器40,42、第3利得部180を配設することができる。
【0087】
光半透過部128とパルス選別器60(具体的には、パルス選別器60の第1端部60A)との間には、積層構造体90が残されている。また、パルス選別器60の第2端部60Bと半導体光増幅器50との間にも、積層構造体90が残されている。第1利得部120とリング共振器40との間には空間が存在するし、リング共振器40と第3利得部180との間、第3利得部180とリング共振器42との間、リング共振器42と第2利得部130との間にも空間が存在する。
【0088】
以上、本開示を好ましい実施例に基づき説明したが、本開示はこれらの実施例に限定するものではない。実施例において説明したレーザ装置組立体、モード同期半導体レーザ素子、半導体光増幅器の構成、構造の構成は例示であり、適宜、変更することができる。また、実施例においては、種々の値を示したが、これらも例示であり、例えば、使用するモード同期半導体レーザ素子、半導体光増幅器の仕様が変われば、変わることは当然である。例えば、モード同期半導体レーザ素子や半導体光増幅器の軸線とリッジストライプ構造の軸線とは、所定の角度で交わっている構成としてもよいし、リッジストライプ構造の平面形状をテーパー状としてもよい。
【0089】
発光領域21,131や可飽和吸収領域22,132の数は1に限定されない。1つの第2電極の第1部分262Aと2つの第2電極の第2部分262B1,262B2とが設けられたモード同期半導体レーザ素子(マルチセクション型(多電極型)のモード同期半導体レーザ素子)の模式的な端面図を図9及び図10に示す。図9に示すモード同期半導体レーザ素子にあっては、第1部分262Aの一端が、一方の分離溝262C1を挟んで、一方の第2部分262B1と対向し、第1部分262Aの他端が、他方の分離溝262C2を挟んで、他方の第2部分262B2と対向している。そして、1つの発光領域21,131が、2つの可飽和吸収領域221,1322によって挟まれている。あるいは又、2つの第2電極の第1部分262A1,262A2と1つの第2電極の第2部分262Bとが設けられたモード同期半導体レーザ素子の模式的な端面図を図10に示す。このモード同期半導体レーザ素子にあっては、第2部分262Bの端部が、一方の分離溝262C1を挟んで、一方の第1部分262A1と対向し、第2部分262Bの他端が、他方の分離溝262C2を挟んで、他方の第1部分262A2と対向している。そして、1つの可飽和吸収領域22,132が、2つの発光領域211,1311,212,1312によって挟まれている。
【0090】
モード同期半導体レーザ素子を、斜め導波路を有する斜めリッジストライプ型の分離閉じ込めヘテロ構造のモード同期半導体レーザ素子とすることもできる。このようなモード同期半導体レーザ素子におけるリッジストライプ構造を上方から眺めた模式図を図11に示す。このモード同期半導体レーザ素子にあっては、直線状の2つのリッジストライプ構造が組み合わされた構造を有し、2つのリッジストライプ構造の交差する角度θの値は、例えば、
0<θ≦10(度)
好ましくは、
0<θ≦6(度)
とすることが望ましい。
【0091】
実施例においては、モード同期半導体レーザ素子や半導体光増幅器を、n型GaN基板の極性面であるC面,{0001}面上に設けたが、代替的に、{11−20}面であるA面、{1−100}面であるM面、{1−102}面といった無極性面上、あるいは又、{11−24}面や{11−22}面を含む{11−2n}面、{10−11}面、{10−12}面といった半極性面上に、モード同期半導体レーザ素子や半導体光増幅器を設けてもよく、これによって、モード同期半導体レーザ素子や半導体光増幅器の第3化合物半導体層(活性層)にたとえピエゾ分極及び自発分極が生じた場合であっても、第3化合物半導体層の厚さ方向にピエゾ分極が生じることは無く、第3化合物半導体層の厚さ方向とは略直角の方向にピエゾ分極が生じるので、ピエゾ分極及び自発分極に起因した悪影響を排除することができる。{11−2n}面とは、ほぼC面に対して40度を成す無極性面を意味する。また、無極性面上あるいは半極性面上にモード同期半導体レーザ素子を設ける場合、井戸層の厚さの制限(1nm以上、10nm以下)及び障壁層の不純物ドーピング濃度の制限(2×1018cm-3以上、1×1020cm-3以下)を無くすことが可能である。
【0092】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《レーザ装置組立体》
第1端部及び第2端部を有する第1利得部、
第3端部及び第4端部を有する第2利得部、
1又は多重のリング共振器、
第1利得部から出射されたレーザ光を増幅する半導体光増幅器、及び、
第1利得部と半導体光増幅器との間に配設されたパルス選別器、
を備えており、
リング共振器は、第1利得部と光結合しており、且つ、第2利得部と光結合しており、
第1利得部及び第2利得部のいずれか一方においてレーザ発振がなされるモノリシック型のレーザ装置組立体。
[A02]第1利得部の第1端部における端面に形成された第1光反射部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた第2光反射部によって、共振器が構成されており、
該共振器においてレーザ発振がなされる[A01]に記載のレーザ装置組立体。
[A03]《第1形態のレーザ装置組立体》
パルス選別器の第1端部と第1利得部の第2端部とは対向しており、
パルス選別器の第2端部と半導体光増幅器とは対向している[A02]に記載のレーザ装置組立体。
[A04]第2利得部の第4端部は、曲げ導波路から構成されている[A02]又は[A03]に記載のレーザ装置組立体。
[A05]《第2形態のレーザ装置組立体》
第1利得部の第2端部とパルス選別器との間に、光結合器が配されている[A02]に記載のレーザ装置組立体。
[A06]光結合器の一端部は、パルス選別器と対向しており、
光結合器の他端部は、曲げ導波路から構成されている[A05]に記載のレーザ装置組立体。
[A07]第1利得部の第2端部は、曲げ導波路から構成されている[A05]又は[A06]に記載のレーザ装置組立体。
[A08]第2利得部の第4端部は、曲げ導波路から構成されている[A05]乃至[A07]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
[A09]《第3形態のレーザ装置組立体》
第1利得部の第2端部に形成された光半透過部、及び、第2利得部の第3端部における端面に設けられた光反射部によって、共振器が構成されており、
該共振器においてレーザ発振がなされる[A01]に記載のレーザ装置組立体。
[A10]第1利得部に形成された光半透過部とパルス選別器とは対向している[A09]に記載のレーザ装置組立体。
[A11]第1利得部の第1端部は、曲げ導波路から構成されている[A09]又は[A10]に記載のレーザ装置組立体。
[A12]第2利得部の第4端部は、曲げ導波路から構成されている[A09]乃至[A11]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
[A13]第1利得部は、モード同期半導体レーザ素子から成る[A02]乃至[A08]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
[A14]第2利得部は、モード同期半導体レーザ素子から成る[A09]乃至[A12]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
[A15]パルス選別器は、正バイアス及び逆バイアスが印加される構造を有し、
パルス選別器に正バイアスが印加されたとき、第1利得部から出射されたレーザ光は半導体光増幅器に入射し、
パルス選別器に逆バイアスが印加されたとき、第1利得部から出射されたレーザ光は、パルス選別器によって半導体光増幅器への入射が阻止される[A01]乃至[A14]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
[A16]パルス選別器は、リング共振器を経由したレーザ光を半導体光増幅器に入射させる[A15]に記載のレーザ装置組立体。
[A17]第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器は、同じ構造を有する化合物半導体層の積層構造体から成る[A01]乃至[A16]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
[A18]化合物半導体層は窒化物系化合物半導体から成る[A17]に記載のレーザ装置組立体。
[A19]第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器は、基板の第2面上に設けられており、
基板の第1面には、第1電極が形成され、
第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器のそれぞれの頂面の少なくとも一部分には、独立した第2電極が設けられている[A17]又は[A18]に記載のレーザ装置組立体。
[A20]第1利得部、第2利得部、リング共振器、半導体光増幅器及びパルス選別器は、リッジ構造を有する[A01]乃至[A19]のいずれか1項に記載のレーザ装置組立体。
【符号の説明】
【0093】
10A,10B,10C・・・モノリシック型のレーザ装置組立体、20,120・・・第1利得部、20’,130’・・・モード同期半導体レーザ素子、20A,120A・・・第1利得部の第1端部、20B,120B・・・第1利得部の第2端部、20a・・・第1利得部の第1端部における端面、21,131・・・発光領域(利得領域)、22,132・・・可飽和吸収領域、23,133・・・第1光反射部(第1光反射面)、24,25,34,35,41,43,61,71,84,134,135・・・パッド部、26,27,36,76,86,87,127,136・・・曲げ導波路、128・・・光半透過部、30,130・・・第2利得部、30A,130A・・・第2利得部の第3端部、30a,130B・・・第2利得部の第3端部における端面、30B・・・第2利得部の第4他端部、33・・・第2光反射部(第2光反射面)又は光反射部(光反射面)、40,42・・・リング共振器、50・・・半導体光増幅器、60・・・パルス選別器、60A・・・パルス選別器の第1端部、60B・・・パルス選別器の第2端部、70・・・光結合器、80・・・第3利得部、90・・・積層構造体、91・・・リッジ構造以外の積層構造体の領域、221・・・基板、221A・・・基板の第1面、221B・・・基板の第2面、230・・・第1化合物半導体層、231・・・n型AlGaNクラッド層、232・・・n型GaNクラッド層、240・・・第3化合物半導体層(活性層)、250・・・第2化合物半導体層、251・・・ノンドープGaInN光ガイド層、252・・・p型AlGaN電子障壁層(Mgドープ)、253・・・p型GaN(Mgドープ)/AlGaN超格子クラッド層、254・・・p型GaNコンタクト層(Mgドープ)、255・・・リッジストライプ構造、261・・・第1電極、262・・・第2電極、262A・・・第2電極の第1部分、262B・・・第2電極の第2部分、262C・・・分離溝
図1
図2
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図6
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図9
図10
図11