特許第6973481号(P6973481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000002
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000003
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000004
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000005
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000006
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000007
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000008
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000009
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000010
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000011
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000012
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000013
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000014
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000015
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000016
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000017
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000018
  • 特許6973481-抜枠造型機 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973481
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】抜枠造型機
(51)【国際特許分類】
   B22C 15/272 20060101AFI20211118BHJP
   B22C 15/24 20060101ALI20211118BHJP
   B22C 15/28 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B22C15/272
   B22C15/24 B
   B22C15/24 Z
   B22C15/28
【請求項の数】22
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-517561(P2019-517561)
(86)(22)【出願日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】JP2018017056
(87)【国際公開番号】WO2018207646
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2020年4月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-95852(P2017-95852)
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】寺部 斗紀也
(72)【発明者】
【氏名】坂口 功一
(72)【発明者】
【氏名】波多野 豊
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−216902(JP,A)
【文献】 実公平02−014833(JP,Y2)
【文献】 特開2001−018035(JP,A)
【文献】 特開昭52−32820(JP,A)
【文献】 実開昭61−138451(JP,U)
【文献】 実開昭56−60561(JP,U)
【文献】 実開昭56−60560(JP,U)
【文献】 国際公開第2003/13762(WO,A1)
【文献】 特開平4−84647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 15/272
B22C 15/24
B22C 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無鋳枠の上鋳型及び下鋳型を造型する抜枠造型機であって、
上鋳枠と、
前記上鋳枠の下方に配置され、前記上鋳枠とともにマッチプレートを狭持可能な下鋳枠と、
前記上鋳枠の上方に配置され、圧縮空気源に接続され、その下端部が開口され、その内部に鋳型砂を貯留する上サンドタンクと、
前記上サンドタンクの下端部に取り付けられ、前記上サンドタンクから前記上鋳枠内へ連通する少なくとも1つの供給口が形成された上プレートと、
圧縮空気源に接続され、その内部に鋳型砂を貯留し、貯留した鋳型砂を排出する第1接続口を有する第1下サンドタンクと、
前記下鋳枠の下方に配置され、その上端部が開口され、前記第1下サンドタンクの第1接続口に接続可能な第2接続口を有し、前記第1下サンドタンクから供給され前記下鋳枠内へ供給される鋳型砂を貯留する第2下サンドタンクと、
前記第2下サンドタンクの上端部に取り付けられ、前記第2下サンドタンクから前記下鋳枠内へ連通する少なくとも1つの供給口が形成された下プレートと、
前記上サンドタンク、前記第1下サンドタンク及び前記第2下サンドタンクのうちの少なくとも1つのタンクの圧力を検出する少なくとも1つの圧力検出器と、
前記圧力検出器に接続され、前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を取得し、前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を表示部に表示させる制御部と、
を備え
前記上サンドタンク、前記第1下サンドタンク及び前記第2下サンドタンクそれぞれは、前記鋳型砂を貯留する貯留室と、前記貯留室に連通するとともに圧縮空気源に接続された少なくとも1つの供給室とを有し、
前記少なくとも1つの圧力検出器は、前記少なくとも1つの供給室の圧力を検出す抜枠造型機。
【請求項2】
前記第2下サンドタンクを上下方向に移動させて、前記上プレート及び前記下プレートでスクイズを行う駆動部と、
前記第1下サンドタンクを上下方向に移動させる調整駆動部と、
を備える請求項1に記載の抜枠造型機。
【請求項3】
前記上サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室は、前記上サンドタンクの前記貯留室の側方に設けられ、
前記少なくとも1つの圧力検出器は、前記上サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室の圧力を検出する、請求項1又は2に記載の抜枠造型機。
【請求項4】
前記上サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室は、前記上サンドタンクの中央よりも上端側に位置する第1供給室と、前記上サンドタンクの中央よりも下端側に位置する第2供給室とを含み、
前記少なくとも1つの圧力検出器は、前記第1供給室の圧力を検出する第1圧力検出器と、前記第2供給室の圧力を検出する第2圧力検出器とを含む、請求項3に記載の抜枠造型機。
【請求項5】
前記上サンドタンクの貯留室は、その内面に圧縮空気が流通可能な複数の孔を有する第1透過部材を有し、
前記上サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室は、前記第1透過部材を介して前記上サンドタンクの貯留室と連通する、請求項3又は4に記載の抜枠造型機。
【請求項6】
前記第1下サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室は、前記第1下サンドタンクの前記貯留室の側方に設けられ
前記少なくとも1つの圧力検出器は、前記第1下サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室の圧力を検出する、請求項1〜5の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【請求項7】
前記第1下サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室は、前記第1下サンドタンクの中央に位置する第3供給室と、前記第1下サンドタンクの中央よりも上端側に位置する第4供給室と、前記第1下サンドタンクの中央よりも下端側に位置する第5供給室と、を含み、
前記少なくとも1つの圧力検出器は、前記第3供給室の圧力を検出する第3圧力検出器と、前記第4供給室の圧力を検出する第4圧力検出器と、前記第5供給室の圧力を検出する第5圧力検出器と、を含む、請求項6に記載の抜枠造型機。
【請求項8】
前記第1下サンドタンクの前記貯留室は、その内面に圧縮空気が流通可能な複数の孔を有する第2透過部材を有し、
前記第3供給室及び前記第4供給室は、前記第2透過部材を介して前記第1下サンドタンクの前記貯留室と連通する、請求項7に記載の抜枠造型機。
【請求項9】
前記第5供給室は、前記第1下サンドタンクの屈曲した下端部に設けられ、複数のベントホールを介して前記第1下サンドタンクの前記貯留室と連通する、請求項7又は8に記載の抜枠造型機。
【請求項10】
前記第2下サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室は、前記第2下サンドタンクの前記貯留室の底部に設けられ、、
前記少なくとも1つの圧力検出器は、前記第2下サンドタンクの前記少なくとも1つの供給室の圧力を検出する、請求項1〜9の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【請求項11】
前記第2下サンドタンクの少なくとも1つの供給室は、複数のベントホールを介して前記第2下サンドタンクの前記貯留室と連通する、請求項10に記載の抜枠造型機。
【請求項12】
前記制御部は、前記検出結果として圧力と時間との関係を示すグラフを前記表示部に表示させる、請求項1に記載の抜枠造型機。
【請求項13】
前記制御部は、エアレーション設定圧力と時間とを設定するための設定画面を前記表示部に表示させる、請求項1又は1に記載の抜枠造型機。
【請求項14】
前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された検出結果と、検出された今回の検出結果とを、比較可能な態様で前記表示部に表示させる、請求項1,12及び13の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【請求項15】
前記制御部は、前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を、通信ネットワークを介して送信する通信部を有する、請求項1〜14の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【請求項16】
前記制御部は、前記上サンドタンクの前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で前記表示部に表示させる、請求項5に記載の抜枠造型機。
【請求項17】
前記制御部は、前記第3圧力検出器又は前記第4圧力検出器により検出された圧力と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で前記表示部に表示させる、請求項8に記載の抜枠造型機。
【請求項18】
前記上サンドタンク、前記第1下サンドタンク及び前記第2下サンドタンクそれぞれと、圧縮空気源との間には、制御信号に応じて開閉可能な少なくとも1つの制御弁が設けられ、
前記制御部は、前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果に基づいて前記少なくとも1つの制御弁に前記制御信号を出力する、請求項1〜1の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【請求項19】
前記制御部は、前記上サンドタンク、前記第1下サンドタンク及び前記第2下サンドタンクを排気する際に、前記少なくとも1つの圧力検出器の検出結果に基づいて前記少なくとも1つの制御弁が開となるように前記制御信号を出力する、請求項1に記載の抜枠造型機。
【請求項20】
前記制御部は、前記上サンドタンク、前記第1下サンドタンク及び前記第2下サンドタンクを排気する際に、前記少なくとも1つの圧力検出器により検出された圧力が所定の閾値以下とならない場合には警報情報を出力する、請求項18又は19に記載の抜枠造型機。
【請求項21】
前記上サンドタンクに対応する前記制御弁は、前記上サンドタンクの側方に配置され、
前記第1下サンドタンクに対応する前記制御弁は、前記第1下サンドタンクの側方に配置される、請求項19〜2の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【請求項22】
前記制御部は、エアレーション処理時において、所定のエアレーション時間内に前記圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達しない場合には、前記エアレーション時間を延長し、延長した後において前記少なくとも1つの圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達しない場合には、警報情報を出力する、請求項1〜2の何れか一項に記載の抜枠造型機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抜枠造型機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、鋳枠を有しない無枠式の鋳型を造型する抜枠造型機を開示する。この造型機は、模型が設置されるマッチプレートを狭持する一組の上鋳枠及び下鋳枠と、鋳型砂を供給する供給機構と、鋳型砂を圧縮するスクイズ機構とを備える。造型機は、下鋳枠を上鋳枠へ近づけ、上鋳枠及び下鋳枠でマッチプレートを挟み込ませる。この状態で、造型機は、供給機構を動作させることにより、上鋳枠及び下鋳枠により形成された上下の造型空間へ鋳型砂を供給させる。造型機は、スクイズ機構を動作させることにより、上下の造型空間の鋳型砂を圧縮させる。上記工程を経て、上鋳型及び下鋳型が同時に造型される。
【0003】
この造型機の供給機構は、圧縮空気を用いて上下の造型空間に鋳型砂を供給する。供給機構は、圧縮空気源に連通し、鋳型砂を貯留する上サンドタンクと、上鋳枠の上部に配置され、上サンドタンクに静的に接続された上ブローヘッドとを有する。圧縮空気源から吹き込まれた圧縮空気は、上サンドタンクに貯留された鋳型砂を上ブローヘッドへ供給し、上ブローヘッドの鋳型砂を上鋳枠により画成された上造型空間へ供給する。同様に、供給機構は、圧縮空気源に連通し、鋳型砂を貯留する下サンドタンクと、下鋳枠の下部に配置され、上下に移動し、所定位置で下サンドタンクに接続される下ブローヘッドとを有する。圧縮空気源から吹き込まれた圧縮空気は、下サンドタンクに貯留された鋳型砂を下ブローヘッドへ供給し、下ブローヘッドの鋳型砂を下鋳枠へ供給する。
【0004】
この抜枠造型機のスクイズ機構は、上下に向き合った上スクイズシリンダ及び下スクイズシリンダを備える。上スクイズシリンダが上造型空間の鋳型砂に下向きの圧力を加え、下スクイズシリンダが下造型空間の鋳型砂に上向きの圧力を加える。これにより、鋳型砂の硬度が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−51930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の抜枠造型機のように、圧縮空気を用いて造型空間に鋳型砂を供給する装置では、サンドタンク内で砂詰まりが発生するおそれがある。しかしながら、特許文献1記載の抜枠造型機は、サンドタンク内の状況を把握することができない。このような砂詰まりは、鋳型の造型性や鋳物製品の品質に影響を与える。本技術分野では、優れた鋳型又は鋳物製品を造型する抜枠造型機が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面に係る抜枠造型機は、無鋳枠の上鋳型及び下鋳型を造型する抜枠造型機であって、上鋳枠と、上鋳枠の下方に配置され、上鋳枠とともにマッチプレートを狭持可能な下鋳枠と、上鋳枠の上方に配置され、圧縮空気源に接続され、その下端部が開口され、その内部に鋳型砂を貯留する上サンドタンクと、上サンドタンクの下端部に取り付けられ、上サンドタンクから上鋳枠内へ連通する少なくとも1つの供給口が形成された上プレートと、圧縮空気源に接続され、その内部に鋳型砂を貯留し、貯留した鋳型砂を排出する第1接続口を有する第1下サンドタンクと、下鋳枠の下方に配置され、その上端部が開口され、第1下サンドタンクの第1接続口に接続可能な第2接続口を有し、第1下サンドタンクから供給され下鋳枠内へ供給される鋳型砂を貯留する第2下サンドタンクと、第2下サンドタンクの上端部に取り付けられ、第2下サンドタンクから下鋳枠内へ連通する少なくとも1つの供給口が形成された下プレートと、上サンドタンク、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクのうちの少なくとも1つのタンクの圧力を検出する少なくとも1つの圧力検出器と、圧力検出器に接続され、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を取得する制御部と、を備える。
【0008】
この抜枠造型機では、上サンドタンク、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクのうちの少なくとも1つのタンクの圧力が少なくとも1つの圧力検出器により検出される。そして、制御部により、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果が取得される。このように、タンク内の圧力が取得されることによりサンドタンク内の状況が把握されるため、この装置によれば、結果として優れた鋳型及び鋳物製品を得ることができる。
【0009】
一実施形態において、抜枠造型機は、第2下サンドタンクを上下方向に移動させて、上プレート及び下プレートでスクイズを行う駆動部と、第1下サンドタンクを上下方向に移動させる調整駆動部と、を備えてもよい。このように構成した場合、第2下サンドタンクが上下方向に移動することによってスクイズ処理が行われる装置において、サンドタンク内の状況が把握される。
【0010】
一実施形態において、上サンドタンクは、鋳型砂を貯留する貯留室と、貯留室の側方に設けられ、圧縮空気源に接続された少なくとも1つの供給室とを有してもよい。そして、少なくとも1つの圧力検出器は、上サンドタンクの少なくとも1つの供給室の圧力を検出してもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力検出器の配置のために、圧縮空気を供給するための供給室を利用することができる。
【0011】
一実施形態において、上サンドタンクの少なくとも1つの供給室は、上サンドタンクの中央よりも上端側に位置する第1供給室と、上サンドタンクの中央よりも下端側に位置する第2供給室とを含んでもよい。そして、少なくとも1つの圧力検出器は、第1供給室の圧力を検出する第1圧力検出器と、第2供給室の圧力を検出する第2圧力検出器とを含んでもよい。このように構成した場合、上サンドタンクの上下の圧力、つまり上サンドタンクの全体の圧力が検出される。このため、この装置は、上サンドタンクの検出位置に依存した圧力偏差を把握することができる。
【0012】
一実施形態において、上サンドタンクの貯留室は、その内面に圧縮空気が流通可能な複数の孔を有する第1透過部材を有してもよい。そして、上サンドタンクの少なくとも1つの供給室は、第1透過部材を介して上サンドタンクの貯留室と連通してもよい。このように構成した場合、この装置は、第1透過部材の目詰まりを検出することができる。
【0013】
一実施形態において、第1下サンドタンクは、鋳型砂を貯留する貯留室と、貯留室の側方に設けられ、圧縮空気源に接続された少なくとも1つの供給室とを有してもよい。そして、少なくとも1つの圧力検出器は、第1下サンドタンクの少なくとも1つの供給室の圧力を検出してもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力検出器の配置のために、圧縮空気を供給するための供給室を利用することができる。
【0014】
一実施形態において、第1下サンドタンクの少なくとも1つの供給室は、第1下サンドタンクの中央に位置する第3供給室と、第1下サンドタンクの中央よりも上端側に位置する第4供給室と、第1下サンドタンクの中央よりも下端側に位置する第5供給室と、を含んでもよい。そして、少なくとも1つの圧力検出器は、第3供給室の圧力を検出する第3圧力検出器と、第4供給室の圧力を検出する第4圧力検出器と、第5供給室の圧力を検出する第5圧力検出器と、を含んでもよい。このように構成した場合、第1下サンドタンクの上下の圧力、つまり第1下サンドタンクの全体の圧力が検出される。このため、この装置は、第1下サンドタンクの検出位置に依存した圧力偏差を把握することができる。
【0015】
一実施形態において、第1下サンドタンクの貯留室は、その内面に圧縮空気が流通可能な複数の孔を有する第2透過部材を有してもよい。そして、第3供給室及び第4供給室は、第2透過部材を介して第1下サンドタンクの貯留室と連通してもよい。このように構成した場合、この装置は、第2透過部材の目詰まりを検出することができる。
【0016】
一実施形態において、第5供給室は、第1下サンドタンクの屈曲した下端部に設けられ、複数のベントホールを介して第1下サンドタンクの貯留室と連通してもよい。このように構成した場合、この装置は、透過部材の目詰まりが発生しやすい傾向にある第1下サンドタンクの下端部において、圧力を検出することができる。また、第1下サンドタンクの屈曲した下端部においては、その形状が故に、貯留室内に配置される透過部材の摩耗が他の配置位置に比べて大きくなる傾向にある。この装置は、第1下サンドタンクの屈曲した下端部の貯留室内においては、透過部材の代わりに複数のベントホールを用いる。このため、この装置は、第1下サンドタンクの屈曲した下端部において、透過部材の目詰まりの発生を回避することができる。
【0017】
一実施形態において、第2下サンドタンクは、鋳型砂を貯留する貯留室と、貯留室の底部に設けられ、圧縮空気源に接続された少なくとも1つの供給室とを有してもよい。そして、少なくとも1つの圧力検出器は、第2下サンドタンクの少なくとも1つの供給室の圧力を検出してもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力検出器の配置のために、圧縮空気を供給するための供給室を利用することができる。
【0018】
一実施形態において、第2下サンドタンクの少なくとも1つの供給室は、複数のベントホールを介して第2下サンドタンクの貯留室と連通してもよい。第2下サンドタンクにおいては、鋳型砂は下から上へ流れて下鋳枠内へ供給される。このため、第2下サンドタンクは、貯留室内に配置される透過部材の摩耗が他のタンクに比べて大きくなる傾向にある。この装置は、第2下サンドタンクの貯留室内においては、透過部材の代わりに複数のベントホールを用いる。このため、この装置は、第2下サンドタンクにおいて、透過部材の目詰まりの発生を回避することができる。
【0019】
一実施形態において、抜枠造型機は、制御部に接続され、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を表示する表示部を備えてもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力検出器の検出結果を操作員に報知することができる。
【0020】
一実施形態において、制御部は、検出結果として圧力と時間との関係を示すグラフを表示部に表示させてもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力の時間依存性を操作員に報知することができる。
【0021】
一実施形態において、制御部は、エアレーション設定圧力と時間とを設定するための設定画面を表示部に表示させてもよい。このように構成した場合、この装置は、操作員による設定操作を支援することができる。
【0022】
一実施形態において、抜枠造型機は、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を記憶する記憶部を備えてもよい。制御部は、記憶部に記憶された検出結果と、検出された今回の検出結果とを、比較可能な態様で表示部に表示させてもよい。このように構成した場合、この装置は、操作員に対して、以前の検出結果と今回の検出結果との差分を報知することができる。
【0023】
一実施形態において、制御部は、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を、通信ネットワークを介して送信する通信部を有してもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力検出器の検出結果を、物理記憶媒体を介することなく外部のコンピュータなどに送信することができる。
【0024】
一実施形態において、抜枠造型機は、制御部に接続され、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を表示する表示部を備えてもよい。そして、制御部は、上サンドタンクの少なくとも1つの圧力検出器の検出結果と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で表示部に表示させてもよい。この場合、この装置は、操作員に対して、第1透過部材の目詰まりを予測させることができる。
【0025】
一実施形態において、抜枠造型機は、制御部に接続され、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を表示する表示部を備えてもよい。そして、制御部は、第3圧力検出器又は第4圧力検出器により検出された圧力と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で表示部に表示させてもよい。この場合、この装置は、操作員に対して、第2透過部材の目詰まりを予測させることができる。
【0026】
一実施形態において、上サンドタンク、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクそれぞれと、圧縮空気源との間には、制御信号に応じて開閉可能な少なくとも1つの制御弁が設けられもよい。そして、制御部は、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果に基づいて少なくとも1つの制御弁に制御信号を出力してもよい。このように構成した場合、この装置は、圧力に関して例えばフィードバック制御をすることができるので、タンク内の鋳型砂の流動を適切に制御することができる。
【0027】
一実施形態において、制御部は、上サンドタンク、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクを排気する際に、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果に基づいて少なくとも1つの制御弁が開となるように制御信号を出力してもよい。このように構成した場合、この装置は、貯留室から供給室へ鋳型砂が逆流することを防ぐことができる。
【0028】
一実施形態において、制御部は、上サンドタンク、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクを排気する際に、少なくとも1つの圧力検出器により検出された圧力が所定の閾値以下とならない場合には警報情報を出力してもよい。このように構成することで、この装置は、排気系統に不具合があることを操作員に警告することができる。
【0029】
一実施形態において、上サンドタンクに対応する制御弁は、上サンドタンクの側方に配置されてもよく、第1下サンドタンクに対応する制御弁は、第1下サンドタンクの側方に配置されてもよい。このように構成した場合、タンクから対応する制御弁までの距離が短くなるので、この装置は、圧縮空気の供給の応答性を向上させることができる。
【0030】
一実施形態において、制御部は、エアレーション処理時において、所定のエアレーション時間内に圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達しない場合には、エアレーション時間を延長してもよい。そして、制御部は、延長した後において少なくとも1つの圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達しない場合には、警報情報を出力してもよい。このように構成した場合、この装置は、最大圧力が所定の閾値に達しないときに追加的なエアレーションを自動で行うことができる。さらに、この装置は、追加的なエアレーションによっても状況が改善されないときには、操作員に警報することができる。
【発明の効果】
【0031】
本開示の種々の側面及び実施形態によれば、優れた鋳型又は鋳物製品を造型する抜枠造型機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態に係る抜枠造型機の正面側の斜視図である。
図2】一実施形態に係る抜枠造型機の正面図である。
図3】一実施形態に係る抜枠造型機の左側面側の概要図である。
図4】エアレーション処理時における抜枠造型機の左側面側の概要図である。
図5】上サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の左側面側の概要図である。
図6】上サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の背面側の概要図である。
図7】上サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の上面側の概要図である。
図8】第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の左側面側の概要図である。
図9】第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の背面側の概要図である。
図10図8の装置下部の部分拡大図である。
図11】点検扉の断面図である。
図12】第3圧力検出器の接続の一例である。
図13】一実施形態に係る抜枠造型機の造型処理を説明するフローチャートである。
図14】一実施形態に係る抜枠造型機の機能ブロック図である。
図15】電空比例弁の制御信号及び圧力検出器の検出結果を示すグラフの一例である。
図16】圧力検出器の検出結果と閾値とを示すグラフの一例である。
図17】事前に記憶された検出結果と今回の検出結果とを比較した一例である。
図18】表示部により表示される画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、水平方向をX軸及びY軸の方向とし、鉛直方向(上下方向)をZ軸の方向とする。
【0034】
[抜枠造型機の概要]
図1は、一実施形態に係る抜枠造型機の正面側の斜視図である。抜枠造型機1は、無鋳枠の上鋳型及び下鋳型を造型する造型機である。図1に示されるように、抜枠造型機1は、造型部A1及び搬送部A2を備えている。造型部A1は、上下方向(Z軸方向)に動作可能な箱形状の上鋳枠及び下鋳枠が配置されている。搬送部A2は、模型が配置されたマッチプレートを造型部A1へ導入する。造型部A1の上鋳枠及び下鋳枠は、互いに近接するように移動して、マッチプレートを狭持する。上鋳枠内及び下鋳枠内には、鋳型砂が充填される。上鋳枠内及び下鋳枠内に充填された鋳型砂は、造型部A1に備わるスクイズ機構によって上下方向から加圧されて上鋳型及び下鋳型が同時に形成される。その後、上鋳枠から上鋳型が、下鋳枠から下鋳型がそれぞれ抜き取られ、装置外へ搬出される。このように、抜枠造型機1は、無鋳枠の上鋳型及び下鋳型を造型する。
【0035】
[フレーム構造]
図2は、一実施形態に係る抜枠造型機の正面図である。図3は、一実施形態に係る抜枠造型機の左側面側の概要図である。図2及び図3に示されるように、抜枠造型機1は、上フレーム10、下フレーム11、及び、上フレーム10と下フレーム11とを連結する4本のガイド12を備える。ガイド12は、その上端部が上フレーム10に連結され、その下端部が下フレーム11に連結される。上フレーム10、下フレーム11、及び、4本のガイド12によって、上述した造型部A1のフレームが構成されている。
【0036】
造型部A1のフレームの側方(X軸の負の方向)には、搬送部A2の支持フレーム13(図2)が配置されている。また、造型部A1のフレームの側方(Y軸の正の方向)には、上下方向に延びる支持フレーム14(図3)が配置されている。支持フレーム14は、後述する第1下サンドタンクを支持する。
【0037】
[上鋳枠及び下鋳枠]
抜枠造型機1は、上鋳枠15を備える。上鋳枠15は、上端部及び下端部が開口された箱形状の枠体である。上鋳枠15は、4本のガイド12に移動可能に取り付けられている。上鋳枠15は、上フレーム10に取り付けられた上鋳枠シリンダ16によって支持され、上鋳枠シリンダ16の動作に応じてガイド12に沿って上下動する。
【0038】
抜枠造型機1は、上鋳枠15の下方に配置された下鋳枠17を備える。下鋳枠17は、上端部及び下端部が開口された箱形状の枠体である。下鋳枠17は、4本のガイド12に移動可能に取り付けられている。下鋳枠17は、上フレーム10に取り付けられた2本の下鋳枠シリンダ18(図2)によって支持され、下鋳枠シリンダ18の動作に応じてガイド12に沿って上下動する。以下では、ガイド12に囲まれた領域を造形位置ともいう。
【0039】
上鋳枠15と下鋳枠17との間には、マッチプレート19(図2)が搬送部A2から導入される。マッチプレート19は、その両面に模型が配置された板状部材であり、上鋳枠15と下鋳枠17との間を進退する。具体的な一例として、搬送部A2の支持フレーム13には、造形位置へ向かうレールと、レール上に配置されたローラ付の搬送プレート20と、搬送プレート20を動作させる搬送シリンダ21を備えている。マッチプレート19は、搬送プレート20上に配置され、搬送シリンダ21の動作によって、造形位置であって上鋳枠15と下鋳枠17との間に配置される。上鋳枠15及び下鋳枠17は、配置されたマッチプレート19を上下方向から狭持可能である。以下では、支持フレーム13上の領域を退避位置ともいう。
【0040】
[サンドタンク]
抜枠造型機1は、上鋳枠15の上方に配置された上サンドタンク22を備える。上サンドタンク22は、上フレーム10に取り付けられている。より具体的には、上サンドタンク22は、上フレーム10に静的に固定されている。上サンドタンク22は、その内部に、上鋳枠15に供給するための鋳型砂を貯留する貯留室S1を有する。上サンドタンク22は、その上端部及び下端部が開口されている。上サンドタンク22の上端部には、板状の遮蔽部材を水平方向(X軸の正負の方向)にスライドさせるスライドゲート23が設けられている。スライドゲート23の動作により、上サンドタンク22の上端部は、開閉可能に構成されている。また、上サンドタンク22の上方には、鋳型砂を投入する鋳型砂投入シュート24が固定配置されている。鋳型砂投入シュート24については後述する。スライドゲート23が開状態のときに、鋳型砂は鋳型砂投入シュート24を介して上サンドタンク22へ供給される。
【0041】
上サンドタンク22の下端部は開口されており、下端部の開口に上プレート25(図3)が取り付けられる。上プレート25は、板状部材であり、上サンドタンク22から上鋳枠15内へ連通する少なくとも1つの供給口を有する。上サンドタンク22内の鋳型砂は、上プレート25の供給口を介して上鋳枠15内に供給される。上プレート25は、上鋳枠15の開口の大きさと略同一である。上鋳枠15が上方向に移動することにより、上プレート25は上鋳枠15内に進入する。上鋳枠15が下方向に移動することにより、上プレート25は上鋳枠15内から退出する。このように、上プレート25は、上鋳枠15内に進退可能に構成されている。上プレート25の詳細は後述する。
【0042】
上サンドタンク22は、圧縮空気源(不図示)に接続されている。具体的な一例としては、上サンドタンク22は、圧縮空気を供給する配管80〜83(図2図5〜7))が接続されており、配管80〜83を介して圧縮空気源と接続している。配管80〜83には、電空比例弁90〜93(制御弁の一例、図2図5〜7))が設けられている。電空比例弁92は、圧縮空気の供給及び停止を切り替えるだけでなく、バルブ開度を出力側の圧力に応じて自動調整する。このため、所定圧力の圧縮空気が上サンドタンク22に供給される。スライドゲート23が閉状態のときに、圧縮空気が上サンドタンク22内に送り込まれる。上サンドタンク22内の鋳型砂は、圧縮空気とともに上プレート25の供給口を介して上鋳枠15内に供給される。圧縮空気の供給機構の詳細については後述する。
【0043】
また、上サンドタンク22の貯留室S1は、その内面に圧縮空気が流通可能な複数の孔を有する第1透過部材22a(図3)を有する。これにより、第1透過部材22aの全面を介して圧縮空気が貯留室S1全体に供給されるため、鋳型砂の流動性が向上する。第1透過部材22aは多孔質材料で形成されていてもよい。上サンドタンク22は、圧縮空気を排気する配管29(図2)が接続されている。圧縮空気は、配管29から排気される際に第1透過部材22aを通る。この第1透過部材22aが、鋳型砂を通過させず、圧縮空気を透過させるため、鋳型砂が上サンドタンク22外へ出ていくことを回避することができる。
【0044】
抜枠造型機1は、下鋳枠17内に供給される鋳型砂を貯留する下サンドタンクを備える。下サンドタンクは、一例として第1下サンドタンク30(図3)及び第2下サンドタンク31(図3)に分割されている。第1下サンドタンク30は、上サンドタンク22の側方に配置されている。第1下サンドタンク30は、その内部に、下鋳枠17に供給するための鋳型砂を貯留する貯留室S2を有する。
【0045】
第1下サンドタンク30は、支持フレーム14に支持されており、支持フレーム14に設けられた上下に延びるガイド12A(図1)に移動可能に取り付けられている。より具体的には、第1下サンドタンク30は、上フレーム10に取り付けられた下タンクシリンダ(調整駆動部)32(図3)によって支持され、下タンクシリンダ32の動作に応じてガイド12Aに沿って上下動する。
【0046】
第1下サンドタンク30は、その上端部が開口されている。第1下サンドタンク30の上端部には、板状の遮蔽部材を水平方向(X軸の正負の方向)にスライドさせるスライドゲート33(図3)が設けられている。スライドゲート33の動作により、第1下サンドタンク30の上端部は、開閉可能に構成されている。また、第1下サンドタンク30の上方には、鋳型砂を投入するためのホッパ34(図3)が固定配置されている。ホッパ34と鋳型砂投入シュート24との接続関係については後述する。スライドゲート33が開状態のときに、鋳型砂はホッパ34を介して第1下サンドタンク30へ供給される。
【0047】
第1下サンドタンク30の下端部は水平方向(Y軸の負の方向)に屈曲しており、先端部には、貯留した鋳型砂を排出する第1接続口35(図3)が形成されている。第1接続口35は、後述する第2下サンドタンク31の第2接続口と、所定の高さ(接続位置)で接続可能に構成されている。鋳型砂は、第1接続口35を介して第2下サンドタンク31へ供給される。また、第1下サンドタンク30の先端部には上下方向に延びる第1閉塞板36(図3)が設けられている。後述する第2下サンドタンク31の第2接続口は、接続位置に位置していないときに第1閉塞板36によって遮蔽される。
【0048】
第1下サンドタンク30は、圧縮空気源(不図示)に接続されている。具体的な一例としては、第1下サンドタンク30は、圧縮空気を供給する配管84〜87(図9)が接続されており、配管84〜87を介して圧縮空気源と接続している。配管84〜87には、電空比例弁94〜97(図9)が設けられている。このため、所定圧力の圧縮空気が第1下サンドタンク30に供給される。スライドゲート33が閉状態のときであって、後述する第2下サンドタンク31の第2接続口が接続位置にある場合に、第1下サンドタンク30内に圧縮空気が供給される。第1下サンドタンク30内の鋳型砂は、圧縮空気とともに第1接続口35を介して第2下サンドタンク31内に供給される。圧縮空気の供給機構の詳細については後述する。
【0049】
また、第1下サンドタンク30の貯留室S2は、その内面に圧縮空気が流通可能な複数の孔を有する第2透過部材30a(図3)を有する。これにより、第2透過部材30aの全面を介して圧縮空気が貯留室S2全体に供給されるため、鋳型砂の流動性が向上する。第2透過部材30aは多孔質材料で形成されていてもよい。第1下サンドタンク30は、その側部に圧縮空気を排気する配管(不図示)が接続されている。圧縮空気は、配管から排気される際に第2透過部材30aを通る。この第2透過部材30aが、鋳型砂を通過させず、圧縮空気を透過させるため、鋳型砂が第1下サンドタンク30外へ出ていくことを回避することができる。
【0050】
第2下サンドタンク31は、下鋳枠17の下方に配置される。第2下サンドタンク31は、その内部に、下鋳枠17に供給するための鋳型砂を貯留する貯留室S3を有する。第2下サンドタンク31は、4本のガイド12に移動可能に取り付けられ、上下方向に延びるスクイズシリンダ(駆動部)37によって上下動可能に支持されている。
【0051】
第2下サンドタンク31の側部には、第1下サンドタンクの第1接続口35に接続可能な第2接続口38(図3)が形成されている。第2接続口38は、第1下サンドタンク30の第1接続口35と、所定の高さ(接続位置)で接続可能に構成されている。接続位置とは、第1接続口35及び第2接続口38とが接続する高さであり、具体的には、第1接続口35及び第2接続口38が同軸に配置される位置である。第1接続口35及び第2接続口38は、上下方向に沿った接続面で接続される。
【0052】
第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31は、第1接続口35と第2接続口38とが所定の接続位置で接続することにより、互いに連通した状態となる。鋳型砂は、第1接続口35及び第2接続口38を介して第1下サンドタンク30から第2下サンドタンク31へ供給される。また、第2下サンドタンク31の第2接続口38には上下方向に延びる第2閉塞板39(図3)が設けられている。第1下サンドタンク30の第1接続口35の両側部には、第2閉塞板39を案内するガイドレール(不図示)が設けられている。第2閉塞板39がガイドレールによって案内されることで、第1接続口35及び第2接続口38は、互いに傾くことなく接続位置に案内される。第1下サンドタンク30の第1接続口35は、接続位置に位置していないときに第2閉塞板39によって遮蔽される。
【0053】
なお、抜枠造型機1は、第1接続口35及び第2接続口38の接続面を気密に封止する封止機構を備えてもよい。例えば、封止機構は第1接続口35側に設けられる。
【0054】
第2下サンドタンク31の上端部は開口されており、上端部の開口に下プレート40(図3)が取り付けられる。下プレート40は、板状部材であり、第2下サンドタンク31から下鋳枠17内へ連通する少なくとも1つの供給口を有する。第2下サンドタンク31内の鋳型砂は、下プレート40の供給口及び後述する下盛枠を介して下鋳枠17内に供給される。
【0055】
[下盛枠]
抜枠造型機1は、一例として下盛枠41を備える。下盛枠41は、下鋳枠17の下方に配置される。下盛枠41は、上端部及び下端部が開口された箱形状の枠体である。下盛枠41の上端部の開口は、下鋳枠17の下端部の開口と接続する。下盛枠41は、その内部に第2下サンドタンク31を収容可能に構成されている。下盛枠41は、第2下サンドタンク31に固定された下盛枠シリンダ42によって上下動可能に支持されている。下プレート40は、下盛枠41及び下鋳枠17の開口の大きさと略同一である。なお、上下動可能な下盛枠41は、その内部に第2下サンドタンク31及び下プレート40を収容した位置が原位置(初期位置)であり、下降端となる。下盛枠41が上方向に移動することにより、下プレート40は下盛枠41内から退出する。上方向に移動した下盛枠41が下方向に移動することにより、下プレート40は下盛枠41内に進入する。このように、下プレート40は、下盛枠41内に進退可能(入出可能)に構成されている。この抜枠造型機1は、下盛枠41を備えることにより下鋳枠17のストロークを短くすることができるので、下盛枠41を備えない場合と比べて装置高さが低い抜枠造型機とすることができる。また、この抜枠造型機1は、下盛枠41を備えることにより下鋳枠17のストロークを短くすることができるので、一組の上鋳型及び下鋳型の造型時間を短縮することができる。
【0056】
なお、抜枠造型機1は、下盛枠41を備えなくてもよい。この場合、下プレート40は下鋳枠17内に進退可能(入出可能)に構成される。上下動可能な下鋳枠17は、下降端が原位置(初期位置)である。つまり、下プレート40は、上方向に移動する下鋳枠17よりも相対的に上方向に移動することにより下鋳枠17内に進入する。下プレート40は、下鋳枠17よりも相対的に下方向に移動することにより、下鋳枠17内から退出する。
【0057】
[造型空間及びスクイズ]
上鋳型の造型空間(上造型空間)は、上プレート25、上鋳枠15及びマッチプレート19により形成される。下鋳型の造型空間(下造型空間)は、下プレート40、下鋳枠17及びマッチプレート19により形成される。上造型空間及び下造型空間は、上鋳枠シリンダ16、下鋳枠シリンダ18及びスクイズシリンダ37を動作させて、上鋳枠15及び下鋳枠17が所定高さでマッチプレートを狭持したときに形成される。なお、抜枠造型機1が下盛枠41を備える場合には、下造型空間は、下プレート40、下鋳枠17、下盛枠41及びマッチプレート19により形成されてもよい。
【0058】
上造型空間には、上プレート25を介して上サンドタンク22に貯留された鋳型砂が充填される。下造型空間には、下プレート40を介して第2下サンドタンク31に貯留された鋳型砂が充填される。充填には圧縮空気が用いられる。圧縮空気を用いて鋳型砂を流動させながら、上造型空間及び下造型空間に鋳型砂を充填させる処理をエアレーションという。図4は、エアレーション処理時における抜枠造型機の左側面側の概要図である。図4に示されるように、上鋳枠15及び下鋳枠17が所定高さでマッチプレート19を狭持したときに、圧縮空気により鋳型砂が造型空間に供給される。
【0059】
上造型空間及び下造型空間に充填される鋳型砂のCBは、30%〜42%の範囲で設定され得る。また、上造型空間及び下造型空間に充填される鋳型砂の圧縮強さは、8N/cm〜15N/cmの範囲で設定され得る。なお、模型形状や鋳型砂のCB(Compactability)によって造型される鋳型の厚さが変化するため、第2下サンドタンク31の目標の高さが鋳型の厚さに応じて変化する。つまり、第2下サンドタンク31の第2接続口38の高さが変化する。このとき、下タンクシリンダ32により、第1下サンドタンク30の第1接続口35の高さが第2下サンドタンク31の第2接続口38の接続位置に調整される。このような調整は、後述する制御装置50(図3)によって実現され得る。
【0060】
スクイズシリンダ37は、上造型空間及び下造型空間に鋳型砂が充填された状態で、第2下サンドタンク31を上方に移動させることで、上プレート25及び下プレート40でスクイズを行う。これにより、上造型空間の鋳型砂に圧力が加わり、上鋳型が形成される。これと同時に、下造型空間の鋳型砂に圧力が加わり、下鋳型が形成される。
【0061】
[鋳型砂投入シュート]
鋳型砂投入シュート24は、上端部が開口され、下端部が2つに分岐している。上端部には、切替ダンパ43が設けられている。切替ダンパ43は、分岐された下端部の何れか一方に鋳型砂が落下するように傾斜方向が変化する。また、鋳型砂投入シュート24の一方の下端部は上サンドタンク22の上部に固定され、鋳型砂投入シュート24の他方の下端部はホッパ34内に収容され、固定されない。このように、第1下サンドタンク30側の下端部が固定されないことにより、下タンクシリンダ32は、第1下サンドタンク30の第1接続口35の高さを、上サンドタンク22とは独立に制御することができる。
【0062】
[圧縮空気の供給構造]
上サンドタンク22、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31のそれぞれは、圧縮空気源に接続された少なくとも1つの供給室を有する。「接続された」とは、気体が流通可能に連通されていることを意味する。供給室は、貯留室を囲むように配置されてもよい。貯留室と供給室とは貫通孔を介して連通されている。供給室には、圧縮空気源から圧縮空気が送り込まれ、透過部材又は複数のベントホールを介して供給室から貯留室に圧縮空気が送り込まれる。
【0063】
以下、各タンクにおける圧縮空気の供給構造について説明する。最初に上サンドタンク22における圧縮空気の供給構造について説明する。図5は、上サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の左側面側の概要図である。図6は、上サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の背面側の概要図である。図7は、上サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の上面側の概要図である。
【0064】
図5図7に示されるように、上サンドタンク22は、一例として、上サンドタンク22の中央よりも上端側に位置する第1供給室S4、及び、上サンドタンク22の中央よりも下端側に位置する第2供給室S5を有する。上サンドタンク22の中央とは、上サンドタンク22の軸線方向の中央である。第1供給室S4及び第2供給室S5は、貯留室S1の側方に設けられる。第1供給室S4及び第2供給室S5は、貯留室S1を囲むように設けられた空間である。第1供給室S4は、貯留室S1の側壁22bと、貯留室S1の側壁22bの外側に設けられた配管部材22cとの間に画成されている。第2供給室S5は、貯留室S1の側壁22bと、貯留室S1の側壁22bの外側に設けられた配管部材22dとの間に画成されている。
【0065】
第1供給室S4には、配管80,83が接続される。配管80,83は、配管部材22cの互いに対向する位置に接続されている。配管80,83は、圧縮空気源に接続された主配管100に接続されている。配管80には、電空比例弁90が設けられている。配管83には、電空比例弁93が設けられている。電空比例弁90,93は、上サンドタンク22の側方に配置される。電空比例弁は、後述する制御装置50に接続されており、制御装置50の制御信号に基づいて開閉する弁である。第1供給室S4は、貫通孔(不図示)を介して貯留室S1と連通している。電空比例弁90,93が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管80,83を流通し、第1供給室S4へ供給される。そして、圧縮空気は、第1供給室S4から貫通孔及び第1透過部材22aを介して貯留室S1へと送り込まれる。なお、貫通孔は、貯留室S1の側壁22bに複数形成されてもよい。例えば、複数の貫通孔は、貯留室S1を囲むように形成されてもよい。この場合、貯留室S1に向けて周方向から均等に圧縮空気を送り込むことができる。
【0066】
第2供給室S5には、配管81,82が接続される。配管81,82は、配管部材22dの1つの側面に接続されている。配管81,82は、圧縮空気源に接続された主配管100に接続されている。配管81には、電空比例弁91が設けられている。配管82には、電空比例弁92が設けられている。電空比例弁91,92は、上サンドタンク22の側方に配置される。第2供給室S5は、貫通孔(不図示)を介して貯留室S1と連通している。電空比例弁91,92が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管81,82を流通し、第2供給室S5へ供給される。そして、圧縮空気は、第2供給室S5から貫通孔及び第1透過部材22aを介して貯留室S1へと送り込まれる。なお、貫通孔は、貯留室S1の側壁22bに複数形成されてもよい。例えば、複数の貫通孔は、貯留室S1を囲むように形成されてもよい。この場合、貯留室S1に向けて周方向から均等に圧縮空気を送り込むことができる。
【0067】
次に、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31における圧縮空気の供給構造について説明する。図8は、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の左側面側の概要図である。図9は、第1下サンドタンク及び第2下サンドタンクに関する圧縮空気の供給構造の背面側の概要図である。図10は、図8の装置下部の部分拡大図である。
【0068】
図8〜10に示されるように、第1下サンドタンク30は、一例として、第1下サンドタンク30の中央に位置する第3供給室S6、第1下サンドタンク30の中央よりも上端側に位置する第4供給室S7、及び、第1下サンドタンク30の中央よりも下端側に位置する第5供給室S8を有する。第1下サンドタンク30の中央とは、第1下サンドタンク30の軸線方向の中央である。第3供給室S6及び第4供給室S7は、貯留室S2の側方に設けられる。第5供給室S8は、第1下サンドタンク30の屈曲した下端部に設けられる。
【0069】
第3供給室S6及び第4供給室S7は、貯留室S2を囲むように設けられた空間である。第3供給室S6は、貯留室S2の側壁30cと、貯留室S2の側壁30cの外側に設けられた配管部材30dとの間に画成されている。第4供給室S7は、貯留室S2の側壁30cと、貯留室S2の側壁30cの外側に設けられた配管部材30gとの間に画成されている。
【0070】
第3供給室S6には、配管84aが接続される。配管84aは、配管部材30dの1つの側面に接続されている。配管84aは、圧縮空気源に接続された主配管100に配管84を介して接続されている。配管84には、電空比例弁94が設けられている。電空比例弁94は、第1下サンドタンク30の側方に配置される。第3供給室S6は、貫通孔(不図示)を介して貯留室S2と連通している。電空比例弁94が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管84,84aを流通し、第3供給室S6へ供給される。そして、圧縮空気は、第3供給室S6から貫通孔及び第2透過部材30aを介して貯留室S2へと送り込まれる。なお、貫通孔は、貯留室S2の側壁30cに複数形成されてもよい。例えば、複数の貫通孔は、貯留室S2を囲むように形成されてもよい。この場合、貯留室S2に向けて周方向から均等に圧縮空気を送り込むことができる。
【0071】
第4供給室S7には、配管84bが接続される。配管84bは、配管部材30gの1つの側面に接続されている。配管84bは、圧縮空気源に接続された主配管100に配管84を介して接続されている。配管84には、電空比例弁94が設けられている。つまり、電空比例弁94は、配管84a,84bの両方の流量を制御する。電空比例弁94は、第1下サンドタンク30の側方に配置される。第4供給室S7は、貫通孔(不図示)を介して貯留室S2と連通している。電空比例弁94が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管84,84bを流通し、第4供給室S7へ供給される。そして、圧縮空気は、第4供給室S7から貫通孔及び第2透過部材30aを介して貯留室S2へと送り込まれる。なお、貫通孔は、貯留室S2の側壁30cに複数形成されてもよい。例えば、複数の貫通孔は、貯留室S2を囲むように形成されてもよい。この場合、貯留室S2に向けて周方向から均等に圧縮空気を送り込むことができる。
【0072】
第5供給室S8は、点検扉70の内部に形成されている。点検扉70は、第1下サンドタンク30のメンテナンス時において開閉される扉である。図11は、点検扉の断面図である。図11に示されるように、点検扉70は、中空部材であり、その内部に第5供給室S8が画成される。点検扉70の外側面70aには、圧縮空気を供給する配管85と接続する供給口70bが形成されている。点検扉70の内側面70cには、圧縮空気を貯留室S2へ供給するための貫通孔70dが形成されている。貫通孔70dは1つ形成されてもよいし、複数個形成されてもよい。貫通孔70dには、スリットが形成されたベントホール70eが嵌め込まれている。
【0073】
図8〜10に示されるように、第5供給室S8には、配管85が接続される。配管85は、供給口70bに接続されている。配管85は、圧縮空気源に接続された主配管100に接続されている。配管85には、電空比例弁95が設けられている。電空比例弁95は、第1下サンドタンク30の側方に配置される。第5供給室S8は、複数のベントホール70eを介して貯留室S2と連通している。電空比例弁95が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管85を流通し、第5供給室S8へ供給される。そして、圧縮空気は、第5供給室S8から複数のベントホール70eを介して貯留室S2へと送り込まれる。
【0074】
第5供給室S8から貯留室S2へと送られる流路には、第2透過部材30aが介在していない。第1下サンドタンク30の屈曲した下端部においては、その形状が故に、貯留室S2内に配置される透過部材の摩耗が他の配置位置に比べて大きくなる傾向にある。このため、第1下サンドタンク30の屈曲した下端部の貯留室S2内においては、第2透過部材30aの代わりに複数のベントホール70eを用いる。これにより、第1下サンドタンク30の屈曲した下端部において、透過部材の目詰まりの発生が回避される。
【0075】
第2下サンドタンク31は、一例として、貯留室S3の底部に位置する第6供給室S9及び第7供給室S10を有する。第6供給室S9は、配管部材71の内部に画成される。配管部材71は、第2下サンドタンク31の第2接続口38付近の底部に配置される。配管部材71は、圧縮空気を供給する配管と接続する供給口71aと、圧縮空気を貯留室S3へ供給するための貫通孔71bが形成されている。貫通孔71bは1つ形成されてもよいし、複数個形成されてもよい。貫通孔71bには、スリットが形成されたベントホール(不図示)が嵌め込まれている。配管部材72は、圧縮空気を供給する配管と接続する供給口72aと、圧縮空気を貯留室S3へ供給するための貫通孔72bが形成されている。貫通孔72bは1つ形成されてもよいし、複数個形成されてもよい。貫通孔72bには、スリットが形成されたベントホール(不図示)が嵌め込まれている。
【0076】
第6供給室S9には、配管86が接続される。配管86は、供給口71aに接続されている。配管86は、圧縮空気源に接続された主配管100に接続されている。配管86には、電空比例弁96が設けられている。第6供給室S9は、複数のベントホールを介して貯留室S3と連通している。電空比例弁96が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管86を流通し、第6供給室S9へ供給される。そして、圧縮空気は、第6供給室S9から複数のベントホールを介して貯留室S3へと送り込まれる。
【0077】
第7供給室S10には、配管87が接続される。配管87は、供給口72aに接続されている。配管87は、圧縮空気源に接続された主配管100に接続されている。配管87には、電空比例弁97が設けられている。第7供給室S10は、複数のベントホールを介して貯留室S3と連通している。電空比例弁97が開とされたとき、圧縮空気は、主配管100から配管87を流通し、第7供給室S10へ供給される。そして、圧縮空気は、第7供給室S10から複数のベントホールを介して貯留室S3へと送り込まれる。
【0078】
第6供給室S9及び第7供給室S10から貯留室S2へと送られる流路には、透過部材が介在していない。第2下サンドタンク31は、貯留室内に配置される透過部材の摩耗が他のタンクに比べて大きくなる傾向にある。このため、第2下サンドタンク31の貯留室S3内においては、透過部材の代わりに複数のベントホールを用いる。これにより、第2下サンドタンク31において、透過部材の目詰まりの発生が回避される。
【0079】
[圧力検出器]
抜枠造型機1は、少なくとも1つの圧力検出器を備えてもよい。少なくとも1つの圧力検出器は、上サンドタンク22、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31のうちの少なくとも1つのタンクの圧力を検出する。圧力検出器は、一例として、本体部と、本体部に収容され圧力によって変形するダイヤフラムと、ダイヤフラムの変形に応じた信号を出力する歪みゲージとを備えている。圧力検出器は、本体部に表示器(例えばLED(Light Emitting Diode)表示器)などを備えてもよい。圧力検出器の取り付け方法は、種々の方法を採用することができる。例えば、貯留室の側壁に取り付けてもよいし、貯留室に連通された空間の側壁に取り付けてもよい。
【0080】
以下、各タンクにおける圧力検出器の配置について説明する。最初に上サンドタンク22における圧力検出器の配置について説明する。図3に示されるように、上サンドタンク22には、第1圧力検出器61及び第2圧力検出器62が設けられている。第1圧力検出器61は、第1供給室S4の圧力を検出する。第2圧力検出器62は、第2供給室S5の圧力を検出する。このように、上サンドタンク22では、第1透過部材22aを介して貯留室S1と連通する、貯留室S1の外側の空間(第1供給室S4,第2供給室S5)の圧力が検出される。
【0081】
次に、第1下サンドタンク30における圧力検出器の配置について説明する。図3に示されるように、第1下サンドタンク30には、第3圧力検出器63、第4圧力検出器64及び第5圧力検出器65が設けられている。第3圧力検出器63は、第3供給室S6及び第4供給室S7の圧力を検出する。第4圧力検出器64は、貯留室S2の圧力を検出する。第5圧力検出器65は、第5供給室S8の圧力を検出する。このように、第1下サンドタンク30では、貯留室S2の圧力が直接検出されるとともに、第2透過部材30aを介して貯留室S2と連通する、貯留室S2の外側の空間(第3供給室S6,第4供給室S7,第5供給室S8)の圧力が検出される。なお、第4圧力検出器64によって検出された貯留室S2の圧力は、後述する排気時の逆流防止の基準圧力として利用される。
【0082】
次に、第2下サンドタンク31における圧力検出器の配置について説明する。図3に示されるように、第2下サンドタンク31には、第6圧力検出器66が設けられている。第6圧力検出器66は、貯留室S3の圧力を検出する。なお、第6圧力検出器66は、ベントなどを介して貯留室S3と連通する、貯留室S3の外側の空間の圧力を検出してもよい。
【0083】
[圧力検出器の取り付けの詳細]
貯留室の外側の空間の圧力を検出する圧力検出器(第1圧力検出器61〜第3圧力検出器63、第5圧力検出器65)の配置について説明する。これらの圧力検出器それぞれは接続形態が同一であるため、第3圧力検出器63を代表して説明する。図12は、第3圧力検出器の接続の一例である。図12に示されるように、第1下サンドタンク30の側壁30cの内側には、第2透過部材30aがゴム部材30fを介して取り付けられている。側壁30cには、貫通孔30eが形成されている。側壁30cの外側には、貫通孔30eに対応する位置に、第3供給室S6を画成する配管部材30dが取り付けられている。第3供給室S6は、貫通孔30e及び第2透過部材30aを介して貯留室S2と連通している。第3供給室S6には、圧縮空気が供給される接続口(不図示)が設けられている。接続口から供給された圧縮空気は、貫通孔30e及び第2透過部材30aを通過し、第1下サンドタンク30の貯留室S2の内側へ供給される。このように、第1圧力検出器61〜第3圧力検出器63、第5圧力検出器65は、透過部材を介して貯留室と連通する、貯留室の外側の空間の圧力を検出する。
【0084】
[制御装置]
抜枠造型機1は、制御装置50(制御部の一例)を備えてもよい。制御装置50は、プロセッサなどの制御部、メモリなどの記憶部、入力装置、表示装置などの入出力部、ネットワークカードなどの通信部などを備えるコンピュータであり、抜枠造型機1の各部、例えば鋳型砂供給系、圧縮空気供給系、駆動系及び電源系等を制御する。この制御装置50では、入力装置を用いて、オペレータが抜枠造型機1を管理するためにコマンドの入力操作等を行うことができ、また、表示装置により、抜枠造型機1の稼働状況を可視化して表示することができる。さらに、制御装置50の記憶部には、抜枠造型機1で実行される各種処理をプロセッサにより制御するための制御プログラムや、造型条件に応じて抜枠造型機1の各構成部に処理を実行させるためのプログラムが格納される。
【0085】
制御装置50は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66に接続され、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を取得する。圧力検出結果に基づく制御については後述される。
【0086】
[造型処理]
本実施形態に係る造型処理について概説する。図13は、一実施形態に係る抜枠造型機の造型処理を説明するフローチャートである。図13に示される造型処理は、一組の上鋳型及び下鋳型を造型する処理である。図13に示される造型処理は、抜枠造型機1の姿勢が原位置(初期位置)であることを条件の1つとして自動起動される。抜枠造型機1の姿勢が原位置でない場合には、手動で動作させて原位置まで移動させる。図3に示された抜枠造型機1の姿勢(原位置)で、自動起動ボタンが押されると、図13に示される造型処理が開始される。
【0087】
造型処理が開始された場合、最初に、シャトルイン処理(S12)が行われる。シャトルイン処理では、搬送シリンダ21が、マッチプレート19を載置した搬送プレート20を造型位置へ移動させる。
【0088】
次に、枠セット処理(S14)が行われる。枠セット処理では、上鋳枠シリンダ16、下鋳枠シリンダ18(図2)、下盛枠シリンダ42及びスクイズシリンダ37が造型する鋳型の厚さに合わせて伸縮する。これにより、上鋳枠15が所定位置に移動するとともに、下鋳枠17がマッチプレート19に当接し、その後、マッチプレート19を載せた下鋳枠17が所定位置に移動することで、上鋳枠15及び下鋳枠17の間にマッチプレート19が狭持された状態となる。そして、第2下サンドタンク31及び下盛枠41が上昇し、下盛枠41が下鋳枠17に当接する。また、下タンクシリンダ32が伸縮し、第1下サンドタンク30を上下方向に移動させることで、第1下サンドタンク30の第1接続口35の高さが第2下サンドタンク31の第2接続口38の高さと一致する状態となる。このとき、上造型空間及び下造型空間は、制御装置50で決定された状態(高さ)になっている。
【0089】
次に、エアレーション処理(S16)が行われる。図4に示されるように、エアレーション処理では、封止機構が第1下サンドタンク30の第1接続口35と第2下サンドタンク31の第2接続口38とを封止する。そして、上サンドタンク22のスライドゲート23、及び、第1下サンドタンク30のスライドゲート33が閉とされ、圧縮空気源及び電空比例弁90〜97によって上サンドタンク22、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31内に圧縮空気が供給される。これにより、鋳型砂を流動させながら、上造型空間及び下造型空間に鋳型砂が充填される。一例として、設定された圧力及び時間を満たした場合、エアレーション処理が終了する。なお、エアレーション処理が完了した後において、上サンドタンク22、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31内の排気処理が行われる。
【0090】
次に、スクイズ処理(S18)が行われる。スクイズ処理では、エアレーション処理(S16)で動作させた封止機構が封止を解除し、スクイズシリンダ37がさらに伸長することにより、第2下サンドタンク31がさらに上昇する。これにより、第2下サンドタンク31に取り付けられた下プレート40が下盛枠41内に進入し、下造型空間内の鋳型砂を圧縮するとともに、上プレート25が上鋳枠15内に進入し、上造型空間の鋳型砂を圧縮する。スクイズシリンダ37が油圧回路で制御されている場合には、例えば油圧回路の油圧が設定された油圧と等しいと判定することができるときに、スクイズ処理が終了する。なお、スクイズ処理中であって、上鋳枠シリンダ16、下鋳枠シリンダ18及び下盛枠シリンダ42が油圧回路で制御されている場合、各シリンダはフリー回路に設定される。これによって、各シリンダはスクイズ力に負けて収縮する。
【0091】
次に、抜型処理(S20)が行われる。抜型処理では、下盛枠シリンダ42が収縮して下盛枠41を下降させる。その後、スクイズシリンダ37が収縮して、第2下サンドタンク31を下降させ、それに続いて、マッチプレート19及び搬送プレート20を載置した下鋳枠17を下降させる。そして、上鋳枠15から模型の抜型が行われる。下鋳枠17が固定部(不図示)まで下降したとき、マッチプレート19及び搬送プレート20が固定部に支持される。これにより、下鋳枠17から模型の抜型が行われる。
【0092】
次に、シャトルアウト処理(S22)が行われる。シャトルアウト処理では、搬送シリンダ21が収縮することにより、搬送プレート20を退避位置へ移動させる。必要であれば中子が上鋳枠15又は下鋳枠17に配置される。
【0093】
次に、枠合せ処理(S24)が行われる。枠合せ処理では、下鋳枠シリンダ18が収縮し、スクイズシリンダ37が伸長することにより、下鋳枠17及び第2下サンドタンク31を上昇させて、枠を合わせる。
【0094】
次に、抜枠処理(S26)が行われる。抜枠処理では、上鋳枠シリンダ16及び下鋳枠シリンダ18が収縮することにより、上鋳枠15及び下鋳枠17を上昇端まで上昇させて、抜枠を行う。
【0095】
次に、第1枠分離処理(S28)が行われる。第1枠分離処理では、第2下サンドタンク31の下プレート40上に鋳型を載置した状態で、スクイズシリンダ37が収縮し、第2下サンドタンク31を下降させる。このとき、下鋳枠シリンダ18が伸長し、下鋳枠17を下降させるとともに、鋳型を搬出する際に邪魔にならない位置で停止させる。
【0096】
次に、モールド押出処理(S30)が行われる。モールド押出処理では、押出シリンダ48(図2参照)が伸長することで、上鋳型及び下鋳型を装置外(例えば造型ライン)へ搬出する。
【0097】
次に、第2枠分離処理(S32)が行われる。第2枠分離処理では、下鋳枠シリンダ18が伸長し、下鋳枠17を原位置に戻す。
【0098】
以上で、一組の上鋳型及び下鋳型を造型する処理を終了する。
【0099】
[サンドタンク内の圧力検出]
図14は、一実施形態に係る抜枠造型機の機能ブロック図である。図14に示されるように、抜枠造型機1は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66、制御装置50、表示部67、及び、電空比例弁90〜97を備える。
【0100】
制御装置50は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66に接続され、検出結果を取得することができる。検出結果とは、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66のうちの少なくとも1つの圧力検出器から出力された圧力に関する情報である。
【0101】
制御装置50は、演算部51、通信部52及び記憶部53を備える。演算部51は、圧力制御に関する各種演算を行う構成要素であり、プロセッサ及びメモリなどにより実現する。通信部52は、情報を装置外へ送信する構成要素であり、ネットワークカードなどにより実現する。
【0102】
通信部52は、演算部51の指令に基づいて、データを通信規格に合わせて処理し、通信ネットワーク68へ出力する。通信ネットワーク68は、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。記憶部53は、データを保存する構成要素であり、メモリなどにより実現する。
【0103】
表示部67は、情報を視認可能な状態で表示することができる装置である。表示部67は、一例として、ディスプレイ装置である。表示部67は、装置に固定されていてもよいし、装置と別体となっていてもよい。表示部67は、制御装置50からの制御信号に基づいて、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果を表示する。表示部67は、制御装置50からの制御信号に基づいて、警報情報を表示してもよい。表示部67は、操作員による入力操作を受け付けるタッチパネルなどで構成されてもよい。表示部67は、操作員による入力操作を制御装置50へ出力してもよい。
【0104】
以下、制御装置50の制御処理について、各構成要素と対応させて説明する。
[第1データ表示処理]
第1データ表示処理は、図13の造型処理の実行中において第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66によって検出された結果を、表示部67に表示させる処理である。表示のタイミングは、造型処理中であってもよいし、造型処理後であってもよい。制御装置50の演算部51は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果として、圧力と時間との関係を示すグラフを表示部67に表示させる。演算部51は、検出結果に合わせて電空比例弁90〜97の制御情報を表示部67に表示させてもよい。制御情報とは、電空比例弁の制御信号に関する情報である。例えば、電空比例弁の制御信号は、制御信号を所定の計算式に基づいて圧力に変換した信号である。このような変換は、演算部51により実行される。制御装置50の演算部51は、制御情報と検出結果とを比較可能な態様で表示部67に表示させる。例えば、制御装置50の演算部51は、制御情報と検出結果とを同じタイミングで画面表示する。演算部51は、一例として、比較する対象データを同一のグラフに重ねて表示する。演算部51は、比較する対象データを個々のグラフとして同一の画面内に並べて表示してもよい。なお、比較可能な態様は、比較する対象データが同じタイミングで画面表示される場合に限定されず、比較する対象データが交互に画面に表示されてもよい。
【0105】
図15は、電空比例弁の制御信号及び圧力検出器の検出結果を示すグラフの一例である。図15に示されるグラフは、上サンドタンク22における検出結果であり、横軸は時間であり、縦軸は圧力である。図15において、電空比例弁の制御信号は圧力に変換され、破線で示されている。つまり、図中の破線が目標圧力である。破線の波形の立ち上がりから立ち下がりまでの時間がエアレーション時間T1である。図15において、検出結果は実線で示されている。太い実線が第1圧力検出器61の検出結果であり、細い実線が第2圧力検出器62の検出結果である。操作員などは、図15に示されたグラフに基づいて、制御の妥当性などを確認することができる。
【0106】
一例として、図15に示されたグラフにおいては、エアレーション時間T1の初期において上サンドタンク22内の圧力が上昇している。図中のタイミングE1で示されるように、圧力の上昇が一旦終了する。圧力の上昇の終了は、上サンドタンク22内の鋳型砂が流動しているために発生していると考えられる。その後、図中のタイミングE2で示されるように、圧力は再度上昇し始める。圧力の再上昇は、鋳型砂の充填が完了したために発生していると考えられる。そして、タイミングE2から時間経過すると、少し圧力が上昇して一定値となる。操作員などは、図15に示されたグラフに基づいてエアレーション時間T1の長さを検証することができる。操作員などは、後述する設定画面でエアレーション時間T1の長さを設定することができる。例えば、操作員などは、エアレーション時間T1の終了タイミングがタイミングE2に近づくようにエアレーション時間T1を調整してもよい。操作員などは、エアレーション時間T1の終了タイミングが、タイミングE2からマージン時間T2経過したタイミングに近づくようにエアレーション時間T1を調整してもよい。マージン時間T2は、実測に基づいて決定された値である。マージン時間T2は、操作員などにより適宜設定される値であってもよい。このような調整により、サイクルタイムを短縮させるとともに、消費するエアの量を最適化することができる。
【0107】
[第2データ表示処理]
第2データ表示処理は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66によって検出された結果を、表示部67に表示させる処理である。表示のタイミングは、第1透過部材22a又は第2透過部材30aの目詰まりをチェックするときであり、例えばメンテナンス時である。制御装置50の演算部51は、一例として、第1圧力検出器61〜第3圧力検出器63のうちの少なくとも1つの検出結果として、圧力と時間との関係を示すグラフを表示部67に表示させる。第1圧力検出器61〜第3圧力検出器63は、第1透過部材22a又は第2透過部材30aを介して貯留室に連通しているため、第1圧力検出器61〜第3圧力検出器63の圧力の検出結果によって第1透過部材22a又は第2透過部材30aの目詰まりを検知することができる。
【0108】
透過部材の目詰まりは、作業員などにより判断される。作業員などの判断を助けるために、圧力の検出結果とともに、閾値を表示してもよい。例えば、制御装置50の演算部51は、上サンドタンク22の少なくとも1つの圧力検出器(第1圧力検出器61,第2圧力検出器62)の検出結果と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で表示部67に表示させる。あるいは、演算部51は、第1下サンドタンク30の第3圧力検出器63により検出された圧力と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で表示部67に表示させてもよい。予め設定された閾値は、記憶部53に記憶されていてもよい。例えば、観測された異常値から所定値を減算した値が閾値として設定され、記憶部53に記憶されてもよい。制御装置50は、タッチパネルなどを介して閾値を取得し、記憶部53に記憶してもよい。演算部51は、検出結果に合わせて電空比例弁90〜94の制御情報を表示部67に表示させてもよい。制御情報とは、電空比例弁の制御信号に関する情報である。例えば、電空比例弁の制御信号は、制御信号を所定の計算式に基づいて圧力に変換した信号である。このような変換は、演算部51により実行される。
【0109】
図16は、圧力検出器の検出結果と閾値とを示すグラフの一例である。図16に示されるグラフは、上サンドタンク22における検出結果であり、横軸は時間であり、縦軸は圧力である。図16において、太い実線が異常値であり、破線が閾値、細い実線が圧力検出器の検出結果である。第1透過部材22aに目詰まりが発生している場合、圧力は上昇し、閾値を超えることになる。操作員などは、図16に示されたグラフに基づいて透過部材の目詰まりの有無を確認することができる。
【0110】
[第3データ表示処理]
第3データ表示処理は、図13の造型処理の実行中において第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66によって検出された結果を、表示部67に表示させる処理である。表示のタイミングは、造型処理中であってもよいし、造型処理後であってもよい。制御装置50の演算部51は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果として、圧力と時間との関係を示すグラフを表示部67に表示させる。演算部51は、検出結果に合わせて電空比例弁90〜97の制御情報を表示部67に表示させてもよい。制御情報とは、電空比例弁の制御信号に関する情報である。例えば、電空比例弁の制御信号は、制御信号を所定の計算式に基づいて圧力に変換した信号である。このような変換は、演算部51により実行される。
【0111】
制御装置50の演算部51は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果を所定のタイミングで記憶部53に記憶する。そして、演算部51は、記憶された検出結果と今回の検出結果とを比較可能な態様で表示部67に表示させる。例えば、演算部51は、記憶部53を参照して、事前に記憶された検出結果を取得するとともに、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66から今回の検出結果を取得する。そして、演算部51は、事前に記憶された検出結果と今回の検出結果とを同じタイミングで画面表示する。演算部51は、一例として、比較する対象データを同一のグラフに重ねて表示する。演算部51は、比較する対象データを個々のグラフとして同一の画面内に並べて表示してもよい。なお、比較可能な態様は、比較する対象データが同じタイミングで画面表示される場合に限定されず、比較する対象データが交互に画面に表示されてもよい。
【0112】
図17は、事前に記憶された検出結果と今回の検出結果とを比較した一例である。図17に示されるグラフは、上サンドタンク22における検出結果であり、横軸は時間であり、縦軸は圧力である。画面例(A)は、事前に記憶された検出結果のグラフG1を表示している画面である。画面例(B)は、事前に記憶された検出結果のグラフG1と今回の検出結果のグラフG2とを重ねて表示している画面である。操作員などは、図17に示されたグラフに基づいて、以前の処理との相違点の有無を確認することができる。
【0113】
[設定画面の表示処理]
演算部51は、設定処理の一例として、設定画面を表示部67に表示させる。設定画面とは、エアレーション設定圧力と時間とを設定するための画面である。そして、演算部51は、入力部(不図示)などを介して受け付けた操作員の入力情報に基づいて、エアレーション設定圧力と時間とを設定する。一例として、演算部51は、エアレーション時間、圧力、閾値などを設定する。設定とは、例えば目標値として記憶部53に記憶されることである。
【0114】
図18は、表示部により表示される画面例である。画面例(A)は、エアレーション時間を設定する設定画面の一例である。画面例(A)の上部には、ページを遷移する入力操作を受け付けるためのアイコンIC1が表示されている。画面下部においては、アプリケーション又は各種機能を呼び出す入力操作を受け付けるためのアイコンIC2が表示されている。画面中央には、設定対象と設定項目が表示されている。設定対象の一例は、電空比例弁である。画面例(A)においては、電空比例弁90,93と電空比例弁90,93とがオブジェクトOB1,OB2として表示されている。設定項目の一例は、エアレーション時間及び圧力である。画面例(A)においては、エアレーション時間と圧力とがオブジェクトOB3〜OB5として表示されている。オブジェクトOB3〜OB5は、操作員などにより入力可能な項目である。
【0115】
また、設定項目の一例は、追加処理時のエアレーション時間及び圧力である。追加処理は、エアレーション処理が正常な場合には実行されない。追加処理は、エアレーション処理が異常と判断される前に、エアレーション時間を延長するために実行される処理である。追加処理の詳細は後述する。画面例(A)においては、追加処理時のエアレーション時間と圧力とがオブジェクトOB6として表示されている。オブジェクトOB6は、操作員などにより入力可能な項目である。オブジェクトOB6において受け付けられる設定項目は、追加的なエアレーション時の設定値となる。操作員などは、オブジェクトOB3〜OB6に値を入力することにより、エアレーションに関する設定を行うことができる。
【0116】
[警報処理]
制御装置50は、異常を検知したときに警報を行う。警報とは、操作員などに異常を報知することをいう。制御装置50は、警報処理の一例として、表示部67に警報に関する画面を表示する。制御装置50は、表示による警報に代えて、あるいは、表示による警報とともに、図示しないスピーカにおいてアラームを出力してもよい。
【0117】
圧縮空気を用いて行われる抜枠造型機において想定される異常の1つは、吹き抜け異常である。吹き抜け異常とは、「下プレート40の各供給口の部分的な詰まりによって鋳型砂が存在しない箇所が発生し、当該箇所が圧縮空気の通り道となる現象」である。鋳型砂が存在しない箇所は空気抵抗が少ないため、圧縮空気は当該箇所ばかりに吹き抜ける。このため、吹き抜け異常が発生した場合、圧力が上昇しないことになる。制御装置50は、エアレーション処理時において、鋳型砂の正常な充填が行えていないと判定されたときに、エアレーション時間を延長する(追加処理)。つまり、制御装置50は、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果に基づいて少なくとも1つの電空比例弁に制御信号を出力する。より具体的な一例として、制御装置50は、エアレーション処理時において、エアレーション時間T1内に圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達しない場合には、鋳型砂の正常な充填が行えていないと判定する。所定の閾値は、例えば記憶部53に記憶されている。そして、制御装置50は、例えば図18の画面例(A)を用いて設定された値に基づいて、電空比例弁に制御信号を出力する(エアレーション時間を延長する追加処理)。
【0118】
制御装置50は、吹き抜け異常が追加処理によって解消した場合、つまり、追加エアレーション時間内に圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達した場合には、鋳型砂の充填処理は正常であると判定し、警報は行わない。一方、制御装置50は、追加エアレーション時間内に圧力検出器により検出された最大圧力が所定の閾値に達しない場合には、警報情報を出力する。警報情報は、警報に関するデータであり、表示部67に出力される場合には画面データ、スピーカなどに出力される場合にはアラームデータである。制御装置50は、警報情報の出力とともに、抜枠造型機1の運転を停止してもよい。図18の画面例(B)は、警報の一例である。制御装置50は、異常の内容、抜枠造型機1の運転状態、処置(対処方法)、復帰(復帰方法)などを表示部67に表示させる。
【0119】
制御装置50は、エアレーション時間T1が終了すると、排気処理を行う。排気処理においては、上サンドタンク22内の圧縮空気が排気され、圧力が低下していく。排気機構に砂詰まりがある場合、例えば、図17の画面例(B)のグラフG3に示されるように、排気処理時間T3において、圧力の低下が鈍ることになる。制御装置50は、上サンドタンク22、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31を排気する際に、少なくとも1つの圧力検出器により検出された圧力が、所定の時間経過後に所定の閾値以下とならない場合には警報情報を出力する。これにより、操作員などは排気の異常を認識することができる。
【0120】
なお、制御装置50は、排気処理時において、少なくとも1つの圧力検出器の検出結果に基づいて少なくとも1つの電空比例弁が開となるように制御信号を出力してもよい。このように動作することで、供給室の圧力が高まることから、充填室から供給室への鋳型砂の逆流が防止される。鋳型砂の逆流は、ベントを配置している箇所、つまり、供給室S8〜S10で発生しやすい。制御装置50は、排気処理時において、排気処理時に基準となる第4圧力検出器64によって検出された圧力に基づいて、電空比例弁95〜97が開となるように制御信号を出力する。制御装置50は、第4圧力検出器64によって検出された圧力よりも所定値だけ高い圧力となるように、電空比例弁95〜97を開としてもよい(フィードバック処理)。
【0121】
以上、本実施形態に係る抜枠造型機1では、上サンドタンク22、第1下サンドタンク30及び第2下サンドタンク31の圧力が第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66により検出される。そして、制御装置50により、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果が取得される。このように、抜枠造型機1によれば、タンク内の圧力が取得されることによりサンドタンク内の状況が把握されるため、結果として優れた鋳型及び鋳物製品を得ることができる。
【0122】
抜枠造型機1によれば、第2下サンドタンクが上下方向に移動することによってスクイズ処理が行われる場合において、サンドタンク内の状況を適切に把握することができる。
【0123】
抜枠造型機1によれば、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の配置のために、圧縮空気を供給するための供給室S4〜S10を利用することができる。また、抜枠造型機1は、鋳型砂を貯留する貯留室S1〜S3に圧力検出のための貫通孔などを設ける必要がない。このため、抜枠造型機1によれば、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の配置が造型処理に与える影響を小さくすることができる。
【0124】
抜枠造型機1によれば、上サンドタンク22の上下の圧力、つまり上サンドタンク22の全体の圧力が検出されるため、上サンドタンク22の検出位置に依存した圧力偏差を把握することができる。抜枠造型機1によれば、第1下サンドタンク30の上下の圧力、つまり第1下サンドタンク30の全体の圧力が検出されるため、第1下サンドタンク30の検出位置に依存した圧力偏差を把握することができる。
【0125】
抜枠造型機1によれば、第1透過部材22a,第2透過部材30aの目詰まりを検出することができる。また、抜枠造型機1では、第1下サンドタンク30の屈曲した下端部の貯留室S2内、あるいは、第2下サンドタンク31内においては、透過部材の代わりに複数のベントホールを用いる。このため、抜枠造型機1によれば、透過部材の目詰まりが発生し易い箇所において、透過部材の目詰まりの発生を回避することができる。
【0126】
抜枠造型機1によれば、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果を操作員に報知することができる。抜枠造型機1によれば、圧力の時間依存性を操作員に報知することができる。抜枠造型機1によれば、設定画面を表示部67に表示させることにより、操作員による設定操作を支援することができる。また、抜枠造型機1によれば、操作員に対して、事前に記憶された検出結果と今回の検出結果の差分を報知することができる。抜枠造型機1によれば、第1圧力検出器61〜第6圧力検出器66の検出結果を、物理記憶媒体を介することなく外部のコンピュータなどに送信することができる。
【0127】
抜枠造型機1によれば、圧力検出器の検出結果と、予め設定された閾値とを比較可能な態様で表示部に表示させることができる。この場合、操作員に対して、第1透過部材22a又は第2透過部材30aの目詰まりを予測させることができる。
【0128】
抜枠造型機1によれば、圧力検出器の検出結果に基づいて電空比例弁に制御信号を出力することができるので、例えばフィードバック制御をすることができる。例えば、抜枠造型機1では、排気する際に、第3圧力検出器63の検出結果に基づいて、電空比例弁95〜97が開となるように制御信号が出力される。このため、抜枠造型機1によれば、タンク内の鋳型砂の流動を適切に制御することができる。より具体的には、抜枠造型機1は、貯留室S2,S3から供給室S8〜S10へ鋳型砂が逆流することを防ぐことができる。
【0129】
抜枠造型機1によれば、排気系統に不具合があることを操作員に警告することができる。抜枠造型機1によれば、電空比例弁90〜97がサンドタンクの側方に配置されているので、圧縮空気の供給の応答性を向上させることができる。
【0130】
抜枠造型機1によれば、最大圧力が所定の閾値に達しないときに追加的なエアレーションを自動で行うことができる。さらに、抜枠造型機1によれば、追加的なエアレーションによっても状況が改善されないときには、操作員に警報することができる。
【0131】
なお、上述した実施形態は本開示に係る抜枠造型機の一例を示すものである。本開示に係る抜枠造型機は、実施形態に係る抜枠造型機1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る抜枠造型機1を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0132】
例えば、上記実施形態において、上サンドタンク22は上フレーム10に固定されている例を説明したが、上サンドタンク22は移動可能に構成されていてもよい。また、造型機のサンドタンクは3つである必要はなく、1つであってもよいし、2つ又は4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0133】
1…抜枠造型機、12…ガイド、15…上鋳枠、16…上鋳枠シリンダ、17…下鋳枠、18…下鋳枠シリンダ、19…マッチプレート、22…上サンドタンク、25…上プレート、22a…第1透過部材、30a…第2透過部材、30…第1下サンドタンク、31…第2下サンドタンク、32…下タンクシリンダ、35…第1接続口、36…第1閉塞板、37…スクイズシリンダ、38…第2接続口、39…第2閉塞板、40…下プレート、41…下盛枠、42…下盛枠シリンダ、50…制御装置、51…演算部、52…通信部、53…記憶部、61…第1圧力検出器、62…第2圧力検出器、63…第3圧力検出器、64…第4圧力検出器、65…第5圧力検出器、67…表示部、68…通信ネットワーク、90〜97…電空比例弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18