(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自車両に搭載した受電コイルを、地上に設置された送電コイルと対向させ、前記送電コイルから受電コイルに非接触で給電し、給電中に前記受電コイルまたは前記送電コイルの周囲の検出領域にて移動する人を検出した場合、前記給電を停止或いは低減する非接触給電システムの制御方法であって、
前記自車両の周囲に他車両が停車しているか否かを判断し、
前記他車両が停車していると判断した場合、前記他車両が停車していると判断されない場合よりも前記検出領域を広げること
を特徴とする非接触給電システムの制御方法。
前記自車両の前部側方、及び後部側方にそれぞれ設けられ、前記自車両の側方に存在する物体までの距離を検出する距離センサを用いて前記他車両を検出し、それぞれの距離センサで検出した前記他車両までの距離に応じて前記検出領域を設定すること
を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非接触給電システムの制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1実施形態の説明]
図1は、第1実施形態に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この非接触給電システムは、地上側ユニットである給電装置100と、車両側ユニットである受電装置200を備えている。この非接触給電システムは、給電スタンド等に配置された給電装置100から、電気自動車やハイブリッド車等の自車両51に搭載された受電装置200に非接触で電力を供給し、車載バッテリを充電するものである。
【0010】
給電装置100は、給電スタンド近傍の駐車スペース2に配置された送電コイル12を備えている。また、地上コントローラ11(給電制御回路)を備えている。受電装置200は、自車両51の底面に設置された受電コイル22を備えている。受電コイル22は、自車両51が駐車スペース2の所定の停車位置(給電可能位置)に停車したときに、送電コイル12の直上に対向する。
【0011】
送電コイル12は、導電線からなる一次コイルによって構成され、受電コイル22に電力を送電する。また、受電コイル22は、やはり導電線からなる二次コイルによって構成され、送電コイル12から送電された電力を受電する。送電コイル12と受電コイル22の間における電磁誘導作用により、送電コイル12から受電コイル22へ非接触で電力を供給することが可能である。
【0012】
地上コントローラ11は、スイッチング素子で構成されたインバータを備えており、交流電源(図示省略)から送電される交流電力を整流し、更に高周波の交流電力に変換して送電コイル12に供給する。また、地上コントローラ11は、送電コイル12への給電、停止を制御する。更に、送電コイル12へ給電する電力を変更することができる。また、地上コントローラ11は、無線通信の機能を備えており、自車両51の受電装置200に設けられた無線通信部23との間で双方向の通信を行う。
【0013】
受電装置200は、受電コイル22と、無線通信部23と、車両コントローラ24と、整流部25と、バッテリ27と、移動物体センサ26と、距離センサ28を備えている。
【0014】
整流部25は、受電コイル22で受電された交流電力を整流し、整流した直流電力をバッテリ27に充電する。
【0015】
距離センサ28は、自車両51の周囲に存在する他車両等の物体を検出し、更に、検出した物体までの距離を測定する。距離センサ28として、ソナー或いはカメラを用いることができる。検出した距離データを車両コントローラ24に出力する。
【0016】
移動物体センサ26は、自車両51の周辺に存在する歩行者等の移動物体を検出する。移動物体センサ26として、ドップラセンサ或いはカメラを用いることができる。また、移動物体センサ26は、移動物体の検知範囲を調整する機能を備えており、車両コントローラ24の制御により、検知範囲を、後述する
図6Aの領域R1、
図6Bの領域R11のように変更することができる。
【0017】
車両コントローラ24は、バッテリ27の充電状況を監視し、現在の電力情報、電力要求信号を無線通信部23を介して給電装置100の地上コントローラ11に送信する。また、距離センサ28で検出される物体までの距離データ、及び移動物体センサ26で検出される移動物体の検出データを地上コントローラ11に送信する。更に、距離センサ28で自車両51に隣接する他車両が検出された場合に、移動物体センサ26による検出領域を変更する制御を実行する。
【0018】
無線通信部23は、地上コントローラ11との間で双方向の通信を行う。バッテリ27は、複数の二次電池を接続して構成され、自車両51の電力源となる。
【0019】
このような構成により、非接触給電システムは、送電コイル12と受電コイル22との間の電磁誘導作用によって非接触状態で高周波電力の送電、及び受電を行う。即ち、送電コイル12に電力を供給することによって、送電コイル12と受電コイル22との間に磁気的な結合が生じ、送電コイル12から受電コイル22へ電力が供給される。受電コイル22に供給された電力は整流部25で整流され、その後、バッテリ27に充電される。
【0020】
なお、上述した地上コントローラ11、及び車両コントローラ24は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備えるマイクロコンピュータを用いて実現可能である。マイクロコンピュータを地上コントローラ11、或いは車両コントローラ24として機能させるためのコンピュータプログラムを、マイクロコンピュータにインストールして実行する。これにより、マイクロコンピュータは、地上コントローラ11、或いは車両コントローラ24が備える複数の処理回路として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって地上コントローラ11、或いは車両コントローラ24を実現する例を示すが、勿論、専用のハードウェアを用いる構成としてもよい。
【0021】
[距離センサ、移動物体センサの説明]
次に、上述した距離センサ28及び移動物体センサ26の詳細について説明する。本実施形態では、距離センサ28としてソナーを用い、移動物体センサ26としてドップラセンサを用いる。
【0022】
図2は、距離センサ28として、ソナー281(281a〜281f)を採用した場合の配置、及び検出領域を示す説明図である。ソナー281は、自車両51の周囲に向けて超音波を発信し、その反射波を検出することにより、自車両51の周囲に存在する他車両等の物体を検出し、更に、検出した物体までの距離を測定する。
図2に示すように、自車両51の前方の物体を検出するフロントソナー281a、左右前方の物体を検出するフロントコーナソナー281b、前部側方の物体を検出する前部サイドソナー281c、後部側方の物体を検出する後部サイドソナー281d、左右後方の物体を検出するリアコーナソナー281e、及び自車両51の後方の物体を検出するリアソナー281fを備えている。
【0023】
図3は、距離センサ28の他の例として、カメラ282(282a〜282c)を採用した場合の配置、及び検出領域を示す説明図である。
図3に示すように、自車両51の前方を撮影するフロントカメラ282a、側方を撮影するサイドカメラ282b、及び後方を撮影するリアカメラ282cを備えている。そして、各カメラ282で撮影した画像を解析することにより、自車両51の周囲に存在する物体を検出し、更に、検出した物体までの距離を測定する。また、カメラ282として、アラウンドビューカメラを用いることも可能である。
【0024】
図4は、移動物体センサ26として、ドップラセンサ262を採用した場合の配置、及び検出領域を示す説明図である。ドップラセンサ262は、例えば、自車両51の底部に設けられている。
図5に示すように、自車両51の前方の検出領域R3、側方の検出領域R1、R2、及び後方の検出領域R4に電波(マイクロ波)を照射し、物体で反射した反射波を検出する。そして、照射した電波の周波数と、物体で反射した電波の周波数を比較することにより、物体の動きを検出する。物体が動いている場合にはドップラ効果により反射波の周波数が変化するので、物体が動いているか、或いは静止しているかを検出することができる。
【0025】
従って、
図4に示すように、自車両51に接近して、ドアに設けられたキーレスエントリーシステムのリクエストボタンを操作する乗員P1(移動物体)を検出することができる。なお、
図5では、ドップラセンサ262の検出領域R1〜R4のみを示しており、ドップラセンサ262の記載を省略している。
【0026】
ドップラセンサ262の検出領域は、変更可能である。本実施形態では、
図2に示したソナー281(距離センサ28)による検出結果に応じて、ドップラセンサ262の検出領域を変更する。具体的には、
図6Aに示すように、例えばソナー281cで閾値距離Dth以内に物体が検出されず、自車両51に隣接する他車両が存在しないと判断された場合には、ドップラセンサ262の検出領域をR1に設定する。後述するように、検出領域R1は、自車両51の中央ラインC1から距離D0までの範囲である。
【0027】
一方、他車両52が存在する場合には、
図6Bに示すように、ドップラセンサ262による検出領域をR1よりも外側に広げたR11に設定する。後述するように、検出領域R11は、自車両51の中央ラインC1から距離「D(t)+D1
」(>D0)までの範囲である。即ち、自車両51に隣接した他車両52が存在する場合には、より遠くの移動物体を検出できるように、ドップラセンサ262の検出領域を広く設定する。
【0028】
従って、他車両52の乗員がドアに設けられたリクエストボタンを操作するため、他車両52に接近する場合には、この乗員を検出することが可能となる。
また、移動物体センサ26の他の例として、カメラを用いることができる。自車両51の周囲をカメラで撮影し、撮影した画像を解析することにより、自車両51の周囲に存在する移動物体を検出することができる。
【0029】
[第1実施形態の処理手順の説明]
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る非接触給電システムの作用について、
図7、
図8に示すフローチャートを参照して説明する。
図7は、自車両51が駐車スペース2の給電可能位置に停止しているか否かを判断し、給電を開始する処理手順を示している。
【0030】
初めに、ステップS11において、地上コントローラ11は、駐車スペース2に接近する自車両51を検出する。ステップS12において、地上コントローラ11は、自車両51の位置を検出する位置検出センサ(図示省略)で、駐車スペース2に接近する自車両51が給電可能位置に停止しているか否かを判断する。
図1に示す送電コイル12に対して受電コイル22が対向した位置、或いは対向した位置から所定の範囲内の位置に自車両51が達したときに、給電可能位置であると判断する。
【0031】
自車両51が給電可能位置に停止していると判断された場合には、ステップS13において、地上コントローラ11は送電コイル12に給電して、バッテリ27の充電を開始する。即ち、送電コイル12に電力を供給して該送電コイル12を励磁し、非接触で受電コイル22に電力を送電する。受電コイル22で受電された電力は整流部25で整流され、その後バッテリ27に充電される。
【0032】
そして、本実施形態では、送電コイル12と受電コイル22との間で非接触給電が行われているとき、自車両51の近傍に歩行者等の移動物体が検出された場合には、送電コイル12への給電を停止或いは低減する処理を実施する。
【0033】
以下、
図8に示すフローチャートを参照して非接触給電中の処理手順について説明する。初めに、ステップS21において、車両コントローラ24は、ソナー281(距離センサ28)を作動させ、その検出データに基づいて自車両51の周囲に物体が存在するか否かを判断する。更に、物体が存在する場合にはこの物体までの距離D(t)を測定する。なお、「t」は、距離検出の時刻を示す。また、距離D(t)は、自車両51の中央ライン(
図6Aに示すC1)を基準とした距離とする。
【0034】
ステップS22において、車両コントローラ24は、距離D(t)が予め設定した閾値距離Dth未満であるか否かを判断する。閾値距離Dthは、自車両51に隣接して停車する他車両までの距離に基づいて設定することができる。
【0035】
「D(t)
≧Dth」である場合には(ステップS22でNO)、ステップS24において、車両コントローラ24は、自車両51に隣接する他車両は存在しないものと判断する。
【0036】
「D(t)
<Dth」である場合には(ステップS22でYES)、ステップS23において、車両コントローラ24は、前回検出した距離D(t−1)と、今回検出した距離D(t)の差分を演算する。更に、演算した差分がゼロであるか否かを判断する。
【0037】
差分がゼロでない場合には(ステップS23でNO)、ソナー281が検出した物体は移動しており、ステップS25において、他車両は存在しないものと判断する。
【0038】
一方、差分がゼロである場合には(ステップS23でYES)、ソナー281で検出された物体は停止しているので、ステップS26において、自車両51に隣接する他車両52が存在するものと判断する。
【0039】
ステップS24或いはS25で、他車両が存在しないと判断された場合には、ステップS27において、車両コントローラ24は、
図6Aに示すようにドップラセンサ262の側方の検出領域を、中央ラインC1から距離D0(以下、「通常検出距離D0」という)までの領域R1に設定する。通常検出距離D0は、自車両51の乗員がドアの施錠、解錠用のリクエストボタンを押すために該自車両51に接近する距離とするのが好ましく、例えば5mである。その結果、
図4に示したように、乗員P1を検出することが可能となる。
【0040】
ステップS26で、隣接する他車両52が存在すると判断された場合には、ステップS28において、車両コントローラ24は、
図6Bに示すようにドップラセンサ262の側方の検出領域を、中央ラインC1から距離「D(t)+D1」までの領域R11に設定する。「D1」は拡張距離である。その結果、他車両52に接近し、ドア近傍でリクエストボタンを操作する乗員がドップラセンサ262の検出領域に含まれるので、他車両52の乗員を検出することができる。また、
図6Bに示すように、拡張距離を他車両52の車幅よりも大きい「D1’」に設定することも可能である。このように設定することにより、ドップラセンサ262の検出領域が、中央ラインC1から距離「D(t)+D1’」までの領域となる。その結果、
図6Cに示すように、他車両52の、自車両51に対して反対側(図中、右側)から接近する乗員P2を検出することができ、より高精度な移動物体の検出が可能となる。
【0041】
ステップS29において、車両コントローラ24は、ドップラセンサ262にて移動物体が検出されたか否かを判断する。移動物体を検出した場合には(ステップS29でYES)、ステップS30において、車両コントローラ24は、無線通信部23から給電装置100の地上コントローラ11に、給電を停止或いは低減させるための指令信号を出力する。これにより、地上コントローラ11は、送電コイル12への給電を停止或いは低減する。即ち、自車両51、或いは、該自車両51に隣接する他車両52でキーレスエントリーシステムが操作された場合に、無線通信に影響を与えることを防止できる。
一方、ステップS29の処理で移動物体が検出されないと判断された場合には、ステップS31において、送電コイル12への給電を通常時の給電とする。
【0042】
[第1実施形態の効果の説明]
このように、第1実施形態に係る非接触給電システムでは、ソナー281(距離センサ28)にて自車両51に隣接する他車両52が存在するか否かを判断する。そして、
図6Aに示したように他車両が存在しない場合には、ドップラセンサ262(移動物体センサ26)による検出領域をR1に設定する。従って、自車両51に接近する乗員のみを検出し、乗員が検出された場合には、給電を停止或いは低減するので、非接触給電時に生じる電磁波が自車両51のキーレスエントリーシステムの無線通信に影響を与えることを回避できる。更に、検出領域を必要以上に広げないので、自車両51の近傍を通過する歩行者を検出して給電を停止或いは低減するという誤作動を防止することができる。
【0043】
また、
図6Bに示したように、自車両51に隣接する他車両52が存在する場合には、ドップラセンサ262による検出領域をR1からR11に広げる。即ち、他車両52が停車していると判断した場合には、他車両52が停車していると判断されない場合よりも検出領域を広げる。従って、自車両51、及び他車両52に接近する乗員を検出し、乗員が検出された場合には、給電を停止或いは低減するので、非接触給電時に生じる電磁波が、自車両51、及び他車両52のキーレスエントリーシステムの無線通信に影響を与えることを回避できる。
【0044】
また、ドップラセンサ262(移動物体センサ26)を自車両51に搭載しているので、自車両51で他車両52を検出することができ、移動物体の検出を高精度に行うことができる。
更に、検出領域R11は、他車両52までの距離D(t)に、拡張距離D1を加算した距離としているので、他車両52に接近する乗員を確実に検出することが可能となる。
【0045】
キーレスエントリーシステムでは、携帯機を所持した乗員が自車両に接近してドアノブ付近に設けられたリクエストボタンを押すことにより、自車両から数kHzの周波数の信号(LF)が発せられる。携帯機は、この信号を受信すると、数GHzの周波数の信号(UHF)を出力しドアの施錠、或いは解錠を行う。このようなキーレスエントリーシステムでは、非接触給電時に発生する電磁波の影響を受けて誤動作を引き起こす可能性が有る。本実施形態では、車両ドアの施錠、解錠を行う乗員(移動物体)の存在が検出された場合には、給電が停止或いは低減されるので、非接触給電時に生じる電磁波がキーレスエントリーシステムの無線通信に影響を与えることを回避することができる。
【0046】
[第1実施形態の変形例の説明]
前述した第1実施形態では、自車両51に隣接する他車両52の有無に応じて、ドップラセンサ262の検出領域を変更することについて示した。しかし、
図9に示すように、自車両51が非接触給電を実施する駐車スペースの側方に歩道32が存在し、更に、歩道32の側方に壁33が存在する場合がある。このような場合には、閾値距離Dthの内側に壁33が存在するのでソナー281により壁33が検出され、自車両51の側方に他車両が停車しているものと誤認識してしまう。そして、この壁33の近傍までドップラセンサ262の検出領域が広がるように設定され、歩道32を歩行する歩行者を移動物体として検出してしまう。このため、給電を停止或いは低減するという誤動作が発生する可能性が有る。
【0047】
変形例では、ドップラセンサ262による検出を無効にする無効スイッチ(図示省略)を設ける。そして、無効スイッチが操作された場合には、移動物体の検出を行わず、ドップラセンサ262の検出領域を変更しない。即ち、ドップラセンサ262の検出領域を
図6Aに示したR1に維持する。こうすることにより、誤動作の発生を防止することが可能となる。
【0048】
[第2実施形態の説明]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、第2実施形態に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
図10に示すように、第2実施形態では、移動物体センサ26が給電装置101に設けられ、受電装置201には、移動物体センサ26が設けられていない点で前述した第1実施形態と相違する。即ち、
図11に示すように、送電コイル12の近傍にドップラセンサ262(移動物体センサ26)を設け、自車両51に接近する移動物体を検出する。それ以外の構成は、前述した第1実施形態と同様である。第1実施形態と同様に、移動物体センサ26として、ドップラセンサ262以外に、カメラを用いることができる。
【0049】
第2実施形態では、距離センサ28で自車両51の周囲に存在する物体が検出され、更にこの物体までの距離が検出された場合には、この距離データを無線通信部23より地上コントローラ11に送信する。地上コントローラ11は、物体までの距離に基づいて、自車両51に隣接する他車両52が存在するか否かを判断し、更に、他車両52が存在する場合には、ドップラセンサ262の検出領域を変更する。
【0050】
具体的には、前述した第1実施形態と同様に、距離センサ28の検出結果に基づいて、自車両51に隣接する他車両52が存在しないと判断された場合には、
図6Aに示すようにドップラセンサ262による検出領域を領域R1に設定する。一方、他車両52が存在すると判断された場合には、
図6Bに示すようにドップラセンサ262による検出領域を広げてR11に設定する。
【0051】
こうすることにより、前述した第1実施形態と同様に、非接触給電時に生じる電磁波が、自車両51或いは他車両52のキーレスエントリーシステムの無線通信に影響を与えることを回避できる。また、ドップラセンサ262を地上に設置するので、車両側にドップラセンサ262を設置する必要がなく、車両に搭載する部品を削減することが可能となる。
【0052】
[第3実施形態の説明]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、移動物体を検出して給電を停止或いは低減させ、その後、移動物体が検出されなくなった場合に、即時に通常の給電に戻すのではなく、所定の中断時間の経過後に通常の給電に戻す点で、前述した第1実施形態と相違する。システムの構成は第1実施形態で説明した
図1と同様であるので説明を省略する。
【0053】
以下、第3実施形態の係る非接触給電システムの処理手順を、
図12に示すフローチャートを参照して説明する。初めに、ステップS41において、車両コントローラ24は、後述する中断カウント値nを「0」に設定する。
【0054】
次いで、ステップS42において、車両コントローラ24は、ソナー281(距離センサ28)の検出データに基づいて、自車両51の周囲に物体が存在するか否かを判断し、更に物体が存在する場合にはこの物体までの距離D(t)を測定する。なお、「t」は、距離検出の時刻を示す。
【0055】
ステップS43において、車両コントローラ24は、距離D(t)が予め設定した閾値距離Dth未満であるか否かを判断する。閾値距離Dthは、自車両51に隣接して停車する他車両までの距離に基づいて設定することができる。
【0056】
「D(t)≧Dth」である場合には(ステップS43でNO)、自車両51から距離Dth以内に物体は存在しないので、ステップS45において、車両コントローラ24は、自車両51に隣接する他車両は存在しないと判断する。
【0057】
「D(t)<Dth」である場合には(ステップS43でYES)、ステップS44において、車両コントローラ24は、前回検出時の距離D(t−1)と、今回検出時の距離D(t)の差分を演算し、差分が変化判断閾値Dchgを上回っているか否かを判断する。
【0058】
変化判断閾値Dchgを上回っている場合には(ステップS44でYES)、ソナー281で検出された物体は移動しており、自車両51の近傍に停車している車両ではないので、ステップS46において、自車両51に隣接する他車両は存在しないものと判断する。
【0059】
一方、変化判断閾値Dchgを上回っていない場合には(ステップS44でNO)、この物体は停止しており、ステップS47において、自車両51に隣接する他車両が存在するものと判断する。
【0060】
ステップS45またはS46で、他車両が存在しないと判断された場合には、ステップS48において、車両コントローラ24は、ドップラセンサ262(移動物体センサ26)の検出領域を、通常検出距離D0以内の検出領域R1(
図6A参照)に設定する。
【0061】
ステップS47で、他車両が存在すると判断された場合には、ステップS49において、車両コントローラ24は、ドップラセンサ262の検出領域を「D(t)+D1」以内の検出領域R11(
図6B参照)に設定する。「D1」は、
図6Bに示したように、拡張距離である。
【0062】
ステップS50において、ドップラセンサ262により移動物体(歩行者等)が検出されたか否かを判断する。移動物体が検出された場合には(ステップS50でYES)、ステップS51において、車両コントローラ24は、無線通信部23から地上コントローラ11に、給電を停止或いは低減する指令信号を出力する。これにより、送電コイル12への給電が停止或いは低減され、電磁波の発生が抑制されるので、キーレスエントリーシステムの無線通信への影響を回避することができる。その後、ステップS52において、車両コントローラ24は、上述した中断カウント値nを「n=N」に設定する。
【0063】
一方、ステップS50の処理で移動物体が検出されない場合には、ステップS53において、中断カウント値nを「1」だけ減算する。具体的には、「n=n−1」とする。但し、n=0の場合にはこれを維持する。
【0064】
ステップS54において、車両コントローラ24は、中断カウント値n=0であるか否かを判断する。そして、n=0で無ければ(ステップS54でNO)、ステップS42に処理を戻す。一方、n=0であれば(ステップS54でYES)、ステップS55において、車両コントローラ24は、送電コイル12への給電を通常の給電に戻す。即ち、給電が停止或いは低減されている場合には、これを戻して通常の給電とする。その後、ステップS42に処理を戻す。
【0065】
このように、第3実施形態に係る非接触給電システムでは、自車両51或いは他車両52の近傍に歩行者等の移動物体が存在する場合には、送電コイル12への給電を停止或いは低減することにより、キーレスエントリーシステムの無線通信に与える影響を低減することができる。更に、その後、移動物体の存在が検出されなくなった場合、例えば、自車両51の乗員が自車両51から離れて
ドップラセンサ262による検出距離よりも遠くへ移動した場合には、送電コイル12への給電を即時に通常時の給電に戻すのではなく、中断カウント値Nがゼロになるまでの間は、給電を停止或いは低減した状態を継続する。従って、送電電力が頻繁に変更されることを回避できる。
【0066】
[第4実施形態の説明]
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態では、自車両51に搭載される前部サイドソナー281c(
図2参照)の検出データと、後部サイドソナー281dの検出データに基づいて、自車両51に隣接する他車両52が、自車両51に対して並列に停車しているか否かを判断する。この判断結果に基づいて、ドップラセンサ262(移動物体センサ26)による検出領域を変更する。システム構成は、前述した
図1と同様であるので説明を省略する。
【0067】
次に、第4実施形態に係る非接触給電システムの作用を、
図13に示すフローチャートを参照して説明する。
図13は、ドップラセンサ262による検出領域を設定するまでの処理を示している。
【0068】
初めに、ステップS61において、
図2に示した前部サイドソナー281c、及び後部サイドソナー281dによる距離検出を行う。自車両51の側方に物体が存在する場合には、前部サイドソナー281cにより距離D1(t)、及び後部サイドソナー281dにより距離D2(t)が検出される。
【0069】
ステップS62において、車両コントローラ24は、距離D1(t)が閾値距離Dth未満であるか否かを判断する。即ち、自車両51の前部側方の、閾値距離Dthまでの領域に物体が存在しているか否かを判断する。物体が存在しなければステップS63に処理を進め、存在する場合にはステップS64に処理を進める。
【0070】
ステップS63において、車両コントローラ24は、距離D2(t)が閾値距離Dth未満であるか否かを判断する。即ち、自車両51の後部側方の、閾値距離Dthまでの領域に物体が存在しているか否かを判断する。物体が存在しなければステップS66に処理を進め、存在する場合にはステップS67に処理を進める。
【0071】
ステップS66において、車両コントローラ24は、自車両51に隣接する他車両は存在しないと判断する。即ち、前部サイドソナー281cにより、閾値距離Dth以内に物体が検出されず、且つ、後部サイドソナー281dについても、閾値距離Dth以内に物体が検出されないということは、
図14Aに示すように、自車両51の近傍に物体が存在していないので、他車両は存在していないと判断する。その後、ステップS71において、ドップラセンサ262による検出領域を、通常検出距離D0以下の検出領域R1とする。
【0072】
ステップS67において、車両コントローラ24は、自車両51の後部にのみ隣接する他車両52が存在していると判断する。即ち、前部サイドソナー281cにより、閾値距離Dth以内に物体が検出されず、且つ、後部サイドソナー281dにより、閾値距離Dth以内に物体が検出されているということは、
図14Bに示すように、自車両51の側部後方に他車両52が存在していると判断する。その後、ステップS72において、ドップラセンサ262の検出領域を「D2(t)+Dk2」以下の検出領域R31に設定する。但し、「Dk2」は、拡張距離であり負値である。
【0073】
一方、ステップS64において、車両コントローラ24は、「D2(t)<D1(t)+dD」、且つ「D2(t)>D1(t)−dD」であるか否かを判断する。「dD」は、他車両52が自車両51に対して並列に停車しているか否かを判断するための微小距離である。即ち、自車両51に対してほぼ並列に他車両52が停車している場合にYES判定となり、そうでない場合にNO判定となる。
【0074】
ステップS64でNO判定の場合には、ステップS65において、車両コントローラ24は、距離D2(t)が閾値距離Dth未満であるか否かを判断する。即ち、自車両51の後部側方の、閾値距離Dth内に物体が存在しているか否かを判断する。物体が存在しなければステップS68に処理を進め、物体が存在する場合にはステップS69に処理を進める。
【0075】
ステップS68において、車両コントローラ24は、自車両51の前部にのみ隣接する他車両52が存在しているものと判断する。即ち、前部サイドソナー281cにより閾値距離Dth以内に物体が検出され、且つ、後部サイドソナー281dにより閾値距離Dth以内に物体が検出されないということは、
図14Cに示すように、自車両51の側部前方に他車両52が存在していると判断する。その後、ステップS73において、ドップラセンサ262の検出領域を「D1(t)+Dk1」以下の検出領域R32に設定する。「Dk1」は、拡張距離である。
【0076】
即ち、自車両51から他車両52までの距離D1(t)に、拡張距離Dk1を加算した距離までの領域を検出領域R32に設定するので、他車両52の乗員が該他車両52に接近した場合には、ドップラセンサ262により確実に検出できる。また、必要以上に検出領域を広げることを防止できる。
【0077】
ステップS69において、車両コントローラ24は、自車両51に隣接する他車両52が存在するものと判断する。この場合、距離D1(t)と距離D2(t)の差分が大きいので(上記した「dD」よりも大きいので)、
図14Dに示すように、他車両52は自車両51に対して斜めに停車している。その後、ステップS74において、ドップラセンサ262の検出領域を「(D1(t)+D2(t))/2+Dk3」以下の検出領域R33に設定する。「Dk3」は、拡張距離である。
【0078】
即ち、距離D1(t)と距離D2(t)の平均値を演算し、この平均値に拡張距離Dk3を加算した距離までの領域を検出領域R33に設定する。従って、他車両52の乗員が該他車両52に接近した場合には、ドップラセンサ262により確実に検出できる。また、必要以上に検出領域を広げることを防止できる。
【0079】
一方、ステップS64で
YES判定の場合には、ステップS70において、車両コントローラ24は、
図14Eに示すように自車両51に隣接して並列に他車両52が存在していると判断する。その後、ステップS75において、ドップラセンサ262の検出領域を「D1(t)+Dk4」以下の検出領域R34に設定する。「Dk4」は、拡張距離である。
【0080】
即ち、自車両51から他車両52までの距離D1(t)に、拡張距離Dk4を加算した距離までの領域を検出領域R34に設定するので、他車両52の乗員が該他車両52に接近した場合には、ドップラセンサ262により確実に検出できる。
【0081】
その後、前述した第1実施形態と同様に、上記の手法で適宜設定されたドップラセンサ262の検出領域内に移動物体(歩行者等)が検出された場合には、送電コイル12への給電を停止或いは低減する。こうして、電磁波の発生を軽減し、キーレスエントリーシステムの無線通信に影響を与えることを回避できるのである。
【0082】
このようにして、第4実施形態に係る非接触給電システムでは、自車両51に隣接する他車両52が存在する場合には、他車両52の停車状況に応じてドップラセンサ262の検出領域を変更している。具体的には、
図14Bに示すように自車両51の後方に他車両52が存在する場合、
図14Cに示すように自車両51の前方に他車両52が存在する場合、
図14Dに示すように自車両51に対して斜めに他車両52が存在する場合、及び、
図14Eに示すように自車両51に対して並列に他車両52が存在する場合で、それぞれドップラセンサ262の検出領域を適宜設定している。
【0083】
従って、他車両52の停車状況に影響されず、自車両及び他車両の乗員がキーレスエントリーシステムを操作するときの誤動作をより確実に回避することが可能となる。
【0084】
[第5実施形態の説明]
次に、本発明の第5実施形態ついて説明する。第5実施形態では、駐車スペース2の自車両周辺を撮影する車両撮影用カメラ31を設け、自車両51に隣接する他車両52の有無を該車両撮影用カメラ31で撮影した画像に基づいて判断する。
図15は、第5実施形態に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図、
図16は、車両撮影用カメラ31を用いて駐車スペース2全体を撮影する様子を示す説明図である。第5実施形態では、給電装置102が、駐車スペース2を撮影する車両撮影用カメラ31を備える点、及び受電装置202が距離センサ28を備えていない点で、前述した
図1と相違する。それ以外の構成は、
図1と同様であるので同一符号を付して構成説明を省略する。
【0085】
図16に示すように、車両撮影用カメラ31により自車両51及び他車両52を撮影することが可能である。そして、地上コントローラ11は、車両撮影用カメラ31で撮影した画像を解析し、自車両51に隣接する他車両52が存在するか否かを判断する。
【0086】
そして、前述した第1実施形態と同様に、他車両52の有無に基づいてドップラセンサ262の検出領域を設定する。具体的には、
図6Aに示したように、他車両52が存在しない場合には、ドップラセンサ262の検出領域をR1に設定する。
図6Bに示したように、他車両52が存在する場合には、ドップラセンサ262の検出領域をR11に設定する。こうすることにより、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0087】
このようにして、第5実施形態に係る非接触給電システムでは、駐車スペース2全体を撮影する車両撮影用カメラ31を用いて自車両51に隣接する他車両52を検出する。従って、ソナー281等の距離センサ28を設ける必要が無く、自車両51に搭載する機器、部品を削減することができる。
【0088】
[第6実施形態の説明]
次に、本発明の第6実施形態ついて説明する。第6実施形態では、自車両51の周囲の物体を検出する距離センサ28として、
図3に示したカメラ282(282a〜282c)を用いて、自車両51の前方、側方、及び後方を検出する。システムの構成は、前述した
図1に示した非接触給電システムと同様であるので説明を省略する。また、自車両51の側方に隣接する他車両52が存在する場合の処理は、前述した第1実施形態と同様である。
【0089】
第6実施形態では、フロントカメラ282a(
図3参照)を用いて、自車両51の前方に他車両が存在するか否かを判断し、他車両が存在しない場合には、自車両51の前方を検出するドップラセンサ262の検出データを無効とする。即ち、自車両51の前方に移動物体が検出された場合であっても、この移動物体の検出結果を無効とする。
【0090】
以下、
図17に示すフローチャート、及び
図18A、
図18Bに示す説明図を参照して、第6実施形態の作用を説明する。初めに、ステップS81において、車両コントローラ24は、フロントカメラ282a(距離センサ28)で撮影した自車両51の前方の画像を取得する。
【0091】
ステップS82において、車両コントローラ24は、前方の画像を解析し、自車両51の前方に他車両が存在するか否かを判断する。
【0092】
他車両が存在する場合には(ステップS82でYES)、ステップS83に処理を進め、存在しない場合には(ステップS82でNO)、ステップS86に処理を進める。
【0093】
ステップS83において、車両コントローラ24は、前方の他車両までの距離D(t)が閾値距離Dth未満であるか否かを判断する。
【0094】
「D(t)<Dth」である場合には(ステップS83でYES)、ステップS84で、前方に他車両が存在するものと判断する。
図18Aに示すように自車両51の前方に他車両52が存在している。
【0095】
その後、ステップS85において、車両コントローラ24は、ドップラセンサ262の検出データに基づき、自車両51と他車両52の間に移動物体が存在するか否かを判断する。例えば、
図18Aに示すように、他車両52の後方でキーレスエントリーシステムを操作する乗員P12(移動物体)が存在する場合には、この存在が検出される。そして、乗員P12が検出された場合には、ステップS88において、車両コントローラ24は、給電を停止或いは低減するための指令信号を地上コントローラ11に送信する。地上コントローラ11は、送電コイル12への給電を停止或いは低減する。
【0096】
従って、他車両52の乗員P12がキーレスエントリーシステムを操作する際に、無線信号に影響を与えることを回避できる。また、自車両51の前方に移動物体が検出されない場合には(ステップS85でNO)、ステップS89において、通常の給電とする。
【0097】
一方、自車両51の前方に他車両が存在しないと判断された場合(ステップS82でNO)、或いは、前方車両までの距離が閾値距離Dthよりも大きい場合(ステップS83でNO)には、ステップS86において、車両コントローラ24は、自車両51の前方に車両が存在しないものと判断する。
【0098】
更に、ステップS87において、自車両51の前方の移動物体の検出を無効とする。即ち、
図18Bに示すように、自車両51の前方に車両が存在しない場合には、ドップラセンサ262による前方の検出領域R3(
図5参照)での移動物体の検出を無効とする。従って、例えば、
図18Bに示す自車両51の前方の歩道を歩行者P11が歩行している場合に、この歩行者P11を移動物体として検出し給電を停止或いは低減するという誤動作の発生を防止できる。
【0099】
このようにして、第6実施形態に係る非接触給電システムでは、自車両51の前方、及び側方を移動物体の検出領域としているので、自車両51の前方に停車している他車両52の乗員P12が例えばバックドアにてキーレスエントリーシステムを操作する際に、無線信号に影響を与えることを回避できる。更に、歩道等の歩行者が多く通行する領域に面した駐車スペースに自車両51を停車する場合に、自車両51の前方の移動物体の検出を無効とするので、歩道の歩行者を検出して給電を停止或いは低減するという誤動作を防止できる。
【0100】
以上、本発明の非接触給電システムの制御方法、及び非接触給電システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。