特許第6973489号(P6973489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973489電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973489
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20211118BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20211118BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20211118BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20211118BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20211118BHJP
【FI】
   H01M10/04 W
   H01M50/538
   H01M50/105
   H01M50/178
   !H01M10/0587
【請求項の数】14
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2019-537620(P2019-537620)
(86)(22)【出願日】2018年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2018030680
(87)【国際公開番号】WO2019039436
(87)【国際公開日】20190228
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2017-158829(P2017-158829)
(32)【優先日】2017年8月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀俊
【審査官】 松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102299294(CN,A)
【文献】 特開2011−204660(JP,A)
【文献】 特開2000−223108(JP,A)
【文献】 特開2009−272161(JP,A)
【文献】 特開2002−305029(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/104117(WO,A1)
【文献】 特開2009−176582(JP,A)
【文献】 特開2008−262777(JP,A)
【文献】 特開2001−202946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04−39
H01M 50/50−598
H01M 50/10−198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極負極、および前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータを有し、前記正極と前記負極と前記セパレータが巻回された電極体と、
前記電極体を収容する外装材と
を備え、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する2つ以上の電極に分割されており、
2つ以上の前記電極はそれぞれ集電リードを有し、前記集電リード同士が前記外装材の外側で電気的に接続されており、
前記正極、前記負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部が、前記セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
前記対向部が、分割された前記電極のうち最も外周側に位置する前記電極の外周側に設けられている電池。
【請求項2】
正極負極、および前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータを有し、前記正極と前記負極と前記セパレータが巻回された電極体と、
前記電極体を収容する外装材と
を備え、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する2つ以上の電極に分割されており、
2つ以上の前記電極はそれぞれ集電リードを有し、前記集電リード同士が前記外装材の外側で電気的に接続されており、
前記正極、前記負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部が、前記セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
前記対向部が、分割された全ての前記電極の外周側に設けられている電池。
【請求項3】
正極負極、および前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータを有し、前記正極と前記負極と前記セパレータが巻回された電極体と、
前記電極体を収容する外装材と
を備え、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されており、
第1の電極および前記第2の電極はそれぞれ集電リードを有し、前記集電リード同士が前記外装材の外側で電気的に接続されており、
前記正極、前記負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部が、前記セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
前記対向部が、前記第1の電極および前記第2の電極のうち外周側に位置するものの外周側に設けられている電池。
【請求項4】
正極負極、および前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータを有し、前記正極と前記負極と前記セパレータが巻回された電極体と、
前記電極体を収容する外装材と
を備え、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されており、
第1の電極および前記第2の電極はそれぞれ集電リードを有し、前記集電リード同士が前記外装材の外側で電気的に接続されており、
前記正極、前記負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部が、前記セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
前記対向部が、前記第1の電極および前記第2の電極の外周側に設けられている電池。
【請求項5】
第1の電極および前記第2の電極のうち外周側に位置する前記電極は、内周側の端部に前記集電リードを有する請求項3または4に記載の電池。
【請求項6】
前記電極体は、扁平状を有し、
2つ以上の前記電極がそれぞれ有する前記集電リードは、前記電極体の厚さ方向に重ねられている請求項1または2に記載の電池。
【請求項7】
前記集電リードは、該集電リードの一端が外部に出されるようにして前記外装材の周縁部に挟まれており、
前記外装材と前記集電リードとの間、および重ねられた前記集電リードの間に設けられたシーラントをさらに備える請求項に記載の電池。
【請求項8】
前記外装材は、ラミネートフィルムである請求項1から7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電池と、
前記電池に対する充放電を制御する制御部と、
を備える電池パック。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を備える電動車両。
【請求項12】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電池を備え、
前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
【請求項13】
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
前記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、前記電池の充放電制御を行う請求項12に記載の蓄電装置。
【請求項14】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の正極および負極を巻回した巻回構造の電池は広く用いられている。この巻回構造の電池では、電池特性を向上するために種々の構成を有するもの検討がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数の正極集電タブ及び複数の負極集電タブが同じ向きに突出した捲回型電極群を具備する電池が開示されている。
【0004】
特許文献2には、断面が略長円形状の巻回電極体を複数個、同一の電池外装体内に並べて配置されており、複数個の巻回電極体が各巻回電極体から取り出されたリード端子を接続することで一体化された電池が開示されている。
【0005】
特許文献3には、正極板と負極板とをセパレーターフィルムを介して捲回した内部電極体が電池ケースに収容されており、正極板もしくは負極板の少なくとも一方が2枚以上の分割電極板からなるリチウム二次電池が開示されている。
【0006】
特許文献4には、負極と、正極と、負極及び正極の間に配置されているセパレータとが巻回されてなる電極体を備え、負極及び正極のうちの少なくとも一方は、巻回方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている複数の電極ユニットに分割されているリチウム二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−167890号公報
【特許文献2】特開2006−277990号公報
【特許文献3】特開平11−120990号公報
【特許文献4】特開2011−204660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、電池の表層近くで外傷等に起因する短絡が生じた場合の安全性を向上することができる電池、その電池を備える電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本開示の電池は、
正極負極、および正極と負極との間に設けられたセパレータを有し、正極と負極とセパレータが巻回された電極体と、
電極体を収容する外装材と
を備え、
正極および負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する2つ以上の電極に分割されており、
2つ以上の電極はそれぞれ集電リードを有し、集電リード同士が外装材の外側で電気的に接続されており、
正極、負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
正極集電体露出部および負極集電体露出部が、セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
対向部が、分割された電極のうち最も外周側に位置する電極の外周側に設けられている
本開示の電池は、
正極、負極、および正極と負極との間に設けられたセパレータを有し、正極と負極とセパレータが巻回された電極体と、
電極体を収容する外装材と
を備え、
正極および負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する2つ以上の電極に分割されており、
2つ以上の電極はそれぞれ集電リードを有し、集電リード同士が外装材の外側で電気的に接続されており、
正極、負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
正極集電体露出部および負極集電体露出部が、セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
対向部が、分割された全ての電極の外周側に設けられている。
本開示の電池は、
正極、負極、および正極と負極との間に設けられたセパレータを有し、正極と負極とセパレータが巻回された電極体と、
電極体を収容する外装材と
を備え、
正極および負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されており、
第1の電極および第2の電極はそれぞれ集電リードを有し、集電リード同士が外装材の外側で電気的に接続されており、
正極、負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
正極集電体露出部および負極集電体露出部が、セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
対向部が、第1の電極および第2の電極のうち外周側に位置するものの外周側に設けられている。
本開示の電池は、
正極、負極、および正極と負極との間に設けられたセパレータを有し、正極と負極とセパレータが巻回された電極体と、
電極体を収容する外装材と
を備え、
正極および負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されており、
第1の電極および第2の電極はそれぞれ集電リードを有し、集電リード同士が外装材の外側で電気的に接続されており、
正極、負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
正極集電体露出部および負極集電体露出部が、セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成しており、
対向部が、第1の電極および第2の電極の外周側に設けられている。
【0010】
本開示の電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システムは、上述の電池のいずれかを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電池の表層近くで外傷等に起因する短絡が生じた場合の安全性を向上することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果またはそれらと異質な効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1Aは、第1の実施形態に係る電池の外観の一例を示す斜視図である。図1Bは、図1AのIB−IB線に沿った断面図である。
図2】第1の実施形態に係る電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
図3図2のIII−III線に沿った断面図である。
図4図4Aは、正極が分割されていない電池の短絡電流の流れ方を説明するための模式図である。図4Bは、正極が分割されている電極の短絡電流の流れ方を説明するための模式図である。
図5】電極体の層数の定義を説明するための断面図である。
図6】第2の実施形態に係る電池の構成の一例を示す分解斜視図である。
図7図7は、電極体の第1の変形例を示す。
図8図8は、電極体の第2の変形例を示す。
図9】応用例としての電子機器の構成の一例を示すブロック図である。
図10】応用例としての車両の構成の一例を示す概略図である。
図11】応用例としての蓄電システムの構成の一例を示す概略図である。
図12図12Aは、各電池のエネルギー密度と、釘を貫通させた場合の安全性との関係を示すグラフである。図12Bは、各電池のエネルギー密度と、釘を表面から0.5mm刺した場合の安全性との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態および応用例について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(電池の例)
2 第2の実施形態(電池の例)
3 応用例1(電池パックおよび電子機器の例)
4 応用例2(車両の例)
5 応用例3(蓄電システムの例)
【0014】
<1 第1の実施形態>
[電池の構成]
第1の実施形態に係る非水電解質二次電池(以下単に「電池」という。)10は、図1A、2に示すように、いわゆるラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池であり、正極リード(集電リード)11A、11Bおよび負極リード(集電リード)11Cが取り付けられた扁平状の電極体20と、電解液(図示せず)と、電極体20および電解液を収容するフィルム状の外装材30とを備える。電池10をその主面に垂直な方向から平面視すると、電池10は長方形状を有している。
【0015】
(正極、負極リード)
正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cは、電池10の一方の短辺側から同一方向に導出されている。正極リード11A、11Bは、電極体20の厚さ方向に重なるように設けられ、外装材30の外側で電気的に接続されている。以下では、正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cが導出された電極体20の短辺側をトップ側、それとは反対の短辺側をボトム側という。また、電池10の長辺側をサイド側という。
【0016】
正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cは、例えば、薄板状または網目状を有している。正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cは、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)またはステンレス等の金属材料により構成されている。
【0017】
正極リード11A、11Bはそれぞれ、図1A、1B、2に示すように、外気の侵入を抑制するためのシーラント12A、12Bにより被覆されている。より具体的には、正極リード11Aと外装材30との間、正極リード11Bと外装材30との間にそれぞれシーラント12A、12Bが設けられ、正極リード11A、11B間にシーラント12A、12Bが設けられている。なお、正極リード11A、11B間にシーラント12A、12Bのいずれか一方のみが設けられるようにしてもよい。
【0018】
シーラント12A、12Bは、正極リード11A、11Bのうち電極体20のトップ側の端部またはその近傍に位置する部分から外装材30により挟まれる部分までの範囲を覆っている。すなわち、シーラント12A、12Bは、外気の侵入を抑制するばかりではなく、正極リード11A、11B同士が外装材30の内側および周縁部において電気的に接触しないように保持もしている。
【0019】
負極リード11Cは、図1A、1B、2に示すように、外気の侵入を抑制するためのシーラント12Cにより被覆されている。より具体的には、シーラント12Cは、負極リード11Cと外装材30との間に設けられている。
【0020】
シーラント12A、12B、12Cはそれぞれ、正極リード11A、11B、負極リード11Cに対して密着性を有する絶縁性の材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0021】
(外装材)
外装材30は、矩形状を有し、その長手方向の中央部30Aから各辺が重なるようにして折り返されている。折返し部となる中央部30Aには、切り込み等が予め設けられていてもよい。折り返された外装材30の間に電極体20が挟み込まれている。折り返された外装材30の周囲のうちトップ側にシール部31Aが形成されると共に、両サイド側にシール部31Bがそれぞれ形成されている。外装材30は、重ね合わされる一方の面に、電極体20を収容するための収容部32を有している。この収容部32は、例えば、深絞り加工により形成される。
【0022】
外装材30は、例えば、柔軟性を有する矩形状のラミネートフィルムからなる。外装材30は、金属層、金属層の一方の面(第1の面)に設けられた第1の樹脂層と、金属層の他方の面(第2の面)に設けられた第2の樹脂層とを備える。外装材30は、必要に応じて、金属層と第1の樹脂層との間、および金属層と第2の樹脂層との間のうちの少なくとも一方に接着層をさらに備えるようにしてもよい。なお、外装材30の両面のうち、第1の樹脂層側の面が外側の面となり、第2の樹脂層側の面が電極体20を収納する内側の面となる。
【0023】
金属層は、水分等の進入を抑制し、収納物である電極体20を保護する役割を担うバリア層である。金属層は、金属箔であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を含んでいる。
【0024】
第1の樹脂層は、外装材30の表面を保護する機能を有する表面保護層である。第1の樹脂層は、例えばナイロン(Ny)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)のうちの少なくとも1種を含んでいる。
【0025】
第2の樹脂層は、折り返された外装材30の内側面の周縁同士を熱融着によりシールするための熱融着樹脂層である。第2の樹脂層は、例えばポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)のうちの少なくとも1種を含んでいる。
【0026】
なお、外装材30は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレン等の高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成されていてもよい。あるいは、アルミニウム製フィルムを心材として、その片面または両面に高分子フィルムを積層したラミネートフィルムにより構成されていてもよい。
【0027】
また、外装材30は、外観の美しさの点から、有色層をさらに備えていてもよいし、第1の第2の樹脂層のうちの少なくとも一方の層に着色材を含んでいてもよい。外装材30が、金属層と第1の樹脂層との間、および金属層と第2の樹脂層との間のうちの少なくとも一方に接着層をさらに備える場合には、接着層が着色材を含むようにしてもよい。
【0028】
(電極体)
図3に示すように、電極体20は、巻回型のものであり、長尺状を有する正極21と負極22とを長尺状を有するセパレータ23を介して積層し、扁平状かつ渦巻状に巻回した構成を有しており、最外周部は保護テープ(図示せず)により保護されている。外装材30の内部には、電解質としての電解液が注入され、正極21、負極22およびセパレータ23に含浸されている。
【0029】
以下、電池10を構成する正極21、負極22、セパレータ23および電解液について順次説明する。
【0030】
(正極)
正極21は、巻回方向に隣接する第1、第2の正極211、212に分割されている。第1、第2の正極211、212のうち第1の正極211が内側に位置し、第2の正極212が外側に位置している。
【0031】
第1の正極211は、正極集電体21A1と、この正極集電体21A1の両面に設けられた正極活物質層21B1とを備える。第2の正極212は、正極集電体21A2と、この正極集電体21A2の両面に設けられた正極活物質層21B2とを備える。正極集電体21A1、21A2は、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。正極活物質層21B1、21B2は、例えば、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質と、バインダとを含んでいる。正極活物質層21B1、21B2は、必要に応じて導電剤をさらに含んでいてもよい。
【0032】
(第1の正極)
第1の正極211の内周側の端部の内側面には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21A1の内側面が露出した正極集電体露出部21C11が設けられている。第1の正極211の内周側の端部の外側面には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21A1の外側面が露出した正極集電体露出部21C12が設けられている。この正極集電体露出部21C12には、正極リード11Aが接続されている。巻回方向における正極集電体露出部21C11、12の長さは、ほぼ同一である。
【0033】
正極集電体露出部21C11と、正極集電体露出部21C11および正極活物質層21B1の境界にある段差部とは、保護テープ13C11により覆われている。正極集電体露出部21C12と、正極集電体露出部21C12および正極活物質層21B1の境界にある段差部とは、保護テープ13C12により覆われている。なお、正極リード11Aも正極集電体露出部21C12と共に保護テープ13C12により覆われている。
【0034】
第1の正極211の外周側の端部の内側面および外側面には、正極活物質層21B1が設けられ、正極集電体21A1の内側面および外側面が露出していない。
【0035】
(第2の正極)
第2の正極212の内周側の端部の内側面には、正極活物質層21B2が設けられず、正極集電体21A2の内側面が露出した正極集電体露出部21C21が設けられている。第2の正極212の内周側の端部の外側面には、正極活物質層21B2が設けられず、正極集電体21A2の外側面が露出した正極集電体露出部21C22が設けられている。この正極集電体露出部21C22には、正極リード11Bが接続されている。巻回方向における正極集電体露出部21C21、22の長さは、ほぼ同一である。
【0036】
正極集電体露出部21C21と、正極集電体露出部21C21および正極活物質層21B2の境界に位置する段差部とは、保護テープ13C21により覆われている。正極集電体露出部21C22と、正極集電体露出部21C22および正極活物質層21B2の境界に位置する段差部とは、保護テープ13C22により覆われている。なお、正極リード11Bも正極集電体露出部21C22と共に保護テープ13C22により覆われている。
【0037】
第2の正極212の外周側の端部の内側面には、正極活物質層21B2が設けられず、正極集電体21A2の内側面が露出した正極集電体露出部21D21が設けられている。第2の正極212の外周側の端部の外側面には、正極活物質層21B2が設けられず、正極集電体21A2の外側面が露出した正極集電体露出部21D22が設けられている。巻回方向における正極集電体露出部21D22の長さは、巻回方向における正極集電体露出部21D21の長さよりも約1周長い。
【0038】
正極集電体露出部21D21および正極活物質層21B2の境界にある段差部は、保護テープ13D21により覆われている。正極集電体露出部21D22および正極活物質層21B2の境界にある段差部は、保護テープ13D22により覆われている。
【0039】
(正極活物質)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(A)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(B)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(C)、式(D)もしくは式(E)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(F)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(G)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられ、具体的には、LiNi0.50Co0.20Mn0.302、LiaCoO2(a≒1)、LibNiO2(b≒1)、Lic1Nic2Co1-c22(c1≒1,0<c2<1)、LidMn24(d≒1)またはLieFePO4(e≒1)等がある。
【0040】
LipNi(1-q-r)MnqM1r(2-y)z ・・・(A)
(但し、式(A)中、M1は、ニッケル、マンガンを除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0041】
LiaM2bPO4 ・・・(B)
(但し、式(B)中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0042】
LifMn(1-g-h)NigM3h(2-j)k ・・・(C)
(但し、式(C)中、M3は、コバルト、マグネシウム(Mg)、アルミニウム、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄、銅、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0043】
LimNi(1-n)M4n(2-p)q ・・・(D)
(但し、式(D)中、M4は、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0044】
LirCo(1-s)M5s(2-t)u ・・・(E)
(但し、式(E)中、M5は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0045】
LivMn2-wM6wxy ・・・(F)
(但し、式(F)中、M6は、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0046】
LizM7PO4 ・・・(G)
(但し、式(G)中、M7は、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、ニオブ(Nb)、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、タングステンおよびジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0047】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、これらの他にも、MnO2、V25、V613、NiS、MoS等のリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0048】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質は、上記以外のものであってもよい。また、上記で例示した正極活物質は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0049】
(バインダ)
バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれらの樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0050】
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラックまたはカーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料等を用いるようにしてもよい。
【0051】
(負極)
負極22は、負極集電体22Aと、この負極集電体22Aの両面に設けられた負極活物質層22Bとを備え、負極活物質層22Bと正極活物質層21B1、21B2とが対向するように配置されている。負極集電体22Aは、例えば、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極活物質と、バインダとを含んでいる。負極活物質層22Bは、必要に応じて導電剤をさらに含んでいてもよい。
【0052】
なお、電池10では、負極22または負極活物質の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっていることが好ましい。
【0053】
負極22の内周側の端部の内側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの内側面が露出した負極集電体露出部22C1が設けられている。負極22の内周側の端部の外側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの外側面が露出した負極集電体露出部22C2が設けられている。この負極集電体露出部22C2には、負極リード11Cが接続されている。巻回方向における負極集電体露出部22C1の長さは、巻回方向における負極集電体露出部22C2の長さよりも約1周長い。
【0054】
負極22の外周側の端部の内側面および外側面には、負極活物質層22Bが設けられ、負極集電体22Aの内側面および外側面が露出していない。
【0055】
負極22の中周部のうち、正極集電体露出部21C22と対向する部分には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aが露出した負極集電体露出部22E1が設けられている。負極22の中周部のうち、正極集電体露出部21C21と対向する部分には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aが露出した負極集電体露出部22E2が設けられている。
【0056】
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池10の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0057】
また、高容量化が可能な他の負極活物質としては、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素(例えば、合金、化合物または混合物)として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。なお、本開示において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0058】
このような負極活物質としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0059】
負極活物質としては、短周期型周期表における4B族の金属元素または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、より好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。このような負極活物質としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0060】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0061】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素または炭素を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0062】
中でも、Sn系の負極活物質としては、コバルトと、スズと、炭素とを構成元素として含み、炭素の含有量が9.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズとコバルトとの合計に対するコバルトの割合が30質量%以上70質量%以下であるSnCoC含有材料が好ましい。このような組成範囲において高いエネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるからである。
【0063】
このSnCoC含有材料は、必要に応じて更に他の構成元素を含んでいてもよい。他の構成元素としては、例えば、ケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン(P)、ガリウムまたはビスマスが好ましく、2種以上を含んでいてもよい。容量またはサイクル特性を更に向上させることができるからである。
【0064】
なお、このSnCoC含有材料は、スズと、コバルトと、炭素とを含む相を有しており、この相は結晶性の低いまたは非晶質な構造を有していることが好ましい。また、このSnCoC含有材料では、構成元素である炭素の少なくとも一部が、他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。サイクル特性の低下はスズ等が凝集または結晶化することによるものであると考えられるが、炭素が他の元素と結合することにより、そのような凝集または結晶化を抑制することができるからである。
【0065】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(XPS)が挙げられる。XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、SnCoC含有材料について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、SnCoC含有材料に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0066】
なお、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、SnCoC含有材料中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0067】
その他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物等も挙げられる。金属酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム(Li4Ti512)等のチタンとリチウムとを含むリチウムチタン酸化物、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデン等が挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロール等が挙げられる。
【0068】
(バインダ)
バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロース等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0069】
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラックまたはカーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料等を用いるようにしてもよい。
【0070】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレン等の樹脂製の多孔質膜によって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池の安全性向上を図ることができるので好ましい。特にポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。他にも、化学的安定性を備えた樹脂を、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合またはブレンド化した材料を用いることができる。あるいは、多孔質膜は、ポリプロピレン層と、ポリエチレン層と、ポリプロピレン層とを順次に積層した3層以上の構造を有していてもよい。
【0071】
セパレータ23は、基材と、基材の片面または両面に設けられた表面層を備える構成を有していてもよい。表面層は、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、無機粒子を基材の表面に結着するとともに、無機粒子同士を結着する樹脂材料とを含んでいる。この樹脂材料は、例えば、フィブリル化し、フィブリルが相互連続的に繋がった三次元的なネットワーク構造を有していてもよい。無機粒子は、この三次元的なネットワーク構造を有する樹脂材料に担持されることにより、互いに連結することなく分散状態を保つことができる。また、樹脂材料はフィブリル化せずに基材の表面や無機粒子同士を結着してもよい。この場合、より高い結着性を得ることができる。上述のように基材の片面または両面に表面層を設けることで、耐酸化性、耐熱性および機械強度を基材に付与することができる。
【0072】
基材は、多孔性を有する多孔質層である。基材は、より具体的には、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の膜から構成される多孔質膜であり、基材の空孔に電解液が保持される。基材は、セパレータの主要部として所定の機械的強度を有する一方で、電解液に対する耐性が高く、反応性が低く、膨張しにくいという特性を要することが好ましい。
【0073】
基材を構成する樹脂材料は、例えばポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂等を用いることが好ましい。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレン、若しくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は溶融温度が適当であり、入手が容易なので好適に用いられる。また、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造、もしくは、2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した多孔質膜としてもよい。ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜を含むものは、正極21と負極22との分離性に優れ、内部短絡の低下をいっそう低減することができる。
【0074】
基材としては、不織布を用いてもよい。不織布を構成する繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、またはナイロン繊維等を用いることができる。また、これら2種以上の繊維を混合して不織布としてもよい。
【0075】
無機粒子は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物および金属硫化物等の少なくとも1種を含んでいる。金属酸化物としては、酸化アルミニウム(アルミナ、Al23)、ベーマイト(水和アルミニウム酸化物)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO2)または酸化イットリウム(イットリア、Y23)等を好適に用いることができる。金属窒化物としては、窒化ケイ素(Si34)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)または窒化チタン(TiN)等を好適に用いることができる。金属炭化物としては、炭化ケイ素(SiC)または炭化ホウ素(B4C)等を好適に用いることができる。金属硫化物としては、硫酸バリウム(BaSO4)等を好適に用いることができる。また、ゼオライト(M2/nO・Al23・xSiO2・yH2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO3)またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等の鉱物を用いてもよい。中でも、アルミナ、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカまたはマグネシアを用いることが好ましく、アルミナを用いることがより好ましい。無機粒子は耐酸化性および耐熱性を備えており、無機粒子を含有する正極対向側面の表面層は、充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有する。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、板状、繊維状、キュービック状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
【0076】
表面層を構成する樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂等が挙げられる。これら樹脂材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、耐酸化性および柔軟性の観点からは、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂が好ましく、耐熱性の観点からは、アラミドまたはポリアミドイミドを含むことが好ましい。
【0077】
無機粒子の粒径は、1nm〜10μmの範囲内であることが好ましい。1nmより小さいと、入手が困難であり、また入手できたとしてもコスト的に見合わない。一方、10μmより大きいと電極間距離が大きくなり、限られたスペースで活物質充填量が十分得られず電池容量が低くなる。
【0078】
表面層の形成方法としては、例えば、マトリックス樹脂、溶媒および無機物からなるスラリーを基材(多孔質膜)上に塗布し、マトリックス樹脂の貧溶媒且つ上記溶媒の親溶媒浴中を通過させて相分離させ、その後、乾燥させる方法を用いることができる。
【0079】
なお、上述した無機粒子は、基材としての多孔質膜に含有されていてもよい。また、表面層が無機粒子を含まず、樹脂材料のみにより構成されていてもよい。
【0080】
(電解液)
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されている。電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。電解液が、電池特性を向上するために、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0081】
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレン等の環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0082】
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピル等の鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0083】
溶媒としては、さらにまた、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0084】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチル等が挙げられる。
【0085】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0086】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C654、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF32、LiC(SO2CF33、LiAlCl4、LiSiF6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBr等が挙げられる。中でも、LiPF6は高いイオン伝導性を得ることができるとともに、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0087】
[正極電位]
満充電状態における正極電位(vsLi/Li+)は、好ましくは4.20Vを超え、より好ましくは4.25V以上、更により好ましくは4.40Vを超え、特に好ましくは4.45V以上、最も好ましくは4.50V以上である。但し、満充電状態における正極電位(vsLi/Li+)が、4.20V以下であってもよい。満充電状態における正極電位(vsLi/Li+)の上限値は、特に限定されるものではないが、好ましくは6.00V以下、より好ましくは5.00V以下、更により好ましくは4.80V以下、特に好ましくは4.70V以下である。
【0088】
[電池の動作]
上述の構成を有する電池では、充電を行うと、正極活物質層21B1、21B2からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21B1、21B2に吸蔵される。
【0089】
[正極が分割されていない電池と正極が分割されている電極との対比]
図4Aに示すように、分割されていない正極121を有する電池110の表層近くで外傷等に起因する短絡41が生じると、電池全体で急速に放電反応が起こり、短絡電流Iが短絡部に集中する。そのため、短絡部の付近で大きな発熱が生じ、場合によっては熱暴走に至る虞がある。
【0090】
短絡電流Iが短絡部に集中する過程において、電池10内の集電抵抗が高ければ、短絡電流が小さくなる。そこで、第1の実施形態に係る電池10では、図4Bに示すように、正極21を第1、第2の正極211、212に分割し、第1、第2の正極211、212にそれぞれ正極リード11A、11Bを取り付け、それらの正極リード11A、11Bの一端をそれぞれ外装材30の外に引き出し、外装材30の外で電気的に接続する構成を採用している。このような構成を採用することで、抵抗を低減できるというメリットを享受できる上、短絡41が起きていない第1の正極211からの短絡電流は必ず正極リード11A、11Bを経由することになるため、短絡部に流れ込む短絡電流は小さくなり、結果として安全性を向上する。この構成を採用することによるエネルギー密度の低下は僅かである。したがって、エネルギー密度の低下を抑制しつつ、高い安全性を有する電池が得られる。
【0091】
[電池の製造方法]
次に、第1の実施形態に係る電池10の製造方法の一例について説明する。
【0092】
(第1の正極の作製工程)
第1の正極211を次のようにして作製する。まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21A1の両面に塗布する。続いて、塗膜中に含まれる溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21B1を形成する。これにより、一方の端部(巻回後に内周側となる端部)に正極集電体露出部21C11、C12を有する第1の正極211が得られる。次に、正極集電体露出部21C12に、シーラント12Aを有する正極リード11Aを溶接等により取り付けたのち、正極集電体露出部21C12と、正極集電体露出部21C12および正極活物質層21B1の境界にある段差部とを保護テープ13C12により覆う。また、正極集電体露出部21C11と、正極集電体露出部21C11および正極活物質層21B1の境界にある段差部とを保護テープ13C11により覆う。
【0093】
(第2の正極の作製工程)
第2の正極212を次のようにして作製する。まず、第1の正極211の作製工程と同様にして、正極集電体21A2の両面に正極活物質層21B2を形成する。これにより、第2の正極212の一方の端部(巻回後に内周側となる端部)に正極集電体露出部21C21、21C22を有し、かつ、他方の端部(巻回後に外周側となる端部)に正極集電体露出部21D21、21D22を有する第2の正極212が得られる。次に、正極集電体露出部21C22に、シーラント12Bを有する正極リード11Bを溶接等により取り付けたのち、正極集電体露出部21C22と、正極集電体露出部21C22および正極活物質層21B2の境界にある段差部とを保護テープ13C22により覆う。また、正極集電体露出部21C21と、正極集電体露出部21C21および正極活物質層21B2の境界にある段差部とを保護テープ13C21により覆う。続いて、正極集電体露出部21D21と正極活物質層21B2の境界にある段差部とを保護テープ13D21により覆う。また、正極集電体露出部21D22と正極活物質層21B2の境界にある段差部とを保護テープ13D22により覆う。
【0094】
(負極の作製工程)
負極22を次のようにして作製する。まず、例えば、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aの両面に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成する。これにより、一方の端部(巻回後に内周側となる端部)に負極集電体露出部22C1、22C2を有し、かつ中周部に負極集電体露出部22E1、22E2を有する負極22が得られる。続いて、負極集電体露出部22C2に、シーラント12Cを有する負極リード11Cを溶接等により取り付ける。
【0095】
(電極体の作製工程)
巻回型の電極体20を次のようにして作製する。まず、第1の正極211と負極22とをセパレータ23を介して扁平状の巻芯の周囲に巻き付けて長手方向に多数回巻回したのち、第2の正極212と負極22とをセパレータ23を介して扁平状の巻芯の周囲に巻き付けて長手方向に多数回巻回する。続いて、最外周部に保護テープ(図示せず)を接着して電極体20を得る。
【0096】
(電極体の収容工程)
電極体20を次のようにして外装材30に収容する。まず、矩形状の外装材30を準備し、その第2の樹脂層側の面のうち、外装材30の長辺方向の中央部30Aにより2等分される一方の領域に、エンボス成型を施し、収容部32を形成する。次に、正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cが外装材30の短辺側から導出されるようにして、収容部32に電極体20を収容する。そして、外装材30を中央部30Aを堺にして折り返して、各辺を重ね合わせる。その際、正極リード11A、11B、負極リード11Cがそれぞれ有するシーラント12A、12B、12Cが外装材30の周縁部に挟まるようにする。なお、各辺を重ね合わせる際に、シーラント12A、12Bを外装材30と正極リード11A、11Bとの間、および正極リード11A、11Bの間に挿入すると共に、シーラント12Cを外装材30と負極リード11Cとの間に挿入するようにしてもよい。
【0097】
続いて、重ね合わせた外装材30の3辺のうち2辺を熱融着し、一辺を熱融着せずに開口部として残し、この開口部から電解液を注入したのち、外装材30の残りの1辺を減圧下において熱融着する。これにより、電極体20が外装材30により封止され、電池10が得られる。次に、必要に応じて、ヒートプレスにより電池10を成型する。より具体的には、電池10を加圧しながら、常温より高い温度で加熱する。最後に、正極リード11A、11B同士を溶接等により外装材の外側で電気的に接続する。以上により、図1Aに示す電池10が得られる。
【0098】
[効果]
第1の実施形態に係る電池10では、正極21が、巻回方向に隣接する第1、第2の正極211、212に分割されており、第1、第2の正極211、212はそれぞれ正極リード11A、11Bを有し、正極リード11A、11B同士が外装材30の外側で電気的に接続されている。これにより、電池10の表層近くで外傷等に起因する短絡が生じた場合の安全性を向上することができる。
【0099】
[変形例]
上述の第1の実施形態では、正極21が、巻回方向に隣接する2つの電極に分割されている場合について説明したが、巻回方向に隣接する3つ以上の電極に分割されていてもよい。電極体20の層数が偶数である場合、正極21の分割数の上限は、電極体20の層数Nの1/2以下であることが好ましい。電極体20の層数が奇数である場合、(電極体20の層数N−1)の1/2以下であることが好ましい。電極体20の層数が多すぎると、正極リードの数が増えることにより電池10の厚みが増えてしまうためである。また、電極体20の層数が多すぎると、短絡発生時に電流が正極リードに集中しすぎるため、安全性が低下する虞もある。
【0100】
図5を参照して、電極体20の総数の定義について説明する。ここでは、正極活物質層21B1、21B2を区別せずに総称して正極活物質層21Bと称する。正極活物質層21Bと負極活物質層22Bの対向部が開始する位置PAから終了する位置PBまでに、セパレータ23を介した正極21、負極22のペアを折り返した数を電極体20の層数と定義する。なお、分割したことにより正極21および負極22の少なくとも一方の電極、または正極活物質層21Bおよび負極活物質層22Bの少なくとも一方の活物質層が存在しない部分があった場合にも、電極や活物質層が存在したと仮定し正極21、負極22のペアの折り返し数をカウントする。例えば図5に示した電極体20の場合、上記定義に従って、セパレータ23を介した正極21、負極22のペアの折り返し回数をカウントすると8回となる。したがって、図5に示した電極体20の層数は8層となる。
【0101】
上述の第1の実施形態では、正極21が巻回方向に隣接するように2つの電極に分割されている場合について説明したが、負極22が巻回方向に隣接するように2つ以上の電極に分割されていてもよいし、正極21および負極22の両方が巻回方向に隣接するように2つ以上の電極に分割されていてもよい。
【0102】
上述の第1の実施形態では、正極リード11A、11Bが、電極体20の厚さ方向に重なるように設けられている場合について説明したが、正極リード11A、11Bが、電極体20の厚さ方向に重ならないように設けられていてもよい。この場合、正極リード11A、11Bは、外装材30の外で金属板等の導電部材または回路基板等により電気的に接続される。
【0103】
上述の第1の実施形態では、正極リード11A、11Bがそれぞれ、第1の正極211、第2の正極212の内周側の端部に設けられている場合について説明したが、正極リード11A、11Bが設けられる位置はこれに限定されるものではない。例えば、正極リード11Aが第1の正極211の内周側の端部に設けられ、かつ正極リード11Bが第2の正極212の外周側の端部に設けられていてもよい。正極リード11Aが第1の正極211の外周側の端部に設けられ、かつ正極リード11Bが第2の正極212の内周側の端部に設けられていてもよい。正極リード11A、11Bがそれぞれ、第1、第2の正極211、212の外周側の端部に設けられていてもよい。但し、第1、第2の正極211、212のうち外周側に位置する第2の正極212は、内周側の端部に正極リード11Bを有していることが好ましい。より安全性を向上することができるからである。
【0104】
第1の実施形態では、電池10がリチウムイオン二次電池である場合について説明したが、電池10の種類はこれに限定されるものではない。例えば、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、全固体電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、酸化銀・亜鉛電池等であってもよい。
【0105】
第1の実施形態では、扁平状の電極体20を外装材30に収容する構成についいて説明したが、電極体20の形状はこれに限定されるものではなく、例えば円柱状または立方体状等の多面体状であってもよい。
【0106】
電池10は、剛性を有する一般的な電池に限定されず、スマートウオッチ、ヘッドマウントディスプレイ、iGlass(登録商標)等のウェアラブル端末に搭載可能なフレキシブル電池であってもよい。
【0107】
第1の実施形態では、電極が集電体と活物質層とを備える構成を例として説明したが、電極の構成はこれに限定されるもではない。例えば、電極が活物質層のみからなる構成としてもよい。
【0108】
第1の実施形態では、電解質として電解液を備える電池10に対して本開示を適用する例について説明したが、電解質はこれに限定されるものではない。例えば、電池10が、正極21とセパレータ23との間および負極22とセパレータ23との間に、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含む電解質層を備えるようにしてもよい。この場合、電解質が、ゲル状となっていてもよい。
【0109】
電解液は、第1の実施形態に係る電解液と同様である。高分子化合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンまたはポリカーボネートが挙げられる。特に電気化学的な安定性の点からはポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレンオキサイドが好ましい。
【0110】
なお、第1の実施形態にてセパレータ23の樹脂層の説明で述べた無機物と同様の無機物が、電解質層に含まれていてもよい。より耐熱性を向上できるからである。
【0111】
第1の実施形態では、正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cが外装材30のトップ側から導出されている場合について説明したが、サイド側から導出されていてもよいし、ボトム側から導出されていてもよい。なお、正極リード11A、11Bおよび負極リード11Cをボトム側から導出する場合には、2枚の矩形状の外装材30の間に電極体20を挟み、2枚の外装材30の4辺をシールする構成とすればよい。また、正極リード11A、11Bと負極リード11Cとが異なる方向に導出されていてもよい。
【0112】
第1の実施形態では、正極リード11A、11Bは、電極体20の厚さ方向に重なるように設けられ、外装材30の外側で電気的に接続される場合について説明したが、シール部31Aで電気的に接続されていてもよい。但し、正極リード11A、11Bが外装材30の外側で電気的に接続されている場合の方が、正極リード11A、11Bがシール部で接続されている場合よりも短絡電流が正極リード11A、11Bを経由する距離が長くなり、短絡部に流れ込む短絡電流は小さくなるため、安全性がより向上する。
【0113】
<2 第2の実施形態>
以下、図6を参照して、第2の実施形態に係る電池が備える電極体20Aの一例について説明する。なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同一または対応する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0114】
第1の正極211の外周側の端部の内側面には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21A1の内側面が露出した正極集電体露出部21D11が設けられている。第1の正極211の外周側の端部の外側面には、正極活物質層21B1が設けられず、正極集電体21A1の外側面が露出した正極集電体露出部21D12が設けられている。巻回方向における正極集電体露出部21D11の長さは、巻回方向における正極集電体露出部21D12の長さよりも約1/2周長い。
【0115】
正極集電体露出部21D11と、正極集電体露出部21D11および正極活物質層21B1の境界にある段差部とは、保護テープ13D11により覆われている。正極集電体露出部21D12と、正極集電体露出部21D12および正極活物質層21B1の境界にある段差部とは、保護テープ13D12により覆われている。
【0116】
負極22の外周側の端部の外側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの外側面が露出した負極集電体露出部22D2が設けられている。
【0117】
第1の正極211の内周側の正極集電体露出部21C11と、負極22の内周側の負極集電体露出部22C2とが、セパレータ23を介して対向する対向部24Aを構成している。第1の正極211の内周側の正極集電体露出部21C12と、負極22の内周側の負極集電体露出部22C1とが、セパレータ23を介して対向する対向部24Bを構成している。なお、以下では、第1の正極211の内周側に設けられた対向部24A、24Bを特に区別しない場合には、対向部24と記載する。第1の正極211の外周側の正極集電体露出部21D11と、負極22の中周部の負極集電体露出部22E2とが、セパレータ23を介して対向する対向部25Aを構成している。
【0118】
第2の正極212の内周側の正極集電体露出部21C22と、負極22の中周部の負極集電体露出部22E1とが、セパレータ23を介して対向する対向部26Bを構成している。第2の正極212の外周側の正極集電体露出部21D21と、負極22の外周側の負極集電体露出部22D2とが、セパレータ23を介して対向する対向部27Aを構成している。
【0119】
対向部24A、24B、25A、26B、27Aは、安全性の向上の観点からすると、対向部24A、24B、25A、26B、27Aの巻き返し部の頂部を基準として、好ましくは1/4周以上、より好ましくは半周以上、更により好ましくは1周以上の範囲に渡って設けられている。ここで、巻き返し部とは、集電体露出部の対向部24A、24B、25A、26B、27Aの湾曲されている部分を意味し、集電体露出部の対向部24A、24B、25A、26B、27Aが折り曲げられるようにして巻き返されている場合には、その折り曲げ部分を意味する。
【0120】
対向部24A、24B、25A、26B、27Aは、エネルギー密度の低下を抑制する観点からすると、対向部24A、24B、25A、26B、27Aの折り返し部の頂部を基準として、好ましくは2周以下、より好ましくは1周以下の範囲に渡って設けられている。
【0121】
[効果]
第2の実施形態に係る電池では、第1の正極211の内周側、外周側にそれぞれ対向部24、25Aが設けられ、第2の正極212の内周側、外周側にそれぞれ対向部26B、27Aが設けられている。したがって、安全性を更に向上することができる。
【0122】
[変形例]
電極体20Aにおける対向部の構成は、上述の第2の実施形態におけるものに限定されず、例えば、以下に示す対向部の構成を採用するようにしてもよい。
【0123】
図7は、電極体20Aの第1の変形例を示す。負極22の外周側の端部の内側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの内側面が露出した負極集電体露出部22D1が設けられている。負極22の外周側の端部の外周面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aが露出していない。第2の正極212の外周側の正極集電体露出部21D22と、負極22の外周側の負極集電体露出部22D1とが、セパレータ23を介して対向する対向部27Bを構成している。
【0124】
図8は、電極体20Aの第2の変形例を示す。負極22の外周側の端部の内側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの内側面が露出した負極集電体露出部22D1が設けられている。負極22の外周側の端部の外側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの外側面が露出した負極集電体露出部22D2が設けられている。
【0125】
第2の正極212の外周側の正極集電体露出部21D21と、負極22の外周側の負極集電体露出部22D2とが、セパレータ23を介して対向する対向部27Aを構成している。第2の正極212の外周側の正極集電体露出部21D22と、負極22の外周側の負極集電体露出部22D1とが、セパレータ23を介して対向する対向部27Bを構成している。
【0126】
第1の正極211の外周側の端部の内側面および外側面には、正極活物質層21B1が設けられ、正極集電体21A1の内側面および外側面が露出していない。
【0127】
上述の第1、第2の変形例において、対向部27A、27Bは、安全性の向上の観点からすると、対向部27A、27Bの巻き返し部の頂部を基準として、好ましくは1/4周以上、より好ましくは半周以上、更により好ましくは1周以上の範囲に渡って設けられている。対向部27A、27Bは、エネルギー密度の低下を抑制する観点からすると、対向部27A、27Bの折り返し部の頂部を基準として、好ましくは2周以下、より好ましくは1周以下の範囲に渡って設けられている。
【0128】
第2の実施形態では、電極体20が対向部24、25A、26B、27Aを有する場合について説明したが、電極体20が対向部24、25A、26B、27Aのうちの少なくとも1つの対向部を有するようにしてもよい。
【0129】
安全性の向上の観点からすると、電極体20は、対向部24、25A、26B、27Aのうちの1つ以上4つ以下の対向部を有していることが好ましく、対向部24、25A、26B、27Aのうちの2つ以上4つ以下の対向部を有していることがより好ましく、対向部24、25A、26B、27Aのうちの3つ以上4つ以下の対向部を有していることが更により好ましく、対向部24、25A、26B、27Aの4つ全てを有していることが特に好ましい。
【0130】
第2の実施形態では、第1の正極211の内周側の内側面、外側面にそれぞれ対向部24A、24Bが設けられている場合について説明したが、対向部24A、24Bのうちの一方が設けられていてもよい。また、第2の実施形態では、第1の正極211の外周側の内側面に対向部25Aが設けられている場合について説明したが、第1の正極211の外周側の外側面に対向部が設けられていてもよいし、第1の正極211の外周側の内側面、外側面にそれぞれ対向部が設けられていてもよい。
【0131】
第2の実施形態では、第2の正極212の内周側の外側面に対向部26Bが設けられている場合について説明したが、第2の正極212の内周側の内側面に対向部が設けられていてもよいし、第2の正極212の内周側の内側面、外側面にそれぞれ対向部が設けられていてもよい。また、第2の実施形態では、第2の正極212の外周側の内側面に対向部27Aが設けられている場合について説明したが、第2の正極212の外周側の外側面に対向部が設けられていてもよいし、第2の正極212の外周側の内側面、外側面にそれぞれ対向部が設けられていてもよい。
【0132】
正極集電体露出部と負極集電体露出部とが対向する対向部が、第1の正極211の両端部以外の部分(すなわち中周部)に設けられていてもよいし、第2の正極212の両端部以外の部分(すなわち中周部)に設けられていてもよい。
【0133】
安全性向上の観点からすると、正極集電体露出部と負極集電体露出部とが対向する対向部が、第1、第2の正極211、212のうちの少なくとも一方の電極の、内周側および外周側の少なくとも一方に設けられていることが好ましく、第1、第2の正極211、212のうちの少なくとも一方の電極の外周側に設けられていることがより好ましく、第1、第2の正極211、212の外周側に設けられていることが更により好ましい。また、安全性向上の観点からすると、上記対向部が、第1、第2の正極211、212のうち外周側に位置する第2の正極212の外周側に設けられていることが好ましい。
【0134】
正極21が2つ以上の電極に分割されていてもよく、この場合には、安全性向上の観点からすると、正極集電体露出部と負極集電体露出部とが対向する対向部が、分割された電極のうちの少なくとも1つの電極の、内周側および外周側の少なくとも一方に設けられていることが好ましく、分割された電極のうちの少なくとも1つの電極の外周側に設けられていることがより好ましく、分割された全ての電極の外周側に設けられていることが更により好ましい。また、安全性向上の観点からすると、上記対向部が、分割された電極のうち最も外周側に位置する電極の外周側に設けられていることが好ましい。
【0135】
<3 応用例1>
「応用例としての電池パックおよび電子機器」
応用例1では、第1または第2の実施形態に係る電池を備える電池パックおよび電子機器について説明する。
【0136】
[電池パックおよび電子機器の構成]
以下、図9を参照して、応用例としての電池パック300および電子機器400の一構成例について説明する。電子機器400は、電子機器本体の電子回路401と、電池パック300とを備える。電池パック300は、正極端子331aおよび負極端子331bを介して電子回路401に対して電気的に接続されている。電子機器400は、例えば、ユーザにより電池パック300を着脱自在な構成を有している。なお、電子機器400の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザにより電池パック300を電子機器400から取り外しできないように、電池パック300が電子機器400内に内蔵されている構成を有していてもよい。
【0137】
電池パック300の充電時には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック300の放電時(電子機器400の使用時)には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、電子回路401の正極端子、負極端子に接続される。
【0138】
電子機器400としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォン等)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、表示装置(LCD、ELディスプレイ、電子ペーパ等)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられるが、これに限定されるものでなない。
【0139】
(電子回路)
電子回路401は、例えば、CPU、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部等を備え、電子機器400の全体を制御する。
【0140】
(電池パック)
電池パック300は、組電池301と、充放電回路302とを備える。組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の二次電池301aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、図9では、6つの二次電池301aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。二次電池301aとしては、第1または第2の実施形態に係る電池が用いられる。
二次電池301aとして、第1または第2の実施形態の変形例に係る電池が用いられてもよい。
【0141】
ここでは、電池パック300が、複数の二次電池301aにより構成される組電池301を備える場合について説明するが、電池パック300が、組電池301に代えて1つの二次電池301aを備える構成を採用してもよい。
【0142】
充放電回路302は、組電池301の充放電を制御する制御部である。具体的には、充電時には、充放電回路302は、組電池301に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器400の使用時)には、充放電回路302は、電子機器400に対する放電を制御する。
【0143】
<4 応用例2>
「応用例としての車両における蓄電システム」
本開示を車両用の蓄電システムに適用した例について、図10を参照して説明する。図10に、本開示が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0144】
このハイブリッド車両7200には、エンジン7201、発電機7202、電力駆動力変換装置7203、駆動輪7204a、駆動輪7204b、車輪7205a、車輪7205b、バッテリー7208、車両制御装置7209、各種センサー7210、充電口7211が搭載されている。バッテリー7208に対して、上述した本開示の蓄電装置が適用される。
【0145】
ハイブリッド車両7200は、電力駆動力変換装置7203を動力源として走行する。電力駆動力変換装置7203の一例は、モーターである。バッテリー7208の電力によって電力駆動力変換装置7203が作動し、この電力駆動力変換装置7203の回転力が駆動輪7204a、7204bに伝達される。なお、必要な個所に直流−交流(DC−AC)あるいは逆変換(AC−DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置7203が交流モーターでも直流モーターでも適用可能である。各種センサー7210は、車両制御装置7209を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサー7210には、速度センサー、加速度センサー、エンジン回転数センサーなどが含まれる。
【0146】
エンジン7201の回転力は発電機7202に伝えられ、その回転力によって発電機7202により生成された電力をバッテリー7208に蓄積することが可能である。
【0147】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置7203に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置7203により生成された回生電力がバッテリー7208に蓄積される。
【0148】
バッテリー7208は、ハイブリッド車両の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口7211を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0149】
図示しないが、二次電池に関する情報に基いて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0150】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリーに一旦貯めておいた電力を用いて、モーターで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモーターの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モーターのみで走行、エンジンとモーター走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本開示は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モーターのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本開示は有効に適用可能である。
【0151】
以上、本開示に係る技術が適用され得るハイブリッド車両7200の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、バッテリー7208に好適に適用され得る。
【0152】
<5 応用例3>
「応用例としての住宅における蓄電システム」
本開示を住宅用の蓄電システムに適用した例について、図11を参照して説明する。例えば住宅9001用の蓄電システム9100においては、火力発電9002a、原子力発電9002b、水力発電9002c等の集中型電力系統9002から電力網9009、情報網9012、スマートメータ9007、パワーハブ9008等を介し、電力が蓄電装置9003に供給される。これと共に、家庭内発電装置9004等の独立電源から電力が蓄電装置9003に供給される。蓄電装置9003に供給された電力が蓄電される。蓄電装置9003を使用して、住宅9001で使用する電力が給電される。住宅9001に限らずビルに関しても同様の蓄電システムを使用できる。
【0153】
住宅9001には、発電装置9004、電力消費装置9005、蓄電装置9003、各装置を制御する制御装置9010、スマートメータ9007、各種情報を取得するセンサー9011が設けられている。各装置は、電力網9009および情報網9012によって接続されている。発電装置9004として、太陽電池、燃料電池等が利用され、発電した電力が電力消費装置9005および/または蓄電装置9003に供給される。電力消費装置9005は、冷蔵庫9005a、空調装置9005b、テレビジョン受信機9005c、風呂9005d等である。さらに、電力消費装置9005には、電動車両9006が含まれる。電動車両9006は、電気自動車9006a、ハイブリッドカー9006b、電気バイク9006cである。
【0154】
蓄電装置9003に対して、上述した本開示のバッテリユニットが適用される。蓄電装置9003は、二次電池又はキャパシタから構成されている。例えば、リチウムイオン電池によって構成されている。リチウムイオン電池は、定置型であっても、電動車両9006で使用されるものでも良い。スマートメータ9007は、商用電力の使用量を測定し、測定された使用量を、電力会社に送信する機能を備えている。電力網9009は、直流給電、交流給電、非接触給電の何れか一つまたは複数を組み合わせても良い。
【0155】
各種のセンサー9011は、例えば人感センサー、照度センサー、物体検知センサー、消費電力センサー、振動センサー、接触センサー、温度センサー、赤外線センサー等である。各種センサー9011により取得された情報は、制御装置9010に送信される。センサー9011からの情報によって、気象の状態、人の状態等が把握されて電力消費装置9005を自動的に制御してエネルギー消費を最小とすることができる。さらに、制御装置9010は、住宅9001に関する情報をインターネットを介して外部の電力会社等に送信することができる。
【0156】
パワーハブ9008によって、電力線の分岐、直流交流変換等の処理がなされる。制御装置9010と接続される情報網9012の通信方式としては、UART(Universal Asynchronous Receiver-Transmitter:非同期シリアル通信用送受信回路)等の通信インターフェースを使う方法、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、Wi−Fi等の無線通信規格によるセンサーネットワークを利用する方法がある。Bluetooth(登録商標)方式は、マルチメディア通信に適用され、一対多接続の通信を行うことができる。ZigBee(登録商標)は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers) 802.15.4の物理層を使用するものである。IEEE802.15.4は、PAN(Personal Area Network) またはW(Wireless)PANと呼ばれる短距離無線ネットワーク規格の名称である。
【0157】
制御装置9010は、外部のサーバ9013と接続されている。このサーバ9013は、住宅9001、電力会社、サービスプロバイダーの何れかによって管理されていても良い。サーバ9013が送受信する情報は、たとえば、消費電力情報、生活パターン情報、電力料金、天気情報、天災情報、電力取引に関する情報である。これらの情報は、家庭内の電力消費装置(たとえばテレビジョン受信機)から送受信しても良いが、家庭外の装置(たとえば、携帯電話機等)から送受信しても良い。これらの情報は、表示機能を持つ機器、たとえば、テレビジョン受信機、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等に、表示されても良い。
【0158】
各部を制御する制御装置9010は、CPU(Central Processing Unit )、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等で構成され、この例では、蓄電装置9003に格納されている。制御装置9010は、蓄電装置9003、家庭内発電装置9004、電力消費装置9005、各種センサー9011、サーバ9013と情報網9012により接続され、例えば、商用電力の使用量と、発電量とを調整する機能を有している。なお、その他にも、電力市場で電力取引を行う機能等を備えていても良い。
【0159】
以上のように、電力が火力9002a、原子力9002b、水力9002c等の集中型電力系統9002のみならず、家庭内発電装置9004(太陽光発電、風力発電)の発電電力を蓄電装置9003に蓄えることができる。したがって、家庭内発電装置9004の発電電力が変動しても、外部に送出する電力量を一定にしたり、または、必要なだけ放電するといった制御を行うことができる。例えば、太陽光発電で得られた電力を蓄電装置9003に蓄えると共に、夜間は料金が安い深夜電力を蓄電装置9003に蓄え、昼間の料金が高い時間帯に蓄電装置9003によって蓄電した電力を放電して利用するといった使い方もできる。
【0160】
なお、この例では、制御装置9010が蓄電装置9003内に格納される例を説明したが、スマートメータ9007内に格納されても良いし、単独で構成されていても良い。さらに、蓄電システム9100は、集合住宅における複数の家庭を対象として用いられてもよいし、複数の戸建て住宅を対象として用いられてもよい。
【0161】
以上、本開示に係る技術が適用され得る蓄電システム9100の一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、蓄電装置9003が有する二次電池に好適に適用され得る。
【実施例】
【0162】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0163】
以下の実施例および比較例において、“箔−箔対向部”とは、正極活物質層に覆われずに露出したアルミ箔(正極集電体)と、負極活物質層に覆われずに露出した銅箔(負極集電体)とがセパレータを介して対向した対向部のうち、巻き返し部の頂部を基準として1/4周以上の範囲に渡って設けられたものをいう。
【0164】
[実施例1]
(内周側正極の作製工程)
内周側正極(第1の正極)を次のようにして作製した。まず、正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)96質量部と、バインダとしてポリフッ化ビニリデン3質量部と、正極導電剤としてカーボンブラック1質量部とを混合して、正極合剤とした。次に、有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンに正極合剤を分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体(12μm厚の帯状アルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させて、正極活物質層を形成した。この際、図3、表1に示すように、巻回後に内周側正極の内周側および外周側の端部に箔−箔対向部が形成されないように、正極合剤スラリーの塗布位置を調整した。
【0165】
次に、ロールプレス機を用いて正極活物質層を圧縮成型することにより、帯状を有する内周側正極を作製した。最後に、巻回後に内周側となる端部に形成された正極集電体露出部に、シーラント材により被覆されたアルミニウム製の正極リードを溶接した。
【0166】
(外周側正極の作製工程)
図3、表1に示すように、巻回後に外周側正極の内周側および外周側の端部に箔−箔対向部が形成されないように、正極合剤スラリーの塗布位置を調整した。これ以外のことは内周側正極と同様にして外周側正極(第2の正極)を作製した。
【0167】
(負極の作製工程)
負極を次のようにして作製した。まず、負極活物質として黒鉛粉末90質量部と、バインダとしてポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合して、負極合剤とした。次に、有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドンに負極合剤を分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体(6μm厚の帯状電解銅箔)の両面に負極合剤スラリーを塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させて、負極活物質層を形成した。この際、図3、表1に示すように、巻回後に内、外周正極の内周側および外周側の端部に箔−箔対向部が形成されないように、負極合剤スラリーの塗布位置を調整した。次に、ロールプレス機を用いて負極活物質層を圧縮成型することにより、帯状を有する負極を作製した。最後に、巻回後に内周側となる端部に形成された負極集電体露出部に、シーラント材により被覆されたニッケル製の負極リードを溶接した。
【0168】
(電極体の作製工程)
電極体を次のようにして作製した。まず、内周側正極および負極をセパレータ(厚み25μmの微多孔性ポリエチレンフィルム)を介して長手方向に巻回したのち、外周側正極および負極をセパレータを介して長手方向に巻回することにより、扁平状を有する電極体を作製した。この際、2つの正極リードが電極体の厚さ方向に重なるように、内周側正極および外周側正極の巻回位置を調整した。その後、最外周部に保護テープを貼り付けた。
【0169】
(電解液の調製工程)
電解液を次のようにして調製した。まず、炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DC)とを、質量比でEC:PC:DC=15:15:70となるようにして混合して混合溶媒を調製した。続いて、この混合溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/lとなるように溶解させて電解液を調製した。
【0170】
(電極体の収容工程)
まず、外装材として、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層された防湿性のアルミラミネートフィルムを準備した。次に、アルミラミネートフィルムのポリプロピレンフィルム側の面のうち、アルミラミネートフィルムの長辺方向の中央位置により2等分される一方の領域に、エンボス成型を施し、収容空間としてのエンボス成型部を形成した。
【0171】
続いて、2つの正極リードおよび1つ負極リードがアルミラミネートフィルムの短辺側から導出されるようにして、エンボス成型部に電極体を収容し、アルミラミネートフィルムを上記中央位置を堺にして折り返して、各辺を重ね合わせた。その後、重ね合わせたアルミラミネートフィルムの3辺のうち2辺を熱融着し、一辺を熱融着せずに開口部として残し、この開口部から電解液を注入したのち、外装材の残りの1辺を減圧下において熱融着することにより、電極体をラミネートフィルムにより封止した。最後に、2つの正極リード同士を溶接により外装材の外側で電気的に接続した。これにより、目的とするラミネート型電池が得られた。
【0172】
[実施例2〜15]
表1に示すように、巻回後に内、外周側正極の内周側および外周側の端部に箔−箔対向部が形成される、または形成されないように、内周側正極および外周側正極の作製工程において正極合剤スラリーの塗布位置を調整し、かつ負極電極の作製工程において負極合剤スラリーの塗布位置を調整した。これ以外のことは実施例1と同様にして電池を得た。
【0173】
[実施例16]
図5、表1に示すように、巻回後に内、外周側正極の内周側および外周側の端部に箔−箔対向部が形成されるように、内周側正極および外周側正極の作製工程において正極合剤スラリーの塗布位置を調整し、かつ負極電極の作製工程において負極合剤スラリーの塗布位置を調整した。これ以外のことは内周側正極と同様にして電池を得た。
【0174】
[実施例17]
内周側正極の作製工程において、巻回後に外周側となる端部に形成された正極集電体露出部に正極リードを溶接したこと以外は実施例16と同様にして電池を得た。
【0175】
[実施例18]
外周側正極の作製工程において、巻回後に外周側となる端部に形成された正極集電体露出部に正極リードを溶接したこと以外は実施例16と同様にして電池を得た。
【0176】
[実施例19]
内周側正極の作製工程において、巻回後に外周側となる端部に形成された正極集電体露出部に正極リードを溶接し、かつ、外周側正極の作製工程において、巻回後に外周側となる端部に形成された正極集電体露出部に正極リードを溶接したこと以外は実施例16と同様にして電池を得た。
【0177】
[実施例20]
正極として分割されていない1つの正極を用い、負極として分割された内側負極、外側負極を用いること以外は実施例1と同様にして電池を得た。
【0178】
[比較例1]
2つの正極リード同士を溶接により外装材の内側で電気的に接続したこと以外は実施例1と同様にして電池を得た。
【0179】
[比較例2]
正極として分割されていない1つの正極を用いたこと以外は実施例1と同様にして電池を得た。なお、分割されていない正極は、長さが異なる点以外では実施例1の第1の正極と同様にして得られた。
【0180】
[比較例3]
まず、扁平状を有する2つの電極体を作製した。なお、これらの電極体は、巻回数が異なる点以外では比較例2の電極体と同様にして得られた。次に、2つの電極体を積み重ねるようにしてラミネートフィルムに収容し、密封したこと以外は実施例1と同様にして電池を得た。
【0181】
[比較例4〜6]
表1に示すように、巻回後に内周側および外周側の端部に箔−箔対向部が形成される、または形成されないように、正極の作製工程において正極合剤スラリーの塗布位置を調整し、かつ負極電極の作製工程において負極合剤スラリーの塗布位置を調整した。これ以外のことは比較例2と同様にして電池を得た。
【0182】
[評価]
(エネルギー密度)
まず、23℃の環境下において0.2Cの定電流で電池電圧が4.40Vに達するまで電池に定電流充電を行ったのち、4.40Vの定電圧で電流値が0.01Cに達するまで電池に定電圧充電を行った。次に、0.2Cの定電流で、電池電圧が3.0Vに達するまで電池に放電を行うことにより、放電容量を求めた。続いて、求めた放電容量を用いて体積エネルギー密度を求めた。
【0183】
(抵抗)
日置電機株式会社製のバッテリハイテスタBT3562を用いて、外装材から出ている正極、負極リードのうち、トップ側のシール部近傍の部分に針状の測定端子を接触させて、1kHzの交流電流に対する抵抗値を測定し、電池の「抵抗」とした。なお、2つの電極リード(正極リードまたは負極リード)が積層された状態で外装材の外に出されている場合には、外装材がエンボス加工されている側に面している電極リードと、その逆側に面している電極リードのどちらに測定端子を当てるかによって抵抗値が異なる場合がある。このため、上記抵抗の測定の際には、外装材がエンボス加工されている側に面している電極リードに測定端子を接触させるようにした。
【0184】
(釘刺し試験)
<貫通する釘刺し>
まず、23℃の環境下において0.2Cの定電流で電池電圧が4.40Vに達するまで電池に定電流充電を行ったのち、4.40Vの定電圧で電流値が0.01Cに達するまで電池に定電圧充電を行った。次に、充電した電池のエンボス加工された面の中央から、電池の厚み方向に毎秒100mmの速度で釘を貫通させた。釘は直径2.5mmの鉄製の釘を使用した。釘刺し試験により電池が熱暴走しなかった場合には、新たに電池を用意し、充電電圧を0.05V上げる以外は上記と同様にして充電を行ったのち、釘刺し試験を再度実施した。逆に電池が熱暴走した場合には、充電電圧を0.05V下げる以外は上記と同様の試験を実施した。上述の手順を繰り返して、釘刺し試験により電池が熱暴走しない充電電圧の上限値を求めた。
【0185】
<表面から0.5mmの釘刺し>
充電した電池に、その一方の主面から0.5mmの深さまで釘を刺す釘刺し試験を実施したこと以外は、上記の“貫通する釘刺し”の場合と同様にして、釘刺し試験により電池が熱暴走しない充電電圧の上限値を求めた。
【0186】
表1は、実施例1〜20、比較例1の電池の構成および評価結果を示す。
【表1】
【0187】
表2は、比較例2〜6の電池の構成および評価結果を示す。
【表2】
なお、表1、2において、記号“○”は箔−箔対向部有りの構成を示し、記号“×”は箔−箔対抗部無しの構成を示す。
【0188】
箔−箔対向部を電池の外周側に設けることで安全性が向上することが知られているが(例えば特開2013-16265号公報、特開平11-176478号公報参照)、電極を分割する構造を採用した場合、その効果がより顕著に発現することがわかった。図12Aは、電極を分割していない構造(以下単に「非分割構造」という。)の電池と、電極を分割した構造(以下単に「分割構造」という)の電池との評価結果のうち、箔−箔対向部の個数が異なるものの評価結果を選び出してプロットしたものである。図12Aから、分割構造の電池では、非分割構造の電池よりも、箔−箔対向部を設ける効果がより顕著に発現することがわかる。
【0189】
上記効果の発現は、以下の理由によるものと推測される。非分割構造の電池において箔−箔対向部を外周側の端部に配置した場合には、短絡部に流れ込む電流は増えるが、抵抗自体が小さいため発熱量は小さくなる。一方、非分割構造の電池において箔−箔対向部を外周側電極の外周側の端部に配置した場合には、箔−箔対向部の配置による短絡部の抵抗低減の効果を生かしつつ、短絡電流自体を減らす効果があるため、箔−箔対向部の配置と相乗効果が生じる。したがって、安全性を向上することができる。
【0190】
表1の評価結果から、箔−箔対向部の数は、安全性の向上の観点からすると、好ましくは1つ以上、より好ましくは2つ以上、更により好ましくは3つ以上、特に好ましくは4つであることがわかる。また、安全性の向上の観点からすると、内周側電極および外周側電極の一方が外周側の端部に箔−箔対向部を有していることが好ましく、内周側電極および外周側電極の両方が外周側の端部に箔−箔対向部を有していることがより好ましいことがわかる。
【0191】
但し、箔−箔対向部が外周側の端部になくても、浅く釘を刺す評価を行った場合には、分割構造の電池は、非分割構造の電池と比較してメリットを有していることも明らかとなった(図12B参照)。電池の外側から浅く傷が入るモードは、電池の実使用環境下で起こる頻度が高い事象であると考えられるため、このような釘の刺し方で高い安全性とエネルギー密度が両立できていることは大きなメリットと考えられる。
【0192】
さらに、集電リードの配置位置のみが異なる実施例16〜19の電池の評価結果から、集電リードを配置する位置に関して、好ましい位置が明らかとなった。すなわち、内周側電極に設ける電極リードの配置位置は、内周側の端部であっても外周側の端部であって安全性に差はない。これに対して、外周側電極に配置する電極リードの位置は内周側の端部であるか外周側の端部であるかによって異なっており、内周側の端部に電極リードを配置した場合には、外周側の端部に電極リードを配置した場合よりも安全性が向上する。
【0193】
上記の安全性の違いは、下記の理由によるものと推測される。短絡部の発熱量が最も大きいのは電池の外周側であり、その発熱量は短絡部の抵抗と短絡電流のみで決定される。一方、集電箔やリードを長手方向に流れる電流による発熱も存在しており、短絡部の発熱に上乗せされると考えられる。このとき、外周側電極の集電リードが外周側の端部に配置されていると、発熱の大きい短絡部と集電リードから流れ込む電流に起因する発熱が重なるため、安全性が低下していると考えられる。
【0194】
以上のように、電極を分割構造とし、分割された電極の集電リード同士を外装材の外側で電気的に接続することで、低抵抗で、短絡時の安全性が高く、またエネルギー密度が高い電池が得られる。
【0195】
以上、本開示の実施形態および実施例について具体的に説明したが、本開示は、上述の実施形態および実施例に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0196】
例えば、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0197】
また、上述の実施形態およびその変形例、ならびに実施例の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本開示の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0198】
また、本開示は以下の構成を採用することもできる。
(1)
正極および負極を有し、前記正極と前記負極とが巻回された電極体と、
前記電極体を収容する外装材と
を備え、
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する2つ以上の電極に分割されており、
2つ以上の前記電極はそれぞれ集電リードを有し、前記集電リード同士が前記外装材の外側で電気的に接続されている電池。
(2)
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する2つの前記電極に分割されている場合、2つの前記電極のうち外周側に位置する前記電極は、内周側の端部に前記集電リードを有する(1)に記載の電池。
(3)
前記電極体は、前記正極と前記負極との間に設けられたセパレータをさらに有し、
前記正極、前記負極はそれぞれ、正極集電体露出部、負極集電体露出部を有し、
前記正極集電体露出部および前記負極集電体露出部が、前記セパレータを介して対向する対向部を少なくとも1つ構成している(1)に記載の電池。
(4)
前記対向部が、分割された前記電極のうちの少なくとも1つの前記電極の、内周側および外周側の少なくとも一方に設けられている(3)に記載の電池。
(5)
前記対向部が、分割された前記電極のうちの少なくとも1つの前記電極の外周側に設けられている(3)に記載の電池。
(6)
前記対向部が、分割された前記電極のうち最も外周側に位置する前記電極の外周側に設けられている(3)に記載の電池。
(7)
前記対向部が、分割された全ての前記電極の外周側に設けられている(3)に記載の電池。
(8)
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されている場合、前記対向部が、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方の電極の、内周側および外周側の少なくとも一方に設けられている(3)に記載の電池。
(9)
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されている場合、前記対向部が、前記第1の電極および前記第2の電極のうちの少なくとも一方の電極の外周側に設けられている(3)に記載の電池。
(10)
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されている場合、前記対向部が、前記第1の電極および前記第2の電極のうち外周側に位置するものの外周側に設けられている(3)に記載の電池。
(11)
前記正極および前記負極のうちの少なくとも一方が、巻回方向に隣接する第1の電極および第2の電極に分割されている場合、前記対向部が、前記第1電極および前記第2電極の外周側に設けられている(3)に記載の電池。
(12)
前記電極体は、扁平状を有し、
2つ以上の前記電極がそれぞれ有する前記集電リードは、前記電極体の厚さ方向に重ねられている(1)から(11)のいずれかに記載の電池。
(13)
前記集電リードは、該集電リードの一端が外部に出されるようにして前記外装材の周縁部に挟まれており、
前記外装材と前記集電リードとの間、および重ねられた前記集電リードの間に設けられたシーラントをさらに備える(12)に記載の電池。
(14)
前記外装材は、ラミネートフィルムである(1)から(13)のいずれかに記載の電池。
(15)
(1)から(14)のいずれかに記載の電池と、
前記電池に対する充放電を制御する制御部と、
を備える電池パック。
(16)
(1)から(14)のいずれかに記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電子機器。
(17)
(1)から(14)のいずれかに記載の電池と、
前記電池から電力の供給を受けて車両の駆動力に変換する変換装置と、
前記電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行う制御装置と
を備える電動車両。
(18)
(1)から(14)のいずれかに記載の電池を備え、
前記電池に接続される電子機器に電力を供給する蓄電装置。
(19)
他の機器とネットワークを介して信号を送受信する電力情報制御装置を備え、
前記電力情報制御装置が受信した情報に基づき、前記電池の充放電制御を行う(18)に記載の蓄電装置。
(20)
(1)から(14)のいずれかに記載の電池を備え、
前記電池から電力の供給を受ける電力システム。
【符号の説明】
【0199】
10 電池
11A、11B 正極リード(集電リード)
11C 負極リード(集電リード)
12A、12B、12C シーラント
13C11、13C12、13C21、13C22、13D11、13D12、13D21、13D22 保護テープ
20、20A 電極体
21 正極
211 第1の正極
212 第2の正極
21A1、21A2 正極集電体
21B1、21B2 正極活物質層
21C11、21C12、21C21、21C22、21D11、21D12、21D21、21D22 正極集電体露出部
22 負極
22A 負極集電体
22B 負極活物質層
22C1、22C2、22D1、22D2、22E1、22E2 負極集電体露出部
23 セパレータ
24A、24B、25A、26B、27A、27B 対向部
30 外装材
31A、31B、31C シール部
32 収容部
300 電池パック
301 組電池
301a 二次電池
302 充放電回路(制御部)
400 電子機器
7200 ハイブリッド車両
9003 蓄電装置
9100 蓄電システム
図1
図2
図3
図4
図5
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図12