(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973497
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】ガスサンプリングプローブおよびこれを備えた煙道排ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
G01N1/22 D
G01N1/22 E
G01N1/22 Q
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-549124(P2019-549124)
(86)(22)【出願日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】JP2018029002
(87)【国際公開番号】WO2019077845
(87)【国際公開日】20190425
【審査請求日】2020年4月9日
(31)【優先権主張番号】特願2017-200560(P2017-200560)
(32)【優先日】2017年10月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(72)【発明者】
【氏名】田辺 亮
【審査官】
瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−048107(JP,A)
【文献】
特開平05−067490(JP,A)
【文献】
特開昭60−148079(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0165705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリングガス導入用の開口部を備えたケースと、
前記ケースに収容され、当該ケースに導入されたサンプリングガスに含まれるダストを除去するフィルタと、
前記フィルタを加熱するヒータユニットとを有するガスサンプリングプローブであって、
前記ヒータユニットは、常時通電用のヒータである第1ヒータ、加熱能力調整用のヒータである第2ヒータ、および、前記フィルタの温度に応じて前記第2ヒータをオンオフ制御するサーモスタットを備え、
前記ヒータユニットは、前記サーモスタットによる前記第2ヒータのオンオフ制御により、前記フィルタを通過する前記サンプリングガスの温度を当該サンプリングガスの結露が抑制される温度に保持できるように構成されており、
前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、それぞれ前記ケースの外表面の一部を覆うヒータであり、
前記第1ヒータは前記ケースの下方部を覆うように取り付けられ、前記第2ヒータは前記ケースの上方部を覆うように前記第1ヒータに対向する位置にて組み合わせて取り付けられている
ガスサンプリングプローブ。
【請求項2】
前記第1ヒータと前記第2ヒータとの合算加熱能力は、周囲環境温度の使用下限値において前記フィルタを通過する前記サンプリングガスの温度を当該サンプリングガスの酸露点以上に保持し得る能力に設定され、
前記第2ヒータの非通電時における前記第1ヒータの加熱能力は、周囲環境温度の使用上限値において前記ガスサンプリングプローブを構成する部材を当該部材の使用限界温度以下に保持し得る能力に設定されている
請求項1に記載のガスサンプリングプローブ。
【請求項3】
前記サーモスタットは、前記ケースの上方部において前記第2ヒータの側方に取り付けられている
請求項1に記載のガスサンプリングプローブ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスサンプリングプローブを用いた煙道排ガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電装置、焼却炉、ボイラ等から排出される煙道排ガスをサンプリングして分析する場合に用いられるガスサンプリングプローブおよびこれを備えた煙道排ガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスサンプリングプローブは、通常煙突等に取り付け易い円筒状のケースが本体として使用され、そのケースの内方同軸上に円筒状のフィルタが設けられている。また、ケースの煙突側にサンプリングガス導入用の孔が設けられ、ケースの他端側の開口部には封止部材が取り付けられ、この封止部材に設けられた出口孔に、ダストが除去されたサンプリングガスを導出する配管が接続されている。そして、この配管を経て導出されたサンプリングガスがガス分析計等に供給されるように構成されている。なお、特許文献1は従来のガスサンプリングプローブの一例を開示している。
【0003】
ところで、この種のガスサンプリングプローブの場合、ドレンによるフィルタの目詰まりを抑制するために、フィルタを通過するサンプリングガスの温度は煙道排ガスの酸露点(約150℃)以上に維持している。また、このために、ケースの外表面から内部のサンプリングガスを介してフィルタを加熱するヒータが設けられている。なお、ヒータによりサンプリングガスを必要以上に加熱すると、このガスサンプリングプローブを構成する部材、例えば封止部材の使用限界温度(具体的には180℃)を超える場合が考えられる。このため、ヒータはサンプリングガスを150℃〜180℃の範囲に収めるようにオンオフ制御されている。
【0004】
従来のガスサンプリングプローブは、ケースの外表面の温度を検知するサーモスタットによりヒータをオンオフ制御している。サーモスタットは、ヒータの回路を直切りするタイプとされていることにより、制御ボックスを設けることなくガスサンプリングプローブ単体でヒータをオンオフできるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−48107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のガスサンプリングプローブは、サーモスタットによりヒータ全体をオンオフ制御しているため、サーモスタットの寿命が短く、サーモスタットの交換の手間が煩わしいという問題があった。なお、サーモスタットの交換が遅れた場合には、フィルタにドレンが付着し、目詰まりを生じるおそれがある。このため、サーモスタットの寿命を延ばすことが要望されていた。
【0007】
本発明の目的は、サーモスタットを長寿命化したガスサンプリングプローブおよびこれを備えた煙道排ガス分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に関するガスサンプリングプローブの一形態は、サンプリングガス導入用の開口部を備えたケースと、前記ケースに収容され、当該ケースに導入されたサンプリングガスに含まれるダストを除去するフィルタと、前記フィルタを加熱するヒータユニットとを有するガスサンプリングプローブであって、前記ヒータユニットは、常時通電用のヒータである第1ヒータ、加熱能力調整用のヒータである第2ヒータ、および、前記フィルタの温度に応じて前記第2ヒータをオンオフ制御するサーモスタットを備え、前記ヒータユニットは、前記サーモスタットによる前記第2ヒータのオンオフ制御により、前記フィルタを通過する前記サンプリングガスの温度を当該サンプリングガスの結露が抑制される温度に保持できるように構成されている。
【0009】
このような構成によれば、第1ヒータおよび第2ヒータのうち第2ヒータのみに流れる電流がサーモスタットに流れるようになる。このため、第1ヒータおよび第2ヒータのそれぞれに流れる電流の合算値がサーモスタットに流れる場合と比較して、サーモスタットに流れる電流値を減少させることができる。また、第1ヒータは常時通電され、第2ヒータのみがオンオフ制御されるため、オンオフ制御されるヒータ容量を従来と比較して減少させることができる。このため、第2ヒータのオフ時のフィルタの温度低下速度が低くなり、サーモスタットのオンオフ周期が長くなる。これにより、サーモスタットの寿命が長くなり、サーモスタットの交換の煩わしさが低減される。また、サーモスタットが正常に動作しない場合においても、第1ヒータによりフィルタが加熱されるため、フィルタの目詰まりが生じにくい。
【0010】
(2)前記ガスサンプリングプローブの一例によれば、前記第1ヒータと前記第2ヒータとの合算加熱能力は、周囲環境温度の使用下限値において前記フィルタを通過する前記サンプリングガスの温度を当該サンプリングガスの酸露点以上に保持し得る能力に設定され、前記第2ヒータの非通電時における前記第1ヒータの加熱能力は、周囲環境温度の使用上限値において前記ガスサンプリングプローブを構成する部材を当該部材の使用限界温度以下に保持し得る能力に設定されている。
【0011】
このような構成によれば、第1ヒータの容量および第2ヒータの容量を適正に設定することが可能となり、周囲環境温度の使用下限値においてヒータユニットの加熱能力が不足することが抑制され、また、周囲環境温度の使用上限値においてヒータユニットの加熱能力が過剰になることも抑制される。
【0012】
(3)前記ガスサンプリングプローブの一例によれば、前記第1ヒータおよび前記第2ヒータは、それぞれ前記ケースの外表面の一部を覆うヒータであり、前記第1ヒータは前記ケースの下方部を覆うように取り付けられ、前記第2ヒータは前記ケースの上方部を覆うように組み合わせて取り付けられている。
【0013】
このような構成によれば、第1ヒータをケースの上方部に取り付けた場合と比較して、第2ヒータの非通電時に、ケースの内部においてサンプリングガスの対流が生じやすくなるため、サンプリングガスおよびフィルタを均一に加熱することができる。
【0014】
(4)前記ガスサンプリングプローブの一例によれば、前記サーモスタットは、前記ケースの上方部において前記第2ヒータの側方に取り付けられている。
このような構成によれば、サーモスタットが他の場所に取り付けられている場合と比較して、サーモスタットがフィルタの温度変化に応じて第2ヒータを適切にオンオフ制御できる。
【0015】
(5)本発明に関する煙道排ガス分析装置の一形態は、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のガスサンプリングプローブを備えたものである。
このような構成によれば、ガスサンプリングプローブに用いられるサーモスタットの寿命が長くなり、サーモスタットの交換の煩わしさが低減される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に関するガスサンプリングプローブおよびこれを備える煙道排ガス分析装置によれば、サーモスタットの寿命が長くなるとともにフィルタの目詰まりが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態の煙道排ガス分析装置を煙道に取り付けた状態を示す模式図。
【
図3】
図2のガスサンプリングプローブの電気回路の回路図。
【
図4】
図2のガスサンプリングプローブの動作の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施の形態)
図1を参照して、煙道排ガス分析装置1の構成について説明する。
煙道排ガス分析装置1は、例えば発電所等においてボイラBと煙突Cとを連結する煙道Fに接続され、ボイラBから煙道Fを介して排出される煙道排ガスに含まれる特定の成分である測定対象成分の濃度を測定する装置である。
【0019】
煙道排ガス分析装置1はガスサンプリングプローブ(以下「プローブ10」)、ポンプ(図示略)、ガス分析計70、複数の配管P、および、電源60(
図3参照)を備えている。電源60は交流電源または直流電源であり、プローブ10、ポンプ、および、ガス分析計70等に電力を供給できるように各機器と電気的に接続されている。プローブ10は煙道Fを流れる煙道排ガスをサンプリングガスとして採取できるように煙道Fに設置されている。一例では、プローブ10は煙道Fの外表面の側方部または上方部に設置されている。ポンプはプローブ10の下流側に設けられている。下流側とはサンプリングガスが流れる方向の下流側である。ポンプとプローブ10とは配管Pにより接続されている。ガス分析計70はポンプの下流側に設けられている。ポンプとガス分析計70とは配管Pにより接続されている。一例では、ガス分析計70は煙道F付近において、地面等の設置面(図示略)に設置されている。
【0020】
ガス分析計70は例えば赤外線吸収方式または化学発光方式等の方式を用いた分析計である。一例では、ガス分析計70は赤外線吸収方式を用いた複光束式の分析計である。ポンプが駆動している場合、プローブ10を介してサンプリングガスが採取され、採取されたサンプリングガスがガス分析計70に流入する。ガス分析計70はサンプリングガスに含まれる測定対象成分の濃度を測定する。測定対象成分の一例は二酸化硫黄である。
【0021】
図2を参照して、プローブ10の構成について説明する。
プローブ10は本体20およびフィルタ30を有している。本体20はケース21、フランジ23、導入側接続部24、および、導出側接続部25を含む。ケース21は煙道Fから採取したサンプリングガスが流通する通路21Aを形成している。ケース21の形状は円筒状である。ケース21はサンプリングガス導入用の開口部24Aを備えている。フランジ23はケース21の上流側の端部に固定されている。一例では、フランジ23がボルト等の連結部材(図示略)により煙道Fに固定されることにより、ケース21が煙道Fに連結される。プローブ10は、ケース21の中心軸心が水平方向に沿うように煙道Fに接続されている。
【0022】
導入側接続部24は、煙道Fに接続された連結管PFを固定するためにケース21内における上流側の部分に設けられた部材である。連結管PFの端部は導入側接続部24に形成された開口部24Aに挿入される。導入側接続部24に接続された連結管PFにより、煙道F内の通路とケース21内の通路21Aとが連通している。導出側接続部25は、プローブ10とポンプとを接続する配管Pを固定するためにケース21内における下流側の部分に設けられた部材である。配管Pの端部は導出側接続部25に形成された出口孔25Aに挿入される。導出側接続部25に接続された配管Pにより、ケース21内の通路21Aとポンプとが連通している。
【0023】
フィルタ30は例えばケース21内に導入されたサンプリングガスを外周側から内周側に導入させるようにケース21内の同軸上に内装されている。一例では、ケース21内における導入側接続部24と導出側接続部25との間にフィルタ30が収容されている。フィルタ30の形状は円筒状である。フィルタ30は例えば金属製のメッシュフィルタである。フィルタ30を構成する材料の一例はステンレスである。フィルタ30はケース21に導入されたサンプリングガスに含まれるダストを除去する。フィルタ30によりダストが除去されたサンプリングガスがガス分析計70に流入するため、測定対象成分の濃度が正確に測定される。
【0024】
プローブ10はヒータユニット40をさらに有している。ヒータユニット40はフィルタ30を加熱するために設けられている。一例では、ケース21の外表面22にヒータユニット40が設けられている。ヒータユニット40は電源60から供給された電流により発熱する。ヒータユニット40から生じた熱はケース21、および、通路21Aを流れるサンプリングガスを介してフィルタ30に伝達される。このため、フィルタ30がヒータユニット40の熱により間接的に加熱される。
【0025】
ヒータユニット40は第1ヒータ41、第2ヒータ42、および、サーモスタット50を備えている。第1ヒータ41は常時通電用のヒータである。第2ヒータ42は加熱能力調整用のヒータである。サーモスタット50はフィルタ30の温度(以下「フィルタ温度」)に応じて第2ヒータ42をオンオフ制御する。第1ヒータ41、第2ヒータ42、および、サーモスタット50は電源60と電気的に接続されている(
図3参照)。一例では、各ヒータ41、42およびサーモスタット50が外部に露出しないように、プローブ10の全体がケース(図示略)等により覆われている。ケースを構成する材料の一例はステンレスである。
【0026】
第1ヒータ41および第2ヒータ42は、それぞれケース21の外表面22の一部を覆うヒータである。一例では、各ヒータ41、42は部分円筒状のバンドヒータである。第1ヒータ41はケース21の外表面22のうちの下方部22Bを覆うように取り付けられ、第2ヒータ42はケース21の外表面22のうちの上方部22Aを覆うように組み合わせて取り付けられている。一例では、各ヒータ41、42がボルト等の連結部材(図示略)により連結されることによって、各ヒータ41、42がケース21に固定される。ケース21に固定された各ヒータ41、42はケース21の外表面22を覆う円筒を構成している。
【0027】
サーモスタット50は、ケース21の外表面22の温度に応じて第2ヒータ42と電源60との電気的な接続状態を切り替えることができるように構成されている。ケース21の外表面22の温度は、フィルタ温度と相関性を有する。サーモスタット50の一例はバイメタルサーモスタットである。サーモスタット50は例えばケース21の外表面22において、第2ヒータ42と隣接するように設けられている。一例では、サーモスタット50はケース21の上方部22Aにおいて第2ヒータ42の側方に取り付けられている。このような構成によれば、サーモスタット50が他の場所に取り付けられている場合と比較して、サーモスタット50がフィルタ30の温度変化に応じて第2ヒータ42を適切にオンオフ制御できる。
【0028】
図3を参照して、プローブ10の電気回路について説明する。
ヒータユニット40は、例えば第2ヒータ42とサーモスタット50とが直列に接続され、この直列回路と第1ヒータ41とが並列に接続された並列回路である。ヒータユニット40はサーモスタット50による第2ヒータ42のオンオフ制御により、フィルタ30を通過するサンプリングガスの温度(以下「通過ガス温度」)をサンプリングガスの結露が抑制される温度に保持できるように構成されている。具体的には、ヒータユニット40はサーモスタット50による第2ヒータ42のオンオフ制御により、通過ガス温度をサンプリングガスの酸露点(約150℃)以上に保持できるように構成されている。一例では、ヒータユニット40は、通過ガス温度が酸露点以上に保持されるようにフィルタ温度を調節する。また、ヒータユニット40はプローブ10を構成する部材をその部材の使用限界温度(約180℃)以下に保持できるように構成されている。プローブ10を構成する部材の温度が使用限界温度以下に保持される場合、プローブ10を構成する部材の熱による劣化が促進されにくい。プローブ10を構成する部材は、ケース21内に収容される封止部材等を含む。
【0029】
第1ヒータ41と第2ヒータ42との合算加熱能力は、プローブ10の周囲の外気温度(以下「周囲環境温度」)の使用下限値において通過ガス温度を酸露点以上に保持し得る能力に設定されている。合算加熱能力は第1ヒータ41の加熱能力と第2ヒータ42の加熱能力とを合わせた加熱能力である。周囲環境温度の使用下限値はプローブ10が正常に動作可能な下限の温度である。使用下限値の一例は−10℃である。第2ヒータ42の非通電時における第1ヒータ41の加熱能力は、周囲環境温度の使用上限値においてプローブ10を構成する部材をその部材の使用限界温度以下に保持し得る能力に設定されている。周囲環境温度の使用上限値はプローブ10が正常に動作可能な上限の温度である。使用上限値の一例は50℃である。このような構成によれば、第1ヒータ41の容量および第2ヒータ42の容量を適正に設定することが可能となり、周囲環境温度の使用下限値においてヒータユニット40の加熱能力が不足することが抑制され、また、周囲環境温度の使用上限値においてヒータユニット40の加熱能力が過剰になることも抑制される。
【0030】
サーモスタット50は、ケース21の外表面22の温度に応じて接点51が接続および切断されるように構成されている。サーモスタット50の接点51が接続されている場合、第1ヒータ41および第2ヒータ42が電源60と電気的に接続される。接点51が接続された状態においてフィルタ温度が第1温度TAまで上昇した場合、接点51が切断される。第1温度TAの一例は180℃である。サーモスタット50の接点51が切断されている場合、第2ヒータ42と電源60との電気的な接続が切断される。第1ヒータ41は接点51が接続されている場合、および、接点51が切断されている場合のいずれにおいても電源60と電気的に接続されている。接点51が切断された状態においてフィルタ温度が第1温度TAよりも低い第2温度TBまで低下した場合、接点51が再び接続される。第2温度TBの一例は150℃である。なお、
図3はサーモスタット50の接点51が切断された状態を示している。
【0031】
図4を参照して、プローブ10の動作について説明する。
時刻t11以前では、プローブ10が使用されていない。このとき、フィルタ温度が第1温度TAおよび第2温度TBよりも低く、サーモスタット50の接点51が接続されている。時刻t11では、例えば電源60のスイッチがオフからオンに切り替えられることにより、各ヒータ41、42およびガス分析計70への通電が開始される。各ヒータ41、42から生じた熱はケース21、および、通路21Aを流れるサンプリングガスを介してフィルタ30に伝達される。このため、フィルタ温度が上昇する。フィルタ温度が所定温度まで上昇した場合、煙道排ガス分析装置1のポンプへの通電が開始される。所定温度の一例は第2温度TBである。ポンプが駆動することにより、煙道Fを流れるガスが開口部24Aを介してケース21内に導入される。
【0032】
時刻t12では、フィルタ温度の上昇にともないフィルタ温度が第1温度TAに到達し、サーモスタット50の接点51が切断される。このため、第2ヒータ42の発熱が停止し、ヒータユニット40からケース21に供給される熱量が低下する。一方、第1ヒータ41にはフィルタ温度が第1温度TAに到達する前と同様に電流が流れるため、第1ヒータ41は継続してフィルタ30を加熱する。このため、接点51が切断された後にフィルタ温度が緩やかに低下する。
【0033】
時刻t13では、フィルタ温度の低下にともないフィルタ温度が第2温度TBに到達し、サーモスタット50の接点51が再び接続される。このため、第2ヒータ42が再び発熱し、ヒータユニット40からケース21に供給される熱量が増加する。時刻t13以降では、時刻t11〜t12の期間と同様に各ヒータ41、42によりフィルタ30が加熱されてフィルタ温度が上昇し、以降は時刻t12〜t13の期間と同様の状態が繰り返される。
【0034】
プローブ10によれば、上記のとおり第2ヒータ42が発熱していない場合でも第1ヒータ41が発熱するため、第2ヒータ42の発熱の停止にともない低下するフィルタ温度の低下速度が低くなる。このため、サーモスタット50のオンオフ周期が長くなり、サーモスタット50の寿命が長くなる。また、第1ヒータ41および第2ヒータ42のうち第2ヒータ42のみに流れる電流がサーモスタット50に流れるようになるため、第1ヒータ41および第2ヒータ42のそれぞれに流れる電流の合算値がサーモスタット50に流れる場合と比較して、サーモスタット50に流れる電流値を減少させることができる。このため、サーモスタット50の寿命が長くなる。このように、サーモスタット50の寿命が長くなるため、サーモスタット50の交換の煩わしさが低減される。
【0035】
また、サーモスタット50が正常に動作しない場合においても、第1ヒータ41によりフィルタ30が加熱されるため、フィルタ30の目詰まりが生じにくい。また、常時通電用の第1ヒータ41がケース21の下方部22Bに設けられているため、サーモスタット50の接点51が切断されている場合またはサーモスタット50が正常に動作しない場合においても、ケース21内の下方部22B側を流れるサンプリングガスが常に第1ヒータ41により加熱される。第1ヒータ41をケース21の上方部22Aに取り付けた場合と比較して、ケース21内においてサンプリングガスの対流が生じやすくなるため、サンプリングガスおよびフィルタ30を均一に加熱することができる。このため、サンプリングガスおよびフィルタ30の温度が局所的に低下するおそれが低減され、フィルタ30の目詰まりが一層生じにくい。
【0036】
(変形例)
上記実施の形態は本発明に関するガスサンプリングプローブおよびこれを備える煙道排ガス分析装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明は実施の形態以外に例えば以下に示される実施の形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0037】
・第1ヒータ41および第2ヒータ42の取付位置は任意に変更可能である。第1例では、第1ヒータ41がケース21の外表面22のうちの上方部22Aを覆うように取り付けられ、第2ヒータ42がケース21の外表面22のうちの下方部22Bを覆うように組み合わせて取り付けられる。第2例では、第1ヒータ41がケース21の外表面22のうちの一方の側方部を覆うように取り付けられ、第2ヒータ42がケース21の外表面22のうちの他方の側方部を覆うように組み合わせて取り付けられる。第3例では、第1ヒータ41および第2ヒータ42の少なくとも一方がケース21の内周面に取り付けられる。この例によれば、各ヒータ41、42の駆動により、ケース21の通路21Aを流れるサンプリングガスを介してフィルタ30が加熱される。第4例では、第1ヒータ41および第2ヒータ42の少なくとも一方がフィルタ30またはその周辺の部材に取り付けられる。この例によれば、各ヒータ41、42の駆動によりフィルタ30が直接的に加熱される。なお、第3例および第4例における各ヒータ41、42は、バンドヒータとは別のヒータを構成してもよい。
【0038】
・ヒータユニット40は第1ヒータ41および第2ヒータ42に加えて、1つまたは複数の別のヒータをさらに備える。この例では、ヒータユニット40は別のヒータとサーモスタット50とが並列に接続されるように構成されることが好ましい。
【0039】
・ヒータユニット40に関する電気回路は任意に変更可能である。第1例では、第1ヒータ41が電源60と電気的に接続され、第2ヒータ42およびサーモスタット50が電源60とは別の電源と電気的に接続される。第2例では、第1ヒータ41が電源60とは別の電源と電気的に接続され、第2ヒータ42およびサーモスタット50が電源60と電気的に接続される。
【0040】
・サーモスタット50の取付位置は任意に変更可能である。第1例では、サーモスタット50はケース21の外表面22において、第2ヒータ42よりも上流側に取り付けられる。第2例では、サーモスタット50はケース21の外表面22において、第1ヒータ41と隣接するように設けられる。
【符号の説明】
【0041】
1 :煙道排ガス分析装置
10 :ガスサンプリングプローブ
21 :ケース
22 :外表面
22A:上方部
22B:下方部
24A:開口部
30 :フィルタ
40 :ヒータユニット
41 :第1ヒータ
42 :第2ヒータ
50 :サーモスタット