【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によると、回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ層と、前記主面を少なくとも部分的に被覆した反射層とを含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層上に設けられ、
熱可塑性樹脂を含み、表面のスキューネスS
skの絶対値が1乃至3の範囲内にある接着層とを備え
、前記転写材層の少なくとも一部をホットスタンピングによって前記支持体から紙へ転写するために使用する転写箔が提供される。
【0010】
このスキューネスS
skは、正の値とすることができる。或いは、このスキューネスS
skは、負の値とすることもできる。
【0011】
ここで、「スキューネスS
sk」は、JIS B0681−2:2018において定義されている表面性状パラメータである。
【0012】
なお、スキューネスS
skを含む各表面性状パラメータは、レーザ顕微鏡を使用した測定により得ることができる。この測定には、オリンパス社製のLEXT OLS4100を使用することができる。この測定では、測定数を5とし、一辺の長さが650μmの正方形領域を測定領域とする。そして、傾き補正を行う。
【0013】
接着層の表面が平滑である場合、紙の表面のように平滑でない被転写面に対して転写を行うと、反射層は、被転写面の形状の影響を受けて歪んだ形状になることがある。その結果、転写後においてレリーフ構造が表示する回折画像は、転写前と比較して画質が低くなることがある。
【0014】
上記の転写箔では、接着層の表面は、スキューネスS
skの絶対値が所定の範囲内にある。スキューネスS
skは、高さ分布のヒストグラムの偏り具合、即ち歪度を表している。被転写体の被転写面が平滑でない場合、スキューネスS
skの絶対値を上記範囲内にすることで、転写後の表示面の平滑性を高くすることができ、高い画質を実現することができる。
【0015】
上記の構成によって転写後の表示面の平滑性が高められるのは、被転写体の被転写面の凹凸が表示面の平滑性へ及ぼす悪影響が、表面が高さ分布の適度な偏りを有した接着層により軽減され、且つ、接着層表面の凹凸自体が転写後の表示面の平滑性に及ぼす悪影響が十分に小さいためであると考えられる。言い換えれば、高さ分布の偏りが小さすぎる場合には、被転写体の被転写面の凹凸が画質へ及ぼす影響は、接着層によって十分に吸収されない。逆に、高さ分布の偏りが大きすぎる場合には、接着層表面の凹凸自体が、転写後の表示面の平滑性に悪影響を及ぼす。
【0016】
従って、この転写箔によると、被転写面が平滑でない場合であっても、高い画質を実現することが可能である。
【0017】
<接着層>
接着層は、その表面の算術平均高さS
aを、0.1乃至0.5のμmの範囲内とすることができる。この算術平均高さS
aは、0.1乃至0.3μmの範囲内とすることもできる。ここで、「算術平均高さS
a」は、JIS B0681−2:2018において定義されている表面性状パラメータである。
【0018】
このような接着層の表面には、多数の微細な凸部が存在している。これら凸部は、転写の際に、接着層の材料の面内方向への移動を生じ易くする。即ち、接着層表面の算術平均高さS
aが上記の範囲内にある転写箔は、転写の際に、被転写面の凸部から被転写面の凹部への接着層の材料の移動を生じ易い。それ故、この転写箔は、被転写面の凹凸に起因した反射層の形状の歪みを更に生じ難い。
【0019】
また、接着層の表面の算術平均高さS
aが過度に大きいと、転写の際に、接着層の表面に存在している凸部からその周囲への接着層の材料の移動が十分に進行しない。その結果、転写後において、転写前の接着層の表面に存在していた凸部の位置には、他の位置と比較して、接着層の材料がより多く存在することになる。これに起因して、転写後の反射層は歪んだ形状になる可能性がある。
【0020】
上記の転写箔では、接着層の表面は、算術平均高さS
aが所定の値以下である。それ故、転写の際に、接着層の表面に存在している凸部からその周囲への接着層の材料の移動は十分に進行し得る。即ち、この転写箔は、接着層の表面の凹凸に起因した反射層の形状の歪みを更に生じ難い。
【0021】
接着層は、その表面の最大高さS
zを1乃至10μmの範囲内とすることができる。この最大高さS
zは、2.0乃至10.0μmの範囲内とすることもできる。ここで、「最大高さS
z」は、JIS B0681−2:2018において定義されている表面性状パラメータである。最大高さS
zは、凸部の最大高さと凹部の最大深さとの和を表している。
【0022】
接着層は、その表面のクルトシスS
kuを10乃至35の範囲内とすることができる。このクルトシスS
kuは、10乃至20の範囲内とすることもでき、10乃至15の範囲内とすることもできる。ここで、「クルトシスS
ku」は、JIS B0681−2:2018において定義されている表面性状パラメータである。
【0023】
クルトシスS
kuは、高さ分布の鋭さを表している。被転写体が繊維状の物質から構成され、これら繊維状の物質の隙間が大きく、それら隙間の一部が表面で露出している場合、クルトシスS
kuを上記の範囲内とすることで、接着層表面の凹凸が被転写面の隙間にうまく入り込む。それ故、被転写面の凹凸が画質へ及ぼす影響を軽減しつつ、転写材層の一部である表示体を被転写面に対して十分に高い接着力で接着させることができる。即ち、転写後の表示面の平滑性を高くすることができ、高い画質を実現可能とすることができ、更に、表示体と被転写体との間の十分な接着性を得ることができる
接着層の厚さは、1乃至10μmの範囲内とすることができる。この厚さは、4乃至10μmの範囲内とすることもでき、5乃至8μmの範囲内とすることもできる。
【0024】
ここで、「層の厚さ」は、電子顕微鏡によって撮像することによって得られる平均厚さである。この平均厚さは、任意の5か所の厚さを算術平均することによって得ることができる。高い精度が要求される場合には、この平均厚さは、任意の30か所の厚さを算術平均することによって得ることもできる。
【0025】
接着層を薄くすると、被転写面の形状が反射層の形状に及ぼす影響が大きくなる。接着層を厚くすると、転写材層の少なくとも一部を物品に転写してなる表示体の、その縁部における物品からの剥離を生じ易くなる。
【0026】
接着層は、被転写面に対して接着性を発揮する樹脂を含む。接着層の樹脂としては、熱可塑性樹脂を使用できる。
【0027】
熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂とすることができる。アクリル樹脂は、ポリメチルメタクリレート等とすることができる。転写箔から表示体を転写する物品が有価証券等である場合、この物品の材質は、紙、ポリプロピレン、又はポリエチレンである場合が多い。樹脂成分をアクリル樹脂とした場合、そのような物品への転写を少ない熱量で行うことができる。それ故、短時間のホットスタンピングで転写できる。これにより、転写のスループットが向上する。
【0028】
ここで、「短時間のホットスタンピング」とは、一般的に、90乃至130℃のダイヘッドのプレス面の温度での1秒未満のホットスタンピングを意味する。短時間のホットスタンピング時の圧力は、0.2乃至5t/cm
2とすることができる。短時間でないホットスタンピング時の圧力も、0.2乃至5t/cm
2とすることができる。
【0029】
アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂として、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はポリウレタン系樹脂を使用することもできる。ビニル系樹脂としては、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はポリビニルアルコールを使用することができる。ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン又はスチレン・アクリロニトリル共重合体を使用することができる。ポリエチレン系樹脂としては、ポリエチレン又はエチレン酢酸ビニル共重合体を使用することができる。
【0030】
接着層は、樹脂を1種のみ含むことができる。或いは、接着層は、2種以上の樹脂を含むことができる。例えば、接着層は、アクリル樹脂と、融点又はガラス転移点が60乃至130℃の他の熱可塑性樹脂とを含むことができる。この場合、接着層が樹脂としてアクリル樹脂のみを含んだ場合と比較して、より短い時間での熱圧で転写できる。アクリル樹脂と他の樹脂との質量比は、50:1乃至5:1の範囲内とすることができ、40:1乃至6:1の範囲内とすることもできる。
【0031】
接着層の樹脂は、これらのうち2種類以上を共重合した樹脂であってもよい。上述した各樹脂は、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、アミン結合、及びシラノール結合の1以上を含んでいてもよい。この場合、これらの結合に関わる官能基を有する2種類以上の樹脂の化学構造の一部を架橋させてもよい。これらの結合によって分子量を調整することができ、それ故、ガラス転移点、軟化点、粘弾性、及び耐溶剤性等を調整することができる。熱可塑性樹脂は、上記の通り共重合体であってもよく、変性していてもよい。
【0032】
接着層は、テルペン樹脂、ロジン樹脂、及びスチレンマレイン酸などの低分子を更に含んでいてもよい。
【0033】
接着層は、熱可塑性樹脂を含有した単層とすることができる。或いは、接着層は、表面側接着層と内側接着層とを含んだ多層構成とすることができる。後者の場合、接着層は、表面側接着層と内側接着層との2層からなる構成とすることができる。或いは、接着層は、表面側接着層と、内側接着層と、それらの間に介在した1以上の中間層との3層以上からなる構成とすることができる。接着層を多層構成とした場合、それら層に異なる機能を持たせることができる。例えば、接着層を表面側接着層と内側接着層との2層構成とする場合、表面側接着層には主として接着機能を持たせ、内側接着層には接着機能に加え表面凹凸調整機能やアンカー機能などを持たせることができる。
【0034】
内側接着層用コート剤は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニル系樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン樹脂などのオレフィン樹脂、又はポリエステル樹脂とすることができる。内側接着層の厚さは、1乃至3μmの範囲内とすることができる。また、それらの厚さの比率(表面側接着層の厚さ:内側接着層の厚さ)は、8:2乃至3:7の範囲内、より好ましくは5:5乃至4:6の範囲内とすることができる。
【0035】
表面側接着層には、前述の樹脂を用いることができる。また、必要に応じて、転写時に箔切れをよくするための添加剤などを加えてもよい。
【0036】
内側接着層は、熱可塑性樹脂と混合されたフィラーを更に含むことができる。フィラーは、無機フィラー又は耐熱樹脂フィラーとすることができる。フィラーを加えた場合、極性溶剤と非極性溶剤とをブレンドするか、又は、両極性の溶剤(アルコール等)をコート剤に使用することで、粒子の凝集性を制御し易くなり、適切な表面粗さ(スキューネス、クルトシス等)を得ることができる。また、アンカー機能を付与することが可能となる。
【0037】
無機フィラーの材質は、シリカ、金属、又はそれらの酸化物等とすることができる。無機フィラーは、溶剤で劣化しない。また、無機フィラーは、低コストである。
【0038】
無機フィラーの材質は、硫酸バリウムとすることもできる。硫酸バリウムは、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、又はそれらの混合物とすることができる。粒子の凝集性の制御し易さ、塗膜の均一性、及び光学的な均一性の観点から、硫酸バリウムとして沈降性硫酸バリウムを選択できる。硫酸バリウムは、他のフィラーと混合して使用することもできる。
【0039】
耐熱樹脂フィラーの材質は、耐熱性の合成樹脂である。合成樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、又はポリプロピレン樹脂等とすることができる。
フィラーの材質は、天然素材とすることもできる。天然素材は、セルロース、琥珀、ゼオライト、又は雲母等とすることができる。
合成樹脂は、高い耐熱性及び高い耐薬品性を得やすい。天然素材は、環境負荷が小さい。
【0040】
フィラーの形状は、球状フィラー又は非定型フィラーとすることができる。
フィラーの平均粒子径は、0.1乃至20.0μmの範囲内とすることができる。フィラーの平均粒子径は、0.3乃至1.0μmの範囲内とすることもできる。
ここで、「平均粒子径」は、電子顕微鏡で撮像することによって得られる面積平均粒子径である。
【0041】
接着層におけるフィラーの量は、接着層に含まれる熱可塑性樹脂100質量部に対して、1乃至60質量部の範囲内とすることができ、5乃至50質量部の範囲内とすることもできる。
【0042】
接着層は、蛍光を発する材料を含むことができる。接着層が多層である場合、それら層の何れか1つのみが蛍光を発する材料を含むことができる。或いは、それら層の2以上又は全てが蛍光を発する材料を含むことができる。
【0043】
このような構成を採用した場合、蛍光を利用して、無機蒸着層のエッチングが正しく行われたことを確認することができる。例えば、無機蒸着層のエッチングが正しい位置で行われたこと、又は、不要なエッチング残りが生じていないことを確認することができる。
【0044】
或いは、この蛍光を利用して、接着層又は接着層を構成する各層などの蛍光を発する材料を含んだ層の厚さのばらつきを確認することができる。具体的には、蛍光強度の分布を調べることにより、上記厚さのばらつきを確認することができる。転写箔では、その周縁部において、接着層又は接着層を構成する各層などの厚さにばらつきを生じ易い。蛍光を利用すると、特に周縁部における厚さの管理を容易に行うことができる。
【0045】
或いは、例えば、蛍光を発する材料(第1材料)に、他の材料(第2材料)からなる粒子が分散している場合、この複合材料に励起光を照射して、これを観察することにより、第2材料からなる粒子の分散状態を確認することができる。粒子の分散状態は、この複合材料を含んだ層の接着性に影響を及ぼす。特に、転写箔の周縁部における接着性は、後述する表示体全体の接着性に大きな影響を及ぼす。蛍光を利用すると、粒子の分散状態を容易に確認することができる。具体的には、上記の複合材料に励起光を照射して蛍光でのヘイズを測定することにより、粒子の分散状態を確認できる。
【0046】
接着層又は接着層を構成する各層は、転写材層の表面に塗工液を塗布し、塗膜を乾燥させることにより得ることができる。
【0047】
塗工液は、熱可塑性樹脂と、これを溶解させた溶媒とを含んだ液とすることができる。或いは、塗工液は、熱可塑性樹脂と、これを分散させた分散媒とを含んだディスパージョン又はエマルジョンとすることができる。
【0048】
塗工液の塗布法は、ロールコート、リバースロールコート、グラビアコート、リバースグラビアコート、バーコート、ロッドコート、リップコート、又はダイコート等とすることができる。また、印刷を塗布に適用してもよい。印刷法は、グラビア又はスクリーン印刷とすることができる。塗膜の乾燥は、固形分の融点又はガラス転移点以下の温度で行うことが好ましい。
【0049】
上記の表面性状は、接着層の表面にエンボス加工を行うことにより生じさせることができる。或いは、上記の表面性状を有する接着層は、以下の方法で形成することもできる。
【0050】
接着層を2層構成とする場合、先ず、内側接着層用コート剤とフィラーとを含んだ塗工液を調製する。フィラーとしては、塗工液中で沈降し易いものを選択する。そのようなフィラーとしては、硫酸バリウムを使用することができる。
【0051】
次に、支持体とその上に設けられた転写材層とを含んだ積層体を、転写材層の表面が下方を向くように位置させる。この状態で、転写材層の表面に、内側接着層用コート剤とフィラーとを含んだ塗工液を塗布する。
【0052】
塗膜が乾燥するまでの間に、フィラーの少なくとも一部を塗膜中で沈降させる。これにより、表面に凹凸を有する内側接着層を得る。
【0053】
次に、表面側接着層用の熱可塑性樹脂を含んだ塗工液を内側接着層上に塗布し、塗膜を乾燥させる。この塗膜の表面性状は、内側接着層の表面に設けられた凹凸などの影響を受ける。また、内側接着層の表面性状は、フィラーの種類、平均粒子径及び含量、並びに、塗膜を形成してから硬化するまでの時間及び温度変化などに応じて変化する。
【0054】
従って、これらを適切に選択することにより、上記の表面性状を有する接着層を得ることができる。
【0055】
<支持体>
支持体(キャリアともいう)は、例えば、ベースフィルム又はコートされたベースフィルムである。
ベースフィルムは、単層又は多層のプラスチックフィルムとすることができる。プラスチックフィルムは、押出法、溶液流延法、又はカレンダー法により製造できる。押出法としては、インフレーション法又はTダイ法を適用できる。
【0056】
プラスチックフィルムは、延伸又は無延伸フィルムとすることができる。プラスチックフィルムの材料は、熱可塑性樹脂又は溶解性樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、又はポリプロピレン(PP)を用いることができる。
【0057】
ベースフィルムは、耐熱フィルム又は耐圧フィルムとすることができる。耐熱材料や耐圧材料は、転写時に加わる熱や圧力等による変形や変質を少なくできる。用途や目的に応じて、ベースフィルムは、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙等とすることができる。
【0058】
コートされたベースフィルムは、ベースフィルムと、その片面又は両面をコートしたコート層とを含んでいる。このコーティングには、マイクログラビアコート、グラビアコート、ダイコート、又はスクリーンコート等を適用できる。
【0059】
このコート層は、樹脂単体又は粉体を含有した樹脂をコーティングしたものとすることができる。コートする樹脂は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、又はフッ素系樹脂とすることができる。樹脂が含有する粉体は、シリカ粉体、シリコーン粉体、フッ素系粉体、又はカーボン粉体とすることができる。
【0060】
ベースフィルムの転写材層側の面にコート層を設けた場合、支持体が転写材層を保持する能力や、転写材層の支持体からの剥離の容易さ調整できる。ベースフィルムの転写材層とは反対側の面にコート層を設けた場合、例えば、ロール状に巻かれた転写箔における支持体と接着層とのブロッキングを生じ難くすること、転写箔の搬送をスムーズにすること、又はこれら両方を実現できる。
【0061】
支持体の厚さは、4μm以上であることが好ましい。支持体の厚さが小さいと、その物理的強度が不十分となり、転写箔の取り扱いが困難となる。支持体のより好ましい厚さは、12乃至50μmである。
【0062】
<転写材層>
(レリーフ層)
レリーフ層は、上記の通り、一方の主面にレリーフ構造を有する。レリーフ層の材料は、紫外線硬化樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂とすることができる。
【0063】
紫外線硬化樹脂は、硬化性樹脂である、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を持つモノマー、オリゴマー、又はポリマーとすることができる。
【0064】
エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を持つモノマーは、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとすることができる。
【0065】
エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を持つオリゴマーは、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、又はポリエステルアクリレートのオリゴマー又はコオリゴマーとすることができる。エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を持つポリマーは、ウレタン変性アクリル又はエポキシ変性アクリルのポリマー又はコポリマーとすることができる。
【0066】
紫外線硬化樹脂は、アクリル樹脂、アクリルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂、及びエチレンメタクリレート樹脂の何れか、それらの何れかの共重合樹脂、それらの何れかを含んだ複合樹脂、又は、それらの何れかの共重合樹脂を含んだ複合樹脂とすることができる。
【0067】
レリーフ層は、着色されていてもよい。レリーフ層は、その樹脂に顔料又は染料を添加することにより着色できる。
【0068】
顔料は、無機顔料又は有機顔料とすることができる。顔料は、蛍光性顔料、パール顔料、又は磁性顔料とすることもできる。染料は、天然染料又は合成顔料とすることができる。染料は蛍光性染料とすることもできる。
【0069】
レリーフ層の材料としての熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、及びビニル系樹脂の何れか、それらの何れかの共重合樹脂、それらの何れかを含んだ複合樹脂、又は、それらの何れかの共重合樹脂を含んだ複合樹脂とすることができる。
【0070】
レリーフ層の材料としての熱硬化性樹脂は、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、及びフェノール系樹脂の何れか、それらの何れかの共重合樹脂、それらの何れかを含んだ複合樹脂、又は、それらの何れかの共重合樹脂を含んだ複合樹脂とすることができる。
【0071】
レリーフ層のレリーフ構造は、微細な凹凸によって構成されている。このレリーフ構造の少なくとも一部は、例えば、白色光で照明した場合に回折光を射出して、回折画像を表示する。レリーフ構造のうち回折光を射出する部分は、幅方向に配列した複数の溝を含んでいる。
【0072】
回折画像は、三次元画像を含むことができる。ここで、用語「三次元画像」は、画像における対象物の向きが、例えば、その対象物の実物を観察した場合と同様に、観察角度の変化に応じて変化する画像、及び、両眼視差を利用して観察者に奥行きを知覚させる画像を意味する。
【0073】
反射層の形状の歪みが回折画像の画質へ及ぼす影響は、回折画像として、高精細画像、アニメーション又は三次元画像を表示する場合に大きく、三次元画像を表示する場合に特に大きい。
【0074】
レリーフ構造は、回折画像を表示する部分に加え、無反射効果、等方性散乱効果、異方性散乱効果、レンズ効果、及び偏光選択性反射効果などの光学効果を奏する1以上の部分を更に含むことができる。
【0075】
レリーフ構造のうち回折光を射出する部分の溝は、ピッチを0.5μm以上2μm以下とし、深さを0.05μm以上0.5μm以下とすることができる。
【0076】
レリーフ構造のうち無反射効果又は偏光選択性反射効果を奏する部分には、ピッチが0.1μm以上0.5μm以下であり、深さ又は高さが0.25μm以上0.75μm以下の凹部又は凸部からなるモスアイ構造又は格子構造を設けることができる。
【0077】
レリーフ構造のうち等方性散乱効果又は異方性散乱効果を奏する部分には、ピッチが0.5μm以上3μm以下であり、深さ又は高さが0.05μm以上0.5μm以下の非周期的な線状又はドット状の凹部又は凸部からなる繰り返し構造を設けることができる。
【0078】
レリーフ構造のうちレンズ効果を奏する部分には、平均ピッチが3μmより大きく、深さが0.5μmより大きい溝からなる同心円状グレーティングを設けることができる。
【0079】
レリーフ構造が奏する光学効果は、目視又は機械読み取りによって、知覚又は検知することができる。これにより、このレリーフ構造を含んだ表示体を支持させる物品に、偽造又は改竄防止性能や意匠性を付与することができる。
【0080】
レリーフ層の主面は、レリーフ構造が設けられた領域を1つのみ含むことができる。或いは、レリーフ層の主面は、レリーフ構造が設けられた領域を2以上含むことができる。
【0081】
レリーフ構造が表示する画像は、絵、写真、肖像、ランドマーク、マーク、ロゴ又はそれらの組合せとすることができる。
【0082】
(反射層)
反射層は、無機蒸着層とすることができる。無機蒸着層は、レリーフ構造が奏する光学効果を容易に観察可能とする。
【0083】
無機蒸着層は、レリーフ層のレリーフ構造を少なくとも一部を覆うように、レリーフ構造が設けられた主面の一部又は全面に形成される。無機蒸着層が上記主面の一部にのみ形成された場合、より精緻な意匠となり、転写材層又は表示体の製造により高度な加工技術が要求されるため、転写箔はより高い偽造防止効果を奏することができる。
【0084】
無機蒸着層は、それ自体で構造色を表示するものであってもよい。構造色は、虹色又は観察方向又は照明方向を変化させるのに応じて変化する色を含む。
【0085】
無機蒸着層の材料としては、金属若しくはケイ素、合金、又は金属若しくは珪素を含んだ化合物を用いることができる。金属は、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、又はAgとすることができる。
無機蒸着層の厚さは、10乃至500nmの範囲内とすることができる。
【0086】
無機蒸着層は、減圧下で無機材料をレリーフ層上に堆積させることで形成できる。無機蒸着層は、真空蒸着、スパッタリング、又は化学気相堆積(CVD)により形成できる。
【0087】
無機蒸着層は、単層又は多層である。多層の無機蒸着層は、金属層と金属化合物層とを交互に積層したもの、異種の金属からなる層を交互に積層したもの、又は、異種の金属化合物からなる層を交互に積層したものとすることができる。金属層と金属化合物層とを交互に積層した無機蒸着層として、アルミニウム層と二酸化珪素層とを積層したものを挙げることができる。
【0088】
(剥離保護層)
転写材層は、レリーフ層と基材との間に介在した剥離保護層を更に含むことができる。
【0089】
剥離保護層は、転写材層の支持体からの剥離を容易にする。また、剥離保護層は、転写後においては、表示体の最表面層となり、レリーフ層や反射層を損傷から保護する。
【0090】
剥離保護層は、熱可塑性樹脂と表面改質剤とを含有した層とすることができる。
この熱可塑性樹脂は、融点又はガラス転移点が90℃以上130℃以下の樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、若しくはポリアミド樹脂、それらの何れかの共重合樹脂、それらの何れかを含んだ複合樹脂、又は、それらの何れかの共重合樹脂を含んだ複合樹脂とすることができる。
【0091】
表面改質剤は、パウダー、ワックス、又はオイルとすることができる。パウダーは、耐熱パウダーとすることができる。耐熱パウダーは、シリカパウダー、ポリエチレンパウダー、フッ素系パウダー、又はシリコーン系パウダーとすることができる。ワックスは、パラフィンワックス、シリコーンワックス、又はカルナバロウとすることができる。オイルは、シリコーンオイルとすることができる。
【0092】
剥離保護層は、着色されていてもよい。剥離保護層は、その樹脂に顔料又は染料を添加することにより着色できる。
【0093】
顔料は、無機顔料、有機顔料、又は、無機顔料と有機顔料の混合物とすることができる。或いは、顔料は、蛍光性顔料、パール顔料、又は磁性顔料とすることができる。顔料は、2以上の蛍光性顔料、2以上のパール顔料、又は2以上の磁性顔料とすることができる。或いは、顔料は、1以上の蛍光性顔料と1以上のパール顔料とを含んだ混合物、1以上のパール顔料と1以上の磁性顔料とを含んだ混合物、1以上の磁性顔料と1以上の蛍光性顔料とを含んだ混合物、又は、1以上の蛍光性顔料と1以上のパール顔料と1以上の磁性顔料とを含んだ混合物とすることができる。
【0094】
染料は、天然染料、合成染料、又は、天然染料と合成染料との混合物とすることができる。或いは、染料は蛍光性染料とすることもできる。
【0095】
剥離保護層は、支持体への印刷又は塗布によって形成することができる。塗布は、グラビアコート、マイクログラビアコート、又はダイコートとすることができる。印刷は、グラビア印刷又はスクリーン印刷とすることができる。
【0096】
剥離保護層の厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下である。
剥離保護層は、印刷を受容できる。アクリル樹脂は、印刷を受容し易い。印刷を受容可能な剥離保護層を表示体が含んだ表示体付き物品は、その表示体及び物品の双方に対して印刷が可能である。
【0097】
(被覆層)
転写材層は、反射層を少なくとも部分的に被覆した被覆層を更に含むことができる。被覆層は、反射層の全面又は一部を被覆する。
【0098】
被覆層は、連続膜として形成した無機蒸着層をパターニングする際に、エッチングマスクとして利用することができる。連続膜として形成した無機蒸着層のうち無機蒸着層によって覆われていない部分を選択的に除去することで、レリーフ層の主面を部分的に被覆した反射層が得られる。
【0099】
被覆層は、無機蒸着層への印刷、塗布、又は堆積により形成することができる。無機蒸着層を部分的に被覆した被覆層は、印刷によって形成することができる。或いは、無機蒸着層を部分的に被覆した被覆層は、その材料を、マスクを用いて無機蒸着層上に堆積させることにより形成することができる。或いは、無機蒸着層を部分的に被覆した被覆層は、紫外線露光によって溶解するか又は溶解し難くなる樹脂を無機蒸着層上に塗布し、塗膜をパターン状に紫外線で露光し、その後、塗膜を現像することにより形成することができる。或いは、無機蒸着層を部分的に被覆した被覆層は、無機蒸着層を部分的に被覆した溶解性の層を形成し、被覆層を無機蒸着層と溶解性の層とを覆うように形成し、その後、溶解性の層を溶剤に溶解させて、被覆層のうち溶解性の層の上に位置した部分を除去することにより形成することができる。無機蒸着層を部分的に被覆した被覆層の形成には、他の周知の加工技術を適用してもよい。
【0100】
被覆層の材料は、樹脂、無機材料、又は樹脂と無機材料とのコンポジットとすることができる。被覆層の樹脂は、エッチング耐性を有する樹脂とすることができる。被覆層の樹脂は、硬化性樹脂とすることができる。硬化性樹脂は、エッチング耐性を得やすい。被覆層の樹脂は、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、若しくはポリイミド系樹脂、それらの何れかの共重合樹脂、それらの何れかを含んだ複合樹脂、又は、それらの何れかの共重合樹脂を含んだ複合樹脂とすることができる。
【0101】
ビニル系樹脂は、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はポリビニルアルコールとすることができる。ポリスチレン系樹脂は、ポリスチレン系ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、又はエチレン酢酸ビニル共重合体とすることができる。アクリル系樹脂は、ポリメチルメタクリレートとすることができる。また、被覆層の樹脂は、これらのうちの2種類以上を共重合した樹脂であってもよい。上記樹脂の分子は、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、アミン結合、又はシラノール結合などを含んでいてもよい。これらの結合に関わる官能基を有する2種類以上の樹脂を使用し、それらの化学構造を部分的に架橋させてもよい。
【0102】
硬化性樹脂は、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、又は、アクリレート系樹脂などの紫外線硬化樹脂とすることができる。被覆層の樹脂は、電子線硬化樹脂又は湿気硬化型樹脂とすることもできる。
【0103】
<被転写体>
被転写体である物品は、印刷物又は印刷が行われるべき記録媒体とすることができる。印刷物又は記録媒体の厚さは、0.05乃至4mmの範囲内とすることができる。
【0104】
印刷物は、全面又は一部に印刷されたフィルム又は紙とすることができる。記録媒体は、印刷が行われるべきフィルム又は印刷用紙とすることができる。紙は平滑な表面を有していないため、上述した技術が特に有用である。
【0105】
印刷されたフィルムは、ベースフィルムと、その表面の全体又は一部にアンカー層が形成され、このアンカー層に印刷層が形成されたものである。印刷された紙は、上質紙、中質紙、コート紙、非コート紙、フィルムをラミネートした紙、又は樹脂含浸紙等に印刷層が形成されたものである。印刷が行われるべきフィルムは、ベースフィルム上に、印刷を受容するようアンカー層が形成されたものである。
【0106】
セキュリティ印刷物に用いられる用紙は、長期の使用を想定した高耐久性の用紙が適している。高耐久性の用紙として、長い繊維状の物質から構成される紙を用いることができる。具体的には、平均繊維長が3乃至20mm、好ましくは6乃至20mmであり、平均幅が4乃至40μmの繊維を含む紙を用いることができる。このような紙としては、例えば、靱皮繊維を主原料とし、葉脈繊維などを補助原料とした紙が挙げられる。このような紙は、強度が高く、強靭であり、丈夫であるが、繊維状の物質の隙間が大きく表面が荒れている。そのため、従来の転写箔を使用して転写した場合、転写後において、高い平滑性の表示面が得られ難い。そのため、このような紙を使用した場合、上述した技術の効果が特に大きいものとなる。
【0107】
印刷されたフィルム及び印刷が行われるべきフィルムのベースフィルムには、プラスチックフィルムを適用できる。プラスチックフィルムは、延伸フィルム又は無延伸フィルムとすることができる。延伸フィルム又は無延伸フィルムは、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンフィルム、又はポリプロピレンフィルムとすることができる。ポリマーフィルムは、単層又は同一材料若しくは異種材料を交互に積層した多層とすることができる。
【0108】
印刷されたフィルム及び印刷が行われるべきフィルムのアンカー層は、アンカーコート剤を使用して形成することができる。アンカーコート剤は、熱可塑性樹脂又は熱硬性樹脂とすることができる。アンカーコート剤は、重合体又は共重合体とすることができる。この重合体又は共重合体は、ポリエチレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレンイミン、又はポリウレタンとすることができる。ポリエチレンイミン及びエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、極性基及び疎水基を含んでおり、隣接する層に対して高い接着性を示す。
【0109】
印刷法は、グラビア印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等とすることができる。
【0110】
印刷には、インキを使用することができる。インキは、顔料インキ、染料インキ、パールインキ、又は不可視インキとすることができる。不可視インキは、蛍光インキ又は赤外線吸収インキとすることができる。
【0111】
印刷物は、セキュリティ印刷物とすることができる。セキュリティ印刷物は、紙幣、チケット、タグ、シール、ゲームカード、認証カード、認証ページ、ギフト券、証明書、ポスター、グリーティングカード、又はビジネスカード等とすることができる。セキュリティ印刷が行われるべき物品は、偽造、改竄、及び秘密にされるべき情報の盗み読み等の不正を防止するための対策、又は、そのような不正が行われたと懸念される場合に不正の有無の判別を容易とするための対策が必要とされる印刷である。