(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ホログラム構造体は、前記ホログラム層の前記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された蒸着層を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホログラム構造体。
前記ホログラム層の前記ホログラム形成領域には、点光源から入射した光を前記光像へ変換可能なホログラムセルと、前記ホログラムセルと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画する回折格子セルと、が配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のホログラム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のホログラム構造体について詳細に説明する。
本発明のホログラム構造体は、ホログラム形成領域を有するホログラム層を有し、上記ホログラム形成領域には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録され、上記光像が、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状であることを特徴とするものである。
このような本発明のホログラム構造体は、上記ホログラム形成領域が、反射型ホログラム形成領域であり、上記ホログラム構造体は、上記ホログラム層の上記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された蒸着層を有する態様(第I態様)と、上記ホログラム形成領域が、透過型ホログラム形成領域である態様(第II態様)と、の2つの態様に分けることができる。
以下、本発明のホログラム構造体を各態様に分けて説明する。
【0019】
A.第I態様
本発明のホログラム構造体の第I態様は、上述のホログラム構造体であって、上記ホログラム形成領域が、反射型ホログラム形成領域であり、上記ホログラム構造体は、上記ホログラム層の上記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された蒸着層を有する態様である。
【0020】
このような本態様のホログラム構造体について図面を参照して説明する。
図1は、本態様のホログラム構造体の一例を示す概略平面図であり、
図2は、
図1のA−A線断面図である。
図1および
図2に示すように、本態様のホログラム構造体10は、ホログラム形成領域11を有するホログラム層1を有し、上記ホログラム形成領域11には、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録され、上記光像が、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状であるものである。
また、上記ホログラム形成領域11が、反射型ホログラム形成領域であり、ホログラム構造体10は、ホログラム層1の上記ホログラム形成領域11の凹凸表面1aに接するように形成された蒸着層2を有するものである。
ホログラム構造体10は、ホログラム層1の蒸着層2とは反対側の表面に透明基材3が積層された例を示すものである。
図1は説明の容易のため、透明基材の記載を省略するものである。また、
図1では、破線で囲まれた領域がホログラム形成領域11である。
【0021】
本態様によれば、ホログラム形成領域には点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されていることにより、上記ホログラム構造体は、点光源により平面視上ホログラム形成領域内に光像を再生できる。
このため、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内に光像を再生できるので、光像を投影するスクリーン等を別途準備することなく、情報を得ることができる。
また、上記光像が、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状であることにより、ホログラム形成領域内に再生された光像を電子機器により解析することにより、情報を得ることができる。
このようなことから、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域に点光源により再生される暗号化された情報が記録されていることを知っている使用者のみが情報を取得可能となる等、情報の秘匿性に優れたものとなる。
【0022】
また、点光源からの光照射を受けているときのみ光像を再生できる。
このようなことからも、上記ホログラム構造体は、情報の秘匿性に優れたものとなる。
【0023】
また、上記ホログラム形成領域が、反射型ホログラム形成領域であることにより、ホログラム構造体は、電子機器としてスマートフォン等の携帯型の電子機器を用いて容易に情報を取り出すことが可能となる。
電子機器が点光源であるフラッシュライトおよび光像を撮影可能なカメラを有するスマートフォンである場合のホログラム構造体の使用例としては、
図3(a)に示すように、スマートフォンが点光源21としてフラッシュライトを点灯していない状態で、上記形状の認識部位22としてのカメラでホログラム形成領域11を撮影22aした場合には、
図3(b)に示すように、ホログラム形成領域11内には光像が再生されていないため、光像の形状を撮影することはできない。
一方、
図4(a)に示すように、スマートフォンが点光源21としてのフラッシュライトを点灯し光21aがホログラム形成領域11に入射している状態で、認識部位22としてのカメラでホログラム形成領域11を撮影した場合には、
図4(b)に示すように、ホログラム形成領域11内に再生された光像12を撮影することが可能となる。
そして、スマートフォンにインストールされているソフトウェア等を用いて撮影された光像の形状を解析することで、情報を取り出すことが可能となる。
【0024】
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層および蒸着層を有するものである。
以下、本態様のホログラム構造体における各構成について説明する。
【0025】
1.ホログラム層
本態様におけるホログラム層は、ホログラム形成領域を有するものである。
上記光像は、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状である。
【0026】
(1)光像
本態様においてホログラム形成領域に点光源から光を入射することで再生される光像は、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状である。
ここで、情報が暗号化された形状であるとは、デジタル情報が暗号化された形状であり、元のデジタル情報とは視覚上異なる模様状の形状であることをいうものである。
電子機器で解析可能であるとは、電子機器を用いて、模様状で表わされる上記形状から、元のデジタル情報を取り出すことができることをいうものである。
このような形状としては、例えば、バーコード、QRコード(登録商標)等の二次元バーコード、電子透かし等を挙げることができる。ホログラム構造体は、情報の取得が容易なものとなるからである。
また、情報としては、暗号化されることで保護されるものであればよく、例えば、認証番号、キーワード、インターネットのアドレス(URL)、メールアドレス、商品情報、真正品であることを示す文字列または数列、人名、地名、住所、日付等を挙げることができる。上記情報は、1つの光像により表わされる形状に複数含まれていてもよい。
【0027】
電子機器としては、上記形状を認識し、その形状から元の情報を取り出す解析処理が可能なものであればよい。
電子機器は、上記解析処理を専用に行う電子機器、上記解析処理が可能なソフトウェアがインストールされた電子機器等を用いることができる。
電子機器としては、例えば、カメラ機能付きの携帯電話、スマートフォン等のホログラム形成領域に対して光を照射可能な点光源と、ホログラム形成領域内に再生された光像の形状を撮影可能なカメラと、を有する携帯型の電子機器等を挙げることができる。
【0028】
(2)ホログラム形成領域
上記ホログラム形成領域は、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録された領域である。
上記ホログラム形成領域は、反射型ホログラム形成領域である。
【0029】
ここで、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されるとは、原画像のフーリエ変換を介して得られたフーリエ変換像の位相情報を多値化して深さとして記録されることをいうものである。したがって、位相型フーリエ変換ホログラムが記録されたホログラム層のホログラム形成領域には、凹凸表面が形成される。
上記ホログラム層は、ホログラム形成領域の凹凸表面を構成する凹凸形状の高低差により、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、すなわちフーリエ変換レンズとして機能するものである。このような機能により、任意の点光源から入射する光が所定の複数の方向に回折され所定のイメージが光像として形成されるものである。なお、上述の機能のことを「フーリエ変換レンズ機能」と称する場合がある。
【0030】
反射型ホログラム形成領域であるとは、点光源を観察面側に配置して、観察面側からホログラム層を平面視した際に、ホログラム形成領域内に光像を再生可能なものである。
【0031】
上記ホログラム形成領域は、点光源から入射した光を所望の光像へ変換可能な領域をいうものであり、具体的には、上記光像へ変換可能なホログラムセルの全てを含むことができる最小面積の長方形で囲まれる領域である。
【0032】
上記ホログラム形成領域の平面視サイズとしては、ホログラム形成領域内に上記光像の全体像の全てを電子機器で認識可能なサイズであることが好ましい。
図5に例示するように、上記ホログラム形成領域11の平面視サイズが小さい場合には(
図5(a))、電子機器20は、光像12の全体像(
図5ではQRコード(登録商標))のうち一部のみしか認識できない場合がある(
図5(b))。また、
図6に例示するように、平面視サイズの小さいホログラム形成領域11内に光像12の全体像の全てを再生可能とするために、電子機器20をホログラム構造体10に近接させることも考えられるが(
図6(a))、この場合には、再生された光像12(
図6ではQRコード(登録商標))のサイズが小さく、電子機器20は、光像12により表わされるQRコード(登録商標)の認識が困難となる(
図6(b))。
これに対して、
図7に例示するように、上記ホログラム形成領域11の平面視サイズが所定の大きさ以上である場合には、ホログラム構造体10は、電子機器20をホログラム構造体10に近接させることなく(
図7(a))、上記ホログラム形成領域11内に光像12の全体像(
図7ではQRコード(登録商標))の全てを再生でき(
図7(b))、再生された光像12により表示されるQRコード(登録商標)を容易に認識可能となる。
【0033】
上記平面視サイズは、上記電子機器の種類、および上記光像の形状の種類、つまり、暗号化の種類等により異なるが、上記電子機器がスマートフォンであり、上記形状の種類がQRコード(登録商標)である場合には、少なくとも15mm角以上であることが好ましく、15mm角以上50mm角以下の範囲内であることが好ましい。上記平面視サイズの下限が上述の範囲内であることにより、スマートフォンを用いて、より具体的には、点光源であるフラッシュライトを点灯した状態で、光像としてホログラム形成領域内に再生されたQRコード(登録商標)をカメラで撮影し、その撮影されたQRコード(登録商標)の形状をソフトウェアで解析処理し、元の情報を取り出すことが容易だからである。
また、上記平面視サイズの上限が上述の範囲内であることにより、ホログラム構造体は、低コスト化を図ることが容易となるからである。
なお、ホログラム形成領域の平面視サイズが5mm角以上であるとは、上記ホログラム形成領域が、5mm角の正方形の範囲を少なくとも含む平面視形状であることをいうものである。したがって、ホログラム形成領域が長方形状である場合には、その短辺の長さが5mm以上であることをいうものであり、ホログラム形成領域が正方形状である場合には、その1辺の長さが5mm以上であることをいうものである。
【0034】
また、ホログラム形成領域内の光像が再生される光像再生領域のサイズは、電子機器が光像の形状を認識し、解析することで暗号化された情報を取り出すことができるサイズであればよく、上記電子機器の種類、および上記光像の形状の種類等により異なるが、上記電子機器がスマートフォンであり、上記形状の種類がQRコード(登録商標)である場合には、通常、10mm角〜30mm角の範囲内程度とすることができる。
なお、光像再生領域とは、光像を囲むことができる最小面積の長方形領域をいうものである。
【0035】
上記ホログラム形成領域の光像再生領域が占める面積割合は、ホログラム形成領域の全面であってもよく、一部の領域であってもよい。
上記面積割合がホログラム形成領域の一部の領域であることで、例えば、一部の領域に光像が再生されることを知っている使用者のみが情報を取得可能となるからである。
また、上記面積割合がホログラム形成領域の全面であることにより、電子機器による光像の形状の読み取りが容易になるからである。
光像再生領域がホログラム形成領域の一部の領域である場合、上記ホログラム形成領域の光像再生領域が占める面積割合は50%以下とすることができ、40%以下であることが好ましく、10%以上20%以下であることが好ましい。上記面積であることにより、ホログラム構造体は、情報の秘匿性により優れたものとなるからである。
【0036】
上記ホログラム形成領域は、
図8(a)で示されるように、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録された1つのホログラムセル12a(以下、単に、ホログラムセルと称する場合がある。)からなるホログラム形成領域11(以下、単に、単一ホログラム領域と称する場合がある。)であってもよいが、通常、
図8(b)で示されるようにホログラムセル12aを複数配列させて拡大させたホログラム形成領域11(以下、大判ホログラム領域と称する場合がある。)である。
なお、
図8中のQRコード(登録商標)は、単一、または大判ホログラム領域内にそれぞれ再生される光像12により表わされる形状の例を示すものである。
【0037】
上記ホログラム形成領域が大判ホログラム領域である場合、ホログラム形成領域を構成する個々のホログラムセルの平面視サイズとしては、精度良くホログラム形成領域を形成可能なものであればよい。
上記平面視サイズは、0.25mm角以上5mm角以下の範囲内であることが好ましい。上記平面視サイズが上述の範囲内であることにより、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内への光像の再生が容易なものとなるからである。
なお、上記平面視サイズは、上記ホログラムセルを含むことができる最小の正方形の大きさをいうものである。したがって、ホログラムセルが1辺1mmの正方形である場合の平面視サイズは1mm角となる。また、ホログラムセルの平面視形状が直径1mmの円形状である場合の平面視サイズは1mm角となる。
【0038】
上記ホログラムセルの上記ホログラム形成領域に占める平面視上の面積の割合としては、所望の光像を再生可能なものであれば特に限定されるものではないが、25%以上であることが好ましく、なかでも、50%以上であることが望ましい。上記面積割合が上述の範囲であることより、ホログラム構造体は、光像を鮮明に再生可能なものとなるからである。
【0039】
上記ホログラムセルの平面視形状としては、所望の平面視形状のホログラム形成領域を形成可能なものであれば良く、任意の形状とすることができる。具体的には、上記平面視形状は、正方形状、長方形状、台形状、三角形状、五角形状、六角形状等の多角形状、円形状、楕円形状、星型形状、ハート型形状等とすることができるが、ホログラム形成領域の形成容易の観点から、通常、正方形状または長方形状が用いられる。
【0040】
上記ホログラムセルの凹凸表面の凹凸形状は、光像として表示させる原画の画像データをもとに形成される多値化されたフーリエ変換像を、縦横方向に所望の範囲まで複数個配列させたときの、フーリエ変換像のパターンに相当するものである。
このようなホログラムセルの凹凸表面のホログラム形成領域への形成方法としては、点光源から入射した光を所望の光像へ変換可能な凹凸表面を形成可能な方法であればよく、一般的なフーリエ変換ホログラムの形成方法を用いることができる。
上記形成方法は、具体的には、フーリエ変換像に対応した凹凸パターンを有するマスター原版を形成し、PET等の基材上に形成した紫外線硬化樹脂等の樹脂材料の塗膜に当該原版の凹凸パターンを転写することでホログラムセルの凹凸表面を形成する方法を挙げることができる。
また、マスター原版の凹凸パターンの転写を複数回行うことにより、複数のホログラムセルが配置されたホログラム形成領域を有するホログラム層を形成することができる。
【0041】
マスター原版の形成方法としては、表示させる原画の画像データをもとに、計算によりフーリエ変換像を形成する。次に、上記フーリエ変換像のデータを二値以上に多値化したものを電子線描画用データへ変換し、上記電子線描画用データを希望の範囲まで配列させる。例えば、電子線描画用データを縦、横方向に各10個ずつ配列させる。次いで、配列した電子線描画用データをもとに電子線描画装置でマスター原版を作成する方法を用いることができる。
電子線描画用データとして上記フーリエ変換像のデータを二値化したものを用いた場合には、上記凹凸表面の凹凸形状は、
図9(a)に示すように2段の凹凸形状となり、四値化したものを用いた場合には、
図9(b)に示すように4段の凹凸形状となる。
本態様においては、上記フーリエ変換像のデータの多値化が、四値以上に多値化するもの、すなわち、上記凹凸形状が4段以上の凹凸形状であることが好ましい。ホログラム構造体は、フーリエ変換像が二値化により得られたものでは、ホログラム形成領域に再生される光像は鏡像関係にある2つの画像を表示するものとなるのに対して、四値化以上の多値化により得られたものでは、ホログラム形成領域に再生される光像は1つの画像を表示するものとすることが可能となる。このため、ホログラム構造体は、光像の形状を自由度高く設定可能となるからである。
【0042】
上記凹凸表面の格子ピッチとしては、点光源から入射した光を所望の光像へ変換可能なものであればよい。
具体的には、上記格子ピッチは、1.0μm〜80.0μmの範囲内であることが好ましい。上記格子ピッチが上述の範囲内であることにより、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内への光像の再生の容易なものとなるからである。
なお、格子ピッチは、例えば、
図9中のPで示される幅をいうものである。
【0043】
ここで、
図10に例示するように、ホログラム構造体10のホログラム形成領域11に対して所定の距離L1の位置に点光源21が配置され、ホログラム形成領域11から所定の距離L2の位置で観察者30がホログラム形成領域11を観察する場合、観察者30がホログラム形成領域11の全領域で光像の全体像を観察できるためには、格子ピッチについて以下の式(1)が成り立つものとすることができる。
なお、λは回折光の波長、Pは凹凸表面の格子ピッチ、θ1は光源からホログラム形成領域の端部まで到達するための入射角、θ2はホログラム形成領域の端部からの回折光が観察者に到達するための回折角、nは回折の次数である。
P=nλ/(sinθ1+sinθ2) (1)
【0044】
上記格子ピッチの具体的な計算例としては、ホログラム形成領域が1辺が15mmの正方形状であり、L1が50mm、L2が300mmであり、波長550nmの光である場合、sinθ2=0.025であり、sinθ1=0.148と計算され、観察者がホログラム形成領域の全領域で光像の全体像を観察するために必要な格子ピッチPは、最短で3179nmと計算される。
また、ホログラム形成領域が1辺が15mmの正方形状であり、L1が1990mm、L2が2000mmであり、波長550nmの光である場合、sinθ2=0.00374であり、sinθ1=0.00377と計算され、上記格子ピッチPは、最短で73236nmと計算される。
さらに、ホログラム形成領域が1辺が10mmの正方形状であり、L1が60mm、L2が60mmであり、波長550nmの光である場合、sinθ2=0.083であり、sinθ1=0.083と計算され、上記格子ピッチPは、最短で3313nmと計算される。
【0045】
上記凹凸形状の深さは、所望の形状を表わす光像を再生可能なものであればよい。上記深さは、例えば、0.05μm〜0.5μmの範囲内程度とすることができ、なかでも、0.1μm〜0.2μmの範囲内であることが好ましい。上記深さが上述の範囲内であることにより、ホログラム構造体は、光像を安定的に再生可能なものとなるからである。
なお、深さは、例えば、
図9中のDで示されるものである。
【0046】
なお、凹凸形状の深さについては、反射型ホログラム形成領域の凹凸表面の凹凸形状が、フーリエ変換像のデータを4値化した4値型(4段)である場合には、反射型ホログラム形成領域において、以下の式(2)が成り立つものとすることができる。
なお、λは式(1)と同様に回折光の波長である。
D=λ/6+λ/12 (2)
【0047】
上記凹凸形状の深さの具体的な計算例としては、反射型ホログラム形成領域では、550nmの波長の光が回折するとした場合、凹凸深さDは、550nm/6+550nm/12≒140nmと計算される。
【0048】
上記ホログラム形成領域において、上述のフーリエ変換レンズ機能を発現できる点光源の波長としては特に限定されるものではなく、所望の波長を対象とすることができる。また、点光源の波長としては、一波長の単色光に限られず、多波長を含む光であってもよく、さらには白色光であってもよい。
【0049】
(3)回折格子セル
上記ホログラム形成領域は、点光源から入射した光を上記光像へ変換可能なホログラムセルのみが配置されるものであってもよいが、点光源から入射した光を上記光像へ変換可能なホログラムセルと、上記ホログラムセルと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画する回折格子セルと、が配置されているものであってもよい。
上記回折格子セルを有することにより、上記ホログラム構造体は、点光源からの光の入射前にホログラム形成領域内に回折格子図柄を再生可能であり、点光源からの光の入射時には上記光像を再生可能となる。このため、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域には回折格子図柄が記録され、光像が記録されていないものであると装うことができ、情報の秘匿性に優れたものとなるからである。
図11は、ホログラム形成領域11にホログラムセル12aおよび回折格子セル13aの両者を有する場合のホログラム構造体の一例を示す概略平面図であり、
図12は、
図11のB−B線断面図である。
図11および
図12では、回折格子図柄13が「F」の文字である例を示すものである。
【0050】
ここで、同一平面上に形成されるとは、上記ホログラムセルおよび上記回折格子セルが上記ホログラム層の同一表面に形成されることをいうものである。すなわち、上記ホログラム層の同一表面にホログラムセルの凹凸表面および回折格子セルの凹凸表面の両者が形成されることをいうものである。
【0051】
上記回折格子図柄は、参照光として可視光を照射することにより、回折格子セルが配置されたパターン形状の図柄が再生されるものである。
ここで、回折格子図柄は、平面視上パターン状に配置された回折格子セルにより描画された図柄であり、原図柄を例えば碁盤目状の微細セルに分割し、分割された微細セルを回折格子セルに置き換えて描画されたものである。
既に説明した
図11は、回折格子セル13aが「F」の文字のパターン状に配置されることにより回折格子図柄13を描画する例を示すものであり、上記回折格子図柄13に対して参照光を照射することで、上記ホログラム形成領域11内に回折格子図柄13として「F」の文字が再生される。
【0052】
上記図柄としては、具体的には、本態様のホログラム構造体の用途等に応じて、適宜設定することができ、例えば、パターン、線画、文字、図形、記号等を挙げることができる。
【0053】
上記図柄は、ホログラム形成領域がその一部の領域に光像が再生されるものである場合には、ホログラム形成領域内の光像が再生される領域を特定するものであってもよい。
光像を読み取る電子機器としてスマートフォン等の携帯型の電子機器が用いられる場合、スマートフォンに搭載されたカメラを用いて光像を撮影し、撮影された画像をソフトウェアで解析処理することで、上記情報を取り出す。ところで、スマートフォン等は通常、カメラの撮影時のみフラッシュライトが点灯する。このため、撮影前のフラッシュライトを点灯していない状態では、スマートフォンの表示画面を見ても、光像の再生領域が撮影範囲に入っているのか否かを確認することができない場合がある。これに対して、光像の再生領域を特定する図柄があることで、撮影前のフラッシュライトを点灯していない状態で撮影範囲を特定することが可能となる。したがって、ホログラム構造体は、情報の取得が容易なものとなる。
例えば、光像の再生領域を特定する図柄としては、具体的には、
図13(a)のように、光像12の再生領域が一点鎖線で囲まれる領域であり、ホログラム形成領域11の左上の一部の領域である場合、
図13(b)に例示するように光像の再生領域を囲む枠形状の図柄13、
図13(c)に例示するように光像の再生領域の四隅を示す形状の図柄13等を挙げることができる。
図13(b)および(c)では、ホログラム構造体は、スマートフォンの画面に表示される撮影範囲の外周に沿って枠形状の図柄が配置される状態または撮影範囲の四隅に接するように四隅を示す図柄が配置される状態を確認して撮影を行うことで、光像により表わされる形状を安定的に撮影可能なものとなる。
【0054】
上記回折格子図柄は、平面的に図柄を再生可能な平面回折格子図柄であってもよく、立体的に図柄を再生可能な立体回折格子図柄であってもよい。
上記回折格子図柄が平面回折格子図柄であることにより、平面回折格子図柄は高輝度なものとすることが容易であり、視認性に優れた回折格子図柄を再生できるからである。このため、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域には回折格子図柄が記録され、光像が記録されていないものであるとより効果的に装うことができ、情報の秘匿性により優れたものとなるからである。
上記回折格子図柄が立体回折格子図柄であることにより、立体回折格子図柄により、観察者の注意を回折格子図柄にひきつけることが可能となる。このため、上記ホログラム構造体は、ホログラム形成領域には回折格子図柄が記録され、光像が記録されていないものであるとより効果的に装うことができ、情報の秘匿性により優れたものとなるからである。
上記回折格子図柄は、平面回折格子図柄または立体回折格子図柄であっても良く、両者を組み合わせたものであっても良い。
【0055】
上記平面回折格子図柄の形成方法としては、回折格子図柄が回折光の振幅が同程度の回折格子セルを用いて描画する方法を挙げることができる。
また、回折光の振幅を同程度とする方法としては、特許第4984938号公報に記載されるように、回折格子セルの回折格子が形成されている領域(以下、単に回折格子形成領域と称する場合がある。)の面積を同程度とする方法が挙げられる。すなわち、平面回折格子図柄は、回折格子形成領域の面積が同程度の回折格子セルを敷き詰めることで描画されたものとすることができる。また、同程度の回折格子形成領域の面積として、どの程度の回折格子形成領域の面積の回折格子セルを用いるかについては、平面回折格子図柄が再生可能なものであればよく、再生される平面回折格子図柄のサイズ、カラー表示の有無等に応じて適宜設定されるものである。
【0056】
上記立体回折格子図柄の形成方法としては、上記回折格子図柄の端部側より中央部側に回折光の振幅が大きい回折格子セルを配置する方法が挙げられる。
より具体的には、
図11では、「F」の文字が回折格子セルを幅方向に3個配置した描画線により描画されている(例えば、13a1、13a2および13a3)。この場合、描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル13a1および13a3より、中央部側に配置される回折格子セル13a2を回折光の振幅が大きい回折格子セルとすることで、参照光を照射した際に「F」の文字が立体的に浮かび上がるように再生することが可能となる。
また、回折光の振幅を端部側より中央部側を大きくする方法としては、特許第4984938号公報に記載されるように、端部側より中央部側に回折格子形成領域の面積が広い回折格子セルを配置する方法を挙げることができる。すなわち、立体回折格子図柄は、回折格子図柄の端部側より中央部側に回折格子形成領域の面積が広い回折格子セルが配置されたものとすることができる。
例えば、
図11中の回折格子セル13a1〜13a3の拡大図である
図14に例示するように、描画線の幅方向の端部側に配置される回折格子セル13a1および13a3より、中央部側に配置される回折格子セル13a2を、回折格子形成領域13bの面積が広い回折格子セルとすることができる。
【0057】
上記回折格子セルの上記ホログラム形成領域に占める平面視上の面積の割合としては、所望の回折格子図柄を描画可能なものであれば特に限定されるものではない。
上記ホログラム形成領域内の上記ホログラムセルの合計面積に対する上記回折格子セルの合計面積の割合(回折格子セルの合計面積/ホログラムセルの合計面積)は、光像および回折格子図柄の両者を鮮明に再生できるものであれば特に限定されるものではないが、上記回折格子図柄が平面回折格子図柄である場合には、1/4〜3/2の範囲内であることが好ましく、なかでも、1/2〜1の範囲内であることが好ましく、特に、5/8〜7/8の範囲内であることが好ましい。上記面積の割合が上述の範囲内であることにより、ホログラム構造体は、光像および平面回折格子図柄の両者の視認性に優れたものとなるからである。
また、上記合計面積割合は、上記回折格子図柄が立体回折格子図柄である場合には、1/3〜3の範囲内であることが好ましく、なかでも、2/3〜2の範囲内であることが好ましく、特に、1〜5/3の範囲内であることが好ましい。上記面積の割合が上述の範囲内であることにより、ホログラム構造体は、光像および立体回折格子図柄の両者の視認性に優れたものとなるからである。
【0058】
上記回折格子セルの格子ピッチ、格子角度、格子密度(図柄に対して回折格子セルが占める平面視上の面積割合)は、参照光が照射された際に再生される図柄に応じて適宜設定されるものである。
例えば、格子ピッチをそれぞれ1.2μm程度、1.0μm程度および0.8μm程度とすることで、それぞれ波長600nm用(赤色用)、500nm用(緑色用)、400nm(青色用)の光を回折するものとすること等が可能となり、カラー画像を再生可能なものとすることができる。
また、さらに格子角度および格子密度により様々な図柄を表現可能なものとすることができる。
【0059】
上記回折格子セルの平面視サイズとしては、再生される回折格子図柄に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、5μm角以上100μm角以内とすることができる。上記平面視サイズであることにより、高精細な回折格子図柄を描画できるからである。また、回折格子図柄を描画する個々の回折格子セルの存在を隠ぺいできるからである。
【0060】
上記回折格子セルの平面視形状としては、再生される回折格子図柄に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、ホログラムセルと同様とすることができる。
【0061】
上記回折格子セルの凹凸表面のホログラム形成領域への形成方法については、一般的な回折格子図柄の形成方法と同様とすることができる。
【0062】
上記回折格子図柄の再生に用いられる参照光については特に限定されるものではなく、一般的なホログラムに用いられるものを使用できる。
上記参照光としては、具体的には、可視光を含む光を用いることができる。
例えば、参照光は、上記ホログラム層のホログラムセルに記録された光像の再生に用いられる点光源と同一とすることができる。
上記参照光の光源は、点光源に限らず、太陽光等の平行光等であっても良い。
上記ホログラム構造体は、例えば、上記点光源以外の光源からの参照光が照射される明所に配置することで回折格子図柄を再生でき、さらにその明所において、上記点光源をホログラム形成領域上に配置することで光像も再生可能となる。
【0063】
(4)その他
上記ホログラム層を構成する材料としては、ホログラム形成領域において上述したフーリエ変換レンズ機能を発現するための凹凸形状を形成でき、かつ、所定の屈折率を示すものであれば特に限定されない。上記ホログラム層を構成する材料が示す屈折率としては、特に限定されるもではなく、本態様のホログラム構造体の用途に応じて適宜設定が可能である。
また、上記屈折率の基準となる波長も特に限定されず、400nm〜750nmの範囲内から適宜選択すればよい。中でも本態様においては、波長555nmにおける屈折率が1.3〜2.0の範囲内であることが好ましく、特に1.33〜1.8の範囲内であることが好ましい。ここで、上記屈折率は分光エリプソメーターにより測定することができる。
【0064】
上記ホログラム層の材料としては、従来からレリーフ型ホログラム等の形成に使用されている樹脂材料、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0065】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル変性ウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、上記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独重合体であっても2種以上の構成成分からなる共重合体であってもよい。また、これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
上述の熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂は、各種イソシアネート化合物、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の金属石鹸、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド等の有機過酸化物、ベンゾフェノン、アセトフェノン、アントラキノン、ナフトキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド等の熱あるいは紫外線硬化剤を含んでいてもよい。
【0067】
また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂等が挙げられ、中でもウレタン変性アクリレート樹脂が好ましく、特に特開2007−017643号公報で示される化学式で表わされるウレタン変性アクリル系樹脂が好ましい。
【0068】
上記電離放射線硬化性樹脂を硬化させる際には、架橋構造、粘度の調整等を目的として、単官能または多官能のモノマー、オリゴマー等を併用することができる。上記単官能モノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、2官能以上のモノマーとしては、骨格構造で分類するとポリオール(メタ)アクリレート(例えば、エポキシ変性ポリオール(メタ)アクリレート、ラクトン変性ポリオール(メタ)アクリレート等)、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、その他ポリブタジエン系、イソシアヌール酸系、ヒダントイン系、メラミン系、リン酸系、イミド系、ホスファゼン系等の骨格を有するポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、紫外線、電子線硬化性である種々のモノマー、オリゴマー、ポリマーが利用できる。
【0069】
更に詳しくは、2官能のモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。3官能のモノマー、オリゴマー、ポリマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、脂肪族トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。4官能のモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、脂肪族テトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、5官能以上のモノマー、オリゴマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、モノマー、オリゴマーとしては、ポリエステル骨格、ウレタン骨格、ホスファゼン骨格を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。官能基数は特に限定されるものではないが、官能基数が3より小さいと耐熱性が低下する傾向があり、また、20を超える場合には柔軟性が低下する傾向があるため、特に官能基数が3〜20の範囲内のものが好ましい。
【0070】
上記のような単官能または多官能のモノマー、オリゴマーの含有量としては適宜調整することができるが、通常、電離放射線硬化性樹脂100重量部に対して50重量部以下とすることが好ましく、中でも0.5重量部〜20重量部の範囲内が好ましい。
【0071】
また、上記ホログラム層は必要に応じて、光重合開始剤、重合禁止剤、劣化防止剤、可塑剤、滑剤、染料や顔料などの着色剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤等の添加剤を、適宜加えてもよい。
【0072】
上記ホログラム層の膜厚としては、上記ホログラム層が自己支持性を有する場合、0.05mm〜5mmの範囲内が好ましく、中でも0.1mm〜3mmの範囲内であることが好ましい。一方、上記ホログラム層が自己支持性を有さず、後述する透明基材上に形成される場合は、ホログラム層の膜厚としては、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、中でも2μm〜20μmの範囲内とすることが好ましい。
なお、上記ホログラム層の膜厚は、具体的には、既に説明した
図2のaで示される距離である。
また、ホログラム層の平面視上の大きさ等については、本態様のホログラム構造体の用途に応じて適宜設定することができる。
【0073】
本態様におけるホログラム層は、ホログラム形成領域を少なくとも有するものであるが、上記ホログラム形成領域の他に、凹凸形状が形成されていない領域(非ホログラム形成領域)を有してもよい。
上記ホログラム層において上記各領域が占める割合については、特に限定されるものでは無く、用途に応じて適宜選択することができる。
【0074】
2.蒸着層
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層の上記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された蒸着層を有するものである。
【0075】
上記蒸着層は、透明性を有していてもよく、反射性を有するものであってもよい。
上記蒸着層が透明性を有する透明蒸着層である場合には、ホログラム構造体は、平面視した際にホログラム形成領域が光沢を有しないものとなる。このため、上記ホログラム構造体は、上記ホログラム形成領域が隠ぺいされたものとなり、上記ホログラム構造体は、情報の秘匿性に優れたものとなる。
一方、上記蒸着層が反射性を有する反射性蒸着層である場合には、ホログラム構造体は、ホログラム形成領域内に鮮明に光像を再生可能となる。このため、上記ホログラム構造体は、情報の取得の容易なものとなる。
【0076】
上記透明蒸着層は、全光線透過率(以下、単に光透過率とする場合がある。)が80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることがより好ましい。上記光透過率であることにより、ホログラム構造体は、ホログラム形成領域がより隠ぺいされたものとなるからである。
なお、上記光透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定した値である。
【0077】
上記蒸着層を構成する材料としては、ホログラム層との間で屈折率差を生じる材料であれば特に限定されるものではない。上記反射性蒸着層を形成可能な材料としては、例えば、Mg、Al、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Se、Rb、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Au、Pb、もしくはBi等の金属を挙げることができる。
また、上記透明蒸着層を形成可能な材料としては、例えば、上記金属の酸化物を挙げることができる。
上記材料は、単独でまたは2以上の材料を組み合わせたものも用いることができる。
【0078】
上記蒸着層の厚みは、光像の再生容易性、色調、デザイン、用途等の観点から適宜に設定でき、例えば、50Å〜1μmの範囲内であることが好ましく、なかでも100Å〜1000Åの範囲内であることが好ましい。
また、上記厚みは、蒸着層に透明性を持たせるとの観点からは、200Å以下であることが好ましく、蒸着層に隠ぺい性を持たせるとの観点からは、200Åを超える厚みであることが好ましい。
なお、上記蒸着層の厚みは、具体的には、既に説明した
図2のbで示される距離である。
【0079】
上記蒸着層の形成箇所は、少なくともホログラム形成領域内の全ての凹凸表面と平面視上重なるものであればよく、ホログラム層の凹凸表面側の全表面を覆うものであってもよい。
全ての凹凸表面とは、ホログラム形成領域がホログラムセルと共に回折格子セルを含む場合には、ホログラムセルおよび回折格子セルの両者の凹凸表面の全てをいうものである。
【0080】
上記蒸着層の形成方法としては、一般的な蒸着層の形成方法を用いることができ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。
【0081】
3.その他の構成
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層および蒸着層を有するものであるが、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
【0082】
(1)透明基材
本態様のホログラム構造体は、上記ホログラム層の凹凸表面とは反対側の表面に形成された透明基材を有するものであってもよい。透明基材を有することにより、本態様のホログラム構造体の熱的または機械的強度を高めることができるからである。
【0083】
上記透明基材は、上記ホログラム層と直接接するように形成されるものであっても良く、他の層を介して形成されるものであってもよい。
例えば、透明基材は、後述する層間接着層を介してホログラム層表面に接着されたものとすることができる。
【0084】
上記透明基材の光透過率は、80%以上であることが好ましく、中でも90%以上であることがより好ましい。透明基材の光透過率を上述の範囲内とすることにより、ホログラム構造体は、光像の視認が容易なものとなるからである。
【0085】
また、上記透明基材はヘイズ値が低いものほど好ましく、具体的にはヘイズ値が0.01%〜5%の範囲内であるものが好ましく、中でも0.01%〜3%の範囲内であるものが好ましく、特に0.01%〜1.5%の範囲内であるものが好ましい。透明基材のヘイズ値を上記範囲内とすることにより、視認性を阻害することなくホログラム形成領域において発現する光像の表示が可能となるからである。なお、上記透明基材のヘイズ値は、JIS K7136に準拠して測定した値とする。
【0086】
上記透明基材の構成材料としては、上述の光透過率およびヘイズ値を示すものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルスチレン樹脂等の樹脂フイルム、石英ガラス、パイレックス(登録商標)、合成石英板等のガラスを用いることができる。中でも、上記透明基材としては、軽量且つ破損等の危険性が少ないという点から、樹脂フイルムを用いることが好ましく、複屈折性の面からポリカーボネートが最適である。
【0087】
上記透明基材は、必要に応じて、添加剤が含まれていてもよい。
上記添加剤としては、例えば、分散剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤等を挙げることができる。
【0088】
上記透明基材の膜厚としては、ホログラム層等を支持するための剛性および強度を有することが可能な厚さであればよく、例えば0.005mm〜5mm程度であることが好ましく、中でも0.02mm〜1mmの範囲内であることが好ましい。また、上記透明基材の形状については特に限定されるものではなく、本態様のホログラム構造体の使用形態に応じて適宜選択することができる。
【0089】
上記透明基材は、他の層との密着性を向上させるために、例えば表面にコロナ処理等が行われていてもよい。
【0090】
(2)画像表示層
本態様のホログラム構造体は、ホログラム形成領域内の光像が再生される領域を特定する画像を表示する画像表示層を有することが好ましい。
ホログラム形成領域内の光像が再生される領域を特定することが容易となり、上記ホログラム構造体は、情報の取得の容易なものとなるからである。
【0091】
ここで、上記画像としては、例えば、パターン、線画、文字、図形、記号等とすることができる。
上記画像としては、具体的には、
図15(a)および(b)に例示するように、光像の再生領域を指し示す矢印、光像の再生領域の2辺を囲む枠形状等を挙げることができる。
また、上記画像表示層は、通常、ホログラム形成領域と平面視上重ならないように形成されるものであるが、ホログラム形成領域と平面視上重なる場合には、上記画像としては、上記「1.ホログラム層」の項に記載の光像の再生される領域を特定する図柄と同様とすることができる。
【0092】
上記画像表示層は、所望の画像を表示できるものであればよく、例えば、着色材および樹脂材料を有する印刷層、平面視上パターン状に配置された回折格子セルにより描画された回折格子図柄を有する第2ホログラム層等を挙げることができる。
上記印刷層は、様々な色およびパターンの画像を容易に描画できる。上記第2ホログラム層は、参照光を照射した場合にのみ画像を表示できる。このため、上記印刷層等は、ホログラム構造体にさらなる情報を容易に付与できるからである。
上記画像表示層は、1種類のみであっても良く、2種類以上を組み合わせて用いるものであっても良い。例えば、画像表示層は、複数の印刷層を含むもの、印刷層および第2ホログラム層を含むもの等とすることができる。
以下、印刷層および第2ホログラム層について説明する。
【0093】
(a)印刷層
上記印刷層は、着色材および樹脂材料を有するものである。
上記樹脂材料としては、例えばポリカーボネート類、ポリエステル類、セルロース誘導体、ノルボルネン系樹脂、ポリ塩化ビニル類、ポリ酢酸ビニル類、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリプロピレン系類、ポリエチレン系類、スチレン系類等の樹脂を用いることができる。
上記着色材としては、印刷層として一般的に用いられるものを使用でき、無機顔料および有機顔料等の顔料、酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料、および昇華性色素等の染料等を挙げることができる。
また、上記着色材としては、紫外線または赤外線を吸収することにより蛍光を発する紫外線発光材料および赤外線発光材料等の蛍光発光材料、偏光コレステリック高分子液晶顔料、ガラスビーズなど反射鏡となる粒子も用いることができる。
上記印刷層の形成方法、すなわち、印刷方法としては、一般的な印刷層の形成方法と同様の方法を用いることができる。上記印刷方法としては、具体的には、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の各種印刷法を挙げることができる。
また、上記印刷層に用いられるインクとしては、一般的な印刷層の形成に用いられるものを使用でき、上記樹脂材料および着色材を溶媒中に分散または溶解したものを用いることができる。
【0094】
上記印刷層の形成位置としては、ホログラム形成領域内での光像の再生および視認を妨げない位置であれば特に限定されるものではなく、ホログラム層の凹凸表面とは反対側の表面上、ホログラム層と同一平面上、ホログラム層の凹凸表面側の表面上等とすることができる。
図16は、上記印刷層4が、透明基材3のホログラム層1とは反対側の表面上に、ホログラム形成領域11と平面視上重ならないように形成される例を示すものである。
【0095】
(b)第2ホログラム層
上記第2ホログラム層は、平面視上パターン状に配置された回折格子セルにより描画された回折格子図柄を有し、参照光を照射することにより、回折格子セルが配置されたパターン形状の図柄が再生されるものである。
このような回折格子図柄、回折格子セルおよび参照光については上記「1.ホログラム層」に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
上記第2ホログラム層を構成する材料としては、回折格子セルに含まれる回折格子として機能する凹凸形状を形成できるものであれば特に限定されるものではない。
このような材料としては、上記「1.ホログラム層」の項に記載のホログラム層の構成材料と同様とすることができる。
【0097】
上記第2ホログラム層の膜厚としては、安定的に回折格子の凹凸形状を形成可能なものであればよく、上記「1.ホログラム層」の項に記載のホログラム層と同様とすることができる。
【0098】
上記第2ホログラム層の形成位置としては、ホログラム形成領域内での光像の再生および視認を妨げない位置であれば特に限定されるものではなく、ホログラム層の凹凸表面とは反対側の表面上、ホログラム層と同一平面上、ホログラム層の凹凸表面上等とすることができる。
図17は、第2ホログラム層6および第2ホログラム層6の回折格子図柄の凹凸表面に接するように形成される第2蒸着層7が、ホログラム層1の凹凸表面上に、ホログラム形成領域11と平面視上重ならないように形成される例を示すものであり、蒸着層2および層間接着層5を介して形成されるものである。
【0099】
本態様のホログラム構造体は、第2ホログラム層の回折格子図柄の凹凸表面に接するように形成される第2蒸着層を有するものとすることができる。
このような第2蒸着層としては、第2ホログラム層を反射型として機能可能とすることができるものであれば特に限定されるものではなく、反射型ホログラムに一般的に用いられるものとすることができる。具体的には、上記第2蒸着層は、上記「2.蒸着層」の項に記載の内容と同様とすることができる。
なお、既に説明した
図17は、ホログラム構造体10が、第2ホログラム層6のホログラム層1とは反対側の表面に第2ホログラム層の凹凸表面に接するように形成された第2蒸着層7を有する例を示すものである。
【0100】
(3)層間接着層
本態様のホログラム構造体は、各構成間を接着する層間接着層を有するものであっても良い。
なお、層間接着層については、ホログラム構造体に一般的に用いられるものを使用することができ、上記透明基材およびホログラム層等を構成する材料に応じて適宜選択されるものである。
上記層間接着層としては、例えば、2液硬化型接着剤層、紫外線硬化型接着剤層、熱硬化型接着剤層、熱溶融型接着剤層等の公知の接着剤層を用いることができる。
上記層間接着層の厚みについては、接着する構成の大きさ等により適宜設定されるものである。
【0101】
(4)接着層
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層の凹凸表面側の表面に形成された接着層を有していてもよい。接着層を有することにより、上記ホログラム構造体は被着体に容易に貼付可能となるからである。
【0102】
上記接着層は透明性を有するものであっても良く、遮光性を有するものであっても良い。
【0103】
上記接着層は、粘着性を有する粘着剤層であってもよく、密着性および再剥離性の双方の特性を有する再剥離密着層であってもよい。
なお、上記接着層は、上記層間接着層と同様に2液硬化型接着剤層、紫外線硬化型接着剤層、熱硬化型接着剤層、熱溶融型接着剤層等の接着剤層であっても良い。
上記接着層が粘着剤層である場合、本態様のホログラム構造体を所望の部材に強固に貼りあわせることができ、被着体からホログラム構造体が剥がれにくいものとすることが可能となる。
また、上記接着層が再剥離密着層である場合、再剥離密着層と被着体との間に空気が入らないよう密着させることにより、本態様のホログラム構造体を所望の部材に貼りあわせることができる。このような再剥離密着層は、被着体に粘着剤等による跡を残すことなく容易に密着および剥離を繰り返し行うことが可能であり、被着体へのダメージを抑えることができる。
【0104】
上記接着層が粘着剤層である場合、上記粘着剤層に用いられる樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ラテックス系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタンエステル系樹脂、またはフッ化ビニリデン系樹脂(PVDF)、フッ化ビニル系樹脂(PVF)等のフッ素系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂等を挙げることができる。上記樹脂は、中でもアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エチレン酢酸ビニル系樹脂、ラテックス系樹脂であることが好ましい。
【0105】
また、上記接着層が再剥離密着層である場合、上記再剥離密着層に用いられる樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、アクリル酸エステル樹脂、またはこれらの共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、天然ゴム、カゼイン、ゼラチン、ロジンエステル、テルペン樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリビニルエーテル、シリコーン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂は、中でもアクリル系樹脂、シリコーン樹脂であることが好ましい。アクリル系樹脂は、被着体の表面に多少の凹凸がある場合であっても接着が可能であるからである。また、シリコーン樹脂は、密着および剥離を繰り返し行っても接着強度が低下しにくいからである。
【0106】
上記接着層の厚みとしては、本態様のホログラム構造体の種類や用途等に応じて適宜選択されるが、通常1μm〜500μmの範囲内とすることが好ましく、中でも2μm〜50μmの範囲内とすることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、接着層は、接着性に優れたものとなるからである。
【0107】
(5)剥離シート
また、本態様のホログラム構造体は、上述した接着層上に剥離シートが配置されていてもよい。本態様のホログラム構造体を接着層を介して所望の被着体に貼り合せる直前に、剥離シートと接着層とを剥離して使用することが可能となる。これにより、接着層と被着体との間に異物が付着することを防止できる。
【0108】
上記剥離シートとしては、接着層を保護することができ、且つ上記接着層から容易に剥離することが可能なものであれば、特に限定されるものではない。このような剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等からなる層とすることができる。
上記剥離シートの厚さは、本態様のホログラム構造体の種類や用途等に応じて適宜選択される。
【0109】
また、上記剥離シートの接着層と接する側の面には、接着層との剥離操作を容易とするために、剥離処理が施されていることが好ましい。このような処理方法としては、例えばシリコーン処理、アルキッド処理等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0110】
(6)任意の部材
さらに、本態様のホログラム構造体は、上記透明基材上や上記ホログラム層の非ホログラム形成領域上に紫外線吸収層や赤外線吸収層、反射防止層等を有していてもよい。この様な層を有することにより、上記ホログラム構造体に紫外線吸収機能や赤外線吸収機能、反射防止機能等を付与することができ、本態様のホログラム構造体を各種フィルタ等としても用いることが可能となる。
なお、これらの層については、一般的に用いられるものと同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0111】
4.ホログラム構造体
本態様のホログラム構造体は、ホログラム構造体を被着体に接着して使用するものであっても良く、被着体に接着せずに使用するものであっても良い。
【0112】
上記被着体に接着して使用する態様としては、被着体との接着に用いられる接着層を有するものであれば特に限定されるものではなく、上記ホログラム構造体が、上記ホログラム層の上記ホログラム層形成領域の凹凸表面側の表面に形成された接着層を有し、ホログラムシールとして用いられる態様(第1使用態様)、上記ホログラム構造体は、上記ホログラム層の上記ホログラム層形成領域の凹凸表面側の表面に形成されたヒートシール層と、上記ホログラム層の上記凹凸表面とは反対側の表面に形成された剥離容易層と、上記剥離容易層の上記ホログラム層とは反対側の表面に形成された剥離用基材と、を有し、ホログラム転写箔として用いられる態様(第2使用態様)等を挙げることができる。
また、上記被着体に接着せずに使用する態様としては、上記ホログラム構造体が、情報記録媒体として用いられる態様(第3使用態様)等を挙げることができる。
【0113】
(1)第1使用態様
本態様のホログラム構造体の第1使用態様は、上記ホログラム層の上記ホログラム層形成領域の凹凸表面側の表面に形成された接着層を有し、ホログラムシールとして用いられる態様である。
【0114】
このような本態様のホログラム構造体について図面を参照して説明する。
図18は、本態様のホログラム構造体の一例を示す概略断面図である。
図18に例示するように、本態様のホログラム構造体10は、上記ホログラム層1の上記ホログラム層形成領域11の凹凸表面側の表面に形成された接着層31を有し、ホログラムシールとして用いられるものである。
なお、
図18中の符号については、
図1および
図2のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
また、この例においては、ホログラム構造体10は、接着層31のホログラム層1とは反対側の表面に剥離シート32を有するものである。
【0115】
本態様によれば、上記接着層を有することにより、被着体に容易に秘匿された情報を付与できる。
このような本態様のホログラム構造体の具体的な用途としては、チケット、ブランド品、製品の品質管理番号ラベル等に貼り付けて、点光源をホログラム形成領域上に配置することでホログラム形成領域内に再生される光像を用いて真贋判定を行う用途等を挙げることができる。
【0116】
本態様のホログラム構造体は、接着層を有するものである。
なお、接着層については、上記「3.その他の構成」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、必要に応じて、上記「3.その他の構成」の項に記載のその他の構成等を有するものであっても良い。
【0117】
(2)第2使用態様
本態様のホログラム構造体の第2使用態様は、上記ホログラム層の上記ホログラム層形成領域の凹凸表面側の表面に形成されたヒートシール層と、上記ホログラム層の上記凹凸表面とは反対側の表面に形成された剥離容易層と、上記剥離容易層の上記ホログラム層とは反対側の表面に形成された剥離用基材と、を有し、ホログラム転写箔として用いられる態様である。
【0118】
このような本態様のホログラム構造体について図面を参照して説明する。
図19は、本態様のホログラム構造体の一例を示す概略断面図である。
図19に例示するように、本態様のホログラム構造体10は、上記ホログラム層1の上記ホログラム層形成領域11の凹凸表面側の表面に形成されたヒートシール層33と、上記ホログラム層1の上記凹凸表面とは反対側の表面に形成された剥離容易層34と、上記剥離容易層34の上記ホログラム層1とは反対側の表面に形成された剥離用基材35と、を有し、ホログラム転写箔として用いられるものである。
なお、
図19中の符号については、
図1および
図2のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
また、この例においては、ホログラム構造体10は、ヒートシール層33のホログラム層1とは反対側の表面に剥離シート32を有するものである。
【0119】
本態様によれば、上記ホログラム層を有するものであることにより、被着体に容易に秘匿された情報を付与できる。
また、ホログラム層の凹凸表面とは反対側に剥離層容易層を介して剥離用基材が形成されていることにより、被着体に貼付する前にホログラム構造体が損傷することを防ぐことができる。
このような本態様のホログラム構造体の具体的な用途としては、チケット、ブランド品、製品の品質管理番号ラベル等に所望のパターン形状で転写して、点光源をホログラム形成領域上に配置することでホログラム形成領域内に再生される光像を用いて真贋判定を行う用途等を挙げることができる。
【0120】
本態様のホログラム構造体は、ヒートシール層、剥離容易層および剥離用基材を有するものである。
以下、本態様のホログラム構造体の各構成について詳細に説明する。
【0121】
上記ヒートシール層は、ホログラム層と被着体とを接着させる機能を有するものである。
【0122】
上記ヒートシール層としては、本態様のホログラム構造体からホログラム層および蒸着層が転写される被着体の種類に応じて、ホログラム層と被着体とを接着できるものであれば特に限定されるものではない。
上記ヒートシール層としては、例えば、特開2014−16422号公報等に記載の熱可塑性樹脂を含むヒートシール層を用いることができる。
【0123】
上記剥離用基材は、ホログラム層等を支持するものである。
また、上記剥離用基材は、本態様のホログラム構造体を被着体に接着した後にホログラム構造体から剥離されるものである。
このような剥離用基材としては、透明性を有するものであっても良く、遮光性を有するものであっても良い。
上記剥離用基材を構成する材料および膜厚としては、例えば、上記「3.その他の構成」の項に記載の透明基材と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0124】
上記剥離容易層は、ホログラム層を接着層を介して被着体に接着した後に、剥離用基材およびホログラム層を容易に分離するために設けられるものである。
このような剥離容易層としては、上記「3.その他の構成」の項に記載の再剥離密着層を用いることができる。
【0125】
上記剥離容易層の平面視上の形成箇所としては、剥離用基材をホログラム層に対して容易に剥離可能とするものであれば特に限定されるものではない。
【0126】
本態様のホログラム構造体は、必要に応じて、上記「3.その他の構成」の項に記載のその他の構成等を有するものであっても良い。
【0127】
(3)第3使用態様
本態様のホログラム構造体の第3使用態様は、情報記録媒体として用いられる態様である。
【0128】
このような本態様のホログラム構造体について図面を参照して説明する。
図20は、本態様のホログラム構造体の一例を示す概略断面図である。
図20に例示するように、本態様のホログラム構造体10は、上記ホログラム層1の上記ホログラム層形成領域11の凹凸表面側の表面に形成された裏面側保護層36と、上記ホログラム層1の上記凹凸表面とは反対側の表面に形成された表面側保護層37と、ホログラム層1および表面側保護層37の間に形成された中間基材38と、を有し、情報記録媒体として用いられるものである。
なお、
図20中の符号については、
図1および
図2のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0129】
本態様によれば、情報記録媒体として用いることで、情報の秘匿性に優れた情報記録媒体とすることができる。
本態様のホログラム構造体の具体的な用途としては、例えば、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード等のカード、社員証、運転免許所等の身分証明書、通帳、パスポート等を挙げることができる。
【0130】
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層を有するものであるが、情報記録媒体用の種類に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
【0131】
このようなその他の構成としては、例えば、ホログラム層の凹凸表面側の表面に形成された裏面側保護層と、ホログラム層の凹凸表面とは反対側の表面に形成された表面側保護層と、ホログラム層および表面側保護層の間に形成された中間基材を挙げることができる。
上記表面側保護層は、ホログラム層の凹凸表面とは反対側の表面に形成され、ホログラム層を保護するものであり、少なくとも、上記ホログラム形成領域と平面視上重なる領域が透明性を有するものが用いられる。
上記裏面側保護層は、蒸着層のホログラム層とは反対側の表面に形成され、ホログラム層を保護するものである。このような裏面側保護層としては、ホログラム形成領域が反射型ホログラム形成領域である場合には透明性を有するものであっても良く、遮光性を有するものであっても良い。
上記中間基材は、ホログラム層および表面側保護層の間に形成され、ホログラム層、表面側保護層および裏面側保護層を支持するものであり、少なくとも、上記ホログラム形成領域と平面視上重なる領域が透明性を有するものが用いられる。なお、中間基材は透明基材と兼用されるものであってもよい。
このような表面側保護層、裏面側保護層および中間基材の構成材料および膜厚については、例えば、上記「3.その他の構成」の項に記載の透明基材と同様とすることができる。より具体的には、表面側保護層および裏面側保護層の構成材料としてポリカーボネートを用いることができ、中間基材の構成材料としてポリエチレンテレフタレートを用いることができる。
また、表面側保護層、裏面側保護層および中間基材の形成箇所としては、ホログラム層等を保護できるものであればよいが、ホログラム層の全面を覆うものとすることができる。
【0132】
上記その他の構成としては、情報を記録する情報記録層等を挙げることができる。
上記情報記録層としては、印刷により情報が記録された印刷層、磁気等により情報が記録された磁気層、集積回路(IC)チップを含むICチップ層等を挙げることができる。
上記その他の構成としては、アンテナを含むアンテナ層等の機能層を含むことができる。
これらの情報記録層および機能層等の形成箇所としては、ホログラム形成領域内での光像の再生および視認を妨げない位置であれば特に限定されるものではなく、例えば、ホログラム層の凹凸表面とは反対側の表面上、ホログラム層と同一平面上、ホログラム層の凹凸表面側の表面上等とすることができる。
【0133】
5.製造方法
本態様のホログラム構造体の製造方法は、上記各構成を含むホログラム構造体を精度良く製造できる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的なホログラム構造体の形成方法と同様の方法を用いることができる。
上記製造方法としては、具体的には、透明基材を準備し、ホログラム層を形成する方法を挙げることができる。
【0134】
6.用途
本態様のホログラム構造体の用途としては、偽造防止用途に用いられるものとすることができ、クレジットカード、キャッシュカード等のカード等を含む情報記録媒体を挙げることができる。
また、ホログラム構造体を他の被着体に接着可能な接着層を有するものとし、被着体に貼付可能なホログラム構造体シール等として用いられるものであっても良い。
さらに、ホログラム構造体として、ヒートシール層を有するものとし、被着体に転写可能なホログラム構造体転写箔等として用いられるものであっても良い。
【0135】
B.第II態様
本発明のホログラム構造体の第II態様は、上述のホログラム構造体であって、上記ホログラム形成領域が、透過型ホログラム形成領域である態様である。
【0136】
このような本態様のホログラム構造体については、例えば、既に説明した
図1および
図2と同様とすることができる。
【0137】
本態様によれば、上記ホログラム構造体は、点光源により平面視上ホログラム形成領域内に光像を再生できる。
また、上記光像は、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状である。
このため、上記ホログラム構造体は、情報の秘匿性に優れたものとなる。
【0138】
また、上記ホログラム形成領域が、透過型ホログラム形成領域であることにより、例えば、
図21に例示するように、ホログラム構造体10は、点光源21と光像の形状を認識する部位22が対向配置される電子機器20でも使用することができる。
さらに、電子機器が点光源を有しないものである場合、または電池の残量が少なくなりフラッシュライトを使用できない状態のスマートフォン等である場合等に、例えば、月、星、照明等の他の点光源をホログラム構造体の観察面とは反対側に配置することで、ホログラム形成領域に光像を再生し、それを電子機器で解析することで情報を取り出すことが可能となる。
また、ホログラム構造体は、例えば、月、星、ビルの照明、花火等、主に夜間に観察される、遠くの距離に配置される点光源により光像が再生されるものとすることが容易である。
【0139】
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層を有するものである。
以下、本態様のホログラム構造体における各構成について説明する。
なお、ホログラム構造体の製造方法、用途等については、上記「A.第I態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0140】
1.ホログラム層
本態様におけるホログラム層は、ホログラム形成領域を有するものである。
上記光像は、電子機器で解析可能な情報が暗号化された形状である。
なお、光像については、上記「A.第I態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0141】
(1)ホログラム形成領域
上記ホログラム形成領域は、点光源から入射した光を所望の光像へ変換する、位相型フーリエ変換ホログラムが記録された領域である。
上記ホログラム形成領域は、透過型ホログラム形成領域である。
【0142】
透過型ホログラム形成領域であるとは、点光源を観察面とは反対側に配置して、観察面側からホログラム層を平面視した際に、ホログラム形成領域内に光像を再生可能なものである。
【0143】
上記ホログラム形成領域については、凹凸形状の深さ以外は、上記「A.第I態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0144】
上記凹凸形状の深さは、所望の光像を再生可能なものであればよい。上記深さは、例えば、0.5μm〜1.5μmの範囲内程度とすることができ、なかでも、0.6μm〜1.2μmの範囲内であることが好ましい。上記深さが上述の範囲内であることにより、ホログラム構造体は、光像を安定的に再生可能なものとなるからである。
【0145】
なお、凹凸形状の深さについては、透過型ホログラム形成領域の凹凸表面の凹凸形状が、フーリエ変換像のデータを4値化した4値型(4段)である場合には、透過型ホログラム形成領域において、以下の式(3)が成り立つものとすることができる。
なお、λは式(1)と同様に回折光の波長である。
D=λ+λ/2 (3)
【0146】
上記凹凸形状の深さの具体的な計算例としては、550nmの波長の光が回折するとして、透過型ホログラム形成領域では、凹凸深さDは、550nm+550nm/2≒825nmと計算される。
【0147】
(2)回折格子セル
上記ホログラム形成領域は、点光源から入射した光を上記光像へ変換可能なホログラムセルのみが配置されるものであってもよいが、点光源から入射した光を上記光像へ変換可能なホログラムセルと、上記ホログラムセルと同一平面上に形成され、平面視上パターン状に配置されることにより回折格子図柄を描画する回折格子セルと、が配置されているものであってもよい。
このような回折格子セルについては、上記「A.第I態様」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0148】
2.その他の構成
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層を有するものであるが、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
【0149】
(1)透明蒸着層
本態様のホログラム構造体は、ホログラム層の上記ホログラム形成領域の凹凸表面に接するように形成された透明蒸着層を有することが好ましい。ホログラム構造体は、光像の再生の容易なものとなるからである。
なお、透明蒸着層については、上記「A.第I態様」の「2.蒸着層」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0150】
(2)その他
本態様のホログラム構造体は、上記「A.第I態様」の「3.その他の構成」の項に記載のその他の構成を有するものとすることができる。
なお、その他の構成としては、少なくともホログラム形成領域と平面視上重なる箇所に用いられる場合には、通常、透明性を有するものが用いられる。
【0151】
3.ホログラム構造体
本態様のホログラム構造体は、ホログラム構造体を被着体に接着して使用するものであっても良く、被着体に接着せずに使用するものであっても良い。
このようなホログラム構造体の使用態様としては、上記「A.第I態様」の「4.ホログラム構造体」の項に記載の使用態様と同様とすることができる。
なお、本態様のホログラム構造体はホログラム形成領域が透過型ホログラム形成領域であることから、ホログラム形成領域と平面視上重なる構成は、通常、透明性を有するものが用いられる。具体的には、第I態様では透明性が要求されない、ヒートシール層および裏面側保護層等についても、通常、透明性を有するものが用いられる。
また、ホログラム構造体が接着される被着体についても、通常、ホログラム形成領域と平面視上重なる領域が透明性を有するものが用いられる。
【0152】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0153】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
【0154】
[実施例1]
<原版およびホログラム構造体の形成>
合成石英の基板上に表面低反射クロム薄膜が積層されたフォトマスクブランク板のクロム薄膜上に、ドライエッチング用レジストをスピンナーにより回転塗布した。ドライエッチング用レジストとしては日本ゼオン(株)製ZEP7000を使用し、400nmの厚みとなるように形成した。このレジスト層に対し、電子線描画装置(MEBES4500:ETEC社製)を用い、事前に、インターネット上のアドレス(URL)である情報をQRコード(登録商標)に暗号化することで得られQRコード(登録商標)の形状を原画を作成し、その原画を計算機で計算することにより四値化したパターンを露光し、レジスト樹脂の露光部分を易溶化した。その後、現像液を噴霧し(スプレー現像)して易溶化部分を除去し、レジストパターンを形成した。
なお、パターンの格子ピッチは、最短で3313nmとした。
また、パターンの深さは、140nmとした。
続いて、形成されたレジストパターンを利用して、ドライエッチングによりレジストで被覆されていない部分のクロム薄膜をエッチング除去し、石英基板を露出させた。次いで、露出した石英基板をエッチングし、石英基板に凹部を形成した。その後、レジスト薄膜を溶解除去することにより、石英基板がエッチングされて生じた凹部と、石英基板およびクロム薄膜がエッチングされずに残存している凸部とを有する原版を得た。また、原版のサイズ、すなわち、ホログラムセルのサイズを0.25mmとした。
厚み0.5mmのポリカーボネートシート(透明基材)に、ホログラム層形成用組成物(UV硬化性アクリレート樹脂:屈折率1.52 測定波長633nm)を滴下し、上記組成物の塗膜を形成した。次いで、上記塗膜上に凹凸を有する原版を積置し、押圧した。次に、活性放射線を照射して上記塗膜を硬化させた後剥離させ、原版の凹凸型を反転させた凹凸表面を有するホログラムセルを形成した。その後、原版の積置、押圧、硬化および剥離を繰り返し、ホログラムセルが敷き詰められた10mm角のホログラム形成領域を有する厚さ2μmのホログラム層を形成した。
【0155】
次いで、ホログラム層の凹凸表面側の全面に膜厚100nmのAl層をスパッタリング法により形成し、ホログラム構造体を得た。
【0156】
<評価>
ホログラム構造体のホログラム層表面から60mmの位置から、スマートフォンのカメラを用い、フラッシュライトを点灯させた状態で撮像し、撮像された光像により表わされた形状(QRコード(登録商標))をスマートフォンに内蔵されているソフトウェアであるアプリにより解析することにより、URLを取得することができた。