特許第6973577号(P6973577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973577
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】電線監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/50 20200101AFI20211118BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G01R31/50
   H02J13/00 301A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-119609(P2020-119609)
(22)【出願日】2020年7月13日
(62)【分割の表示】特願2016-212874(P2016-212874)の分割
【原出願日】2016年10月31日
(65)【公開番号】特開2020-177025(P2020-177025A)
(43)【公開日】2020年10月29日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】下口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】東 栄治
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−275165(JP,A)
【文献】 特開昭60−119478(JP,A)
【文献】 特開2001−084838(JP,A)
【文献】 特開平04−172923(JP,A)
【文献】 特開2009−065796(JP,A)
【文献】 米国特許第05481198(US,A)
【文献】 米国特許第05006846(US,A)
【文献】 韓国登録特許第1032385(KR,B1)
【文献】 特開2000−346789(JP,A)
【文献】 特開平2−231556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50−31/72、
H02J 3/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の電線の状態を監視するための電線監視システムであって、
前記電線の異なる位置に設置され、前記位置における前記電線の温度をそれぞれ検知する複数のセンサと、
前記複数のセンサから検知結果を取得する取得装置と、
前記取得装置によって取得された前記検知結果に基づいて、前記電線の複数の前記位置における熱履歴による強度劣化を推定する監視装置とを備える、電線監視システム。
【請求項2】
電力系統の電線の状態を監視するための電線監視システムであって、
前記電線に対する1または複数の物理量の値を検知するセンサと、
前記センサから検知結果を取得する取得装置と、
前記取得装置によって取得された前記検知結果に基づいて、前記電線の強度劣化を推定する監視装置とを備え、
前記監視装置は、推定した前記強度劣化に応じて、前記電力系統のラインレーティングにおける前記電線の許容温度を演算する、電線監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の電線の許容電流を動的に見積もるための技術が開発されている。たとえば、非特許文献1(イー・フェルナンデス(E. Fernandez)、外4名、”レビュー・オブ・ダイナミック・ライン・レーティング・システムズ・フォー・ウィンド・パワー・インテグレーション(Review of dynamic line rating systems for wind power integration)”、リニューアブル・アンド・サステナブル・エナジー・レビュース(Renewable and Sustainable Energy Reviews)、2016年、第53巻、P.80−92)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、スタティックラインレーティングでは、許容電流は、大気温が高く、日射量が多くかつ風量の低い過酷な気象状況を仮定することにより控えめに見積もられる。しかしながら、風量が大きくなると、風による冷却効果により許容電流が増加する。ダイナミックラインレーティングでは、許容電流は、風による冷却効果を考慮した気象状況の観測結果を用いてリアルタイムに見積もられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】イー・フェルナンデス(E. Fernandez)、外4名、”レビュー・オブ・ダイナミック・ライン・レーティング・システムズ・フォー・ウィンド・パワー・インテグレーション(Review of dynamic line rating systems for wind power integration)”、リニューアブル・アンド・サステナブル・エナジー・レビュース(Renewable and Sustainable Energy Reviews)、2016年、第53巻、P.80−92
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、非特許文献1に記載のダイナミックラインレーティングによって見積もられる許容電流値は、スタティックラインレーティングによって見積もられる許容電流値より大きい。このため、ダイナミックラインレーティングが行われる電線ではより大きい電流が流れるので、電線温度がより高くなり腐食が発生しやすい。さらに、腐食した電線の抵抗値は正常な電線の抵抗値と比べて高いために発熱によって腐食が進行し、電線の品質が劣化する可能性が高い。したがって、電線の品質の劣化を抑制しながらダイナミックラインレーティングを行うことが可能な技術が求められる。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、電力系統の電線の品質の劣化を抑制することが可能な電線監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電線監視システムは、電力系統の電線の状態を監視するための電線監視システムであって、前記電線の腐食度合いの演算に用いる1または複数の物理量の値を検知する第1のセンサと、前記第1のセンサから検知結果を取得する取得装置と、前記取得装置によって取得された前記検知結果に基づいて前記腐食度合いを演算する監視装置とを備える。
【0007】
本発明は、このような特徴的な処理部を備える電線監視システムとして実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理部を構成する取得装置または転送装置として実現したり、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現したりすることができる。また、電線監視システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電力系統の電線の品質の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る電線監視システムの構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る電線監視システムにおける接触ユニットの構成を詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
(1)本発明の実施の形態に係る電線監視システムは、電力系統の電線の状態を監視するための電線監視システムであって、前記電線の腐食度合いの演算に用いる1または複数の物理量の値を検知する第1のセンサと、前記第1のセンサから検知結果を取得する取得装置と、前記取得装置によって取得された前記検知結果に基づいて前記腐食度合いを演算する監視装置とを備える。
【0012】
このように、第1のセンサの検知結果に基づいて電力系統の電線の腐食度合いを演算する構成により、たとえば、ダイナミックラインレーティングを行う場合において、腐食の進行度合いに応じた許容電流を設定することができるので、電線の温度上昇を抑制することで腐食の進行を抑制することができる。したがって、電力系統の電線の品質の劣化を抑制することができる。
【0013】
(2)好ましくは、前記電線監視システムは、さらに、前記電線に対する1または複数の物理量の値を検知する第2のセンサと、転送装置とを備え、前記転送装置は、他の前記転送装置または前記取得装置と通信を行うことにより前記第2のセンサの検知結果を前記取得装置へ転送し、前記監視装置は、さらに、前記第2のセンサの検知結果を用いて前記電線の許容温度を演算し、演算した前記腐食度合いに基づいて前記許容温度を補正する。
【0014】
このように、第2のセンサの検知結果を用いて演算される電線の許容温度を腐食度合いに基づいて補正する構成により、腐食の進行を抑制可能な許容温度を算出することができるので、電線の温度を、腐食の進行を抑制可能な温度にすることができる。これにより、たとえば、ダイナミックラインレーティングを行う場合において、電線の品質の劣化を抑制しながら、スタティックラインレーティングによって見積もられる許容電流より大きい許容電流を設定することができるので、送電効率を高めることができる。また、たとえば、検知対象の物理量のうち、電線から離れた位置で計測可能な物理量を第1のセンサの検知対象とし、また、電線の近傍で計測される物理量を第2のセンサの検知対象にすることにより、転送装置を各電線の近傍に配置しながら、取得装置を設置する場所を自由に設定することができる。これにより、たとえば、取得装置が携帯電話基地局の少ない僻地に設けられる場合においても、電波環境の良い位置に取得装置を設置することができる。また、たとえば、複数の第2のセンサの検知結果を、転送装置を介して取得装置へ転送することができるので、転送装置の通信エリアを小さくすることができる。これにより、転送装置の低コスト化および小型化を実現することができる。また、より少数の取得装置を配置する設置形態とすることができるので、電線監視システムの設置コストを低減することができる。
【0015】
(3)好ましくは、前記腐食度合いは、前記電力系統のラインレーティングに用いられる。
【0016】
このように、第1のセンサからの検知結果に基づくより正確な腐食度合いをラインレーティングに用いる構成により、ダイナミックラインレーティングを良好に行うことができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0018】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る電線監視システムの構成を示す図である。
【0019】
図1を参照して、電線監視システム301は、複数の接触ユニット101と、取得ユニット151と、監視装置171とを備える。接触ユニット101は、センサ121と、転送装置161とを含む。取得ユニット151は、センサ111と、取得装置181とを含む。
【0020】
図1では、複数の接触ユニット101を代表的に示しているが、1つの接触ユニット101が設けられてもよい。
【0021】
図2は、本発明の実施の形態に係る電線監視システムの適用例を示す図である。図1および図2を参照して、取得ユニット151は、たとえば鉄塔2に設けられる。
【0022】
電線1U,1V,1Wは、それぞれ、電力系統におけるU相,V相,W相の電線であり、複数の鉄塔2により支持されている。電線1U,1V,1Wにより1つの回線3が構成される。図2では、1つの回線3を代表的に示しているが、複数の回線3が設けられてもよい。以下、電線1U,1V,1Wの各々を、電線1とも称する。
【0023】
電線監視システム301は、たとえば、電力系統のダイナミックラインレーティングのために電力系統の電線1の状態を監視する。詳細には、取得ユニット151におけるセンサ111は、電力系統の電線1の腐食度合いを判断可能な物理量を検知する。より詳細には、センサ111は、電線1の腐食度合いの演算に用いる1または複数の物理量の値を検知する。
【0024】
たとえば、センサ111は、ダイナミックラインレーティングの行われている電線1の腐食度合いの演算に用いる物理量の一例として大気中の湿度および塩分を検知する。
【0025】
より詳細には、センサ111は、たとえば、電線1の腐食を促進する成分、具体的には水分および塩分等の付着により電気抵抗が変動する図示しないセンサ素子を含み、当該センサ素子の電気抵抗を計測する。
【0026】
また、センサ111は、たとえば日射量および大気温を検知する。センサ111は、たとえば、取得装置181に接続され、検知結果を取得装置181へ送信する。
【0027】
取得装置181は、センサ111から検知結果を取得する。より詳細には、取得装置181は、センサ111による検知結果をたとえば所定の計測周期ごとに取得し、取得した検知結果および計測時刻を示す第1のセンサ情報を作成する。取得装置181は、作成した第1のセンサ情報を自己のIDに対応付けて保存する。
【0028】
接触ユニット101は、たとえば、複数相の電線1において、互いに対応する位置に設けられる。より詳細には、3つの接触ユニット101は、たとえば、電線1U,1V,1Wのそれぞれにおける鉄塔2の近傍の位置に設けられる。これらの3つの接触ユニット101と鉄塔2との間の距離は、たとえば略同じである。
【0029】
接触ユニット101に含まれるセンサ121は、電線1に対する1または複数の物理量の値を検知する。詳細には、センサ121は、たとえば、電力系統の電線1の、センサ111とは異なる物理量であって電線1の許容温度の演算に用いる物理量を検知する。より詳細には、センサ121は、たとえば、電線1自体の温度および電流の設置個所における局所的な値をそれぞれ検知し、検知結果を転送装置161へ送信する。
【0030】
転送装置161は、たとえばセンサ121の検知結果を転送する。詳細には、転送装置161は、たとえば、他の転送装置161または取得装置181と通信を行うことによりセンサ121の検知結果を取得装置181へ転送する。より詳細には、転送装置161は、センサ121による検知結果をたとえば所定の計測周期ごとに取得し、取得した検知結果および計測時刻を示す第2のセンサ情報を含む無線信号を送信する。
【0031】
具体的には、転送装置161は、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って、差出元としての自己のID、宛先としての取得ユニット151のID、および第2のセンサ情報を含むセンサパケットを作成し、作成したセンサパケットを含む920MHz帯の無線信号を送信する。
【0032】
また、転送装置161は、たとえば、他の転送装置161によって送信されたセンサパケットを転送する。より詳細には、転送装置161は、他の転送装置161からセンサパケットを受信すると、受信したセンサパケットを送信する。
【0033】
センサパケットの伝送ルートは、たとえば、IEEE802.15.4の通信規格に従って、各転送装置161によって自動的に構築される。図2では、センサパケットの伝送ルートの一例が破線により示される。この例では、互いに対応する位置に設けられる3つの接触ユニット101のうちの1つの接触ユニット101(以下、代表接触ユニットとも称する。)が、自己の作成したセンサパケットを送信するとともに、対応の位置に設けられた他の接触ユニット101から送信されたセンサパケットを転送する。
【0034】
たとえば、各センサ121のうちの一部の検知結果は、複数の転送装置161を経由して取得装置181へ伝送される。具体的には、一部のセンサパケットは、たとえば、複数の鉄塔2における代表接触ユニットにより転送される。
【0035】
取得ユニット151の設けられた鉄塔2における代表接触ユニットは、自己の作成したセンサパケットを取得ユニット151へ送信するとともに、転送されたセンサパケット、および対応の位置に設けられた接触ユニット101から送信されたセンサパケットを受信すると、受信したセンサパケットを取得ユニット151における取得装置181へ送信する。
【0036】
また、たとえば、電線監視システム301において転送装置161が故障した場合、センサパケットの伝送ルートは、他の各転送装置161によって自動的に切り替えられる。
【0037】
取得装置181は、たとえば転送装置161によって転送された検知結果を受信する。より詳細には、取得装置181は、センサパケットを受信すると、受信したセンサパケットから差出元の転送装置161のIDおよび第2のセンサ情報を取得し、取得した第2のセンサ情報を転送装置161のIDに対応付けて保存する。
【0038】
図3は、本発明の実施の形態に係る電線監視システムにおける接触ユニットの構成を詳細に示す図である。
【0039】
図3を参照して、センサ121は、電源回路21と、計測部22と、変流器23A,23Bと、サーミスタ24と、抵抗25と、電線接触部26とを含む。以下、変流器23A,23Bの各々を、変流器23とも称する。
【0040】
センサ121における変流器23は、たとえば、電線1が通る貫通穴を有する。変流器23は、電線1に流れる交流電流の実効値等の大きさに応じた大きさを有する交流電流を出力する。
【0041】
電源回路21は、変流器23Aから出力される交流電流に基づいてたとえば直流電力を生成する。より詳細には、電源回路21は、変流器23Aから受ける交流電流をダイオードブリッジにより整流し、整流後の電流をコンバータにより直流電力に変換する。
【0042】
接触ユニット101における計測部22および転送装置161は、電源回路21により生成された直流電力を用いて動作する。
【0043】
また、電源回路21は、定電圧源として、所定電圧Vrたとえば5ボルトを出力する端子T1を有する。
【0044】
サーミスタ24は、電源回路21における端子T1に接続された第1端と、ノードN1に接続された第2端とを有する。
【0045】
抵抗25は、ノードN1に接続された第1端と、電線接触部26に接続された第2端とを有する。
【0046】
電線接触部26は、電線1に電気的かつ物理的に接続される。具体的には、電線接触部26は、たとえば、シート状の導体であり、電線1に密着する。
【0047】
計測部22には、たとえば、端子T1の電圧Vr、サーミスタ24の抵抗値と温度との関係R1、および抵抗25の抵抗値が予め登録されている。
【0048】
計測部22は、ノードN1の電線1に対する電圧Vnを計測する。計測部22は、計測した電圧Vnおよび端子T1の電圧Vrに基づいて、サーミスタ24および抵抗25にそれぞれ印加される分圧を算出する。計測部22は、算出した各分圧および抵抗25の抵抗値に基づいて、サーミスタ24の抵抗値を算出する。
【0049】
計測部22は、算出したサーミスタ24の抵抗値に対応する温度を関係R1から取得し、取得した温度を電線1の温度として転送装置161へ通知する。サーミスタ24は、電線1と電気的に接続されているので、サーミスタ24の温度を電線1の温度として扱うことが可能である。
【0050】
また、計測部22は、変流器23Bから出力される交流電流の大きさに基づいて電線1の電流の大きさを計測し、計測結果を転送装置161へ通知する。
【0051】
転送装置161は、計測部22から通知される電線1の温度および電流値に対して、所定の計測周期ごとに平均化およびフィルタリング等の処理を行い、処理後の電線1の温度および電流値、ならびに計測時刻を示す第2のセンサ情報を作成する。
【0052】
なお、接触ユニット101は、2つの変流器23を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。接触ユニット101では、1つの変流器23からの交流電流に基づいて、動作電力の生成および電線1の交流電流値の測定が行われる構成であってもよい。具体的には、たとえば、電源回路21において変流器23からの交流電流に基づいて直流電力が生成されるとともに、生成された直流電力の大きさに基づいて、電線1の交流電流値が計測される。
【0053】
再び図1を参照して、取得装置181は、たとえば所定の報告周期ごとに、保存している第1のセンサ情報および対応のID、ならびに第2のセンサ情報および対応のIDを含む収集情報を無線通信により監視装置171へ送信する。なお、取得装置181は、収集情報を有線通信により監視装置171へ送信してもよい。
【0054】
監視装置171は、たとえば、取得装置181から受信する収集情報に基づいて、電線1の電流容量を動的に算出するダイナミックラインレーティングを行う。
【0055】
より詳細には、監視装置171には、各センサ121のIDと設置場所との対応関係R2、および取得装置181のIDと設置場所との対応関係R3が登録されている。
【0056】
監視装置171は、対応関係R2,R3に基づいて、センサ111の近傍に存在するセンサ121を認識している。より詳細には、監視装置171は、対応関係R2,R3に基づいて、センサ111により検知された湿度、塩分、日射量および大気温を代表値として用いることが可能なエリア(以下、代表エリアとも称する。)に存在するセンサ121を認識している。
【0057】
また、非特許文献1に記載されているように、風速、風向、日射量および大気温に基づいて電線1の電流容量が求められる。
【0058】
しかしながら、実際には、風速および風向を正しく計測することが困難であるため、風向が電線に対して直交する方向に沿っていると仮定した有効風速が用いられる。この有効風速は、電線1の電流、電線1の温度、大気温および日射量に基づいて求められる。
【0059】
また、電線1の温度は、許容温度以下であることが好ましい。たとえば、スタティックラインレーティングでは、電線1の温度の履歴すなわち熱履歴に基づいて電線1の強度劣化が算出され、算出された強度劣化に応じた許容温度が設けられる。スタティックラインレーティングでは、熱履歴による強度劣化が支配的であるので、腐食による強度劣化については、あまり考慮されていない。
【0060】
一方、ダイナミックラインレーティングでは、電線1の温度がスタティックラインレーティングによる許容温度より高くなることが多いので、腐食による強度劣化についても考慮することが求められる。
【0061】
たとえば、監視装置171は、センサ111からの直近の第1のセンサ情報の示す大気温および日射量、ならびに当該センサ111の代表エリアに存在するセンサ121からの直近の第2のセンサ情報の示す電線1の温度および電流値に基づいて有効風速を算出する。
【0062】
そして、監視装置171は、算出した有効風速、日射量および大気温に基づいて対応の電線1の電流容量を算出する。
【0063】
また、監視装置171は、たとえば、センサ121の検知結果を用いて電線1の許容温度を演算する。より詳細には、監視装置171は、長期間における各第2のセンサ情報の示す電線1の温度に基づいて熱履歴による電線1の強度劣化を推定し、推定した強度劣化に応じた許容温度を設定する。
【0064】
監視装置171は、取得装置181によって取得されたセンサ111の検知結果に基づいて電線1の腐食度合いを演算する。この腐食度合いは、たとえば許容温度の補正に用いられる。より詳細には、監視装置171は、たとえば、長期間における各第1のセンサ情報の示す大気中の湿度および塩分をビッグデータ解析することにより電線1の腐食度合いを推定し、推定した腐食度合いに基づいて腐食による強度劣化を算出する。
【0065】
監視装置171は、たとえば、演算した腐食度合いに基づいて許容温度を補正する。より詳細には、監視装置171は、算出した腐食による強度劣化に基づいて、設定した許容温度を補正する。具体的には、監視装置171は、電線1における腐食による強度劣化がない場合、設定した許容温度の補正を行わない。一方、監視装置171は、電線1における腐食による強度劣化がある場合、腐食による強度劣化の程度に応じて、設定した許容温度を下げる。
【0066】
監視装置171は、算出した電流容量の電流を電線1に流した場合における電線1の温度を推定する。監視装置171は、推定した温度が、設定した許容温度を超える場合、電流容量をより小さい値に再設定する。一方、監視装置171は、推定した温度が、設定した許容温度より小さい場合、電流容量の再設定を行わない。
【0067】
そして、監視装置171は、算出した電流容量を図示しない発電装置へ通知する。発電装置は、スタティックラインレーティングにより求められた固定の電流容量に従うことなく、監視装置171から通知された電流容量に応じた電力を発電して送電することができる。
【0068】
具体的には、たとえば、風力発電装置では、強い風を受けることにより発電量が増加した場合、スタティックラインレーティングにより求められた固定の電流容量を超えないように発電量が制限されることがある。
【0069】
このような場合、風による電線1の冷却効果も大きくなるので、風力発電装置は、当該固定の電流容量より大きい電流容量の通知を監視装置171から受けることができる。これにより、風力発電装置における発電量の制限を緩和することができる。また、電線1の温度を、腐食による強度劣化の程度に応じた許容温度以下に維持することができるので、電線1の突然の断線を防ぎながら、回線3を介して発電電力を電力消費地へ効率よく伝送することができる。
【0070】
なお、本発明の実施の形態に係る電線監視システムは、複数のセンサ121と、複数の転送装置161と、センサ121と、取得装置181と、監視装置171とを備えるとしたが、これに限定するものではない。電線監視システム301は、センサ121と、取得装置181と、監視装置171とを備える最小構成要素により、電力系統の電線の品質を良好に維持するという本発明の目的を達成することが可能である。具体的には、たとえば、画像解析によって電線の張力およびたるみを計測し、計測結果に基づいてダイナミックラインレーティングを行う装置に対して電線監視システム301による第1のセンサの検知結果を提供することで、本発明の目的を達成することが可能である。
【0071】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムは、1つのセンサ111と、1つの取得装置181とを備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線監視システム301は、複数のセンサ111と、複数の取得装置181とを備える構成であってもよい。
【0072】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムは、3相の回線3に用いられる構成であるとしたが、これに限定するものではない。電線監視システム301は、2相または4相以上の回線に用いられる構成であってもよい。
【0073】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、各転送装置161間において無線通信が行われる構成であるとしたが、これに限定するものではない。各転送装置161間において有線通信が行われる構成であってもよい。
【0074】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、転送装置161および取得装置181間において無線通信が行われる構成であるとしたが、これに限定するものではない。転送装置161および取得装置181間において有線通信が行われる構成であってもよい。
【0075】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、センサ111および取得装置181は、一体であるであるとしたが、これに限定するものではない。センサ111および取得装置181は、別体であってもよい。
【0076】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、センサ121および転送装置161は、一体であるとしたが、これに限定するものではない。センサ121および転送装置161は、別体であってもよい。
【0077】
ところで、一般的に、非特許文献1に記載のダイナミックラインレーティングによって見積もられる許容電流値は、スタティックラインレーティングによって見積もられる許容電流値より大きい。このため、ダイナミックラインレーティングが行われる電線ではより大きい電流が流れるので、電線温度がより高くなり腐食が発生しやすい。さらに、腐食した電線の抵抗値は正常な電線の抵抗値と比べて高いために発熱によって腐食が進行し、電線の品質が劣化する可能性が高い。したがって、電線の品質の劣化を抑制しながらダイナミックラインレーティングを行うことが可能な技術が求められる。
【0078】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、センサ111は、電力系統の電線1の腐食度合いの演算に用いる1または複数の物理量の値を検知する。取得装置181は、センサ111から検知結果を取得する。そして、監視装置171は、取得装置181によって取得された検知結果に基づいて電線1の腐食度合いを演算する。
【0079】
このように、センサ111の検知結果に基づいて電力系統の電線1の腐食度合いを演算する構成により、たとえば、ダイナミックラインレーティングを行う場合において、腐食の進行度合いに応じた許容電流を設定することができるので、電線1の温度上昇を抑制することで腐食の進行を抑制することができる。したがって、電力系統の電線の品質の劣化を抑制することができる。
【0080】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、センサ121は、電力系統の電線1に対する1または複数の物理量の値を検知する。転送装置161は、他の転送装置161または取得装置181と通信を行うことによりセンサ121の検知結果を取得装置181へ転送する。そして、監視装置171は、さらに、センサ121の検知結果を用いて電線1の許容温度を演算し、演算した腐食度合いに基づいて許容温度を補正する。
【0081】
このように、センサ121の検知結果を用いて演算される電線1の許容温度を腐食度合いに基づいて補正する構成により、腐食の進行を抑制可能な許容温度を算出することができるので、電線1の温度を、腐食の進行を抑制可能な温度にすることができる。これにより、たとえば、ダイナミックラインレーティングを行う場合において、電線1の品質の劣化を抑制しながら、スタティックラインレーティングによって見積もられる許容電流より大きい許容電流を設定することができるので、送電効率を高めることができる。また、たとえば、検知対象の物理量のうち、電線1から離れた位置で計測可能な物理量をセンサ111の検知対象とし、また、電線1の近傍で計測される物理量をセンサ121の検知対象にすることにより、転送装置161を各電線1の近傍に配置しながら、取得装置181を設置する場所を自由に設定することができる。これにより、たとえば、取得装置181が携帯電話基地局の少ない僻地に設けられる場合においても、電波環境の良い位置に取得装置181を設置することができる。また、たとえば、複数のセンサ121の検知結果を、転送装置161を介して取得装置181へ転送することができるので、転送装置161の通信エリアを小さくすることができる。これにより、転送装置161の低コスト化および小型化を実現することができる。また、より少数の取得装置181を配置する設置形態とすることができるので、電線監視システム301の設置コストを低減することができる。
【0082】
また、本発明の実施の形態に係る電線監視システムでは、腐食度合いは、電力系統のラインレーティングに用いられる。
【0083】
このように、センサ111からの検知結果に基づくより正確な腐食度合いをラインレーティングに用いる構成により、ダイナミックラインレーティングを良好に行うことができる。
【0084】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0085】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
【0086】
[付記1]
電力系統の電線の状態を監視するための電線監視システムであって、
前記電線の腐食度合いの演算に用いる1または複数の物理量の値を検知する第1のセンサと、
前記第1のセンサから検知結果を取得する取得装置と、
前記取得装置によって取得された前記検知結果に基づいて前記腐食度合いを演算する監視装置とを備え、
前記第1のセンサは、大気中の湿度および塩分を検知し、
前記監視装置は、前記電線の電流容量を動的に算出し、
前記監視装置は、前記腐食度合いの演算結果に基づいて腐食による前記電線の強度劣化を算出し、算出した前記強度劣化に基づいて前記電流容量を補正する、電線監視システム。
【符号の説明】
【0087】
1 電線
2 鉄塔
3 回線
21 電源回路
22 計測部
23 変流器
24 サーミスタ
25 抵抗
26 電線接触部
101 接触ユニット
111 センサ
121 センサ
151 収集ユニット
161 転送装置
171 監視装置
181 取得装置
301 電線監視システム
図1
図2
図3