【実施例】
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る車両用バックドア構造100が適用される車両102を概略的に示す図である。図中では、車両102の車両後部に設置された車両用バックドア104が閉じている状態で、斜め車両後方から車両102を見た様子を概略的に示している。
【0020】
車両用バックドア構造100は、車両用バックドア104の外面を構成するドアアウタパネル106と、車両用バックドア104の内面を構成するドアインナパネル108と、補強部材110(
図2参照)とを備える。また、ドアアウタパネル106およびドアインナパネル108には窓枠112が形成されている。
【0021】
ドアインナパネル108には、例えば、図中点線で示すバランサ固定部114、116、当接部118、120およびドアヒンジ122、124が配置されている。バランサ固定部114、116には、車両用バックドア104の開状態を保つためのバランサ126、128の一端126a、128aが取り付けられる。なおバランサ126、128の他端126b、128bは車体130に取付けられている。
【0022】
当接部118、120は、車両用バックドア104の閉時に車体130に当接する部位である。ドアヒンジ122、124は、窓枠112の上端132に取付けられ、さらに車体130に取付けられる。これにより車体130は、ドアヒンジ122、124を介して車両用バックドア104を開閉自在に支持する。またドアインナパネル108には、ドアヒンジリンフォース134、136(
図2参照)が取付けられ、ドアヒンジ122、124の周囲を補強している。
【0023】
ドアアウタパネル106のうち窓枠112の下側の領域138では、窓枠112の下端140の形状がほぼ直線に近い曲線で形成され、曲率が小さく凹凸も存在せず、緩やかな曲面形状を成している。このため、ドアアウタパネル106の領域138は、車両用バックドア104の開閉が繰り返し行われるなど荷重が入力されると変形し易い範囲を含むことになる。
【0024】
そこで本実施形態では、ドアアウタパネル106のうち変形し易い範囲に補強部材110を配置し接合することでドアアウタパネル106の剛性を高めて変形を抑制する構成を採用した。
【0025】
図2は、
図1の車両用バックドア構造100からドアインナパネル108を省略した状態を車内側から見た様子を示す図である。ただし図中では、便宜上、ドアインナパネル108に設けられたバランサ固定部114、116、当接部118、120およびドアヒンジ122、124を点線で示している。
【0026】
車両用バックドア構造100の補強部材110は、ドアアウタパネル106とドアインナパネル108との間に配置され、ドアアウタパネル106のうち変形し易い範囲に重なるようにして接合される。すなわち補強部材110は、車幅方向において、窓枠112の下端140の2つの角部142、144の間に位置し、車幅方向寸法Laを有している。補強部材110の車幅方向寸法Laは、ドアアウタパネル106の領域138の車幅方向の長さLbの半分以上である(すなわち、La>Lb/2)。
【0027】
角部142、144とは、
図2に示すように、窓枠112の左右の縁146、148が描く曲線の終端に位置する。また、窓枠112の下端140の角部142、144よりも車幅方向外側は曲線形状を成し剛性が高くなっているため、補強部材110によって補強する必要はない。
【0028】
また、角部142、144の間に位置する窓枠112の下端140は、直線状を成し剛性が低いため、窓枠112の下端140を補強する必要がある。そこで、補強部材110は、車両上下方向において、窓枠112の下端140から、上下方向寸法Lcだけ離れた位置まで延びている。補強部材110の上下方向寸法Lcは、領域138の上下方向の長さLdの半分以上である(すなわち、Lc>Ld/2)。ただし、補強部材110は、ドアアウタパネル106の領域138の中央に設けられたハンドル設置用の孔部150を避けるようにして下方に延びている。
【0029】
また補強部材110は、図示のように上端部152の車両上下方向の高さが、バランサ固定部114、116の車両上下方向の高さと等しくなっている。さらに、補強部材110は、下端部154の最下端156の車両上下方向の高さが、当接部118、120の車両上下方向の高さと等しくなっている。またドアヒンジ122、124の車幅方向の取付箇所は、補強部材110の車幅方向の両端部158、160よりも車幅方向内側に位置している。
【0030】
車両用バックドア構造100はさらに、ワイパー162(
図1参照)を駆動する重量物である駆動部164を備える。駆動部164は、ドアアウタパネル106のうち窓枠112の上端132に設けられていて、補強部材110が配置されるドアアウタパネル106の領域138には存在しない。このため、車両用バックドア104は、車体130に対して開閉を繰り返しても駆動部164の重量に起因した慣性力によってドアアウタパネル106の領域138が変形することがない。
【0031】
さらに、ドアアウタパネル106の領域138に駆動部164が存在しない。このため、補強部材110の形状は、駆動部164によって制約を受けず、変曲点(曲げ点)のない軌跡に沿って延びるビード部166(
図3参照)を形成できる。
【0032】
図3は、
図2の車両用バックドア構造100の一部を拡大して示す図である。補強部材110に形成されたビード部166は、図示のように、一点鎖線で示す複数の第1ビード168a、168b、168c、168dを有する。複数の第1ビード168a〜168dは、上下方向の直線状の軌跡に沿って延びている。また
図2に示すドアヒンジ122、124の車幅方向の取付位置は、複数の第1ビード168a〜168dのうち最も車幅方向外側に位置する第1ビード168a、168dよりも車幅方向内側に位置している。
【0033】
ビード部166はさらに、点線で示す複数の第2ビード170a、170b、170c、170dと、二点鎖線で示す複数の第3ビード172a、172bとを有する。複数の第2ビード170a〜170dは、上方から下方に向かって末広がりな形状を描く曲線状の軌跡に沿って延びている。複数の第3ビード172a、172bは、下側に凸の同心の円弧状の軌跡に沿って延びている。
【0034】
また第1ビード168a〜168d、第2ビード170a〜170dおよび第3ビード172a、172bは、ドアアウタパネル106に向かって隆起しドアアウタパネル106に接している。このため、ビード部166とドアアウタパネル106との接触箇所にシーラーなどを塗布して接合点を適宜設定できる。特に、荷重に対するドアアウタパネル106の変形を効果的に抑制できる接触箇所を接合点として設定することで、ドアアウタパネル106の剛性を高めることができる。さらに補強部材110は、ビード部166での接合点の位置や数を容易に変更できるため、接合点の位置や数が異なる仕様にも共通して使用可能であり、部品の共通化を図ることもできる。
【0035】
また補強部材110には、スポット打点174、176、178が形成されている。スポット打点174は、窓枠112の下端140に重なる上端部152に複数(ここでは5つ)形成されている。スポット打点174では、補強部材110、ドアインナパネル108およびドアアウタパネル106の3枚が接合されている。
【0036】
スポット打点176は、補強部材110の上端部152の両端180、182および下端部154に複数(ここでは8つ)形成されている。スポット打点176では、補強部材110およびドアインナパネル108の2枚が接合されている。
【0037】
スポット打点178は、窓枠112の下端140寄りの車幅方向中央に複数(ここでは4つ)形成されている。スポット打点178では、補強部材110およびドアアウタパネル106の2枚が接合されている。このように補強部材110は、シーラーなどの塗布によりドアアウタパネル106に接合されるだけでなく、各スポット打点174、176、178によってドアアウタパネル106やドアインナパネル108に接合されている。
【0038】
図4は、
図1の車両用バックドア構造100を車内側から見た状態を示す図である。図中では、
図2では省略したドアインナパネル108を示している。ただしドアアウタパネル106に設けられた駆動部164は図示を省略している。
図5は、
図4の車両用バックドア構造100の断面図である。
【0039】
図4に示すようにドアインナパネル108の窓枠112の下側の中央には、開口184が設けられている。この開口184は、車両用バックドア104の内部にハーネスなどの部品を配置する際、外部から部品にアクセスするために用いられる。
【0040】
車両用バックドア構造100では、
図5(a)のA−A断面に示すように、窓枠112の上端132でドアヒンジリンフォース134がドアアウタパネル106とドアインナパネル108とに挟まれている。また車両用バックドア構造100では、窓枠112の下端140で補強部材110の上端部152がドアアウタパネル106とドアインナパネル108とに挟まれている。また、補強部材110の上端部152の車両上下方向の高さは、
図2に示したようにバランサ固定部114、116の車両上下方向の高さと等しくなっている。補強部材110の上端部152は、
図5(b)のB−B断面に示す車幅方向中央においてもドアアウタパネル106とドアインナパネル108とに挟まれていて剛性が高くなっている。
【0041】
さらに補強部材110は、
図5(a)に示すように、上端部152から連続した中間部186がドアアウタパネル106の領域138に接している。補強部材110の下端部154は、中間部186から連続しドアアウタパネル106から離れてドアインナパネル108に向かって延び、ドアインナパネル108に固定される。また、補強部材110の下端部154の最下端156の車両上下方向の高さは、
図2に示したように当接部118、120の車両上下方向の高さと等しくなっている。なお補強部材110は、
図5(b)のB−B断面に示す車幅方向中央では、ドアアウタパネル106のハンドル設置用の孔部150に至る付近まで中間部186が延びている。
【0042】
ここで一例として、車両用バックドア104の閉時にドアインナパネル108の当接部118、120が車体130から衝撃を受けた場合について説明する。当接部118、120が受けた衝撃は、当接部118、120の車両上下方向の高さと同じ位置に設定された補強部材110の下端部154に伝達され易い。補強部材110の下端部154に伝達された衝撃は、下端部154からドアアウタパネル106に接する中間部186に伝達される。中間部186に伝達された衝撃は、ドアアウタパネル106とドアインナパネル108とで挟まれて固定された剛性の高い上端部152まで伝達される。
【0043】
他の例として車両用バックドア104の開閉操作に伴いドアインナパネル108のバランサ固定部114、116が車体130から衝撃を受けた場合について説明する。バランサ固定部114、116が受けた衝撃は、バランサ固定部114、116の車両上下方向の高さと同じ位置に設定された補強部材110の剛性の高い上端部152に伝達され易い。補強部材110の上端部152に伝達された衝撃は、上端部152からドアアウタパネル106に接する中間部186に伝達される。中間部186に伝達された衝撃は、ドアインナパネル108に固定された下端部154まで伝達される。このようにして、補強部材110は、車両用バックドア104が受けた衝撃を効率的に分散させることができ、車両用バックドア104の変形を低減できる。
【0044】
さらに補強部材110に入力された荷重は、
図3に示すように変曲点のない軌跡に沿って延びる複数の第1ビード168a〜168d、第2ビード170a〜170dおよび第3ビード172a、172bの形状に沿った複数の経路に伝達され分散される。このように、補強部材110にビード部166を形成することで、応力集中が生じ難くなり、補強部材110の剛性を高め変形を十分に抑制できる。
【0045】
また補強部材110の下端部154の最下端156が、ドアインナパネル108の当接部118、120の車両上下方向の高さまで車両下方に延びているため、ドアインナパネル108の剛性を高めることができる。このため、ドアインナパネル108に
図4に示す比較的大きな開口184を設定できる。よって、車両用バックドア104の内部にハーネスなどの部品を配置する際の作業性を高め、さらに軽量化も図ることができる。またハーネスを固定する箇所を補強部材110に適宜設定し、作業性をさらに高めるようにしてもよい。
【0046】
本実施形態の車両用バックドア構造100によれば、ドアアウタパネル106のうち変形し易い範囲に補強部材110を配置し接合しているため、ドアアウタパネル106の剛性が向上し、変形を抑制できる。またドアアウタパネル106の変形を抑制することで、車両用バックドア104全体の剛性が向上し、車両用バックドア104全体が変形することも抑制できる。そのため、車両用バックドア104が変形することで発生する車室内の音圧変化に伴う騒音も低減できる。また、車両用バックドア104全体の剛性が向上するため、補強部材110の板厚だけでなく、ドアアウタパネル106、ドアインナパネル108の板厚を削減しても十分な剛性を確保でき、軽量化を図ることができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。