特許第6973585号(P6973585)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973585血小板凝集能解析方法、血小板凝集能解析装置、血小板凝集能解析用プログラム及び血小板凝集能解析システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973585
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】血小板凝集能解析方法、血小板凝集能解析装置、血小板凝集能解析用プログラム及び血小板凝集能解析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20211118BHJP
   G01N 33/86 20060101ALI20211118BHJP
   G01N 27/22 20060101ALI20211118BHJP
   G01N 27/02 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G01N33/49 X
   G01N33/86
   G01N27/22 B
   G01N27/02 D
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-136556(P2020-136556)
(22)【出願日】2020年8月13日
(62)【分割の表示】特願2016-197156(P2016-197156)の分割
【原出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2020-190570(P2020-190570A)
(43)【公開日】2020年11月26日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】村田 彩
(72)【発明者】
【氏名】林 義人
(72)【発明者】
【氏名】町田 賢三
(72)【発明者】
【氏名】イ スンミン
【審査官】 三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−194087(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/115478(WO,A1)
【文献】 特開2009−008503(JP,A)
【文献】 特開2015−190804(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0015001(US,A1)
【文献】 国際公開第2017/141508(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/156322(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/098242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/49
G01N 33/86
G01N 27/22
G01N 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血小板含有試料に外・内因系凝固促進剤及びナトリウム塩を添加する工程、
前記血小板含有試料を撹拌して前記外・内因系凝固促進剤により血液を凝固させる工程、及び
前記工程後、非攪拌状態で前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データを取得する工程
前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記外・内因系凝固促進剤を添加しないでナトリウム塩を添加した血小板含有試料から取得した電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血液凝固能を解析する工程
を含む、血液凝固能解析方法。
【請求項2】
前記電気的特性の測定データは血小板含有試料の誘電率である、請求項1に記載の血液凝固能解析方法。
【請求項3】
前記粘弾性の測定データは血小板含有試料のレオメーターによる測定データである、請求項1に記載の血液凝固能解析方法。
【請求項4】
前記血小板含有試料は血液又は血漿である、請求項1に記載の血液凝固能解析方法。
【請求項5】
前記血液又は血漿は、抗血小板凝集薬及び/又は抗凝固薬を投与された被験者から採取されたものである、請求項4に記載の血液凝固能解析方法。
【請求項6】
血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に外・内因系凝固促進剤及び/又はナトリウム塩を供給する薬剤供給部と、
前記血小板含有試料を撹拌して前記外・内因系凝固促進剤により凝固を促進させる撹拌機構と、
非攪拌状態で前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部
前記血小板含有試料を攪拌する攪拌時間を制御する時間制御部と、
前記攪拌機構の駆動動作を制御する駆動機構と、
前記測定部で測定された電気的特性に基づいて血液凝固における血小板寄与部を解析する解析部と
を含む、血液凝固能解析装置。
【請求項7】
血小板含有試料に外・内因系凝固促進剤及びナトリウム塩が添加されて攪拌され、攪拌後、前記血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、血小板含有試料に前記外・内因系凝固促進剤が添加されていなくナトリウム塩が添加されて攪拌され、攪拌後、前記血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて、血液凝固能を解析することをコンピュータに実行させる、血液凝固能解析用プログラム。
【請求項8】
血小板含有試料に外・内因系凝固促進剤及びナトリウム塩が添加されて攪拌され、攪拌後、前記血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、血小板含有試料に前記外・内因系凝固促進剤が添加されていなくナトリウム塩が添加されて攪拌され、攪拌後、前記血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとを比較することを含む、請求項に記載の血液凝固能解析用プログラム。
【請求項9】
血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に外・内因系凝固促進剤及び/又はナトリウム塩を供給する薬剤供給部と、
前記血小板含有試料を撹拌して前記外・内因系凝固促進剤により凝固を促進させる撹拌機構と、
非攪拌状態で前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部
前記血小板含有試料を攪拌する攪拌時間を制御する時間制御部と、
前記攪拌機構の駆動動作を制御する駆動機構と、
前記測定部で測定された電気的特性に基づいて血液凝固における血小板寄与部を解析する解析部と
を含み、
血小板含有試料に外・内因系凝固促進剤及びナトリウム塩が添加されて攪拌され、攪拌後、前記血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、血小板含有試料に前記外・内因系凝固促進剤が添加されていなくナトリウム塩が添加されて攪拌され、攪拌後、前記血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データに基づいて血液凝固能を解析することをコンピュータに実行させる、血液凝固能解析用プログラムを搭載したコンピュータが組み込まれた血液凝固能解析装置、及び
前記解析の結果を表示する表示装置
を備える、血液凝固能解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血小板凝集能解析方法、血小板凝集能解析装置、血小板凝集能解析用プログラム及び血小板凝集能解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
抗凝固療法や抗血小板療法は、血栓症予防に欠くことのできない治療法であり、その有用性は大規模な臨床試験により示されている。
しかし、抗血小板療法は、抗凝固療法の脳梗塞低減効果と比べて、動脈血栓症を低減する効果が低い場合がある。
【0003】
これは、抗凝固療法においては、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)やトロンボテストにより、患者ごとに薬効が適切にモニタリングされている一方で、抗血小板療法においては、抗血小板薬の感受性や効果の持続にはかなりの個体差があることが報告されているにも関わらず、未だモニタリング方法が確立していないことが原因の一つとして考えられる。
【0004】
従って、抗血小板療法においても、分かりやすい方法で薬効が適切にモニタリングできれば、各症例における薬品の適正な使用方法を探る手段となり、治療効果の向上が期待できる。
【0005】
ここで、血小板の最も基本的な機能は、粘着と凝集である。血小板同士の付着状態を判定する血小板凝集能検査法は、この基本的な機能を定量的に測定する方法として最も普及しているものである。具体的には、1)透過度法、2)インピーダンス法、3)粒子算定法等がある。これらの検査法では、用いる凝集惹起物質の種類・濃度によって、血小検機能低下及び亢進の詳細を知ることが可能である。特に、日常検査として一般的なのは透過度法である。
【0006】
1)透過度法は、血小板刺激物質を加え、多血小板血漿(PRP)中の血小板凝集に伴い、PRPの透明度が上昇すること利用して経時的に血小板凝集を定量化する方法である。
【0007】
透過度法の問題点としては、
(i)血漿の分離が必須のため、測定までの検体処理が複雑で、遠沈条件によって得られるPRPの量はそれぞれ異なり、血小板の回収率も一定でなく、また、PRP分離操作の際に、密度の高い血小板は赤血球と共に沈殿し、それらの凝集態度は観察できない、
(ii)血小板凝集の強さ(凝集率)は、PRP中の血小板数にある程度依存するので、血小板数が10万/μl以下の場合には、凝集前後の吸光度の差が小さく、僅かな変化は検出できない、
(iii)全血および乳糜血漿など混濁した血漿を用いての検査は不可能である、
(iv)血小板凝集塊の形成と光透過性の相関が悪い、
等が挙げられる。
【0008】
2)インピーダンス法は、血小板の凝集を電極間の電気抵抗の変化として検出する方法で、全血中の血小板の凝集能を観察でき、また、遠沈操作が無いため全ての血小板の凝集態度を観察できる方法である。
【0009】
インピーダンス法の問題点としては、
(v)電気抵抗の初期の減少は電極間の赤血球の存在に由来し、血小板凝集の初期状態の判定が困難、
(vi)透過度法と比較して、凝集パターンは安定でない、
等が挙げられる。
【0010】
3)粒子算定法は、血小板凝集塊、または凝集塊の形成に関与しない単一血小板の数をコールターカウンターで算定し凝集の態度を知る方法である。
【0011】
粒子算定法の問題点としては、
(vii)手技が煩雑である、
(viii)継時的変化を記録できない、
(ix)凝集惹起物質による血小板溶解を単一血小板の減少と誤って算定される、
等が挙げられる。
【0012】
一方、近年、血液凝固能測定を簡便且つ正確に評価することができる手法として、血液凝固過程の誘電測定を行う方法が考案された(特許文献1)。
この手法は、1組の電極対等からなるコンデンサー状の試料部に血液を充填し、それに交流電場を印加して血液の凝固過程に伴う誘電率の変化を測定する方法である。
【0013】
ここで、血液検体は、クエン酸を抗凝固剤として用いて静脈から採血されたものであり、測定開始直前に塩化カルシウム水溶液を添加することでクエン酸の抗凝固作用を解除して血液凝固反応を進行させる。こうして得られたデータを所定のアルゴリズムに従って解析することで、血液凝固時間等の血液凝固に係るパラメータを得ることができる。
【0014】
そして、前記血液凝固過程の誘電測定の研究が更に進み、血小板を活性化あるいは不活化する物質を血液に添加することにより該血液の凝固過程で測定される複素誘電率スペクトルに生じる変化に基づいて、前記血液の凝固能に関する情報を取得する血液凝固系解析方法が開発された(特許文献2)。
【0015】
この血液凝固系解析方法では、血小板活性化物質を用いた場合には、血小板活性化に伴って前記複素誘電率スペクトルに生じる変化に基づき、血液中に不活性な状態で含まれる血小板の凝固能に関する情報を取得することができる。また、血小板不活化物質を用いた場合には、血小板不活化に伴って前記複素誘電率スペクトルに生じる変化に基づき、血液中に活性な状態で含まれる血小板の凝固能に関する情報を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−181400号公報
【特許文献2】特開2012−194087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、前記血液凝固過程の誘電測定を行う方法及び前記血液凝固系解析方法では、正常な凝固能を有するサンプル(全血)を用いて、予め基準となる血液凝固時間の短縮幅Δts(基準値)を設定する必要があった。
【0018】
また、凝固反応を進行させる際、加速試薬を添加していないため測定時間が長い、という問題があった。加速試薬を添加すると、血小板機能による差が見えなくなってしまうからである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
そこで、本願発明者らは、血小板凝集能の簡易で早い測定方法を提供するべく鋭意研究を行なった。
そして、全血に少量の塩化カルシウム水溶液と血小板惹起物質を添加し、一定時間撹拌した後に、該血液の非擾乱凝固(自然な血液凝固)過程で測定される誘電率の変化と、非血小板惹起物質を添加した場合の誘電率の変化には差が生じることを見出し、本技術を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本技術は、
血小板含有試料に血小板惹起物質及びカルシウム塩を添加する工程、
前記血小板含有試料を撹拌する工程、及び
前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データを取得する工程
を含む、血小板凝集能解析方法を提供する。
前記電気的特性の測定データは血小板含有試料の誘電率であることが好ましい。
また、前記粘弾性の測定データは血小板含有試料のレオメーターによる測定データであってもよい。
本技術の血小板凝集能解析方法には、前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質を添加しない血小板含有試料から取得した電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血小板凝集能を解析する工程を更に含めることができる。
前記血小板含有試料は血液又は血漿であってもよい。
また、前記血液又は血漿は、抗血小板凝集薬及び/又は抗凝固薬を投与された被験者から採取されたものを用いることができる。
【0021】
本技術は、
血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を供給する薬剤供給部と、
前記血小板含有試料を撹拌する撹拌機構と、
前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部と
を含む、血小板凝集能解析装置をも提供する。
【0022】
また、本技術は、
血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血小板凝集能を解析することをコンピュータに実行させる、血小板凝集能解析用プログラムを提供する。
前記解析においては、血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとを比較すればよい。
【0023】
また更に、本技術は、
血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を供給する薬剤供給部と、
前記血小板含有試料を撹拌する撹拌機構と、
前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部と
を含み、
前記血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血小板凝集能を解析することをコンピュータに実行させる、血小板凝集能解析用プログラムを搭載したコンピュータ
が組み込まれた血小板凝集能解析装置、及び
前記解析の結果を表示する表示装置
を備える、血小板凝集能解析システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】血小板凝集能解析方法における測定フローを示す図である。
図2】血小板凝集能解析装置の構成の概略を示す図である。
図3】血小板凝集能解析用プログラムによって行われる解析フローを示す図である。
図4】血小板凝集能解析システムの構成の概略を示す図である。
図5-1】インピーダンス凝集測定による検体の測定結果を示すグラフである。
図5-2】誘電率による検体の測定結果を示すグラフである。
図6-1】誘電率による測定結果に基づいた解析結果の例を示すグラフである。
図6-2】誘電率による測定結果に基づいた解析結果の例を示すグラフである。
図7-1】誘電率による測定データとインピーダンス凝集測定による測定データパラメータ(AUC(U))との相関関係を示すグラフである。
図7-2】誘電率による測定データとインピーダンス凝集測定による測定データパラメータ(Aggregation(AU))との相関関係を示すグラフである。
図8】血小板惹起物質添加検体と対照の誘電クロット強度を示すグラフである。
図9-1】誘電率に基づく誘電クロット強度のデータとインピーダンス凝集測定による測定データパラメータ(AUC(U))との相関関係を示すグラフである。
図9-2】誘電率に基づく誘電クロット強度のデータとインピーダンス凝集測定による測定データパラメータ(Aggregation(AU)))との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。
1.血小板凝集能解析方法
2.血小板凝集能解析装置
3.血小板凝集能解析用プログラム
4.血小板凝集能解析システム
5.実施例
(1)方法
(2)結果
(3)解析例1
(4)解析例2
6.まとめ
【0026】
1.血小板凝集能解析方法
本技術の血小板凝集能解析方法は、
工程A:血小板含有試料に血小板惹起物質及びカルシウム塩を添加する工程、
工程B:前記血小板含有試料を撹拌する工程、及び
工程C:前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データを取得する工程
を含む。
工程Aで血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料は、工程Bの撹拌を行うことによって血小板惹起物質により活性化した血小板が凝集する。記工程Cでは、工程Bで反応した血小板は応答に寄与せず、反応しなかった血小板が血液凝固反応の過程で応答する。
【0027】
本技術の解析対象となる血小板含有試料は、特に限定されないが、ヒトや哺乳動物由来の血液(全血)、血漿、及び人工血液等が挙げられる。また、抗血小板凝集薬、抗凝固薬、または抗血小板凝集薬と抗凝固薬の両方を投与された被験者から採取された試料でもよい。
【0028】
工程Aで用いる血小板惹起物質は、血小板の凝集を引き起こす又は抑制する物質である。血小板惹起物質は、例えば、コラーゲン(COL)、エピネフリン、リストセチン、トロンビン、トロンボキサンA2(TAX2)、トロンビン受容体活性化タンパク質(TRAP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸(AA)、セロトニン、アドレナリン、ノルアドレナリンである。
【0029】
血小板惹起物質の添加濃度(試料に添加したときの最終濃度)は、例えば、トロンビン受容体活性化タンパク質(TRAP)であれば、好ましくは1μM以上100μM以下、より好ましくは3μM以上80μM以下、更に好ましくは5.4μM以上62μM以下である。
アデノシン二リン酸(ADP)であれば、好ましくは0.1μM以上100μM以下、より好ましくは0.5μM以上30μM以下、更に好ましくは1.0μM以上12.5μM以下である。
アラキドン酸(AA)であれば、好ましくは0.01mM以上10mM以下、より好ましくは0.05mM以上5.0mM以下、更に好ましくは0.08mM以上1.0mM以下である。
【0030】
工程Aで用いるカルシウム塩(塩化カルシウム等)は、含まれるカルシウムイオンにより、採血時に検体に加えられたクエン酸による抗凝固作用を解くための物質である。
塩化カルシウムの添加濃度(塩化カルシウムの試薬濃度)は、血小板凝固促進効果がある濃度であれば特に限定されないが、好ましくは150mM以上250mM以下、より好ましくは170mM以上230mM以下、更に好ましくは185mM以上215mM以下である。
【0031】
工程Aにおいて、血小板惹起物質とカルシウム塩を血小板含有試料に添加するタイミングは特に限定されないが、本技術においては同時に添加することができる。そして、前記工程Bにて、血小板含有試料、血小板惹起物質及びカルシウム塩を撹拌後、工程Cにて、血小板凝固能のデータを取得する。
【0032】
前記工程Bでの撹拌条件は、血小板含有試料の血小板凝固反応を阻害しない条件であれば特に限定されず、例えば37℃で撹拌を行う。撹拌の速度、強さも特に限定されないが、撹拌方法や惹起物質の種類によって予め検討しておくことが好ましい。撹拌方法も特に限定されないが、例えば、ピペットでの吸引・吐出、撹拌子の使用等が挙げられる。撹拌時間は、本技術での検討により血小板が血小板惹起物質と反応して凝集するための時間として5分が目安であることが分かったが、特に限定されず、好ましくは3〜6分である。撹拌方法や惹起物質の種類によって短縮または延長する。
【0033】
前記工程Cでは、血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性を測定する。
ここで、電気的特性としては、例えば、誘電率、インピーダンス、アドミッタンス、キャパシタンス、コンダクタンス、導電率、位相角などを挙げることができる。誘電率であれば、特許第5691168号明細書、特許第5768422号明細書に記載の凝固過程の測定方法に従えばよい。
【0034】
また、粘弾性は、レオメーターで測定することができる。レオメーターとして、例えば、ローテーショントロンボエラストメトリー、トロンボエラストグラフィー、レオロックス(ReoRox(商標))がある。市販の装置として、トロンボエラストグラフィー(TEG(登録商標))血液凝固分析装置(ヘモネティクス社)、ローテーショントロンボエラストメトリー(ROTEM(登録商標))血液凝固分析装置(TEM group, Basel, Switzerland)等が挙げられる。
【0035】
血小板凝集能の測定時の対照としては、例えば、血小板含有試料に血小板惹起物質は添加せずにカルシウム塩を添加したものを用いればよい。
血小板含有試料の測定データと、前記対照となる血小板惹起物質は添加していない血小板含有試料から取得した測定データとを比較することにより、血小板凝集能を解析することができる。比較は、例えば、データの差分、比率、測定波形の面積の差分を算出すること等で行うことができる。
【0036】
なお、前述したように、血小板惹起物質にはTRAP、ADP、AA等、種々あるが、凝固系における働きはそれぞれ異なる。
そこで、同一の血小板含有試料を複数用意し、血小板惹起物質を複数選択して、各血小板含有試料にそれぞれ別の血小板惹起物質及びカルシウム塩を添加し攪拌し、電気的特性及び/又は粘弾性の測定を行ってデータを比較すれば、血小板惹起物質に対応した血小板凝固能の考察が可能となる。更に、血小板への影響の少ない生理食塩水や緩衝液等を血小板惹起物質の変わりに用いた対照の測定結果と比較することも可能である。
【0037】
本技術の血小板凝集能解析方法は、例えば図1に示す測定フローチャートに従って実施することができる。
まず、被験者から採血を行う(S101)。その全血に血小板惹起物質とカルシウム塩とを添加する(S102)。この操作はワンステップで行うことができる。添加後、全血を加温条件下で撹拌する(S103)。撹拌時間は例えば5分である。
次に、血液凝固能測定を行う(S104)。測定は、非撹拌状態で行うことができる。このステップは、更に加速試薬等を添加することなく自然な血液凝固過程を測定する、非擾乱凝固能測定である。また、血液凝固能測定は、経時的に測定してもよいし、測定開始からの時間を指定してその時点での凝固能を測定してもよい。
最後に、得られた測定データを解析し、血液凝固における血小板寄与部を算出する(S105)。
【0038】
2.血小板凝集能解析装置
本技術の血小板凝集能解析装置は、
血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を供給する薬剤供給部と、
前記血小板含有試料を撹拌する撹拌機構と、
前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部と
を含む。
【0039】
血小板凝集能解析装置の構成の概略を図2に示す。
生体試料保持部1は、生体試料供給部2から供給された血小板含有試料を保持し、薬剤供給部3から供給された血小板惹起物質及びカルシウム塩との撹拌を行う。
【0040】
撹拌機構6は、生体試料保持部1に供給された血小板含有試料、血小板惹起物質及びカルシウム塩を撹拌するように作動する。撹拌方法は特に限定されず、例えば、電動ピペットによる撹拌、撹拌子による撹拌、撹拌機能内蔵の装置を用いて行うことができる。
撹拌は、血小板を反応させるため、一定時間行う。
【0041】
温度制御部4と時間制御部5は、生体試料保持部内の条件を制御する。例えば、温度制御部4は血小板含有試料が一定の温度に保たれるように制御する。時間制御部5は、血小板含有試料が生体試料保持部1に保持される時間や撹拌時間等を制御する。
駆動機構7は、温度制御部4や撹拌機構6の駆動動作、血小板含有試料の送液等の、生体試料保持部1に関わる動作を行う。
【0042】
測定部9は、血小板含有試料に血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を添加し、撹拌した後、誘電率を測定する。測定部9にはレオメーターを用いてもよい。
測定条件制御部9は、測定方法に適した温度条件や測定時間条件に設定し調節する。また、測定条件制御部9は、測定部8での誘電率測定の際、測定に用いる周波数や測定の間隔等をコントロールする。
精度管理部10は、測定部8における測定間差やバックグラウンドの変動等が生じないようにデータを管理すること、装置の各部の状態を監視すること等を行う。
【0043】
解析部11は、誘電率又は粘弾性による測定データに基づいて血液凝固における血小板寄与部を解析する。解析は後述の血小板凝集能解析用プログラムを用いて行うことができる。
なお、解析部11に、解析結果を出力する出力制御部、解析結果を表示する表示装置、測定データや解析結果を記憶する記憶部等を更に備えてもよい。
【0044】
3.血小板凝集能解析用プログラム
本技術に用いる血小板凝集能解析用プログラムは、
血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、
前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと
に基づいて血小板凝集能を解析することをコンピュータに実行させる。
該プログラムは記憶媒体で提供される。
【0045】
前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料は、対照として用いることができる。例えば、カルシウム塩が添加された試料、生理食塩水や緩衝液が添加された試料が対照となり得る。対照をおくことにより、血小板惹起物質添加の有無によって生じるデータの違いを比較検討して血小板寄与部を算出することができる。
【0046】
図3に、プログラムによって行われる解析のフローチャートを示す。
血小板凝集能解析装置の測定部9で得られた測定結果(S301)のデータから、特徴点を抽出する(S302)。特徴点は、例えば、対照と試料の測定結果が安定し始めた点、血小板の凝固時間の決まる点等である。特徴点は、例えば、血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を血小板含有試料に添加して撹拌後、経過した特定の時間とすることができる。
【0047】
特徴点において、血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料と、カルシウム塩が添加された血小板含有試料との測定値の差分を算出し(S303)、その結果を出力する。
差分の大きさを血小板機能の効果とする(S304)。すなわち、差分が大きい程、血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料において、血小板機能(凝集能)が高いと判断する。
【0048】
4.血小板凝集能解析システム
本技術の血小板凝集能解析システムの概略を図4に示す。
血小板凝集能解析システム40は、前記血小板凝集能解析装置41と血小板凝集能の解析結果を表示する表示装置42とを備える。
血小板凝集能解析装置41には前記血小板凝集能解析用プログラムを搭載したコンピュータを組み込むことができる。
表示装置42には、コンピュータに備え付けられたディスプレイ、プリントアウト装置等を用いることができる。
【0049】
血小板凝集能解析装置41は、血小板含有試料の血小板凝集能だけでなく、他の血液凝固系測定項目も解析できるようにしてもよく、血液凝固系解析装置を兼ねてもよい。
血小板凝集能解析装置41を誘電率による血液凝固系解析装置として使用する場合、測定項目として、血液の凝固(凝血)、フィブリン形成、フィブリン塊形成、血餅形成、赤血球の連銭形成、血液の凝集、赤血球の沈降(赤沈)、血餅収縮(退縮)、溶血、フィブリノリジス等が挙げられる。これらの項目の解析の際には、前記血小板凝集能解析用プログラムに代えて、これらの項目解析用プログラムを用いる。
【0050】
表示装置42は、警告部を含んでもよい。警告部は、各血液の状態変化における正常値の範囲を予め設定しておき、試料の分析結果が正常値の範囲外であったときに警告を発する。警告の方法は特に限定されず、例えば、ディスプレイ表示や音声により警告することができる。
【実施例】
【0051】
5.実施例
(1)方法
健常者の静脈血採血は、クエン酸を抗凝固剤として内包した市販の真空採血管を用いて通常の方法で行った。最初の1本目は使用せずに廃棄し、以降に採取した血液を以下の実験に用いた。また、採血後、約30分室温静置した後に使用した。
誘電率測定には、特許第5691168号明細書、特許第5768422号明細書に記載の血液凝固系解析装置(以下、「誘電コアグロメーターβ号機」という)を用いた。また、インピーダンス凝集測定には、血小板機能分析装置Multiplateを用いた。
【0052】
まず、血小板惹起物質とカルシウム水溶液(0.215M Ca)入りの前記誘電コアグロメーター専用カートリッジに全血200ul加えて5分間37℃で撹拌した。また、対照として血小板惹起物質の代わりに生理食塩水を加えた系も作製し、同様に撹拌した。
ここで、血小板惹起物質として、アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸(AA)、コラーゲンを使用した。
検体数はN=3とした。
【0053】
これらの検体血液について、誘電コアグロメーターβ号機を用いた誘電率による血液凝固能測定を行った。また、血小板機能分析装置Multiplateにてインピーダンス凝集測定を行い、ADPtest、ASPItest、COLtestを実施した。測定温度は共に37℃で行った。
以上の方法で、再現性を確認するため、上記とは別の健常者による同様の実験も複数回行った。
【0054】
(2)結果
従来技術の血小板凝集能分析装置であるMultiplateの測定結果を図5−1に示す。
10MHzにおける誘電率による誘電コアグロメーターβ号機の測定結果を図5−2に示す。
誘電コアグロメーターβ号機での想定結果の時間変化を、生理食塩水添加後(対照)と血小板惹起物質添加後で比較すると、血小板惹起物質を添加した場合に振幅に変化が生じることが分かった。
この結果は、Multiplateの測定結果の変化に相関しているため、誘電コアグロメーターβ号機においても血小板の凝集反応を測定できることが示された。
【0055】
(3)解析例1
前記図5−2の誘電率による測定結果をもとに、解析方法の例を示す。
誘電率の測定波形が十分に安定する20分を検討時間とした(図6−1)。その時間の規格値(最小値規格)から1を引いた値を100倍(値が小さくならないための補正)とし、この値をCFと規定した(図6−2)。
なお、検討時間は20分に限定されず、凝固時間CTが決まる以降で誘電率変化が安定していれば15分や10分に短縮できる。しかし、CTが延長している検体は、それに伴い、検討時間の規定も変更する必要があると考えられた。従って、検討時間が20分以降になる場合もあり得る。
また、当該検討時間を固定せずCTに対して相対的に(動的に)決めることも可能であり、例えば、CT+X分や、CT×Y分、あるいはCTを含むより複雑な関数とすることができる。
【0056】
また、図6−2に示すように、生理食塩水(NaCl、対照)のCFを基準とすると、血小板惹起物質添加によるCFの減少が、血小板機能、特に凝集能によって反映される部分であり(血小板寄与部)、血小板凝集機能が低下している場合や血小板機能阻害薬を服用している場合は、基準値に近づくことが想定された。
例えば、ADP経路阻害薬であるクロピドグレル服用患者では、ADPを添加しても基準値からの差が小さくなる。
【0057】
更に、CF値はMultiplateから得られるパラメータである血中濃度−時間曲線下面積(AUC(U))、凝集単位(Aggregation(AU))と高い相関があることを確認した(図7−1、図7−2)。加えて、検討時間を変えた場合(t=5min,10min,15min,20min)の相関係数の変移を以下の表1及び表2に示す。表1及び表2から、検討時間がCT決定よりも早いと(t=5min)相関が悪くなり、血小板寄与部が捉えにくくなることが分かる。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
(4)解析例2
前記図5−2の誘電率による測定結果をもとに、別の解析方法の例を示す。
誘電率による血液凝固能測定の固有パラメータである誘電クロット強度(Dielectric clot strength、以下「DCS」という。)について検討した。
DCSは、特定の周波数で測定した経時的測定データのピークからの減少幅をもとに算定することができるパラメータである。
具体的には、例えば周波数10MHzに於ける誘電率の変化が極小値付近になる時間をクロット時間(以下、「CT」という。)と規定したときに、DCSは、CT時刻の誘電率に対して、凝固が終了したとき(終了点)の誘電率差から算出する。終了点の設定を変えることで、様々なDCSパラメータを算出することができる。ここでは、終了点を、10MHzのCT決定後の誘電率変化の傾きの最大勾配10%の点とした。
【0061】
図8に、塩化カルシウム及び血小板惹起物質を添加した検体のDCSと、塩化カルシウム及び塩化ナトリウム(生理食塩水)を添加した対照のDCSのグラフを示す。
図8のグラフは、図6−2のグラフと同様の変化が見られるので、DCSを算出することでも血小板機能、特に凝集能によって反映される情報(血小板寄与部)を得られることが分かった。
また、DCSはMultiplateから得られるパラメータであるAUC(U)、Aggregation(AU)と高い相関があることを確認した(図9−1、図9−2)。
前述したように、DCSは、特定の周波数(例えば1MHz)で測定した経時的測定データのピークからの減少幅をもとに算定することができるパラメータであるが、10MHzにおける誘電率の変化の幅等を用いても算出しても良い。
【0062】
6.まとめ
本技術は、血栓症を視野に入れた臨床検査として、より優れた試料である全血で、血小板凝集能の測定及び解析を行うことができる。
また、従来、血小板凝集能と血液凝固能を測定するときは、それぞれに用いられる測定技術が異なるため、別個の測定装置が必要であったところ、本技術によれば、血小板凝集能測定と凝固因子に関する測定とを同一の装置で行うことができる。
例えば、本技術の装置に同時測定が可能な複数の測定部を設置すれば、対照のナトリウム塩添加試料、並びにナトリウム塩及び血小板惹起物質添加試料を測定して血小板凝集能を検査し、同時に、外・内因系凝固促進剤添加試料を測定して血液凝固能を検査することができる。このような装置によれば、血小板凝集能と血液凝固能との相互関係を調べることが可能になる。
【0063】
更に、本技術は、患者への抗血小板凝集薬及び/又は抗凝固薬の投与のモニタリングや、手術中の患者の血液状態の監視等に有用である。
例えば、血小板惹起物質で血小板のみを活性化すると対照(生理食塩水)と比較して前記DCSが低値になる。これは、血小板寄与による変化で、DCSが血小板惹起物質添加によって低くなればなるほど血小板機能が高いことを示す。また、血小板惹起物質添加にも関わらずDCSが対照と同等か近い高さ(高値)になる場合、血小板機能が低下している若しくは抗血小板薬を服薬している可能性がある、と推測できる。
【0064】
なお、本技術は、以下の構成をとることもできる;
[1]血小板含有試料に血小板惹起物質及びカルシウム塩を添加する工程、
前記血小板含有試料を撹拌する工程、及び
前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データを取得する工程
を含む、血小板凝集能解析方法。
[2]前記電気的特性の測定データは血小板含有試料の誘電率である、[1]に記載の血小板凝集能解析方法。
[3]前記粘弾性の測定データは血小板含有試料のレオメーターによる測定データである、[1]に記載の血小板凝集能解析方法。
[4]前記血小板含有試料の電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質を添加しない血小板含有試料から取得した電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血小板凝集能を解析する工程を含む、[1]又は[2]に記載の血小板凝集能解析方法。
[5]前記血小板含有試料は血液又は血漿である、[1]〜[4]のいずれかに記載の血小板凝集能解析方法。
[6]前記血液又は血漿は、抗血小板凝集薬及び/又は抗凝固薬を投与された被験者から採取されたものである、[5]に記載の血小板凝集能解析方法。
[7]血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を供給する薬剤供給部と、
前記血小板含有試料を撹拌する撹拌機構と、
前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部と
を含む、血小板凝集能解析装置。
[8]血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血小板凝集能を解析することをコンピュータに実行させる、血小板凝集能解析用プログラム。
[9]前記解析は、血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとを比較することを含む、[8]に記載の血小板凝集能解析用プログラム。
[10]血小板含有試料を保持する生体試料保持部と、
前記血小板含有試料に血小板惹起物質及び/又はカルシウム塩を供給する薬剤供給部と、前記血小板含有試料を撹拌する撹拌機構と、
前記血小板含有試料の電気的特性を測定する測定部と
を含み、
前記血小板惹起物質及びカルシウム塩が添加された血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データと、前記血小板惹起物質が添加されていない血小板含有試料から取得された電気的特性及び/又は粘弾性の測定データとに基づいて血小板凝集能を解析することをコンピュータに実行させる、血小板凝集能解析用プログラムを搭載したコンピュータ
が組み込まれた血小板凝集能解析装置、及び
前記解析の結果を表示する表示装置
を備える、血小板凝集能解析システム。
【符号の説明】
【0065】
1 生体試料保持部
2 生体試料供給部
3 薬剤供給部
4 温度制御部
5 時間制御部
6 撹拌機構
7 駆動機構
8 測定部
9 測定条件制御部
10 精度管理部
11 解析部
40 血小板凝集能解析システム
41 血小板凝集能解析装置
42 表示装置
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】