(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本開示を説明するが、本開示は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本開示の複合建材パネル及びその製造方法並びに分散系及び塗布装置、全般に関する説明
2.実施例1(本開示の複合建材パネル及びその製造方法並びに塗布装置及び分散系)
3.実施例2(実施例1の変形)
4.その他
【0015】
〈本開示の複合建材パネル及びその製造方法並びに分散系及び塗布装置、全般に関する説明〉
本開示の複合建材パネル及びその製造方法において、パネルは、タイル(具体的には、例えば、素焼きタイル)から成る形態とすることができるが、これに限定するものではなく、その他、化粧石膏ボードを含む石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、スラグ石膏板、木毛セメント板、パルプセメント板、木片セメント板、抄造石膏板、モルタル板、ロックウール板、ガラス繊維やカーボン繊維入りボード、木質系壁材、合板、木質繊維板、化粧パルプセメント板、ガラス繊維やカーボン繊維入りボード、石綿セメント板、石綿スレートパネル、セラミックス板や陶板といった窯業材料から構成された板といった各種建設資材を例示することができる。あるいは又、コンクリート・ブロック、ALC板、レンガ造、中空押出し成形陶板を例示することもできる。尚、本開示の分散系を塗布すべき下地あるいは基材として、これらのパネルや建設資材以外にも、コンクリート製外壁やコンクリート造壁といったコンクリート面、漆喰壁(面)、あるいは、天井スラブや床スラブを例示することができる。
【0016】
上記の好ましい形態を含む本開示の複合建材パネル及びその製造方法にあっては、粒状の多孔質炭素材料によって多孔質炭素材料層が形成されており、多孔質炭素材料層を被覆する被覆層を更に備えている形態とすることができる。ここで、被覆層として、通気性を有する織布、不織布、紙、多孔質材料(無垢材、漆喰、珪藻土等)を例示することができる。多孔質炭素材料層を被覆層によって被覆するためには、通気性を確保しつつ、接着剤や釘、木ネジ等を用いて被覆層を多孔質炭素材料層に固定する方法、多孔質材料を吹き付ける方法を採用すればよい。多孔質炭素材料層は、粒状の多孔質炭素材料の1層から構成されていてもよいし、粒状の多孔質炭素材料の複数層から構成されていてもよいし、粒状の多孔質炭素材料が重なり合った状態から構成されていてもよいし、海・島状(パネルの表面を「海」とみなした場合、多孔質炭素材料が「島」に相当する)となっていてもよい。
【0017】
本開示の複合建材パネル及びその製造方法並びに分散系及び塗布装置(以下、これらを総称して、単に、『本開示』と呼ぶ場合がある)にあっては、バインダー組成物、具体的には、有機系のバインダー組成物として、アクリル樹脂系エマルジョン型接着剤、スチレン系エマルジョン型接着剤、メタクリル酸メチル系エマルジョン型接着剤を例示することができるし、バインダーとして、アクリル樹脂系接着剤、スチレン系エマルジョン型接着剤、メタクリル酸メチル系接着剤を例示することができる。そして、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本開示の複合建材パネルにおいて、バインダーは、分散系における分散媒の除去によって得られ、分散媒は水及びアルコールから成る形態とすることができる。あるいは又、微粒子系のバインダー組成物として、シリカ微粒子やMMA微粒子、スチレン微粒子、アルミナ系微粒子を含む組成物を例示することができるし、バインダーとして、シリカ微粒子やMMA微粒子、スチレン微粒子、アルミナ系微粒子を例示することができる。尚、バインダー組成物を構成するバインダーが多孔質炭素材料の細孔中に侵入し、細孔を閉塞しないようなバインダーやバインダー組成物を選択することが好ましい。
【0018】
本開示の分散系における分散媒を構成するアルコールとして、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコールを挙げることができる。分散系に抗菌金属や有機系の抗菌防カビ剤を添加することで、抗菌性、防カビ性を付与することもできる。
【0019】
本開示の塗布装置における分散系を収納する容器、及び、分散系をスプレーするスプレーガンは、周知の容器、及び、周知のスプレーガンとすることができる。尚、スプレーガンは、圧縮空気が充填されたボンベやエアーコンプレッサーから成る圧縮空気源を備えており、操作レバーを有し、容器はスプレーガンに取り付けられている。そして、操作レバーを操作することで、圧縮空気源からの圧縮空気が、容器に収納された分散系を同搬し、気液混合状態でスプレーガンの先端部に設けられたノズル部からパネル上に噴射(噴霧)される。
【0020】
本開示の複合建材パネルの製造方法にあっては、分散系をパネル上に塗布する方法として、本開示の塗布装置を用いて分散系をスプレーする方法だけでなく、ローラーや刷毛等を用いた塗布法;浸漬法;キャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;マイクロコンタクトプリント法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種塗布法、コーティング法を例示することができる。分散系の乾燥は、分散系、具体的には、バインダー組成物や分散媒の乾燥に適した温度、時間とすればよい。
【0021】
本開示において、多孔質炭素材料は植物由来の材料を原料としている。ここで、植物由来の材料として、米(稲)、大麦、小麦、ライ麦、稗(ヒエ)、粟(アワ)等の籾殻や藁、珈琲豆、茶葉(例えば、緑茶や紅茶等の葉)、サトウキビ類(より具体的には、サトウキビ類の絞り滓)、トウモロコシ類(より具体的には、トウモロコシ類の芯)、果実の皮(例えば、オレンジの皮、グレープフルーツの皮、ミカンの皮といった柑橘類の皮やバナナの皮等)、あるいは又、葦、茎ワカメを挙げることができるが、これらに限定するものではなく、その他、例えば、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類、海藻を挙げることができる。尚、これらの材料を、原料として、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、植物由来の材料の形状や形態も特に限定はなく、例えば、籾殻や藁そのものでもよいし、あるいは乾燥処理品でもよい。更には、ビールや洋酒等の飲食品加工において、発酵処理、焙煎処理、抽出処理等の種々の処理を施されたものを使用することもできる。特に、産業廃棄物の資源化を図るという観点から、脱穀等の加工後の藁や籾殻を使用することが好ましい。これらの加工後の藁や籾殻は、例えば、農業協同組合や酒類製造会社、食品会社、食品加工会社から、大量、且つ、容易に入手することができる。
【0022】
本開示において、多孔質炭素材料の原料を、ケイ素(Si)を含有する植物由来の材料とする場合、具体的には、限定するものではないが、多孔質炭素材料は、ケイ素(Si)の含有率が5質量%以上である植物由来の材料を原料とし、ケイ素(Si)の含有率が、5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であることが望ましい。
【0023】
本開示において、多孔質炭素材料は、例えば、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸処理又はアルカリ処理を行うことによって得ることができる。このような本開示における多孔質炭素材料の製造方法(以下、単に、『多孔質炭素材料の製造方法』と呼ぶ場合がある)において、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化することにより得られた材料であって、酸処理又はアルカリ処理を行う前の材料を、『多孔質炭素材料前駆体』あるいは『炭素質物質』と呼ぶ。
【0024】
多孔質炭素材料の製造方法において、酸処理又はアルカリ処理の後、賦活処理を施す工程を含めることができるし、賦活処理を施した後、酸処理又はアルカリ処理を行ってもよい。また、このような好ましい形態を含む多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料を炭素化する前に、炭素化のための温度よりも低い温度(例えば、400゜C〜700゜C)にて、酸素を遮断した状態で植物由来の材料に加熱処理(予備炭素化処理)を施してもよい。これによって、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を抽出することが出来る結果、炭素化の過程において生成するであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。尚、酸素を遮断した状態は、例えば、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気とすることで、あるいは又、真空雰囲気とすることで、あるいは又、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とすることで達成することができる。また、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、使用する植物由来の材料にも依るが、植物由来の材料中に含まれるミネラル成分や水分を減少させるために、また、炭素化の過程での異臭の発生を防止するために、植物由来の材料をアルコール(例えば、メチルアルコールやエチルアルコール、イソプロピルアルコール)に浸漬してもよい。尚、多孔質炭素材料の製造方法にあっては、その後、予備炭素化処理を実行してもよい。不活性ガス中で加熱処理を施すことが好ましい材料として、例えば、木酢液(タールや軽質油分)を多く発生する植物を挙げることができる。また、アルコールによる前処理を施すことが好ましい材料として、例えば、ヨウ素や各種ミネラルを多く含む海藻類を挙げることができる。
【0025】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化するが、ここで、炭素化とは、一般に、有機物質(本開示における多孔質炭素材料にあっては、植物由来の材料)を熱処理して炭素質物質に変換することを意味する(例えば、JIS M0104−1984参照)。尚、炭素化のための雰囲気として、酸素を遮断した雰囲気を挙げることができ、具体的には、真空雰囲気、窒素ガスやアルゴンガスといった不活性ガス雰囲気、植物由来の材料を一種の蒸し焼き状態とする雰囲気を挙げることができる。炭素化温度に至るまでの昇温速度として、限定するものではないが、係る雰囲気下、1゜C/分以上、好ましくは3゜C/分以上、より好ましくは5゜C/分以上を挙げることができる。また、炭素化時間の上限として、10時間、好ましくは7時間、より好ましくは5時間を挙げることができるが、これに限定するものではない。炭素化時間の下限は、植物由来の材料が確実に炭素化される時間とすればよい。また、植物由来の材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。植物由来の材料を予め洗浄してもよい。あるいは又、得られた多孔質炭素材料前駆体や多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。あるいは又、賦活処理後の多孔質炭素材料を、所望に応じて粉砕して所望の粒度としてもよいし、分級してもよい。更には、最終的に得られた多孔質炭素材料に殺菌処理を施してもよい。炭素化のために使用する炉の形式、構成、構造に制限はなく、連続炉とすることもできるし、回分炉(バッチ炉)とすることもできる。粒状の多孔質炭素材料の平均的な大きさとして、多孔質炭素材料の形状を球状と想定したとき、2×10
-4m乃至1×10
-7m、好ましくは2×10
-5m乃至4×10
-6mを例示することができる。粉砕は、例えばジェットミルやビーズミル、ボールミルを用いて行うことができる。
【0026】
多孔質炭素材料の製造方法において、上述したとおり、賦活処理を施せば、孔径が2nmよりも小さいマイクロ細孔を増加させることができる。賦活処理の方法として、ガス賦活法、薬品賦活法を挙げることができる。ここで、ガス賦活法とは、賦活剤として酸素や水蒸気、炭酸ガス、空気等を用い、係るガス雰囲気下、700゜C乃至1400゜Cにて、好ましくは700゜C乃至1000゜Cにて、より好ましくは800゜C乃至1000゜Cにて、数十分から数時間、多孔質炭素材料を加熱することにより、多孔質炭素材料中の揮発成分や炭素分子により微細構造を発達させる方法である。尚、より具体的には、加熱温度は、植物由来の材料の種類、ガスの種類や濃度等に基づき、適宜、選択すればよいが、一層好ましくは800゜C以上950゜C以下である。薬品賦活法とは、ガス賦活法で用いられる酸素や水蒸気の替わりに、塩化亜鉛、塩化鉄、リン酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸等を用いて賦活させ、塩酸で洗浄、アルカリ性水溶液でpHを調整し、乾燥させる方法である。
【0027】
本開示における多孔質炭素材料の表面に対して、化学処理又は分子修飾を行ってもよい。化学処理として、例えば、硝酸処理により表面にカルボキシ基を生成させる処理を挙げることができる。また、水蒸気、酸素、アルカリ等による賦活処理と同様の処理を行うことにより、多孔質炭素材料の表面に水酸基、カルボキシ基、ケトン基、エステル基等、種々の官能基を生成させることもできる。更には、多孔質炭素材料と反応可能な水酸基、カルボキシ基、アミノ基等を有する化学種又は蛋白質とを化学反応させることでも、分子修飾が可能である。
【0028】
多孔質炭素材料の製造方法にあっては、酸処理又はアルカリ処理によって、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去する。ここで、ケイ素成分として、二酸化ケイ素や酸化ケイ素、酸化ケイ素塩といったケイ素酸化物を挙げることができる。このように、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去することで、高い比表面積を有する多孔質炭素材料を得ることができる。場合によっては、ドライエッチング法に基づき、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去してもよい。
【0029】
本開示における多孔質炭素材料には、マグネシウム(Mg)、カリウム(K)、カルシウム(Ca)や、リン(P)、硫黄(S)等の非金属元素や、遷移元素等の金属元素が含まれていてもよい。マグネシウム(Mg)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下、カリウム(K)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下、カルシウム(Ca)の含有率として0.05質量%以上3質量%以下、リン(P)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下、硫黄(S)の含有率として0.01質量%以上3質量%以下を挙げることができる。尚、これらの元素の含有率は、比表面積の値の増加といった観点からは、少ない方が好ましい。多孔質炭素材料には、上記した元素以外の元素を含んでいてもよく、上記した各種元素の含有率の範囲も、変更し得ることは云うまでもない。本開示における多孔質炭素材料にあっては、各種元素の分析を、例えば、エネルギー分散型X線分析装置(例えば、日本電子株式会社製のJED−2200F)を用い、エネルギー分散法(EDS)により行うことができる。ここで、測定条件を、例えば、走査電圧15kV、照射電流10μAとすればよい。
【0030】
本開示における多孔質炭素材料は、細孔(ポア)を多く有している。細孔として、孔径が2nm乃至50nmの『メソ細孔』、孔径が50nmを超える『マクロ細孔』、及び、孔径が2nmよりも小さい『マイクロ細孔』が含まれる。具体的には、メソ細孔として、例えば、20nm以下の孔径の細孔を多く含み、特に、10nm以下の孔径の細孔を多く含んでいる。また、マイクロ細孔として、例えば、孔径が1.9nm程度の細孔と、1.5nm程度の細孔と、0.8nm〜1nm程度の細孔とを多く含んでいる。本開示における多孔質炭素材料にあっては、BJH法による細孔の容積は、0.1cm
3/グラム以上、好ましくは0.2cm
3/グラム以上、より好ましくは0.3cm
3/グラム以上、一層好ましくは0.5cm
3/グラム以上であることが望ましい。MP法による細孔の容積も、0.1cm
3/グラム以上、好ましくは0.2cm
3/グラム以上、より好ましくは0.3cm
3/グラム以上、一層好ましくは0.5cm
3/グラム以上であることが望ましい。
【0031】
本開示における多孔質炭素材料において、窒素BET法による比表面積の値(以下、単に、『比表面積の値』と呼ぶ場合がある)は、より一層優れた機能性を得るために、好ましくは50m
2/グラム以上、より好ましくは100m
2/グラム以上、更に一層好ましくは400m
2/グラム以上であることが望ましい。
【0032】
窒素BET法とは、吸着剤(ここでは、多孔質炭素材料)に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより吸着等温線を測定し、測定したデータを式(1)で表されるBET式に基づき解析する方法であり、この方法に基づき比表面積や細孔容積等を算出することができる。具体的には、窒素BET法により比表面積の値を算出する場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、吸着等温線を求める。そして、得られた吸着等温線から、式(1)あるいは式(1)を変形した式(1’)に基づき[p/{V
a(p
0−p)}]を算出し、平衡相対圧(p/p
0)に対してプロットする。そして、このプロットを直線と見なし、最小二乗法に基づき、傾きs(=[(C−1)/(C・V
m)])及び切片i(=[1/(C・V
m)])を算出する。そして、求められた傾きs及び切片iから式(2−1)、式(2−2)に基づき、V
m及びCを算出する。更には、V
mから、式(3)に基づき比表面積a
sBETを算出する(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第66頁参照)。尚、この窒素BET法は、JIS R 1626−1996「ファインセラミックス粉体の気体吸着BET法による比表面積の測定方法」に準じた測定方法である。
【0033】
V
a=(V
m・C・p)/[(p
0−p){1+(C−1)(p/p
0)}] (1)
[p/{V
a(p
0−p)}]
=[(C−1)/(C・V
m)](p/p
0)+[1/(C・V
m)] (1’)
V
m=1/(s+i) (2−1)
C =(s/i)+1 (2−2)
a
sBET=(V
m・L・σ)/22414 (3)
【0034】
但し、
V
a:吸着量
V
m:単分子層の吸着量
p :窒素の平衡時の圧力
p
0:窒素の飽和蒸気圧
L :アボガドロ数
σ :窒素の吸着断面積
である。
【0035】
窒素BET法により細孔容積V
pを算出する場合、例えば、求められた吸着等温線の吸着データを直線補間し、細孔容積算出相対圧で設定した相対圧での吸着量Vを求める。この吸着量Vから式(4)に基づき細孔容積V
pを算出することができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第62頁〜第65頁参照)。尚、窒素BET法に基づく細孔容積を、以下、単に『細孔容積』と呼ぶ場合がある。
【0036】
V
p=(V/22414)×(M
g/ρ
g) (4)
【0037】
但し、
V :相対圧での吸着量
M
g:窒素の分子量
ρ
g:窒素の密度
である。
【0038】
メソ細孔の孔径は、例えば、BJH法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。BJH法は、細孔分布解析法として広く用いられている方法である。BJH法に基づき細孔分布解析をする場合、先ず、多孔質炭素材料に吸着分子として窒素を吸脱着させることにより、脱着等温線を求める。そして、求められた脱着等温線に基づき、細孔が吸着分子(例えば窒素)によって満たされた状態から吸着分子が段階的に着脱する際の吸着層の厚さ、及び、その際に生じた孔の内径(コア半径の2倍)を求め、式(5)に基づき細孔半径r
pを算出し、式(6)に基づき細孔容積を算出する。そして、細孔半径及び細孔容積から細孔径(2r
p)に対する細孔容積変化率(dV
p/dr
p)をプロットすることにより細孔分布曲線が得られる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第85頁〜第88頁参照)。
【0039】
r
p=t+r
k (5)
V
pn=R
n・dV
n−R
n・dt
n・c・ΣA
pj (6)
但し、
R
n=r
pn2/(r
kn−1+dt
n)
2 (7)
【0040】
ここで、
r
p:細孔半径
r
k:細孔半径r
pの細孔の内壁にその圧力において厚さtの吸着層が吸着した場合のコア半径(内径/2)
V
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔容積
dV
n:そのときの変化量
dt
n:窒素の第n回目の着脱が生じたときの吸着層の厚さt
nの変化量
r
kn:その時のコア半径
c:固定値
r
pn:窒素の第n回目の着脱が生じたときの細孔半径
である。また、ΣA
pjは、j=1からj=n−1までの細孔の壁面の面積の積算値を表す。
【0041】
マイクロ細孔の孔径は、例えば、MP法に基づき、その孔径に対する細孔容積変化率から細孔の分布として算出することができる。MP法により細孔分布解析を行う場合、先ず、多孔質炭素材料に窒素を吸着させることにより、吸着等温線を求める。そして、この吸着等温線を吸着層の厚さtに対する細孔容積に変換する(tプロットする)。そして、このプロットの曲率(吸着層の厚さtの変化量に対する細孔容積の変化量)に基づき細孔分布曲線を得ることができる(日本ベル株式会社製BELSORP−mini及びBELSORP解析ソフトウェアのマニュアル、第72頁〜第73頁、第82頁参照)。
【0042】
あるいは又、多孔質炭素材料は、水銀圧入法による細孔分布において1×10
-7m乃至5×10
-6mの範囲にピークを有し、且つ、BJH法による細孔分布において2nm乃至20nmの範囲にピークを有する構成とすることができる。そして、この場合、更には、水銀圧入法による細孔分布において2×10
-7m乃至2×10
-6mの範囲にピークを有し、且つ、BJH法による細孔分布において2nm乃至10nmの範囲にピークを有する構成とすることが好ましい。
【0043】
あるいは又、本開示における多孔質炭素材料は、非局在化密度汎関数法(NLDFT法,Non Localized Density Functional Theory 法)によって求められた直径1×10
-9m乃至5×10
-7mの細孔の容積の合計(便宜上、『容積A』と呼ぶ)が0.1cm
3/グラム以上である多孔質炭素材料から成る形態とすることもできる。尚、JIS Z8831−2:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第2部:ガス吸着によるメソ細孔及びマクロ細孔の測定方法」、及び、JIS Z8831−3:2010 「粉体(固体)の細孔径分布及び細孔特性−第3部:ガス吸着によるミクロ細孔の測定方法」に規定された非局在化密度汎関数法(NLDFT法)にあっては、解析ソフトウェアとして、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」に付属するソフトウェアを用いる。前提条件としてモデルをシリンダ形状としてカーボンブラック(CB)を仮定し、細孔分布パラメータの分布関数を「no−assumption」とし、得られた分布データにはスムージングを10回施す。
【0044】
多孔質炭素材料前駆体を酸処理又はアルカリ処理するが、具体的な処理方法として、例えば、酸あるいはアルカリの水溶液に多孔質炭素材料前駆体を浸漬する方法や、多孔質炭素材料前駆体と酸又はアルカリとを気相で反応させる方法を挙げることができる。より具体的には、酸処理の場合、酸として、例えば、フッ化水素、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化ナトリウム等の酸性を示すフッ素化合物を挙げることができる。フッ素化合物を用いる場合、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分におけるケイ素元素に対してフッ素元素が4倍量となればよく、フッ素化合物水溶液の濃度は10質量%以上であることが好ましい。フッ化水素酸によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、二酸化ケイ素は、化学式(A)又は化学式(B)に示すようにフッ化水素酸と反応し、ヘキサフルオロケイ酸(H
2SiF
6)あるいは四フッ化ケイ素(SiF
4)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0045】
SiO
2+6HF → H
2SiF
6+2H
2O (A)
SiO
2+4HF → SiF
4+2H
2O (B)
【0046】
また、アルカリ(塩基)によって処理するアルカリ処理の場合、アルカリとして、例えば、水酸化ナトリウムを挙げることができる。アルカリの水溶液を用いる場合、水溶液のpHは11以上であればよい。水酸化ナトリウム水溶液によって、多孔質炭素材料前駆体に含まれるケイ素成分(例えば、二酸化ケイ素)を除去する場合、水酸化ナトリウム水溶液を熱することにより、二酸化ケイ素は、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na
2SiO
3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。また、水酸化ナトリウムを気相で反応させて処理する場合、水酸化ナトリウムの固体を熱することにより、化学式(C)に示すように反応し、ケイ酸ナトリウム(Na
2SiO
3)として除去され、多孔質炭素材料を得ることができる。そして、その後、洗浄、乾燥を行えばよい。
【0047】
SiO
2+2NaOH → Na
2SiO
3+H
2O (C)
【0048】
あるいは又、本開示における多孔質炭素材料として、例えば、特開2010−106007に開示された空孔が3次元的規則性を有する多孔質炭素材料(所謂、逆オパール構造を有する多孔質炭素材料)、具体的には、1×10
-9m乃至1×10
-5mの平均直径を有する3次元的に配列された球状の空孔を備え、表面積が3×10
2m
2/グラム以上の多孔質炭素材料、好ましくは、巨視的に、結晶構造に相当する配置状態にて空孔が配列されており、あるいは又、巨視的に、面心立方構造における(111)面配向に相当する配置状態にて、その表面に空孔が配列されている多孔質炭素材料を用いることもできる。
【0049】
本開示の複合建材パネルにあっては、パネル上に固着された粒状の多孔質炭素材料によって、例えば、空気中に存在する物質を吸着することができる。ここで、吸着対象物(空気中に存在する物質)として、総揮発性有機化合物(TVOC)、具体的には、プロパン、ブタン、塩化メチルといった高揮発性有機化合物(VVOC);ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、d−リモネン、トルエン、アセトン、キシレン、エタノール、2−プロパン、ヘキサノール、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカン、クロルピリホス、フェノルカルプ、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、ダイアジノンといった揮発性有機化合物(VOC);殺虫剤(DDT,クロルデン)、可塑剤(フタル酸化合物)、難燃剤といった準揮発性有機化合物(SVOC)を挙げることができるし、あるいは又、水蒸気、水蒸気に同搬されたニオイ成分を挙げることができる。また、浮遊粒子状物質、微粒子状物質、超微粒子、ディーゼル排気微粒子、吸入性粒子、吸入性粉塵、降下煤塵、大気エアロゾル粒子(浮遊粉塵)等を挙げることもできる。
【0050】
本開示における多孔質炭素材料に機能性材料を付着させてもよい。具体的には、酸処理又はアルカリ処理を行った後(その後、賦活処理を施す場合には、賦活処理を施した後)、多孔質炭素材料に機能性材料を付着させればよい。機能性材料として、例えば、上記の空気中に存在する物質をより一層効果的に吸着するための薬剤(具体的には、例えば、エチレン尿素、リン酸、硝酸銅)を挙げることができるし、あるいは又、機能性材料は光触媒特性を示す形態とすることができる。後者の場合、機能性材料を、例えば、酸化チタン(TiO
2)や酸化亜鉛(ZnO)から構成することができる。尚、エチレン尿素を用いることで、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドを効果的に除去することができるし、リン酸を用いることで、アンモニアを効果的に除去することができるし、硝酸銅を用いることで、アンモニア、硫化水素等を効果的に脱臭することができる。そして、これによって、多孔質炭素材料には触媒特性が付与され、光触媒効果により、半永久的に使用可能な有害物質分解剤、有害物質除去剤としての応用が可能である。有害物質の分解、除去にあっては、多孔質炭素材料にエネルギー線や電磁波(例えば、紫外線や太陽光、可視光等)を照射すればよい。有害物質として空気中に存在する有害物質を挙げることができ、具体的には、各種のウィルス、アレルギー発生原因物質、タバコの煙に含まれる発癌性物質(例えば、ベンゾピレン)を例示することができる。
【0051】
機能性材料の種類や構成、構造、形態にも依存するが、機能性材料の多孔質炭素材料への付着の形態として、多孔質炭素材料の表面(細孔内を含む)に、微粒子として付着している状態、薄膜状に付着している状態、海・島状(多孔質炭素材料の表面を「海」とみなした場合、機能性材料が「島」に相当する)に付着している状態を挙げることができる。尚、付着とは、異種の材料間の接着現象を指す。多孔質炭素材料に機能性材料を付着させる方法として、機能性材料を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、多孔質炭素材料の表面に無電解メッキ法(化学メッキ法)又は化学還元反応にて機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、熱処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、超音波処理を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法、機能性材料の前駆体を含む溶液に多孔質炭素材料を浸漬して、ゾル・ゲル反応を行うことによって多孔質炭素材料の表面に機能性材料を析出させる方法を挙げることができる。
【実施例1】
【0052】
実施例1は、本開示の複合建材パネル及びその製造方法並びに分散系及び塗布装置に関する。
【0053】
実施例1の分散系は、
(a)植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m
2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上、及び、MP法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上であり、分散質を構成する、粒状の多孔質炭素材料(分散質)、
(b)バインダーを含むバインダー組成物、並びに、
(c)水及びアルコールから成る分散媒、
から構成されている。
【0054】
また、実施例1の塗布装置は、
(イ)分散系、
(ロ)分散系を収納する容器(タンク)、及び、
(ハ)分散系をスプレーするスプレーガン、
を備えた塗布装置である。そして、分散系は、実施例1の分散系から構成されている。
【0055】
模式的な一部断面図を
図1に示すように、実施例1の複合建材パネル(複合内外装材)10は、
(A)植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m
2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上、及び、MP法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上である、粒状の多孔質炭素材料20、
(B)パネル(内外装材)40、並びに、
(C)粒状の多孔質炭素材料20をパネル40上に固着させるバインダー30、
から成る。
【0056】
ここで、パネル(内外装材)40は、タイル、具体的には、素焼きタイルから成る。素焼きタイルは、以下の方法で製造した。即ち、例えば、粘土類を粉砕・混合してタイル原料を調製し、調製したタイル原料と骨材(砂、石粉等)と水とを混練し、2日間寝かした後の原材料を、真空状態にした押出成形機で成形する。そして、更に、乾燥室で乾燥させ、その後、1000゜C以下において焼成することで製造した。パネル40の表面を平滑に図示しているが、実際には、多孔質炭素材料が埋め込まれない程度の凹凸がパネル40の表面には存在する。また、バインダー組成物、具体的には、有機系のバインダー組成物はアクリル樹脂系エマルジョン型接着剤(より具体的には、コニシ株式会社製のアクリル樹脂系エマルジョン型接着剤、CK11)から成り、バインダーはアクリル樹脂系接着剤から成る。ここで、バインダーは、分散系における分散媒の除去によって得られ、分散媒は水及びアルコールから成る。バインダー組成物を構成するバインダーが多孔質炭素材料の細孔中に侵入し、細孔を閉塞しないようなバインダーやバインダー組成物が選択されている。分散媒を構成するアルコールはエチルアルコールから成る。使用した分散系の組成は以下の表1のとおりである。この組成を、自転・公転ミキサーを用いて5分間、充分に攪拌して混合することで、分散系を得た。
【0057】
〈表1〉分散系の組成
粒径4μmの粒状の多孔質炭素材料: 0.72グラム
バインダー組成物 :27.1 グラム
水 :17.4 グラム
エチルアルコール :46.4 グラム
【0058】
そして、分散系をパネル(内外装材)40上に塗布した後、分散系を乾燥することで、粒状の多孔質炭素材料20をパネル40上にバインダー30によって固着させる。具体的には、圧縮空気が充填されたボンベから成る圧縮空気源を備え、操作レバーを有するスプレーガンを準備し、上記の分散系を容器(タンク)に入れ、容器をスプレーガン取り付けた。そして、操作レバーを操作することで、容器に収納された分散系を圧縮空気源からの圧縮空気と同搬させ、気液混合状態でスプレーガンの先端部に設けられたノズル部から噴射(噴霧)し、素焼きタイルから成るパネル40の表面に吹き付けた。こうして、素焼きタイルから成るパネル40の表面に分散系の層が形成された。次いで、80゜Cの乾燥機中で1時間の乾燥を行い、実施例1の複合建材パネル(複合内外装材)10を得た。
【0059】
尚、多孔質炭素材料層21は、図示したように、粒状の多孔質炭素材料20の1層から構成されていてもよいし、粒状の多孔質炭素材料20の複数層から構成されていてもよいし、粒状の多孔質炭素材料20が重なり合った状態から構成されていてもよいし、海・島状となっていてもよい。
【0060】
実施例1においては、以下に説明する植物由来の多孔質炭素材料を使用した。即ち、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を米(稲)の籾殻とした。そして、多孔質炭素材料は、原料としての籾殻を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、アルカリ処理を施すことで得られる。
【0061】
多孔質炭素材料の製造においては、植物由来の材料を400゜C乃至1400゜Cにて炭素化した後、酸処理又はアルカリ処理することによって、多孔質炭素材料を得た。即ち、先ず、籾殻に対して、800゜Cにて窒素ガス雰囲気下で炭素化する(焼成する)ことで、多孔質炭素材料前駆体を得た。次いで、得られた多孔質炭素材料前駆体を20質量%の水酸化ナトリウム水溶液に80゜Cで一晩浸漬することでアルカリ処理を行い、炭素化後の植物由来の材料中のケイ素成分を除去した後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄し、乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得た。その後、多孔質炭素材料を、窒素ガス雰囲気下にて900゜Cまで昇温し、水蒸気による賦活処理を行った。次いで、こうして得られた多孔質炭素材料をジェットミルで4μmまで粉砕することによって、実施例1において用いる植物由来の多孔質炭素材料を得た。
【0062】
実施例1の植物由来の多孔質炭素材料の窒素BET法による比表面積の値(表2では「比表面積」で示し、単位はm
2/グラム)、窒素BET法による細孔容積の値(表2では「BET法容積」で示し、単位はcm
3/グラム)、MP法による細孔容積の値(表2では「MP法」で示し、単位はcm
3/グラム)、BJH法による細孔容積の値(表2では「BJH法」で示し、単位はcm
3/グラム)を、以下の表2に示し、また、MP法に基づく累計細孔容積の測定結果を示すグラフを
図2Aに示し、BJH法に基づく累計細孔容積の測定結果を示すグラフを
図2Bに示し、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく細孔容積の測定結果を示すグラフを
図3に示す。
【0063】
比表面積の値及び細孔容積を求めるための測定機器として、BELSORP−mini(日本ベル株式会社製)を用い、窒素吸脱着試験を行った。測定条件として、測定平衡相対圧(p/p
0)を0.15〜0.975とした。そして、BELSORP解析ソフトウェアに基づき、比表面積の値及び細孔容積を算出した。また、メソ細孔及びマイクロ細孔の細孔径分布は、上述した測定機器を用いた窒素吸脱着試験を行い、BELSORP解析ソフトウェアによりBJH法及びMP法に基づき算出した。更には、非局在化密度汎関数法(NLDFT法)に基づく測定にあっては、日本ベル株式会社製自動比表面積/細孔分布測定装置「BELSORP−MAX」を使用した。尚、測定に際しては、試料の前処理として、200゜Cで3時間の乾燥を行った。NLDFT法に基づく、直径1×10
-9m乃至5×10
-7mの細孔の容積の合計(容積A、全細孔の容積総計)に対する3nm乃至20nmの範囲内に細孔径を有する細孔の容積の合計の占める割合(容積割合)を表3に示す。
【0064】
〈表2〉
比表面積 BET法容積 MP法 BJH法
実施例1 1220 0.998 0.456 0.642
【0065】
〈表3〉
容積割合 全細孔の容積総計(容積A)
実施例1 0.5354 2.0168cm
3/グラム
【0066】
得られた実施例1の複合建材パネルは、タバコの煙に含まれる発癌性物質(例えば、ベンゾピレン)、空気中のアレルギー発生原因物質であるアレルゲンやウィルスを良く吸着することが判った。また、アセトン蒸気、トルエン蒸気、アンモニアガス、アセトアルデヒド蒸気を良く吸着することも判った。更には、水蒸気を良く吸収することも判った。
【0067】
即ち、実施例1の複合建材パネルにあっては、粒状の多孔質炭素材料がパネル上に固着させられており、粒状の多孔質炭素材料は大気に露出した状態にある。また、実施例1の複合建材パネルの製造方法、分散系、塗布装置にあっては、粒状の多孔質炭素材料を、大気に露出した状態で、パネル上に固着させることができる。それ故、実施例1の複合建材パネルは、粒状の多孔質炭素材料の有する諸特性(例えば、空気中の種々の物質を吸着するといった特性)を効果的に発揮させることができる。しかも、実施例1の複合建材パネルの製造方法、分散系、塗布装置において、分散媒は水及びアルコールから成る。粒状の多孔質炭素材料は疎水性を有するので、分散媒にアルコールを添加しないと分散系における粒状の多孔質炭素材料の分散状態が不十分になってしまうが、このような状態を回避することができる。また、分散媒に水を含ませないとバインダー組成物が粘稠になり過ぎる場合が生じ、分散系をパネル上に塗布することが困難になる虞があるが、このような状態も回避することができる。
【実施例2】
【0068】
実施例2は実施例1の変形である。実施例2にあっては、実施例1にて説明した多孔質炭素材料に、TiO
2から成る機能性材料を付着させた。具体的には、複合化処理を以下に示すように行った。即ち、エタノール100ミリリットル中に、多孔質炭素材料0.5グラム、酢酸4.57ミリリットル、適量のオルトチタン酸テトライソプロピル(TIPO)を加えて、1時間、撹拌した。その後、遠心分離を行い、上澄み液を捨て、固相に少量のエタノールを加え、純水100ミリリットル中に超音波を加えながら少量ずつ添加した。その後、再び、遠心分離を行い、得られた固相を100゜Cで乾燥させた。最後に、400゜Cで結晶成長させることで、実施例2の多孔質炭素材料(光触媒複合材料)を得ることができた。
【0069】
実施例2における多孔質炭素材料は、天然物由来の環境融和材料であり、その微細構造は、植物由来の材料である原料中に予め含まれるケイ素成分(ケイ素酸化物)を酸処理又はアルカリ処理を行い、除去することによって得られる。従って、細孔は、従来の活性炭では実現できない大きさやメソ領域(2〜50nm)を有しており、また、細孔の配列は植物の有する生体規則性を維持している。実施例2の多孔質炭素材料にあっては、このような細孔サイズや配列によって、光触媒材料を極めて効果的に多孔質炭素材料に付着させることができ、光触媒作用による分解を効果的に生じさせることができる結果、光触媒作用による有害物質の分解、無毒化を効果的に生じさせることができる。
【0070】
以上、好ましい実施例に基づき本開示を説明したが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。実施例にあっては、水酸化ナトリウム水溶液といったアルカリ(塩基)でのアルカリ処理を行ったが、代替的に、フッ化水素酸水溶液を用いた酸処理によって得られた多孔質炭素材料においても、同様の結果が得られた。尚、粒状の多孔質炭素材料によって多孔質炭素材料層が形成されており、多孔質炭素材料層を被覆する被覆層を更に備えている形態とすることもできる。ここで、被覆層として、通気性を有する織布、不織布、紙を例示することができる。多孔質炭素材料層を被覆層によって被覆するためには、通気性を確保しつつ、接着剤を用いて被覆層を多孔質炭素材料層に固定する方法を例示することができる。
【0071】
また、多孔質炭素材料の原料として、籾殻を用いる場合について説明したが、他の植物を原料として用いてもよい。ここで、他の植物として、例えば、藁、葦あるいは茎ワカメ、陸上に植生する維管束植物、シダ植物、コケ植物、藻類及び海藻等を挙げることができ、これらを、単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。具体的には、例えば、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲の藁(例えば、鹿児島産;イセヒカリ)とし、多孔質炭素材料を、原料としての藁を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理あるいはアルカリ処理を施すことで得ることができる。あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を稲科の葦とし、多孔質炭素材料を、原料としての稲科の葦を炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理あるいはアルカリ処理を施すことで得ることができる。
【0072】
あるいは又、多孔質炭素材料の原料である植物由来の材料を茎ワカメ(岩手県三陸産)とし、多孔質炭素材料を、原料としての茎ワカメを炭素化して炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換し、次いで、酸処理あるいはアルカリ処理を施すことで得ることができる。具体的には、先ず、例えば、茎ワカメを500゜C程度の温度で加熱し、炭化する。尚、加熱前に、例えば、原料となる茎ワカメをアルコールで処理してもよい。具体的な処理方法として、エチルアルコール等に浸漬する方法が挙げられ、これによって、原料に含まれる水分を減少させると共に、最終的に得られる多孔質炭素材料に含まれる炭素以外の他の元素や、ミネラル成分を溶出させることができる。また、このアルコールでの処理により、炭素化時のガスの発生を抑制することができる。より具体的には、茎ワカメをエチルアルコールに48時間浸漬する。尚、エチルアルコール中では超音波処理を施すことが好ましい。次いで、この茎ワカメを、窒素気流中において500゜C、5時間、加熱することにより炭化させ、炭化物を得る。尚、このような予備炭素化処理を行うことで、次の炭素化の際に生成されるであろうタール成分を減少あるいは除去することができる。その後、この炭化物の10グラムをアルミナ製の坩堝に入れ、窒素気流中(10リットル/分)において5゜C/分の昇温速度で1000゜Cまで昇温する。そして、1000゜Cで5時間、炭素化して、炭素質物質(多孔質炭素材料前駆体)に変換した後、室温まで冷却する。尚、炭素化及び冷却中、窒素ガスを流し続ける。次に、この多孔質炭素材料前駆体を46容積%のフッ化水素酸水溶液に一晩浸漬することで酸処理を行った後、あるいは又、20質量%の水酸化ナトリウム水溶液に80゜Cで一晩浸漬することでアルカリ処理を行った後、水及びエチルアルコールを用いてpH7になるまで洗浄し、乾燥させることにより、多孔質炭素材料を得ることができる。
【0073】
尚、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
[A01]《複合建材パネル》
植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m
2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上、及び、MP法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上である、粒状の多孔質炭素材料、
パネル、並びに、
粒状の多孔質炭素材料をパネル上に固着させるバインダー、
から成る複合建材パネル。
[A02]パネルは、素焼きタイルから成る[A01]に記載の複合建材パネル。
[A03]バインダーは、アクリル樹脂系接着剤から成る[A01]又は[A02]に記載の複合建材パネル。
[A04]バインダーは、分散系における分散媒の除去によって得られ、
分散媒は水及びアルコールから成る[A01]乃至[A03]のいずれか1項に記載の複合建材パネル。
[A05]粒状の多孔質炭素材料によって多孔質炭素材料層が形成されており、
多孔質炭素材料層を被覆する被覆層を更に備えている[A01]乃至[A04]のいずれか1項に記載の複合建材パネル。
[B01]《複合建材パネルの製造方法》
植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m
2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上、及び、MP法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上であり、分散質を構成する、粒状の多孔質炭素材料、
バインダーを含むバインダー組成物、並びに、
水及びアルコールから成る分散媒、
から構成された分散系をパネル上に塗布した後、分散系を乾燥することで、粒状の多孔質炭素材料をパネル上にバインダーによって固着させる、複合建材パネルの製造方法。
[B02]パネルは、素焼きタイルから成る[B01]に記載の複合建材パネルの製造方法。
[B03]バインダーは、アクリル樹脂系接着剤から成る[B01]又は[B02]に記載の複合建材パネルの製造方法。
[B04]バインダー組成物は、アクリル樹脂系エマルジョン型接着剤から成る[B03]に記載の複合建材パネルの製造方法。
[B05]アルコールは、メチルアルコール又はイソプロピルアルコールから成る[B01]乃至[B04]のいずれか1項に記載の複合建材パネルの製造方法。
[B06]粒状の多孔質炭素材料をパネル上にバインダーによって固着させ、粒状の多孔質炭素材料によって多孔質炭素材料層を形成した後、多孔質炭素材料層を被覆層によって被覆する[B01]乃至[B05]のいずれか1項に記載の複合建材パネルの製造方法。
[C01]《分散系》
植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m
2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上、及び、MP法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上であり、分散質を構成する、粒状の多孔質炭素材料、
バインダーを含むバインダー組成物、並びに、
水及びアルコールから成る分散媒、
から構成された分散系。
[C02]バインダーは、アクリル樹脂系接着剤から成る[C01]に記載の分散系。
[C03]バインダー組成物は、アクリル樹脂系エマルジョン型接着剤から成る[C02]に記載の分散系。
[C04]アルコールは、メチルアルコール又はイソプロピルアルコールから成る[C01]乃至[C03]のいずれか1項に記載の分散系。
[D01]《塗布装置》
分散系、
分散系を収納する容器、及び、
分散系をスプレーするスプレーガン、
を備えた塗布装置であって、
分散系は、
植物由来の材料を原料とし、窒素BET法による比表面積の値が10m
2/グラム以上、BJH法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上、及び、MP法による細孔の容積が0.1cm
3/グラム以上であり、分散質を構成する、粒状の多孔質炭素材料、
バインダーを含むバインダー組成物、並びに、
水及びアルコールから成る分散媒、
から構成されている塗布装置。
[D02]バインダーは、アクリル樹脂系接着剤から成る[D01]に記載の塗布装置。
[D03]バインダー組成物は、アクリル樹脂系エマルジョン型接着剤から成る[D02]に記載の塗布装置。
[D04]アルコールは、メチルアルコール又はイソプロピルアルコールから成る[D01]乃至[D03]のいずれか1項に記載の塗布装置。