特許第6973616号(P6973616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973616繊維径分布を有する不織セルロース繊維布帛
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973616
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】繊維径分布を有する不織セルロース繊維布帛
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/013 20120101AFI20211118BHJP
   D04H 3/016 20120101ALI20211118BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   D04H3/013
   D04H3/016
   D01D5/04
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2020-503095(P2020-503095)
(86)(22)【出願日】2018年3月28日
(65)【公表番号】特表2020-513072(P2020-513072A)
(43)【公表日】2020年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2018057904
(87)【国際公開番号】WO2018184937
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2019年11月18日
(31)【優先権主張番号】17164514.6
(32)【優先日】2017年4月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519355219
【氏名又は名称】レンツィング アクツィエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カーライル、トム
(72)【発明者】
【氏名】アインツマン、ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドハルム、ジセラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイハースト、マルコム ジョン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、キャサリーナ
(72)【発明者】
【氏名】サゲラー−フォリク、イブラヒム
【審査官】 伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0056956(US,A1)
【文献】 特開2013−226179(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/106085(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D01D 1/00−13/02
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヨセル紡糸溶液から直接製造された不織セルロース繊維布帛であって、前記不織セルロース繊維布帛が、最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超えるように繊維径に関して異なる実質的に無端の繊維の網を含み、
前記繊維のうち異なるそれぞれが、異なる区別可能な層に少なくとも部分的に位置し、
異なる層に少なくとも部分的に位置する前記繊維のうちの異なるそれぞれが、平均繊維径に関して異なり、
異なる区別可能な前記層は、前記平均繊維径に関して、前記層間の目に見える分離または界面領域を示し、
前記繊維の少なくとも80質量%が、3μm〜40μmの範囲の平均繊維径を有し、
前記繊維のうち少なくとも一部が、少なくともそれらの繊維の長さの一部にわたって互いに並んで整列して、個々の繊維よりも大きな直径を有する上位繊維構造を形成する、不織セルロース繊維布帛。
【請求項2】
同じ繊維の異なる部分が、この繊維の最大繊維径と、この繊維の最小繊維径との比が1.5を超えるように、繊維径に関して異なる、請求項1に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項3】
異なる層の繊維が、前記異なる層の間の少なくとも1つの併合位置で一体的に接続される、請求項1または2に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項4】
前記繊維の少なくとも80質量%が、3μm〜15μmの範囲の平均繊維径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項5】
前記繊維が、5ppm未満の銅含有量および/または2ppm未満のニッケル含有量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項6】
前記不織セルロース繊維布帛が、少なくとも500質量%の吸油能力を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項7】
前記不織セルロース繊維布帛が、最大繊維径と最小繊維径との比が2.5を超えるように、繊維径に関して異なる繊維を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項8】
リヨセル紡糸溶液から不織セルロース繊維布帛を直接製造する方法であって、前記方法が、
オリフィスを有する複数のジェットを介して、ガス流によって支持された前記リヨセル紡糸溶液を凝固流体の雰囲気に押し出して、それにより、実質的に無端の繊維を形成する段階と、
可動式繊維支持ユニット上で前記繊維を収集して、それにより、前記不織セルロース繊維布帛を形成する段階と、
異なる特性を有するオリフィスを有する前記複数のジェットを前記可動式繊維支持ユニットに沿って直列に配置する段階であって、オリフィスを有する前記複数のジェットが、オリフィスの異なる直径、ガス流の異なる速度、ガス流の異なる量およびガス流の異なる圧力、前記リヨセル紡糸溶液と相互作用する凝固流体の量の調整からなる群のうち少なくとも1つに関して異なる特性を有し、これにより、
最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超え、
前記繊維のうち異なるそれぞれが、異なる区別可能な層に少なくとも部分的に位置し、
異なる層に少なくとも部分的に位置する前記繊維のうちの異なるそれぞれが、平均繊維径に関して異なり、
異なる区別可能な前記層は、前記平均繊維径に関して、前記層間の目に見える分離または界面領域を示し、
前記繊維のうち少なくとも一部が、少なくともそれらの繊維の長さの一部にわたって互いに並んで整列して、個々の繊維よりも大きな直径を有する上位繊維構造を形成する、
段階と
を含む、方法。
【請求項9】
前記方法が、水流交絡、ニードルパンチ、含浸、加圧蒸気による蒸気処理、加圧ガスによるガス処理、およびカレンダ成形からなる群のうち少なくとも1つによって、前記可動式繊維支持ユニット上での収集後、インサイチュで前記繊維および/または前記不織セルロース繊維布帛をさらに処理する段階をさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
リヨセル紡糸溶液から不織セルロース繊維布帛を直接製造するための装置であって、前記装置が、
ガス流によって支持された前記リヨセル紡糸溶液を押し出すように構成されたオリフィスを有する複数のジェットであって、異なる特性を有して可動式繊維支持ユニットに沿って直列に配置され、オリフィスを有する前記複数のジェットが、オリフィスの異なる直径、ガス流の異なる速度、ガス流の異なる量およびガス流の異なる圧力からなる群のうち少なくとも1つに関して異なる特性を有する、オリフィスを有する前記複数のジェットと、
押し出された前記リヨセル紡糸溶液に凝固流体の雰囲気を提供して、それにより、実質的に無端の繊維を形成するように構成され、かつ、前記リヨセル紡糸溶液と相互作用する凝固流体の量を調整するように構成された、凝固ユニットと、
前記繊維を収集して、それにより、前記不織セルロース繊維布帛を形成するように構成された可動式繊維支持ユニットと、
前記複数のジェット、前記凝固ユニット、および前記可動式繊維支持ユニットを制御して、
最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超え、
前記繊維のうち異なるそれぞれが、異なる区別可能な層に少なくとも部分的に位置し、
異なる層に少なくとも部分的に位置する前記繊維のうちの異なるそれぞれが、平均繊維径に関して異なり、
異なる区別可能な前記層は、前記平均繊維径に関して、前記層間の目に見える分離または界面領域を示し、
前記繊維のうち少なくとも一部が、少なくともそれらの繊維の長さの一部にわたって互いに並んで整列して、個々の繊維よりも大きな直径を有する上位繊維構造を形成する
よう構成された制御ユニットと
を備える、装置。
【請求項11】
ワイプ、乾燥機シート、フィルタ、衛生製品、医療用途製品、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル、衣類、建築技術用製品、自動車製品、家具、工業製品、美容、レジャー、スポーツまたは旅行に関連する製品、および学校またはオフィスに関連する製品からなる群のうち少なくとも1つに、請求項1から7のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛を使用する方法。
【請求項12】
請求項1から7のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛を含む製品または複合体。
【請求項13】
異なる繊維が、前記繊維のうち1つの最大繊維径と、前記繊維のうち別の1つの最小繊維径との比が1.5を超えるように、繊維径に関して異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛。
【請求項14】
前記異なる層に少なくとも部分的に位置する繊維のそれぞれが、平均繊維径に関して異なり、それにより、異なるウイッキング性、異方性挙動、異なる液体吸収能力、異なるクリーナビリティ、異なる粗さ、異なる滑らかさおよび異なる安定性からなる群のうち少なくとも1つを含む異なる機能性を提供する、請求項1から7のいずれか一項に記載の不織セルロース繊維布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織セルロース繊維布帛、不織セルロース繊維布帛の製造方法、不織セルロース繊維布帛の製造装置、製品または複合体、および使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リヨセル技術は、セルロース木材パルプまたは他のセルロース系原料を極性溶媒(例えば、「アミンオキシド」または「AO」とも呼ばれ得るn−メチルモルホリンn−オキシド)に直接溶解して、様々な有用なセルロース系材料に変換することができる粘性の高い剪断減粘性溶液を生成することに関する。商業的には、この技術は、繊維産業で広く使用されているセルロース・ステープル・ファイバ(オーストリア、レンツィングのLenzing AGからTENCEL(登録商標)の商標の下に市販されている)の一群を製造するために使用される。また、リヨセル技術由来の他のセルロース製品も使用されている。
【0003】
セルロース・ステープル・ファイバは、不織ウェブへの変換のための成分として長い間使用されてきた。しかし、リヨセル技術を適応して不織ウェブを直接製造すると、現在のセルロースウェブ製品では不可能な特性および性能が得られるであろう。これは、合成繊維産業で広く使用されているメルトブローおよびスパンボンド技術のセルロース版と考えることができるが、重要な技術的相違のため合成ポリマー技術をリヨセルに直接適応することは不可能である。
【0004】
リヨセル溶液からセルロースウェブを直接形成する技術を開発するために多くの研究が行われてきた(とりわけ、国際公開第98/26122号パンフレット、国際公開第99/47733号パンフレット、国際公開第98/07911号パンフレット、米国特許第6,197,230号明細書、国際公開第99/64649号パンフレット、国際公開第05/106085号パンフレット、欧州特許第1358369号明細書、欧州特許第2013390号明細書)。国際公開第07/124521A1号パンフレットおよび国際公開第07/124522A1号パンフレットに追加の技術が開示されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、適切に調整可能な機能的特性を有するセルロース系布帛を提供することである。
【0006】
上記に定義された目的を達成するために、独立請求項に記載の不織セルロース繊維布帛、不織セルロース繊維布帛の製造方法、不織セルロース繊維布帛の製造装置、製品、および使用方法が提供される。
【0007】
本発明の例示的な実施形態によれば、((特にインサイチュプロセスで、または連続運転製造ラインで実行可能な連続プロセスで)特にリヨセル紡糸溶液から直接製造される)(特に溶液吹付)不織セルロース繊維布帛が提供され、布帛は、最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超えるように繊維径に関して異なる実質的に無端の繊維の網を含む。
【0008】
別の例示的な実施形態によれば、リヨセル紡糸溶液から(特に溶液吹付)不織セルロース繊維布帛を直接製造する方法が提供され、該方法は、オリフィス(紡糸口金または押し出しユニットとして具現化され得るか、その一部を形成し得る)を有するジェットを介して、ガス流によって支持されたリヨセル紡糸溶液を凝固流体雰囲気(特に、分散した凝固流体の雰囲気)に押し出して、それにより実質的に無端の繊維を形成すること、繊維支持ユニット上に繊維を収集して、それにより布帛を形成すること、および最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超えるようにプロセスパラメータを調整することを含む。
【0009】
さらなる例示的な実施形態によれば、リヨセル紡糸溶液から(特に溶液吹付)不織セルロース繊維布帛を直接製造するための装置が提供され、装置は、ガス流によって支持されたリヨセル紡糸溶液を押し出すように構成されたオリフィスを有するジェットと、押し出されたリヨセル紡糸溶液に凝固流体雰囲気を提供して、それにより実質的に無端の繊維を形成するように構成された凝固ユニットと、繊維を収集して、それにより布帛を形成するように構成された繊維支持ユニットと、最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超えるようにプロセスパラメータを調整するように構成された制御ユニット(リヨセル紡糸溶液から不織セルロース繊維布帛を直接製造するためのプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサなど)とを備える。
【0010】
さらに別の実施形態によれば、上述の特性を有する不織セルロース繊維布帛が、ワイプ、乾燥機シート、フィルタ、吸収性衛生製品、医療用途製品、ジオテキスタイル、アグロテキスタイル(agrotextile)、衣類、建築技術用製品、自動車製品、家具、工業製品、美容、レジャー、スポーツまたは旅行に関連する製品、および学校またはオフィスに関連する製品からなる群のうち少なくとも1つに使用される。
【0011】
さらに別の例示的な実施形態によれば、上述の特性を有する布帛を含む製品または複合体が提供される。
【0012】
本出願の文脈では、用語「不織セルロース繊維布帛」(不織セルロースフィラメント布帛とも呼ばれ得る)は、特に、複数の実質的に無端の繊維から構成される布帛またはウェブを意味し得る。用語「実質的に無端の繊維」は、特に、従来のステープル繊維よりも著しく長い長さを有するフィラメント繊維という意味を有する。別の記述では、用語「実質的に無端の繊維」は、特に、従来のステープル繊維よりも体積当たりの繊維端部の量が著しく少ないフィラメント繊維から形成されたウェブという意味を有し得る。特に、本発明の例示的な実施形態による布帛の無端繊維は、10,000端部/cm未満、特に5,000端部/cm未満の体積当たりの繊維端部の量を有し得る。例えば、綿の代わりにステープル繊維を使用すると、長さは38mm(綿繊維の典型的な天然の長さに相当する)になり得る。これとは対照的に、不織セルロース繊維布帛の実質的に無端の繊維は、少なくとも200mm、特に少なくとも1000mmの長さを有し得る。しかし、当業者であれば、無端セルロース繊維であっても、繊維形成中および/または繊維形成後のプロセスによって形成され得る途切れを有する場合があるという事実を認識するであろう。結果として、実質的に無端のセルロース繊維から作られた不織セルロース繊維布帛は、同じデニールのステープル繊維から作られた不織布と比較して、質量当たりの繊維の数が著しく少ない。不織セルロース繊維布帛は、複数の繊維を紡糸し、好ましくは移動する繊維支持ユニットに向けて複数の繊維を細らせ、引き伸ばすことにより製造され得る。それにより、セルロース繊維の三次元網またはウェブが形成され、不織セルロース繊維布帛を構成する。布帛は、主要構成要素または唯一の構成要素としてのセルロースから作られてもよい。
【0013】
本出願の文脈では、用語「リヨセル紡糸溶液」は、特に、セルロース(例えば、木材パルプまたは他のセルロース系原料)が溶解される溶媒(例えば、N−メチル−モルホリン、NMMO、「アミンオキシド」または「AO」などの材料の極性溶液)を意味し得る。リヨセル紡糸溶液は、溶融物ではなく溶液である。セルロースフィラメントは、例えば、前記フィラメントを水と接触させることにより、溶媒の濃度を低下させることによってリヨセル紡糸溶液から生成され得る。リヨセル紡糸溶液由来のセルロース繊維の初期生成のプロセスは、凝固として説明することができる。
【0014】
本出願の文脈では、用語「ガス流」は、特に、リヨセル紡糸溶液が紡糸口金から出て行く間および/または紡糸口金から出て行った後にセルロース繊維またはそのプリフォーム(すなわち、リヨセル紡糸溶液)の移動方向に実質的に平行な空気などのガスの流れを意味し得る。
【0015】
本出願の文脈では、用語「凝固流体」は、特に、リヨセル紡糸溶液を希釈し、セルロース繊維がリヨセルフィラメントから形成される程度まで溶媒に置き換わる能力を有する非溶媒流体(すなわち、気体および/または液体、場合により固体粒子を含む)を意味し得る。例えば、そのような凝固流体は水ミストであり得る。
【0016】
本出願の文脈では、用語「プロセスパラメータ」は、特に、繊維および/または布帛の特性、特に繊維径および/または繊維径分布に影響を及ぼし得る、不織セルロース繊維布帛を製造するために使用される物質および/または装置構成要素のあらゆる物理的パラメータおよび/または化学的パラメータおよび/または装置パラメータを意味し得る。そのようなプロセスパラメータは、制御ユニットによって自動的に調整可能であり、および/またはユーザによって手動で調整可能であり、それにより、不織セルロース繊維布帛の繊維の特性を調節または調整してもよい。繊維の特性に(特に、それらの直径または直径分布に)影響を及ぼし得る物理的パラメータは、プロセスに関与する様々な媒体(例えば、リヨセル紡糸溶液、凝固流体、ガス流など)の温度、圧力および/または密度であり得る。化学的パラメータは、関与する媒体(例えば、リヨセル紡糸溶液、凝固流体など)の濃度、量、pH値であり得る。装置パラメータは、オリフィスのサイズおよび/またはオリフィス間の距離、オリフィスと繊維支持ユニットとの間の距離、繊維支持ユニットの輸送速度、1つまたは複数の任意のインサイチュ後処理ユニットの提供、ガス流などであり得る。
【0017】
用語「繊維」は、特に、セルロースを含む材料の細長い小片、例えば、断面がほぼ円形または不規則に形成され、場合により他の繊維と撚られたものを意味し得る。繊維は、10よりも大きい、特に100よりも大きい、より具体的には1000よりも大きいアスペクト比を有してもよい。アスペクト比とは、繊維の長さと繊維の直径との比である。繊維は、(一体化したマルチ繊維構造が形成されるように)併合(merging)または摩擦(繊維は分離したままであるが、互いに物理的に接触している繊維を相互に移動させた際に働く摩擦力によって弱く機械的に結合されるように)によって相互接続されることによって網を形成し得る。繊維は、実質的に円筒形の形状を有してもよいが、直線状、屈曲状、ねじれ状または湾曲状であってもよい。繊維は、単一の均質材料(すなわち、セルロース)からなってもよい。しかし、繊維はまた、1つまたは複数の添加剤を含んでもよい。水または油などの液体材料が繊維の間に蓄積されてもよい。
【0018】
本書の文脈では、「オリフィスを有するジェット」(例えば、「オリフィスの配置」と呼ばれ得る)は、直線的に配置されたオリフィスの配置を備える任意の構造であり得る。
【0019】
本出願の文脈では、用語「最大繊維径と最小繊維径との比が1.5を超える」または同意義の用語「繊維径に関して最小直径に対して50%超異なる」は、特に、最大繊維径と最小繊維径との比に100%を乗じて、得られた結果から100%を引くと、50%を超える値になることを意味し得る。換言すれば、最大繊維径と最小繊維径との比は1.5よりも大きくてよい。
【0020】
例示的な実施形態によれば、繊維径が50%を超える点で顕著な不均一性を示す実質的に無端のセルロース繊維の網として製造することができる不織セルロース繊維布帛が提供される。不織セルロース繊維布帛の繊維の直径の分布が、得られた布帛の物理的特性、特に機械的特性を調整するための強力な設計パラメータであることが判明した。布帛の最大直径と最小直径との間の少なくとも50%の適切な変動により、高度に機械的に堅牢な、または剛性の布帛を得ることができる。特定の理論に縛られることを望まないが、現在、繊維太さのそのような不均一な分布が、繊維網の自己組織化をもたらし、これにより、互いに対する個々の繊維の相互運動が妨げられると考えられている。これとは対照的に、繊維はまとまってクランプする傾向があり、それにより高い剛性を有する化合物が得られる。記述的に言えば、繊維製造プロセスに特定の不均一性を導入すると、布帛全体の繊維の太さまたは直径分布の不均一性につながる可能性がある。ただし、布帛の設計パラメータとして繊維径を変化させることにより、繊維の物理特性をさらに一般的な方法で調整して、布帛の物理的特性を広範囲にわたって変化させることができることに留意されたい(補強剛性は1つの選択肢または例にすぎない)。例えば、繊維径の変動は、製造された布帛の水分管理を調節するための強力なツールにもなり得る。
【0021】
以下では、不織セルロース繊維布帛のさらなる例示的な実施形態、不織セルロース繊維布帛の製造方法、不織セルロース繊維布帛の製造装置、製品または複合体、および使用方法について説明する。
【0022】
一実施形態では、同じ繊維の異なる部分は、繊維径に関して、最小直径に対して50%を超えるほど異なる。換言すれば、この繊維の最大繊維径とこの繊維の最小繊維径との比は1.5を超えてよい。したがって、太さに関する不均一性は、繊維内の太さの変動であり得る。そのような一実施形態では、それぞれの繊維自体が太さの不均一性を示し得る。特定の理論に縛られることを望まないが、現在、そのような繊維が布帛内で網を形成する際に、それぞれの繊維の太さの不均一性が、布帛内で様々な繊維を互いに移動させる際に克服しなければならない摩擦力を増大させると考えられている。この効果の結果、布帛の安定性が増大する。
【0023】
追加的または代替的に、異なる繊維は、繊維径に関して、繊維の最小直径に対して50%を超えるほど異なっていてもよい。換言すれば、異なる繊維は、繊維のうち1つの最大繊維径と繊維のうち別の1つの最小繊維径との比が1.5を超えるように繊維径に関して異なっていてもよい。したがって、太さの点での不均一性は、繊維間の太さの変動であり得る。そのような一実施形態では、それぞれの繊維自体が太さの均一性または不均一性を示し得るが、異なる繊維は、繊維の比較により繊維の太さに関して異なっていてもよい。そのような場合、異なる太さまたは異なる太さ分布の繊維の相互作用により、比較的細い繊維は比較的強く曲げられ、比較的太い繊維はわずかにのみ曲げられ得る。異なる太さのそのような繊維が布帛に網を形成すると、増大した不規則性は、異なる繊維の互いに対する相互運動を妨げる。この現象の結果、布帛の安定性が増大する。
【0024】
一実施形態では、繊維の少なくとも一部(特に少なくとも50%)は、繊維径に関して、平均繊維径(例えば、全部の繊維または1本の繊維にわたって平均化される)に対して50%を超えるほど異なる。例えば、繊維の少なくとも80%は、繊維径に関して、最小繊維径または平均繊維径(例えば、全部の繊維または1本の繊維にわたって平均化される)に対して50%超を超えるほど異なり得る。本項の記述は、繊維内の太さの変動および/または繊維間の太さの変動を指し得る。
【0025】
一実施形態では、異なる区別可能な(すなわち、層間の目に見える分離または界面領域を示す)層に少なくとも部分的に位置する繊維のうち異なるそれぞれが、少なくとも1つの併合位置で一体的に接続される。例えば、リヨセル紡糸溶液が凝固および繊維形成のために押し出されるオリフィスの2つ(またはそれ以上)のジェットを直列に整列させることにより、布帛の2つ(またはそれ以上)の異なる層を形成することができる。そのような配置が移動する繊維支持ユニット(繊維収容面を有するコンベアベルトなど)と組み合わされると、繊維の第1の層が第1のジェットによって繊維支持ユニット上に形成され、移動する繊維支持ユニットが第2のジェットの位置に到達すると、第2のジェットが第1の層上に繊維の第2の層を形成する。この方法のプロセスパラメータは、併合点が第1の層と第2の層との間に形成されるように調整されてもよい。本出願の文脈では、用語「併合」は、特に、それぞれの併合点での異なる繊維の相互接続を意味し得、この相互接続により、(以前は異なる層に関連していた)以前は2つに分離されていた繊維から構成される1つの一体的に接続された繊維構造が形成される。相互接続された繊維は、併合点で互いに強く接着し得る。特に、凝固によってまだ完全に硬化または固化していない形成中の第2の層の繊維は、例えば、まだ液体リヨセル溶液相にあり、まだ完全に硬化した固体状態にない外側皮膚または表面領域を依然として有し得る。そのようなプレ繊維構造が互いに接触し、その後完全に硬化して固体繊維状態になると、異なる層間の界面で2つの併合した繊維が形成され得る。併合点の数が多いほど、布帛の層間の相互接続の安定性が高くなる。したがって、併合を制御することによって、布帛の層間の接続の剛性を制御することができる。併合は、例えば、それぞれの層のプレ繊維構造が繊維またはプレ繊維構造の下層上の繊維支持プレートに到達する前に、硬化または凝固の程度を調整することによって制御することができる。異なる層の繊維をそれらの間の界面で併合することにより、層の望ましくない分離を防ぐことができる。層間に併合点がない場合、繊維の一方の層を他方の層から剥離することが可能になり得る。
【0026】
一実施形態では、異なる層に少なくとも部分的に位置する繊維のうち異なるそれぞれは、繊維径に関して異なり、特に、平均繊維径に関して異なる。布帛の異なる層が異なる平均直径を有する繊維から形成されている場合、異なる層の機械的特性は別個に異なるように調整されてもよい。例えば、層の一方には、比較的大きな太さまたは直径を有する繊維を使用することによって剛性特性が備わっていてもよく、他方の層には、(例えば、直径が比較的細い繊維を使用することによって)平滑特性または弾性特性が備わっていてもよい。例えば、機械的に汚れを除去することにより洗浄用の粗い方の表面を有し、拭き取り用に滑らかな方の表面を有する、すなわち、洗浄対象の表面から水などを吸収するように構成されたワイプを製造することができる。
【0027】
しかし、代替的に、異なる層の繊維が同じ直径を有すること、特に、同じ平均直径を有することも可能である。そのような一実施形態では、隣接する層は、類似または同一の物理的特性を有し得る。それらは、その間の併合点で強くまたは弱く相互接続され得る。界面領域ごとのそのような併合点の数により、隣接する層間の結合強度が規定され得る。結合強度が小さいと、ユーザによって層は容易に分離され得る。結合強度が高いと、層は互いに恒久的に付着したままになり得る。
【0028】
一実施形態では、繊維の少なくとも80質量%は、3μm〜40μm、特に3μm〜15μmの範囲の平均繊維径を有する。記載された方法によって、それに応じてプロセスパラメータを調整すると、非常に小さな寸法(3μm〜5μm以下の範囲)を有する繊維も形成され得る。そのような小さな繊維では、滑らかな表面を有するが、それでも全体として剛性である布帛が形成され得る。比較的細い繊維の少なくとも80質量%は、流体収容能力および触覚特性を促進するために機能化されてもよいのに対して、繊維の残りの太い部分は安定性を高めるために機能化されてもよい。そのような組合せは、多層布帛にとって特に有利であり得る。
【0029】
一実施形態では、繊維は、5ppm未満の銅含有量および/または2ppm未満のニッケル含有量を有する。本出願で言及されるppm値はいずれも、(体積ではなく)質量に関する。これとは別に、繊維または布帛の重金属汚染は、個々の重金属元素ごとに10ppm以下であり得る。(特にN−メチル−モルホリン、NMMOなどの溶媒を含む場合)無端繊維に基づく布帛の形成の基礎としてリヨセル紡糸溶液を使用するため、(ユーザのアレルギ反応を引き起こす可能性がある)銅またはニッケルなどの重金属による布帛の汚染を極めて少なく抑えることができる。
【0030】
一実施形態では、布帛は、少なくとも500質量%、特に少なくとも800質量%、より具体的には少なくとも1000質量%、好ましくは少なくとも1500質量%の吸油能力を有する。吸油能力の質量%は、吸収可能な油の質量と繊維の質量との比を示す。繊維太さおよび/または繊維内および/または繊維間の太さの不均一性および/または繊維密度の絶対値の調整に応じて、活性繊維表面、ならびに隣接する繊維間の隙間の間の体積および間隔を調整してもよい。これは、例えば、毛管効果の影響下で、油が隙間に蓄積する能力に影響を及ぼす。より具体的には、布帛の高い液体吸収能力は、繊維径の変動と、無端繊維の存在およびそのような繊維間の併合点との組合せの結果であると考えられている。
【0031】
さらに、繊維間の併合の程度も、布帛102の吸油能力に影響を及ぼす。記述的に言えば、併合の程度は、毛管力、布帛内の隙間の大きさなどに影響を及ぼし得る。併合の程度は、例えば、併合因子によって定量され得る。布帛の併合因子(領域併合因子とも呼ばれ得る)を決定するために、以下の決定プロセスを実行してもよい。すなわち、布帛の正方形サンプルを光学的に分析してもよい。正方形サンプルの対角線のうち少なくとも1つと交差する繊維の各併合位置(特に、併合点および/または併合線)の周りに、正方形サンプルの内部に完全に収まるべき直径を有する円を描く。円の大きさは、円が、併合された繊維間の併合領域を包含するように決定される。決定された円の直径の値の算術平均を計算する。併合因子は、平均直径値と正方形サンプルの対角長との比として計算され、パーセントで表され得る。一実施形態では、繊維の併合因子は、0.1%〜100%の範囲、特に0.2%〜15%の範囲である。好ましくは、併合因子は、0.5%〜6%の範囲であるように調整される。
【0032】
布帛の吸油能力(または液体吸収能力)を決定するために、エンジンオイルを使用して、Edana規格NWSP 010.4.R0(15)に基づいて、油および脂肪の液体吸収の評価に関する分析を実行することができる。分析のために、10cm×10cmの大きさの布帛サンプルをパンチングによって形成することができる。サンプルの重量を決定し、サンプルと定規とを紐で斜めに結ぶ。次に、油を満たした容器にサンプルを落とす。布帛を油で濡らすのに必要な時間を測定する。その後、布帛を油に120秒間浸す。次に、定規を上げることによって、布帛を油から持ち上げる。その後、布帛から油を30秒間垂らす。布帛の重量を決定し、吸油能力を計算する。
【0033】
一実施形態では、繊維の少なくとも一部(特に少なくとも50%)は、繊維径に関して、平均繊維径(例えば、全部の繊維または1本の繊維にわたって平均化される)に対して150%を超えるほど、特に300%を超えるほど異なる。したがって、最大繊維径と最小繊維径との比は2.5よりも大きく、特に4よりも大きくてよい。例えば、繊維の少なくとも80%は、繊維径に関して、最小繊維径に対して150%を超えるほどに、特に300%を超えるほどに異なっていてもよい。本項の記述は、繊維内の太さの変動および/または繊維間の太さの変動を指し得る。
【0034】
一実施形態では、繊維の少なくとも一部は、少なくともそれらの長さの一部にわたって互いに並んで整列して、さらに大きな直径を有する上位繊維構造を形成する。そのような一実施形態では、複数の繊維が一緒になって、上位繊維構造の形成に使用される繊維とは別の(特にさらに大きい)直径を有する新たな上位繊維構造を形成してもよい。そのような並んで整列した繊維間の接続は、延長された併合線または一組の併合点に沿って繊維を併合することにより達成され得る。上位繊維構造の繊維は並置されてもよいが、互いに一体的に接続されてもよい。
【0035】
一実施形態では、繊維は、異なる機能性を有する複数の層に位置する。異なる層の異なる機能性は、異なる繊維径および/または異なる繊維径分布および/または異なる繊維密度の結果であり得る。例えば、異なる機能性は、異なるウイッキング性(特に、流体を吸う際の異なる流体分布特性)、異方性挙動(特に、布帛の異なる方向における異なる機械的、化学的および/または流体力学的特性)、異なる吸油能力(特に、ある層では油を吸収する強力な能力、および別の層では低い吸油能力)、異なる吸水能力(特に、ある層では水を吸収する強力な能力、および別の層では低い吸水能力)、異なるクリーナビリティ(特に、ある層では布帛による表面からの汚れを洗浄する比較的強い能力、および別の層では顕著でない洗浄能力)、および/または異なる粗さ(例えば、1つの粗い表面層および1つの滑らかな表面層)であり得る。
【0036】
一実施形態では、該方法は、凝固流体によって、実質的に平行に整列した繊維(またはそのプリフォーム)の凝固が行われる凝固条件を調整すること、特に、リヨセル紡糸溶液と相互作用する凝固流体の量を調整することによって、繊維径を調整するためのプロセスパラメータを調整することを含んでもよい。凝固の過程で、繊維はリヨセル紡糸溶液から沈殿する。また、リヨセル紡糸溶液の組成は、繊維特性に影響を及ぼす可能性があり、特に、繊維径特性に影響を及ぼす可能性がある。一実施形態では、繊維径を調整するためのプロセスパラメータを調整することは、可動式繊維支持ユニット(の輸送方向など)に沿って、異なる特性を有するオリフィスの複数のジェットを直列に配置することを含む。様々なジェットは、特に、オリフィスの異なる直径、ガス流の異なる速度、ガス流の異なる量およびガス流の異なる圧力からなる群のうち少なくとも1つに関して異なる特性を有し得る。そのような多直列ジェットでは、各層がオリフィスの1つのジェットに対応する複数の層から構成される布帛を製造することが可能になる。層は互いに重ね合わされる。したがって、例えば、それぞれがそれぞれの太さまたは太さ分布を有する一組の繊維を有する複数の層を積み重ねることによって繊維太さの分布を形成することも可能であり、異なる層の太さまたは太さ分布の絶対値は異なり得る。
【0037】
一実施形態では、該方法は、繊維支持ユニット上で収集した後に繊維および/または布帛をさらに処理するが、好ましくは無端繊維を有する不織セルロース繊維布帛を依然としてインサイチュで形成することをさらに含む。このようなインサイチュプロセスは、製造された(特に実質的に無端の)布帛が製品製造目的地に出荷するために保管される(例えば巻取機によって巻かれる)前に実行されるプロセスであり得る。例えば、そのような追加の処理または後処理には、水流交絡が含まれ得る。水流交絡は、湿ったまたは乾燥した繊維ウェブの結合プロセスと呼ばれる場合があり、結果として得られる結合された布帛は不織布である。水流交絡では、ウェブを貫通し、繊維支持ユニット(特にコンベアベルト)に当たり、繊維を絡ませるように跳ね返る微細で高圧の水ジェットが使用されてもよい。布帛の対応する圧縮によって、布帛をさらにコンパクトにし、機械的にさらに安定させることができる。水流交絡に加えて、またはその代わりに、加圧ガスによる繊維のガス処理が実行されてもよい。追加的または代替的に、そのような追加の処理または後処理には、製造された布帛のニードリング処理が含まれ得る。ニードルパンチシステムを使用して、布帛またはウェブの繊維を結合してもよい。有刺針が繊維ウェブに押し込まれ、針が引き抜かれた際に残っている一部の繊維をウェブに押し込むと、ニードルパンチ布帛が製造され得る。十分な繊維が好適に置換されると、これらの繊維プラグ(fibers plugs)の強化効果により、ウェブが布帛に変換され得る。ウェブまたは布帛のさらに別の追加の処理または後加工処理は、含浸処理である。無端繊維網の含浸には、(柔軟剤、疎水化剤および帯電防止剤などのような)1つまたは複数の化学物質を布帛の外部繊維表面に塗布することが含まれ得る。布帛のさらに別の追加の加工処理はカレンダ成形である。カレンダ成形は、布帛を処理するための仕上げプロセスと呼ばれ得、カレンダ成形では、布帛を滑らかにし、コーティングし、および/または薄くするために艶出し機が使用され得る。
【0038】
本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛はまた、1つまたは複数の他の材料と(例えば、インサイチュでまたは後続のプロセスで)組み合わされて、本発明の例示的な実施形態による複合体を形成し得る。そのような複合体を形成するために布帛と組み合わせることができる例示的な材料は、限定するものではないが、以下の材料またはそれらの組合せ、すなわち、毛羽立ちパルプ、繊維懸濁液、ウェットレイド(wetlaid)不織布、エアレイド不織布、スパンボンドウェブ、メルトブローウェブ、カード処理したスパンレースウェブもしくはニードルパンチウェブ、または様々な材料から作られた他のシート状構造を含む材料の群から選択され得る。一実施形態では、異なる材料間の接続は、以下のプロセスのうち1つまたは組合せ(ただしこれらに限定されない)、すなわち、併合、水流交絡、ニードルパンチ、水素結合、熱接着、バインダによる接着、積層および/またはカレンダ成形によって行うことができる。
【0039】
以下では、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛を含む例示的な有利な製品、または本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の使用が要約される。
【0040】
ウェブ、100%セルロース繊維ウェブ、もしくは例えば2つ以上の繊維を含むかそれらからなるウェブの特定の用途、または抗菌材料、イオン交換材料、活性炭、ナノ粒子、ローション、薬剤もしくは難燃剤、もしくは複合繊維などの材料が組み込まれた化学修飾繊維もしくは繊維は、以下の通りであり得る。
【0041】
本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛は、乳児用ワイプ、厨房用ワイプ、ウェットワイプ、化粧品用ワイプ、衛生用ワイプ、医療用ワイプ、掃除用ワイプ、研磨(車、家具)用ワイプ、粉塵用ワイプ、工業用ワイプ、ダスタおよびモップワイプなどのワイプの製造を製造するために使用されてもよい。
【0042】
本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛をフィルタの製造に使用することも可能である。例えば、そのようなフィルタは、エアフィルタ、HVAC、空調フィルタ、排ガスフィルタ、液体フィルタ、コーヒーフィルタ、ティーバッグ、コーヒーバッグ、食品フィルタ、浄水フィルタ、血液フィルタ、タバコフィルタ、キャビンフィルタ、オイルフィルタ、カートリッジフィルタ、真空フィルタ、掃除機用バッグ、防塵フィルタ、油圧用フィルタ、厨房用フィルタ、ファンフィルタ、水分交換フィルタ、花粉フィルタ、HEVAC/HEPA/ULPAフィルタ、ビールフィルタ、ミルクフィルタ、冷却液フィルタおよびフルーツ・ジュース・フィルタであってよい。
【0043】
さらに別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、吸収性衛生製品を製造するために使用されてもよい。その例には、捕捉層、カバーストック、分配層、吸収性カバー、生理用ナプキン、表面シート、裏面シート、レッグカフ、水洗トイレに流せる製品、パッド、授乳パッド、使い捨て下着、トレーニングパンツ、フェイスマスク、美容顔用マスク、化粧品除去パッド、手ぬぐい、おむつ、および活性成分(繊維柔軟剤など)を放出する洗濯乾燥機用シートが挙げられる。
【0044】
さらに別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、医療用途製品を製造するために使用されてもよい。例えば、そのような医療用途製品は、使い捨てキャップ、ガウン、マスクおよび靴カバー、創傷ケア製品、滅菌包装製品、カバーストック製品、包帯材料、使い捨て衣類(one way clothing)、透析製品、ネーザルストリップ(nasal strip)、義歯床用接着剤、使い捨て下着、ドレープ、ラップおよびパック、スポンジ、包帯およびワイプ、ベッドリネン、経皮薬物送達、シュラウド、アンダーパッド、処置パック(procedure pack)、ヒートパック、オストミーバッグライナ、固定テープならびに保育器用マットレスであり得る。
【0045】
さらに別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、ジオテキスタイルを製造するために使用されてもよい。これには、作物保護カバー、毛細管マット、浄水製品、灌漑制御製品、アスファルトの上敷き、土壌安定化製品、排水製品、沈殿および侵食制御製品、池の裏打ち、含浸ベース(impregnation based)製品、排水路の裏打ち、地盤安定化製品、穴の裏打ち、シードブランケット、雑草制御用布帛、温室の覆い、ルートバッグ(root bag)ならびに生分解性植木鉢の製造が含まれ得る。植物フォイル(plant foil)に不織セルロース繊維布帛を使用することも可能である(例えば、植物に光保護および/または機械的保護を提供し、および/または植物または土壌に肥料または種子を提供する)。
【0046】
別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、衣類を製造するために使用されてもよい。例えば、芯地、衣類の断熱および保護、ハンドバッグの部品、靴の部品、ベルトライナ、工業用帽子/フードウェア(foodwear)、使い捨て作業服、衣類および靴用袋、ならびに断熱材が、そのような布帛に基づいて製造されてもよい。
【0047】
さらに別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、建築技術に使用される製品を製造するために使用されてもよい。例えば、屋根葺きおよびタイルの下敷き、下敷き用スレート、断熱材および防音材、ハウスラップ(house wrap)、石膏ボード用の表面仕上げ、パイプ覆い(pipe wrap)、コンクリート成形層、土台および地盤の安定化製品、縦型排水管(vertical drainage)、屋根板、屋根葺きフェルト、騒音軽減材、補強材、シーリング材、ならびに制振材(機械的)が、そのような布帛を使用して製造されてもよい。
【0048】
さらに別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、自動車製品を製造するために使用されてもよい。例には、キャビンフィルタ、トランクの裏打ち、小荷物棚、熱シールド、シェルフトリム(shelf trim)、成型ボンネットの裏打ち、トランク床のカバー、オイルフィルタ、ヘッドライナ、後部小荷物棚、装飾布、エアバッグ、消音パッド、絶縁材、車のカバー、アンダーパッド(underpadding)、カーマット、テープ、裏打ちおよび房のある(tufted)カーペット、シートカバー、ドアトリム、ニードルカーペット、ならびに自動車用カーペット裏地が挙げられる。
【0049】
本発明の例示的な実施形態に従って製造された布帛のさらに別の適用分野は、家具、構造、アームおよび背もたれの断熱材、クッション肥厚材、防塵カバー、裏張り、縫い目の補強剤、エッジトリム材料、寝具構造、キルトの裏地、バネの覆い、マットレスパッド構成要素、マットレスカバー、窓のカーテン、壁の覆い、カーペットの裏地、ランプシェード、マットレス構成要素、バネ断熱材、シーリング(sealing)、枕肥厚材、ならびにマットレス肥厚材などの家具である。
【0050】
さらに別の実施形態では、不織セルロース繊維布帛は、工業製品を製造するために使用されてもよい。これには、電子機器、フロッピーディスクの裏打ち、ケーブル絶縁体、研磨剤、絶縁テープ、コンベアベルト、騒音吸収層、空調製品、電池セパレータ、酸性系(acid system)、滑り止めマット、汚れ除去具、食品ラップ、接着テープ、ソーセージのケーシング、チーズのケーシング、人工皮革、油回収ブーム(boom)およびソックス(socks)、ならびに製紙用フェルトが含まれ得る。
【0051】
本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛は、レジャーおよび旅行に関連する製品の製造にも適している。そのような用途の例には、寝袋、テント、旅行かばん、ハンドバッグ、買い物袋、飛行機用ヘッドレスト、CD保護製品、枕カバーおよびサンドイッチ用包装材が挙げられる。
【0052】
本発明の例示的な実施形態のさらに別の適用分野は、学校用およびオフィス用製品に関する。例として、ブックカバー、郵送用の封筒、地図、掲示板およびペナント、タオル、ならびに旗に言及しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
以下、実施形態の例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1】本発明の例示的な実施形態による、凝固流体によって凝固されるリヨセル紡糸溶液から直接形成される不織セルロース繊維布帛を製造するための装置を示す。
図2】特定のプロセス制御によって個々の繊維の併合が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示す。
図3】特定のプロセス制御によって個々の繊維の併合が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示す。
図4】特定のプロセス制御によって個々の繊維の併合が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示す。
図5】繊維の膨潤が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示し、この図は乾燥非膨潤状態の繊維布帛を示す。
図6】繊維の膨潤が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示し、この図は湿潤膨潤状態の繊維布帛を示す。
図7】ノズルの2つの直列バーを実装する特定のプロセスによって繊維の2つの重ね合わせた層の形成が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示す。
図8】本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の繊維の概略図を示し、図示される繊維は異なる繊維太さの部分を有する。
図9】本発明の別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の相互接続された繊維の概略図を示し、図示される繊維のうち異なるそれぞれは異なる繊維太さを有する。
図10】本発明のさらに別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の繊維の概略図を示し、図示される繊維のうち異なるそれぞれは異なる繊維太さを有し、図示される繊維のうち2つは併合線に沿って一体的に相互接続されて、上位繊維構造を形成する。
図11】異なる繊維太さを有する相互接続された繊維の2つの積層および併合層から構成される、本発明のさらに別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の概略図を示す。
図12】本発明の例示的な実施形態による、無端セルロース繊維ウェブの2つの積層から構成される不織セルロース繊維布帛を製造するための装置の一部を示す。
図13】異なる繊維部分の異なる繊維が実質的に異なる直径を有する、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示す。
図14】異なる繊維部分の異なる繊維が実質的に異なる直径を有する、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の実験的に捕捉された画像を示す。
図15】異なる直径の繊維を有する3つの積層から構成される、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面内の図は概略図である。様々な図面では、類似または同一の要素に同じ参照ラベルが設けられている。
【0055】
図1は、リヨセル紡糸溶液104から直接形成される不織セルロース繊維布帛102を製造するための本発明の例示的な実施形態による装置100を示す。リヨセル紡糸溶液104は、凝固流体106によって少なくとも部分的に凝固されて、部分的に形成されたセルロース繊維108に変換される。装置100により、本発明の例示的な実施形態によるリヨセル溶液吹付プロセスが実行されてもよい。本出願の文脈では、用語「リヨセル溶液吹付プロセス」は、特に、個別の長さの本質的に無端のフィラメントもしくは繊維108、または個別の長さの無端フィラメントと繊維との混合物を得ることができるプロセスを包含し得る。以下にさらに説明するように、オリフィス126をそれぞれ有するノズルが設けられ、このノズルを通して、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102を製造するためのガス流れまたはガス流146とともに、セルロース溶液またはリヨセル紡糸溶液104が噴射される。
【0056】
図1から分かるように、木材パルプ110、他のセルロース系原料などが、計量ユニット113を介して貯蔵タンク114に供給されてもよい。水用容器112からの水も、計量ユニット113を介して貯蔵タンク114に供給される。したがって、計量ユニット113は、以下でさらに詳細に説明される制御ユニット140の制御下で、貯蔵タンク114に供給される水と木材パルプ110との相対量を規定してもよい。溶媒用容器116に収容された溶媒(N−メチルモルホリン、NMMOなど)が、濃縮ユニット118内で濃縮されてもよく、その後、混合ユニット119内で、規定可能な相対量の水と木材パルプ110との混合物または他のセルロース系原料と混合されてもよい。また、混合ユニット119は、制御ユニット140によって制御され得る。これにより、水木材パルプ110媒体が、溶解ユニット120内で、調整可能な相対量の濃縮された溶媒に溶解され、それによりリヨセル紡糸溶液104が得られる。水性リヨセル紡糸溶液104は、木材パルプ110を含む(例えば5質量%〜15質量%の)セルロース、および(例えば85質量%〜95質量%の)溶媒から構成される蜂蜜粘性(honey−viscous)媒体であり得る。
【0057】
リヨセル紡糸溶液104は、(多数の紡糸ビームまたはジェット122として具現化され得るか、それを備え得る)繊維形成ユニット124に送られる。例えば、ジェット122のオリフィス126の数は、50よりも多く、特に100よりも多くてもよい。1つの実施形態では、ジェット122のオリフィス126の(ジェット122の多数の紡糸口金を備え得る)繊維形成ユニット124のオリフィス126はいずれも、同じサイズおよび/または形状を有し得る。あるいは、1つのジェット122の異なるオリフィス126および/または(多層布帛を形成するために直列に配置され得る)異なるジェット122のオリフィス126のサイズおよび/または形状は異なってもよい。
【0058】
リヨセル紡糸溶液104はジェット122のオリフィス126を通過すると、リヨセル紡糸溶液104の複数の平行なストランドに分割される。鉛直に配向されたガス流、すなわち、紡糸方向に実質的に平行に配向されたガス流が、リヨセル紡糸溶液104をますます長くかつ細いストランドに変形させ、ストランドは、制御ユニット140の制御下でプロセス条件を変更することによって調整することができる。ガス流は、オリフィス126から繊維支持ユニット132に向かう途中の少なくとも一部に沿って、リヨセル紡糸溶液104を加速させてもよい。
【0059】
リヨセル紡糸溶液104がジェット122を通ってさらに下方に移動する間、リヨセル紡糸溶液104の長く細いストランドは非溶媒凝固流体106と相互作用する。凝固流体106は、蒸気ミスト、例えば水性ミストとして有利に具現化される。凝固流体106のプロセス関連特性は、1つまたは複数の凝固ユニット128によって制御され、凝固流体106に調整可能な特性を提供する。凝固ユニット128は、次いで、制御ユニット140によって制御される。好ましくは、製造中の布帛102のそれぞれの層の特性を個々に調整するために、個々のノズルまたはオリフィス126の間にそれぞれの凝固ユニット128が設けられる。好ましくは、各ジェット122は、各側から1つずつ、2つの割り当てられた凝固ユニット128を有してもよい。したがって、個々のジェット122には、製造された布帛102の異なる層の異なる制御可能な特性を有するように調整されてもよいリヨセル紡糸溶液104の個々の部分を設けることができる。
【0060】
凝固流体106(水など)と相互作用すると、リヨセル紡糸溶液104の溶媒濃度が低下し、その結果、リヨセル紡糸溶液104のセルロース、例えば、木材パルプ110(または他の原料)が、(依然として残留溶媒および水を含有し得る)長く細いセルロース繊維108として少なくとも部分的に凝固される。
【0061】
押し出されたリヨセル紡糸溶液104からの個々のセルロース繊維108の初期形成中またはその後に、ここでは平面繊維収容面を有するコンベアベルトとして具現化される繊維支持ユニット132上にセルロース繊維108を堆積させる。セルロース繊維108は、(図1に概略的にのみ示されている)不織セルロース繊維布帛102を形成する。不織セルロース繊維布帛102は、連続した実質的に無端のフィラメントまたは繊維108から構成される。
【0062】
図1には示されていないが、凝固ユニット128による凝固、および洗浄ユニット180での洗浄で除去されたリヨセル紡糸溶液104の溶媒は、少なくとも部分的にリサイクルすることができる。
【0063】
不織セルロース繊維布帛102は、繊維支持ユニット132に沿って輸送している間、洗浄液を供給して残留溶媒を除去する洗浄ユニット180によって洗浄することができ、次いで乾燥させてもよい。不織セルロース繊維布帛102は、任意であるが有利な追加の処理ユニット134によってさらに処理することができる。例えば、そのような追加の処理には、水流交絡、ニードルパンチ、含浸、加圧蒸気による蒸気処理、カレンダ成形などが含まれ得る。
【0064】
繊維支持ユニット132はまた、巻取機136に不織セルロース繊維布帛102を輸送してもよく、巻取機136上では、不織セルロース繊維布帛102は実質的に無端のシートとして収集され得る。次いで、不織セルロース繊維布帛102は、不織セルロース繊維布帛102に基づくワイプまたは織物などの製品を製造する事業体に、ロール商品として出荷されてもよい。
【0065】
図1に示すように、記載されたプロセスは、制御ユニット140(プロセッサ、プロセッサの一部、または複数のプロセッサなど)によって制御され得る。制御ユニット140は、図1に示される様々なユニット、特に、計量ユニット113、混合ユニット119、繊維形成ユニット124、凝固ユニット128、追加の処理ユニット134、溶解ユニット120、洗浄ユニット180などのうち1つまたは複数の動作を制御するように構成される。したがって、制御ユニット140は(例えば、コンピュータ実行可能プログラムコードを実行することにより、および/またはユーザにより規定された制御コマンドを実行することにより)、不織セルロース繊維布帛102が製造されるプロセスパラメータを正確かつ柔軟に規定することができる。この文脈での設計パラメータとは、オリフィス126に沿った空気流、凝固流体106の特性、繊維支持ユニット132の駆動速度、リヨセル紡糸溶液104の組成、温度および/または圧力などである。不織セルロース繊維布帛102の特性を調整するために調整され得る追加の設計パラメータは、オリフィス126の数および/または相互距離および/または幾何学的配置、リヨセル紡糸溶液104の化学組成および濃縮度などである。それにより、不織セルロース繊維布帛102の特性は、以下に記載されるように適切に調整され得る。そのような調整可能な特性(以下の詳細な説明を参照)には、以下の特性、すなわち、繊維108の直径および/または直径分布、繊維108間の併合の量および/または領域、繊維108の純度レベル、多層布帛102の特性、布帛102の光学特性、布帛102の流体保持特性および/または流体放出特性、布帛102の機械的安定性、布帛102の表面の滑らかさ、繊維108の断面形状などのうち1つまたは複数が含まれ得る。
【0066】
図示されていないが、各紡糸ジェット122は、それを介してリヨセル紡糸溶液104がジェット122に供給されるポリマー溶液入口を備えてもよい。空気入口を介して、リヨセル紡糸溶液104にガス流146を適用することができる。ジェット筐体によって区切られた、ジェット122の内部の相互作用チャンバから、リヨセル紡糸溶液104が(ガス流146がリヨセル紡糸溶液104を下方に引っ張ることにより)それぞれのオリフィス126を通って下方に移動するか加速され、ガス流146の影響下で横方向に狭くなり、その結果、凝固流体106の環境内でリヨセル紡糸溶液104がガス流146と一緒に下方に移動すると、連続的に先細になるセルロースフィラメントまたはセルロース繊維108が形成される。
【0067】
したがって、図1を参照して説明する製造方法に含まれるプロセスは、セルロース溶液とも呼ばれ得るリヨセル紡糸溶液104が、液体ストランドまたは潜在フィラメントを形成するように形作られることを含み得、液体ストランドまたは潜在フィラメントは、ガス流146によって引き出され、直径が著しく減少し、長さが増大する。繊維支持ユニット132上でのウェブ形成の前または最中の凝固流体106による潜在フィラメントまたは繊維108(またはそのプリフォーム)の部分凝固も含まれ得る。フィラメントまたは繊維108は、ウェブ状布帛102に形成され、洗浄され、乾燥され、必要に応じてさらに処理されてもよい(追加の処理ユニット134を参照)。フィラメントまたは繊維108は、例えば、回転ドラムまたはベルト上で収集され得、それによりウェブが形成される。
【0068】
記載された製造プロセスおよび特に使用される溶媒の選択の結果として、繊維108は5ppm未満の銅含有量および2ppm未満のニッケル含有量を有する。これにより、布帛102の純度が有利に改善される。
【0069】
本発明の例示的な実施形態によるリヨセル溶液吹付ウェブ(すなわち、不織セルロース繊維布帛102)は、好ましくは、以下の特性のうち1つまたは複数を示す。
【0070】
(i)ウェブの乾燥重量は5〜300g/m、好ましくは10〜80g/mである。
(ii)WSP120.6規格(それぞれDIN29073)(特に、本特許出願の優先日に有効な最新版)によるウェブの厚さは、0.05〜10.0mm、好ましくは0.1〜2.5mmである。
(iii)EN29073−3(それぞれISO9073−3)(特に、本特許出願の優先日に有効な最新版)によるMDでのウェブの特定の靭性は、0.1〜3.0Nm/g、好ましくは0.4〜2.3Nm/gの範囲である。
(iv)EN29073−3(それぞれISO9073−3)(特に、本特許出願の優先日に有効な最新版)によるウェブの平均伸長率は、0.5〜100%、好ましくは4〜50%の範囲である。
(v)ウェブのMD/CD靭性比は1〜12である。
(vi)DIN 53814(特に、本特許出願の優先日に有効な最新版)によるウェブの保水率は、1〜250%、好ましくは30〜150%である。
(vii)DIN 53923(特に、本特許出願の優先日に有効な最新版)によるウェブの保水力は、90〜2000%、好ましくは400〜1100%の範囲である。
(viii)基質分解に関するEN 15587−2およびICP−MS分析に関するEN 17294−2規格による、銅含有量5ppm未満およびニッケル含有量2ppm未満の金属残留物レベル(特に、本特許出願の優先日に有効な最新版)。
【0071】
最も好ましくは、リヨセル溶液吹付ウェブは、上述した前記特性(i)〜(viii)をいずれも示す。
【0072】
説明したように、不織セルロース繊維布帛102を製造するプロセスは、好ましくは以下を含む。
(a)少なくとも1つのジェット122のオリフィス126を通してNMMO(符号104を参照)に溶解したセルロースを含む溶液を押し出し、それによりリヨセル紡糸溶液104のフィラメントを形成すること。
(b)ガス流(符号146を参照)によって、リヨセル紡糸溶液104の前記フィラメントを引き伸ばすこと。
(c)前記フィラメントと、好ましくは水を含有する蒸気ミスト(符号106を参照)とを接触させ、それにより前記繊維108を少なくとも部分的に沈殿させること。その結果、フィラメントまたは繊維108は、ウェブまたは不織セルロース繊維布帛102を形成する前に少なくとも部分的に沈殿する。
(d)前記フィラメントまたは繊維108を収集および沈殿させて、ウェブまたは不織セルロース繊維布帛102を形成すること。
(e)洗浄ラインの溶媒を除去すること(洗浄ユニット180を参照)。
(f)場合により、水流交絡、ニードルパンチなどを介して結合させること(追加の処理ユニット134を参照)。
(g)乾燥およびロール収集。
【0073】
不織セルロース繊維布帛102の構成要素は、併合、混入、水素結合、物理的結合、例えば水流交絡またはニードルパンチ、および/または化学的結合によって結合されてもよい。
【0074】
さらに処理するために、不織セルロース繊維布帛102は、同じおよび/または他の材料の1つまたは複数の層、例えば(図示せず)、合成ポリマーの層、セルロース毛羽立ちパルプ、セルロースまたは合成ポリマー繊維の不織ウェブ、複合繊維、セルロースパルプのウェブ、例えば、エアレイドまたはウェットレイドパルプ、高靭性繊維のウェブまたは布帛、疎水性材料、高性能繊維(温度抵抗性材料または難燃性材料など)、最終製品に変化した機械的特性を与える層(ポリプロピレンまたはポリエステルの層など)、生分解性材料(例えば、ポリ乳酸由来のフィルム、繊維またはウェブ)、および/または高バルク材料と組み合わされてもよい。
【0075】
不織セルロース繊維布帛102のいくつかの区別可能な層を組み合わせることも可能である。例えば、図7を参照されたい。
【0076】
不織セルロース繊維布帛102は、セルロースのみから本質的になってもよい。あるいは、不織セルロース繊維布帛102は、セルロースと1つまたは複数の他の繊維材料との混合物を含んでもよい。さらに、不織セルロース繊維布帛102は、複合繊維材料を含んでもよい。不織セルロース繊維布帛102内の繊維材料は、改質物質を少なくとも部分的に含んでもよい。改質物質は、例えば、ポリマー樹脂、無機樹脂、無機顔料、抗菌製品、ナノ粒子、ローション、難燃性製品、吸収性改善添加剤、例えば、超吸収性樹脂、イオン交換樹脂、炭素化合物、例えば、活性炭、グラファイト、導電性のための炭素、X線造影物質、発光顔料および染料からなる群から選択されてもよい。
【0077】
結論として、リヨセル紡糸溶液104から直接製造されたセルロース不織ウェブまたは不織セルロース繊維布帛102は、ステープル繊維を用いた方法を介しては不可能な付加価値ウェブ性能を利用可能にする。これには、均一な軽量ウェブを形成する可能性、マイクロファイバ製品を製造する可能性、およびウェブを形成する連続フィラメントまたは繊維108を製造する可能性が含まれる。さらに、ステープル繊維由来のウェブと比較して、いくつかの製造手順はもはや必要ではない。さらに、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102は、生分解性であり、持続可能に供給された原材料(すなわち、木材パルプ110など)から製造される。また、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102は、純度および吸収性の点で利点を有する。さらに、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102は、調整可能な機械的強度、剛性および柔軟性を有する。また、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102は、面積当たりの重量が小さくなるように(例えば、10〜30g/m)製造され得る。この技術により、直径5μm以下、特に3μm以下までの非常に微細なフィラメントを製造することができる。また、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102は、平坦でパリッとした(crispy)フィルム状、紙状、または柔軟で弾力的な織物状など、ウェブの広範囲の美粧性を備えて形成されてもよい。記載されたプロセスのプロセスパラメータを適合させることにより、不織セルロース繊維布帛102の剛性および機械的剛性または弾力性および柔軟性を正確に調整することがさらに可能である。これは、例えば、併合位置の数、層の数を調整するか、後処理(ニードルパンチ、水流交絡および/またはカレンダ成形など)によって調整することができる。特に、10g/m以下までの比較的低い坪量を有する不織セルロース繊維布帛102を製造して、非常に小さな直径(例えば、3〜5μm以下まで)などを有するフィラメントまたは繊維108を得ることが可能である。
【0078】
図2図3および図4は、対応するプロセス制御によって個々の繊維108の併合が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の実験的に捕捉された画像を示す。図2から図4の楕円形のマーカは、複数の繊維108が互いに一体的に接続されているそのような併合領域を示している。そのような併合点では、2つ以上の繊維108を相互接続して、一体化構造を形成してもよい。
【0079】
図5および図6は、繊維108の膨潤が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の実験的に捕捉された画像を示し、図5は乾燥非膨潤状態の繊維布帛102を示し、図6は湿潤膨潤状態の繊維布帛102を示す。細孔径は、図5および図6の両方の状態で測定することができ、互いに比較することができる。30回の測定の平均値を計算すると、水性媒体中の繊維108の膨潤によって、細孔径がそれらの初期直径の47%まで減少したことを決定することができた。
【0080】
図7は、対応するプロセス設計、すなわち、複数の紡糸口金の直列配置によって、繊維108の2つの重ね合わせた層200、202の形成が達成された、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の実験的に捕捉された画像を示す。2つの別個であるが接続された層200、202が、図7に水平線によって示されている。例えば、機械方向に沿ってn個の紡糸口金またはジェット122を直列に配置することにより、n層布帛102(n≧2)を製造することができる。
【0081】
本発明の特定の例示的な実施形態を以下にさらに詳細に説明する。
【0082】
図8は、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の繊維108の概略図を示す。図示される繊維108は、異なる繊維太さdの部分を有し、D>dである。より具体的には、図8の実施形態は、リヨセル紡糸溶液104から直接製造された不織セルロース繊維布帛102を提供し、布帛102は、繊維径に関して最小直径dに対して数100%だけ異なる繊維108を含む。したがって、図8では、繊維内の太の変動が存在する。
【0083】
図9は、本発明の別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の相互接続された繊維108の概略図を示す。図9によれば、図示される3本の繊維108のうち異なるそれぞれは、異なる繊維太さdを有し、D>dである。図9によれば、異なる繊維108は、繊維径に関して最小直径dに対して数100%だけ異なる。特に、比D:dは1.5よりも著しく高くてよい。したがって、図8では、個々の繊維108の繊維内の太さ変動に加えて、異なる繊維108の間に繊維間の太さ変動が存在する。
【0084】
図10は、本発明のさらに別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の繊維108の概略図を示し、図示される繊維108のうち2つは、併合線(符号204を参照)に沿って一体的に相互接続されて、上位繊維構造206を形成する。図10は、上位繊維構造206の断面図も含み、2本の繊維108が符号204で一体的に接続されることによって上位繊維構造206が形成されていることを示している。したがって、上記の2本の繊維108は、並んで整列して、図10の下部の別個の第3の繊維108よりも大きな直径を有する上位繊維構造206を形成する。
【0085】
図11は、異なる繊維太さdを有し、D>dである相互接続された繊維108の2つの積層併合層200、202から構成される、本発明のさらに別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の概略断面図を示す(図11の2つの下部詳細図を参照)。より具体的には、異なる層200、202に位置する繊維108のうち異なるそれぞれは、平均繊維径(すなわち、それぞれの層200、202の繊維108にわたって平均化される)に関して異なる。層200、202の間の界面もさらに詳細に示されており、界面での布帛102の安定性を高めるために界面で両方の層200、202の繊維108を一体的に結合する併合点204が見える(図11の上部詳細図を参照)。さらに、異なる層200、202に位置する繊維108のうち異なるそれぞれが、少なくとも1つのそれぞれの併合位置204で一体的に接続される。異なる層200、202に位置し、異なる平均直径で形成されている繊維108は、異なる機能性を備えてもよい。そのような異なる機能性は、異なる平均直径によって支持されてもよいが、それぞれのコーティングなどによってさらに促進されてもよい。そのような異なる機能性は、例えば、ウイッキング性、異方性挙動、異なる吸油能力、異なる吸水能力、異なるクリーナビリティおよび/または異なる粗さに関して異なる挙動であり得る。
【0086】
図12は、本発明の例示的な実施形態による、無端セルロース繊維108の2つの積層200、202から構成される不織セルロース繊維布帛102を製造するための装置100の一部を示す。図12に示される装置100と図1に示される装置100との相違は、図12に記載の装置100が、上述のように、2つの直列に整列されたジェット122と、それぞれ割り当てられた凝固ユニット128とを備えることである。コンベアベルトタイプの繊維支持ユニット132の可動式繊維収容面を考慮して、図12の左側の上流ジェット122は層202を生成する。層200は、下流ジェット122(図12の右側を参照)によって生成され、布帛102の二重層200、202が得られるように、先に形成された層202の上部主表面に取り付けられる。
【0087】
図12によれば、異なる層200、202の繊維108が、繊維径に関して最小直径(例えば図11を参照)に対して50%を超えるほど異なるようにプロセスパラメータを調整するように、(ジェット122および凝固ユニット128を制御する)制御ユニット140が構成される。制御ユニット140によって層200、202の繊維108の繊維径を調整することは、リヨセル紡糸溶液104と相互作用する凝固流体106の量を調整することを含んでもよい。加えて、図12の実施形態は、可動式繊維支持ユニット132に沿って、(場合により異なる特性を有する)オリフィス126を有する複数のジェット122を直列に配置することによって、繊維径を調整するためのプロセスパラメータを調整する。例えば、そのような異なる特性は、オリフィス126の異なる直径、ガス流146の異なる速度、ガス流146の異なる量および/またはガス流146の異なる圧力であり得る。図12には示されていないが、繊維108を繊維支持ユニット132上で収集した後に、液体ジェット圧縮、ニードリングおよび/または含浸によって、さらに処理することが可能である。
【0088】
さらに図12に示される実施形態を参照すると、1つまたは複数の追加のノズルバーまたはジェット122が設けられ得、繊維支持ユニット132の輸送方向に沿って直列に配置され得る。好ましくは層202および/または層200の繊維108の凝固または硬化プロセスが完全に完了する前に、繊維108の追加の層200が先に形成された層202の上に堆積され得、これが併合を引き起こし得るように、複数のジェット122が配置されてもよい。プロセスパラメータを適切に調整すると、これは、多層布帛102の特性に関して有利な効果をもたらし得る。
【0089】
一方、第1の堆積層202は、繊維支持ユニット132としてのコンベアベルトなどの輸送バンド上に置かれてもよい。そのような一実施形態では、繊維支持ユニット132は、解放機構および空気吸引開口部(図示せず)の規則正しい構造として具現化されてもよい。繊維108のフィラメントの統計分布では、これは、気流が存在しない領域で比較的高い材料濃度を見出すことができるという効果を有し得る。そのような(特に微視的な)材料密度の変動は、機械的観点から、不織セルロース繊維布帛102の均一性の歪み(特に、パターンを抑制するその傾向による)として機能する穿孔と考えることができる。ガス流または液体流(例えば水)が不織セルロース繊維布帛102を貫通する位置では、不織セルロース繊維布帛102に細孔が形成され得る。このような流体の流れ(流体は気体または液体であり得る)により、製造された不織セルロース繊維布帛102の引裂き強度が増大し得る。特定の理論に縛られることを望まないが、現在、第2の層200は第1の層202の補強と考えることができ、これにより、層202の均一性の低下が補償されると考えられている。機械的安定性のこの増大は、繊維径の変動(特に、個々の繊維108の繊維間の直径変動および/または繊維内長手方向の直径変動)によってさらに改善することができる。さらに深い(特に時間厳守の)圧力(例えば、空気または水によって提供される)を加えると、繊維108の断面形状はさらに意図的に歪み得、これにより、有利には、機械的安定性のさらなる増大がもたらされ得る。
【0090】
一方、図12に記載の布帛102の繊維108間に意図された併合を引き起こして、布帛102の機械的安定性をさらに増大させることができる。この文脈では、併合とは、特に、併合される繊維108の一方または両方の凝固プロセスの完了前の、繊維108の接触フィラメントの支持された接触点接着であり得る。例えば、流体の流れ(例えば、空気または水の流れ)によって接触圧力を高めることにより、併合が促進され得る。この手段をとることにより、一方では層200、202の一方のフィラメントまたは繊維108の間、および/または他方では層200、202の間の凝固の強度が高められ得る。
【0091】
多層布帛102の製造のために構成された図12に記載の装置100は、繊維108の形状および/または直径もしくは直径分布、ならびに繊維層200、202を設計するために使用することができる多数のプロセスパラメータを実装する。これは、複数のジェット122の直列配置の結果であり、複数のジェット122のそれぞれは、個々に調整可能なプロセスパラメータによって動作可能である。
【0092】
図12に記載の装置100では、少なくとも2つの層200、202(好ましくは2つを超える層)から構成される布帛102を製造することが特に可能である。異なる層200、202の繊維108は、異なる値の平均直径を有してもよく、1つの連続プロセスで形成されてもよい。この手段をとることにより、不織セルロース繊維布帛102の非常に効率的な製造を確保することができ、これにより、特に、得られた多層布帛102を1つの輸送手順で、追加の処理のために目的地に移すことができる。
【0093】
多層布帛102の規定された層分離により、異なる個々の層200、202または異なる多層部分に多層布帛102を後で分離することも可能である。本発明の例示的な実施形態によれば、1つの層200、202の繊維108の層内接着、ならびに隣接する層200、202の間の繊維108の層間接着(例えば、併合および/または摩擦発生接触による)の両方を適切かつ個々に調整することができる。各層200、202ごとの対応する個別の制御が、特に、一方の層202の繊維108の凝固または硬化が、その上に繊維108の他方の層200が置かれたときに既に完了しているように、プロセスパラメータを調整すると、個々に達成され得る。
【0094】
図13および図14は、異なる繊維部分の異なる繊維108が実質的に異なる直径を有する、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の実験的に捕捉された画像を示す。図13の実施形態は、高い毛管吸引能力を有する緊密で緻密なウェブまたは布帛102を示す。図14の実施形態は、布帛102の繊維108の直径/力価および形状の異なる変動を示す。これには、撚り、全く同一の繊維108内の太さの変動、異なる繊維径、ならびに凝固した平行な繊維108が含まれる。
【0095】
図15は、異なる直径の繊維108を有する3つの積層202、200、200から構成される、本発明の別の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の概略図を示す。図15によれば、中間サンドイッチ層200は、上下の2つの外部層200、202よりも繊維108の直径が著しく小さい。
【0096】
図15に示される多層布帛102は、医療器具、農業用織物などの用途に特に適している。例えば、高い毛管作用を示す内層200に活性物質が貯蔵されてもよい。外層200、202は、剛性および表面触覚に関して設計されてもよい。これは、洗浄および医療用途に有利である。農業用途の場合、繊維層の設計は、蒸発特性および/または根の浸透に関して特に構成されてもよい。
【0097】
別の用途では、図15に示される多層布帛102は、顔用マスクとして使用されてもよく、中央層200は、特に顕著な流体保持能力を有してもよい。被覆層200、202は、流体放出特性を調整するように構成されてもよい。それぞれの層200、200、202の繊維108の直径は、これらの機能を調整するための設計パラメータとして使用され得る。
【0098】
例示的な実施形態によれば、不織セルロース繊維布帛102の繊維径の変動は、製造プロセスにおいて調整され、機能化として所望の製品特性を設定するために使用され得る。特に、調整された繊維径の変動の結果としてのそのような機能化は、製造された不織セルロース繊維布帛102の機械的堅牢性を改善するために使用され得る。非常に有利には、直径変動を示す不織セルロース繊維布帛102の繊維108は、無端繊維108であってよい。
【0099】
記載された製造プロセスにより、重金属不純物、特に銅およびニッケルに関係するものの濃度が非常に低い不織セルロース繊維布帛102では、繊維径の変動を得ることも可能である。例えば、ニッケルはユーザによるアレルギ反応のリスクを伴うことが知られている。そのようなリスクは、特にニッケル由来の重金属不純物の濃度を非常に低く保つと、著しく低下し得る。これらの低濃度の重金属不純物は、リヨセル紡糸溶液104およびその成分に基づいた布帛102の形成の結果である。このように、不純物濃度が非常に低い高純度のセルロース繊維網が得られ得る。したがって、リヨセル製造構造による記載されたフィラメントの製造により、容易に製造される布帛102では、プロセス関連重金属含有量は著しい量ではない。これは、後処理要件との適合性を達成するのに特に有利であり、容易に製造される布帛102が人間および/または天然生物と接触する場合に特に有利である。
【0100】
本発明の例示的な実施形態による、顕著な繊維径の変動を有する不織セルロース繊維布帛102では、所与の坪量(すなわち、シート状布帛102の面積当たりの重量)に対してさらに高い機械的安定性が得られ得るか、同じ機械的安定性で低下した坪量が得られ得る。
【0101】
上述の不織セルロース繊維布帛102の製造方法により、繊維形成ユニット124では、フィラメントまたは繊維108を形成するためにノズルバー(ジェット122を参照)が使用されてもよい。次いで、これらのフィラメントまたは繊維108は、ガス流146の影響下で引き伸ばされる、すなわち、長く細くなり、繊維支持ユニット132などの輸送装置上に置かれる。次いで、繊維108または(例えば、まだ硬化していない、またはまだ完全に凝固していない)そのプリフォームを引き伸ばしている間に適用される空気乱流または渦によって、フィラメント繊維108とフィラメント繊維108との間の併合点の形成を促進することができる。追加的または代替的に、繊維支持ユニット132上に置く際に、様々な繊維108またはそのプリフォームの間に併合点を形成することも可能である。この引き伸ばしプロセス中に、生成されたフィラメントジェットの大きなランダムに制御された変動がある。そのようなプロセス中、繊維108の多数の個々のフィラメントを考慮すると、存在し得る平行な空気および水の流れの自己組織化特性が問題となり得る。層流と乱流との間の遷移領域内の空気流によって生成され得る機械的干渉による望ましくないパターン形成は、プロセスパラメータの対応する調整によって、製造された不織セルロース繊維布帛102の繊維径の著しい変動を引き起こすことによって、抑制するか、さらには排除することができる。これに関連して、繊維108の個々のフィラメントのみがわずかに変更されれば十分であり得る。この手段をとることにより、顕著な自己組織化に必要な詳細なパラメータの調和が意図的に歪められ得、結果として生じるフィラメント直径分布のランダムな特性が増大し得る。その結果、機械的安定性が高い不織セルロース繊維布帛102が得られる。
【0102】
一実施形態では、大量の著しい繊維径の差によって、不織セルロース繊維布帛102の繊維108の力価を意図的に歪ませることができる。例えば、非常に細い繊維108は、隣接する繊維108間の適切な毛管現象を達成することを可能にし得る。比較的太い繊維108と混合すると、剛性、粗さおよび/または剛直性の増大がもたらされ得る。
【0103】
本発明の例示的な実施形態による異なる力価の組合せは、それぞれの1本の繊維108の長さに沿った無端繊維108の太さの変動によって(例えば、繊維形成中に延伸ガス流146によって誘発される周期的な圧力および/または速度の変化によって)達成することができる。一方、これは、ノズルのオリフィス126の様々な直径の使用の結果として、様々な繊維太さを有する繊維を形成することによって達成することもできる。直径の著しい変動を伴う繊維108を形成するさらなる可能性は、異なる力価を有する層200、202の凝固プロセスの調整である。本発明のさらに別の例示的な実施形態は、平行に整列した繊維108の凝固による繊維径の変動を伴う繊維108を形成し、繊維108は組み合わされるか併合することにより、細長い併合線に沿って接続されたさらに太い上位繊維構造206を形成する。
【0104】
特に、不織セルロース繊維布帛102が高密度であれば、比較的小さな接着であっても引っ張り力の場合の太さの変動のための弾力性のある緩衝として作用するという効果によって、個々の無端繊維108に沿った直径の変動が布帛102全体の安定性の増大に寄与する。
【0105】
本発明の例示的な実施形態によれば、吸上速度(すなわち、液体が布帛に入る速度)に影響を及ぼすか、吸上速度を調整するために、繊維の直径の変動を使用することもできる。記述的に言えば、非常に細い繊維は、液体に入ると、太い繊維とは異なる方法で反応する。
【0106】
繊維108の大きな伸長に沿った繊維径の変動により、布帛102において所望の摩擦に基づく固定効果を得ることが可能である。これにより、(円錐ツール受容の場合と同様に)自己抑制効果が得られ得る。そのような効果は、一定の直径と比較して直径分布の偏差が比較的小さい場合に既に得られている場合がある。このようにして作成された円錐体は、他の繊維(例えば、円錐形状上の円錐体内または円柱形状上の円錐体内)とともに抑制系を形成することができる。別の固定効果は、1本の繊維108を別の繊維108の周りに任意に巻き取ることによっても生成され得る。1本の繊維108が別の繊維108のベール(bail)の貫通穴を貫通する場合、特に、最初に言及した繊維108がその長さに沿って変化する直径を有する場合にも有利であり得る。このような場合、比較的高い初期弾性にもかかわらず、さらに補強が達成される。これは、布帛102の全体の剛性にもプラスの影響を与える。
【0107】
繊維径の変動を引き起こすための上記の測定および/または他の測定は、個々に実装することも、組み合わせることもできる。例えば、1:1.1〜1:1000の範囲で繊維径の変動を調整することができる。これにより、多くの様々な直径を組み合わせることができる。
【0108】
無端繊維108(一般的な長さ38mmのステープル繊維と比較して)は本質的に、比較的少ない数の擾乱遷移(disturbing transition)を伴い、その結果、既に個々の無端繊維108は比較的高い機械的安定性を有するため、本発明の例示的な実施形態による布帛102の高い機械的安定性は、セルロースから作られた無端繊維108の使用によっても促進される。リヨセル構造から得られたセルロース繊維108を提供することにより、例えば、個々の化学元素ごとに10ppm未満のプロセス関連重金属含有量を有し得る高純度繊維108から布帛102を形成することが可能である。この高度の純度により、繊維108に汚染物質または不純物が含まれる傾向が抑制されるため、これにより、繊維108の機械的弱体化を防ぐことができる。
【0109】
水によって誘発される併合の結果、生体構造に類似した力伝達および力平衡構造が得られ得るように、キャリアグリッド(carrier grid)、キャリアウェブまたは他の種類のキャリア構造の設計によって、形成された布帛102の機械的安定性の制御をさらに改善することが可能になり得る。そのような種類の構造は、従来のセルロース繊維よりも著しく大きな力を受けることができる。
【0110】
また、多層布帛102の異なる層厚および/または不織セルロース繊維布帛102内の繊維径の変動により、容易に製造される不織セルロース繊維布帛102の機械的減衰効果および/または発現された全体的な弾性の調整を得ることができ得る。これは、例えば、包装された商品を機械的に保護するためのパッケージとして使用される布帛102の用途に有利であり得る。
【0111】
必要な触覚特性を有する用途では、布帛102の特定の基本特性(例えば、特定の液体管理)と、触覚的に適合された(特に柔らかい)被覆層とを組み合わせることが可能である。特に、繊維径の変動の機会は、本発明の例示的な実施形態による不織セルロース繊維布帛102の異なる機能的特性(例えば、膨潤能力、親水性、親油性、ウイッキング性、液体保持性特性)の組合せを可能にする。
【0112】
実験分析では、繊維径が70μm未満、特に3μm〜30μmの範囲で、機械的補強に関して極めて良好な結果が得られた。
【0113】
繊維径の変動を伴う不織セルロース繊維布帛102を分析および製造する場合、この概念により、クリーナビリティを大幅に改善することができることが判明した(これは、シートまたはワイプの洗浄に有利であり得る)。さらに、布帛102は、(特に、しわ、丸みなどの非平面的特徴を含み得る)顔の表面上に、さらに滑らかかつさらに良好な接触を伴って置かれ得る(これは、フェイスマスクなどの用途に有利であり得る)。また、布帛102の滑らかさを正確に制御することができる。さらに、布帛102上に受容ゾーンまたは固体粒子を正確に形成することができる。
【0114】
繊維太さの分布の量に関するもの、50%の既に中程度の繊維径の変動(すなわち、最大直径÷最小直径×100%−100%)が、製造プロセスでの無端繊維108の自己組織化効果によって形成されるパターンを防ぐのに十分であることが判明した。リヨセル紡糸溶液104から無端繊維108を生成する際に直径をわずかに変化させることによって、または層流と乱流との間の遷移領域に対して変動を伴う吹付を行うことによって、このような小さな直径の変動を極めて容易に作ることができる。
【0115】
さらなる実施形態では、全く同一の不織セルロース繊維布帛102において異なる機能化がもたらされ得る。そのような異なる機能化は、繊維径の変動によっても得られ得る。例えば、製造プロセス中に、異なる直径の繊維108を適切に組み合わせることができる。
【0116】
第1の変形例では、所望の機械的堅牢性を得ることができるように、1つの体積要素内に十分な太さのフィラメントまたは繊維108を適切な量で提供することが可能である。さらに、比較的細いフィラメントまたは繊維108であれば、同じ体積要素内に細かいメッシュのマトリックスとして実装することができ、例えば、特定の機能(例えば、不純物の滞留)を提供するという点で適合させることができる。細かいメッシュのマトリックスは、例えば、繊維径、網形成の程度、併合点の数などを調整することにより、所望の機能を提供するように構成されてもよい。そのようなトップダウン設計は、例えば、剛性が重要である場合、および比較的細い繊維108によって設けられ得る追加機能が望まれる場合に有利であり得る。
【0117】
第2の変形例では、1つの体積要素内に、最終製品に関する洗浄、滞留、埋め込み、および/またはフィルタの要件が満たされるような量の細い繊維108を提供することが可能である。次いで、所望の機械的最小負荷要件を満たすことができるように、さらに太い繊維108を補充することにより、残りの所望の機械的安定性を提供することができる。そのようなボトムアップ設計は、例えば、特定の基準(布帛領域ごとの最大細孔数など)を超えない場合に有利であり得る。
【0118】
本発明の例示的な実施形態では、上述のように、異なる直径または直径分布の繊維108が、それらを併合することにより相互接続され得る。
【0119】
さらなる実施形態では、(ステープル繊維とは対照的に)無端繊維108を使用すると、基本特性の改善された混合または補強を達成することが可能である。その理由は、このような構成により、機械的安定性の点で寄与の大きい太い静止繊維部分が細い繊維部分に移行する可能性があるためである。1つまたは複数の併合点で繊維108を固定することにより、1つまたは複数の併合点は最初の不良の位置を規定し得る。繊維の数が太い繊維から細い繊維へ、またはその逆に移行すると、細い繊維108の堅牢性も増大する。
【0120】
さらなる実施形態では、平行繊維108の凝固によって繊維径の変動が作られ得る。そのような一実施形態では、非常に高い併合度を達成することができ、その結果、高度の直径変動が可能になる。驚くべきことに、この手段をとることにより、高い値の滑らかさを得ることができ、一方で、非常に低い値の目に見えるリンティングを達成できることが判明した。特定の理論に縛られることを望まないが、現在、不織セルロース繊維布帛102内の多量の細い繊維108が、顕著なリンティングを伴わず、全体的に高い滑らかさをもたらすと考えられている。
【0121】
本発明のさらに別の例示的な実施形態では、油を受け入れる顕著な能力を有する不織セルロース繊維布帛102が得られる。これは、記載されている比較的高い均一性と、それに対応して得ることができる同等の空洞形成とによって得ることができる。一方、太い繊維108によって機械的安定性が生み出される。これにより、空洞の崩壊が防止される。したがって、非常に太い繊維108と非常に細い繊維108との組合せにより、機械的に堅牢な油貯蔵毛管系を得ることが可能になる。
【0122】
本発明の別の例示的な実施形態では、不織セルロース繊維布帛102は、生分解性製品に使用される。生分解後、バインダ材料または接着材料は残らない。特に、多量の重金属が、そのような生分解性製品の一部を形成することはない。
【0123】
多層布帛102の層200、202の間の繊維径の変動を伴う本発明の別の例示的な実施形態では、流体保持能力および/または流体分配能力の勾配を形成または作成することが可能である。例えば、これにより、女性用衛生製品、失禁用製品などに実装されるような取得分配層(ADL)を適切に設計することが可能になり得る。そのような取得分配層は、可能な限り迅速に流体を蓄積し、それを後続の層に送るように構成されてもよい。後続の層では、流体は空間的に分布し得、コア層(吸収性コア)に送られ得る。
【0124】
要約すると、特に、以下の調整のうち1つまたは複数が行われ得る。
・低い均一な力価は、布帛102の高い滑らかさを得ることを可能にし得る。
・小さな力価および比較的小さな速度を有する多層布帛102は、小さな布帛密度で高い布帛厚さを得ることを可能にし得る。
・機能化された層の等しい吸収曲線は、均一な湿度および流体収容挙動、ならびに流体放出に関して均一な挙動を得ることを可能にし得る。
・布帛102の層200、202の記載された接続は、層分離時に低いリンティングを有する製品を設計することを可能にする。
・多層布帛102の層200、202を分離することによって、多くの医療、農業、パーソナルケア機能が正確に調整され得る。
・異方性特性を有する製品が得られるように、単一層200、202を異なるように機能化することも可能である(例えば、ウイッキング性、油収容、水収容、クリーナビリティ、粗さについて)。
【0125】
最後に、上記の実施形態は本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの代替実施形態を設計することができることに留意されたい。特許請求の範囲では、括弧に入れた参照符号は、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」などの語句は、特許請求の範囲または明細書全体に列挙されているもの以外の要素または工程の存在を排除しない。要素の単数形の参照は、そのような要素の複数形の参照を排除するものではなく、その逆も同様である。複数の手段を列挙する装置クレームでは、これらの手段のうちいくつかが、ソフトウェアまたはハードウェアの全く同一の品目によって具現化され得る。相互に異なる従属請求項に特定の手段が記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せを有利に利用することができないことを意味しない。
【0126】
以下では、併合因子の変動を生じさせる例を記載し、以下の表に可視化する。一定の紡糸溶液(すなわち、一定の粘度を有する紡糸溶液)、特にリヨセル紡糸溶液、および一定のガス流(例えば空気処理量)を使用しながら凝固スプレ流を変化させることによって、セルロース繊維布帛内に異なる併合因子が達成されてもよい。これにより、凝固スプレ流と併合因子との関係、すなわち、併合挙動の傾向(凝固スプレ流が高いほど、併合因子が低い)が観察され得る。これにより、MDは機械方向を示し、CDは幅方向を示す。
【表1】
柔軟性(既知のSpecific Hand測定技術によって記載され、不織布規格WSP90.3、特に本特許出願の優先日に有効な最新版に基づいて、いわゆる「ハンドル−O−メータ」を用いて測定された)は、上述の併合の傾向に従い得る。例えば、EN29073−3(それぞれISO9073−3)、特に本特許出願の優先日に有効な最新版による靭性(Fmaxにより記載)も、前述の併合の傾向に従い得る。したがって、結果として得られる不織セルロース繊維布帛の柔軟性および靭性は、(併合因子によって指定される)併合の程度に従って調整され得る。
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